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Original subtitles

(矢木 明)お願いしますよ。 もっとやりましょうよ。 ね?

(伊丹憲一)あのねえ もう 聴取は終わりましたから→

どうぞ お引き取りください。 そんな つれない事言わないで…。

もっと あの 詳しく 突っ込んで訊いて下さいよ!

何でも答えますから。 ね。 お願いします。

だから 離せっつうの。 もう なんなんだよ こいつ!

(三浦信輔)ほら 矢木明って→

何年か前の あの美大生殺しの時の…。

(神戸 尊)おはようございます。 通ります。

(角田六郎)あ? また遅刻か? 「また」って…。

すいません。 ちょっと遅くなりま…。

誰ですか?

マーロウ矢木 探偵です。 探偵が なんだってここに?

申し遅れました。 あなたの新しい相棒です。

…え?

え? 一緒に調べるって この妙なオヤ… 探偵とですか?

(杉下右京)ええ どうやら お困りのようですからねえ。

あの 杉下さん 今 どちらに?

ちょっと 調べたい事があって 米沢さんと外に。

君も一緒にと 思ったのですがねえ。

まさか 遅刻した罰ってわけじゃ ないですよね?

自覚があれば結構。 それでは。

改めて 自己紹介します。

私 本名は矢木明。

チャンドラー探偵社で 一番の腕利きです。

捜査一課で 聴取を受けたそうですけど→

何か やらかしたんですか? いやいや ただの参考人ですよ。

ほら 例の取り壊し中の ビルで起きた殺人事件の…。

事件があったのは 先週の6日でしたねえ…。

(米沢 守)ええ ここで 男性の刺殺体が発見されました。

被害者は メトロポリタン・リサーチという→

探偵社を経営している 樋本晃一 42歳。

(芹沢慶二)遅くなりました。 おお 来たか。

傷のほうは もういいのか? もう バリバリですよ!

米沢 凶器はこれか? (米沢)ええ。

後頭部に打撲痕がありますが 死因は失血死。

で 致命傷は 腹部の刺創で間違いないかと。

死亡推定時刻は?

昨日の午後3時から5時の間 といったところでしょうか。

凶器の柳刃包丁の指紋は ふき取られてました。

目撃者もあいにく…。 となると 捜査は→

被害者を殺害する 動機のある人間の洗い出しを→

重点的にという事になりますね。 ええ。

被害者は 大手探偵社 社長でしたから→

仕事柄 恨まれる可能性も高いと 一課は踏んだようです。

なるほど…。

ひょっとして 同じ探偵だから 容疑をかけたれたとか?

違いますよ。 あちらさんは 私のように→

ロマンを求める探偵とは 別物なんですから。

ロマン…?

実をいうと 被害者には 元妻がいましてね。

私は その女性のアリバイの 証人だったんです

栗山佳美ってんですけどね かなり イケてるでしょ?

なんか ほら 和製ローレン・バコールって感じで。

つまり 犯行時刻にあなたは この人と一緒だったんだ。

ええ。 彼女には 内縁の夫がいましてね。

稲尾真木彦。 橘町にある→

私が行きつけのバーの バーテンダーなんですよ。

ん? 探偵社の社長と別れて 今は バーテンダーの妻なんだ。

ええ。 この佳美ちゃん→

稼ぎの少ない稲尾ちゃんに かいがいしく尽くして→

店のそばの弁当屋で パートまでして。

もう 美人のくせに 出来た女なんですよ。

尊くん? 「たける」です。

で その出来た女と どうして一緒に?

1週間ほど前 旦那の稲尾ちゃんに 頼まれたんです。

高校の同窓会に行く彼女を 尾行して→

浮気しないように 見張ってくれって。え…?

ほら よくあるでしょ? 同窓会で 昔の恋人に会って→

焼けぼっくいに火がついて フォーリンラブ・アゲインみたいな。 ハハハ。

その日 3時前に家を出た 彼女を尾行したんですけどね…。

(矢木の声) もちろん 彼女は私の事も→

探偵だってのも知ってましたから 正直 かなりヤバイ状況で…。

(矢木)アハ… どうも いいお天気で。

(栗山佳美)稲尾に頼まれたのね。

あ~ いや…。

だったら 私の相談にも 乗ってほしいんだけど…。

相談…。 ここじゃなんだから…。

え!? って「エーゲ海」…?

まさか 尾行がバレた上に その相手とラブホテルに?

イヤだなあ 誤解ですよ。

依頼人との約束は 何があっても最後まで守る。

それが チャンドラー探偵社の モットーなんです。

ラブホに入ったのも 彼女を見張るためですって。

あ やっぱり入ったんだ。 だから 何もしてませんってば。

彼女 本当に稲尾ちゃんの事で 相談があって。

自分は 本気で 結婚の事を考えてるのに→

稲尾ちゃんのほうが 煮え切らなくて困ってるとか…。

要するに 被害者の樋本晃一が 殺害された時刻→

あなたは 元妻の栗山佳美の相談に ずっと乗ってたわけだ。

(矢木の声)ただ その手の話って→

素面じゃ 聞けないじゃないですか。

だから 冷蔵庫にあるだけの酒を飲んで→

1時間ほど グッドスリープ。 ぐっすり。

え? 寝てた?

って事は その間 栗山佳美って女は?

なるほど… 犯行現場からここまで 車で20分弱ですね。

ええ。 小一時間もあれば 往復は可能ですねえ。

なおかつ この手のホテルは→

出入りが人目につかない 造りになっています。

私立探偵と一緒にいたという 被害者の元妻のアリバイは→

きわめて不確かなもの という事になりますな。

ひょっとしたら 彼女 最初から→

私をアリバイに利用するつもり だったのかもしれませんね。

確かに そうでもなければ こんな美人が→

あなたをラブホテルに誘うわけも ないでしょうし。

ですよね~。 あ 自覚はあるんだ…。

とにかく! 彼女 怪しいでしょ?

怪しいと思ったら 一緒に調べてくださいよ。

杉下さんも OK出してくれたんだから。

お言葉ですが そんな不完全なアリバイなら→

捜査一課が 彼女を 容疑者から外すとは考えにくい。

ところが 全然 こっちのほう 調べる気配もなくて…。

という事は 他にもっと 有力な動機がある容疑者がいて→

そっちを追うのを 優先してるんですよ きっと。

暴力団? ええ。 被害者が経営していた→

探偵社の調査員と 貴龍会の構成員が→

トラブルを起こしていた事が 判明しまして…。

つまり 貴龍会は 樋本社長の命を狙っていた…。

一課は そちらが本線だと にらんでいるようです。

なるほど…。 だから 半年前に離婚した栗山佳美を→

容疑者から外したわけですか。

凶器からは 何か?

家庭用で スーパーや金物屋なら→

どこででも 手に入る代物ですから→

入手ルートをたどるのは 至難の業でしょう。

…ここ。 傷がありますねえ。

(米沢)ええ 包丁自体は 新品でしたから→

犯行時についた可能性が 高いかと。

あの 民間人を 捜査に同行させるなんて→

反則もいいところなんですから おとなしくしててくださいよ。

そう 堅い事 言わないでくださいよ。

タケちゃん。 フフ…。

タケ…。

(社員)こちらが 樋本社長のオフィスです。

前にいらした刑事さんにも お伝えしましたが→

当方には 守秘義務があります。

調査案件に関しては何も。 それは もちろん承知しています。

うわ~! この盗聴器 最新型じゃないですか。

ちょっと…!

(矢木)おっ! こっちは これ 夜間監視用ですね。

さすがだ~。 これ どうやって使うんですか?

これは スイッチひとつで 切り替えが可能なんです。

神戸くん 君もね 後学のために ちょっと 聞かせてもらいなさい。

スイッチって?

ですから このスイッチを入れると 電源が入ります。

で さらに このスイッチで 赤外線が照射される事によって→

暗いところでも 明るいところのように→

見る事が出来ます。

その辺り 詳しく もっとお聞きして。

あ~ これ カメラとかに つなぐ事って出来るんですか?

(社員)ええ。 ここに出力端子があるので→

こことカメラを ケーブルでつなぐと可能です。

ちょっと つないでみてもらって いいですか?

(社員)いいですよ。

さあさあ さあさあ どうぞ ずーっと奥まで…→

って言っても まあ この部屋しかないんですけど。

杉下さんまで呼び出したんです。 被害者のオフィスで→

何を盗み見したのか さっさと説明してください。

気になる依頼人がいたそうですが それは?

聞いて驚かないでくださいよ。 被害者の樋本晃一は→

どうやら あの福栄義英氏から 依頼を受けてたみたいです。

福栄義英…? 福栄財閥の当主の方ですねえ。

明治時代から 代々続いている 資産家の一族と聞いています。

ええ うちにも多分 資料があったはずです。

あーっと… ありました。

ほら あの これ。

この 福栄義英氏は→

最近でこそ 表舞台に立つ事は減りましたが→

財界の大立者で 資産は なんと300億円!

えっ!? その大金持ちが 殺された樋本晃一に→

一体 何を依頼してたんでしょう? それもそうですが→

矢木さんはどうして 福栄義英氏を調べたのでしょう?

何を隠そう 福栄さん家のご近所で→

猫が1匹 迷子になりましてね。

ひょっとしたら お屋敷に→

紛れ込んでんじゃないかと 調べたついでに→

いろいろ気になったもんで つい…。

猫探しのついでに…。

なんてったって ハードボイルドの探偵とくれば→

美女と大富豪ってのは つきものですから。

福栄義英氏は 現在75歳。

10年以上前に 奥様とは死別してますねえ。

はい。 その奥さんとの間に→

英雄という 一人息子がいたんですが→

7年前に 心筋梗塞で急死してしまい…。

現在は 英雄さんの妻で 未亡人の晴子さんと→

その息子… つまり 福栄義英氏の孫の英則くん→

代々仕えてる 倉橋という執事の 4人だけで暮らしてるようです。

ここだけの話 この 福栄義英氏は→

最近 かなり体の具合が悪く ずっと寝たきりだそうです。

なんか においませんか? におう…?

あ~ ありゃ 確かにね。 違いますよ。

300億円もの資産を持つ大富豪。 しかも 隠遁して→

死期を迎えようとしている とくれば…。

遺産相続で何かが起きても おかしくないですよねえ?

少なくとも 事件の動機にはなり得ますねえ。

お言葉ですが 福栄義英氏が→

殺された樋本晃一の 依頼人の1人だったとしても→

事件に関係してると 決めつけるのは→

気が早すぎると思いますけど。

早すぎるといえば ギムレットですねえ。 え?

もう 日も暮れてきたし… ね。

よかったら 1杯やりにいきませんか?

ちょっと 人の話聞いてます? いや あのね→

付き合ってくれたお礼に おごりますから。

ギムレットのうまい こじゃれたバーがあるんですよ。

さあ 行きましょう。 ね? さあさあさあ…。

わざわざ こんなところまで 通ってるんですか?

ええ。 ちょっと遠かったですか? でも もう じきですから。 ほら。

(矢木)じゃあ 行きましょう。 こじゃれたバーというより→

コテコテのカラオケスナックにしか 見えませんけど…。

案外 中は違うのかもしれませんよ。

どうぞ どうぞ。

「また君に恋してる いままでよりも…」

中も完璧な カラオケスナックでしたね。

なるほど。 依頼人の 稲尾さんの店というわけですか。

ハハッ バレちゃいました?

(稲尾 真木彦)いらっしゃい。 矢木ちゃん→

お連れさんがいるなんて 珍しいねえ。

ハハハッ あの~ いつもの。 いいですよね?

あ… ええ。 じゃあ 3つ。

(稲尾)はい。 いつもの3つ。

はい ギムレット3丁。 どうぞ。

はあ… どう見ても ライムサワーだ…。

ベースが麦焼酎だけに ムギレット。

なんて…。

忘れてください。

乾杯しましょう! ね? 乾杯!

あ~ 矢木ちゃん 実は 見せたいものがあるんだ。

何?

(矢木)これ 婚姻届じゃない!

栗山佳美… 奥さんも署名してあるんだ。

ゆうべ 清水の舞台から 飛び降りる覚悟で→

これ 佳美に突きつけたら

佳美のやつ 喜んで名前書いてくれて…。

ちなみに いつ 提出されるご予定なんですか?

それがね 俺は今日にでも出そう って言ったのに→

佳美のやつ せっかくだから いい日を選びたいって。

いい日って誕生日とか? いやあ なんか→

よく当たる占い師に 1月23日なら→

絶対に幸せになれるって 勧められたとかで…。

あいつがそこまで言うなら 俺 逆らえないし…。

なんだよ! もう すっかり 尻にしかれてんじゃない!

いやあ アハハ…。 俺 ずいぶん前に→

親父もおふくろも 亡くしてるから→

家族が出来るの すごく嬉しいんだ。

稲尾ちゃん…。 ハハッ。

ひょっとして その人形も 奥様のご趣味でしょうか?

(稲尾)参ったなあ…!

私の代わりに そばに置いてほしい って言われちゃって~!

ラブラブじゃねえ! ヒューヒュー。

この間は 妙な事頼んでごめんね。

ああ いいって。 うん。 取り越し苦労だったんだから。

それって ひょっとして同窓会の…?

あ! 矢木ちゃん そんな事まで? いやいや… ねえ?

同業者だし ちょっと手伝ってもらったのよ。

探偵さん? その事なんですが→

矢木さんには どんなふうに 依頼されたのでしょう?

いや どんなふうって…。

客が 矢木ちゃん1人だけだった時 たまたま…。

頼む! 同窓会の日→

佳美が浮気しないように 見張ってくれないか?

いくら 佳美ちゃんが心配だからってさ→

そこまでやる? やってくれたら→

たまったツケ タダにしてもいい。

やります! よかった~!

もう1つ よろしいでしょうか? はあ。

佳美さんと出会ったのは いつごろ どちらで?

ああ ちょうど 半年ぐらい前かな~。

こう 1人でフラッと店に来て→

酔い潰れたのを 介抱してあげたら→

次の日から 毎日 顔を出してくれて…!

事件に 福栄義英氏が かかわってるなんて→

本当に信じてるんですか?

米沢さんに取ってもらった コピーです。

被害者の携帯の通話記録…。

その中に この屋敷の番号がありました。

半年前に 集中して十数回 そして 今月に入ってから→

思い出したように数回。 まさか 本当に…。

いやあ おはようございます。 おや。

お見えになると思ってました。 なんでまた こんなところに。

依頼人との約束は 何があっても 最後まで守る。

それが チャンドラー探偵社の モットーなんです。

そのためには どこだって行きますよ。

さあ! レッツゴー! 行きましょ 行きましょ。

(倉橋悦史)「どちら様でしょうか」

私立探偵の矢木と申します。 ご当主の福栄義英氏に→

樋本晃一に依頼された件で お話があるとお伝えください。

(倉橋)「少々お待ちください」

得体の知れない 私立探偵だなんて名乗ったって→

門前払いをくらうのが 関の山だと思いますよ。

かもしれませんねえ。

(倉橋)お待たせしました。 どうぞ お入りください。

そちら様は?

矢木の部下の 杉下と神戸と申します。

かしこまりました。 では ご一緒に。

初めまして 福栄晴子と申します。

はあ… あの~ ご当主の義英様は…。

申し訳ございません。 義父は今 体を壊しておりまして→

ベッドから起き上がる事も かないませんので…。

代わりに 私が お話を伺わせていただきます。

(矢木)はあ…。

英則… おじいちゃまのお部屋に行って→

ご本を読んでいただきなさい。 (福栄英則)はい。

(倉橋)さあ お坊ちゃま 参りましょう。 さあ。

あ どうぞ お座りください。

お話では 義父が樋本という方に→

何かを依頼されたそうですが…。

それは 一体 どのような内容の…?

おや 奥様は ご存じないのでしょうか?

お恥ずかしい話 義父からは何も。

失礼でなければ 依頼の内容を 教えていただけないでしょうか?

あ… いや~ 困りましたね。

お教えしたいのは 山々なんですけども→

探偵は 依頼の内容を むやみに口に出来ないんですよ。

(晴子)そうですか…。

失礼を承知で 奥様にお伺いしたいのですが。

何か? もし仮に→

福栄義英氏が 亡くなられた場合→

300億円といわれる資産の相続は どのように行われるのでしょう。

(倉橋)義英様は すでに奥様を亡くされ→

ご兄弟もいらっしゃいません。

ご遺産は 本来ですと→

1人息子である 英雄様に相続されるはずですが→

その英雄様も7年前に…。

急逝されたそうですねえ。 ご心痛お察しいたします。

(晴子)いえ。 ですが夫は→

私に英則を 残してくれましたから。

英則お坊ちゃまは 義英様の唯一の 法定相続人に当たります。

したがって 義英様のご遺産はすべて→

英則お坊ちゃまが 相続される事になります。

なるほど。 立ち入った事をお伺いしまして→

失礼いたしました。 いえ…。

(呼び鈴の音)

あらら…。

お坊ちゃまが おじいちゃまを 困らせてるみたいですね。

ちょっと 見て参ります。

福栄義英氏は 病気で倒れる前に→

樋本に なんらかの調査を依頼した。

状況から見て 遺産相続に関する依頼だったのは→

間違いないでしょう。 あくまで可能性の1つですけどね。

そうですって 絶対。 やっぱり 樋本殺害の裏には→

300億の遺産が 大きくかかわってたんですよ。

ところで 1つ 確かめておきたい事があります。

ちょっと 手伝っていただけますか?

へ? いや 私でよければ。

(稲尾)おや~?

矢木ちゃん 今日は早いね。

稲尾ちゃん…→

佳美ちゃんとは 結婚しないほうがいい。

いや しないで。 どうしたの? 藪から棒に。

私も 佳美ちゃんを 好きになってしまいました。

ええっ!?

のり弁大盛りとしょうが焼き お待たせしました。

はあ… ハックション チクショウ この野郎…。

打ちひしがれて→

空虚に満ちている街から オフィスに戻ると→

頼みもしないのに留守番がいた…。 何? その寝言。

こういうケースは初めてなんで ちょっと 言ってみたくて。

何が狙いよ!

稲尾にあんな嘘までついて→

私との結婚 やめさせようとするなんて…!

もう どういう事よ!

大きな声が 廊下に聞こえてましたよ。

栗山佳美さん。

誰よ? あんたたち。

ああ… 警察です。

ところで あなたは どうして→

矢木さんが稲尾さんに つい先ほど話した話の内容を→

ご存じなんでしょうねえ?

これ 稲尾さんにお断りして 借りてきました。

最新型の盗聴器。

樋本晃一の探偵社で 使ってるやつ。

罠にはめたのね。

おかげで あなたと 亡くなった樋本晃一が→

何を狙っていたのかが わかりました。

すべては 稲尾さんの出自…→

つまり 出生の秘密に 関係していたのですね。

稲尾さんは 福栄義英氏の落としだねだった。

違いますか?

あ~ もう! (舌打ち)

30年以上前に 愛人に産ませた子供よ!

認知はしたけど 福栄義英との約束で→

父親は死んだって 母親から言い聞かされてたから→

稲尾は何も知らないはずだって 樋本が言ってたわ。

じゃあ 樋本晃一は 福本義英から→

稲尾さんの事を調べるように 依頼されたんだ。

さあね。

依頼の内容とか知らないけど 福栄義英は→

稲尾がどこで何をしてるか 知ってたみたい。

依頼内容はどうあれ 半年前 樋本晃一は→

稲尾さんの事を調べ 彼の居場所や→

身寄りもなく独身でいる事を 知ったのでしょうねえ。

だからこそ あなたと急いで離婚をした。

(稲尾)気をつけてね。 どうもありがとう!

樋本晃一は あなたを稲尾さんと 結婚させようと目論んだ。

酔っちゃったみたい…。

もちろん いずれ手に入るであろう 福栄義英氏の遺産が目当てです。

(つばを飲む音)

せっかくの婚姻届を→

1月23日まで 出さないようにこだわったのは→

出そうにも出せなかったから だよね。

あなたが 樋本晃一と離婚したのが 7月22日。

1月23日は それからちょうど 半年が経った日です。

民法では 女性は離婚後6か月間は→

再婚する事が出来ないという 規定があります。

そこまでお見通しなんだ。

いずれ 稲尾さんは 福栄義英氏の遺産を相続する。

そうなった暁には あなたと樋本晃一で→

それを横取りする つもりだったんですね?

ええ! 結婚して籍さえ入れてしまえば→

離婚で 慰謝料ありったけ ふんだくる事が出来るって→

樋本が言うもんだから。 逆に言えば 籍を入れるまで→

あなたは絶対に 稲尾さんを 引きつけておく必要があった。

だから あんなに わざとらしいぐらい→

かいがいしかったんだ。 気になっていたのは→

同窓会に行くと言って 家を出たあなたが→

矢木さんの尾行を いともたやすく 見破ってしまった事です。

プロの探偵である矢木さんの 尾行に気づいたという事は→

前もって それを知っていた可能性が高い。

矢木さんもまた 自分たちと同じように→

稲尾さんが 福栄義英氏の おとしだねであると知って→

近づいてきたのではないか?

そう勘ぐったあなたは 店での会話を→

もらさず聞くために 盗聴器を仕掛けた。

当然 指示したのは 樋本晃一ですよね?

同窓会に行くあなたを 見張ってほしい。

稲尾さんが矢木さんに そう頼んだのを聞いて…。

いくら 佳美ちゃんが心配だからってさ→

そこまでやる? やってくれたら→

たまったツケ タダにしてもいい。

(矢木)「やります!」

それで 稲尾さんや 福栄義英の遺産の事を→

どこまで知ってるか 聞き出そうとして→

矢木さんを ラブホテルに誘ったんだ。

矢木さんもまた 彼女の狙いに→

薄々 感づいていたのでは ありませんか?

いやあ 実は そうなんです。

何しろ 成熟した男と女ですからね。

ああでもしないと よからぬ…。 んなわけないでしょう!

(樋本晃一)「悪いな。 今日は無理だ。 会えない」

何 ビビッてんのよ。

あんなヘボ探偵 絶対 まいてくから大丈夫だって。

「重要な用件で 人と会う事になったんだ」

「とにかく その探偵たらしこんで うまくごまかせ」

イヤよ! あんなキモいオヤジ 絶対ダメ!

「300億円のためだ。 我慢しろ」

そう 樋本に言われたからよ。 キモいオヤジ… ですか。

つまり あの日 あなたは 樋本晃一の指示で→

矢木さんと ホテルにいたわけですね?

という事は わざわざホテルを抜け出して→

樋本のところに 行く必要もなかった。

(矢木の声)じゃあ 私が寝てる間は…?

(佳美の声)イビキがうるさいから 音大きくして テレビ見てたわ。

図らずも 矢木さんの供述どおり→

彼女のアリバイは 立証されたようですねえ。

なるほど。

(携帯電話の振動音)

杉下です。

もしもし 米沢です。 たった今→

樋本晃一殺害の重要参考人が 連行されてきました。

貴龍会の構成員でしょうか?

いえ そちらのほうは 空振りだったようで…。

空振り…。

6日の午後4時半 現場のビルから→

あんたを乗せたっていう タクシーが見つかった。

言い逃れは出来ねえぞ。

「内縁の妻の栗山佳美さんと 元夫の樋本晃一さんが→

まだ切れていないって事 知ってたのか?」

「佳美がバツイチだったなんて 知りませんでした…」

同窓会に行く前 やたら めかし込んでるから→

つい出来心で 佳美の携帯 覗いたんです。

もちろん 初めて。

(芹沢)で そこに 樋本晃一さんの名前があった。

前のバイト先の社長だって 佳美からは聞いてました。

メトロポリタンとかいう 探偵社だって。

で 樋本晃一さんに 会いに行ったのか?

佳美が出かけた後→

もう いてもたっても いられなくなって…!

(稲尾の声)その探偵社まで 行ってみました。

乗り込んで 佳美と別れるよう 直談判しようか迷ってる時→

あの男が…。

(稲尾の声)佳美に会いに行くんだ。 そう思ったら たまらず…。

案の定 誰かと 待ち合わせてる様子でした。

(稲尾)もう 佳美には 会わないでください!

(樋本)なんで あんたがここに!

お願いです! 今日は黙って帰って…!

何言ってんだよ! お前こそ とっとと帰れよ!

(稲尾)ちょっと… ちょっと待てよ!

お願いですよ! 帰ってください!

(物音)

(樋本)痛えなあ! おい コラ!

ああー! 帰れー!

(稲尾)うわあー!

何? 包丁で刺したんじゃない?

もう ちょっと~ 取調べ中っすよ~。

わかってますよ。 わかってますよって…。

怪我 治ったんだ。 よかったね。 ああ どうも。

恐らく 彼が逃げ帰ったあと 別の人物…→

つまり 本来の待ち合わせの相手が 現れたのでしょう。

え… その相手って まさか 栗山佳美ですか?

彼女にも話を聞いたのですが 樋本さんは 彼女と会うのを→

当日になって キャンセルしたそうですよ。

(樋本)「重要な用件で 人と会う事になったんだ」

その相手が犯人である可能性は 高いと思いますよ。

チッ… クソ 振り出しかよ…。

刑事さんだったんだ…。

すみませんでしたねえ。 いえ。

(携帯電話の振動音)

「(呼び出し音)」 凶器の包丁の分析結果が出ました。

あごの部分の傷から ごく微量ですが→

金と銀と銅の成分が 検出されました。

金が75パーセント→

銀と銅が それぞれ12.5パーセント…。

18金 それも イエローゴールドですね。

ちょっと失礼。

「(呼び出し音)」

(携帯電話の振動音)

「(呼び出し音)」 どうしました?

先ほどから かけているんですが→

矢木さんが携帯電話に出ません。 変ですねえ…。

ちょっと 行ってみましょうか。 了解。

さよならを言うのは わずかの間 死ぬ事だ。

(スタンガンの音) うわっ…!

夜分に失礼いたします。

先ほど 矢木さんのお供で 私用でお邪魔しました。

今回は 公務ですから。

警察の方でしたか…。 実は 警察でした。

すみません。 どうぞ。

奥様は お召し替え中です。 どのようなご用件でしょう?

実を申しますと 先ほどから→

僕たちの知り合いに 連絡が取れなくて困っています。

ひょっとして こちらに お邪魔してるのではと思って。

なんの事だか さっぱり。

やっぱり マーロウだったんだね! (矢木)ハハハ… あ~ すみません。

かくれんぼしてたら 見つかっちゃって…。

なるほど。 どこかの部屋に 監禁されていたのを→

勇敢なお友達が 救い出してくれましたか。

今度は 僕が隠れる番!

もう お休みの時間だ。 ね? 部屋に戻ったほうがいい。

続きは 明日 やってあげるから。 ね。

(英則)うん! おやすみ。 はい おやすみ。

英則くんと ずいぶん 仲がいいんですねえ。

やはり 以前 何度も→

この屋敷に 足を運ばれた事があるんですね。

いや… 参ったな…。

ようやく わかりました。 一連の事件の中で→

あなたが 何をしようとしていたのか。

そもそも あなたは最初 稲尾さんから→

内縁の妻である栗山佳美を 見張ってほしいと依頼された。

しかし その件は 片付いていたにもかかわらず→

なぜか あなたは…。

依頼人との約束は 何があっても最後まで守る。

それが チャンドラー探偵社の モットーなんです。

つまり あなたには もう1人の依頼人がいた。

それこそ 福栄義英さん だったのではありませんか?

フフ… いや やっぱりすごいなあ 杉下さんは。

いつからですか?

この屋敷を初めて訪ねた時 あなたは…。

私立探偵の矢木と申します。

(杉下の声)正々堂々と 私立探偵である事を名乗って→

門を開けさせました。

執事の倉橋さんとも 面識があり→

うさんくさいと 門前払いされない事も知っていた。

なおかつ あなたは…。

(呼び鈴の音) あらら…。

お坊ちゃまが おじいちゃまを 困らせてるみたいですね。

あの音が 福栄義英氏の部屋の 呼び鈴である事も知っていた。

この屋敷を 訪ねた事のある証拠です。

ですけど 私は 奥様の晴子さんとは初対面で…。

それも当然でしょう。

あなたが この屋敷で 密かに会っていたのは→

当主の福栄義英氏 だったのですから。

英則くんも遊んでもらってた みたいですけど。

(ため息) 樋本晃一の探偵社で→

福栄義英氏の 資料を見つけた直後→

僕たちが あなたの事務所を訪ねると→

そこにも…。

(矢木)あーっと… ありました。 ほら あの これ。

(杉下の声)あなたがわざわざ この家の資料を→

僕たちに見せたのは 事件の背景には→

福栄義英氏の資産が絡んでいると 僕たちが気づくように→

誘導するためだったんですね? いやいや 誘導だなんて…。

ちょっと ヒントを出しただけですよ。

福栄義英氏が 義理の娘の晴子さんに内緒で→

あなたをこの屋敷に 呼び出したのだとすれば→

その依頼内容も 想像がつきます。

福栄義英氏は 1年前 あなたに→

稲尾真木彦さんの居場所を 捜してほしいと依頼した。

(矢木)え~ 稲尾真木彦さんは→

カラオケスナックで 雇われマスターをしています。

あなたが父親だという事は 知りません。

(福栄義英)探偵さん… あなたに頼みがある。

大富豪の 隠し子である事がわかれば→

どんなトラブルに 巻き込まれるかもしれない。

自分が死ぬまで 相続人である事は明かさず→

財産目当てのやからが 近づかないよう→

稲尾さんを見守ってほしい。

それが あなたが 最後まで守ろうとしていた→

依頼人との約束だったんですね?

だから あの店の常連になり 客を装って→

稲尾さんを 見張っていたんですよね。

矢木さんへの依頼が 今の話だとすると→

福栄義英氏は 亡くなった樋本晃一には→

何を依頼したんでしょう? それこそが→

樋本晃一殺害の 動機だったんですよ。

そうですよね? 福栄晴子さん。

こんな夜更けに訪ねて来られて いきなり なんの話かしら?

樋本晃一は 殺される直前→

栗山佳美に 電話でこう言いました。

「重要な件で人に会う」 そして…。

(樋本) 「300億円のためだ。 我慢しろ」

300億円のため…。

考えてみれば この言葉はおかしい。

福栄義英氏の資産は300億円。

仮に死亡した場合→

稲尾さんが 息子だと名乗り出れば→

資産は 直系の孫である 英則くんに200億円。

そして 稲尾さんには 100億円が配分される事になる。

これ 間違いありませんね? ええ もちろん。

稲尾さんが受け取る遺産は 100億円。

万が一 樋本晃一と栗山佳美が共謀して→

すべてを奪ったとしても 100億円が上限のはず。

遺産絡みの調査をしていた樋本が 間違うはずありませんよね。

ええ。 しかし 樋本晃一は→

稲尾さんが300億円を受け取ると 確信していた。

では それは どのような場合でしょう。

樋本晃一の携帯電話にあった 通話記録です。

このブルーの番号は→

民間でDNA鑑定をしてくれる機関の 代表番号です。

ここへ来る前に 調べさせてもらいました。

英則くんが生まれたのは→

ご主人の英雄さんが亡くなった 9か月後だったんですね。

え…? まさか…。

子供のいない夫婦で→

夫がその父親よりも 先に死亡した場合→

未亡人となった妻に 夫の父親の遺産は入りません。

ただし 夫婦間に子供がいた場合 夫の父親の遺産は→

直系卑属である その孫に与えられ→

妻は後見人として 遺産を受け取る事も可能。

つまり 福栄義英氏が 樋本に依頼したのは→

英則くんのDNA鑑定だった。

でも どうして かわいがってる孫を鑑定なんて?

自分の死後 万が一にも もめ事が起きないように→

念には念を入れて 調べさせたのでしょう。

しかし 結果は 福栄義英氏の期待を→

大きく裏切る事に なってしまった。

(樋本)この事が 福栄義英氏の耳に入れば→

あなた 間違いなく 無一文で あの家を追い出されるはずです。

私にどうしろとおっしゃるの?

ご安心ください。

義英氏には 見せるつもりはありませんから。

樋本晃一は 鑑定結果を 義英氏に伝えない代わりに→

英則くんが手にするであろう 遺産のほとんどを→

自分に寄越すように迫った。

樋本は 稲尾さんから100億→

そして あなたから 200億近くの金を奪おうとした。

だから 300億と口にしたと。 探偵の風上にも置けない男です。

福栄晴子さん 樋本晃一を殺害したのは→

あなたですね?

執拗な脅しに 耐え切れなくなった あなたは→

樋本晃一の指定する場所に向かい そこで…。

ああー! 帰れー!

(稲尾)うわあー!

稲尾さんが逃げ去るのを 見届けたあと あなたは…。

(樋本)あ…。

(刺す音) うっ…!

冗談じゃないわ。 言いがかりはやめて。

お言葉ですが…。

凶器の包丁の この部分には 傷がついていました。

鑑定の結果 イエローゴールドという金が 付着していました。

その包丁を両手で握り 被害者を突き刺した際に→

あなたの指輪で ついた傷でしょう。

指輪を調べれば 動かぬ証拠となります。

(伊丹)失礼。 (咳払い)

福栄晴子さん。

樋本晃一さん殺害の件で お話を伺いたく。

ご同行願えますか?

さあ 行って…。 行きましょう。

ちょっと 待っていただけますか?

矢木さんの監禁を 手伝いましたね?

(スタンガンの音) うわっ…!

すべては 福栄家のためにした事です。

福栄家のため?

7年前 英雄様が突然 亡くなられ→

あのままでは 福栄の家は途絶えてしまう。

それだけは 何があっても 防がねばなりませんでした。

だからこそ あなたは晴子さんに→

相手は誰でもいいから 子供を作るように知恵を授けた。

福栄の家にお仕えし 守る事。

それが 私の人生の すべてでしたから…。

お願いします。

とりあえず ご同行願えますか?

さあ 行きましょう。

はあ…。 やっぱり こういう結末でしたか。

殺害の動機をただすには 英則くんの出生の秘密を→

明らかにしなければ なりませんでした。

義英氏は それだけは 避けてほしかったはずです。

まあ 杉下さんを巻き込んだ段階で 覚悟は出来てたんですけどね。

まあ おかげで→

探偵と刑事の違いが わかりましたよ。

おや 違いとは?

隠しておくべき真実を→

時には心に秘めておけるのが 探偵で→

隠しておけないのが 刑事なんですねえ。

なるほど。

じゃあ 杉下さん タケちゃん 私はこれで。

ああ 残念ですが→

あなたにも聴取を 受けてもらいますよ。

監禁を立証するには 矢木さんの証言も必要ですから。

何より あなた自身 住居侵入罪を犯しています。

ハハッ… 隠しておけない。

参ったなあ…。

すみませんねえ。 刑事は探偵と違って→

私情で動くわけには いかないものですから。

なるほど… フフフ。

養子? ええ。

福栄義英さんは 英則くんとの 養子縁組を決めたそうです。

そっか… 母親の晴子は 服役は免れませんからね。

養子って事は 遺産は? 今のままなら→

稲尾さんと英則くんのお二人が 相続する事になるでしょうねえ。

そりゃまた 手回し…。 ひょっとして 矢木さんが?

ええ。 彼が罪を犯してまで あの屋敷に忍び込んだのは→

僕たちが真実を暴くよりも前に→

事件の真相を義英氏に 伝えたかったのでしょうねえ。

その時に 養子の件を アドバイスしてたんだ…。

ええ。

見かけによらず 名探偵だったんですね。

あ そういえば 矢木さん 稲尾さんに→

福栄義英の息子だって 伝えたんでしょうか?

さあ? それはどうでしょうねえ。

お願い! 佳美を捜して~!

突然 家出てって→

連絡もまるでつかなく なっちゃったんだよ…。

いやあ いくら名探偵でも それは無理かなあ。

あ…! 矢木ちゃん→

佳美を好きになったって 言ってたよねえ?

一緒にいるんじゃないの? そんな事あるわけないでしょ。

あれは 稲尾ちゃんの愛を 確かめようと思ったから…。

やっぱり俺には 幸せなんて似合わないんだよ~!

何言ってんの 稲尾ちゃん!

ね? そのうち 絶対いい事あるから!

もう びっくりするぐらい いい事が。 うん!

少し早いようですが 今日はもう 帰るとしましょう。

はい。

あ よかったら 1杯飲みに行きません?

いいですねえ。 さて 何を飲みましょうかねえ。

(2人)ギムレット。

(2人の笑い)

たまには お先に。 お疲れさまでしたー。

(大木長十郎・小松真琴) お疲れさまです。

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