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Original subtitles

・~

・~

・~

・~

・~

(ナレーター) 4日間を・

志摩半島のホテルで 一家そろって過ごすのが・

万俵家の長年の習わしであった>

(相子)じゃ おやすみあそばせ

(寧子)おやすみあそばせ

(ドアが閉まる音) (エレベーターの到着音)

(ノック)

(ノック)

(ドアが閉まる音)

(二子)お兄様 お見合いすることに なりましたの?

(銀平)フフッ…

(大介)銀平は これを読んだのか?

いいえ あなたと私だけ

万樹子さんのご両親も ご存じないことですわ

もっとも 銀平さんが読んだところで・

いつものように 皮肉に笑うだけでしょうけど

見合いは早いほうがいいな

急ぎますの?

うん

あなたが 考えていらっしゃることを・

当ててみましょうか

今度の金融再編成に 阪神銀行が どう対処していくか

こういうとき 大阪重工の 社長さんを身内に持っていると・

いろいろと便利ですものね

それに 安田社長は 関西の財界に 信用がおありになるし・

阪神銀行の 筆頭株主でもありますものね

安田様にしてみれば・

融資銀行は 一行でも多いほうが いいでしょうし

あなたは 阪神銀行のオーナー頭取ですもの

相子は 男に生まれてくればよかったな

ウン! あら

もし そうだとすれば・

私たちの巡り会いは ありませんでしたことよ

それでも およろしくって?

さあ おいで

お見合いの日取りですけど…

再来週の日曜日はいかが?

あなたのご予定はありませんし 安田様も・

ご都合が およろしいようですから (スイッチを押す音)

♪(ステレオの音楽) いいだろう 相子に任せたよ

♪~

相子は 閨閥作りの話になると いつも燃えるようだね

ウン… 関西の万俵財閥を… ウン…

日本の万俵財閥にまで 押し上げるのが…

あなたの夢ですもの フッ…

違う? ウン

(鼓の音)

(鼓の音)

(早苗)でも 来年からは もう ここへは来たくありませんわ

(鉄平)どうして?

子供たちが 相子さんのことを聞いたら・

何て返事をしたらいいの?

相子さんは 妻以外の女 所詮は おめかけでしょう?

万俵家が 妻しょう同居の生活なんて・

あなた方は よく それで 平気でいらっしゃいますわね

毎日 妻の座る位置に 2人の女が 交代に座る必要などありませんわ

お義母様は なぜ いつも毅然として・

妻の位置に 座ってらっしゃらないのかしら

君も知ってるじゃないか

母は 戦前の京都の公家華族から 老女付きで嫁いできて・

うちのことは 何ひとつできない人だ

それが 戦後 昔のような 執事や老女がいなくなって・

女中たちだけになったとき・

高須相子という 才色兼備で・

アメリカへも留学した経歴を持つ あの女が・

家庭教師として入ってきたんだ

最初のうちは 子供たちの 教育だけであったのが・

次第に 家内全体を差配するようになって

いつの間にか 僕たちが 父に頼み事をするときでさえ・

あの女を通してしか 言えないような雰囲気が・

出来上がってしまったんだ

私の父の大川一郎も おめかけを 持っておりますでしょう

でも 本宅へ入れたりなど いたしませんわ

私が お義母様なら とっくに自殺をしてるわ

お母さんは自殺しようとしたんだ 2度もね

万俵家の恥だから 今まで 君にも話さなかったが

・~

・~

・~

・~

・~

阪神特殊鋼 万俵不動産 万俵倉庫・

万俵信用金庫から成り・

阪神地方に 絶対的な地位を占めていた>

(行員) あけまして おめでとうございます

おめでとう (行員たち)おめでとうございます

預金順位 全国第10位・

預金額8000億 支店数130店 行員数9000名>

そのオーナー頭取である>

おめでとう

(秘書)おめでとうございます うん

(ライターのノック音)

(速水)本日のご予定は 次のように お願いいたします

9時半から年賀式

10時から12時まで 年賀客の挨拶受け

正午から1時まで役員会食

1時半から2時まで 商工会議所 新年名刺交換会

え~ 2時半から3時半まで・

関西銀行協会の 年賀会でございます

よし 分かった

姫路の播州平野の いち地方地主にすぎなかったが・

12代目の龍介が 野心に燃えて 神戸に進出し・

13代目の敬介が・

資本力に物を言わせて 今日の基礎を作り上げ・

14代目当主の大介が・

冷徹な銀行家としての 経営手腕を発揮して・

現在の万俵財閥を 不動なものにしたのである>

金融界も いよいよ 今年から・

金融再編成の機運が 高まりつつあり・

銀行自体の体質強化も 迫られている

こうした要請に対処するには 貸金の内容をよくしたり・

経営の効率を高めていくような 質の向上は もちろんであるが

特に 今年の最大のスローガンを 量の拡大に置き・

預金量の飛躍的な拡大を 指向したい

そこで 新年に当たり 諸君にお願いしたいのは・

現在の預金量8000億円を 今年中に1兆円に乗せるよう・

必ず 達成を期して 頑張ってもらいたい

(大平)万俵さん! お願いです

もういっぺんだけ 私にやらせてください

死んだつもりになってやります このとおりや

何や? その態度は

よし ほんなら 頭取に会わせてもらいまひょう

きっと みんな 頭取の指図や

た… 確かに うちは 3億の赤字を抱えております

けど 「富士ストアと 一緒になれ」とは何事や

あれは 万俵家の会社やおまへんか!

人を どうにもならんとこまで 追い込んどいて

そして パクッと 乗っ取ろうというんですか!

ええ服 着て 上品な顔して

す… することは 泥棒と同じやおまへんか!

大平さん あなたも 長い間 ご苦労続きだったでしょう

しばらく ご静養なさってはいかがですか?

な… 何やて・ わしが 命懸けでやってきたスーパー・

もぎ取ろうっちゅうのか くそ! あんたは鬼じゃ!

(行員)お客さん!

(大平)泥棒や! くそ!

(行員)お気持ちは分かります (大平)離せ!

この くそ! ウーン 何だ!

万俵財閥の中核を担う企業である>

灘浜臨海工業地帯に・

25万坪の敷地を有し・

製鋼工場 圧延工場 製管工場などのほかに・

専用の岸壁を持ち・

資本金60億 従業員2800名・

業界第一の成績を収めている>

温度は どうだ? (金田)はい

1600度に上がっております 分析値を見せてくれ

カッパーが気になっていたが これならいいだろう

しかし シリコン 0.18%は少ない

0.25まで上げることだ はい

(長谷川)専務! 今 帝国製鉄から連絡があって・

「今日も銑鉄を送れない」と 言ってきました!

なに? またか 専務 今日で・

もう5日もストップですよ これじゃ 仕事になりません

帝国製鉄のヤツら・

「鉄は国家なり」なんて 思い上がってやがるんだよ

(石川)鉄平君 向こうへ行っても ケンカだけはしないでくれよ

叔父さん そんな弱気なことを 言ってるから・

いつまでたっても ナメられるんですよ

しかし 我々は 帝国製鉄に頼んで・

銑鉄を 分けてもらってるんだからね

それを忘れないように

分かってます

(和島)君 阪神特殊鋼さんは・

銑鉄のことで だいぶ お困りのご様子だから・

なんとか考えてさし上げたら どうかね

(部長)ところが 例の溶鉱炉が 腹下ししてるもんですから・

私どもとしても どうしようもないのでしてねえ

しかし おたくは 大型高炉が 3基もあるんですから・

1基が不調になったといって・

うちへ 全然 送れんということは ありえませんでしょう

日産1万5000トンのうち たった500トンぐらいは・

都合をつけて 送っていただきたいもんですな

「たったの500トン」などと 言ってもらっては困りますよ

うちは おたくとは違って 16工場が操業していて・

1万2000人の作業員が 口を開けて待ってるんです

たとえ 高炉の不調が うちの責任とはいえ・

よそ様の心配まで いたしかねますね

じゃあ あなたは うちとの契約を 一方的に破るというわけですか!

鉄平君 (和島)いや もし・

おたくの生産計画を 寸分もくるわせたくないと・

おっしゃるんなら

前にもおっしゃっておられた 高炉建設を・

実現されたらいかがですか?

おたくは ほかと違って・

阪神銀行が 後ろについてるうえに・

あなた自身 マサチューセッツ工科大学に・

留学された 優秀な技術者なんですからな

では 私のほうも 小なりとはいえ・

自前で溶高炉を持つべく 大いに努力いたしますから・

この度の契約だけは 守っていただきたい

銑鉄を生産する炉であり・

銑鉄は 全ての鉄鋼の原料である>

高炉を有する企業は 数社でしかない>

中型の高炉1基で250億という・

膨大な建設費を 必要とするうえに・

いったん 火を入れたら 365日 稼働しなければならないという・

高炉の特殊性に 企業がおびえるからである>

鉄を始めてからの夢であった>

・~

(相子)おかえりあそばせ (寧子)おかえりあそばせ

(相子)アインシュ ほら お帰りよ

お手

(笑い声)

・~

・~

(運転手)おかえりなさいませ よっ!

ただいま! ・(太郎)おかえりなさい

・(京子)おかえりなさい! おっ! 勉強してるか?

よせ! ハハハッ…

おい 太郎 一緒に風呂へ入ろうか (太郎)うん 入ろう!

(京子)私も! よし よし よし

おかえりなさい ああ ただいま

今日は早かったんですね うん お父さんと話があるんだ

お義父様のお家へ 行くんでしたら・

これ 二子さんに渡してあげて よう 来たな

相子さんに見つかると うるさいから 気をつけてね

パパ! 早く お風呂 入ろうよ!

今日はスペイン料理ですのね (相子)ええ オードブルは・

ガンバス・エスパニョールに してみましたの

(寧子)アア… おいしそう

(銀平)お父さん お食事中 すみませんが・

仲間と約束がありますので 失礼させていただきます

ああ 行っといで あら 銀平さん お出かけ?

あなたに お話がありましたのに

お見合いのことなら あなたに お任せしたよ

鉄平兄さんも 一子姉さんも・

万俵家の閨閥作りは みんな あなたの演出だからね

そう言っていただくと光栄ですわ

でも お父様と私とで決めてしまって・

それで 本当におよろしいこと? (銀平)どうぞ

銀平さん 少し 何か食べていかれたら?

どうせ お酒でしょう?

お前に男の世界は分からん

銀平も もう 子供じゃないんだから

銀平 飲んだら 車は置いてくることだ

いいね? ええ

お母さん 大丈夫ですよ

じゃ…

(銀平)やあ いらっしゃい 何だ 出かけるのか?

ええ

お父さん お食事中 失礼いたします

今日 アメリカン・ベアリング社から 返事がまいりまして・

販売契約は 値下げをせずに・

20%増量の長期契約を 更新しました

それに 日本では初めてなんですが アッセルミルの図面購入を・

ブローノックス社の技術主任に 食い下がって OKを取りました

これが契約書です

今夜 お時間がございましたら・

高炉建設のことで ご相談したいんですが

高炉建設計画のことは 石川社長から電話で報告があった

250億といえば 資本金の4倍強だ

石川社長が どのように報告したか 知りませんが・

私なりの計画がありますので お父さんに是非

今夜は忙しい

ビジネスは 銀行で聞く

そうですか では 明日 銀行へお伺いします

鉄平さん お食事 まだなんでしょう?

すぐに支度させますから ご一緒にいかが?

お母さん ありがとう でも 子供たちが待ってますから

二子 頼まれた物 取りにおいで

ありがとう

では お父さん お願いいたします

(ドアの開閉音)

ごめんなさい

お行儀の悪いこと (ドアの開閉音)

(二子)鉄平お兄様!

意地悪

ちょうだい うん? 何だ?

(笑い声)

それ! ありがとう

そのうち 四々彦君を日本へ呼び戻すからな

いつ?

俺の夢が実現して 高炉を建てるときだ

おい 早く戻れ 家庭教師殿に叱られるぞ

(笑い声) (ドアが閉まる音)

(相子)うん?

先に 寧子のほうに ついでおあげ

さあ

(寧子)あっ 私は もう…

たまには およろしいじゃございません?

私もいただきますわ

フッ… 私 もう ポーッとなってしまって

(相子)フフッ…

10時半に 部屋においで

でも 今夜は 寧子様の夜ですわ

・(ノック)

お入り

およろしゅうございますか? うん

鉄平は ますます じいさん似になってきたな

そう思わないか?

ええ…

歩き方から しゃべり方まで じいさんに そっくりだ

猟の好きなとこまで似てるね

アッ… アッ…

アアッ!

10時半に来るようにって おっしゃったから・

まいりましたのよ

じゃあ 最初から そのおつもりで 私にブランデーを…

フッ…

あなた! あなたまでが そんな… 私はイヤです

アアッ! アッ… イヤ おい

久しぶりじゃないか 3人は アア… イヤ…

(笑い声) イヤです

イヤ… 離して

(泣き声)

・~

(伊東)改まって ご両家様の ご紹介をいたすまでものう・

ご当人様方は パーティーのお席などで・

お顔を 合わせておられますよってに・

お初のお方様だけ ご紹介させていただきます

あの… 安田社長様の お隣におられますのが・

奥様の佳江様

万俵頭取様の お隣におられますのが・

奥様の寧子様

あの… 銀平様の お隣におられますのが

え~ 万俵様の家内を取りしきられ・

お子様方の教育も なされてこられました・

高須相子様でございます

不思議なご縁ですね

まさか 安田さんと 息子の見合いの席で並ぶとは

(安田)いや まったくですな

(笑い声)

先日 鉄鋼協会で・

ご長男の鉄平君に 久しぶりで お会いしましたが・

血筋は争えないもんですね

鉄平君の しぐさから しゃべり方まで・

先代の敬介社長に生き写しなんで 驚きましたよ

いや 皆さん そう おっしゃってくださいます

あれは 私よりは じいさん似のようです

(笑い声)

鉄平君は 「今年こそ 阪神特殊鋼も・

高炉を建てるんだ」と言って 張り切っていましたよ

鉄平君といい 銀平君といい・

万俵さんは 子宝に恵まれて 幸せですよ ハハハハッ…

ほんまに ええボンボンですよ

(笑い声)

高炉建設を巡って 度々 役員会が開かれていた>

毎日 こんな会議ばかり繰り返しても・

しかたないじゃないですか

これまで 皆さんが発言された 懸念を全て考えたうえで・

なお 断行しようというのが 私の結論です

今日も 帝国製鉄からの銑鉄は ストップしてるんですよ

問題は 250億という資金調達が 可能かどうかという点ですが・

これは 私が全責任を持ちます

何度も申し上げたように・

メインバンクの阪神銀行に 融資を 依頼するのはもちろんですが

サブバンクの大同銀行に え~ この度・

日銀から 新頭取として 就任される三雲さんは・

私が マサチューセッツに 留学していたころ・

日銀のニューヨーク駐在参事を しておられた関係で・

親しく おつきあいしていただきました

三雲さんは 特に・

公共的な産業の育成に 関心が深い人ですから・

強く協力方を懇請します

(石川)専務が これほど 言うんだから どうかね? みんな

「資金のメドがついたら」という 条件付きで

溶鉱炉が出来れば 計り知れない メリットもあることだし

(一之瀬)私は賛成です 是非とも 高炉を造っていただきたい

私も賛成です

お2人はいかがですか?

(川畑)私は 社長と専務が・

それほどまでに 熱意を示されるのでしたら

銭高常務 あなたは?

(銭高)阪神銀行から 派遣されてる私としましては・

結論を出す前に一度・

メインバンクの 万俵頭取のご意見を

高炉を造るか造らないかの結論は メインバンクの意向ではなくて・

阪神特殊鋼の役員会で 決めるんです

常務! 私は あなたに聞いてるんだ

♪(会場のBGM)

♪~

(受付)どうぞ ご署名を

(男性) 新頭取 おめでとうございます

(三雲)お忙しい中を ありがとうございます

(男性)おめでとうございます

ご就任 おめでとうございます ありがとうございます

今後とも ご指導をお願いいたします

三雲さんには 鉄平が アメリカで・

いろいろと お世話になりながら・

ご挨拶にも上がらず 失礼いたしております

いやいや 鉄平君には・

私や娘のほうこそ お世話になりまして

いや… では どうも

(三雲)総裁 ありがとうございます

(松平) おめでとう いや おめでとう

(白河)ありがとうございます

都市銀行 第8位の 大同銀行 新頭取に就任したのは・

「金融界の鳳凰」といわれる・

松平総裁の 政治力によるものであった>

(綿貫)日銀から天下った 絹のハンカチーフが・

いつまでもつか楽しみだな

(小島) 専務 日銀のライバルが来ましたよ

絶えず激烈を極め・

どこかの銀行で 日銀出身の頭取が失敗すると・

すぐ 大蔵出身の官僚が その後釜を狙って・

しれつな闘いを繰り広げていた>

(美馬)お義父さん

長女の婿の 美馬 中です (男性)はあ

大蔵省の 主計局次長をやっております

はあ… 万俵頭取には いつも お世話になっております

(美馬)よろしく

よろしく お願いします (美馬)ちょっと失礼

お義父さん ちょっと うん?

失礼 (男性)失礼します

いい具合に 大臣の アポイントメント 取れましたよ

うん 国会が終わってから 7時か8時に

例の所で ありがとう

しかし もう少し はっきりした 時間は分からんかね?

大臣は お忙しい方ですからね

アポイントメントが 取れただけでも大変なことですよ

おめでとうございます ありがとう 鉄平君

忙しい中を よく来てくれましたね

三雲さん アメリカ時代からの僕の夢が・

ようやく 実現しそうです

そうだってね 高炉計画の融資申込書を見たよ

協力は惜しまないから 頑張るんだね

ありがとうございます

あっ 鉄平君 はあ?

今夜 帰り 家へ来てくれるね?

志保が 楽しみにして待っていたから

はあ お願いもありますし お邪魔させていただきます

どうも (白河)わざわざ どうも

(笑い声)

♪~

お義父さん どうも (大川)よう 来たな

一度 子供を連れて お邪魔すると・

お義母さんに お約束してあるんですが・

このところ忙しくて 申し訳ありません

(大川) いやあ ばあさん 怒っとったぞ

「孫の顔を見るだけが 楽しみなのに」って ええ?

(笑い声)

ああっ 田淵君 こいつは わしの娘婿なんじゃが

若造のくせに 今 帝国製鉄の向こうを張って・

高炉をぶっ建てようとしとるんだ

まあ 日本の将来のために・

何かあったら ひとつ 力になってやってくれ 頼む

(田淵)うん

(小春)じゃ 大臣 後ほどね (芸者)小春ちゃん お安くないわよ

(芸者)ホント ホント (芥川)さあさあ さあ 行こうか

久しぶりなんですもの ホントに (芥川)はい 行こう 行こう

(芥川)お話が お済みになりましたら お手を

ところで 大臣

近頃 金融再編成の議論が 高まっていて・

金融制度調査会の特別委員会で 答申案が練られていますが・

大臣は この問題に対して どのような?

(永田)さあねえ

しかし 日本には 必要以上に 銀行の数が多すぎますからね

しかし 大臣 これまでの 合併のやり方は 片っ端から・

小は大に食われてしまえという やり方ですね

そうなりますと さしずめ・

当行のような 資金量の低い銀行では・

巨大資本の上位4行に・

食われてしまえということに なりそうですね

そういうやり方では 今の金融再編成は・

上位4行と大蔵省による 一種の策謀と言われても・

しかたが ないんじゃないでしょうか

いや 策謀と取るか 日本経済の進出と解釈するか

まあ 立場の相違によって さまざまだね

まあ 何しろ 銀行間の合併は 一般企業界の合併と違って こう・

いろいろ 難しい制約がありますからね

私も そう簡単に 考えてるつもりはないんですよ

そうしますと 銀行の合併は・

必ずしも 規模の問題だけで 決まるというものではない

そういうわけですね

万俵さんも なかなか鋭いですなあ

銀行の合併だけは・

デスクプランどおりには いかんもんでしてねえ

デスクプランとおっしゃると・

大臣の胸の内には 既に・

幾とおりかの青写真が おありになる

そういうことですね?

ところで おたくの預金順位は 今 何位でしたかな?

10位です

では 大臣 その銀行の 業務しだいによっては・

小が大を食う場合もありうると 考えてよろしいわけですね

いかがでしょう?

そういうことも ありうるかもしれませんねえ

しかし それには せめて 預金順位が・

シングルになっていないとねえ

預金順位がシングル

ゴルフでも シングルになるのは なかなか難しいもんですな

(笑い声)

肝心の資金調達なんですが

250億のうち50億は 当社の自己資金で賄えますが・

あとの200億は メインバンクの阪神銀行に40%・

サブバンクの大同銀行さんに 30% お願いしたいんですが

…で お父さんの阪神銀行の融資は いつ 正式に決まるんですか?

近く 融資会議を開いて 決定してくれるはずです

残りの30%は 長期開発銀行 信託銀行 信用金庫さんに・

それぞれ お願いしてあります

そうですか いや 当行は・

預金量こそ 都市銀行中 第8位で 店舗の数も多いんですが

まあ 正直なところ 規模のわりには・

これといった優良な融資先に 恵まれていませんのでね

新頭取としての私の仕事は・

ひとつでも 優秀な取引先を獲得して・

当行の内部を 充実させることだと思っています

今 鉄平君の話を聞いていて・

特殊鋼という 日本の基幹産業の未来と・

鉄平君自身の情熱には 大いに動かされました

融資に関しては もちろん・

審査部の 慎重な検討を待たなければ・

ご返事はできませんが

ありがとうございます

ただいまの頭取のお言葉で 勇気が湧いてまいりました

(志保)お父様 (三雲)うん

鉄平君 ビジネスの話は これで終わりにして 飲みましょう

あっ いただきます あっ 私がいたします

ああっ すいません

じゃ 早速 あっ どうも

いよいよ 鉄平さんの夢が実現しますのね

はあ… 志保さんも ご一緒にいかがですか?

どうも ありがとう

でも 私 まだ 体が はっきりしないもんですから・

これで乾杯させていただきます

それじゃ 情熱居士の前途を祝って

純情居士に感謝して

乾杯 乾杯 どうも

奥様や お子様 お元気ですか?

えっ? ええ にぎやかにやってます

一度 遊びにいらしてください

神戸の街を うちじゅうでご案内いたします

ありがとうございます

早くよくなって アメリカのときのように・

わがままを言って 鉄平さんを 困らせてあげたいんですけど

そのうち よくなるよ

よく 鉄平君に叱られるんだ

志保を いつまでも お嫁にやらずに・

そばへ置いておくのは 親のエゴイズムだってね

そうですよ 志保さんを愛した男は まず・

三雲さんという強力なライバルと 戦わねばならない

そして 敗れ去っていく

ハハハッ… 僕のようにね

まあ 奥様に言いつけましてよ

(三雲)ああっ… だいぶ 分が 悪くなってきたね 私は ハハッ…

お父様 (三雲)うん

鉄平さん 今夜は 泊まっていただけるんでしょう?

はっ? 志保

ムリに お引き止めしちゃいけないよ

鉄平君は お父さんに ご用がおありなんだから

アア… ごめんなさい

でも ニューヨークでは いつも お泊まりになって・

夜明けまでブリッジしましたのに

泊めてください

どうせ 父は 僕が行っても あまり喜びませんから

・~

僕の顔つきや性格が・

亡くなった祖父に似ているのが 気に入らんようです

父は 僕を憎んでるんでしょう

いや そんなことは 世間には よくあることですよ

現に この志保だって・

亡くなった母親に そっくりですからね

フッ… 珍しく お酔いになりましたのね

せっかくの楽しい夜に・

つまらんことを言って すいませんでした

孫たちと約束した ドイツ製の電気機関車だ

あした 起きたら 渡しておやり

(一子)どうも ありがとう きっと喜びますわ

中君 なかなか忙しいんだな

ええ 宴会続きで

お父様からも 少し言ってやってください

たまには 子供たちと一緒に お食事をするように

しかし 中君くらいの高級官僚になれば・

夜のお座敷がかからんようじゃ ダメだよ

私 お父様を恨んでいますわ

そりゃ お父様にとって・

美馬は 有能な 情報網かもしれませんけど・

夫としては落第ですわ

あの人は 血の通っていない 冷血動物ですもの

バカなことを言うんじゃない 2人も子供があるのに

(玄関のチャイム)

閨閥結婚は惨めだわ

(玄関のチャイム)

(ドアが閉まる音)

お義父さんが来てくださると 分かってれば・

宴会の席を抜けてきたんですがね おかえり

どうしても 君に 頼んでおきたいことができてね

今夜の 大臣とのお話 いかがでした?

うん…

大臣は やっぱり 本腰で 銀行合併を考えてるようだな

そりゃあ そうですよ

大臣の任期中に ひとつでも 銀行の合併を成功させれば・

大変な点数ですからね

中君 阪神銀行が… (ドアの開閉音)

どうしても生き延びるためには・

君の力で 是非とも 手に入れてほしいものがある

(事務員)おはようございます

田中君

(田中)次長! (美馬)いや いいんだよ

どうだい? 忙しいかい?

はあ…

(ため息)

(美馬)ひとつ いこう (田中)はあ どうも

(美馬)最近は どこへ 検査へ行ってるんだい?

名古屋の中京銀行で 目下 その講評を整理中なんですが

このごろは どこの銀行も・

合併に神経質に なっているんじゃないのかね

(田中)そりゃあ もう

ところで 君は 今年 いくつになったんだっけ?

年ですか?

うかうかしてるうちに49で 来年は50歳です

そうか…

じゃ そろそろ 退官後の行き先を 考えなくちゃいけないね

ええ しかし 美馬さんなどと違って・

私どものような 私大出のノンキャリでは・

これという 行く先の当てもありませんし

まあ それに 子供たちは 大学へ入る年頃ですので・

少しでもマシな所をと 気ばっかり焦ってますよ

いや 実はね 君も知ってる・

うちの親父の阪神銀行の系列の 信用金庫に・

常務クラスの しっかりした人物が いなくて弱ってるんだ

誰か人材はいないかと 頼まれてるんだがね

万俵頭取でしたら 私も検査のときに・

お目にかかって 存じ上げております

いや この親父がね 都市銀行の 6位以降から9位以降まで・

つまり 大同 中京 第三 平和 この4行の経営内容の実態を・

詳しく知りたがってるんだがね (田中)次長…

ところが 僕は 今 銀行局を離れてるんで・

なかなか 詳しい情報が 分からなくて弱ってる

どうだろう? 君の手で ひとつ

し… しかし あれは…

詳しい検査報告のコピーは・

ご承知のように マル秘書類ですから あの…

局長の手元に保管されていまして 外部に持ち出すことは…

そりゃ 君の立場として困るのは よく分かるよ

下手をすると クビに関わることだからね

君の故郷は 確か 加古川だったね (田中)はあ

あそこにも 親父の支店がある

常務のポストを用意させよう

グッとやりたまえ

どうかね?

2~3日 余裕をください

なんとか 手に入れておきます

そりゃ ありがたい

これ (田中)いえいえ

もう そんな お心遣いは… (美馬)いいじゃないか

いえいえ そ… そんな… (美馬)取っておきたまえ

調査費だよ 親父からの

預金順位 第9位の・

平和銀行を追い抜くために・

全国支店長会議を招集し・

1兆円達成のスローガンを掲げて 預金獲得競争にハッパをかけた>

永田大蔵大臣が彼に約束した・

小が大を食うための条件を 満たすためのものであった>

(岡村)どうぞ つまらん物ですけど

(角田)だいぶ 各方面から・

預金のお願いに まいってるようでございますね

まもなく おたくには 7500万 下りるわけでございますから

(中川)ほな まあ 遠慮なあに もろうておきまっさ

(角田)はっ

でも 田んぼを取られるとなりますと・

いろいろと大変でございますね

これから どういうふうに (中川)さあ それや

五和銀行や大友銀行は 「アパートを建てたら?」とか・

「替え地を見つけてやる」たら 言うてくれてるけど・

何せ 百姓一筋に来た男やけん 皆目 見当がつかんねや

はあ… しかし 中川さん

アパートは 皆さん お建てになりますし

それに 替え地といっても この辺の土地は・

買収の翌日から 2倍 3倍の値上がりですから・

実際問題としましてはですねえ

ほな どないしたらええねん? (角田)はあ

まあ じっくりと お子様の将来を 見極めてでございますね

ひとまず 銀行預金をなさって・

折を見て 山林や農地をお買いになるのが・

いちばん 手堅い方法でございますよ

当行は 系列に 万俵不動産を 持っておりますので・

必ずや 有利な物件を 探させていただけると思いますが

なるほどな

まあ 考えておきまっさ

はあ じゃ ひとつ よろしく お願いいたします

(中川)ああ (中川の娘)お父ちゃん お茶や

…んな物は要らん もう帰るとこや

あっ 大友銀行さん (行員)阪神さん

どうです? だいぶ取れましたか?

いやあ もう さっぱりですわ

(行員)まあ あと僅かなことやし お互い せいぜい頑張ることですな

こら あかん あかん!

そんな植え方やったら 苗が みんな 寝ちまうやないかい

(角田)どうも すいませんです

女子行員たちは 私と違って 農家出じゃないもんですから

なんぼ 銀行の人に手伝うてもうたかて・

しっかり働いてもらわなんだら かえって迷惑や!

ホントに どうも 植え付けの悪い所は・

あとで 私が直しますから

おい 君 そ… そこん所ね

アッ! (行員)アアッ! 支店長

(中川)アアッ… もう! 何をしてんねんな もう

アホらしゅうて見とられんわい (岡村)大丈夫ですか?

(岡村)中川さん

こんばんは! 中川さん

(中川)誰や? (角田)あっ…

夜分 恐縮でございます 阪神銀行の角田でございますが

(中川) また銀行か 朝から もう23人目や

せっかく 人が 酒 飲んで テレビ 見てたのに・

もう いいかげんにしてえな

申し訳ございません おくつろぎのところを

本日 めでたく お金が下りましたそうで

かねがね お約束いただきました 2300万円のご預金・

明日の何時ごろに お伺いしたら よろしゅうございましょうか?

ほんな約束したかいな?

(角田)えっ? (岡村)中川さん

ハハッ… こら ウソや あれな やめにさせてもらいまっさ

そ… それは 一体 どうして…

実はな 田んぼ 取り上げられてしもうて・

これから どないしよう 思うてるところへさして・

大友銀行の行員さんが・

うちの娘の婿に来てくれることに 決まったんや

ほんで まあ 金は皆・

大友銀行へ預けることに 決めてしもうたんや

(角田) それは… おめでとうございます

しかし これまでの おつきあいを お考えのうえで・

たとえ 幾分なりとも どうぞ もう一度…

うるさいな もう やめや言うたら やめや!

(岡村)中川さん!

(ため息)

支店長

銀行員というものは 悲しいもんですね

婿に来るという大友銀行の男も まるで人身御供じゃありませんか

僕だって もう2年間・

熱があるときでも ご機嫌伺いに通いましたよ

田植えまで手伝うたのに それも 僕たち第一線が・

銀行を支えているんだと 思えばこそですよ それを…

君の気持ちは よく分かるが ここは こらえなきゃね

(岡村) おい みんな! えらいこっちゃ

(行員)何だね?

(岡村)「5億円 達成 頑張れ 頑張れ」やて

(角田)じゃあ 最後の詰めに入ろう (行員)はあ

(次長) ほな みんな こっちに寄ってや

(行員たち)はい

(次長) ええか? 松本吉太郎さん 1300万

予想額の50%や

野原和次さん 4900万

予想額の80%や

次の 山田ハナさん 320万

予想額の10%やで

野原和次さん 0 (行員)ええっ…

(次長) 次の豊中一郎さん 45万円やて

(岡村)支店長 どうしたんですか?

ウッ… 胸が… 苦しいんだ アッ…

(岡村)あっ 支店長!

あっ… 救急車や! 119番や!

こら あかんわ! (行員)支店長!

(岡村)大丈夫ですか? (次長)どないしたんや!

(行員)阪神銀行 池田支店です はい あの… 救急車

(行員)ネクタイ 緩めるんや (次長)支店長 どないしたんや

(行員)しっかりしてください

(次長)早よせえや!

クッ! アッ! 苦しい… (行員)支店長!

アッ… 苦しい…

・~

頭取!

5億円 達成… できました

・(救急車のサイレン)

支店長!

し… 死んだ

(管理人)おいでやす

あっ ようこそ

(銀平)君は初めてじゃないね

(万樹子)ごめんなさい

私…

(銀平)別に謝ることはない

君と関係のあった男の話など・

僕は聞く興味はないね

(万樹子)私 結婚したら…

一生懸命 いい家庭 作るわ

いいよ お互いさまだ

・(ノック)

何だ?

(管理人)ただいま 旦様たちが お越しにならはりましたけど

(銀平) 僕たちがいるって言ったのか?

いいえ (銀平)分かった

(万樹子)お義父様に ご挨拶しなくていいの?

(銀平)何て言うんだ?

「私たち 今 結婚を済ませました」ってか?

(相子)お食事のお支度を いたしましょうか?

そうしてくれ

いかがですか?

ご満足をいただけたようですね

うん

この資料を 持ち出させた検査官には・

できるだけ早めに・

うちの加古川信用金庫のほうに 引き上げさせることだね

ええ

常務のポストは 用意してくれましたか?

こっちは いつでもいいよ 分かりました

妙なウワサが出ないうちに うまくやりますから

そっちのほうは ご心配なく

しかし 驚いたな

第三銀行の不良貸し付けが 400億を超えているとは

お義父さん そろそろ教えてくださいよ

主計局次長の僕にまで 危ない橋を渡らせた・

本心は何ですか?

君には もう分かってるはずだろう

合併の婿探しですね?

それにしては おかしいですね

なぜ お義父さんは 阪神銀行より上位にある銀行の・

資料ばっかりを 集めさせたんですか?

はっきり申し上げて・

阪神銀行と合併の可能性の あるのは この4行のうち…

平和銀行だけでしょうね

どうしてかね?

まず 中京銀行は 名古屋財界の力が強くて・

うんと言うはずがありませんよ

次に 大同銀行は 日銀の松平総裁が君臨していて・

大蔵省でさえ手の出せない所です

第三銀行は ご存じのように・

関西の名門 大沢一族の結束力が 強固で難攻不落です

平和銀行は 先日 不正融資の スキャンダルが明るみに出て・

行内の人事に ガタが来てますからね

やるなら ここしかありませんね

2~3日前 春田銀行局長と 飲む機会がありましてね

彼の金融再編成に対する考え方を 探ってみたんですが

大阪は 大友銀行と五和銀行に任せて・

阪神間は 大阪の平和銀行と・

神戸の阪神銀行が合併するのも 一案だと言ってました

ですから お義父さんに その気がおありになれば・

これは まとまらない話じゃありませんよ

せっかくだが わしのほうは断る

平和銀行との合併など メリットはおろか・

まかり間違えば 共倒れになる危険性さえある

そんなもの 話にならんじゃないか

では お義父さんは 平和銀行が落第だとすると・

残る3行のうち どこを狙われているんですか?

(相子)せっかくの日曜日に ご苦労さまでしたわね

どうせ 僕は 万俵財閥を 太らせるための 哀れな羊さ

あら

随分 ご自分を卑下なさいますのね

君の仕掛けた閨閥作りのワナは 立派なもんだよ

(相子)あら そんなことなさって よろしいの?

万俵大介に言いつけるか?

ご希望なら そうしてもいいわよ

さ~て 万俵大介は 君と僕の どちらを捨てるか・

興味のあるところだな

秘書の君には未練はなくとも・

愛人の君には 未練たっぷりだろうし

そうかと言って 大蔵官僚の僕を捨てたんじゃ・

情報網が途絶えるし

さあ 困った

茨城の貧乏寺の息子が

万俵に拾い上げてもらった恩を 忘れたの?

得体の知れないアメリカ人と 結婚して・

テキサスから 無一文で放り出された女は・

恩など覚えているのかな?

今度 そんなこと言ったら 車から降りてもらうわよ

何なら 今 降りたっていいんだよ

そうしようか

(笑い声)

万俵家の中で 血統書のない駄犬は あなたと私だけよ

その2人が どうして いがみ合わなきゃならないの?

駄犬は駄犬同士 仲良く 傷をなめ合おうってわけか

いけない?

(美馬) 今度 東京へ来たら 電話をくれよ

踊りに行こう

(相子) いいわよ 私 ダンスはうまいのよ

テキサス仕込みですか? (相子)いいえ

茨城仕込みよ

(笑い声)

・~

・~

対政界 対大蔵省の 情報収集活動のため・

専門の調査機関を それぞれ 東京支店に置いていた>

別名 「忍者部隊」とも呼ばれ・

日夜 情報収集に暗躍していた>

じゃ これで 今朝のミーティングは終わる

みんな すぐに出発してくれ

あっ 伊佐早君 (伊佐早)はっ

君は ちょっと残ってくれ (伊佐早)はい

(ドアが閉まる音)

(伊佐早)何か? (芥川)うん…

君な 大蔵省へ行って・

第三銀行の 最近の地盤沈下について・

その理由を探ってくれ

(伊佐早)第三銀行の地盤沈下… そんな事実があるんですか?

ある… ゆうべ遅く 頭取から お電話があった

頭取から・

理由は分からんが 頭取には 何かお考えがあるようだ

他行に気取られんよう 慎重にやってくれ

ああ いろいろ お世話をおかけいたしまして

申し入れ額の全額は 認めてくださいましたか?

いや 当行にも いろいろ 都合があって・

申し入れ額から 10% カットすることにした

10%をカット?

お父さん どうして そんな…

10%といえば 20億近い額じゃないですか

こっちでは 建設予定地の 整地工事も始まってるんですよ

お父さん 聞きなさい

お前の所も 高炉を建てて 銑鉄一貫メーカーを目指す・

大企業になったんだから・

この際 ほかに もっと 借り入れ銀行を増やすことだ

今回の融資についてはですね・

私も 融資部長や渋野常務に 何度も説明して・

積極的な支援を 約束してもらっていたはずです

それが どうして 突然 10%もカットされるんですか

それは お父さんのご意見なんですか?

じゃあ お父さんは 僕に 「高炉を建てるな」というんですね

わしは 今 阪神銀行の 頭取室から電話してるんだ

いくら親子とはいえ・

それが メインバンクの 頭取に向かって言う言葉か

いや 申し訳ありません しかし 電話では何ですから・

今すぐ そちらへ お伺いいたします

来てもムダだ! 融資会議の決定に 再考の余地はない

・~

結婚後2週間目の夜であった>

家内の異常な空気に気づいて 奥の座敷へ走った>

・~

(敬介)公家の女は・

マシュマロのような 肌をしとるのう

・~

何があったのだ!

あなた…

(泣き声)

お父さんが な… 何をしたのだ?

寧子! 言いなさい

私… お風呂にいて

のぼせたのか めまいがして…

(泣き声)

(戸が開く音)

あっ… お義父様!

・~

まるで人形のようじゃ

(泣き声)

(寧子)あなた…

(泣き声)

長男の鉄平を産んだ>

ごめんなさい

これ どう? 銀平さんの結婚式にと思って・

鈴乃屋へ注文して 染めてもらったんだけど

フフ… ちょっと派手かしら?

いいえ とってもお似合いだわ

(相子)二子さん

あっ… 私を捜してらしたそうね

シャワーを浴びてましたのよ

あなたって方は卑怯な方ね

ハハッ… あら いきなり ご挨拶ね

ちょうどよかったわ

私も あなたに お話があるから 私の部屋へまいりましょうか

(二子) いいえ ここで お話ししたいわ

お母様にも ご一緒に聞いていただくわ

お母様は お着物に夢中のようね

私の部屋から あなたが盗んだ物を 返してください!

二子さん

(相子) ほら あなたが 「盗む」だなんて・

下品な言葉を使うものだから・

お母様 驚いてらっしゃるじゃ ありませんか

そういう言葉は 万俵家の人間の 使う言葉じゃありませんわ

あなたに そんなこと言う資格が おありになるの?

それは どういう意味?

(ドアの開閉音)

お父さん お話があります

仕事の話なら 明日にしてもらいたい

明日まで待てません

もし 私が 1日でも万俵家を留守にすれば・

お困りになるのは お母様ですよ

寧子さん

このうちの実印や登記書類が どこにあるか ご存じ?

では 万俵家の毎月の経費が どのくらいかかるか ご存じ?

50万か 100万か 200万か

おっしゃってくださいな

フウ… これで あなたにも お分かりでしょう?

あなたは そんなふうに お母様をいじめて・

喜んでらっしゃるのね

もう結構だわ

私の部屋から持っていった物を 返してください!

これでしょう?

今 お返しするわけにはいかないわ

お父様の所へ行って 一緒にお話ししましょう

あなたが まだ こんなことを してらっしゃるのを知ったら・

お父様は 何ておっしゃるかしら?

それに この手紙の宛先は みんな 鉄平さんのお宅ね

鉄平さんが・

あなたのキューピッドの役目を してらっしゃるって知ったら・

お父様は… (寧子)相子さん ねえ

相子さん それだけは堪忍してあげて

万俵家の人間は 工場長の息子なんかとは・

結婚できませんわよ

ダメだ 再考の余地はないよ

どうしてですか?

融資部長も融資担当常務も 承諾してるのに・

なぜ お父さんだけが 反対なさるんですか?

返事は 既にしたはずだ

納得がいきません

大体 特殊鋼メーカーが 高炉を建てるなど 分不相応だ

なぜですか? 理由をおっしゃってください

うるさい! お父さん 待ってください

入るな!

お父さんが おじいさんから 受け継がれた銀行を・

地方銀行から 都市銀行に拡大されたように

僕も おじいさんが創設された 阪神特殊鋼を・

高炉メーカーに 発展させたいんですよ

お前は 何かというと おじいさんのことを口にするな

大学に進学するときも・

経済を専攻して 銀行を継ぐように言ったのに・

銀行は 弟に押しつけて・

自分は おじいさんの始めた 鉄をやるからと・

工学部に進んだな!

お前は 父である わしより 祖父のほうを尊敬する・

ひねくれた人間だ

お父さんこそ なぜ こういう話になると・

いつも おじいさんにこだわるんですか?

お父さんは 一体 おじいさんの 何に嫉妬してるんですか?

うん・

わしが いつ おじいさんに嫉妬した?

バカなこと言うな! (グラスが落ちる音)

もういい 帰りなさい

お父さんは 僕が生まれてから この39年間・

一度でも 僕を 愛してくれたことがありますか?

何を言いだすんだ お前は

お父さんは なぜ 僕を憎むんです?

黙らないか

鉄平さん お父様に なんてことおっしゃるの?

謝りなさい 君は黙ってろ!

親子が争ってるとき 口を出せるのは母親だけだ

あなたが どう お思いになろうと 勝手ですけど・

私は あなた方を教育し・

結婚の心配まで いたしてまいりましたわ

そうだ 万俵家を差配し お前たちを教育し・

立派な配偶者を 見つけてくれたのは・

相子の努力によるものだ

確かに そういう意味では この人の役目は認めますよ

しかし お父さんの愛人で あるということも事実でしょう

世間では品行方正な顔をして 一歩 家庭に入れば・

妻しょう同居の生活をしてる お父さんは偽善者です!

鉄平! (寧子)あなた…

お兄様! お兄様

あなたも鉄平さんも もう おやめになって

あなたたち 親子じゃございませんか

皆さん なかなか 派手におやりになってますね

フィアンセとデートして・

いい調子で帰ってくると この様子だ

しばし ぼう然の体でしたよ

お父さんと争うなんて ムダなことですよ

企業家としての見識・

財力 社会的地位・

全ての点で 何ひとつ・

僕たちは お父さんにかなうものがないんだ

勝ちっこありませんよ

勝ちっこないかどうか 俺は やってみる

これ以上は もう お父さんには頼みません!

鉄平さん!

・~

私に 何か隠してますね?

申し訳ありません

実は 予算オーバーでなくて・

メインの阪神銀行が 従来の40%の融資比率を・

30%に切り下げてきたんです

メインが10%カット?

そりゃ 一体 どういう理由です?

父は… いえ 阪神銀行の万俵頭取は・

特殊鋼メーカーが 高炉を建てるのは・

分不相応だとおっしゃって・

それ以上は何も…

本当に それだけですね?

ほかに まだ 私に 隠してることはありませんね?

頭取… メインが それだけの理由で・

10%も 資金をカットするということは・

通常では考えられない

…ということは つまり・

あなたの高炉計画自体に よほどの欠点があるのか・

それとも 会社全体に 重大な欠陥があるのか・

そのどちらかでしょう

いや それは誤解です

仮に おっしゃるような欠陥が あるとしたら・

メインを上回るほどの 巨額な融資を・

私は 頭取にお願いにはまいりません

鉄平君 君の情熱は よく分かります

しかし 10億の追加融資の 承認ということになると・

緊急役員会を 開かなければなりません

その前に お父さんに 一度 お話ししたいんですが・

かまいませんか?

はあ…

まあ 資金のことは心配しないで 早く 通産省へ行ってらっしゃい

今日は 正式に 許可が下りる日でしょう

はあ

(秘書)どうぞ

話にならんな 包みが小さいよ!

うん もう4~5日すると また来るんだろうがな

その多寡によってだな・

据え置きか 値上げか 考えてやるんだな

うん まあ そういうことだ じゃ

通産省のな 重工業局長に電話してくれ 急用だ

心配するな わしが 石橋局長に話をつけてやるよ

大体 重工業の連中は・

「帝国製鉄の霞が関出張所員だ」 なんて言われるほど・

癒着ぶりが甚だしいんだ

わしが 通産大臣をやっとったときにな・

相当 思い切った人事をやって ぶった切ってやったんだが・

また逆戻りらしいなあ

いろいろ お手数をおかけしまして

それより どうだ? わしが 近く 席を設けるから・

大同銀行の三雲君を招待せんか?

娘婿が世話になっとるんだから・

一度 礼を言わなくちゃいかんだろう

親父も その席へ呼ばんか?

はあ 金融再編成が 取り沙汰されていますので・

父も忙しいようです

美馬君に 何かと相談してるようです

(笑い声)

あいつはイヤなヤツだ

大蔵官僚の典型的なタイプだな (内線:ブザー)

(内線:秘書)通産省の 石橋局長が お出になりました

(大川)まあ 親父さんにかぎらず 財界人というヤツは・

官僚派が落ち目になろうが 党人派が落ち目になろうが・

絶対に損をせんように 保険つなぎをしとるんだ

保険つなぎといいますと?

家が焼けても 保険が掛かっとる

(笑い声)

ああ わしだ 大川一郎だよ!

(芥川)夜分 お邪魔して 申し訳ありません

ああ…

電話で話せない 緊急事態というのは何かね?

頭取からご下命のありました・

第三銀行の地盤沈下について 調査を進めましたところ・

信じられないような事実が 明るみに出てまいりました

話してみたまえ

美馬さんにお願いして ゴルフ好きの春田銀行局長を・

朝の特訓に 引っ張りだしたんですが…

(春田)美馬君から 聞いていないのかね

いえ この情報は 当行が 独自でキャッチしたものです

うん そうかもしれんな

何しろ ごく最近の動きだからね

ごく最近の動きと おっしゃいますと・

やっぱり 合併は本当なんですね

それで 局長のお考えは?

青信号を 出すおつもりですか?

それとも 赤 黄 どちらですか?

今の段階では 何とも言えないね

もう この辺でいいだろう

大蔵省としては・

青信号を出すと考えても よろしゅうございますね?

銀行っていうのは 複雑な生き物だからね

そうすると 永田大臣の辺りで・

何か 決断に迷ってることでも あるんですか?

例の男が動いてるからね

永田大臣の政敵であり・

次期総裁選を 永田と争うと目されている・

現幹事長の 田淵円三を指していた>

幹事長の田淵円三と 第三銀行がつながってる

はあ… 私も 思わず 耳をうたぐったんですが

頭取 第三銀行の地盤沈下を 調べていったら・

平和銀行との合併が 浮かび上がってきたんですが

それが 何か当行と…

もし よろしかったら お教え願えませんか?

わしは 阪神銀行と第三銀行を 合併させようと思ってたんだ

…とおっしゃいますと?

第三銀行に 当行が吸収合併されるという

バカなことを言うな! 小が大を食うのだ!

芥川君 こうなったら・

第三銀行と平和銀行との合併を つぶすのだ!

えっ? もし・

第三と平和との合併が 成功すれば・

それを契機に 第2段 第3段の合併が続くのは・

火を見るよりも明らかだ

わしには 阪神銀行で働いてる 9000人の生活を守る義務がある

そのためには まず・

目前に迫ってる 両行の合併をつぶし・

当行が有利な条件を 獲得するために・

なんとしてでも 合併の一番手に 名乗り出なきゃならない

しかし 頭取 つぶすとおっしゃっても・

この合併の後ろには田淵円三が…

いや 今 君の話を聞いてて 謎が解けた

確かな筋から 第三銀行 10億の不正融資の・

極秘書類を手に入れたのだ

10億の不正融資? うん

その10億は・

第三銀行の瀬川副頭取から 田淵円三の手に渡り・

田淵から 佐橋総理の 総裁選に使われたに違いない

君も疲れてるだろうが 最終便には まだ間に合う

わしは 永田大臣に会う手はずを 整えるから・

君は 不正融資の裏を固めてくれ

はい もし 間違いがあると・

今度は 阪神銀行が 政治につぶされてしまう

全力を挙げて 裏を取ります

(美馬)お義父さん 大臣の アポイントメント 取れましたよ

予算特別委員会が 8時まであるそうですから・

そのあとに 強引に割り込みました

大臣は そのあとも 何かご予定があるそうですから・

「なるべく 手短に」ということでした

うん ご苦労でした

あっ それから この間は わざわざ・

シャガールの絵をお届けいただいて ありがとうございました

画商に見せたら 「大変な値打ち物だ」と言って

ええ

・

ああ もしもし うん

ちょっと待って… 頭取

ご子息の鉄平さんが お会いしたいと言って・

待っていらっしゃいますが 誰にも会わんと言ったはずだ

頭取は お会いできないそうだ

この数字は確かだね?

忍者部隊が調べ出したものです

・(ノック)

誰も入れるなと言ったはずだ! 秘書が悪いんじゃありません

僕が 勝手に入ってきたんです

だったら 出ていきなさい

ちょっと 席を外してくれんか? はい

ここは 阪神銀行 東京支店の頭取室だ

息子とはいえ 無断で入ることは許されん

そのことは おわびします

大川さんと三雲頭取の宴席には 出るつもりはない

三雲頭取には わしのほうから さっき 電話で・

10億の融資について お願いしておいた

これ以上 お前は わしに何を望むんだ

お父さん

通産省の正式認可も・

大川の父のおかげで ようやく下りることになりました

資金のほうも・

万俵頭取のご助力を得て メドがつきました

いろいろ ご配慮をいただき ありがとうございました

おめでとう

高炉建設が正式に決まり・

今日という日は 僕にとって…

・~

失礼します

・~

さる消息筋から 聞いたとこによりますと・

この間の総裁選のひとつを 例に取りましても・

その資金調達を受け持った 田淵幹事長の元へ・

第三銀行から政治資金が流れ・

幹事長は 大いに 点数を上げたそうじゃないですか

(永田) ほう そんなことがありましたか

それから察すると・

田淵幹事長に対する献金額は 相当なものであり

第三銀行 不正融資の大半は 田淵幹事長の所へ・

吸い上げられてるとも 聞いています

もし 仮に そうしたことが事実とすれば・

これは 銀行自体の体質に関わる ゆゆしい問題じゃないでしょうか

万俵さんも 結構 ご存じじゃないですか

しかし あの鎌倉の男のことまでは・

いまだ 調査及ばずのようですね

そうでしたか

「鎌倉のあの男」というのは・

いまだかつて その名前も 顔も・

国民の前に 一度も現したことはないが・

日本の政治 経済 言論を 陰で操る・

黒い人物とされていた>

第三銀行には 鎌倉のあの男まで 絡んでるんですか

では もっと克明に調査すれば 10億どころの額じゃありませんね

そりゃあ そうでしょうなあ

この間 検察庁の某幹部に会ったら・

田淵 鎌倉のあの男 瀬川 第三銀行は・

日本の黒い山脈の主峰とか 言ってましたよ

(笑い声)

大臣 当行としては・

第三と平和の合併を なんとしても阻止したいのです

大臣としても ご異存ないでしょうか?

10億円の不正融資が・

第三銀行の黒い体質と つながる奥深いものであるなら

大蔵省としては そんな問題を はらんだ銀行の合併を・

不用意に推進するわけには いかんでしょうな

まあ そうかといって 銀行を監督指導する大蔵省が・

それを 天下に公表するわけにはいかんし

困ったねえ ごもっともです

まさか 大蔵省が こんなことを…

何なら 当行独自の判断で やらせていただきますが

いかがでしょう?

あっ… これはこれは 大臣 恐縮です

(クラクション)

(秘書)おはようございます

(秘書)10時半の記者会見の時間が 少し遅れていますが・

すぐ 記者クラブへ いらっしゃいますか?

いや その前に 春田君と松尾君に話があるから・

至急 呼んでくれ (秘書)かしこまりました

(永田) それは どういうことなのかね?

実は 今朝 驚きました

どうも 監督不行き届きで 申し訳ありません

平和銀行との合併は 目下 どの程度 進んでるんだ?

(春田)はあ 両行の常務クラスが・

おととい ホテルで 初顔合わせを行ったところです

記者会見を待たせてあるんで 多くは言わんが

第三銀行の体質については 最近 とかく 問題が多い

今度の事件もだな その特異体質を考えれば・

起きるべくして 起こった事件ともいえる

まあ この際 平和銀行との合併は 見合わせるんだね

(松尾)いや しかし 大臣 双方の銀行の意志は…

ともかく 話は それだけだ

永田大臣のひと言でついえた>

次のように規定されている>

主務大臣の認可を受くるに あらざれば その効力を生ぜず」>

あっ もしもし 大蔵省の松尾ですが

(秘書)先生 松尾審議官からです

よし

どうだった?

なに・ やっぱり やったか 永田のヤツ

よし 分かった

…で 毎朝新聞へ 売り込んだヤツは誰だ?

阪神銀行の万俵大介です

なに・ 万俵大介?

万俵か… よし ご苦労

(秘書)検察庁の大岩部長です (田淵)うん

どうだ? 動きだしたか?

どの辺が?

ふ~ん 次長クラスか よし 分かった

もうしばらく 食い止めておいてくれ

なに 心配せんでいい 火は すぐ消してやる

あっ 席 外してくれ (秘書)はい

・~

(女性) 田淵様からお電話でございます

(鎌倉の男)うん

ああ 私だ

うん うん… そうか

永田と阪神銀行の線か

うん フフフフ… うん

そっちの火は 私が消しておく うん

(鎌倉の男)総理を呼び出してくれ (女性)はい

当行が合併して 利益のある相手は・

中京銀行と大同銀行以外には 考えられない

(大亀)頭取

お言葉を返すようですが・

それは あまりにも無謀な お考えではないでしょうか?

もちろん 困難は承知のうえだ

今までの例を見ましても・

表面は 「対等合併」と言いながらも・

やはり 実質的には・

大が小を支配してしまうのが 現実です

まだ終わりませんの?

ああ まだだ

分かりました

頭取に それほどまでの ご決意がおありになるのなら・

微力ながら ご協力させていただきます

では 君にやってもらいたいことが 2つある

まず 永田大臣に渡す政治献金を・

裏勘定で 2つ 用意してもらいたい

それに もう1つ

小が大を食う合併のために・

預金高を 今年中に 是非とも 1兆円にしてもらいたい

第三銀行と平和銀行が・

例のスキャンダルで 落ち込んでる現在・

不可能ではないはずだ はい

やってくれるか?

私の体は 頭取に お預けしたつもりでございます

まだ 着替えしてなかったのか ええ

銀平さんの結婚式に ご招待する方々の・

リストを作ってたものですから

(においを嗅ぐ音)

あら 何か燃やしましたのね?

シャワーを浴びて 着替えておいで

ええ (ため息)

ご招待客ですけど 大阪の披露宴には350名様

東京のほうは 300名様に絞ってみましたのよ

見ていただけます?

相子に任せたよ

(ため息)

銀平さんの結婚式が済むと・

今度は 二子さんの番ですけど

あなたが 今 考えていらっしゃる お仕事のことを思うと・

私は いっそ 二子さんのお相手には・

佐橋総理の閨閥が よろしいかと思いますけど

佐橋総理の?

総理夫人の周子様には 帝国製鉄にお勤めの・

細川一也さんって とてもいい 甥御さんがいらっしゃいますの

先日 周子様とお親しい・

小泉夫人に打診してみましたらね ハア…

お話の持っていきようでは 脈がありそうでしたわ

フフッ…

佐橋総理じゃご不満なの? フフッ…

君って女は ずばり 敵の本陣に・

斬り込むようなことを 考える人だねえ

フフフッ!

ハア…

2人っきりね

ここでは あなたと私と2人っきりなのよ

こうしていると・

普通の夫婦のような気がするわ

(四々彦)やあ!

(二子)おかえりなさい (四々彦)ただいま

わざわざ 迎えに来てくれたんですか

ええ

専務は お元気ですか? (二子)ええ

来月の3日に いよいよ 高炉の くわ入れ式ができると言って・

大張り切りですわ

僕は 今 幸せの絶頂にいます

自分たちの手で 高炉を 造ることができるんですからね

二子さん たくさんの手紙をありがとう

アメリカで頑張ってこられたのも あなたのおかげです

いいえ 私のほうこそ

ハハッ… あなたの顔 見たら 急に 腹が減ってきた

どっかで メシでも食いませんか? うまいラーメンがいいな

ごめんなさい

今日は 銀平お兄様の 結婚披露宴があるものですから

二子は まだか? ああ…

今 支度をしていますから・

どうやら 時間には間に合いそうですわ

寧子さん (寧子)なあに?

花婿のお母様が これを お忘れになっては困りますわ

(寧子)あっ… ここに 差したとばかり思ってましたのに

相子さんのおかげで ホントに助かりますわ

今日の披露宴には 大蔵大臣 通産大臣・

財界からも 名士の方が 大勢 お見えになりますから・

気をつけていただきませんと (寧子)ごめんなさい

みんなの前で はっきり言っておきたいんだが

あなたは 今日の披露宴は 遠慮していただきたい

(相子) まあ 突然 何をおっしゃるの?

銀平さんの今日のお話は 私が今日まで…

大阪の披露宴のときも そうだったが・

あなたは 母に対して 過ぎた言動が多すぎる

銀平の披露宴は 万俵家の人間だけで たくさんだ

出席は遠慮していただく

あなた…

私も 鉄平お兄様に賛成ですわ

よさないか 一子

あなたも何かおっしゃったら?

うちでは いつも おっしゃってるじゃありませんか

万俵家の長は わしだ

相子の出席は わしが認めてる

それに不満のある者は 披露宴には出なくてもよろしい!

およしなさいよ 鉄平さんも 一子も

相子さんは 私に代わって・

今日まで 何もかも してくださってるんですよ

いいじゃないですか 兄さんも 姉さんも

どうせ 結婚式だの 披露宴だのといっても・

猿芝居にすぎないんだ

そう 僕の結婚式を・

厳粛に考えてくださらなくても 結構ですよ

お待ちどおさま!

それに 僕の結婚を 本当に喜んでくれているのは・

万俵財閥 フフッ…

それだけですからね

・~

♪(雅楽)

♪~

(神官)礎石の儀

♪~

♪~

♪~

甚だ 勝手なお願いですが 祝宴に移ります前に・

高炉建設本部に 展示してあります建設計画を・

ご高覧いただければ 幸いと存じます

(拍手)

(工員)専務! やりますよ

三雲さん

私は メインバンクの 頭取であると同時に・

鉄平の 父親でもあるということで・

融資について あれは いろいろと誤解したようですが…

いや よく分かります

私も 日銀時代には・

公定歩合の上げ下げとか 景気の調整とか・

行政的な仕事を しておればよかったんですが

都市銀行というものは 毎日が生きておりますのでね

難しいものです

でも もう お慣れになったでしょう

いやあ まだまだ 教えられることばかり多くて

今度の高炉計画の 融資に関しても・

内部で反対する者が 相当おりましてね

いや ご迷惑をおかけして

いや そういうつもりで 申し上げたのではありません

当行の綿貫専務などは 私のことを・

「銀行家ではない」などと 批判しておりまして

はあ どういうことですか?

彼に言わせれば 「銀行家たる者は・

失敗の可能性が一分でもあれば 踏み切らないものだ」

「それに反して 事業家のほうは・

成功と失敗のバランスが7対3・

あるいは 6対4の割合でも 賭ける場合がある」

私の溶鉱炉に対する態度は・

銀行家ではなくて 事業家のそれだと言うんです

一子 よく来られたな

ええ 美馬が お父様に 何か特別なご用があるとか言って

年始回りは 今年は やめたんですか?

いいえ あした また 東京へ帰りますわ

役人なんて ホントにつまらないわ

(テレビ) 除夜の鐘が 京都 知恩院から・

しめやかに流れてまいります

行く年 来る年

皆様の胸に去来する思いも さまざまなことでしょう

除夜の鐘が始まるわ

(テレビ:除夜の鐘の音)

お義父さん

お読みいただいたら 燃やしていただかないと

うん そうしよう

・(除夜の鐘の音)

もし 鉄平さんが・

お義父さんの狙う合併相手が・

三雲さんの大同銀行だと 知ったら…

僕は 思うだけで空恐ろしいですよ

(猟師) 頭取 新年 おめでとうございます

おめでとう 皆さんも おめでとうございます

本年も よろしく (鉄平たち)おめでとう

じゃ 皆さん おそろいでしたら まいりましょうか どうぞ

(犬の鳴き声)

(女性) 鉄平様! 東京から お電話です

僕に? 誰から? 大川一郎先生の秘書の方からです

ゆうべの書類ですが 万一 大川さんが それを…

バカなこと言うんじゃない 大川一郎が どうして それを

しかし お義父さん

大川さんの息のかかった人間は 大蔵省にも大勢いますからね

(犬の鳴き声)

よし!

(鳴き声)

(銃声)

(鳥の鳴き声)

・(銃声)

(鳴き声)

(銃声)

(銀平)お父さん! (猟師たち)頭取! 旦那さん!

(銀平)お父さん! しっかり! 大丈夫ですか・

お父さん!

・~

あなたは お義父さんを…

(銀平)お父さん… 動かさないで

(猟師)旦那さん しっかりして! (銀平)お父さん!

しっかりしてください! ウッ… ウッ…

鉄平

お前は… わしを

貴様!

(銀平)お父さん! 救急車!

シカゴへ出張していた鉄平は・

義理の父 大川一郎の 危篤の知らせに 急いで帰国した>

やあ (銭高)あっ おかえりなさい

大川さんの具合は どうだ? 重体です

そうか 急ごう

日本の輸出産業に 大きな打撃を与え・

大蔵省は 再度にわたる 金融引き締め政策を発表した>

阪神特殊鋼にとっては・

それだけでも 死活問題を意味するとき・

大口取引先である アメリカン・ベアリング社は・

一方的に 輸出のストップを通告してきた>

専務 うちの製品の35%は・

アメリカン・ベアリング社の輸出に 頼ってます

もし それがキャンセルなんて ことになったら…

分かってる

常務 このことは しばらく・

私と君の腹に納めておこう

しかし 専務 こんな重大なことを…

阪神銀行と大同銀行の頭取には・

折を見て 私が話す

専務のお留守中に 非公式ですが・

阪神銀行から 高炉の追加融資を断ってきました

えっ・ いつだ?

おとといです

理由は? 理由は何だというんだ

ただ 「資金ポジションが 悪化したから」と

それ以上は…

あなた 遅すぎましたわ

(泣き声)

お義父さん

申し訳ありませんでした

(大川の妻) この人は あなたのお帰りを・

本当に待っていましたのよ

(泣き声)

お父様は あなたの名前を何度も呼んで

「高炉だけは 必ず造るように」と

それが ご遺言でしたわ

(銭高)どうも

奥さん 何と申し上げたらいいか

ご心中 お察し申し上げます

私で役に立つことがありましたら 何なりと お申しつけください

(妻)ありがとうございます

早苗も 力を落とさんように

はい

(ドアが開く音)

(泣き声)

専務 頭取がお帰りになります

うん 大川先生の ご遺言のためにも

お父さん

(銭高)頭取

先日の融資の件でございますが・

大川先生のご葬儀が済みましたら 是非 一度 専務と…

2人とも 場所柄をわきまえなさい

専務

頭取に もう一度

阪神銀行の悩みは・

支店数の絶対量の 不足であったが・

大同銀行の店舗数は 都市銀行中 第2位で・

全国的に 支店網が張り巡らされており・

両行が合併すれば 名実ともに・

一躍 上位4行に迫るほどの 実力を備えることができる>

・

(芥川)「電話はつなぐな」と 言ったはずだ!

分かった 切らないで そのまま待て

頭取 大同銀行の三雲頭取から お電話が かかっておりますが

どうなさいますか?

出よう

三雲です 実は 今・

ご子息の鉄平君が 見えているんですが

ご承知のように 当行は 先日の役員会議で・

2億8000万の追加融資を 承認いたしました

ところが 今 鉄平君の話を伺いますと・

メインの阪神さんが 追加融資を お断りになったそうですが

もし それが事実だとしますと・

メインの阪神さんと サブの当行との融資比率が・

逆転するという・

考えられない事態が 起こるわけです

そうなりますと 当行としましても・

いったん 承認した追加融資を 取り消さなければなりません

確かに 当行は・

一時 資金ポジションの悪化などで・

追加融資を躊躇したことは 事実でありますが

しかし 阪神特殊鋼は・

当行の 主要な取引先でありますから・

近く 4億2000万円の全額融資を 承認するつもりでおります

鉄平には・

今明日中にも そのことを 伝えようと思っていて

大川一郎氏の葬儀と 重なったものですから つい…

そうですか 分かりました

では ご子息には 私から そう伝えましょう

では また

鉄平君 お父さんも 近く 全額融資を承認されるそうだ

どうしました? 不思議そうな顔をして

私には まだ信じられません

それなら なぜ 父は・

私に 直接 そう 言ってくれなかったのでしょう

大川の父の葬儀で・

何度も 顔を合わせる機会が あったのですが

鉄平君

これは 三雲個人としてではなく・

大同銀行の頭取として 忠告したいんだが

これからは メインバンクの頭取とは・

もっと 意思の疎通を図っていただきたい

…でないと 当行の内部に 無用の混乱を起こすし・

今後の融資にも 支障を来すかもしれません

分かりましたね?

はあ 申し訳ありません

あっ 頭取も ただいまから お食事ですか?

(三雲)ええ

あっ 君 (ボーイ)はい

コーヒー1つ 頭取のテーブルへ 持ってきてくれ

(ボーイ)はい かしこまりました

今日はコンソメと エビのコキールを頼もうか

(ボーイ)かしこまりました

(綿貫)頭取 ちょっと よろしゅうございますか?

どうぞ

あの… 午後からの会議ですがね

私 ちょっと 所用があって外出しますんで・

融資部長を代行させますが ひとつ よろしく

かまいませんよ (ため息)

いやあ 実はね

阪神銀行の万俵頭取さんが・

是非 私に会いたいって 申し込まれてきましてね

まさか 断るのも失礼ですし ちょっと行ってきます

しかし 万俵さんが あなたに何のご用でしょうね

いや 商売ですよ

実は 先日 柳橋の料亭で・

阪神銀行の芥川常務に ひょっこり会いましてね

そこで 私 ねじ込んでやったんですよ

「当行が 阪神特殊鋼の融資を これだけ面倒みてるんだから・

そちらさんも 当行がメインになってる・

アサヒ石けんの融資を・

10億ばかり肩代わりしたら どうか」ってね フフフ…

しかし 阪神銀行が・

この金融引き締めの時期に 10億の融資を

しかも アサヒ石けんになど 考えられませんね

失礼ですが 頭取

アサヒ石けんは 頭取が お考えになってるほど・

世間じゃ 低く見ておりませんですよ

そりゃ まあ 頭取は 何と言っても 日銀育ちのお方ですから・

町工場に毛の生えたような 中小企業を軽視なさるのは・

ムリはございませんですがね

まあ それに アサヒ石けんは・

私の娘婿が 経営してる会社ですからね

私が何か言うと この… すぐに ご…

あっ こりゃ どうも

この すぐ誤解なさる方が 当行にもいらっしゃるのでね

私もやりにくくて しかたないんですよ ハハハハッ…

アサヒ石けんの融資ですが・

当行が 全額 お引き受けいたしますよ

全額とおっしゃいますと 10億?

ええ 10億 融資させていただきます

ありがとうございます

しかし …と言っては何ですが・

私が 芥川常務に 融資をお願いしたのは・

つい先日のことですし

まさか 今日 ご返事いただけるとは

それも 全額…

綿貫専務のご不審も ごもっともです

この件に関しましてはですね 頭取のご意志で・

審査部を通さない 頭取決裁ということですから

ご満足いただけましたか?

いや 重ね重ね ありがたい お話ですが・

アサヒ石けんに対して 頭取に そこまで ご親切をいただくのは…

いえ 別に 他意はありません

ただ 阪神特殊鋼の融資について・

日頃 息子が ご援助いただいておりますので・

そのお返しができましたらと

(芥川)はっきり申し上げますと・

頭取も 最初は迷っておられたんです

しかし アサヒ石けんの経営者が 綿貫専務のお身内だと聞かれて・

専務のお立場が分かり

それで 決断を なさったようなわけなんです

お互いに 親バカと笑われても 致し方のないことですが・

綿貫さんも お気軽に 当行の申し出をお受けください

ありがとうございます

そうしますと この件に関しては アサヒ石けんと阪神特殊鋼の・

バーター融資というふうに 考えてはいかがでしょう

ええ そうお考えいただくと・

私のほうは 一層 ありがたいのですが

じゃあ そうさせてください

私も そのほうが 気持ちが楽になります

しかし 綿貫さん はあ

こういうお話を 三雲頭取抜きに決めて・

よろしいのですか?

あとから 文句が 出るんじゃないでしょうね?

いえ もう あの人に相談してたら らちが明きませんよ

何しろ 日銀育ちの殿様商売で・

現実的な運びが遅くて マズい人ですからね

これは手厳しい

(笑い声)

まあ 当行の恥を話すようですが 三雲頭取のことを・

「日銀から天下って 1年たったら・

絹のハンカチーフが 絹の雑巾に成り下がった」なんて・

酷評する役員が 当行にいるくらいですから

これは ますます手厳しい

(笑い声)

ところで 綿貫さんは・

銀行が合併する場合の 決め手となるのは・

何だと思われますか?

ずばり申し上げて ポストでしょうね

ほう ポスト

ポストを準備しない合併などは ありえないのではないですか?

ポストの争奪を巡って死闘する

これが 企業合併の大前提で・

合併は ポストしだいということですよ

なるほど

合併はポストしだい

そうかもしれませんね

では 4億2000万円の追加融資は・

見せかけ融資にすぎないと おっしゃるんですか?

そうだ 爾後 当行が 阪神特殊鋼に行う融資は・

他行の手前・

これまでの融資シェア分は 貸し出しをするが・

実際に使うことは まかりならんということだ

しかし 頭取 このことを 万俵専務に・

どのように説明したら よろしいのでしょうか?

いや あれに伝える必要はない はあ?

アメリカン・ベアリング社の 輸出契約が・

キャンセルになりながら

それを メインバンクの頭取に 隠しておくような経営者は・

もはや信用できない

その上 鉄鋼界の不況を考え・

高炉計画を 一時 延期するように 勧告したにもかかわらず

逆に 鉄平は 工期を早めて 突貫工事に入ろうとしてる

あれも メインバンクの意向を 無視するなら・

それだけの覚悟があるはずだ しかし 頭取 あの…

いや それから これは 石川社長にも伏せておくように

もし 話したところで 血圧が上がるだけだ

(笑い声)

これは 経理担当常務の君だけが 含んでいて・

当行の渋野常務と 操作すればよろしい

当面の資金繰りは どのように

阪神銀行の融資が 見せかけといたしますと もはや…

大同銀行から もっと借り出せばいい!

お言葉を返すようですが 大同銀行も これ以上は…

心配しなくてもいい

綿貫専務には 既に 話がついてる

今日の用件は以上だ

表面上は貸し出しをするが・

そのまま 銀行の預金に据え置き 実際には使わせない>

明らかに違法行為であった>

万が一のときは 君の身柄は わしが引き受ける

安心しなさい

・~

・~

(手をたたく音)

(犬がほえる声)

(女性)二子お嬢様も相子様も 今日は お出かけでございます

大奥様は 温室にいらっしゃいます

そう

(うなり声) いつになったら懐くの・

早く あっちへ連れておいき! (女性)はい

アアッ… 退屈だわ

万俵家の内部を くまなく案内されたが・

大介の寝室だけは ドアが閉ざされていて・

見ることを許されなかった>

(相子)ここで 何をしてらっしゃるんですの?

黙って 人の寝室をのぞき見するなど・

ご趣味のいいことじゃ ございませんよ

私 あなたを捜してるうちに…

何気なく入ったら 3台のベッドが 並んでたってわけね

それで?

万俵家の秘密を知ったご感想は いかが?

お待ちなさい

銀平さんからも 何にも聞いてらっしゃらないの?

(万樹子)聞いてませんわ

銀平さんが 何も おっしゃらないっていうことは・

新妻に対する いたわりっていうものでしょう

それを あなたは踏みにじったばかりに・

知らずに済ませられることを・

知っておしまいに なったってわけよ

私には あなたのおっしゃること… (相子)とぼけるのは およしなさい

これで あなたにも・

万俵家における私の立場が お分かりでしょう?

万俵家では・

私と寧子様とで 妻の座を分かち合い・

共有しているんです

あなたと お義母様が… 同じお部屋で?

万樹子さん! あなた…

お義母様 (相子)万樹子さん

今 ご覧になったことは 誰にも口外なさらないように

あなたのご実家のご両親にも 絶対に口外なさってはなりません

もし あなたが 誰かに・

口外なさるようなことが あったら・

私は あなたを 万俵家から 離縁することだってできましてよ

私は あなたの過去を知っていますから

私の過去は 銀平も承知のうえです

下へ行きましょう ねっ?

お義母様…

お義母様 こんな獣のような生活なさって・

平気なの?

お義母様は 万俵家の妻なんでしょう?

おめかけに あんなことまで言わせて・

まだ我慢なさってるの?

万樹子さん 今 何ておっしゃったの?

お義父様の秘書だなんて 世間を取り繕っていても・

あなたのやってることは 結局 おめかけじゃない

おめかけと どこが違うっていうの?

(殴る音) 痛い!

(寧子)相子さん… (万樹子)ハッ…

相子さん なんてことなさるの

お忙しい中を ホントに ありがとうございました

あの… 総理夫人には 奥様からも・

くれぐれも よろしく お伝えくださいますように

はあ では ごめんあそばせ

フッ…

二子さんのお見合いの日取りが・

やっと 来月の10日に本決まりしましてよ

今度は大丈夫だろうな?

いくら 佐橋総理夫人の 都合だからといっても・

こう 度々 変更されたんじゃ たまったもんじゃない

もう動きませんわ

お見合いの場所は やはり 嵯峨の「吉兆」で・

お昼食をしながらという ご希望ですので

私 早速 お見合いに合わせて・

総理夫人の 京都見物の予定を組みますわ

よし …ですけれど・

肝心の二子が まいりますかどうか

ご心配には及びませんわよ

いくら だだをこねていても お日取りが決まって・

それに向かって 私たち周囲の者が どんどん 事を進めれば・

観念してしまうものですよ

まあ 観念だなんて そんな むごいことを

あなた 先方に もう少し お時間をいただいて・

二子の気持ちが納得してからでは いけませんの?

あっ… このままでは 二子がかわいそうで

二子は 今 部屋か? (相子)ええ

わしが話してくる

本来なら これは母親の務めだ

青春は 人生に 二度とやって来ないものだ

だから 青春を楽しむのはいい

だが 結婚は違うんだ

結婚は 青春のように・

人生を 一瞬のうちに通り過ぎていく・

きらめくようなものじゃない

(二子)お父様 私は・

結婚に 青春の幻を 見ようとしてるのじゃありません

私は お母様や 一子お姉様や 万樹子お義姉様のような・

そんな砂漠のような生き方は したくないんですわ

聡明なお前に・

万俵家の結婚のルールを 今更 言うことはないだろう

二子も 自分1人のことばかり 考えないで・

少しは 鉄平兄さんの立場も考えておやり

どういうことですか?

鉄平お兄様は 私の気持ちに 反対ではありませんわ

そうらしいね

だが 鉄平が もし・

お前と四々彦君のことを 表立って賛成する側に回れば・

お父さんは 万俵家の長として 鉄平を許せなくなるのだ

女のお前は そうなっても・

四々彦君と 家出でもすれば済むだろうが

鉄平を わしが許せなくなれば・

阪神特殊鋼の 実質的な経営者だけに・

どういうことになるか 考えてみなさい

・~

ひどいと言いたいのだろう

お見合い お断りしてください

バカなことを言うもんじゃない

二子

人生を包んでるのは 優しい微笑ばかりではない

人間は 憎み合うことも・

殺し合うことさえできるものだ

もう一度 よく考えてみなさい

四々彦君のうちでも・

二子との結婚は 迷惑かもしれないよ

(ドアが閉まる音)

あなたが 自分の意志で決めたんですか?

婚約のこと? そうよ

じゃあ 僕は何も言うことはない

怒ったの?

高炉は いつ 建ちますの?

なぜ そんなことを聞くんです? (二子)教えてください

突貫工事に入ってるから 今年の暮れには建つでしょう

高炉が建ったら 私1人で細川家へ行って・

相手の方に納得のいくように お話をして・

婚約を 解消をしていただくつもりです

あなたの結婚が 溶鉱炉と 何か関係があるんですか?

今は これ以上 言えませんけど

四々彦さん もし 私を信じてくださるんなら・

高炉が出来るまで 私のすることを 黙って見てていただきたいんです

信じていただけませんのね?

(相子)さあ どうぞ

予定どおり 嵯峨の吉兆で行われた>

総理夫人の労をねぎらうため・

大介たちより ひと足先に 西陣織の展示場へ案内した>

型は上に組まれてあるそうです (周子)ほう

これが西陣の袋帯でございますの (周子)あっ そう

こちらが紋織りですわ

大変ですわね

日本の伝統を守ってくださいませ

(職人)はい おおきに

(細川)外国のゴブラン織が 縦糸で模様を出していくのと・

ちょうど反対ですね

しかし こういう作業を拝見すると・

女の正装というのは 大変なものですね

男には分からない世界ですよ

細川さんは 帝国製鉄へお勤めでしたわね

ええ

・~

お気に召された物が ございましたら・

どうぞ お選びくださいまし (周子)フフフ…

アメリカン・ベアリング社の 輸出キャンセルによる・

資金ショートを 乗り切るためには・

2つの方法しかなかった>

高炉計画を一時中止するか・

もう1つは 工期を早めて 高炉を完成し・

銑鉄を自社生産することで 製品のコストダウンを図り・

販路の拡大を 可能にすることであった>

積極政策の後者を選んだが・

そのためには 新しい資金導入が必要であり・

今日も銀行家を招いていた>

これが 計画されております・

2000リューベの高炉の 模型でございます

え~ これから 現場を ご案内いたしますのですが

え~ 恐縮ですが ヘルメットをお着けください

(爆発音)

(サイレン)

(工員)ウッ… (工員)おーい! 大丈夫か!

(工員)助けてくれ! ウッ…

(工員) おーい! 高炉が爆発したぞ!

(四々彦)専務! 熱風炉の爆発です

早くしないと 二次爆発が起こります

消火班と救出班を出動させろ! (一之瀬)分かりました

(工員)気をつけろ! 四々彦君 けが人を救出するんだ!

(サイレン)

(工員)危ないぞ! 逃げろ! (工員)爆発するぞ!

(工員)痛い! アアッ アアッ… (工員)しっかりするんだ!

(爆発音)

(サイレン)

ウンッ…

(爆発音) ウウッ…

ハア… ハア…

ウンッ…

ンッ… アッ アアッ…

四々彦君!

ンッ! ハア…

四々彦君 頑張れ

(爆発音)

(サイレン)

(騒ぎ声)

(工員)アアッ! 痛えよ

(泣き声)

(工員)ウウッ…

(泣き声)

アアッ…

(看護師) 輸血の血液が足りないんです

どなたか 献血してくださいませんか?

お願いします

・~

・~

(泣き声)

・~

(泣き声)

(女性)お金なんか要らん うちの人 返して

あんたらが… あんたらが殺したんやろう!

(泣き声)

(男性)全部 会社の責任や!

遺族が困らんだけの 補償金を用意してな・

出直してこい!

大阪 北浜の株式取引所では・

阪神特殊鋼の株が 75円から60円に 一挙に暴落した>

(チャイム)

(アナウンス) まもなく 京都でございます

お降りの方は お忘れ物の ないように お支度願います

まもなく 京都でございます (くしゃみ)

お降りの方は お忘れ物の ないように お支度願います

(仲居)今日は大文字やさかい いっぱいどすねん

ぶしつけですが・

阪神特殊鋼の事故が あったあとで・

大同銀行で開かれた 緊急役員会議のご意向が・

3つに分かれたそうですね

三雲頭取と 日銀天下り派の白河専務は・

「あの爆発事故は 偶発的な事故であり・

会社の経営内容に 多少は響くとしても・

従来どおりの融資方針を 変える必要はない」という意見

しかし あなたをはじめとして 生え抜き派の3常務は・

「ムリな突貫工事から・

起こるべきして 起こった事故であり・

この際 慎重を期して 手を引くべし」という意見

中間派の夏目 中原常務は静観説

ほう 当行の役員の中に スパイがいるらしいですな

(笑い声)

役員会の構成は・

日銀派が2人 生え抜き派が4人 中間派が2人

役員会の決議が 多数決によるかぎり・

三雲頭取が どう考えられようと 阪神特殊鋼への対処のしかたは…

頭取 それは 一体 どういう意味ですか?

あなたの思惑ひとつで どうにでも できるんじゃないんですか?

ずばり お尋ねしますが

頭取は 大事故を起こして 深手を負った阪神特殊鋼を・

見放そうとなさっている

そればかりか 大同銀行に対しては・

阪神特殊鋼への融資を加熱させて

阪神さんは うまく手を引いて・

結局 不良貸し付けで 傷つく大同銀行を・

のみ込もうとなさっている

頭取の計画は 私に・

アサヒ石けんとのバーター融資を 申し出られたときから・

既に始まっていた 間違っていますか?

(舞妓)旦はん 早ようおいでやす

大文字の送り火が始まりまっせ

つまり お望みは あれですな

大の字は 大同銀行の「大」

小が大を食う「大」

綿貫さん その「大」の字を杯に映し・

お互いに飲み干し 契りを交わそうじゃないですか

ああっ 燃えてる 燃えてる 大の字が フフッ…

・~

(宮本)爆発事故に伴う 直接 間接的損害額については・

先般 ご通知したとおりですが

え~ 両頭取を前に置いて 甚だ申し上げにくいことながら・

新たな財務調査によって・

困った次第が判明いたしました

これをご覧ください

両行の協調融資の足並みに 乱れが見られるのです

借り入れ残高が 阪神銀行90億 大同銀行100億で・

メインとサブの位置が 逆転しています

常識では考えられないことですが

(三雲)万俵さん これは 一体 どういうことですか?

私も こんな数字に なっていると聞かされて・

今 驚いてるんです

おたくが突っ込み過ぎたんじゃ ないですか?

突っ込み過ぎだなんて 冗談じゃありません

当行の資金表によりますと 別枠融資を加えても・

おたくのほうの比率が 高くなっております

それが いつの間にか なぜ 逆転したんですか?

おかしいじゃありませんか! 私にも信じられません

(宮本)思うに これは 阪神銀行さんの資金の都合で・

融資実行が 一時遅れになったと思われますが

私にも そうとしか考えられないのです

こんなことで 大同銀行さんとの・

協調融資の足並みが 乱れるようなことがあっては

私の不徳の致すところで 深く おわび申し上げます

(三雲)私には まだ 釈然としないものがあります

万俵頭取は 阪神特殊鋼の経営に関して・

何か格別な見解が おありなのかどうか

もし そうだとすれば・

この際 腹蔵のないご意見を お聞かせ願いたい

格別の見解など あるはずがありません

メインバンクとして また 私自身は・

肉親としての情もあり 全力を尽くしてるつもりです

融資比率が逆転していて・

なおかつ 全力を尽くしたと おっしゃるんですか

いや まあまあ 融資比率については・

10億の差ですから

早速 阪神銀行さんが 一挙に貸し出しされれば・

解決することじゃありませんか

え~ 実は それより 更に意外な事実があるんです

阪神特殊鋼が 日歩10銭もの 高利借りをしていたことと・

架空売り上げを計上していた 事実が明瞭になりました

(三雲)高利借りをですか 本当ですか

街の金融機関から 高利で借りる高利借りは・

我々 銀行間で・

最も嫌忌されていることを 知りながら・

それを行った阪神特殊鋼の行為は 許せません

え~ 更に 営業不振から・

売り上げを強いられた 地方の営業所が・

架空売り上げを 3億6000万も 計上していることは・

もはや 末期的症状を呈していると 言わざるをえないでしょう

(三雲)宮本さん これらの事実を・

阪神特殊鋼の万俵専務は 知っていたのですか?

いや 万俵専務は 経理面に疎いため・

これらを操作していたのは 全て 経理担当の銭高常務の独断です

しかし たとえ そうであっても・

専務たる者が 「知らない」では済まされません

万俵様は ご子息のことだから つらい立場でしょうが

致し方ございません

それでは 万俵さん

協調融資の乱れを ご存じなかった・

頭取としての責任は どうなりますか?

このような状態で 万一 阪神特殊鋼が倒産でもすると・

総額550億の負債を生じ・

我々 銀行筋は 巨額の 焦げ付きを作ってしまいます

その一方 連鎖倒産する下請けも 続出する事態に立ち至りますから

そんな事態に陥らぬ前に・

私は 会社更生法を 申請すべきだと考えます

メインバンクとしては 甚だ残念ですが・

事ここに至っては しかたがないでしょう

お受けしたいと思います ちょっと待ってください

それは 時期尚早だと思います

…とおっしゃると 三雲さんには 何かお考えでも?

いや しかし 基幹産業であり 業界第1位の阪神特殊鋼が・

会社更生法の適用を 受けるということになりますと・

その社会的な影響は甚大です

しかも 長期的に見て 成長力のない企業ならともかく・

一時的な不況にたたかれて 経営が悪化したからといって・

見放すのは 万俵さん

あまりにも 軽々しい結論じゃありませんか

いやあ おっしゃるとおりです

だが 当面の問題は資金です

それが どうしようもない段階では・

会社更生法の適用を受けて いったん 整理しないことには・

どこからの融資も援助も 受けられず

下手をすると 野たれ死にしてしまいます

(綿貫)《盟約書》

《我々 大同銀行は 前身の 関東貯蓄銀行時代から数えて・

65年の歴史と 伝統を誇る銀行である》

《しかるに 三雲頭取以下・

日銀天下り役員による 独断先行の経営態度は・

阪神特殊鋼への 融資加熱に見るとおり・

当行を 未曽有の経営危機に 瀕せしめた》

《我々が この危急存亡の機をしのぎ・

速やかに 名誉と信用を回復し・

かつ 未来永ごうにわたって 大同銀行の血脈を残すためには・

阪神銀行との合併が・

我々の取りうる 唯一 最善の道と考え・

それがため てい身することを 誓うものである》

《ここに 我々の決意を披露し・

その盟約書を交わす次第である》

・(仲居) 小島常務様がいらっしゃいました

(綿貫)入れ

(仲居)お料理をお運びして よろしゅうございますか?

ああ こっちから呼ぶまで 誰も近寄らせるな

かしこまりました (芸者)千様 あとでね

ああ

小島君 持ってきてくれたか? (小島)はい

小島君 署名してくれ (小島)はあ

(綿貫)誰にも気づかれずに 持ち出したろうな?

(小島)はい

何を迷ってるんだ?

どうしたんだ? (小島)専務

お願いです もう一度 お考え直しください

それらの書類を 阪神銀行に渡すことは・

大同銀行を 丸ごと 敵に売り渡すようなもんです

そりゃ 専務も私も・

たとえ 日銀天下り派に 積年の恨みはありましても・

大同銀行の歴史は・

専務と私の 苦節40年の歴史でもあります

(泣き声)

昭和6年・

仙台高商の先輩である 専務をお慕いして上京し

専務ともども 私も・

「たかが高商卒の能なし」などと 侮られて

それでも 専務と2人で 貯金箱を抱えて・

毎日 毎日 浅草や品川の商店街 回って・

1銭 2銭の金まで集めて歩いた あの苦しみを・

専務はお忘れですか

専務! 大同銀行の歴史は・

専務ご自身の 歴史じゃございませんか

今や 預金量1兆1000億 都市銀行 第8位の大同銀行が・

なんで 当行よりも下位にある・

阪神銀行の軍門に 下らにゃいけんのですか!

専務 もう一度…

もう一度 お考え直しください

小島君

よく言ってくれた

君との苦労を誰が忘れるもんか!

大同銀行に対する愛惜の念は 私は 誰にも負けないよ

だが 現状は どうだ?

日銀の天下り派が 我が物顔に役員室を占領して・

やりたい放題に 行内を牛耳ってるじゃないか

たとえ 我々が協力して 日銀派を追い出したところで・

今度は 大蔵省の官僚どもが 乗り込んでくるに違いないんだ

小島君 考えてくれ

いっとき 阪神銀行に下っても 私は 必ず 頭取になってみせる

私が頭取になったら 副頭取は 君しかいないじゃないか

小島君 分かってくれ うん?

専務…

(永田)鞍馬石は・

そこのツツジの寄せ植えの間に 置きましたよ

これは どうも恐縮です 横の秩父石も結構ですね

いやあ あれは 大きいだけが取り柄でね

ご静養先ですから 用件を簡単に申し上げます

実は 私のほうの 阪神特殊鋼の件ですが・

これ以上 今の状態で 生き延びることは困難ですので・

2~3日中に 大同銀行の 三雲頭取と通産大臣を訪ね・

会社更生法による政府救済を お願いにまいることになりました

う~ん ダメか

協調融資の銀行団で もっと 面倒を見るわけにはいかんのかね

はあ 非力にして これ以上は…

よし 阪神特殊鋼の件は了解した

だが 関連倒産は・

できるだけ最小限に 食い止めるようにしてもらいたい

それは 全力を尽くします

阪神特殊鋼が倒れるのは 致し方ないとしても・

融資銀行は大丈夫かね?

もし それでガタガタになるようなら・

一般預金者に迷惑が及び

そうなると 大蔵省の責任問題にもなる

大臣 今日の もうひとつの用件は そのことなんです

…というと 君のところの銀行が 具合でも悪いのかね?

いえ 幸いにして 当行は軽微です

問題は大同銀行で

もしかして 大同銀行は この件が 命取りになるかもしれません

大同銀行が? どういうことなんだ

大同銀行は 特殊鋼の不況が深刻になっても・

積極融資の方針を変更されず

正直申して 私のほうも心配していたのですが

他行さんの融資方針に・

とやかく くちばしを入れるのも 差し出がましく・

今日に至りましたが

この度の 長期開発銀行の財務調査で・

大同銀行は メインの当行を 上回る融資を行い・

大変な深入りをしてることが 判明したのです

うん…

阪神特殊鋼が 全くの他人の企業であれば・

これは 他行さんの ご意志による融資だからと・

横も向けましょうが…

何しろ 息子が 経営に当たってる会社だけに・

私としましても 道義的な責任を 感じないではいられません

それで もし 当行が・

大同銀行さんに対して 何か してあげられることがあるならと

大同銀行といえども・

痩せても枯れても 都市銀行の1つだから・

万が一のことがあっては困るが

業務提携でもするつもりかね

お言葉を返すようですが 業務提携では もはや・

靴の上から足をかくような 効果しかありません

すると 抱え込むつもりかね

もし 大臣のお許しさえあれば

先日 次女の婚約の件で・

佐橋総理を 官邸にお訪ねしましたが

その節 総理は 「永田大臣には・

何でも言ってくれてもいい」という ことでございましたので

フフフ… 相変わらず 万俵さん

あなたは シャチがクジラを 飲み込むようなことばかり・

考えていたらしいね

だが 現実の問題となると・

形のうえで どうしても 不均衡のそしりは免れないね

そこのところを どう 世間に納得させるかが・

難しい問題だ

…とおっしゃいますと 大同銀行の救済について・

大蔵省のほうでは 何か 青写真でもあるのでしょうか?

大同銀行は格好な花嫁だから・

そりゃ 1つや2つの縁組みは 当然 考えているだろうが

そりゃ 何とでもなる

私が言っているのは 不均衡の問題をどうするかだよ

大臣

あの鞍馬石と秩父石は 形も色も 全く異質で・

一緒に並べておくなど およそ考えられないことですが

事実 ああして組み合わせておくと・

案外 置き映えがいたしますね

銀行合併とて あれと同じではないでしょうか

そう言えるかもしれない

だが この庭には・

もう2つぐらい あってもいいだろう

なるほど

あと2つほどなら・

私のほうの 出入りの庭石屋に探させて・

いずれ お届けいたしますよ

やり取りだったが・

永田は 大介の野望を認めるには・

2億円の政治献金が 必要であるということを・

ほのめかしているのであった>

・~

・~

(債権者) なにグズグズ抜かしてんねん!

責任者を呼べ 責任者を! (債権者)社長は どないしたんや

(債権者)1500万円の 阪神特殊鋼の手形はな・

紙くずになってもうたんやぞ!

(債権者)今すぐ 弁償してくれんかったらな・

工場にある鋼材を 持って帰ったるわ ええな!

(記者)それじゃ あなたは 特殊鋼が高炉を持つこと自体に・

ムリがあったと 思ってないんですか?

いや ローコストの いい製品を生産し・

今後の国際競争に 勝ち抜くためには・

是非とも必要なことでした

(記者)しかし そのために 三十数人の死傷者を出して・

今 また 400億に上る負債を抱えて 倒産したんですよ

こんな結果を招いたのは 私の非力であり・

責任は痛感しております

しかし 高炉建設自体は・

間違っていなかったと 申し上げてるんです

(経理部員)誠に申し訳ありません

お前ら下っ端では話にならへん 社長を呼んでこい!

わいは あいつに話があるんじゃい!

(経理部員)社長は ただいま 高血圧で入院中でございまして

何やて・

わてらが 生きるか死ぬかの瀬戸際や うん?

だのに 病院なんかに逃げ込みおって!

アホんだら! 引きずり出してこい!

(記者)では 更生債権にならない 零細な下請け企業に対してですね

あなたは 私財を なげうってでもという気持ちが・

あるんですか?

私で できうるかぎりのことはして・

償うつもりで 今 準備を進めております

この手形をやな 今日中に買い戻さんと・

全部 差し押さえるっちゅうて・

内容証明付きで 送りつけてきよったんやで!

(債権者)そうやがな! (債権者)どないしてくれるんや!

(債権者)そうじゃ!

(債権者)わしら下請けの そのまた下請けの零細企業はな・

もっと惨めやぞ!

仕事がのうなったらな 9000円の家賃かて払えへん

一家心中せえっちゅうのんか! (債権者)死ねっちゅうことか

(記者)ところで 管財人は誰になりそうですか?

まだ決まっていません それは おかしいな

メインバンクの意向では 「ここまで深手を負った・

阪神特殊鋼の面倒を見られるのは 帝国製鉄を除いては・

考えられない」と 言ってるんですがね

阪神銀行の誰が そんなことを言ってるんですか?

万俵頭取ですよ

「あなたの父上」と 言うたほうがええかな

皆さんの前で はっきり申し上げますが

阪神特殊鋼は 決して 帝国製鉄の 傘下に入ることはありません

自力で更生します

今更 おわびの言葉もありません

鉄平君

私は 大同銀行 頭取である 公人としては・

君にわびられても 許すわけにはいかない

君と こうして 自宅で会うことすら おかしい

経営者として 私は未熟でした

ご迷惑をおかけしたうえ・

メインである阪神銀行より 大同銀行のほうが・

深手であるということを 聞きまして

いや 未熟だったのは 君だけではなくて・

都市銀行頭取としての私も 未熟だったのかもしれない

父に いろいろ 許しがたいことが おありだと思いますが

いや そのことは もう…

今度のことで もし・

三雲頭取の進退に 関わるようなことがありますと…

私の進退は・

いずれ 私自身が気持ちを整理してから・

決心することになるでしょう

今の私は 自分のことよりも・

銀行内部の動揺や 当行の 今後のことを懸念しているんです

何とおわびしていいか

鉄平君 失礼する

・~

・~

失礼しました 父が お見送りもいたしませんで

いえ 僕は あなたのお父さんのご厚意に・

大変なご迷惑を かけてしまいました

これからは もう お伺い できなくなるかもしれません

父は頭取として 厳しい態度を 取ったのかもしれませんけれど

心の中では・

今後の あなたの身の振り方まで 案じておりますのよ

三雲さんは そんなことまで…

何かと大変でしょうけれど・

お体 大切にあそばして

ありがとう あなたこそ

鉄平さん

父も私も・

鉄平さんを 肉親のように愛しておりますのよ

・~

では もう一度 お尋ねしますが

阪神特殊鋼を 帝国製鉄へ 身売りするというのは・

本当なんですか?

ここまで来た阪神特殊鋼を 救えるのは・

帝国製鉄以外に 考えられないと言ってるんだ

帝国製鉄の兵藤副社長と お父さんが・

このことで 何度か お会いに なっているということも・

事実なんですね

鉄平

お前は 自らの 経営者としての 無能を棚に上げて・

そんな言い方するのは よしなさい

わしは 阪神特殊鋼が かわいいと思うからこそ・

信頼のおける兵藤さんに いろいろと お願いしてるんだ

あなた ブランデーでも おつぎしましょうか?

鉄平さんも どう?

お父さん あなたは メインバンクの頭取として・

私に 会社更生法の適用を 勧告されたとき・

「男らしく受けろ」と おっしゃいましたね

僕も 今 お父さんに 男らしく 認めてもらいたいことがあります

お父さんが 阪神特殊鋼を・

意図的に 経営不振に陥れたことと・

僕の出生の秘密が 何か関わってますか?

鉄平 何を言いだすの およしなさい!

お父さん おっしゃってください

僕は あなたの子供ではなくて ホントは…

母と祖父との間に できた子供でしょう

うん?

黙れ!

答えてください

(泣き声)

お母さん 僕の本当の父親は誰なんですか?

僕は この問題で 長い間 苦しんできました

同じ苦しみをしてきた お母さんには・

今の僕の気持ちは 分かってもらえるはずです

(泣き声)

お母さん

子供の出生について 真実を語るのは母親の義務です

お母さん!

あなたは私の子供です

あなたは 私の産んだ子供です

僕が聞いてるのは 僕の父親です

教えてください!

あなたは私の子供です

教えてください お母さん

今の僕には それが必要なんだ

お母さん!

許して

許しておくれ

(泣き声)

許して…

(殴る音) アアッ!

お前は! アアッ! アアッ…

お前は! お母さんに触るな!

今度 お母さんに手を出したら 僕が許さん!

(泣き声)

・~

あなた方 何をしてんの?

・~

あなたは入らないで!

そう

・~

あなたが何と言われようと・

僕は まだ 阪神特殊鋼の代表取締役専務です

3000人の従業員のためにも 帝国製鉄への身売りは許しません

お前の再就職先は わしが決めてある

万俵倉庫の副社長だ

あなたは どこまで…

私は あなたを告訴します 鉄平さん…

お前が わしを告訴する? フフフ… 正気の沙汰か

何をもって 告訴しようというのだ

あなたは 阪神銀行の頭取であると同時に・

阪神特殊鋼の 非常勤取締役であることを・

まさか お忘れではないでしょうね?

その取締役が・

自社への不利益行為を行った 背信を告訴します

フン!

できるものなら すればいい

お母さん 失礼します

(泣き声)

何を泣いてるんだ?

お兄様 どんなことをしても 鉄を捨ててはイヤ

バカだな 当たり前じゃないか

(泣き声)

♪(従業員たち)がんばろう

ソレソレ!

♪ つきあげる空に

・♪ くろがねの男のこぶしがある

・(ノック) 入れ

(倉石) 約束の時間より 少し早かったかな

すまないが ちょっと 席を外してくれ

(金田・長谷川)はい

よく読ませてもらったよ

告訴できるか?

タバコあるか?

うん

これだけ証拠がそろってれば 特別背任罪で告訴できる

そうか

万俵 これは 弁護士として言うんじゃなくて・

大学時代からの 友達として言うんだが

親父さんを告訴して 本当に後悔しないのか?

「しない」と言ったら?

息子が親父を 特別背任罪で告訴したとなると・

世間の目 マスコミ 風当たりは強いぞ

万俵家の社会的地位も 葬られるかもしれん

・♪ 輪をつなぐ仲間の

♪ こぶしがある

♪ おしよせる仲間の…

これが最後だ

告訴状を作ってくれ

よし 分かった

じゃあ これに・

代表取締役 石川社長の 実印をもらってきてくれ

それに 君の実印もだ

頭取 大変なことになりました

鉄平君を止めてください

すぐ 鉄平君を 止めていただかないことには…

落ち着きなさい

何を言ってるか 分からんじゃないか

鉄平が どうしたんです?

・ ええ 鉄平君が あなたを 神戸地検へ告訴すると言って・

たった今 若い弁護士と一緒に 検察庁へ行きました

・ 鉄平が わしを告訴する? ええっ・

・ なぜ そのとき 鉄平を引き止め・

すぐ わしに知らせなかったんだ!

もういい!

ハア… 速水 顧問弁護士を呼び出してくれ

(従業員)管財人が来たぞ! (従業員)管財人だ!

(従業員)管財人だ! (従業員たち)帰れ!

(従業員たち)帰れ! 帰れ!

(和島) 神戸地方裁判所の決定により・

本日 午前10時・

阪神特殊鋼は更生会社となり・

私をはじめとする管財人 および 管財人代理が・

今後 当社の管理 運営に 当たることになりました

当社の倒産により・

数万に上る債権者 および 株主に 多大の迷惑をかけ・

その汗と油の結晶である財産を 一時 棚上げされ

このため 関連事業に従事している 幾多の人たちは失業し

あるいは 賃金の不払い 切り下げ等によって・

非常な苦しみを なめておられるのであります

(スピーカー) このようなとき 当社の従業員が・

人々の苦しみをよそに・

今までどおりの 在り方であることは・

道義的にも 社会的にも 許されるものではありません

したがって 従業員諸君は・

徹底的な経費の節約と 合理化によって・

1日も早く 会社の再建を図り・

債務の返済に 努力する責任があります

前途多難ではありますが・

再建への熱意を結集して まい進すれば・

必ずや 前途に 光明を見いだすことができると・

確信します

え~ 次に 当社の更生計画の 具体案について述べますが

その前に まず 役員の立て直しが急務であり

これから 氏名を呼び上げる役員は 即刻 解任しますから・

直ちに この場より退出してください

代表取締役社長 石川正治君

同専務 万俵鉄平君

・~

私に まだ何かご用ですか?

(和島)重要な用件ですので・

直接 私から あなたにお伝えしたいんです

あなたが 当社の非常勤取締役である・

万俵大介氏を 特別背任罪で告訴した告訴状は・

本日 当社の管財人である私が 取り下げました

あなたが… なぜですか?

あなたは 万俵鉄平個人としてではなく・

阪神特殊鋼 代表取締役専務として 告訴しておられる

しかし あなたは もはや・

当社役員では なくなりましたので・

新たに 当社の管理経営に当たる 私の判断で・

こちらへ赴く前に 神戸地検で 告訴を取り下げてきました

これが その告訴取り下げ書です

ご納得いただけたようなら・

私は また 講堂へ 引き返さねばなりませんから

では

(ドアが閉まる音)

・(従業員たち)倒産 反対! 倒産 反対! 倒産 反対…

ウンッ!

・ 倒産 反対! 倒産 反対! 倒産 反対!

・ 倒産 反対! 倒産 反対!

倒産 反対! 倒産 反対! 倒産 反対!

我々の手で会社を再建しよう!

(従業員)合理化によるクビ切り 絶対 反対!

(従業員たち)合理化による クビ切り 絶対 反対!

(従業員)阪神銀行は融資をしろ!

・(従業員たち) 阪神銀行は融資をしろ!

(ドアが開く音)

専務 うん

ピッツバーグの VSスチール技術開発研究所へ・

就職することを 許していただきたいんです

返事が来たのか

マサチューセッツ時代の 指導教授が推薦してくれて・

引き受けてくれました ふ~ん

おめでとう

四々彦! お前の勝手な振る舞いは このお父さんが許さないぞ!

父に何度も頼んだんですが・

僕の気持ちが 分かってもらえないんです

(従業員たち) わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい…

お前には あの声が聞こえないのか!

専務と私は 今日かぎりで この工場を去っていく

お前は みんなと力を合わせて・

阪神特殊鋼の火を 燃やし続けていこうという・

情熱はないのか!

お前が アメリカで学んできたことは・

こんな自分勝手で・

エゴイスティックな ことだったのか!

それが 専務に対する恩返しなのか!

一之瀬さん 四々彦君を ピッツバーグへ勧めたのは・

実は 僕なんだ

…で いつ たつんだ?

はい (一之瀬)しかし 専務…

向こうは 「すぐにでも来い」と 言っているんですが

二子とは話し合ったか? はい

僕の心は決まっていますが あとは 二子さんしだいです

二子さんが 自分の意志で 婚約を解消しなければ・

僕についてくる資格は ないと思います

アメリカでの生活が厳しいことも 伝えておきました

二子は 君をアメリカへ追っていくよ

あいつは そういう女だ

専務

こんなときに 勝手なことを言って 申し訳ありません

帝国製鉄の傘下に入る 阪神特殊鋼には・

どうしても 情熱が持てないんです

分かってるよ 君の気持ちは

たつ前に 1杯 飲もう 二子と お父さんとで

それじゃ ありがとうございます

うん

専務 申し訳ありません

・(従業員たち) 合理化粉砕! 合理化粉砕!

・ 阪銀融資! 阪銀融資!

見せかけ融資などの 違法行為によって・

阪神特殊鋼を 意図的に 倒産へ追い込んだとして・

国会の大蔵特別委員会で 真実を糾明すべく・

社民党の爆弾男といわれる・

荒尾 中根の両代議士に 証拠書類を提出したのである>

(荒尾)万俵大介も なかなかなヤツだな おい

(中根)うまくつつくと 大物が 引っ掛かるかもしれんな フフッ…

今回の件は 結局・

大同銀行の体質に 起因しているようだが

三雲君としては この問題に・

どう対処しようと しているんですか?

私といたしましては・

阪神特殊鋼の焦げ付きを整理し 軌道に乗せましたら・

引責辞任いたすつもりでおります

しかし 銀行局長の報告によると・

頭取が責任を取っただけでは・

今後の大同銀行の問題は・

解決しそうもないと いうことだがねえ

(三雲)…とおっしゃいますと? (永田)春田君

先日 松平総裁の ご意見を伺ってみましたが

「大同銀行の立て直しは・

やはり 独力では難しいのではないか」

…というようなご意見でした

そんなはずはないと存じます

松平総裁には 逐次 経過を報告し・

なんとか 独力で 大同銀行の傷痕を改善するよう・

助言をいただいております

(永田)そりゃ 君に対する 激励の意味じゃないかね

総裁は 春田君に 事実 そう言ったんだろう?

はあ (三雲)いや しかし…

独力でダメなら・

どっかに 手を 借りんといかんじゃないのか?

そうだろう? (三雲)…ということは・

大臣は まさか どこかと合併を…

三雲君 僕も 今度のことでは心配して・

金融界の心ある人の意見を 聞いてみたところ・

1 2 あるようだし 春田君のところには・

ほかにも いろいろ 青写真があるらしいじゃないか

はあ 実は 阪神銀行から・

「今回の件では 親銀行として 道義的な責任を感じているから・

大同銀行の 多額の焦げ付きの整理には・

積極的な協力をしたい」と こう言ってきてます

この際 阪神銀行との合併も・

ひとつの有力な考え方では ないかと思われますが

なるほど それも ひとつの考え方だね

大臣 お言葉を 返すようでございますが

当行には 他行との合併によって・

現在の危機を 乗り切ろうなどという意見は・

役員の誰ひとりとして 持っておりません

もし 仮に 私が そう考えましても・

大同銀行 1万人の行員は・

大臣のお考えの方向には 動かないと存じます

(永田) 井床君 このことについて 君は・

綿貫専務の意見を 聞いてみたんだろう?

(井床)はあ

綿貫専務は 合併については 必ずしも反対ではないようで

(永田)三雲君 まあ 一度 役員会にかけて・

慎重に考えてから 返事をしてください

しかし 僕の善意は大事にしてもらいたい

じゃあ これで

(ドアが開く音) (秘書)万俵頭取 お待たせしました

おっ 三雲さん

万俵さん あなたの狙いは これだったんですね

大臣に呼ばれてますので 失礼します

(ドアの開閉音)

(秘書) 三雲頭取 どうぞ お引き取りを

(三雲)改めて 役員諸君に聞きます

諸君らは 綿貫専務と・

本当に 意見 行動を 共にしているのですか?

(綿貫)頭取 甚だ 申し上げにくいことですが

私たちは 既に 書状をもって・

お互いの意志を 確認し合っております

なお ご納得がいかぬようでしたら 取締役全員を招集して・

役員会としての裁決を取るように 取り計らいますが

こんなことをして 君たちは 一体…

これはクーデターじゃないか! (三雲)白河君 よしなさい

連判状まであるなら 今更 裁決の必要はない

今回 私は 阪神特殊鋼の件で・

阪神銀行との合併を 当局から迫られ

君たちと 胸襟を開いて 話し合いたいと思っていました

しかし 今は もう・

君たちの心が 那辺にあるかが分かりました

あとは 諸君に任せます

(ドアが閉まる音)

じゃ ピッツバーグで あなたを待ってます

(二子)ええ 必ず まいります

二子さん 総理夫人の甥なんかに 負けることはない

思いっきり 肘鉄を食わせてやればいいんだ

ええ いいわ (男性)ウッ!

痛いですねえ (笑い声)

(小泉)当方が伺いたいのは・

結納も納まり・

来年の挙式の日取りも 決まっているという段階で・

婚約を解消するのは 両家にとって ゆゆしい問題です

下手をすれば 週刊誌のスキャンダルに・

なりかねないことを あえて なさるのは・

何か そちらのご家族は・

細川家との縁組みに ご不満でもお持ちなんざんすか?

いえ とんでもございません

では 仲人役の私に ひと言の断りもなく・

二子様ご自身が いきなり・

細川一也に婚約解消を 申し入れたりなすったのは・

なぜでございますか

昨夜 両親と当人が よく話し合いまして

私も同席いたしましたが

当人は どうやら 事を 取り違えているようでございます

…と申しますのも

その… 当人の兄の万俵鉄平が 専務をいたしておりました・

阪神特殊鋼が倒産いたしまして その…

帝国製鉄勤務の細川様に 嫁ぐことは・

兄を追い出した敵の所へ・

嫁ぐような気がすると申しまして

さすがは 大実業家の お嬢様でいらっしゃいますこと

でも それは理由になりませんことよ

いきなり 当人に 婚約解消を申し入れるなんて・

それがアメリカ式なんざんすか?

私 ソルボンヌでございますから・

フランスの家庭教育を 尊重していますわ

一体 あなたは 万俵家の何ですか?

あなたは 万俵家の人間ではなくて・

万俵家に雇われている・

ただの家庭教師に すぎないんでございましょう?

それとも 何か 万俵様と・

特別なご関係に おありなんざんしょうか?

今回のことは ひとえに・

家庭教師であった私の 教育の至らなさでございます

近日中に 両親と当人が・

奥様と細川家に おわびに参上いたしますから・

今しばらくの間 どうぞ ご猶予くださいまし

こんなことが・

一也さんの伯母の佐橋総理夫人の 耳に入ったら・

黙っておりませんことよ

私 外出いたしますので これで失礼しますわ

奥様!

お客様 お帰りだから お見送りしなさい

(女性)はい かしこまりました (小泉)よしよし よしよし

遅いな (中根)うん

おい 山本委員長に連絡してくれ (秘書)はい

(荒尾) 首相官邸で 総理に会ってるはずだ

首相官邸に持ち込まれ・

社民党 山本委員長と 首相との間で・

政治の取り引きに使われていた>

社民党が 大蔵特別委員会で・

大蔵省と阪神銀行に関する 黒い霧を・

追及しないことを条件に・

首相は 社民党が 提出している公害補償法案の・

国会通過を約束したのである>

抜け穴を作るためのものであった>

(佐橋)野党の中では 君の党を いちばん信頼しとるよ

(山本) ハハハハッ… 我が党だけですよ

国民の利益のために闘っとるのは

(笑い声)

あっ お待たせして どうも どうも

う~んとね 誠に残念ですが・

お役に立てないことになりました

どういうことですか? この間は お2人とも…

我が党の委員会で いろいろ検討した結果・

これだけの資料ではムリだという 結論に達しましたのでね

あしからず あの… 何が不足してるんです?

おっしゃっていただければ 改めて 資料を作ります

まあ… ムリでしょうな

あなたも だいぶ お疲れの様子だし・

少し ご静養なさったら どうですか?

では 我々は 国会がありますから これで

どうも

お待ちください!

あなた方も やはり… やはり? えっ? 何ですか?

あれ 見せて (中根)うん そやな

これは 今日の夕刊の早刷りですが

これを差し上げますから まあ ゆっくり お読みになることですな

・~

《「大同銀行と阪神銀行は・

このほど 両行の首脳間で・

一対一の対等合併に 踏み切ることで合意に達し・

近く 両行の重役会に諮って 発表する」》

《「合意内容によると・

合併後の新銀行の名称は 東洋銀行」》

《「来春4月1日発足をメドとし・

新頭取には 阪神銀行の 万俵氏が就任する予定である」》

《「都市銀行同士の大型合併は 戦後 初めてで・

両行の合併が実現すると・

一躍 都市銀行 第5位の 大銀行が誕生する」》

《「この合併は 金融界に衝撃的な影響を及ぼし・

銀行合併の起爆薬となることは 必至で・

いよいよ 金融界は激動期に入る」》

(永田) え~ 両行の合併によって・

規模の利益を生かし 国民経済の要望に応えることは・

金融効率化の主旨に かなうもので・

時宜に適したことと考える

え~ …で 今後 両行の努力によって・

新銀行が速やかに発足することを 期待するものである

鉄平さん どうしてらっしゃるかしら

神戸の家を引き払って・

奥さんの実家に 身を寄せているらしいよ

・~

・~

(市太)先代の大旦那はんは・

シシ撃ちに行くときでも いつも 弾は1発しか持たれんで

わしが 何度 「危ないから」と言うても・

「いや わしは1発しか持たん」

「1発で しとめんことには・

わしのジェームス・パーディが 泣く」言わはってなあ

剛毅な お方やった

それに 若旦那はんを 特に かわいがってはったもんなあ

・~

・~

・~

・~

(銃声)

(記者)万俵頭取に伺います

この合併話は いつごろから始まったんですか?

また 最初は どちらから 持ちかけられたんですか?

今年の3月ごろから・

大同銀行さんと いろいろと お会いすることが多くなり

どちらからともなく まあ いわば・

恋愛結婚とでも申しましょうか

(記者)しかし 合併のタイミングから見て・

阪神特殊鋼の倒産が きっかけに なったんじゃないですか?

そうではありません

阪神特殊鋼への融資は 両行 仲良く・

協調融資をやってきたというのが 実態です

まったく そのとおりです

(記者)この おめでたい席に・

三雲頭取の姿が見えないのは なぜですか?

それは 綿貫専務から お答えします

はい え~ 三雲さんは・

最初に申し上げましたように 目下 病気 入院中で

本人も 今日 自ら ご披露できないことを・

非常に残念がっております

病名は何ですか? (綿貫)はあ… その…

季節柄 風邪をこじらせまして

(記者)新銀行の頭取が万俵頭取で 副頭取が綿貫専務なら・

三雲頭取のポストは何ですか?

はあ あ~ 先ほども申し上げましたように・

病気中ですので え~

あっ 三雲頭取には・

会長のポストを お願いしてあります

(記者)しかし この役員名簿には・

会長の人事には 全く触れてませんね

あっ いや それは 三雲頭取は 健康上の理由から・

私に 頭取のポストを譲られたのですが

会長のポストも 同じ理由で固辞されているので・

実は 困ってるんです

えらいことになってしもうて

わしが もっと気ぃつけてたら 若旦那さん…

(泣き声)

(泣き声)

お義父様

鉄平の血液はB型でございました

(泣き声) バカな そんなはずはない

A型だ! いいえ 違います

鑑識課で調べていただきました

鉄平は お義父様とお義母様の子供です

そのことで 鉄平は苦しんで… (泣き声)

あ… あ… あなた…

あなたは… あなたは…

あなたは…

鉄平お兄様を殺したのは・

お父様とお母様です

違います! ち ち… 違います!

違います 違います…

違う… (市太)奥様!

兄さんの代わりに 僕が死ねばよかった

(泣き声) (市太)奥様!

・~

・~

(読経)

倉石です

学生時代に よくお邪魔した倉石弁護士です

ご会葬 痛み入ります

いや 友人として 力及ばなかったことを・

鉄平君に おわびに来ました

・(足音)

あっ…

お断りもせず 勝手に入ってきて 失礼しております

本日は ご遠路 お運びくだすって 誠に ありがとうございます

鉄平は 誰よりも・

あなたのご参列を 喜んでると思います

あちらに 供養膳の 用意がしてありますので どうぞ

いや 私も・

そろそろ 帰京しなければ ならないんですが

なんとなく こちらのほうへ 足が向いてしまいまして

いや… 私もです

万俵さん

鉄平君のように 意志の強い たくましい人が・

どうして 自殺なんて図ったんでしょうね

ご承知のように・

鉄平は 人一倍 責任感の強い性格でしたから・

阪神特殊鋼倒産の責任に 加うるに・

三雲さんにまで ご迷惑を おかけした申し訳なさに・

尽きると思います

それが原因なら 万俵さん

私の銀行家としての不明と あなたご自身の企業的野望とが・

鉄平君を死に追いやったと 言えるのではないでしょうか

見方によれば あるいは そう言えるかもしれません

しかし 企業であるかぎり 親子の間といえども・

致し方ない場合もありましょう

企業の発展のためには 肉親でも何でも・

人間的なものを 一切 犠牲にし 置き忘れていいものでしょうか

人間を置き忘れてしまった 企業というものは・

いつか どこかで 必ず つまずくときが来るというのが・

私の信条です

三雲さん 阪神銀行が やがて・

「座して 死を待つのみ」という 状況に追い込まれるとすれば

統率者たる者は 手段を選ばず・

隙あらば 相手を取って食おうと 考えるのは当然なことでしょう

鉄平君の死は この私でさえも 今なお 耐えがたい思いです

ああいう立派な後継者を 失われた あなたのご心中は・

お察しして なお 余りあるものがあります

失礼しました

・~

(アナウンス)ご案内いたします

この飛行機は 高度1万m 時速850kmで飛行いたしまして…

(乗務員)雑誌でもいかがですか?

(アナウンス)アンカレッジまでの飛行時間 6時間10分を予定しております

なお 途中の天候は 大体 良好とのことでございます

♪(バンドの演奏)

東洋銀行が発足したら 本店は東京になるから・

万俵家の生活も東京になる

君は どうするつもりだい?

私は 今までどおり 神戸の家で暮らすわ

万俵は 私なしには 済まされないんですもの

フッ… 大した自信だな

♪~

悪いけど 帰らせていただくわ

じらすのは よせよ 君からプロポーズがあったから・

今夜は ホテルをリザーブしたんだよ

私の移り気は 今に 始まったことじゃないでしょう?

ごめんなさい

僕をナメると ひどい目に遭うよ

ハア… あなたに抱かれても 心が温まるわけじゃないわ

どうしても帰るの?

あなたには悪いけど・

あなたと夜を過ごすことを 考えてみて 私…

ハア… 初めて… ハア…

万俵を愛してる自分に 気がついたのよ

この屋敷を 新しく改装することにしてね

君の荷物は 明日 神戸へ送ることにした

相談しなくて悪かったかね? フッ…

そりゃ あなたが どうあそばそうと ご自由ですけど

話があるから 下へ行こう

(鼓の音)

新銀行の発足と同時に・

財界人としての わしの舞台は 東京に移った

東京では 公私の生活が ガラス張りになるうえに・

小が大を食う合併を 成し遂げたときだけに・

マスコミ その他 周りの目が 全て 私に集中している

それでなくても・

都市銀行 第5位の 新銀行の頭取になったからには・

それにふさわしい経営者としての 社会的責任とモラルを・

自らに課さねばならない

そうなると 相子との これまでの生活は・

神戸の屋敷ででも 続けていくことは不可能だ

あら それじゃ お話が違うじゃありませんか

神戸のお屋敷でなら・

世間の目をごまかせるからって 私を説得なすったのは・

今のようなお話に 持っていくための・

方便だったんですの? そうじゃない!

新銀行合併直後の時点では・

それは 十分に乗り切れるつもりだった

だが 君も知ってのとおり 鉄平の死後・

いろいろと あらぬウワサを立てられ・

家族関係が詮索されだして

このままでは 乗り切れそうもないので・

考えた末の結論なんだ!

だからといって 今 急に別れるだなんて フフッ…

その気になれば どんな方法だって 考えられるはずですわ

だが もし 相子の存在が マスコミに知られてしまえば・

取り返しのつかない致命傷になる

この際 名実ともに 身辺を きれいにしておかなきゃならない

(鼓の音)

あなた…

(笑い声)

こんな物で・

19年間の あなたと私の間柄が 精算できるとお考えなの?

しかし 今となっては・

こうした形を取るしか しかたがない

私が お金で解決のつく女だと 思っていらっしゃるなら・

とんでもない間違いですことよ

じゃあ どうしろというのかね

どうなすっても 私は あなたとお別れしませんわ

だが 新銀行には代えられない

それが あなたにとって どんなに大切なことでも・

私の出方ひとつで・

大変なことに なりかねないでしょう?

脅かす気かね

相子は そんな くだらん女ではないはずだ

住まいのほうは 今 万俵不動産の手で・

大阪近郊のマンションを物色中だ

「絶対に応じられない」って 申し上げたら?

相子!

いらしてたんですの

あまり強気に出るもんじゃないよ

わしは 君が 美馬と 遊び歩いてることも知ってる

だけど 私は なにも 美馬さんとは やましい間柄じゃありませんわ

当然だろう わしは 「自分のことを棚に上げて・

あまり高飛車に 出るもんじゃない」と言ってるんだ

この2000万は そういう あらゆることを精算したうえで・

はじき出した数字だ

まさか その額に不満はなかろうな

あなたって恐ろしい人ね

ご自分の企業的野心を 満たすためには・

親子の絆も 男女の絆も・

ご用済みとなれば 平然と切っておしまいになるのね

別れない 意地でも 別れてさし上げない!

意地でも別れない?

相子らしくない取り乱し方だな

こんなとき・

あなたにも お子様があれば およろしかったのに

ハッ!

・~

ハア… フウ…

・~

あなたにとって・

私は 単なる 愛人ではなかったはずですわ

これは 19年間の退職金として いただいておきます

・~

(泣き声)

♪(会場の音楽)

♪~

(男性)おめでとうございます (男性)おめでとうございます

(男性)おめでとうございます

やあ 新銀行 ご披露 おめでとう

山本委員長 わざわざ どうも

今後とも よろしく ご指導のほどを

やあ おめでとう (綿貫たち)ありがとうございます

(大亀)わざわざ どうも

♪~

あっ… ご来駕 恐縮に存じます

おめでとう はっ

(大亀)ありがとうございます (松平)どうも

(通信社社員) おめでとうございます

ありがとう おめでとうございます

おめでとう (綿貫)大蔵大臣は・

確かに ご出席くださるんでしょうな?

うん そろそろ お見えになるころですよ

今日のパーティーには 君は・

次期銀行局長含みで 臨んでもらいたい

しかし 大臣

主計局次長の私が 銀行局長というのは・

序列を 飛び越えることになりますが

実は 今朝 重藤次官が 正式に辞意を申し出たんで・

後任は 春田君に内定した

したがって 春田君のあとの銀行局長は・

君にやってもらうつもりでいる

まあ このことは 春田君とも相談したうえのことだ

新銀行の誕生に当たっては 君も 大いに骨を折ったが

万俵頭取の娘婿という 関係を離れて・

次期局長として考えた場合・

東洋銀行の将来は うまくいくと思うかね

大臣 それは どういう意味の ご質問でしょうか?

東洋銀行は 発足したばかりの銀行ですから・

全ては これからに 懸かってると思いますが

そうかねえ

はっきり言って 弱い物同士が合併し・

図体だけが大きくなった銀行に 何が期待できるというのかね

それに あの弱体な役員の顔ぶれでは・

とても 今後 安心して任せられない

第一 万俵頭取に問題が多すぎる

問題とおっしゃいますと? (永田)君は知らないことだが

猟銃自殺をした長男の鉄平氏が・

死ぬ前に 社民党に ある一件を持ち込んでね

総理のお心を煩わしたうえ 我が党も 大いに迷惑を被った

(秘書官)大臣 そろそろ お出かけになりませんと

(永田)うん

では 大臣

新銀行の体質が それだけ分かっておられながら・

なぜ ご認可になったのですか?

君 分からんかね

それは 金融再編成の火蓋を切るために・

ともかく 都市銀行同士の 大型合併が必要だったからだ

春田君は その行政指導の大任を 見事に果たし・

それを手土産にして 次官に昇進するのだ

次期局長たる者は・

今日 発足した東洋銀行の 体質を改善し・

名実ともに ワールドバンクたる 銀行を作ることだ

それには 東洋銀行を・

上位4行の1つと 合併させることだ

上位4行のうち・

合併したばかりの東洋銀行を 押さえ込めるのは・

まず 五菱銀行をおいて ほかにない

次期局長たる君の仕事は・

東洋と五菱との合併を まとめることだ

大臣… (永田)しかし 君だって・

いずれは 代議士に 打って出るつもりなんだろう?

それとも 東洋銀行入りでも 考えているのかね

いえ 将来 政界入りを志してることには・

変わりはありません

大臣 お急ぎにならないと (永田)うん

それなら なおのこと 在任中に 大仕事をまとめ・

足場を広げておくことだと思うね

それには 銀行局長2年 次官1年 計3年のうちに・

東洋と五菱との合併を 実現させることだ

大臣

お受けいたします

本日は ご多用中・

政界 財界の ご要職の皆様方の ご出席を賜り・

ここに 東洋銀行を・

発足させていただく栄に 浴しましたことを・

衷心より 厚く お礼を申し上げます

(拍手)

・ 東洋銀行は 旧大同銀行と 旧阪神銀行とが・

対等合併したばかりの 新銀行でございますが

・ 1日も早く 行内の融和を図り・

新銀行の持つ全機能を発揮して・

日本経済のために・

大いに貢献させていただく 所存でございます

同時に 今後の国際競争に備え・

真のワールドバンクとしての 力を蓄えるべく・

役員一同 心を新たにしておりますので・

今後とも 温かなご支援のほど・

お願い申し上げるしだいで ございます

(拍手)

(シャッター音)

やあ 万俵頭取 おめでとう

東洋銀行の誕生を祝して 私が 乾杯の音頭を取りましょう

ありがとうございます

(拍手)

東洋銀行の誕生を祝して 乾杯! (一同)乾杯!

(シャッター音)

アアッ… 大臣 自らの乾杯 かたじけのうございます

いやあ

(拍手)

まあ とにかく おめでとう いや よろしく ひとつ どうも

(役員たち)おめでとうございます

永田大臣 ありがとうございました

綿貫君 ちょっと ご挨拶を はい

おめでとう どうも よろしく ひとつ

あっ 総裁 (松平)おめでとう

よろしく

(女性たち)おめでとうございます

(春田)大変だったですな おめでとうございます

ひとつ よろしく お願いいたします

(春田)よかった よかった

(男性たち)おめでとうございます

今 永田大臣から聞いたが・

次期銀行局長に決まったそうだね

おめでとう ハハハ…

ありがとうございます

まあ これからも しっかり頼むよ (綿貫)はい

うん? (笑い声)

(役員たち)おめでとうございます

・~

(銃声)

・~

・~

・~

・~

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