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(松駒)
今夜 新入りが来るので――>
(客) 何とか言えよ この野郎 あ?
(客) ハハハッ びっくりしますね
あの言葉は何だったんですか? え?
(客) 笑顔を売ってらっしゃるんでしょ (松駒) あらららー
だいぶ怒ってるな
入りたくないな
おら お前 3日前 入れるっつったじゃねえか
入ってねえって どうなったんだよ おい こら
(松駒) こいつが新人か>
(松駒) すいません お客様 あの 何か?
(客) おら お前 うっせえんだよ 入ってくんじゃねえよ
(松駒) いや 申し訳ございません
あの こちらの店員が 新人なものですから
(客) んなこと知るか この野郎 (松駒) ああ…
(松駒) あっ さあ 君も 黙ってないで謝って
(客) んだ ふざけんなよ この野郎
(松駒) はい
謝って
(客) おら お客様は神様じゃねえのかよ
(仁井智慧) 神は…
神は――
死んだ
(松駒)
ニーチェの言葉>
不条理なものだが――>
人々に説いた>
(仁井) ゆえに――
客など神では…
(松駒) 言わないで!
(松駒) やってきました>
彼をそう呼ぶことにしよう>
♪~
~♪
(松駒) 仁井君って言うんだ フッ 珍しい名前だね
はい
アハハハハ ハハハハッ
もう 年上の人に“にいちゃん”って 呼ばれるんだ フフフッ
年上なのに “にいちゃん”とは これいかに
フフフフッ
すみません
お楽しみ中のところ 申し訳ありませんが 年上は――
“仁井君” もしくは“仁井”と 呼びますので
そうですか
あっ あっ でも でも――
年下のやつに“おう にいさん”って
ククククッ フフフフ
もう血縁関係のない他人の年下に “にいさん”って
ヤクザかー みたいな?
“にいさん!”って言うの? ねえ
あの 年下のやつに “俺はお前の兄じゃない”って言うの?
ねえ フフッ ハハハ
言わないです
言わないよね うん
あの いちいち言ってたら 大変だもんね
何か質問ある?
松駒って名前も 珍しいですよねえとか――
思ってるかな?
思ってないです
思ってない うん
あっ…
レジ打ちとか…
スーパーでバイト経験があるので
あー じゃ 大丈夫だね うん
あっ 大学生だよね?
はい 仏教学部です
うーえー
仏教学部なんだ えっ 初めて会う 仏教学部の人
えっ どんな授業があるの?
袈裟を着込んだ 本物のお坊さんと一緒に――
般若心経を唱える授業があります
うえー! えー!
ぽー! すごーい!
えっ えっ えっ えっ えっ じゃあ 仁井君は般若心経を唱えられるの?
はい ほぼ毎日 唱えているので
すごいね えっ じゃあ 言ってみて 言ってみて
仏説 摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊 皆空
度一切苦厄 舎利子
色不異空 空不異色 色即是空 空即是色
受想行識 亦復如是
(客) すいません
(客) おでんいいですか (松駒) あっ はい
(松駒) 何がよろしいですか (客) えっとね…
(客) ちくわと… (仁井) 不生不滅 不垢不浄
(松駒) あっ あと何か? (仁井) 不増不減 是故空中
(松駒) あっ 仁井君 もう大丈夫だよ ありがとう
(仁井) 無色無受想行識 (松駒) うん あの 仁井君 後で聞くので
(松駒) あのー 後で ねっ あの 仁井君 (仁井) 無眼耳鼻舌身意
(仁井) 無色声香味触法 (松駒) あっ あの あれっ
(仁井) 無眼界 乃至無…
この時間 お客さん減るから――
眠かったら事務所で仮眠とっていいよ
大丈夫です
ちょっと変わってるけど 頑張り屋さんなのかな
(ドアチャイム)
(男性) ハーッ ハハハ
ハッ ハッ ハッ ハッ ハハハハ レタスクラブ…
レタスクラブ 超おもろ
ズデンズデン ズッダン ダダ ズダン ダダ ズデン
ズッダンダララ ズダン
タンタラ ズデンズデンズデン タンタラン
ズデンズデンズデン タンタラン
ズッダンタラン ズデンズデンズデン
ズッタンタラ ズデンズデンズデン タンタラン
ズッデンズデンズデン ズッタタンタラン
タンタラン ズデンズデンズデン
あっ あっ イエス
あっ イラッセイセイ
シュッ
アイワナ タスティン
バランタッタ バランタッタ バン
バン バティチュンタンタン
シュシュ ズダンズダンズダンズダン ダンダン ズダンズダンズダン
しらたき セーイ!
しらたき しらたき しらたき しらたき
ちくわぶ うええい うー ちくわぶ うっ セーイ
ちくわ あっ ヘイ ちくわぶ75円
しらたき75円ズダン しらたき75円ズダン
うー ぶちゃぶちゃ セイイエイ ズダンズダンズダン
ダンダダンダン! はい! はい!
すん
(松駒) 店長 お疲れさまです
(店長) はい お疲れさん
えー 新人さん よく来たる
(仁井) はい
(店長) えー 店長 来るやいなや 来るやいなやの――
仮眠 入りまーす
(松駒・仁井) お疲れさまです
(店長) あっ でも この眠り 仮でなくなる可能性あり
その場合 起こすもよし 起こさぬも… よすぃわ
ハウイ よし
ズンチャズダンズダン ダンダンダン…
(松駒) 店長に対して質問は?
(仁井) 大丈夫です
(渡利) えっ えっ えっ じゃあ君はなぜに――
深夜のコンビニでのバイトを 選んだのかい?
自分の大切な1時間を――
3桁でお渡しするわけにはいかないので
(渡利) 3桁っていうのは? 1000円以下っていうことだろ?
(仁井) はい (渡利) ほら やっぱり金じゃないか
はい 全てではありませんが
そういう言い方するなよ
99%ではありますが
つまり全てっていうことだろ
(松駒) いや 1%は違うみたいですから
(渡利) よし あえて――
あえての残りの1%を追求するのは――
あえての聞かないという手段を 取ることにしよう
ここで あえて俺が言いたいのは――
俺の全ては金だ
いいと思います
つまり俺がここにいる理由
それは お金が100%
はい
(松駒)
ここに宝くじがある
近々に3億円になる可能性を秘めた紙だ
これが何でできているか
パルプ これによって世界中の木々が伐採され――
植物の光合成が減少し――
温暖化を引き起こし 地球が今 危機に瀕している
っていうことは どうでもいいだろ?
なあ 今 その話どうでもいいだろ
今の話題の流れだと そこは いったん 置いておいてもいいんじゃないですかね
さてと
俺が3億円という金を 手に入れたとしよう
よし 手に入れた
イメージ完了ですね
(渡利) これを見てほしい
AKMSだ
1950年代中盤 生産性の更なる向上を狙って――
AK47のレシーバーを プレス加工品に置き換える――
AKM計画が発した
試作品がソ連軍に提出されたのは1957年
正式化されたのは1959年だ
リベット結合したレシーバーで 生産性を向上させ――
軽量化にも成功
どうだ すばらしいだろう
しかし俺は こんな物には興味がない
(松駒) ないんですね
(渡利) 3億という金を手にした俺は その金で――
戦車を買う
(松駒) 戦車って買えるんですか?
(仁井) 買って どうするんですか?
(松駒) 先輩 実は そういう思想の持ち主なんですか?
(渡利) 俺はね 誰も乗っていない車に 乗りたいんだよ
(松駒) あっ 車が好きなんですね?
(渡利) 最近ね つい最近 俺 思ったんだよ
男のステイタスは やはり車だ
(松駒) さっきの銃の説明は 何だったんだよーとか考えちゃダメだよ
そういう人だから
(仁井) 戦車は日本の公道を 走れるんですか
(松駒) 興味持ったんだね ちょっと驚きだけど うれしいよ
よくぞ聞いてくれた いいか 新人
俺は戦車を買った後 余った金で政治家を買収して――
戦車が公道も走ってもいいという 法案を可決させる
政治家は どのくらいの金で買収できますか
もちろん 億の金は積まないとな
法案を通すということは――
たくさんの政治家を 買収する必要がありますが
もちろんだ
(仁井) すると――
戦車を買う金がなくなるのでは?
いいや 買える
3億あるからね
戦車を買って 政治家たくさん買うぐらい 造作もないことだ
(仁井) 先輩 冷静に
冷静になって
計算してみてください
(松駒) 先輩 頑張って (渡利) んっ ちょっと
買えた
(松駒) 買えたとしてくれ
公道を走れたとして どこをどう走るんですか
(渡利) どこをどうって 東京の道を 普通に走り回るさ
道行く人は みんな振り返るぞ
わっ 戦車だ かっけえ
やだ 戦車よ 攻撃するんじゃない?
ハハハハハハ 攻撃するわけないのにな
どこに止めておくんですか
家の目の前に月極の駐車場がある
それを4台分ほど借りるわけですね
(渡利) 3億あるからね
駐車場の方から ぜひ借りてくださいって お願いしてくるかもね
(仁井) 出かけた時は? (渡利) コインパー
コインパーに入りますか 戦車が
戦車専用のコインパーを作る法案を 可決させる
とても丈夫な――
こういうバーの――
開発をする必要がありますね
なるほどな
キャタピラで載るわけだからな
(渡利) 従来のやつだったら 戦車 載ったら――
バリバリって砕け散るもんな
あ しかし! 法案が通ったら――
戦車が載っても こう 大丈夫な 丈夫な素材が――
きっと開発される!
横道に入るような 狭い所は諦めるわけですね?
俺は常に王道を歩み続ける男だ
そんな横の脇道なんて興味がない
首都高は走れますか?
何度も言わせるな!
俺は戦車専用のETC入り口が できる法案を可決させるんだ
(松駒) 政治家 大忙しだ
(仁井) 先輩1人のために 日本の道路交通法は大幅に変わりますね
3億あれば変わるでしょう
分かりました
先輩が戦車で公道を走る姿を――
楽しみにしております
(松駒) ホント楽しみー 当たるといいな 3億円
(渡利) 当たるとみている
俺は当たるとみている!
フハハハハハ
(仁井) 先輩
戦車1台――
安くて7億円だそうです
(渡利) クソ!
ガシャッ
(仁井) ただ 個人で買うことは可能です
(渡利) もういい!
(松駒) 仁井君
夢を語ることは自由だと思う
現実を伝えることも自由です
(松駒) 先輩 戦車の前に マンション買いますか
今の3万円のアパートを抜け出して
(渡利) ナイス助言 松駒
(店長) 働こう
(3人) はい
ダメだよ 持って帰っちゃ
あっ いえ
こうして見ると――
エロ本も進化しているんだなと
ああ
自分がコンビニを歩く時は じっくり見たことがなかったもので――
その進化に気づきませんでした
うん まあ 最近じゃDVDとかも 付いてるみたいだからね
そうみたいですね
よくコストが抑えられていますね
まっ いろいろあるんだろうね
それを可能にする ビジネスのシステムが
買ったことはありますか?
ああ いやいや 僕は…
まあ 中学生とか高校生の時は――
コンビニで買うのにドキドキしたよね
ドキドキする必要はないんですけどね
正常な人間の営みですから
とっ… とは言ってもねえ
なるべく女性店員さんがいない 夜中とかを狙って――
買いに行ったもんだよね
どうして今は買わないんですか
僕はね ちょっと――
えり好みが激しくてね
いわゆる 何というか――
幼い感じが好きなんだよ
だからといってロリコンではないし
年齢の浅い女の子に 興味があるわけじゃないんだ
それは法的にも 理性的にもダメだと分かっているし
理想といえば理想なのかもしれないけれど そうじゃないんだ
そういうことじゃない
要は僕は――
子供みたいな大人の女性が好きなんだ
ということで ストライクゾーンは極めて小さい
身長は145センチから150センチの間に 収まっていないと――
NGということにしている 基本的にね
そして童顔 当然だよね
丸顔がベストだけど 最悪 形は問わない
幼い顔であればね
そして体全体の印象は ぽっちゃりでないと認めないことにしている
だって そうだろ
いわゆる幼児体型というやつだ
しかれども そういえども!
胸もあってもなくてもよし!
胸はない方がいいのかなと思っただろ? それは違う
幼児体型とはいえ 大人の女である以上――
胸のありなしは こちらが勝手に 指定してはいけないと考えているんだ
芸能人でいえば有村架純 高畑充希
最近熱いのは土屋太鳳!
しかし有村架純が僕に――
“付き合ってください”と 言う確率は少ないだろ?
多くて30%かな
なかなか難しくてね
理想の女性と出会うことが
苦労はしているよ
ちなみに こういった雑誌は大抵の場合――
スタイルのよい女性たちが 活躍しているものが多いよね
ということで僕のこだわりを 満たしてくれることは めったにない
そんな少ない可能性にかけて――
これだけの値段の物を――
そう易々と買うわけには――
いかないだろ
そうですね
理解しました
(ドアチャイム)
(塩山 楓) ああ 松駒君
いや 疲れてるね 楓
もう限界なんですけど
何か食べないと 体がもたないとは思うけど――
こんな時間に食べたら 絶対に太るということで――
悩んでる真っ最中
いや そんなに太ってないんだから 食べた方がいいよ
(松駒) あっ 仁井君 (仁井) はい
紹介するよ 僕の幼なじみで――
看護師やってる塩山楓
仁井です
夜勤明けは基本的に 買い物に来てくれるんだ
どうした?
(楓)
(松駒) いらっしゃいませ
(楓) こんなにもタイプな男がいただろうか>
まさにどストライク!>
どストライク!>
バッターアウト!>
野球で言えば5番>
あの赤い円の――>
今にも飛びつきたいほどタイプだ>
初対面でそんなことしたら――>
夜勤明けの疲れた顔を見せるわけにはいかない>
メイクをちょっぱやで直さないと!>
やらなければいけない作業>
隠れてやらなきゃダメなの>
どうした? 楓 どうした? うん?
(楓)
離すことができないのよ!>
あっ お次の方 こちらのレジへどうぞ
(仁井) お客様
もしや おでんですか?
(楓)
完成された私を見て!>
ああ… 一目ぼれというものが――
本当に存在するなんて
一瞬で好きになってしまったのよ 仁井君!
好きだと言ってしまおうか
いや ダメよ
初対面でまだ5分も経っていないのに 好きとか言ったら――
“誰にでもそんなこと言ってるんだな この女”と――
軽い女に見られてしまう
ああー! どうすればいいの!
楓さん 心の声で言うべきセリフが――
興奮のあまり 完全に だだもれになっているぞ
そうだ 冷静に考えてみれば――
このルックスだったら 100パー 彼女がいるに違いない
そうよ 絶対いる!
彼女がいるなら 今更 私が告白したところで――
時 既に遅しというものよ
いませんよ
ええっ!
(楓) どうして私の考えてることが? (松駒) 聞こえたから
うわあーっ!
どストライクなうえに エスパーだなんて
楓 気づけー
完全に君の心の声は 音声として発せられていることを
仁井君がエスパーだったことで 彼女がいないことは分かった
だけど仁井君が私のことが タイプかどうかなんて分からない
この手の顔の男は確実に 奥ゆかしいタイプの女が好み
ということは出会ってから3ヵ月
そこそこ親しい関係になって 初めてデートに誘うべき
そして初デートでも 告白なんかしちゃダメ
デートを10回ほど重ねた後――
初めて そこで告白
それくらいの奥ゆかしさがあって 初めて――
このタイプの男は落ちる!
(松駒) 楓 話せば話すほど 脈がなくなる気がする
ほれ 今日のところは帰ろう
どう思ったのかしら ぶっちゃけ どう思ったのかを知りたい
私のメイクした状態の 完璧な顔を見て――
タイプかどうか どちらかなのかを知りたい
(松駒) 楓!
松駒君 どうしたの?
いや こっちのセリフです
(楓) 松駒君
仁井君が どんな女が好みなのか――
それとなく 聞いておいてもらっていいかしら
いや それとなく聞く前に がっつり聞いちゃった人 いるから
やだ 仁井君がこっち見てる
(松駒) そら 見るよ
(楓) まさか 私のことが?
好きとかじゃないと思うよ
やだ! 恥ずかしい
出直すわ!
(ドアチャイム)
(松駒) ごめんね ホントはいいやつなんだ
(仁井) 大丈夫ですよ
よくあることですから
(松駒) よくあるのか…
(仁井) 塩をまいておきます
♪~
~♪
(男性) おら 金出せ こら! (仁井) せーい!
(店長) 起死回生の商品が必要だと 考えました
(店長) 下手をすれば監禁の罪だね
ミックスミックス! ワオ!
(渡利) あったー!
(楓)
(仁井) 僕が介抱してきます
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