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(真辺(まなべ))約束しよう 七草(ななくさ)
私たちは またどこかで会うの
(七草)ここは どこですか
(堀(ほり))階段島(かいだんとう)
ここは捨てられた人たちの島です
この島を出るには
失くしたものを 見つけなければいけません
(七草) あまりに現実味のない言葉だった
でも ここが僕の居場所なんだと 素直に思えた
(七草)階段島
人口は およそ2000人
僕たちは ある日突然 この島にやってきた
ここでの生活は ごく普通で
寮で暮らし それぞれの部屋が用意され…
(ハル)おう いってらっしゃい
(七草) 食事を作ってくれる管理人までいる
あー 青春だね
(七草)島に1つだけある 郵便局が人々を繋(つな)いでいる
ただ どうして この島にやってきたのか―
知る人はいない
みんな その時の記憶を失っている
(佐々岡(ささおか))よっ! 見ろ 新作ゲーム やっとだぜ
まだ届いてなかったんだ
(佐々岡)2週間もかかったんだぜ
しかし 夏にこの階段はきちいな…
しゃあ! 行くぞ 七草
ほら ダラダラすんな
(佐々岡)よう! (男子生徒)おはよう
よお 委員長
(水谷(みずたに))それ やめてください
昨日 音楽祭の準備さぼったでしょ
(佐々岡)やってた やってたよ
よし
あっ ねえねえねえ ねえねえねえ 見て見て
レベルアップした ハハッ…
(戸が開く音)
(トクメ)おはようございます
(女子生徒) 先生 小暮(こぐれ)くんがいません
(トクメ)心配いりませんよ
彼はもう ここには来ません
(佐々岡)あーあ 借りてたゲーム 返しそびれたな
(トクメ)それでは ホームルームを始めたいと思います
えー 音楽祭も残すところ あと4日となりました…
(七草)階段島では しばしば奇妙なことが起こる
みんな この島を 受け入れているのか
それとも 受け入れざるをえないのか
少なくとも―
無理に“島を出よう”とする人には 会ったことがない
こんにちは (時任(ときとう))こんにちは
あっ ナナくん
(七草)はい
(時任)ちょうどよかった
はい
(七草)どうも (時任)うん フッ…
(野中(のなか)) 探し物が見つかりましたか?
(七草)ハッ!
(七草)僕はこの島について ある仮説を持っている
誰にも話したことはない
この島の秘密なんてものを 解き明かしたいとは思わない
真辺…
(七草) この物語は どうしようもなく―
彼女に出会った時から始まる
(生徒たちの話し声)
(戸が開く音)
(戸が閉まる音)
(トクメ)おはようございます
今日から 皆さんに 新しい仲間ができます
真辺由宇(ゆう)さんです
(真辺)やっぱり納得できません
(トクメ) 急に転校ということになれば―
不満に思って当然です
(真辺)そんな問題ではありません
ただ納得できないんです
納得して この島に 来る人はいません
あなたは これから時間をかけて―
ここでの生活で 少しずつ 納得を見つけていくのです
(真辺)階段島って なんですか
(トクメ) その答えは誰も知りませんよ
魔女の他には誰も
魔女…
(トクメ)ええ この島は魔女に管理されています
(真辺) 言ってる意味が飲み込めません
突然 この島に連れてこられて それは魔女の仕業で
それに納得して この島で過ごせってことですか?
(トクメ)なら 魔女の名前を
王様か政治家にすれば 納得できますか?
(真辺)いえ 納得できません
ここに通いながら
島から出る方法を 探せばいいじゃないか
僕は久しぶりに 君と一緒に授業を受けたいよ
なら 私と一緒に この島を出るって約束してくれる?
真辺由宇といいます
よろしくお願いします
(七草)僕は 真辺由宇が この島に来たことが許せなかった
(トクメ)それでは出席を取ります
はい
これから 島を出ることを 話題にするのは避けたほうがいい
どうして?
ここの人たちは 階段島を受け入れている
諦めて
でも目標を口に出すのは 間違ったことじゃないと思う
あらゆる言葉は 誰かを 傷つける可能性を持っている
どんな時にも 間違いのない言葉なんてないよ
(水谷)七草くんが 教室で食べてるなんて珍しいですね
一緒に いいですか?
どうぞ
水谷さん 後で真辺に 校内を案内してもらえないかな?
構いませんよ (七草)ありがとう
学校のことは 水谷さんに聞くのが一番いい
よろしく
あと 案内が終わったら―
早速 真辺さんにも音楽祭の手伝いに 参加してもらいたいのですが
約束はできない
私は島を出るつもりだから
真辺
できる限りのことは したいと思ってる
でも無責任な約束はできない
あっ それで構いませんから
(佐々岡)俺はいいと思うぜ 島から出るの
じゃあ 協力してくれる? (佐々岡)おう 任せとけ
あっ 俺 佐々岡
(真辺)よろしく (佐々岡)よろしく
(真辺)名前は?
堀…
(真辺)よろしく
(七草)うん?
ところでお二人 どういうご関係?
小学校と中学校が一緒だったんだよ
(佐々岡)へえ
(七草)真辺に賛同する人が いるとは思わなかったよ
(佐々岡)だって ここだと
新作ゲームが発売日に 手に入らないんだぜ
ダウンロードもできねえし
(七草)数日くらい待てよ
分かってねえな
発売翌日にはネタバレが ぶわーっと出るわけよ ネットで
見なければいい
お前ね それはスカートがめくれても
のぞかなきゃいいって 言ってるのと同じだぜ
無理じゃん (真辺)どういうこと?
いや 俺はのぞかないよ あくまで一般論としてね?
助けを呼べるよね ネットに繋がるなら
これって誘拐だもの
メールが使えるなら 警察に通報しよう
(水谷)メールは送れません すべてエラーになります
あと 掲示板なんかへの 書き込みもできません
基本的に この島のインターネットは 情報を受け取るだけです
納得いかない
何が気に入らないの?
不自由がぼやっとしてる
生活には困らないし 島はきれいだし
コロッケもおいしい
いいことじゃないか
でも私たちの意志は 踏みにじられてる
強制的に閉じ込められて ここでの生活を強いられてる
私たちじゃない
君だ
七草は この環境に不満がないの?
(バイオリンの演奏)
(七草) みんな この島に甘えて―
進むことをやめている
幸福からは遠い場所に あるのかもしれない
でも同時に 不幸からも 遠い場所にある
もしかしたら 僕らは 魔女に守られているのかも
少なくとも 何かに傷つくことはもうない
(ナド) それはどうかな? 真辺由宇
彼女は どんな特徴を 持っているんだろうね
まっすぐなんだよ
(ナド)まっすぐ?
純粋な直線みたいにね
1つの方向にまっすぐ
よく分からないな
言いかえれば 理想主義者なんだよ
なるほど
そりゃ すぐに捨てられそうだ
(豊川(とよかわ)の泣き声)
佐々岡さん? (佐々岡)違う 違う違う違う
あっ…
弦が…
替えはないんですか?
(佐々岡)委員長
知り合い? その…
中等部の豊川さんです
寮が同じで 私が音楽祭に出るように勧めました
(佐々岡)なんかするの?
メインプログラムで 演奏する予定です
じゃあ 俺が見つけてきてやるよ
えっ この島に 弦なんて売ってませんよ
任せとけって
そうそう こういうのだよ
(豊川)ハァ…
あっ…
(真辺)捨てられた人たちって どういうこと?
(七草)そのまんまじゃないかな
恋人に捨てられるとか 会社に捨てられるとか
(真辺) 私たちは誰に捨てられたの?
知らないよ
知らない人に捨てられるなんて ありえる?
それに限らずこの島は ありえないことが多いから
遺失物係まで
(野中) 探し物が見つかりましたか?
いえ 彼女の案内です
(操作音)
実は 野中さんに 聞きたいことがあるんです
魔女のことで
魔女を知ってるんですか?
あっ… いや 知ってるとまでは言えませんが
私はこの島を出たいと思っています
お願いです 魔女のことを教えてください
魔女は かわいそうな人ですよ
かわいそう?
どうしてですか?
(野中)この島を 管理しなければならないからです
私なら耐えられない
あなた お名前は?
真辺由宇です
この島を出たければ
真辺さんが失くしたものを 見つけることです
他に方法はありません
失くしたもの…
3か月分の記憶かな
(七草)もし君が何を失くしたのか 分かったら ここに来ればいい
でも多くの場合 遺失物係には鍵が…
(真辺)開けてください
誰かいませんか!
すみません
誰か! (時任)おーい ナナくん
(時任)真辺由宇
だからマナちゃん?
(真辺) いくつか聞いてもいいですか?
まあ まずはこちらをどうぞ
いただきます
はい (七草)ありがとうございます
おいしい
そりゃ よかった
もう会った時から 眉間がぎゅーっと
そんな顔?
してたよ まあ 僕はもう慣れてるけど
かわいい顔してんだからさ もったいないよ
ナナくん 君が笑顔にしてあげないと
いや 僕にそこまでする義務は ありませんから
あっ
そういうこと 女子の前で 言っちゃいかんよ
ねえ?
手紙を使って 助けを求めることはできますか?
あっ…
ちょっとは雑談 付き合ってくんないの?
ほら また んんっ…
フッ
真辺はこうなったら動きませんよ
手紙を島の外に送ることはできない
定期便があるんですよね
それに乗っていくことは? (時任)できないね
じゃあ 泳いで渡ることは?
やってみれば?
泳げたっけ?
詳しくは本人に聞いてください
(真辺)本人?
うん 魔女
会えるんですか?
手紙なら届けるよ (真辺)どこにですか?
(時任)学校の裏には 山へと続く階段があるの
その階段は魔女の館へと続く階段
後は 上った先の郵便受けに 手紙を放り込むだけ
(七草)上るつもり?
(真辺)うん
この階段
ウワサでは誰にも 上りきれないって言われているんだ
きっと時任さんは からかったんだよ
じゃあ それを確かめる
仮に上れたとして
どうするんだ?
とりあえず魔女に会って話をする
何を?
簡単に人を 捨てていけるような場所なんて
あっていいはずない
真辺!
もう日が暮れる
なんだか不思議
何が?
気がついたら知らない島にいて
いつの間にか3か月も 時間が進んでて
七草がいて
僕もだよ
君がこの島にいるなんて
でも違和感がないの
つまり… なんていうか自然なの
もっと いろいろ混乱しそうなのに
2年前 七草にさよならを言った時
また君と こういうふうに 歩くなんて想像もつかなかった
そうだね
(七草) 真辺由宇に初めて出会ったのは―
小学4年生の頃
ある日 学校の前に 子犬が血を流して倒れていた
“かわいそう”と 無責任に誰かがつぶやいた
僕も同じ気持ちだった
でも 真辺由宇は子犬に駆け寄り 躊躇(ちゅうちょ)なく抱き上げた
白い服が血に染まり―
誰かが“汚い”とつぶやいた
彼女は言った
“大丈夫 大丈夫 絶対に”
そして まっすぐ前だけを見て 走り出した
僕には彼女が美しく見えた
(足音)
今 何時ですか
(ハル)急いでも無駄な時間
ちょいちょい 大っきくなれよ
(七草)手紙を書いていました
手紙ですか
はい
(トクメ)遅刻をしてまで?
はい
今朝 階段に落書きが されていたことは知っていますか?
(七草)学校の裏手にある階段で 見つかった星と拳銃の落書き
“魔女はこの島に 過去ばかりを閉じ込めた”
“未来はどこにある?”
(七草)失礼しました
(戸が閉まる音)
(ナド)やあ
(七草)君も?
授業に出てない僕が 疑われるのは仕方ない
(ノック)
失礼します
魔女と会って話をする?
(真辺)うん この島と外を結んでもらう
考えてみたんだけど
結局 階段島が 隔離されているからいけないんだよ
元いた所と行き来が自由なら 私は ここになんの不満もないもの
(佐々岡)それ 最高
話が大分 飛躍していると 思うのですが
委員長 これできたらすげえぜ
豊川さんの弦も
俺の新作ゲーム発売日に やりたい問題も 一気に解決じゃん
そもそも この島を出るためには 自分が失くしたものを
見つけなければならない ということになっています
前提から おかしなルールを 気にしていても仕方がないよ
おかしい?
(戸が開く音)
まだいたの?
(佐々岡) お前を待ってたんだよ 喜べ
どうだった? (七草)どうって?
疑われた?
(七草)まあ それなりに
じゃあ 真犯人を見つけよう
真辺さん
この島のルールが おかしいと言うのは?
そもそも失くしたものを 見つけるなんて可能なの?
そもそも失くしたものを 見つけるなんて可能なの?
(七草)豊川さん?
(水谷)どういうことですか?
(佐々岡)弦の…
(真辺) 私が失くしものをしていたとして
それを失くしたのは どこだと思う?
少なくとも この島ではありませんね
島から出るために
島の外にあるものを 探さないといけないの?
それは…
一度 整理してみましょう
真辺って意外と頭いいの?
答えづらい質問だね
(佐々岡) お前はどっちの味方すんの?
(七草)味方ってなんだよ
(佐々岡)いいよな 女の子が言い争ってると
なんか青春って感じするじゃん
別に二人とも 言い争ってるつもりはないと思うよ
いいや 俺の見たところ―
委員長は相手を 言い負かしたがるタイプだな
真面目に考えなよ 佐々岡
いや 考えてるよ
これから すっげえいいこと 言うつもりだったんだぜ
(水谷)前置きはいいから さっさと言ってください
(佐々岡)つまりさ
俺たちが失くしたものは この島でも取り戻せるものなんだよ
(水谷)どういうものですか?
(佐々岡)例えば…
愛だな
なんだよ!
愛だよなあ?
ともかく! 失くしたものは 遺失物係が管理しているはずです
ならば それは物体で
私たちと一緒に この島に 運ばれてると考えるのが自然です
なるほど そうか
遺失物係を どうにかする方法があるね
あそこには鍵がかかっています
(真辺)この島にも チェーンソーくらいあるでしょう
(水谷)犯罪ですよ (佐々岡)ああー!
なんですか もういきなり
(佐々岡) 落書きの犯人を捜すんだよ
落書きのメッセージ 覚えてるだろ
あの あれ…
ほら あの…
(水谷)“魔女は過去ばかりを この島に閉じ込めた”
“未来はどこにある?”
そう! この意味深っぷり
ぜってえ魔女のこと知ってんだよ
で 犯人を見つけたら 次のイベントが始まる
完璧
(イスを引く音)
七草くんはどう思いますか?
できることから やっていくしか ないんじゃないかな?
法律に触れない範囲で
そうですね
では 手分けして
落書き犯の情報収集をする というのはどうでしょう
しゃあ! 俺について来い
手分けするって言ったでしょ
僕は堀と行く所があるから 後で合流するよ
おっしゃー!
手がかりになりそうなこと 探してるんだけど
なんでもいいんだけどない?
(男子生徒)うーん いや 分かんないな
ウワサとかは?
(男子生徒)ウワサか…
知ってる? (女子生徒)知らない
(佐々岡)ねえねえ ねえねえ… この落書きについて何か知らない?
(女子生徒)は? 知らんわ
(真辺) じゃあ 落書きについては?
(佐々岡)あっ ねえねえねえ この落書きさ 知らない?
(七草) 無理やり付き合わせてごめん
犯人捜しには興味なくてね
手紙 読んだよ
君の言うとおりだよ
真辺は危険だ
厄介なことに巻き込まれるし
真辺自身が とても危ういと 僕は思ってる
理想しか見えなくて
そのためなら どんなことだってする
そのために そばにいるの? 真辺さんの
(佐々岡)よう!
(七草)女子寮の前で何してるの?
(佐々岡)男はつらいよ (七草)へ?
いやさ 全然 情報なくて
委員長が欠席した人にも 話 聞こうって
そしたら豊川ちゃんが 休んでたってわけ
(七草)真辺も一緒なの? (佐々岡)うん
(水谷)真辺さん!
真辺さん!
どうしたの
真辺さんが その 豊川さんを…
傷つけるようなことでも言った?
(水谷)豊川さん 突然 泣きだしてしまって
(水谷)佐々岡さん! 男子はダメです!
(豊川の泣き声)
豊川さん
大丈夫ですか
(豊川の泣き声)
どうして豊川さんを泣かせたんだ?
私が泣かせたわけじゃないよ
じゃあ どうして彼女は泣いたんだ
悲しかったからでしょ
(七草)真辺!
(真辺)私は行かないといけない
行くって どこに? (真辺)魔女の所に
豊川さんの手紙を拾ったの
彼女が出る コンクールの招待状だった
音楽祭のこと?
違う 豊川さんが お母さんに宛てた招待状
だから元いた場所の
コンクールは今から3日後
島を出たいか聞いたら 彼女は泣いたの
隣にいればいいなら そうするよ
話を聞けばいいなら そうする
でも悲しくて泣くのは 当たり前なんだから
無理やり涙を止めても仕方がないの
根本的な問題を解決しないと
島を出るかどうか それは本人が決めることだ
もちろん そうだよ
でも階段島は それを決める機会さえ奪ってる
道が繋がっていて
それでも豊川さんが そっちに向かわないならいいんだよ
それは仕方ない
でも仕方ないって この島のせいにして
ただ膝を抱えてるのは 幸せなわけがない
うん 幸せなわけがない
でも 人は幸せを求める権利を 持っているのと同じように
不幸を受け入れる権利だって 持っているんだよ
でも…
豊川さんは泣いたんだよ
魔女に会わなきゃいけない
(七草)このまま―
真辺由宇が跡形もなく いなくなってしまえば…
2年前のあの日みたいに
(真辺) 遠くに引っ越すことになった
今 笑った?
えっ?
笑ったよね?
私は君と一緒にいられてよかったよ
でも もしかして 七草は ずっと迷惑だったの?
そういうつもりじゃ…
なら どうして笑ったの?
ごめんね
約束しよう 七草
私たちは またどこかで会うの
そしたら その時は 君が笑った理由を教えて
(七草) うなずけば よかったのだと思う
あるいは―
適当なウソをでっちあげて 笑った理由を説明してもよかった
でも なぜだか僕には そうすることができなかった
僕はまだ 僕が笑った理由を知らない
(七草)再び落書きが見つかった
“君たちは鏡の中にいる”
“君たちはなんだ?”
(男子生徒) 落書き犯 ナドだってさ
(男子生徒)ああ そうみたいだな
(男子生徒)ずっとナドなんじゃないか って思ってたんだよな
(男子生徒) “君たちは鏡の中にいる”
“君たちはなんだ?”
(女子生徒)君たちって誰?
(七草)どうして君が 疑われることになったんだ
授業に出ていなかったからじゃない
(七草)それだけか
あと 少しかすれていたから 書き足しといた
(七草)どうして
ちょっとした遊び心だよ
(七草) ずいぶん つまらないことをする
(ピアノの演奏)
(演奏が止まる)
(真辺)豊川さん
ピアノ 弾くんですね
うん 昔習ってた
そうなんですね
では失礼します
私は必ず魔女に会う
豊川さんも 元いた場所に戻れるようにする
もちろん 戻るかどうかは
あなたが決めればいい
真辺さんは強いですね
自分のことを そう思ったことはないよ
私…
この島に来た時 ちょっとだけホッとしたんです
どうして?
もう頑張らなくていいんだって
(ナド) 落書きのマークが気になってるんだ
何か心当たりがあるの?
ピストルスター
知っているかな
僕の好きな星だよ
もしも何かのアンケートで 好きな星を尋ねられれば
ピストルスターと答える
そんなアンケート 聞いたこともないな
君の好きな星は?
うーん そうだな…
俺はネメシスが好きだな
知らないな
まだ見つかっていないからね
君は誰かを かばっているんじゃないのか?
(豊川)水谷先輩
(水谷)豊川さん
昨日は大丈夫でしたか?
(豊川)相談があるんです
実は あの弦―
私が切ったんです
電話? (ハル)うん
ついさっき真辺さんって女の子から
あの なんて?
また夜にでも電話するって
あっ それと 一応 海に行くって伝えてほしいと
海?
(佐々岡)豊川ちゃん
ありがとう
(堀)どうして
どこまで行けるかなって
ホントだった
沖に漕(こ)いでいたはずなのに いつの間にか浜辺に着いてる
(堀)違う
(真辺)それに島を出ようとすれば 魔女が現れるんじゃないかって
違う
七草くんに迷惑をかけてると 思わないんですか?
えっ…
真辺さんといると
七草くんが 七草くんでなくなってしまう
ごめんなさい
諦めな (佐々岡)そこをなんとか
無理 (佐々岡)お願いします 時任さん
ないもんはない
(佐々岡) ここが最後の望みなんすよ
あのね
定期便を お急ぎ便なんて できないし
ましてやバイオリンの弦を ポンと出すことなんてできません
魔女じゃあるまいし
魔女…
ありがとうございます
(七草)魚でも取ろうとしたの?
言ってくれれば僕も手伝ったのに
堀さんと話した
そうなんだ
七草
人と人が出会って
考えが変わることって 当たり前のことじゃない?
どうしたの 急に
(真辺)それが嫌なら
山にでも こもって 独りで生きていくしかないんだよ
でも それが正しいとは思えない
分かるよ
でも君は ちょっと極端なんだ
正しいことの正しさを信じすぎてる
よく分かんない
七草の話は たまにすごく難しい
(男子生徒)いやあ いやいや…
(女子生徒)あっ じゃあ 私やりますね それでいいですか
(佐々岡)ハァ…
上れんのかな
(水谷)佐々岡さん?
(佐々岡)うおー! ハッ…
ああ なんだよ! 何してんだよ
(水谷)佐々岡さんこそ 何してるんですか?
はあ? もうホント委員長は おせっかい野郎なんだから
(水谷)上る気ですか?
おう 弦をゲットしてくる
(水谷)ちょっと待ってください
(佐々岡) 俺の人生が平凡なわけがない
(水谷)だから上れませんって!
(佐々岡)おっしゃ! 待ってろ ラスボス!
いつまでヒーロー気取りで いるんですか!
佐々岡さんは無神経すぎます
人の話を聞かないし
大体―
あなたは親切だって思ってても 豊川さんはそうは思っていない
あ?
いえ…
なんかあんなら はっきり言ってくんない?
この島に弦なんてあるわけないし…
あるかもしんねえだろ
ないかもしんねえけど
魔女だっているかも 分からないのに
そんな無駄なことして どうして…
じゃあ 心の底では全部 無駄だと 思って一緒にいたってわけね
いや そういうわけでは…
結局 委員長ってさ
自分が いい人でいたいだけだろ?
(雷雨)
(真辺)やむかな
(七草)どうだろうね
(真辺)落書き犯は ナドって人だったの?
(七草)違うよ
そっか
海に行ったのって 6年生の時だっけ?
(七草)5年生だよ
6年の夏は 君 足を折ってたでしょ
フッ…
海岸の近くに アイスクリーム屋さんがあったでしょ
すごく味が濃いやつ
人生で一番おいしいアイスだよ
そうだっけ
(真辺)約束したんだよ また このアイス食べに来ようって
よく覚えてないな
約束 忘れちゃダメだよ
できるだけ気をつける
もし僕が忘れてたら 君が思い出させてくれればいい
じゃあ…
2年前にした約束
覚えてる?
どうして笑ったか
教えて
違うよ 真辺
僕たちは
なんの約束もしなかった
(男子生徒)おはよう おはよう
(女子生徒)おはよう
もうちょっと上にあげてくんない?
(女子生徒)あっ おはよう
(真辺)魔女の情報 集めています お願いします
(女子生徒)魔女?
(真辺)お願いします
お願いします
お願いします
(ハル)コラ! 遅刻だぞ
ハハッ…
楽しい楽しい音楽祭じゃないの ええ?
そのはずだったんすけどね…
(戸をたたく音)
(ハル)うん
どうも
お願いします
豊川さん
私は まだ諦めてないから
やめてください
私は もう諦めましたから
豊川さん
ヒャー!
青春ですね
あっ
それ口にしたら 一気に年取るよ
いいじゃないですか
見守る楽しみは僕らの特権ですよ
(笑い声)
真辺さんは もう少し思いやりを 持ったほうがいいと思います
どういうこと?
まずは相手に合わせようと してみてください
思いやりというのは相手の 価値観で物事を考えることです
うん 分かった 考えてみる
でも…
でも?
人に合わせてばかりだと
自分にできることが 分からなくなるよ
(走る足音)
(佐々岡) ヒーローは遅れてやってくる
ババーン!
今回ばかりは見直しただろ 委員長
で 豊川さんはどこ?
(水谷)弦 見つかったんですか
おう!
えっ 何? どうしたの?
(水谷)あ…
豊川さんは辞退しました
その必要はないんだって ほら!
(水谷)豊川さんの意思です
意味 分かんねえよ
委員長 (水谷)あの弦は…
豊川さんが自分で切ったんです
豊川さんから聞きました
ごめんなさい
言えなくて…
じゃあ みんな無意味だったのか
俺は どうして つまらないんだよ
全校生徒に配るんだってさ
紙飛行機にでも使ってくれ
魔女も どこかで この音楽祭を見てるのかな
ここからは階段がよく見える
(七草)そうだね
魔女は階段を使うのか
それとも魔法のホウキで 館まで飛んでくのか
君はどっちだと思う?
何か見かけたの?
逆だよ
誰も階段を使わない
人も魔女も郵便局員も
(時任の荒い息)
(アナウンス)柏原(かしわばら)第二高等学校 音楽祭が始まります
皆さん 体育館に集合してください
1人にしてくれよ
(真辺)君が泣いてたから
泣いてねえよ
(真辺)私には 泣いているように見えた
(佐々岡)だから泣いてねえって!
みんながみんな 助けられたいわけじゃねえんだよ
(真辺)やっぱり泣いてた
弦が切れた時
どうして豊川さんは泣いてたのかな
演技だったんだろ どうせ
違う
今のなし
豊川ちゃんは
ウソつかなきゃいけないほど 追い詰められてたんだよ
何やってんだろ 俺…
こんなもの 見つかるべきじゃなかったんだ
うん そうかもしれない
でも まだ何かできることが あるかもしれないよ
これ以上 何かしたら傷つくだろ (真辺)もう傷ついてるよ
もっと傷つくって言ってるんだよ
それは いけないことなの?
ウソは見破られたほうが楽だよ
放っておいたら ずっと苦しいままだから
(つまずく音)
(水谷)堀さん…
ありがとう
私は水谷さんが―
誰よりも人を思いやる人だって 知ってる
そんなことない
私は
みんなに よく思われたいだけの…
ただの偽善者です
(戸が開く音)
(佐々岡)弦 見つけた
でも渡すかどうかは まだ決めてない
1つ 教えてほしい
どうして弾きたくないの?
答えによっては 俺は黙って ここから去る
フフッ…
なんですか それ
(吹奏楽部の演奏)
すごく大事なコンクールが あったんです
大きな会場に たくさん人が見に来て
友達も家族も
演奏中に弦が切れたんです
音楽が消えて
代わりに会場中のざわざわが 聞こえてきて
それから…
人前で弾くのが怖くなって
お母さんが言ったんです
もうやめていいよって
見捨てられたような…
独りぼっちになったような気がして
やめない
大丈夫だって言い聞かせながら もう一度 弾いてみた
けど…
けど まだやっぱり怖いんです
また あの時と同じように失敗したら どうしようと思うと怖くて
だから逃げたんです
君を傷つけたかったわけ じゃないんだ
ごめん
なんで謝るんですか?
悪いのは全部 私なのに
(佐々岡)悪くない
誰だって 逃げ出したくなる時はあるよ
俺なんて ずっと逃げてるよ
平凡な日常から なんでもない自分から
でも そのままじゃダメなんだよ
ああ ダメだよ!
俺が言うんだから間違いない
俺はあの時…
(バイオリンの演奏)
(佐々岡)この音を追っかけたら なんか始まるんじゃないかって
あの時 聞いた音
繊細でカッコよかった
カッコよくなんて…
すげえ よかった
俺 音楽のこととか分かんねえけど なんて言うんだろ…
この平凡な世界を 変えてくれるような音だった
もう一度 聞かせてほしい
もし この弦で君が弾いてくれたら
俺も変われそうな気がする
俺がやめさせない
何それ
(吹奏楽部の演奏)
(佐々岡)委員長!
あっ…
委員長!
おっ ナナくん
どうも
歩きなんて珍しいですね
ホント 暑いのに
誰かさんの青春に付き合わされてね
うん?
僕の手紙は届けてくれましたか?
もちろん
あの階段を上って?
何が聞きたいの?
あなたが…
魔女ですか?
(笑い声)
まさか
そうですよね すみません
どうして急に 魔女探しなんか始めたの?
別に ただの気まぐれですよ
個人的には放っておいて あげてほしいけどね
やけに魔女の肩を持つんですね
(真辺)七草!
(時任)よっ! (真辺)こんにちは
演奏 始まるよ
うん
(時任)マナちゃん来てから ナナくん変わったね
(佐々岡)おい おい おい
(七草)すぐ戻る
(佐々岡)おいおい もうすぐだぞ
(司会者)続きまして
中等部 豊川さんによる バイオリン演奏です
(拍手と歓声)
ハァ…
ハァ…
(バイオリンの演奏)
中で聴かないの?
(堀)苦手なの 人が多い所
なら 仕方がない
ウソ
七草くんに会いたくなかった
どうして
真辺さんと話した
そのことと僕に会いたくないことが どう繋がるの
勝手に七草くんの話をしたから
僕の話?
僕は気にしていないよ
真辺が迷惑をかけていないなら それでいい
七草くんは
どうして いつも 真辺さんと一緒にいるの?
(バイオリンの演奏が止まる)
(ざわめき)
(男子生徒)どうした?
(女子生徒)大丈夫?
真辺に付き合うことに 理由なんてなんもないよ
ささやかな偶然で僕たちは出会って 一度 離れて再会した
ただ それだけだ
(ざわめき)
大丈夫
大丈夫 絶対に
(ピアノの演奏)
(ピアノの演奏)
(ピアノとバイオリンの演奏)
堀はピストルスターを 知ってるかな?
ピストルスターは発見された時―
銀河で最も大きな星だった
でも地球から遠く離れてるから―
僕たちが目にする輝きはささやかだ
その光が僕を照らして くれなくてもいいんだ
ただ この広い空のどこかに―
強く気高く輝いてる星が 浮かんでいるんだって
信じていられれば それでいい
それだけで僕は幸せだ
僕は真辺の隣にいたいわけじゃない
ただ彼女が彼女のままで いてくれれば―
それでいいんだ
バカみたいにまっすぐに
強い光みたいに理想を 追い続ける彼女が―
この世界のどこかにいるのなら
それだけでいい
僕はね
少しでも彼女が欠けるところを 見たくないんだ
(拍手)
(歓声)
真辺さんが好きなんだ
(司会者)次の演目が始まるまで…
(佐々岡)すげえ すっげえよ
その なんだ… とにかく最高だったよ!
ありがとうございました
真辺ちゃんも すげえ!
委員長もすげえよ! (水谷)興奮しすぎ
先輩
迷惑かけて ごめんなさい
本当に すばらしかったです
真辺さんも
真辺さん ありがとうございました
こちらこそ ありがとう
一緒にできてよかった
はい
ありがとう 水谷さん
え?
水谷さんが言ったんだよ
まずは人に 合わせてみてくださいって
それでピアノを?
うん
ハハハ…
なあ? 結局 ほら みんな ハッピーになったしな
やっぱさすがだよ 委員長
魔女から
委員長って見えないとこで 支えてくれてたもんな
そういうの考えずに あんなこと言ってごめん
え?
まさか委員長 泣いてるの?
うるさい 関係者以外 立ち入り禁止です!
関係者だよ (水谷)関係者じゃないです
関係者でしょ
あっ 真辺さんはいいんです (佐々岡)俺は?
佐々岡さんは出てってください (佐々岡)お疲れ 豊川ちゃん!
(水谷)早く出てってください
(走る足音)
(佐々岡)時任さん
豊川って子 知りませんか?
この島では時々 人が消える
それだけのこと
(七草)佐々岡 (佐々岡)平気
連絡先くらい聞いときゃよかった
豊川さん
失くしたもの 見つけたのかな
私の失くしたものって なんなのかな
今日はもう遅い
帰って寝よう
(七草)僕はそろそろ―
真辺由宇に さよならを言おう
(スプレーをかける音)
(スプレーをかける音)
(スプレーをかける音)
(スプレーをかける音)
(スプレー缶が落ちる音)
失礼します
(戸が閉まる音)
(男子生徒) 犯人 七草だったかな…
(男子生徒)明らかに怪しいよ
(水谷)七草くんが来たら 聞いてみましょう
(佐々岡) んなことするわけないだろ
なあ 真辺?
(男子生徒)先生 来た
(男子生徒)先生
あの落書きの犯人って 七草くんですか?
(トクメ)七草くんは 体調が悪いようなので―
今日は帰ってもらいました
(真辺)七草!
(トクメ)真辺さん?
遺失物係まで
(野中) 探し物が見つかりましたか?
始めから答えは分かってました
七草!
待って!
(ドアが閉まる音)
(着信音)
(女性)失くしものは見つかった?
(七草)いいえ
僕は何も失くしてません
ただ…
七草が失くしたものは知っています
この島の人々は
現実世界で自分自身に 捨てられた人たち
僕は七草に捨てられたんですよね?
人が成長し―
大人になっていく段階で
いらなくなった人格が 集まった場所が階段島
僕らは僕ら自身によって―
くしゃくしゃに丸められて ゴミ箱に放り込まれた
七草は
自分自身の悲観的な人格を
嫌いな部分を この島に捨てていった
それが僕なんでしょう?
(女性)よく分かりましたね
(七草) どうして人格の一部分を―
切り取るようなことが できるんですか?
(女性)私は魔女ですよ
(七草) なら 元に戻すこともできる?
(女性)ええ 可能です
では あなたは元の世界に 戻りたいということですね?
(七草)いいえ
僕はこの島に不満はありません
でも―
たった一つだけ 決して許せないことがあります
僕の手紙は届きましたか
(女性)ええ
すみませんね まだ返事を書けていなくて
いいんです
今 答えを聞かせてもらえれば
僕は島の秘密を 落書きとして残しました
僕が落書きに込めたのは―
あなたが島の人たちに 知られたくない秘密です
未来は島の外にしかなくて
僕らは ただの捨てられた人格で
失くしものは 僕たち自身だということ
僕は次に もっと決定的な落書きを することだってできます
あなたは島の人々が真実を 知るようなことは望まないでしょう
(女性)そうですね
私はこの島の人々を守りたいのです
なら…
1つだけ 僕のわがままを 聞いてくれませんか?
真辺を…
真辺由宇を―
元の世界に返してください
(女性)階段を上りなさい
救いであれ そうではないものであれ―
すべては階段で見つかります
(不通音)
(受話器を置く音)
(真辺の荒い息)
(七草)どうして ここに?
落書き書いたの 君なの?
うん
(真辺)どうして?
意味なんてないよ
ウソ
一番 嫌いでしょ 他人に迷惑がかかるようなこと
君が犯人なら理由がないはずない
ただの落書きだよ
僕が勝手に いたずらして 見つかって叱られただけだ
(真辺)違う
私 七草のこと知ってるよ
秘密主義だし 平気でウソつくし
意地悪だし 素直じゃない
わざわざ僕にケンカを 売りにきたの?
(真辺)それに…
とっても優しい
誰よりも七草は優しい
だから心配になる
そんなことないよ
人に優しくするのは とても疲れるんだ
僕はすぐに諦める
簡単になんでも諦められる (真辺)違うよ
七草だけが私を見捨てなかった
真っ暗闇で豆電球1つあれば 救われるのに
私はそれを持ってないの
2年間 何度もそんな気がしてた
そのたびに君を思い出してた
七草が いつも照らしてくれてたの
私は君に守られてたんだ
何をするのか教えて
君が1人で苦労しているのを 私は絶対 許さない
階段を上ろう
(七草)真辺
僕たちは ずっと正反対だった
僕は悲観主義者で
真辺は どうしようもなく 理想主義者だ
だから僕は真辺を否定し
真辺を傷つけてしまう
僕たちは本来 一緒にいちゃいけないんだ
(七草)真辺由字は僕にとっての ピストルスターでよかった
この世界のどこか 群青色の空の彼方(かなた)で―
輝いていてほしかった
それだけだった
本当に
七草
一緒にいちゃいけない人間なんて いるはずないよ
(七草)2年前―
僕が笑った理由が分かった
君と離れられて安心したんだ
どうして?
それが僕の理想だから
真辺がいなければ 僕はこの場所を受け入れられる
僕は ここを楽園だって 言い張ることだってできる
君は1人で この島を出るんだ
(真辺)約束しよう 七草
私たちは必ず また出会うんだよ
約束しよう 真辺
僕たちは
いつまでも僕たちのままでいよう
さよなら
(七草)いなくなれ
群青
大げさに言えば
ピストルスターを 守りたかったんだよ
そのために僕は落書き犯と 疑われたわけだ
悪かった
君は俺とよく似ているね
どこが似てるの?
まるで愛を避けて 歩きたがっているみたいだ
ずいぶん悲観的なことを言うね
でも事実だろう?
どうだろう
僕は そろそろ行くよ
君がこのまま 後悔なく 過ごせることを祈ってるよ
ありがとう
(生徒たちの話し声)
(佐々岡)よう (七草)おはよう
おはようございます
今日さ なんかしねえ? 花火とか
花火 いいですね (七草)どうしたんだよ 急に
いいだろ 別になんでも
あっ バーベキューでもいい
いいですね
気を使ってくれてるなら 心配いらないよ
(女子生徒の話し声)
(七草)真辺はこの島に来た時―
3か月分の記憶がないと言っていた
僕がこの島に来たのも ちょうど3か月前
そして―
真辺がこの島に来た時に 着ていた制服は―
僕の高校の制服と同じだった
おそらく僕たちは この島で会う前に―
既に現実世界で再会していたんだ
だから七草は僕を捨てた
悲観的な僕が―
また彼女を傷つけてしまう前に
なのに…
私と一緒に この島を出るって 約束してくれる?
(七草)なぜ真辺は この島にやってきたのか
今となっては分からないし―
その問いに答えを出す意味はない
真辺由宇は もういない
(鳥のさえずり)
どうして…
約束したでしょ
また会おうって
僕は同意してない
うん
勝手に決めた
私が決めた約束を私が守った
島から出るんじゃなかったの
私だけ元に戻っても 意味がないでしょ
だって…
私ね
どうして この島に来たのか やっと分かったよ
何?
七草が七草を捨てたから
七草はいつだって 私を置いてっちゃうから
でも私は七草がいないと
今 目の前にいる 七草じゃなきゃダメなの
七草は…
私が戻ってこないほうがよかった?
また会えてうれしいよ
よかった
私には
どうしても許せないことがあるの
どうしても ここに 戻ってこなきゃいけなかったの
それは私にとって 一番 大切なこと
何が許せないの?
君と私のことだよ
私たちが
そのままじゃ うまく やっていけないなんて信じたくない
それじゃ まるで今までが 幸せじゃなかったみたいだもの
私は現実の私たちが 間違ってるって証明する
だから お願い
迷惑じゃなかったら
一緒に証明してください
♪~
(七草) この物語は どうしようもなく―
彼女に出会った時から始まる
(時任) やっぱり ここはいい所だよ
委員長
(水谷)しょうがない 付き合ってあげますか
(佐々岡)真辺
(水谷)真辺さん!
(笑い声)
~♪
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