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♪~
~♪
(杉岡武子(すぎおかたけこ)) 坂松(さかまつ)組の3代目が亡くなって―
はや 1年と半ばになります
霊代として今日(こんにち)まで 私が組長の代行を務めてきたが―
今年 夏の三回忌の法要は―
ぜひ 4代目組長の手で 執り行(おこの)うてほしいと思います
跡目を決める方法は 3代目 舎弟頭(がしら)の佐渡(さど)はんと
若頭の海原(かいばら)に任せます
話し合いでも投票でも 私はかまいませんが―
跡目選出にあたって 組の統制を 乱すような行為した者は―
霊代の名において破門します
(組員1)ご苦労さまです (組員2)ご苦労さまです
(組員3)ご苦労さまです
(組員1)ご苦労さまです (組員2)ご苦労さまです
(組員3) 本日の出席者は6名 委任状24名
よって 本日の緊急幹部会は 成立しました
(木戸川亘(きどがわわたる)) 佐渡の兄弟は長年にわたる 3代親分の盟友や
貫禄と実績からして4代目は 佐渡拓磨(たくま)をおいてないはずや
(市元(いちもと)裕兵) 3代親分が亡くなったあと なんで霊代が―
3代目姐(あね)として 名跡を預かられたか…
それは 海原若頭を 4代目に育てるためや
若頭は期待に応えて―
今日まで280団体2万5000の 坂松組のリーダーとして―
立派な業績を残してきたんや
(幹部1)海原は まだ若すぎる
まず佐渡の兄弟を4代にして―
3年をめどにやな 海原に跡目を 譲るゆうのは… どうやろな
賛成しかねまんな
(幹部1)なんでや? (市元)はあ?
なんでや?
(市元) 今の時代 3年で社会情勢は 天と地ほど変わりまっせ
現に あれだけバブルで 舞い上がった日本の社会が―
今や 死んだも同然や
佐渡はん自身 何十億の借金抱えて―
破産同然だと聞いておりますわ
フン そんな 出来損ないの親分に―
誰が自分の命 預ける気になるかい!
(幹部1) 結局 最高幹部会の入れ札で 決めるゆうことになったんやが―
とりあえず 30票の内訳をやな 分析してみたんや
穂高(ほだか)
(穂高建造)舎弟会7人のうち 確実に取れる札は4枚で―
直若衆23人の分は どっちに転ぶか全く読めまへん
(幹部1) 悔しいけど資金力では 海原に到底 太刀打ちできへん
(佐渡拓磨)もういい
わしゃあ 跡目から降りる
穂高に跡目 譲って わしゃ 引退や ハハハ
すべては わしの不徳の致すとこや
堪忍してくれ
(木戸川)兄弟 待てい
このまま海原に天下取らしたら―
わしら 末代まで あのガキのケツ ナメて生きていかんならんで
(佐渡)しゃあないやないけ
空の鉄砲で戦争はできんわい!
20年前を思い出してくれ
坂松が中部に勢力 伸ばしていったころ―
兄弟の枝で 福井の洲崎(すざき)ちゅう 若い極道が 抗争で死によった
組員10人ほどの こんまい組やったが―
その女房が あとを継いで 今では組員300
北陸の女帝と言われるほどの 大勢力に のし上がっとる
3代に かわいがられて 女ながら 直若の盃(さかずき)もろて―
最高幹部会のメンバーなんやが―
3代の死後は 一切 渡世の表舞台には出とらん
北陸いう土地柄で 東京や大阪の波風も受けんと―
開発ブームに乗って 独り舞台の大もうけでな
個人資産だけでも 500億と言われとる
(木戸川) 洲崎を こっちの陣営に 引き込むんや
昔をたどれば兄弟とは 義理の親子にあたるわけやし―
脈あるんとちゃうか?
(佐渡)あかん
(木戸川)なんでや?
(佐渡) 脈は とうに切れたわ ハハ…
3年前 わしは洲崎に10億借りて そのままになっとる
(幹部1) どういうこっちゃ そりゃあ
(佐渡)わしが関急(かんきゅう)電鉄の株 買いまくっていたころや
資金に困って 話 持ちかけたら あっさり出してくれよった
(幹部1)どこで知りおうたんや?
(佐渡) 3代目 見舞いに行ったときや
3代のお気に入りで―
自分が死んだら 洲崎を頼むと言われたが…
ハッハッ まるで あべこべや
以上 これで この話は終わりや
どや おもろかったら お前 手ぐらいたたかんかい
(幹部2) せやけど ようまあ10億も…
あのころは誰もが わしが3代の 跡を継ぐもんやと信じとった
あの女もや
(木戸川) その後 洲崎に会(お)うたんか?
いや
(幹部1)金のことは? (佐渡)いや
(木戸川)催促もないんか? (佐渡)ない
太っ腹な女やなあ
腹だけやないで 見てても 震えがくるようなべっぴんや
貸し借りの立場が逆やったら 10億で わしが抱いとったわ
そんな気にさせよる ええ女や
(穂高)親分 (佐渡)んっ?
(穂高)洲崎さんの経営する クイーンズランドグループの1つで
周りはゴルフ場やそうです
(佐渡)ふーん なんで こないもうけよったんや?
(洲崎香矢(かや)) ようこんな遠い雪深いとこまで 来てくれはりましたなあ
ああ いやあ…
あんたが作った 北海道の城というのんを―
見てみとうなってなあ
同じ雪景色でも ここのは北陸と違(ちご)うて―
雄大で心が ぬくもるような 感じがしますのや
それに これだけ遠くに離れると―
いろんなことを忘れることができて 気に入ってます
(佐渡) その雪景色に わしが―
生臭いシャバの風を 持ち込んできたんや
すまんと思うとる
(香矢) いいえ わても親分に お会いしたかったんです
お元気そうで安心しました
(佐渡)あんたには ホンマに合わす顔がない
穂高から あんたが 会(お)うてくれると聞いたときにゃ―
思わず耳を疑(うたご)うた
今でもや
もう 帰れ言うなら 遠慮のう言うてくれ
この場で回れ右するで
フフフ それやったら ここまでお呼びしたりしまへん
なんぼ 要りますのや?
ざっと20億や
近々 正式に入れ札のことを―
組内に通達することに なるんやが―
その前に個人的な借金を 整理しとかんと動きがとれへん
もう それだけで半分は消えよる
そやけど もし仮にや
金を手にしたとしても 今のわしにゃ―
海原に勝つ自信はない
この3年で わしは年を取り―
海原は10倍も大きゅうなりよった
香矢さん
わしは3代の前で会うたときから ずっと あんたにホレとった
ホレた女に引導を渡されるのが 男には一番 効き目があるもんや
(機械の音)
9個やがな この丸の数は
この丸の数はどういうこっちゃ? この9個の丸は…
洲崎香矢が―
佐渡の親分の4代目に自分の札を 入れるということでおます
(佐渡)香矢さん
わしには もう何の担保もない
返済の当ても全くないんや
合わせて何十億の金―
みすみす どぶに捨てることに なるかもしれんのやで
(香矢) 3代親分の跡を継ぐのは―
佐渡拓磨という極道のほか わてには考えられまへん
香矢さん
ホンマに ホンマにええのんか?
はい
おおきに おおきに
ああ… これで 佐渡拓磨 生き返ったわ
夢… 夢と違うやろな? 夢と…
夢と違うやろな 夢と…
ああ 痛い 痛いわ アハハハハ
ああ うれしい わしゃ うれしい
これで50年の極道の意地懸けて 戦えるわ
万歳
万歳! 万々歳や! アハハハハ
香矢さん おおきに おおきに おおきに アハハ
わしゃ この恩義 骨が灰になっても忘れへんで
(海原泰明(やすあき)) 今度の4代目選出にあたって―
わしが公明正大な 選挙を主張したのは―
お前ら―
坂松の次代を担う若手幹部の 意思を尊重したいと思うたからや
投票権を持つ 最高幹部会30人は―
沖縄から北海道まで 日本全国に散らばっておるが―
お前ら それぞれの地域で 自分の意思が―
票に反映されるように 体張って頑張ってくれ
(男たち)おう!
(海原の舎弟)お疲れさまでした
牧内(まきうち)
(牧内)はい
(海原)土産は倍にせい (牧内)はい
(市元)若頭 (海原)おう
(市元)話がおます
やっかいなことに なりよりましたで
福井の女帝が佐渡に 選挙資金として20億ポーンと…
(松坂組幹部)佐渡は早速 弁護士 経理士 総動員で―
債務の整理にかかっとります
佐渡自身 自分の足で全国回って 立候補の挨拶する言うて―
まあ えらい張り切りようですわ
今日の研修会に 敦賀(つるが)の神鳥(かんどり)が来とります
神鳥は 洲崎の死んだ亭主の 舎弟やったから―
何か分かるかもしれまへん
(海原)会おう
(神鳥亮平(りょうへい))信じられんですよ 洲崎は亭主が死んでから―
一切 佐渡さんとの つきあいは なかったはずです
それに 事業一筋の あの姐が―
坂松本家の跡目のことに くちばし入れるなど考えられません
しかしやな
現実に3年前にも 佐渡に10億の融資しとる
2人のつきあいは 相当深いと見んならんな
すぐに つなぎ取れ
投資や
跡目争いに投資とは どういうことや?
(香矢) あんた坂松に上納金 月々なんぼ出してる?
(神鳥)20万や
(香矢)洲崎は300や
280団体 平均100万として 年に なんぼになると思う?
佐渡はんが4代になったら―
20億や30億の投資は すぐに取り戻せる計算や
(神鳥) 勝てるはずがないやろ 佐渡さんが
本部も組全体が ほとんど 海原4代目で固まっとるんや
あんたも海原さんに会うたら―
どんなにすごい人か きっと分かるはずや
なっ 頼むから海原さんに会(お)うて 話し合(お)うてくれ
(香矢) 亮平さん あんたこそ 佐渡はんに会うてみ
きっと好きになると思うで
(神鳥)フン 冗談やない
好き嫌いで負けると決まった 勝負に体張れるかい
(香矢) ハハハ バクチかて本命に張ったら もらいが少ないがな
アハハハ
(神鳥)姐(ねえ)さん
あんた この俺まで巻き込んで 神鳥 潰す気か?
あんたは わてにとって 弟同然の身や
勝ち目のない勝負に 誘うたりせえへん
わてを信じて ついてきたらどうや
あんた どうかしてるで 狂ってる
つきあいきれんよ
(三浪周造(みなみしゅうぞう))建設途中のビルが 建っとったんですが―
バブルではじけて 取り壊すのに 3億以上かかってます
当時に比べて 価格は4分の1で―
路線価格を下回ってますわ
買おか
(ブレーキの音)
(洲崎組員1)寄るな
おのれ コラァ
(洲崎組員2) 何しよる われ
(神鳥)オラァ
(洲崎組員3)オラァ
(神鳥)なんじゃ コラァ
洲崎さん
海原若頭から 具体的な条件の提示があった
海原さんは あんたの力量を見込んで―
政権樹立の暁には 本部の了解を得て―
実務一切を任せるということや
明日にも会いたいとのことやが 返事してもええやろな?
海原はんに―
返事は夏の最高幹部会で さしてもらいますと―
そう伝えなはれ
分かってんのか?
海原さんは自分の邪魔をする者は 絶対に許さん人や
ケンカで海原さんに 勝てると思うてんのか!
(市元の舎弟)親分
仕事が確かなのは この男です
前の仕事から1年半たちますが 全くノープロブレムですわ
おお つなぎ取れ
大阪のミナミ産業や
社長に代わる
仕事や
北陸の敦賀
的は お前に任せる
ケンカのスケやったら誰でもええ
お前やったら 眠っててもやれる仕事や
(崎津(さきつ)の子) これ 父ちゃんに買ってもらったの
(崎津の妻)ああ よかったね
(崎津清(きよし))しばらく留守にするで
気いつけてね
(神鳥静尾(しずお))新(しん)!
(村木新(むらきしん))姉貴 すまん
長いこと心配かけて…
元気で よかった
(松島(まつしま)明光) なんや新さん 一回りも二回りも 大きなりましたね
(静尾)もう2年やもんね
ほな 行きましょか どうぞ
神鳥は仕事で大阪や
これから福井へ寄って 洲崎の姐(ねえ)さんに挨拶していこな
あんたのこと いっつも 気にかけてくれてはるし
(ドアが開く音)
(静尾)あっ 姐さん
洲崎の姐さん 弟の 村木新です
いろいろと ご心配をおかけしましたけど―
やっと無事 勤めを終えて 戻ってくれました
(香矢)出所 おめでとうさん
(新)おかげさまで 無事 社会復帰できました
服役中は 何かと温かい お心遣い ありがとうございました
2年のあいだ 反省し学習したことを生かして―
更生に努め―
社会に ご恩返ししますので よろしくお願いします
フフッ 立派な挨拶や
静尾はん これやったら もう心配ないで
はい
出所前に そう言えと 教えられたんです
姉貴 もうええやろ 行こか
新 姐さんに失礼やないの
ハッハッハ おもろい子やな
ハアハア すんません
子どものころから何を考えてんのか よう分からんようなところがあって
姉さんは あんたを 極道にしたない思てる
あんたに真面目に働く気が あるんやったら世話するけど―
どんな仕事がしたいんや?
別に…
せっかく姐さんが世話するて 言うてくれてはるのに
ご心配いただいて ありがとうございます
分かった 頑張りなはれ
(河津明(かわづあきら)) 組長から お祝いです
姐さんに くれぐれも よろしゅうお伝えください
(河津)分かりました
(静尾)失礼します
(新)痛あ! (静尾)あんたちゅう子は…
姐さんのご機嫌 すっかり損ねてしもたやないの
(車のクラクション)
(静尾)香織(かおり)さん
敦賀の神鳥です お元気そうで…
これは 弟の村木新です
洲崎の姐さんの娘さんや
東京の名門女子大卒業して 去年 戻られたんや
(洲崎香織) やっぱり 組関係の人?
この子は違います
傷害事件で2年 打たれて 刑務所出てきたばっかりです
よろしゅう頼んます
私は3年で退学 遊びすぎが原因
あなたは卒業しただけマシだわ
ごっつい べっぴんはんでんなあ
なんで あんなこと言うたんや
恥ずかしいて汗かいたわ もう知らん
新さん はよ敦賀帰って アカ 落としましょう
世話しまっせ 女子大生でもOLでも さあ はよ
(南美(なみ))イヤ ちょっと 誰か!
あっ あ… 誰かー 殺される! うっ…
ああ ちょっと 誰かー!
(三浪安岐(あき)) お父さんは大阪の東のほうで―
従業員200人ほどの電気関係の 会社を経営しておられまして
本人は おととし 南光(なんこう)大学を卒業して―
今 お父さんの会社で 次期社長の勉強中やそうです
(香織)ねえ ママ (香矢)うん?
(香織) 敦賀のおば様の弟って どんな人?
(香矢) なんで そんなこと聞くん?
(香織)今朝 玄関で会ったの
すごく生意気な感じ
(安岐) 香織さん あきませんよ そんなチンピラに近づいたら
まあ この北陸で香織さんに ちょっかい出すようなのは―
どこにもおらんと思いますけど
(香矢) わて この大阪の人と いっぺん会うてみよかな
(安岐)姐さん 本気ですか?
冗談で娘の縁談する親が どこにおるゆうねん
(安岐)そやけど…
(河津夏枝(なつえ)) 安岐姐さんと言うてたんです
この程度の相手では 姐さんに また―
家柄も学歴も二流や言うて つっかえされるやろなって…
進めてんか
(安岐) 香織さんは? ええんですか?
私は ママに任せてるから
(安岐)ほな
(夏枝)早速…
(香織) どうしてママは私の結婚 そんなに急ぐのかな?
大学 辞めて 帰ってきちゃったから?
(香矢) なんで途中で辞めたんや?
失恋でもしたんか?
(香織)面白くなかった
学校も 外で遊んでても
女も男も―
することも しゃべることも みんな 同(おんな)じ
アホみたい
カッコばっかりつけて 中身は空っぽ
若いうちは そんなもんやろ
私 もう どこにも行きたくないなあ
ずっとママのそばにいる
一生 結婚なんかしたくない
そんなわけに いくかいなあ
女は結婚して子ども産んで―
ちゃんとした家庭を持つのが 何よりの幸せなんや
ママは死んだパパとのこと 何も しゃべってくれたことないよね?
ママの結婚 そんなに不幸せだったの?
幸せ知る前にパパは死んだ
香織に そんなつらい思いだけは さしとうない
普通の人と結婚しても幸せに なれるとは限らないと思うけどな
そんなことあらへん
ママが この目で よう相手を見て決める
ママ
今は幸せ?
幸せや 香織がいてるから
今の仕事 楽しいの?
さあ どう答えたらええのかなあ
パパが死んでから 無我夢中で今日まで来たし
私 友達に よくママのこと聞かれたの
“どんな人?”って
“日本一キレイで不思議な人”
いつも そう答えたの
自分のママなのに―
時々そうじゃないような 気がするって
うんと 遠くにいるような
分かったか? これが あんたのママや
今ここにおるママだけを あんたは信じてたらええのや
ママは どんなことをしても あんたを幸せにしてみせる
普通の 普通の女としてな
(車のクラクション)
(新)よう! 偶然やな
(男1)ドライブしようや
(男2)なあ 一緒に遊ぼうや ほら なっ
おい 何や コラ ああ…
(男1)何や コラァ!
(男2)うおー ううっ
(男1)コラァ
ああ あーっ
(殴る音) (新)おりゃあ
(男2)うおっ うう…
(男1)うおりゃ
(殴る音)
(男1)うおっ
(新)茶でもつきあえや
私に構ったら ママに殺されるわよ
(新) 上等や 殺してもらおか
(スプレーの噴射音) (新)ああっ あ…
(南美) こんばんは 南美でーす
よろしく
なんや またあんたか
どないしたん? その目
分かった あんた痴漢やって スプレーかけられたんやろ
なんで そんなことまでして やりたいの?
完全 病気やわ
帰らしてもらうわ
イヤ イヤや あんたとするの こりごりや
お金あげるし ほかの子 呼んで
(新)じゃかあしい 静かにしろ コラ
(南美)はい
お願いやし
殺すのだけは堪忍して
うち まだ死にとない
どないしたん?
怒ったん?
俺 やっぱり病気かな?
(松島) 新さん 自分から人夫 買(こ)うて出て―
よう 気張ってくれてます
2年 臭い飯 食うて ひと皮むけたみたいですわ
(静尾) そうやったら ええねんけど
一直線なんですわ 新さん どんなことにでも
せやから何か やりがいのある 仕事さえ見つかったら
(新)よいさ
はいよ
(神鳥)新 何が欲しい?
出所祝いや 遠慮のう言え
(新)車
そんな ぜいたく言うたらあかん
(神鳥)ええやないか よし 好きなん買え
あんた そんなことより 新の就職口 頼めんやろか
新しい火力発電所できるって 聞いたけど―
この子 一応 工業高校出てるし
新は俺が仕込む
いずれ実子分にして 俺の跡継ぎとして―
正式に披露するつもりや のう?
せやけど洲崎の姐(ねえ)さんかて―
新は極道にせんほうがええて 言うてくれてはるし
洲崎とは もう縁が切れた
あの女のことは二度と口にすな
(静尾)どういうこと?
(松島) おやっさん 皆 集まりました
あんた 待って まさか 洲崎の姐さんと…
新 あの人がどう言おうと―
うちは あんたのこと 極道にはせんからね
信じられまへんわ
洲崎の組長が坂松の跡目争いに かんでくるっちゅうのは
(園部行雄(そのべゆきお)) やりまっせ おやっさん
洲崎の首取れ言うんなら 今すぐにでも
(松島)アホ!
俺は海原さんの4代目に乗った
引き下がることはできひん
お前らも覚悟しとけよ!
(南美) 新 飲みに行かへん?
新!
なんや そういうことか
(新) これも おふくろさんのもんか?
(香織) ママが私のために作ってくれたの
夏休みになると 友達を大勢呼んで楽しかった
子どものころの話だけど
待ってよ ここまで来て逃げたりしないから
(新) お前 まだ男 知らんのやろ?
バカにしないで
東京で遊び飽きて帰ってきたのよ
あんたは やっぱり 最低なチンピラよ
ママの言ったとおりだわ
俺にホレたと言え そしたら黙って帰したる
同じ極道でも 私は洲崎香矢の娘よ
ママが私のために選んだ人は―
一流の大学を出た 立派な家柄の人ばかりだわ
その1人と私 もうすぐ結婚するの
そうか
そら おめでとうはん
(香織)ううん…
お前は自分から俺に会いに来た
こないなるのが分かってたはずや 覚悟せんかい
これ以上 私に触ったら ホントにママに殺されるからね
脱げ
全部 脱がんかい
俺が裸にしたろか
いいわよ いいわよ
殺される前に しっかり私の体 見ときなさい
ええんやな ホンマに
芝居は終わりや
お前が俺に気があると 分かって十分や
どうしたの?
やっぱり怖くなったんでしょ
笑かすな
お前は俺のタイプとちゃうんや
ぜいたくで高慢ちきで 同じ極道のくせに―
俺らとは 別の人間みたいな顔しとる
お前も お前のママも 俺の一番嫌いなタイプの女や
処女 大事に守って ママの決めたアホボンのとこ行け
(テレビから 車のクラクション)
ようできてるやないか
佐渡の親分が自分で脚本書いて プロに作らせたそうです
俳優もみんな 本職ですね
3代親分との終戦後からの苦労話や
さんざん聞かされて うんざりしてたけど―
映画にしてみると なかなか ええもんや
(三浪) これと同じもんを1万本作って 全国に配ったそうです
ほかにも 自分の名前入りの酒を作ったり
ハッハッハ 佐渡の親分らしいがな
昔から派手な お祭り騒ぎが好きな人や
(洲崎組員) 組長 お嬢さんがお見えです
どうしたんや?
香織 どうしたんや?
神鳥組の 村木新ていうヤクザ―
殺してほしい
何やて?
殺して!
香織 待ちなさい!
香織を止めるんや
組長 どうしたんですか?
神鳥組の村木新ゆうヤクザ殺せて 静尾はんの弟や
何があったんや
あのチンピラ 香織に何をしよったんや
敦賀の勝俣(かつまた)に調べさせます
あいつは しっかりしとりますから
♪~
(ホステス1) ママ ボトル空きました
(松島仁美(ひとみ)) どないしたん 新さん
何かあったん? えらいピッチ上がってるけど?
(園部) 新さん 彼女ができたんですよ
まさか
あの子と違うやろね
ホテトルやってるやろ あの子 アハッ
姐さん ショック死しはるわ そんなこと聞いたら
(ホステス2) ええやないの ママ
新さんが好きやったら ホテトルでも何でも
(ホステス1)そうや 意外と古いんやから ママは
(仁美)ほっといて
(仁美) 勝俣さん いらっしゃい さあ こちらへどうぞ
お2人さん…
(勝俣剛志(たけし))村木新か?
俺は洲崎組 敦賀事務所の勝俣いう
ちょっと顔貸してもらおか
(新)何の用や?
黙って来んかい
(新)何やと?
(仁美) 勝俣さん ここはうちの店や
商売の邪魔せんといてほしいわ
黙っとれ
(新)何すんじゃ (勝俣)ぬおあっ
(勝俣)おとなしゅうせんかい
~♪
(新) 俺は神鳥の2代目になる人間や
お前みたいな鼻クソ 相手にできんわい ボケ
神鳥組さん 松島呼んで
早(はよ)う店へ 新さんが大変なんや
神鳥に言うとけ
わけあってガキ預かる 殺しはせんから安心せい
(突き刺す音)
(井出(いで))兄貴!
兄貴ー!
(電話の着信音)
勝俣が殺された?
(三浪) 手違いがあったようです
わしが敦賀へ飛びます
組長は動かんでください 絶対に
(仁美)お姐(ねえ)さん (松島)姐さん
新さん 今 事情聴取 受けてます
せやけど 新さん 殺しには何も関係ありません
やったんは人夫です
目撃者も ぎょうさんいてますし―
警察は ちゃんと 分かってくれてます
神鳥とは連絡ついた 今 金沢からこっちへ向かってる
あんたに 事務所で 待つようにとのことや
分かりました ホンマに新さん何も 関係ありませんから ホンマに
お前な 今から事務所…
(松島)ああ! (仁美)姐さん
なんでや?
なんで義兄(にい)さんやみんな 困らせるようなことばかりするんや
このアホが どアホ
あんたみないな出来損ない もう弟でも何でもない
うちの前に 二度と顔出しな
どっか行け!
消えてしまえ アホんだら
どアホが!
(静尾)アホんだら どアホが
姐さん
(静尾)アホんだら (仁美)姐さん やめて
(静尾)うるさい
なんで あんたは いつもそうなんや?
(仁美)姐さん やめて
(静尾)どっか行け 消えてしまえ (仁美)やめて 姐さん
アホたれ
(園部)姐さん (仁美)姐さん やめて
(神鳥)俺が福井へ行く 何ちゅうても こっちの落ち度や
洲崎の組長に会うて わびを入れんのが先や
(松島)はい
(神鳥の舎弟) おやっさん 洲崎の若頭の三浪が 敦賀に入りよりました
何やて?
(神鳥)松島 (松島)はい
相手にするな
何があっても 俺が帰るまで ここを動くな
分かりました
(井出)オラァ オラァ
(空撃ちする音)
(神鳥の舎弟)待て コラァ
おやっさん おやっさーん
(神鳥の舎弟たち) 待たんかい われ コラァ 待て コラァ!
(神鳥)松島 (松島)はい
これであいこや
(神鳥)落とし前 ついたで (松島)あっ…
(神鳥の舎弟) 姐さん 洲崎の組長さんが
(静尾)えっ?
(香矢)亮平さん… 神鳥はんは どうなんや?
(静尾)弾は無事に 取り出すことができました
命は なんとか…
そうか…
はあ そうか…
早々と お見舞い恐れ入ります
どうか ご心配なく お引き取りください
静尾はん これは わてから―
神鳥組の姐(あね)としての あんたへの頼みや
これからは何があっても―
この落とし前 わてに任せてほしいんや
このとおりや 頼んます
姐(ねえ)さん
お言葉ですが 今 この場で その返事はできません
よう事情を調べた上でないと
どうかもう お引き取りください
分かった
ほな わてはこれで
(静尾) お見舞い ありがとうございました
(市元) こらあ 洲崎はんやおまへんか
大阪の市元や
わしの舎弟分の神鳥が―
洲崎の枝に撃たれたと聞いて 飛んできたんや
あんた えらいこと やってくれたもんやなあ
市元はん 神鳥とは洲崎の 先代からの長いつきあいでおます
何があっても わてらが いがみ合うことは絶対におません
どうぞ お気遣いなく
(市元)ダボ
われも坂松の幹部なら―
騒ぎを起こしたもんは 即 破門ちゅう霊代の言葉―
知らんとは言わさんぞ
首洗(あろ)うて覚悟しとけ
(園部)うおーっ 死ねーっ
(洲崎組員1)ヤロウ ううっ…
(銃声) (洲崎組員)うっ…
(洲崎組員2)はよ 出せ!
(銃声)
(洲崎組員2)野郎!
(園部)洲崎 待たんかい!
(パトカーのサイレン)
(園部)チクショー
はあ
(電話の着信音)
何や?
(佐渡) 香矢さん わしや 今 広島や
敦賀で ゴタゴタがあったらしいけど―
どうなんや?
もう耳に入りましたか
ちょっとした 行き違いがおまして―
まあ 敦賀とは身内同士ですさかい なんとか収めます
大事なときに ご心配かけて申し訳おまへん
香矢さん 大阪が ケツかいとるんと違うやろな
そやとしたら香矢さん
このわしが黙っとらへんで
(女)いやーん (佐渡)どこ行くんや
おい どこ行くんやって お前 ほな えっ?
あ いやいやいや こっちの話や ハハハ
いや もうこっちは至って順調や うん うん うん
うん? いや まあ岡山も下関もな 今日の宴会に顔 出しよった
銭は ごっつうかかるけど 手応えは十分や
分かりました
折見て わても皆さんに ご挨拶します
どうか 体に気をつけて ほな
(通話が切れる音)
なんや まだ起きてたんか
ママ あの人のこと殺したの?
何のことや?
ホントに殺しちゃったの?
あのチンピラのことか?
ママが敦賀 行ったんは別の用や
あの男とは関係ない
あの人 何もしなかったの 私がいけなかったの
それなのに… どうしてか分かんない
あの人 悪い人じゃないの それなのに私…
分かんない
香織 落ち着くんや
何もなかった
何もなかったんや
あんたは昨日の香織のまんまや
覚えてるか?
安岐が持ってきた 見合い写真の人
先週 大阪で会(お)うたんや
ホンマに立派な人で ママのほうがひと目でホレてもうた
あの人やったら間違いない
ママは この結婚 決めよう思う
ええな ママに任せてくれるな
もう寝なさい 済んだことは何もかも忘れて
明日になったら あんたは もっとキレイになってる
女とは そういうもんや
勝俣やったのは人夫で―
だいぶ前から 神鳥組に入り込んでたようで―
完全なプロの仕事ですわ
市元ですよ 裏は
あれ以来 敦賀に100人近い 手下(てか) 送り込んで―
我が物顔でにらみ利かしとります
若いもんには何があっても―
絶対に挑発に乗らんよう 通達を出しました
神鳥のほうも 姐(あね)さんがしっかり 締めてられるようで―
あれ以来 問題は起きてません
神鳥さんが あんな状態なのに 大した姐さんですわ
それから 佐渡の親分から こんなファクスが
何のことですか? 大黒の袋とは
小遣いの催促や フフッ
またですか…
確か 今日から親分 九州やったな
いよいよ正念場です
博多には清原(きよはら)はんいう 大物が控えてますから―
これを佐渡さんが味方に 引っ張れるかどうかで―
勝負が決まると思います
すぐに1億円 用意してんか
それと永井(ながい)に ヘリの用意させるんや
(芸者たち) ♪ 大きな袋を肩に掛け
♪ 大黒様が来かかると
♪ ここに因幡(いなば)の白うさぎ
♪ 皮をむかれて赤はだか
(一同の笑い声)
佐渡の兄弟 今日は 一段と調子 出とるなあ
無理もないで こないして 洲崎はんも駆けつけてくれて
清原の兄弟はじめ 九州の主だった顔がそろたんや
洲崎はん 勝ちは見えたで あんたのおかげや ハッハッハ
(芸者たち) ♪ よくよく教えてやりました
♪ 大黒様は誰だろう
♪ 大国主の みこととて
(男)4代目! 頼りにしとるけん
(芸者たち) ♪ 助けなされた神様よ
(佐渡) ほーれ 豊年満作じゃー
(芸者たち)キャー
(男)やめんかい
(芸者たちの はしゃぐ声)
(佐渡) ご苦労さん ありがとう
おー アハハハ
香矢さん よう来てくれはった
あんたが来るちゅうんで 今日の宴会は―
満員札止めの大盛況や ハハハハハ
さあ おおきに おおきに
わては親分の顔 見とうて 来たんです
まあ よう日に焼けはって 前よりも若(わこ)う見えますがな
(佐渡・洲崎)ハハハハハ
いやあ なんやかんや 苦労はあったけど―
やっと ここへ来て ひとつ大きい山 越えたわ
ホンマに ご苦労さんでおました
けど まだ安心すんのは早いんや
ハハッ そこにおる 博多の古だぬきの清原はじめ―
どいつもこいつも―
この先 いつ海原側に寝返りよるか 分かったもんやあれへんわ
兄弟 やめんかい
すまん 酔うとるんや
(清原友厚) 黙って聞いとれ
香矢さん
あんたがなんで このわしに 何十億もの大金出して―
4代目の後押ししたか
それを ここに がん首並べた―
血の巡りの悪い男どもに 教えてやってくれ
坂松の組長は 極道世界の頂点でおます
もし わてが 女子(おなご)の身でなかったら―
名乗りを上げてたかもしれまへん
なんで そうせえへんかったんや?
日本の国を お創(つく)りになった 大黒さんは男の神様です
佐渡の親分は ホンマに大黒さんにソックリや
ダハハハハハハ
香矢さん あんたに改めて 頼みがあるんや
この場で あんたと兄弟分の 盃(さかずき)を交わしたいんや
五分と五分の兄弟盃や
兄弟 何を言い出すんや?
お前は坂松の舎弟頭やで 盃の重さ よう考えて もの言え
盃は お前一人の問題やないで
せからしか 黙っとれ
何やと?
まあまあまあ 兄弟
香矢さん わしの あんたへのこの思い―
今や 生き死にを 懸けたものとなった
これからは 一心同体で―
渡世の荒波 どーんと越えていきたいんや
親分の そのお言葉 女として 極道世界に身を置くもんとして―
これ以上 うれしいことはおまへん
喜んで盃 受けさしてもらいます
できた できたぞ
これで勝ったも同然たい 佐渡4代目は決まったも同然たい
(一同)うおお!
早(はよ)う元気になって よかったやないか
お前も まだまだ 運があるというこっちゃ
(神鳥)親分 その節は いろいろお世話になりました
(市元)神鳥
最近の洲崎の動き お前の耳にも入っとるやろ?
佐渡と兄弟盃 交わしたことも
(神鳥)はい
どない思う?
すべて 俺のドジから始まったことです
申し訳ありまへん
そうか そう思うてくれるか
来月 佐渡一派は滋賀のホテルで 決起大会 開きよる
情報では幹部会のメンバーだけでも 20人近く集まるとゆうことや
はっきり言うて 坂松の4代目が誰か―
日本中に知らそうという魂胆や
的は 大将1人でええ
洲崎も殺(や)りますよ
ああ? もういっぺん言うてみ
俺が洲崎を取ります
(市元)その必要ない
親分 佐渡は洲崎に担がれた ただの みこしです
どういう意味や?
(神鳥) 洲崎は はっきりと佐渡については 投資やと言うとりました
今 やっと その意味が分かりました
洲崎自身が坂松の代紋に 眼(ガン)つけとるんです
佐渡を殺っても 洲崎を残したら意味ないですよ
どアホ なんぼ息んでも 女は女や
逆立ちしても 坂松の大将になれるはずないわい
(神鳥) 洲崎は女やない 極道の中の極道や
一旦 狙いつけたらイケイケで どこまでも取りにいきますよ
じゃかあしい! わしの言うこと聞け
ケンカはな 大将取ったら勝ちや アメリカとイラクのケンカ見てみ
あんだけカネほり込んでも えーっ 大将取り損ねたばっかりに―
イラクのガキは まだピンピンしとるやないけ
一発必中 佐渡を取るんや それが戦争ちゅうもんや
分かりました プロ 世話してください
うちの人夫に紛れ込んでた男です
何のこっちゃい
(神鳥)とぼけんでください
親分の手の内ぐらい 俺にも分かりますよ
一人でやる自信ないっちゅうんか?
フン フッフ
死んだら 元も子もありませんからね
(市元)われ
われは そんな性根で 人間一匹 取れると思うとるんか!
ああ ハア ハア…
サツには 俺一人の 遺恨でやったと―
それで通しますよ
海原さんや親分には 泥はかけまへん
誓うか?
俺をナメんといてください
ようし
戻ったら われは 坂松の大幹部や
(静尾) 布団敷いたし ここへ連れてきて
ここでええ ビールくれ
(静尾) 何 言うてんの? 死んでしまうわ
言うとおりにせい!
新はどうしとる? すぐ連れてこい
居所 分からんのよ
(神尾)隠さんでもええやろ
(静尾)ホンマやて
今度ばっかりは うちも あの子 許すわけにはいかんしね
(神尾)松島 (松島)はい
新 捜して ここ連れてこい
はい
(神鳥) お前が どう思おうと 新に俺の跡を継がせる
それを 今日 決めるぞ
俺は10年ばかり 留守にするかもしれん
あんた このお金 大阪へ返してんか
(神鳥)何?
あんた 洲崎の姐(ねえ)さん 殺す気やろ?
初めから それが大阪の狙いやゆうこと―
あんたにも よう分かってるはずや
このままやったら あんた―
大阪の なぶりもんなったまま きっと死ぬわ
俺は お前と一緒に なったときから―
お前を どの極道の女房よりも ぜいたくさせたる自信があった
せやけど 20年近くたった今でも―
俺は まだ しけた田舎ヤクザのままや
坂松の跡目選びで 俺が海原さんについたんは―
俺の最後の賭けや
ここで引いたら 俺は一生 芽の出えへんカスで終わらんならん
うちは今のままで 何の不服もないんや
うちの願いは あんたや弟や 若いもんを―
もう一人も死なせとうない ゆうことだけなのよ
(神鳥)われは そんな だらけた女やったんか
それで よう この家で 姐御(あねご)ヅラしておれるのう
おおっ!
極道の女房ゆうたかて 角 生えてるわけやないわ
泣きもすれば笑いもするんよ
男のつまらん意地で 家 潰されたらたまらんわ
今 何言うた? もういっぺん言うてみ
もういっぺん言うてみー!
うちは大阪より 洲崎の姐(ねえ)さん信じる
あんたが姐さん殺したら地獄や
何もかんも わやくちゃになってしまうわ
(神鳥)やかましい! (静尾)ああっ
(静尾)う…
間違(まちご)うてる あんた間違うてるわ
あっ…
間違うてるわ
出ていけ
(静尾)間違うてるわ
われは もう俺の女房でも 神鳥の姐(あね)でもない
今すぐ出ていけ オラァ
(南美) なあ 新 お金たまったら どっか遠くへ引っ越そか?
あんたのため思うて 言ってんねんで
うちの力ではチンチンに たまったもん抜けても―
心の中までは掃除でけへん
あんたは ここにおったら あかんのや
きっと またムチャやって 刑務所行きや
(ドアチャイム)
(南美)はい
あっ…
南美さんやね
(南美)はあ…
新の姉です
新が お世話になって ありがとう
(南美)いいえ
入ってもええかしら?
(南美) どうぞ 散らかってますけど
いつもは もっと キレイにしてるんです
ええのんよ そのままで
(南美)どうぞ
新 うち何か飲み物でも 買(こ)うてくるし
新 すぐ川崎に行きなさい
うちの高校の同級生が 自動車の修理工場(こうば)してるんや
あんたのこと話したら 気持ちよう引き受けてくれた
これが住所と電話
それから これが―
あんたの名義で ちょっとずつ ためたお金
あの子と一緒でもええんよ
新…
このことだけは 姉さんの一生の頼みやと思うて―
言うとおりにしてほしいんや
ええね
(松島) 大体きょうびの日本の社会は 女子(おなご)が出しゃばりすぎですわ
女おらへんかて 何の不自由も あらしませんがな
正味の話が えっ?
料理かて家のことかて 男のほうがなんぼ器用か
あっ これ言うたらね うちの かかあが―
“ほな誰が子ども作んねや” ぬかしよるんですわ
もう 何か言うたら子ども子どもて なあ さぶちゃん
ええ
(神鳥)その点 俺は気楽や
静尾のやつが 子ども欲しがっても 俺が許さへんかった
こうなるのを見越してたからや
(神鳥の舎弟)お待たせしました
(松島) コラァ 何じゃ お前 その切り方は
ライオンの餌やないんやぞ お前 オラァ
すんません おやっさんに 気に入ってもらえるように―
料理 勉強します
掃除かて洗濯かて 姐(ねえ)さんに負けんように
(神鳥) 気色悪いやっちゃなあ お前 もっと離れ もっと
(松島) コラァ 下がって下がって
あっ 新さん
(神鳥)何しに来た?
(松島)あっ ああ… 新さん まあ 座って座って さあ はい
姉貴が来て 川崎へ行け言いよった
俺 やっぱり兄貴についていく そう決めたんや
フン 何 寝ぼけたこと 言うてんねや
お前 俺が静尾と別れたのを 知らんのか?
せやから お前との縁も切れた
ついていくもへったくれも あるかい フッ
兄貴
俺の跡は松島に継がせる
お前を見込んだのは 間違いやった
せん別代わりに俺のベンツやる
型は古いが まだ十分使えるはずや
何じゃい そのボケヅラ
お前がいてると ろくなことにならん
はよ出ていかんかい
兄貴 やり直したいんや
極道で やり直したいんや 頼むから この家 置いてくれ
(松島) ガソリン満タンになってるさかい
兄貴!
(松島)はよ行こ
(ドアが閉まる音)
これでホンマに一人きりや
はあ スッキリしたで
(ホステス1)暇やな
(仁美) あんなことがあったんやし しかたありません
不景気のせいも あるんやろうけど
(ホステス2) うち お給料もろてんの 悪いような気して
そのうち ええこともあるて
姐(ねえ)さん お疲れですやろ
よかったら 家(うち) 行って 休んでください
子どもはもう寝てるし―
うちの人 当分 事務所で泊まる言うてましたから
心配いらん 寝るとこぐらい どこにでも見つかる
ホンマに別れる気ですか?
決まってるやないの はっきり 出ていけて言われたんや
それにしても ひどすぎますね 組長
松葉づえで どつくやなんて
初めてや あんなこと 本性見た感じや あの人の
仁美
松島さん 当分 事務所泊まりやて そう言うたんか?
(仁美)ええ それが何か?
姐さん
姐さん
(仁美)こういう… こういうことやったんや
組長も あの人も きっと死ぬ気や
姐さん
姐さん 姐さん どないしよう
(静尾)待つしかない ここで (仁美)ううう…
(静尾) 出来の悪い極道の嫁には―
それぐらいの知恵しか 浮かばへんわ
(仁美)ううう…
ううう…
(南美)なあ 新 ホンマに川崎へ行くの?
カタギになって働くの?
(新)ああ
(南美) うちも一緒に行ってええの?
(新)ああ
(南美)結婚… してくれるの?
(新)ああ
この前…
観光ホテルへコンパニオンの仕事で 行ったとき―
洲崎の娘に会(お)うたんや
すっごくカッコええ男と デートしてた
きっと金持ちの息子やわ
あの女も結婚するやろか?
(新)関係ないわい
(南美)悔しないの?
(新)何がや?
ホレた女をほかの男に取られて
(新)行こう (南美)行かへん
(新)どうしたんや?
あんた もういっぺん あの女に会わなあかん
欲しいもんは 自分の力で取らな男やない
(南美) ラジカセも炊飯器も あんたにあげるわ
(新)こんなガラクタ要らん
(南美)うちと一緒にいたら あんたもガラクタになってしまう
(新)来るのか来(き)いひんのか はっきりせえや!
(南美)行かへん
うちは新が死ぬほど好きやし―
新にだけは ちゃんとした人に なってほしいねん
行かへん
勝手にせえ!
うう… うう…
(南美の泣く声)
(トラックの運転手) おねえちゃん
おねえちゃん 乗りな
ありがとう
(トラックの運転手)荷物 貸し
はい
(トラックの運転手) どないしたんや?
堪忍 彼氏 迎えに来てくれたわ
ほう そらよかったな ハハハ
よっしゃ
(夏枝) うわあ これええわ うちも買おうかしら
いやー 安岐姐さん 見て これ30万やて
大きい声 出さんとき 恥ずかしいやないの
(夏枝)そやけど うちの1か月の生活費やもん
(店員)いらっしゃいませ
うち ちょっと おトイレしてくるわ
夏枝 頼むわ
はい
オシャレな喫茶店ですねえ
香織さん よう来はるんですか?
帰る
(夏枝)か… 香織さん どないしはった…
香織さん 待ってください
どういうつもり?
(新)迎えに来たんや
バカにしないでよ
行こう 俺と…
放して 放して
コラ 何するんや
(新)引っ込んどれ ババア
ババアやて?
俺について来んのか来(け)えへんのか どっちや?
夏枝 夏枝…
か… 香織さーん!
香織さーん
神鳥が敦賀から姿 消しよった 子分どもも一緒や
間違いのう来よるで
警備は万全や そっちこそ 気いつけてくれ
神鳥は洲崎の親分に 特別な遺恨 持ってるさかい
(三浪)問題はレセプションや
500人からの人間が集まるかと 思うとゾッとする
(穂高) わしは おやじに張りつく あんたは洲崎の組長から目離すな
(ヘリコプターの音)
(レポーター) ここが今回 パーティーの開かれる ホテルの正面玄関です
上空には県警のヘリが飛び 機動隊 警察の物々しい警備の中を―
続々と各地の坂松組を代表する 親分衆が到着しています
これはまさに 現代まれにみる 大パーティー…
“香矢さん 今日の主役はあんたや”
“あんたの顔や声が 日本中の電波に乗って流れるんや”
“楽しみや 佐渡拓磨”
佐渡の親分の警備は 大丈夫やろな?
若頭と向こうの穂高さんが 十分打ち合わせしとりますから
(ドアチャイム)
組長 お嬢さんが来られました
(香矢)香織が?
神鳥の義弟(おとうと) 村木が一緒です
(香矢)何やて?
通すんや 2人とも
分かりました
村木新です
香織さんとの結婚を報告に来ました
私たち 昨日 教会で式を挙げたの
新と真剣に話し合って 2人で決めた
自分たちだけの力で 生きていこうって
私たち これから出かけるね
どこか分からない 何にも分かんないけど―
私 新となら 何があっても後悔しない
絶対 後悔させません
香織さんにも 洲崎の組長さんにも
ここで待っとき 用は1時間で済むよって
新がどうしてもママに挨拶するって 言うから ここに来たの
もう行くね
待つんや
村木はん あんたには 話したいことがいっぱいある
結婚は2人だけの問題やない 分かってくれるな?
(新)はい
(香織)新 もう行こう
待っとこう コソコソ 逃げるようなマネしとうない
あの人は分かってくれる
待つんや
(拍手)
(三浪)異常ないか?
(洲崎組員) 異常ありません 神鳥の姿も今んとこは
(三浪) ええか 念には念を入れろ
はい
(佐渡) 今回 わしが立候補したんは―
ひとえに日本の任侠(にんきょう)界の 危機的状況を―
心から憂慮するからであります
(カメラのシャッター音)
元来 極道は―
一般市民社会の裏にあって―
自ら信ずる正義のためには―
互いの生死を懸けて戦う―
男の心意気を 誇りとするものであり…
お前ら ここに残れ
えっ?
洲崎は俺一人で殺(や)る
(松島) 冗談やおまへんで わしら おやっさんと一緒に死にまっせ
(神鳥)死ぬためやない 神鳥が生きるためにやるんや
(松島) そんなこと言うたかて…
(神鳥)うるせい
(ウエートレス)キャー
(突き刺す音)
(穂高)親分 親分
(木戸川)兄弟! (穂高)親分 親分!
(人々のざわめき声)
(グラスの割れる音)
(男1)医者や 医者 呼べ
(男2)はよせい!
(男1)はよせんかい
(香矢)親分 親分!
(佐渡)香矢さん (香矢)しっかりしてください
香矢さん わしに代わって 跡目取らにゃあならんかいなあ
しっかりしてくださいよ
海原 ぶちのめして 極道のてっぺんに立つんや
香矢さん イヤとは言わさんぞ
イヤとは言わさんぞ
親分
わしをここまで引きずり込んだんは あんたやからな
なあ 香矢さん 香矢さーん
あんたと2人で日本中の極道に 号令かけたかったわ
なあ 香矢さん
わしゃ 悔しいで おい 悔しいで
(男)コラァ
(崎津)あっ…
(男) オラァ 待たんかい オラァ
(もみ合う男たちの声)
(銃声)
洲崎さん
あんた生かしといたら 海原さんの 4代目は確かなもんにならん
覚悟してくれ
(香矢) 亮平さん 分かってんのか?
わて殺して誰が笑うんか
(神鳥) しゃあないよ 俺が選んだ道や
(洲崎組員)ふっ
(新)兄貴!
(神鳥)新…
(新)兄貴 この人を撃たんといてくれ
(神鳥)お前どうして? どういうこっちゃ!
この人は―
俺の女房のおふくろなんや
なに?
撃たんといてくれ
(神鳥)どけ コラ (新)兄貴
じゃかましい どけー コラァ
なんでや? なんでお前が…
なんでや?
なんでや? どけ コラァ
(神鳥の荒い息遣い)
(新)兄貴 (神鳥)来るな!
それ以上 来たら ホンマにぶち殺すぞ!
(ドアが開く音)
ママ
出ていき
新は? あの人はどうしたの?
(香矢) 何 グズグズしてんねん
あんたは さっき自分で勝手に 生きていくて言うたやないか
あれは口先だけやったんか?
新は?
(香矢)外や
許してくれるの?
これ以上 わてに 何を言えていうんや?
あんたは ママの たった一人の子どもや
信じるしかないやないか!
ママ
香織
うっ…
ママは もう二度と あんたに会うことはないやろ
あんたも その覚悟で これから 自分の道を歩いていくことや
さあ はよ行くんや
(香織)ママ (香矢)さあ はよ
ママ
はあ…
佐渡の親分が亡くなりました
非常階段の下に 車を回しておきました
警察にはケガの手当てを されていると言うてあります
マスコミも待ち受けてますから そう時間は稼げません
木戸川はんらに ここへ来るよう言うんや
組長 何をされる気ですか?
今日中に佐渡はんに代わる 跡目候補 決めんならん
無理ですよ みんな うろがきて 収集がつかん状態ですわ
ひとまず福井へ帰って それから様子を見て…
三浪 お前は先代から続く ただ一人の子分や
万に一つ こうなったときの わての覚悟―
お前だけは 分かってくれてると思うけどな
(三浪)分かってます
そやけど 今の状態では なんぼ組長でも―
海原と市元には向かえません
一旦 引くしかないと思います
極道は一歩でも引いたら地獄や
こうなったら手段は選ばへん
何がなんでも わてが 北陸の女極道が―
坂松組2万5000のてっぺんに 立ってみせたるわ
(店員たち)いらっしゃいませ
(静尾) 事務所にも刑事が張り込んでる
国道も高速も非常検問や
ここへは どないして?
(神鳥)電車で来た
できたら 敦賀で自首したいんや
あんた やっぱり 一人で罪 背負う気か?
(神鳥)あと頼むで
(店員)失礼します
(静尾)コーヒー (店員)かしこまりました
(神鳥) 新は 洲崎の娘と 一緒になるみたいや
新に会うたの?
(神鳥) 若いもんは しっかりしとる
おい! 離れとれ
あんた 逃げよう 今すぐ
あと 一月(ひとつき)でも一日でも 何もかんも忘れて一緒にいよう
10年も離れて またこんな暮らし 繰り返すぐらいやったら―
逃げられるだけ逃げて 生きたほうがマシやわ
アホ言うな
俺の根性 見せたるのは これからや
頼むから笑うて見送ってくれ
(静尾)うっ…
10年なんか あっという間や なっ…
(市元の舎弟)今 出た男や
あんた あかーん!
神鳥なは わしに背いて 洲崎にチャカ向けよった
おかげで 要らん死人が出て ややこしいことなってしもた
あんなカスのことは この場で忘れるこっちゃ
心配すな あとのことは 相談乗るさかい
いよっ
(市元の舎弟)おい 出せ
(静尾)あんた…
(静尾の泣く声)
(組員)入れ札の結果を 発表いたします
本日 出席の最高幹部は 委任状を含めて29名です
よって 過半数は15になります
敬称は略します
木戸川亘 6
海原泰明 15
白札 8 以上です
(杉岡)海原はん
正式には襲名披露が 終わってのことになりますが―
事実上 あんたには―
今日から坂松組の 4代目組長としての―
務めを果たして もらわんなりまへん
3代目の法要をはじめ―
何かと大きい問題が山積みやが―
坂松組発展のため しっかり頼みますよ
身に余る重責―
身命を賭(と)して 務めさせていただきます
おめでとうございます
おう
まっ いろいろあったが…
雨降って地固まるや
よろしゅう 頼むで
おめでとうさん
どうも よろしゅうな
白が8か…
惜しかったのお
(海原)よろしくな
(市元) 若頭 洲崎はんの代理で来た 三浪です
(三浪) 洲崎組の 三浪周造です
4代目坂松組のご襲名 誠に おめでとうございます
洲崎はどうした?
組長は あいにく体調を崩しまして 申し訳ございません
元気になったら 大阪に来るように伝えてくれ
これから いろいろ 洲崎の力も借りんならん
承知しました
(海原) ♪ 久遠にとどろく
♪ ヴォルガの流れ
♪ 目にこそ映えゆく
♪ ステンカラージンの舟
(拍手) (男)さすが4代目や
♪ そのかみ帰らず
♪ ヴォルガの流れ
♪ さめしやステンカラージン
はあ?
(海原) ♪ まゆねぞ悲し
(松坂組幹部) ちょっと女子連 聞いてんか ちょっとだけ 席 外して
悪いな すぐあとで呼ぶしな なっ
すぐ呼ぶぞ ほいっ すまんな
4代目 佐渡組は解散ですわ
今日 組長代行の穂高が サツに解散届 出したそうです
なにせ 佐渡が死んでから 木戸川ら舎弟会の連中も―
手のひら返したように 寄りつかんようになって
まあ それに頼りの洲崎も 福井に籠もったきりですさかい
気に食わんなあ
えっ?
洲崎は なんで負けると分かってる 木戸川を―
佐渡の代わりに出しよったんや
8枚の白札で 今度は自信持ってやってきよるぞ
まさか
洲崎に近い極道が言うとりました
あの女は極道の中の極道や
きっと おどれ自身が 坂松の代紋を担ぎにかかりよると
殺(や)れ
フッ
(三浪) もと大阪府警 マル暴デカ 暴力団との癒着で懲戒免職
市元に買われて敦賀で 勝俣 殺ったんもこいつの仕事です
(香矢) わての仕事をする気あるか?
1億 先払いや
帰してもらえるかな? 家に
5歳の男の子がおります
かわいい盛りや
(崎津)これからは―
あんたがボスや
(静尾) “弟のことでは 本当に温かい お心遣いをいただき”
“お礼の言葉もありません”
“香織さんとは先日も 電話で話をさしてもらいました”
“弟は弟なりに―”
“私たちとは違う自分たちの道を 歩き始めましたが―”
“決して 香織さんを 不幸にはしないと思います”
“私は今 大阪にいます”
“この大きい街は 決して好きになれないけれど―”
“ここで姐(ねえ)さんを 待つことにします”
“私は 姐さんをずっと 心から尊敬していて―”
“今でも本当の血を分けた 姉のように思ってます”
“どうか そのことだけは 忘れないでいてください”
(女)ちょっと待って
ハッハッハッ
(穂高)このアホッ
(海原の舎弟)何すんじゃー!
(もみ合う男たちの声)
(警察官)やめんか
(海原)よし もう大丈夫や
(警察官)大丈夫ですか?
ああ 大丈夫や 助かった
(突き刺す音)
(松坂組幹部)どうでした?
あかんかった 残念や
(松坂組幹部) ちょっと外してくれ
若頭 しっかりせえ
ここ一番 正念場やで
棚ぼたで あんたの出番が 回ってきたんや
ええっ?
回ってきたんや あんたの出番が
(市元) 一人に… 一人にしてくれ
(市元)何じゃ お前は?
(静尾) 市元さん 神鳥静尾です
テレビのニュース見て 急いで来ました
(市元)何じゃ? うっ…
うっ うっ うっ…
おっ おっ…
主人の敵(かたき) 取らしてもらいます
往生しいや!
(電話の着信音)
(香矢)そうか すぐに発(た)つ
夜までには そっちに着くやろ
誰にも 気づかれんようにするんや 迎えも要らん
事務所で 次の指令 待つんや
♪~
~♪
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