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(記者) 累計20万部突破 おめでとうございます
(枝松脛男) ありがとうございます
(記者) 大ヒットの実感はありますか? (脛男) あ いや ないです ないです
その… “本当に… 現実なのかな?”みたいな感じで
(脛男) はい… はい (記者) ハハ…
(記者) 反響も 大きかったんじゃないですか?
あ… そ… そうですね あの…
街 歩いてて声かけてもらう機会とかも 増えたんですけど――
“あ もうこれ 悪いことできないな” って思いました
(脛男と記者の笑い声)
いや しないですよ あの… しないんですけどっていう話で
フッ フッ フ…
(梅本卓磨) はいはい はいはい そこまで そこまで
はい! はい! ありがとうございました
水! 水 水! 原田君 水持ってきて 水!
(記者) じゃ 最後にお写真 下さい (梅本) 手短にね
(カメラマン) じゃあ こっち目線お願いします はい 目線お願いします
はい 笑って 笑って はい 目線笑って
(猫魔里菜) 多忙ですね 枝松さん
(片山美晴) まあ 本が売れてから テレビの取材とかも結構 入っててね
(里菜) すっかり有名人だ
(美晴) 来月まで スケジュールびっちりだって
(里菜) やっぱ 開き直るって大事なんですね
(美晴) まあ… 私は シンプルに損してるけどね
フッ
“まいったけ”って感じですか?
イジってるよね?
いやいや… イジってないです
まあ でも また変な不祥事とか 起こさないといいけど
ホント それだけが心配
(梅本) いや もうもうもういい? いい?
はい ありがとうございました はい
はい では次の記者の方 質問がある方は…
あ はい ではそちらのグラマラスな…
いえ あなたじゃなくて――
あなた
(記者) 何と言っても タイトルが印象的な本ですが――
本当にクラスメイトの女子 “全員”好きだったんですか?
ええ それはもう本当に全員 1人残らず
(記者) あ “1人残らず”…
ごめんなさい 何か1人残らずって気持ち悪いっすね
(記者) ああ いえいえ 全然全然 (脛男) えっと…
おしなべて ええ
おしなべて全員…
(女性配達員) 嘘です!
その人 嘘ついてます!
(脛男) あ… と や… え…
え?
(女性配達員)“クラスメイトの女子 全員好きだった”は嘘!
あ… の…
(女性配達員) 枝松さん お届け物です (脛男) はい
(脛男) どうも (女性配達員) 1000円になりますね
(脛男) はい
ああ!
配達の!
あれ? でも何でここに?
(女性配達員) 枝松君 私のこと覚えてない?
(脛男) え?
(女性配達員) 私 枝松君のクラスメイトだった…
田代さん?
♪~
~♪
(脛男) いや… は… は…
いやもう何か 全然 違うから気がつかなかったよ
(田代加奈) そうだよね (脛男) うん
(加奈) 私も最初は 全然 枝松君って気づかなくて
(加奈) むしろ…
(脛男) 手 脱毛しました?
いいと思います
って言われた時 “あ やばい人だ”って思って…
あったね ヘヘヘ…
(加奈) でも その時 “何か見覚えあるな”って思って――
よくよく名前見てみたら “枝松君だ!”って
(脛男) 何だ もう 言ってくれたらよかったのに
でも ほら
あの件があって何となく気まずいまま 卒業しちゃったから
(脛男) ああ… (加奈) 何か言うに言えなくてさ
(脛男) ああ~ うん…
(加奈) そのうち枝松君 盗作疑惑でどっか行っちゃうし
フフ…
ウフ… 帰ってきたと思ったら 今度は忙しくて なかなか家にいないし
置き配ばっかで なかなか会えなかったから
(脛男) ああ~
(美晴) あ… あの 先ほど おっしゃってた――
“クラスメイトの女子 全員好きだった” っていうのが嘘っていうのは…
“全員”は嘘です
(美晴) それは もしかして枝松さんが 誰かと もめていた…
(脛男) いやいやいや… それは絶対にない
本当にクラスメイトのみんな 大好きだったから…
だったら! 何で書いてくれなかったの?
(美晴・脛男) え?
私 まだ書いてもらってないんだけど
ハァ…
(美晴) 何だ そういう感じ?
(脛男) そうか 焦ったよ
やったな!
え… えっとね その…
いや 特に理由はないのよ その… ないんだけど…
(加奈)“けど”? (脛男) あ… その…
ほら ねぇ? だって あの話 下品じゃん
一応 下ネタじゃん
(加奈) わかった (脛男) あ… よかった
(脛男) わかってくれた ありがてえ
(美晴) 枝松さん (脛男) ん?
(脛男) それは何やってんの?
(加奈) 私 枝松君がネットで何注文してるか 同窓会のグループにリークする
(脛男) ちょっと待って 待って! ちょっと待って! 待ち…
それだけは やめて!
じゃあ 書いてくれる?
うーんと…
うん 書く
(美晴) 一体 何を注文してるんですか? (脛男) シッ
よかった ずっと載りたいと思ってたから
ああ そう?
(美晴) ああ でも下品というか そういう系の話なんですよね
(脛男) ああ… と…
当時 うちのクラスの男子の間で その…
はやってる… ね?
その… 遊びがあって フフ
ん~ こういう…
(美晴)“遊び”?
(脛男) あれは2学期のはじめ
授業で習った 「古今和歌集」の――
“古今”という言葉が…
(打つ音)
(脛男) 股間を強打した時の “コキン!”という擬音に聞こえることから…
(男子たちの歓声)
(脛男) 男子の間で 金的ゲームがはやったんです
ルールは至ってシンプル
一対一のタイマンで 相手より先に金的を決めた方の勝ち
(麻生達也) 赤コーナー 三宅健太郎~!
(男子たちの歓声)
(三宅健太郎) シュシュッ シュシュッ シュッ
青コーナー
小竹 亮~!
(歓声)
(脛男) 蹴りは反則 使うのは己の拳のみ
(麻生) レディー
ファイッ!
(声援)
(三宅) おおーっ!
ハッ
(小竹 亮) もらったー!
(当たる音) (脛男) そして金的を当てた者は――
こう叫ぶ
(小竹) 古今和歌集
(麻生) 一本! 勝者 小竹 亮~!
(男子たち) うおおおおお!
(美晴) ハハハ ハ… 確かに下品
ホント 男子ってサイテー
てか マジ迷惑なんだけど
(麻生) よし! 次は俺だ
(男子たちの歓声)
麻生! 麻生!
この麻生 容赦せん!
(男子) いけ いけ!
(加奈) どっちがいいの? (女子) こっちにする?
(ぶつかる音) (河野美穂) きゃっ…!
(女子たち) 大丈夫?
大丈夫?
(男子) ほ… ほーい! ほーい
(橘 文香) ちょっとアンタたち!
いい加減にし…
(風を切る音)
(脛男) そんな時に現れたのが 田代加奈さん
小柄だけど負けん気の強い性格で…
(加奈) ここは 私が
(麻生) 何だ? チビ お前も交ざりてぇのかよ
(加奈) さっきっから “古今”“古今”“古今”“古今”
うるせえんだよっ!
(突く音)
(突く音)
(突く音)
(加奈) エイサーッ
押忍!
(拍手)
次 うるさくしたら――
ただじゃ置かねえからぁ!
ああっ?
(枝松スネオ) すげぇ…
(脛男) その美しい正拳突きに ただただ見ほれてしまった僕は…
押忍!
(脛男) 田代さんに ある想いを抱いてしまったんです
それは…
殴られたい…
(高城優子) は? (スネオ) ん?
ああ… ああ いや 何でもない 何でもない
(脛男) 幼い頃から 親父に殴られて育ってきた僕は――
そろそろ親父に殴られることに 飽きていて
(脛男) そんな時に見た 田代さんの正拳突きが――
あまりに美しかったので…
あ… ああ…
(美晴)“マゾの血が騒いだ”と…
(脛男) まあ… はい
あの時の枝松君 結構しつこかったよね
(脛男) あ… そうだっけ
(美晴) え… 今度は何やらかしたんですか?
(脛男) ああ いやあ その…
田代さんの正拳突きが 食らいたくって――
ちょっかい出して 怒らせてみようと思って ウフ…
(美晴) キモッ
(スネオ) 田代さん
引っかかった~
ぐっ!
ちょっと やめてよ~
あ… うん
えい~ トイレで手洗った水でした~
へいっ
ねぇ 何なの? もぉ
ごめん…
(スネオ) デュクシ! デュクシ!
ん~ デュクシ! デュクシ!
ああっ
あ~ざっす!
(加奈) ねぇ やめてってば
くっ!
返して
(三宅) 不意打ちで 勝った気になってんじゃねぇよ
か… 空手やってっからって 調子乗ってんじゃねぇぞ
(麻生) そうだよ チ… チビ
(三宅) ああ
押忍!
(殴る音)
(加奈) バーカ
どうしたらいいんだ? しぶとい…
んん… んー
(脛男) そこで僕は――
アプローチを変えてみました
田代さん ごめん
こんなとこに呼び出して
ううん
全然いいんだけど 話って何?
あ… うん
何か最近さ――
田代さんに嫌なことっていうか――
イタズラ? してたじゃん 僕
ああ
うん
実はあれ わざとやってたっていうか…
わざと?
うん ごめん
(加奈) うん
でも… 何で?
(スネオ) 田代さん この前さ――
三宅君たちに正拳突き? してたじゃん
あれがホントにカッコよくて
何ていうんだろ その…
僕も田代さんに…
(スネオ) 殴られたくなったんだよね (加奈) 私も枝松君…
え?
殴られたい?
あっ あ… ほら あの 僕 カラダ鍛えてるから
だから その…
空手やってる田代さんの 正拳突きを受けてみたくて
ダメ… かな
(加奈) わかった
いいよ
ホントに?
でも 本気で殴るけど いいの?
むしろ本気でお願いします
空手なめてると痛い目みるよ
痛い目 みたいから大丈夫
じゃあ… いくよ
うん…
フゥー
(鼓動)
(脛男)“ああ やっと夢がかなう”
僕は静かに目を閉じ その時を待ちました
(加奈の泣き声)
え? あ…
(泣き声)
だ… だ… だ… だい… 大丈夫?
殴りたく… ない…
(泣き声)
枝松君のこと… 殴りたくないよ
そ… そっか
あ… そ… そうだよね
あの… もう殴らなくていいから
あの… ホント… 変なこと頼んじゃって――
ホ… ホントごめん!
(加奈) こっちこそ
殴ってあげられなくて ごめんね
(泣き声)
(脛男) この日を境に 僕と田代さんは――
何となく距離を置くようになって…
(加奈の泣き声)
(スネオ) おはよう…
(加奈) おはよう!
(脛男) 結局 そのまま卒業してしまったんです
でも そのあと友達から 田代さんが僕のことを…
(加奈) あ そこまでは 書かなくていいから
(脛男) あ… そう
何か ごめん
(美晴) え? いや どういう空気?
(脛男) で…
どう思います? 今の話
(美晴) いや “どう思います?”って言われても
(脛男) だから その… 大丈夫ですかね
その… “金的”って その… コンプラ的~に
(加奈) でも もしあれだったら――
“金的”の部分を他の何かに変更しても 成立すると思いますし
(加奈) それに… (美晴) ああ あの…
(美晴) ちょっと待ってください
そもそも どうして そんなに書いてほしいんですか?
(脛男) ああ 確かに あんまり 普通は載りたくないですよね
その… あ まあ僕が言うのも何ですけど
(脛男) お?
(加奈) 実は私 配達員の仕事は副業で――
本業はアイドルやってるんです
(美晴・脛男) アイドル?
空手アイドル――
“瓦割り隊”っていう グループなんですけど
“瓦割り隊”?
でも なかなか厳しくて――
年齢的にも 1期生は私だけになっちゃって
(脛男) ん?
(美晴) ああ ホントだ 何期も続いてるわ
(加奈) だから 枝松君の力を借りて――
ここで一発 売れてやろうかなって
ああ そういうことね
ああ…
うん わかった 僕 書くよ
ただ その…
“金的”の部分をどうするか 1回 考えないとだよね
いや っていうか――
枝松さんは枝松さんで 何をそこまで気にしてるんですか?
(脛男) え? (美晴) いや…
一貫して ゲロの話だったり 下半身丸出しで走り回る話 書いといて――
今さらコンプラ気にしても 仕方ないでしょ
そうなんですけど…
下品なあの子も ダメなその子も 全部ひっくるめて愛するからこそ――
枝松さんの文章は 面白いんじゃないですか
すいませんでした!
片山さんの言うとおりだ
やんないんだ
(脛男) 何か本が売れて――
守りの姿勢に入ってました
書くよ
僕――
書くよ!
田代さんの話
(加奈) 本当に? (脛男) うん
(加奈) ありがとう
その代わり あの…
1個だけ お願いあるんだけど
♪~
本気で殴るけど いい?
うん
むしろ本気でお願いします
わかった
フゥー
~♪
じゃあ いくよ
うん
♪~
(突く音)
(脛男)
ようやく念願がかないました>
僕は一生 忘れません>
(加奈) じゃあ よろしくね
(脛男)
(脛男) よっ
(脛男)
(脛男)
やっぱり全員好きでしたー!
うおおおおおー!
~♪
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