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Zulu
♬~
回想
内大臣を関白にすべしとてえり。
天正13年
羽柴秀吉は➡
公家の最高職
関白に就任。
そして➡
石川数正 秀吉のもとへ出奔。
(豊臣秀吉)家康は 直ちに来て
余に ひざまずくべし。 さもなくば…➡
とおとうみ
三河も 遠江も➡
焼け野原と考えよ。
その出来事は
徳川家中に大きな衝撃を与えました。
(酒井忠次)数正には 数正なりの…➡
何か深い考えがあってのことじゃろう。
(井伊直政)このような書き置きを
残してでござるか?
殿を侮辱するものぞ!
(徳川家康)もうよい!
もうよい。
去った者のことは忘れよ。
今後のことを考えるんじゃ。
まさのぶ
(本多正信)まさしく 難儀なのは今後…。
何せ
あのお人が敵についたということは➡
我が方の子細 裏の裏まで何もかも
秀吉に渡ったと見るべきでござる。➡
今度こそ 秀吉は
迷うことなく攻めてまいりましょう。
(正信)これでも なお 戦えますかのう…。
せんぽう
やつが先鋒かもしれませんぞ。
守りを固め 戦に備えよ。
(正信)とりあえず
我が方の陣立ても全て改めるべきかと。
この際 武田の軍法を倣っては?
私に お任せを。
直ちに取りかかれ。
はっ!
♬~
私にも… 何も告げずに…。
残念でござる。
♬~
おあい
於愛。
それは何じゃ?
(於愛の方)
数正殿の屋敷にあったものでございます。
拙くて かわいい仏様。➡
数正殿が 手ずから
お彫りになったものじゃないかしら。➡
不器用な お方だったから…。
そんなものを持ち込むな。
燃やしてしまえ。
あ… 仏様でございますよ。
♬~
じょうらく
上洛か 戦か…
神の君は 決断を迫られておりました。
♬~
♬~
数正…。
帰ってきたのか?
♬~
なぜ わしを裏切った…。
♬~
なぜ わしを置いて…!
♬~
数正 おめえさんがやりゃ~。
はっ…。
はあ…。
また悪い夢でも?
ああ…。
風に当たってくる。
お供します。
あ…。
殿 しっかりなさいませ。
しょくだい
(燭台が揺れる音)
♬~
天正十三年11月29日 夜半。
日ノ本を巨大地震が襲いました。
いわゆる天正地震でございます。
(泣き声)
それは こっちじゃ。
於愛様。
はい。
こちらは いかがいたしましょう?
♬~
あ… よい。
♬~
はあ~ 殿に見つからなくてよかった。
於愛。
はい。
各地を見回ってまいる。
奥のことは頼む。
あっ はい お気を付けて!
何を隠した?
えっ? 何も?
何じゃ。
浜松に持ち帰ります。
仏様は ないがしろにしてはいけませぬ。
はあ…。
さあ 片づけましょう。
はい。
♬~
されど より甚大なる被害が出たのが
秀吉の治める畿内周辺でございました。
(豊臣秀長)あ… 兄様。➡
死人の数は どれほどになるか…
計り知れんわ。
ねね
(寧々)諸国の様子は?
(秀長)どっこも ひでえありさま。
(寧々)なんとまあ気の毒に…。
(秀長)ちなみに兄様…➡
徳川との戦に備えとった大垣城も
焼け落ちてまったわ。
もはや 戦どころではないわ。
民を救うのが先でごぜえますじょ。
速やかに立て直さねば
我らの足元が崩れてまう。
分かっとるわ。
つくづく… 運のええ男…。
家康… っちゅうんは。
のぶかつ
(織田信雄)
そなたにとっては 天の助けじゃ。➡
関白は まさに
兵を差し向ける寸前であった。
そなたは命拾いしたんじゃ。
上洛なされ。
今しかない!➡
もう負けを認めるべきじゃろう。
天下は関白のものじゃ。
数正は賢かったと思うぞ。
元はと言えば どなたのせいか。
信雄様が勝手に和睦をしたせいで…。
(忠次)殿!
信雄様。
我らは関白を信用できませぬ。
上洛すれば 殺されぬとも限りませぬ。
♬~
では…➡
関白が人質を出せば 上洛するか?
♬~
上洛するんじゃな?
♬~
そりゃあ 戦をせずに済むのは
結構でごぜえますが➡
誰を人質に差し出すので?
我らには子がおりませぬがね。
身内はおるでよ。
⚟(秀長)兄様。
連れてきたに。
まあ… 旭殿。
何故?
家康にゃ正室がおらんで…
いもと
関白の妹なら文句あるめえと 兄様が…。
こし入れさせるんきゃ?➡
されど 旭殿には旦那様が…。
別れさせる。
(寧々)そんな…。
(秀吉)ええな?➡
旭。➡
おめえが うまくやらんと 次は➡
かか様を送りつけることになりかねんに。
これくれえ役に立ちゃ~せ。
(忠次)まさか 応じてくるとは
思いませんでしたな。➡
されど
秀吉としては この上ない歩み寄り。➡
よほど 地震の後始末に
手を焼いておるのでしょう。
わしはもう 正室はとらんと決めておる。
この話 何としても断れ!
何か知恵を貸せ。 おい かずま…。
正信。
(正信)ありませんな。➡
正室とはいえ 形ばかりのこと。
もらえるものは
もらっておけばよろしいのでは?
秀吉の妹ならば
利用する値打ちは大いにありましょう。
上洛するか否かは また別のこと。
天正14年5月 豊臣秀吉の妹 旭姫が➡
神の君のご正室として➡
浜松に
おこし入れになったのでございます。
♬~
きぃ~! あ~!
あ~! はあ~。
徳川様が鬼瓦みたいなお方だったら
どうしよまいとビクビクしとりましたが➡
お顔を拝すりゃあ
何だしゃん 優しそうな色男で➡
まっ ホッとしましたがね!
ハハハッ。
もっとも殿は
こんな年増を押しつけられて➡
往生こいてまうでしょ~がね~!
ハハハハハ…!
そんなことは…。
(旭の笑い声)
うん うみゃ~!
ただよ
(大久保忠世)まさに 秀吉の妹だわ…。
(鳥居元忠)えらいのを押しつけられて➡
殿も お気の毒に…。
おい。
おい。
おい。
(旭)殿。 早くご上洛なさって 兄様に…。
(本多忠勝)おい。
(榊原康政)おい。
おい。
うん?
おい。
⚟(旭)旭にごぜえます。
めえ
おつとめに参りました。
(戸が開く音)
♬~
かめ
いえいえ お構えなく!
形ばかり 形ばかり!
めえ
アハ… 前のご正室は➡
麗しいお方だったそうで…。➡
こんなもんが代わりで
申し訳なく思っとります。
う~ん! おいしゅうございます!
於愛も。
うん!
(旭)それから➡
これは京で評判のおしろいでよ。
20は若くなるって。➡
おだい
於大様のような美しい方なら➡
ますます美しゅうなってまって
えらいこっちゃ!
おおっ!
ははうえ
(於愛)義母上様 塗り過ぎでは…。
えっ。
私でも ほれ このとおり…。
(笑い声)
殿方が びっくらこいて逃げてまうきゃ?
(笑い声)
まことに
愉快な方で ようございましたなあ 於愛。
(於愛)はい。
お仕えしていて 楽しゅうございます。
(笑い声)
(旭)呼んだきゃ?
なかなか楽しそうなお方様ですな。
ちかよし
(平岩親吉)まあ あのようなおなごで
殿のお命の保証となるのかどうか…。
はあ~。
(正信)殿。
何じゃ 正信。
あ~ 老婆心ながら➡
それとな~く探らせておりまして…
大坂周りを。
うん?
例の裏切り者でござる。
秀吉のもとで いかなる悪だくみを
謀っておるかと思いましてな。
興味がおありなら。
(忠世)別に…
放っておけばよいのではないのか。
うん?
ああ?
せっかくじゃ 申してみよ。
秀吉のもとで何をしておる?
な~んにも。
(忠世)何も?
これといった働きは
何一つ聞こえてきませぬ。
♬~
(正信)それなりの屋敷をあてがわれ
それなりの暮らしをしておるようですが➡
どうも
屋敷から出ることも めったにない様子。
これは いわゆる飼い殺しですな。
(親吉)飼い殺し…。
飼い殺しか。
秀吉のねらいは
殿から やつを奪うことであって➡
ちょうよう
初めから重用する気はなかった…
ということだろうな。
(直政)私は…
あの方が好きではなかった。
(康政)私も好きではなかった。
ああ。 好きではなかったが…➡
好きではなかったが…。
敬っておりました。
(康政)うん。
はあ~。
回想
(石川数正)決して お忘れあるな。➡
私は どこまでも➡
殿と一緒でござる。
♬~
(秀長)家康は
何のかんのと いちゃもんをつけて➡
上洛せんつもりだて。
役立たずな妹だわ…。
家康が何を言おうが関わりねえ。
もう一人 送りつけたる。
関白の母親が人質なら ま~ 断れん。
かか様は… 「うん」とは言わんに。
(秀吉)う~ん…
寧々 説き聞かせたってちょう。
私だって できませぬわ。
秀長!
弟よ これが最後だわ 家康に告げよ。
かか様が着いた その日に上洛せえ。
さもなくば…➡
天下こぞっての大軍を差し向けると。
何だしゃん 私のことを
雌猿と思ったんだわ!
(於大)アハハハハッ!
人の殿方には一向にモテんのに➡
猿には モテモテだわ。
(笑い声)
旭様。
アハハッ ハハッ 於愛殿。
珍しい南蛮菓子があるに 食べてきゃ~せ。
おおまんどころ
母上様が 大政所様が
こちらへ参られます。
かか様が?
(於大)ようございましたなあ。➡
お会いできるのが
楽しみでございましょう。
そうじゃな。
楽しみだて! やっかましいのが増えて
皆は大変じゃろうがなあ!➡
アッハハハ…!
(旭)うん! フフフフ…。
(於愛)殿 少々よろしいでしょうか。
あとにしてくれ。
ひょうじょう
これから大事な評定じゃ。
ご上洛なさるのですか?
まさか。
では 戦を?
あちらは妹君に加えて
老いたる母君まで差し出すのに?
秀吉にひざまずけと申すか。
ふびん
お二人が不憫なだけでございます。
要らんおなごを押しつけとるんじゃ。
うば
ここを姥捨て山とでも思っとるらしい。
殿! あまりにも
ひどい言いようでございます。
旭様は
あのように振る舞っておられますが➡
内心では どのような思いか…。
長年連れ添った旦那様と
無理やり離縁させられて➡
来たくもない国へ来て
殿のご正室になられた…。
わしの正室は一人じゃ!
猿の妹ではない。
人を思いやれるところが
そなたの取り柄と思うておったがの。
思いやりなんぞで 国を守れるものか。
これは わしと秀吉の駆け引きじゃ!
おなごは男の駆け引きの道具ではない!
母上らしくない物言いですな。
ご自身こそ
さんざん そのような目に…。
だからこそ せめて
ないがしろにされる者を➡
思いやれる心だけは失うなと
申しておる。
旭様の侍女に聞きました。
離縁した旦那様は
行方知れずだそうでございます。
♬~
(泣き声)
(元忠)既に 秀吉の使者が
岡崎に向かっております。➡
この場が最後の話し合いになるかと…。➡
畿内も地震から立ち直りつつあり➡
拒めば 今度こそ 戦かと…。
(忠勝)それでも よいではござらんか。➡
何年でも戦い続けて 領国を守り抜く。
(直政)さよう。 初めから
そのつもりであったはず。 迷うに及ばず!
(忠次)それは本心か? 平八郎 直政。
本当に戦えると思うか?
(忠次)どんな勝ち筋があるというんじゃ。
殿。
殿も 本当は分かっておられるはず。
我らは 負けたのだと。
それを認めることが
おできにならんのは…➡
お心を…
とらわれているからでございましょう。
とらわれているとは 何に?
今は亡き➡
お方様と… 信康様。
(忠次)そうでござろう?
悪いか?
♬~
もう誰にも何も奪わせぬ!
わしが…➡
わしが 戦なき世を作る。
2人に そう誓ったんじゃ。
殿を➡
秀吉にひざまずかせたら…➡
お方様に顔向けできん!
我らは 数正とは違う。
思いがある!➡
心がある!
その心を捨ててまで…➡
生き延びようとは思わん。
殿を天下人にし 戦なき世を作る。
それが 平八郎と私の夢だ。
♬~
評定のさなかぞ。
♬~
私には難しいことは分かりません。
なれど…。
お方様が目指した世は…➡
殿が なさなければならぬものなので
ございますか?
ほかの人が戦なき世を作るなら➡
それでも よいのでは…。
♬~
数正には…➡
それが見えておったのかもしれんな…。
自分が出奔すれば➡
戦は もうしたくてもできぬ。
それが 殿を➡
皆を➡
ひいては 徳川を守ることだと。
(正信)だから 誰も巻き込まず
己一人で間者となった。➡
罪を全て一人で背負った。
殿の ご迷惑にならぬように。
私 ずっと考えておりました。
なぜ数正殿が 仏様を置いていかれたのか。
(正信)何じゃ?
(元忠)花… 全部 押し花だわ。
(直政)どうして こんなもんが…。
(於愛)私にも分かりませぬ…。
でも… もしかしたら…。
♬~
(於愛)今はなき あの場所を➡
数正殿は
ここに閉じ込めたのではありませんか?
♬~
つきやま
(於愛)いつも… 築山に➡
手を合わせておられたのでは
ありませんか?
♬~
よい香りだ。
懐かしい… 築山の香りだわ…。
(すすり泣き)
なんとも…➡
不器用なお方じゃな…。
(忠次)それが… 石川数正よ。
殿。
お心を縛りつけていた鎖➡
そろそろ 解いてもよろしいのでは?
これ以上…➡
己を苦しめなさるな。
はあ…。
(はなをすする音)
平八郎…➡
小平太。
わしは➡
天下を取ることを…➡
諦めてもよいか?
♬~
直政…➡
皆…。
秀吉に…。
♬~
秀吉に➡
ひざまずいても…➡
よいか?
♬~
(忠勝)数正のせいじゃ…。
♬~
そうじゃ…
数正が裏切ったから… やむをえん!
やつのせいで わしらは戦えなくなった!
責めるなら数正である!
数正のせいじゃ! 殿は悪くない!
全て数正じゃ! 裏切り者め!
(忠次)数正の薄情者!
数正のたわけ!
数正のあほたわけ!
(直政)あほたわけ!
数正が! あほたわけ!
♬~
あほたわけ…!
♬~
(鍋)私は あなた様と のんびりできて
うれしゅうございます。
(鍋)あなた様の方こそ…➡
このような処遇に遭うと
分かっていながら…。
(鍋)まことに 殿がお好きでございますな。
シ~ッ。
あほたわけ。
(笑い声)
はあ~。
(足音)
あっ 殿。
かか様がござらっせるみて~だわ。
また やっかましいのが増えてまって
災難でごぜ~ますな。
もうよい。
もう おどけなくてよい。
つらい気持ちを押し隠し➡
両家の間を取り持とうと
懸命に明るく振る舞ってくれたのに…➡
老いた母君まで来させることとなり➡
まことに申し訳ない。
このとおりじゃ。
わしは 上洛する。
そなたのおかげで…➡
我が家中が少しだけ明るくなった…。
礼を言うぞ。
そなたは わしの大事な妻じゃ。
♬~
(泣き声)
♬~
関白秀吉が
天下を預けるにふさわしい人物か否か➡
この目で確かめてくる。
そして 関白を操り
この世を浄土とする。
それが これからのわしの夢じゃ。
手伝ってくれ。
はい。
♬~
(秀吉)上洛…。➡
ハッ。
♬~
わしらは もう 一つの家だわ!
この家康 殿下に陣羽織は着させませぬ。
ありゃ わしの息子なんかのう?
我らは 徳川殿を信用できぬということ。
この世から戦がなくなることは ねえ。
じぶのしょう
石田治部少輔三成でございます。
気が合いそうでござるなあ。
次回 どうする。
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