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(池内章吉(いけうちしょうきち)) おい どこ連れていくんや
(千田勝紀(せんだかつのり)) 会(お)うてもらいたい人がおるんや
(池内)誰や?
(千田)関東の大物や
(池内)何やと
千田 われはやっぱり 関東の組織とつるんどったんか
(千田) 兄貴と どうしても話し合いたい 言うとるんや
話 聞いてやってくれ
(電話の着信音)
へい
はい 今 代わります
池内や
(男)関東と関西の極道が 大同団結して
全国的な連合組織を結成する計画が 進んでいるんだ
まあ あんたに 大阪の束ねを頼みたい
(池内) 話の前に仁義切ってもらおか
(男)サツは山背組を潰すと 明言しておる
今の掛川(かけがわ)代行の体制では 山背組の先はないぞ
名乗れ言うとんのや!
(男)あんたの要求はすべてのむ
権力でも金でも望みどおりだ
(千田)兄貴
ちょっと待て
どけっちゅうんや
(千田)兄貴
この人は関東 柴山(しばやま)会 理事長の茂田(しげた)はんや
柴山会が何じゃい
(千田)兄貴!
二度と山背のことに口出しすな
次は生かしてはおかんぞ
(千田)兄貴
山背がどうなってもいいんか 日本中 敵に回してもいいんか
兄貴!
(池内)じゃかあしい
(銃声)
(茂田光機(こうき))池内よ
もっと賢くなれ え?
お前も極道だったら 山背のてっぺん立ちてえだろう
くどい! 二度と山背の前に そのツラ出すな
(銃声)
(千田)わしを恨むな
おどれが間違っとんじゃ!
(電話の着信音)
(池内美智留(みちる)) 何しとんねん あいつ
(女1) どっかで浮気してはんのかもね 携帯切って用心して
(女2) 池内さん 遊び慣れてはるしな
どこや どこにおるんや 返事ぐらいせえ
(女3) ええやんか この車に決めたら
もし浮気してはんのやったら 文句言いはらへんわ
(女4) せや ええチャンスや
(店員)このニューモデルは 乗り心地も操縦性能も抜群で―
スタイルも奥様のような 美しい方にはピッタリかと
やめとくわ
(女5)ええ? どうしてん
うちの人に無断で 高い買い物はでけへん
うちは妻やし
(店員)はあ… いや あ…
(女たち)姐(ねえ)さん 美智留さん (店員)あの… お客様
(男たちの怒声)
(組員)おい コラ! 出ていかんかい コラァ!
(源田巌(げんたいわお))じゃかあしいや どかんかい オラ!
(源田)こいつを開けてもらおか
(掛川武雄(たけお)) この金庫は組長の許可がないと 開けてはならん決まりなんや
これが見えんのかい
(掛川律子(りつこ))言うとおりにしなはれ
(武雄)姐(ねえ)さん
掛川 どこにおるんや
知りません
主任
これや 動かぬ証拠いうやっちゃ
(武雄)どういうことや
小西(こにし) お前 こんなもんがあるん知ってたんか
(小西)わしは全然 それが金庫に入ってることも
掛川が上徳(じょうとく)信金から5億円の 無担保融資を取り付けた契約書や
副理事長の鬼怒田(きぬた)はんから 脅迫されたと訴えがあったんや
冗談やないで! 兄貴は カタギを脅すような男やない
仕事は わしがやってるが―
経営は順調で 5億どころか 1円の借金もないんや
(源田) 山背の4代襲名を控えて 焦っとったやろ
(組員1)兄貴! 兄貴!
(武雄)放せ!
掛川 帰ってきたら 港南署に出頭するよう言うてくれ
逃げ隠れしたら 面倒なことになるで
行くで
(掛川亮平(りょうへい)) 何と言われましてもな
山背組は3代親分以来―
ほかを頼らずの渡世を 通してきましたんや
関東であれ九州であれ お歴々の皆さんが―
手結ばれるの 何ちゃ文句つけまへん
せやけどな―
山背組の行く手 邪魔するようなことあったら―
黙ってはおりまへんで
(坂岩延人(さかいわのぶと))すると何か 掛川
われは関西全部を 敵に回してもかまわんちゅうんか
(亮平)ケンカする気は 毛頭ありまへんがな
山背は山背の道を行くだけです
坂岩の親分 ご一同さんも―
この話 二度とわしの耳に 入れんといてください
(幹部1)おい 掛川
われ わしらの前で―
いつから そんなでっかい口 利くようになったんじゃ
わしはな 山背の組長代行として―
5000人の組員の生き死にを 預かる身でおますさかい―
どなたさんであっても 人の指図受ける気おまへんのや
おのれの腹は よう分かった
今後 山背にどんな難儀が 降りかかっても―
わしらは一切 助け船は出さん
よう覚えとけや
(幹部1) 若造のくせに態度デカいな あのガキは
(幹部2) 坂岩はん どうする気や?
山背が抜けたら統一連合の構想も 下手したら反故(ほご)になるで
いや これでかえって 山背をたたきやすうなった
これでええ
(電話の着信音)
はい
親分 姐(あね)さんからです
わしや
はあ
上徳信金の鬼怒田? ああ 知っとる
ゴルフ場で一緒になって あとで飲んだことある
どないしたんや
なにっ わしが脅迫やと!
とにかく調律会(ちょうりつかい)病院 いつもの特別室 頼んどいたわ
(亮平)関東の柴山会と 尼崎の坂岩らが腹合わせて―
極道の全国統一組織を 作ろうとしとんのは―
お前らも知っとるやろう
山背にも誘いかけてきたが―
わしは ついさっき坂岩らに会(お)うて きっぱりと断ってきた
その留守中に 警察が身に覚えのない―
上徳信金への恐喝容疑で わしの首に縄かけようとしとる
偶然とは思えんのや
(三崎亀蔵(みさきかめぞう)) しかし なんで融資の契約書が 金庫に入ってたんや?
代行に覚えがないとしたら―
誰かが わざと入れたとしか 考えられんやないか
(武雄)今 思たら―
サツは最初から金庫に 眼(ガン)つけてたみたいで
(組員2) 身内にサツのスパイがおんのと ちゃうか
(武雄)まさか
(早崎邦男(はやさきくにお))上徳信金 締め上げたらええやないけ
何たら言うたな 副理事長の…
(武雄)鬼怒田です
代行 わしに任せてくれ 悪いようにはせんから
ムチャすな
かえって代行の立場が悪うなるわ
殺しはせんよ 大事な証人やしな
(組員3) 代行 わいらも関東との連合の話は 聞いとりますけど―
なんで はねつけましたんや?
(組員4) 悪い話やないと思いまっけど
全国統一は口先だけや
坂岩らの狙いは山背のシマや
大阪進出をたくらんどる 言うのんか
先代が生きているあいだは 手出しできんかった はっ
日本一おいしいシマやからな 大阪は
そういうことか
ええか
これからも あの手この手で 揺さぶりかけてくるやろ
末端の組にも通達出して 引き締めにかかってくれ ええな?
(組員2)へえ (組員3)分かりました
池内はどないしたんや
真っ先にあいつが 顔 出さんならんはずやで
おお 千田の顔も見えんな
まあ ええ
本部には わしが詰めるさかい あんた 当分ここにおってくれ
ええな?
じゃ
(武雄)ご苦労さんです
(電話の音声) 電波の届かない場所にあるか…
(武雄) 池内さん 連絡とれんのか?
掛川や
そうか
事務所にもおらん
昨日の昼過ぎ 大事な話で 遠出すると言(ゆ)うとったがな
わし捜すから 兄貴はここ動かんといてくれ
姐(ねえ)さんが院長にかけおうて 診断書用意してもらう言うてるしな
サツが来ても絶対安静 面会謝絶で通すんや
(ドアをノックする音)
(掛川真弓(まゆみ))真弓です
おお 入れ
真弓 姐さんに代わって ずっと付いとれ
(亮平)アホ わしは病人やないぞ
それよりな お前こそ おなかの赤ん坊 大事にせえよ
お医者さんに うんと動くように 言われてますから
姐さん
大丈夫やから 姐さん
兄貴には なるべく 無理させんようにするから
頼むわ あの人あんたの言うこと 一番よう聞くから
ほな ちょっと
熊(くま)さん?
(熊谷忠夫(くまがいただお))ちょっと
ガサ入れの指揮 執った 源田いうのは―
わしの昔の同僚ですねん
以前からヤクザとの癒着が うわさされておりましてな
なんや臭いな思て―
経理係の小西に 話 聞こう思たら―
いつの間にかドロンかまして おりましたんや
(律子)小西が? (熊谷)うん
金庫の暗証番号知ってるのは 親分のほかには?
わてと小西だけや
殺されたんか 逃げたんか
姐(ねえ)さん この件 わしが追っかけます
(律子)熊さん (熊谷)ん?
ああ ええて ええて…
はあ 刑事(デカ)くずれの こんな飲んだくれのわしを―
姐さんだけは いっつも イヤな顔ひとつせず―
小遣いまでくれはって… ヘッ
こんなときに恩義に報いなんだら わしは… ハハッ
まっ 任してください
(律子)あんた?
(律子)あんた! (亮平)ここや
今 そこで熊さんに会(お)うてな
ダニ熊に?
けっ こんなときに 無心に来よったんか
あんた 自分は 山背の跡目 継ぐ気はないて―
わてに言うたけど―
あれ本心やろな
池内がおるからな
池内は 極道としての器量も一級や
なんで そんなこと聞くんや
不服なんか われ?
とんでもない
あんたが肩の荷下ろしたら―
2人でゆっくり世界一周の 旅行でもしよう思てな
お姐さん 英会話習いに 行ってはるんです 先月から
“ガールズ・ビー・アンビシャス”
何が“ガールズ”や ええ年して ホンマ
何 考えとんねん お前
極道の嫁かて 普通の女の夢は持ってます
真弓ちゃんは赤ちゃん生まれたら 4LDKのマンション買うんやろ
はい あっ お姐さん こんなん どうですやろ
(亮平)けっ
ええな
(千田槙子(まきこ)) あっ 皆さん こんにちは
イヤな感じやな 相変わらず
美智留さん この車 あんたが 買おうとしてたんと同じやで
あんた 飲み方 知ってるか?
うちらパックのお茶しか 飲んだことないもん
うち聞いたことある 3べん回して飲むんやて
3べん回すんやな
ワン言うたら あかんで
アホ
いただきます
3べん回して…
あ! みんな飲んだらあかんがな
(女1)え? (女2)残して次に回すんや
汚(きちゃな)いな お茶て
ステキな黒織部(くろおりべ)ですね
(柿田(かきた)リュウ) フフッ うちの人が好きでなあ
桃山時代のもんやと 伝えられてるけど―
うちの人 ようだまされるしなあ
偽物(にせもん)やったら こんな風格は 出えへんと思います
いきなりお茶室に通されたし 焦ってしもて
前から言うといてくれはったら 勉強しときましたのに
いつも食べてしゃべって ばっかりでは―
ここの集まりも 代わり映えせんと思てなあ
(女1)そんなことあらしまへん
一生食べてしゃべって 暮らせたら最高やわ
槙子さんは そうとう稽古 積んでるみたいやな
結婚前に
けど うちの人も好きで このごろは一緒に
そうか 夫婦で一緒の趣味 持つのはええな
うっとこかて一緒の趣味あります
カラオケにパチンコやろ
あんたのとこは夫婦ゲンカが 趣味やないの
(女1)なんやて (女2)本家のお姐さん
うちのとこのバカ亭主 まだ浮気癖 直らしませんねん
このあいだも女に 子どもできた 言われて―
慰謝料に2000万も 取られたんです
男ってなんで次から次へと ほかの女に目が行くんやろ
しゃあないわ 女の商品価値は 年々 ダダ下りになっていくんやし
女房て割に合わんな
あんたら そんな能天気 言うてる場合やないで
(女3)どないしたん?
姐(ねえ)さん 知ってはりますやろ
頭(かしら)の事務所 警察の手入れあったん
ああ 聞いてる
頭は入院して面会謝絶やそうです
それで頭の姐さん 顔見せはらへんのやな
池内もずっと 連絡 取れへんのです
うち心配で
姐さん 山背組はこれから どうなるんですか?
今朝 律子さんから―
今日の集まりには出られへんと 断りの電話があった
警察の件は間違いで―
頭も元気やから みんなに 心配せんように言うてくれとな
姐さん
頭に もしものことがあったら 山背組どうなるんですか
何やの その言い方
山背組のことでは―
新聞だのマスコミには ええことは書いてません
中には分裂するかもしれんと
心配せんかて―
あんたの旦那が山背の親分に なることだけは一生ないわ
(槙子)それはお互いさまや (美智留)何やて
やめなはれ
ケンカは男の世界だけで十分や
あんたらの務めは 温かい家庭をこさえて―
優しく旦那さんを 迎えることや な?
それには笑顔や ん?
笑(わろ)うてみ
精いっぱい チャーミングに
はい はい
(女たち)ニーッ
ちょっと あいつや
京都?
1人でドライブでも行く気やろか
ホンマ 変わっとるわ
相変わらず勝手な女や
ホンマや
あんな嫁 持った男はドツボや
千田さん気の毒やわ
(警備員)やめてください 乱暴はやめてください
どけ どかんかい
(警備員)ちょっと やめてくださいよ
困ります
(鬼怒田勇(いさむ)) お… おい なんや 君らは
鬼怒田副理事長はんと お見受け申します
お初にお目にかかりま
わしは山背組内 早崎一家 早崎邦男ちゅうもんでおまして―
掛川頭(かしら)に成り代わり―
お尋ねしたいことがあって やってまいりました
それがどうしたんや それが
すんまへん べっぴんのねえちゃん 話が済むまで…
(秘書)キャーッ (鬼怒田)やめなさい
まあええから
あんさんの署名がある 5億の無担保融資の契約書―
誰の依頼で でっち上げたんか 聞かしてもらいとう思いましてな
でっち上げやない
あれは掛川に脅かされて 署名したんや
掛川は前から 価値もない物件を担保に―
不当な融資を強要しとったんや
ほたら なんでっか
あんさん 頼まれたら 何億ちゅう融資の契約―
自分一人の決済で してくれはるんでっか
ああ それやったら わしもお願いしますわ
なあ10億ほど ほれ ハンコを持ってきましたさかいに
分かった 分かった
はい
これ持って はよ帰ってくれ 私は忙しいんや
丸が3つほど足らんみたいやで
脅しには乗らんぞ
わしはなあ 今日の今日まで 一切 暴力団とつきあわんと―
上徳をここまで大きしてきたんや
(早崎)オラッ! (鬼怒田)な… 何すんねん お前
われ 誰にものぬかしとんじゃ コラ ああっ!
おい! おい 誰か助けてくれ
(警備員たち) どきなさい どうしました
(鬼怒田)おい このヤクザ 逮捕してくれ 逮捕
(警備員たち) やめなさい やめてください
オラッ
取り引きやぞ これは ちゃんとした
コラァ 静かにせえ コラ
はあーっ
オラ オラ オラ
おい 何してんねん 何してんねん
わしとあんたの契約や
もし頭(かしら)との話 でっち上げやと分かったら―
預けた命 引き出しに来るで ええな!
契約は終わりました ごめんやっしゃ
(警備員)そんな…
あああ…
ゴ… ゴキブリやな あれ
なんとかせんかい!
(車の走行音)
(ディスコ音楽)
(美智留)姐(ねえ)さん!
(律子)来るんや (美智留)イヤや
(若い男)おい 何のマネや
(たたく音) (若い男)うわっ
(美智留)何すんの!
イヤッ! 姐さん 離して
痛いやんか 姐さん 手 離して!
イヤや
うっ… イヤや
(律子)何 考えてるんや!
うち あの人に捨てられたんや
もう3日電話もかかってけえへんし 携帯も切られてるし
浮気してるに決まってる うちかて遊んだるんや
(律子)待つんや 美智留 (美智留)イヤや!
何も分からんと 姐さんなんか 何も
あの人 死ぬ気や 出かけるとき うちに こんなもん渡して―
“何かあったら実家に帰れ”って
ごっついお金 入ってるんや
あの人 もう死んだかもしれへん
あの人が死んだら うちかて生きてへん
あの人は うちの命や
(クラクション)
あいつや 姐(ねえ)さん 見た? 今の車
千田組の姐(あね)や
あいつ こんなときに 亭主と遊びに行っとったんや
(警察官)ご主人の池内章吉さんに 間違いありませんね
間違いないね?
はい
うちの人です
あんた 起きて
黙ってんと 何か言うて
あんた 起きて! 早(はよ)う起きて!
起きて!
(警察官)奥さん
泣かしてやってください
どうか涙枯れるまで 泣かしてやってください
(美智留)起きて…
起きて 起きて…
兄貴?
兄貴は?
(真弓)眠ってはったけど
なんで目離した?
そやけど おまわりさんが 廊下で見張ってはったし…
(物音)
(組員1)姐(あね)さん そろそろ 葬儀屋に連絡したほうが…
(美智留)うるさい!
池内は死んでへん
まだ死んでへんのや
(ドアを開ける音) (組員2)親分!
(一同)親分
もう腐りかけとる
早(はよ)う灰にしたれ
こんな池内 見とうない
掛川!
恐喝ならびに公務執行妨害の 容疑で逮捕する
もう面会謝絶の言い逃れはできんぞ
池内殺(や)ったやつの見当はついとる
どんなことしても わしがケジメつけたる
池内に そう言うといてくれ
(刑事たち)おい おい!
オラッ!
(源田)連れてけ オラ!
(組員)親分!
(亮平)どや 本部の様子は?
あんたと池内さんが 突然おらんようになって―
混乱して何も手つかずみたいで
三崎のおじごさんから―
あんたの指示を聞いてくるよう 頼まれました
(亮平) 心配せんかて すぐに戻る
万一 長引くようやったら―
弁護士に頼んで 保釈の手続きするんや
カネは株と証券売ったら なんとかなるやろ
あんた 美智留に池内さんの敵(かたき)の 見当はついてるて言うたそうやな
池内はなあ 統一連合の件で―
山背の内部に裏切り者がいると にらんで 調べとった
戻ったら残らず暴いて ケジメつけたる
(源田) ヤクザも組長クラスになると
ほじったら罪は なんぼでも出てきよる
掛川は間違いなく起訴されるで
裁判が決着するまでには 半年はかかるわ
(幹部3)保釈の申請を しとるそうやないか
許可にはならん
出したら面倒起こすのは 見え見えやしな
(幹部4)どうなんや
山背 このまま統一連合の加入に 持っていけるんか?
(千田)三崎相談役を抱き込めば 問題ないと思います
(幹部3)抱き込めるんか?
結構 骨のある極道やと 聞いとるで
(坂岩)三崎のことは わしがよう分かっとる 任せてくれ
荒っぽいことは やめてや
池内の件も まだ片づいたわけやないしな
(坂岩)ご苦労やったな
(茂田)千田さん 紹介しとこう
わしとは長いつきあいの 並河(なみかわ)だ
“つきあい”とは どういう?
(茂田)ん? 例えばだ
あんたにとって 邪魔な男がいたとする
そこで あの男に言えば 次の日は消えている
山背を連合に引っ張ったら お前が大阪の大将や
しっかりやれ
大きいな 大阪は
日本一ぜいたくな街や
(千田)そのごっつい街が―
わしらの手で思うように 動かせるようになるんや え?
(槙子)迷いはないんやな?
ない 一気に進むだけや
(槙子)昨日 池内の姐(あね)を 慰める会があったんや
うちも頭(かしら)の姐(ねえ)さんから 誘われてなあ
どないしたんや
傷は浅いけど深い意味がある
ほっとくわけにはいかん傷や
(組員の妻) 極道の嫁になったからには うちらも覚悟はしとったけど―
現実に身内に降りかかるとツラいな
ヤケになったらあかんで
どんな相談にも乗るし
美智留は まだ若いから やり直せるわ
気晴らしに 仕事でもしたらどやの?
うちのこの店 手伝(てつど)うてえや
せや 男なんか なんぼでもおるわ
(槙子)うちは用事ありますし そろそろ失礼させてもらいます
美智留さん 気落とさんと頑張ってな
槙子さん
なに?
あんた この前―
本家の姐(ねえ)さんのとこの 寄り合いのあと どこへ行ったん?
何のこと?
(美智留) 京都のほうへ行ったやろ?
どこへ行ったんや
どこへ行こうと あんたに関係ないやろ
次の日 街で あんた見た 千田さん一緒やった
車の屋根に雪が積もってた
(槙子)それが 何や言うの?
池内が見つかった越前(えちぜん)海岸も 前の日から大雪やった
千田さん もしかしたらうちの人と 一緒やなかったかと思うてな
アホな
千田は滋賀の山奥で ゴルフしてたんや
ドライブの帰りに 迎えに行っただけや
あんた 本家の姐さんの前で 言うたやろ
“頭に何かあったら 山背の跡は誰が継ぐのか”と
頭と うちの人 おらんようになって―
自分の旦那に順番回ってきたって 喜んでんのと違うか
普段なら聞き逃せん言葉やけど―
あんたの今の気持ち察して 我慢したる
千田の話では―
池内さんはバブルの最中に 地上げで大損こいて―
何億もの借金背負うて―
しょっちゅう“死にたい”と 口にしてたそうや
上徳信金のことかて 恐喝したんは頭やのうて―
池内さんやないかと 千田は言うてたわ
ほな何か あんたはうちの人が 借金苦にして自殺したと言うんか
警察も そう言うてるわ
(美智留)正直に言いや お前の亭主は どこにおったんや
池内が殺された日 どこにおったんや
(美智留) チキショウ 殺したる
(銃声)
(女たちの悲鳴)
(律子)連れていくんや (美智留)イヤや!
(律子)ちょっと席 外してんか
大丈夫か
どういうことやの 姐(ねえ)さん
わざわざ うちをここに 誘たんは―
こんな猿芝居に つきあわせるためやったんですか
あんたと千田さんが一緒にいたとこ わても見たんや
車の屋根に雪が積もってたわ
アホらしい
そんなことで いちゃもん つける気ですか
雪は解けたら消えるが―
胸にたまったモヤモヤは なかなか消えるもんやない
それをはっきりさしたかった
それで どないや言うんですか
まさか 姐さんも千田のことを?
あんたが千田さんは 滋賀のゴルフ場におったと言うんや
間違いないやろ
美智留にも思い過ごしやと 叱っとく
イヤな思いさして悪かったな
もし千田が今日のこと知ったら どない思うやろな
あんなに組のこと心配してんのに
あの人が かわいそうやわ
(槙子)怖いんや
うちはあんたと一緒になって 大勢の極道を見てきたけど―
あの女の 掛川の姐(あね)の目が 一番怖いわ
こっちの腹の底まで 見透かされてるみたいで
あんた
掛川の姐に まだ未練 持ってんのと違うやろな
何や?
あの女が新地で ホステスしてたとき―
あんた頭(かしら)と張り合(お)うて 決闘騒ぎまで起こしたそうやないの
若いころの話や
もしホンマに邪魔と分かったら あの女 殺(や)れるか?
2人で山背のトップ狙うんや
それくらいの性根 持ってもらわんとね
槙子
わしを甘(あも)う見るな
女であれ誰であれ 手は緩めん
(熊谷)ああ こっちですわ
こっちです
小西のやつ 京都で若い女と
まあ 韓国クラブの女ですが ドップリはまりさらして
このアパートですわ
この上ですわ
(笑い声)
(女)今晩 どこ行く?
(小西)焼肉食いに行こか?
(女)行く 行く (小西)上カルビ…
(熊谷)小西 (女)キャッ
えらい捜したで
なんじゃ われは? 来いや コラ!
(熊谷)やあっ! (小西)うう
(小西)わしをどうする気や
(熊谷) お前が偽の融資契約書を 掛川の金庫に入れたのは―
分かっとんのや
誰に頼まれたんや?
(小西) 知らん わしは何も知らん
(律子)一緒に警察に行って 何もかも話してもらおか
(小西)サツだけは 堪忍してください
(熊谷)オラァ!
(小西)女です
女に頼まれて 金もろてやりました
(律子)女て どこの誰や?
(小西)それ言うたら殺されます
(熊谷) オラ 言わんかい オラッ!
(小西)かあああ…
(銃声)
(銃声)
(熊谷)姐(ねえ)さん こっちや
(通行人)ちょっと あんたら ここで何してんの
(男)なに?
警察 呼ぶで
(男)おい
(熊谷)おおお…
(律子)大丈夫か (熊谷)ああ…
大丈夫や ちょっと かすっただけや
(熊谷)あああ… (律子)熊さん!
姐さん 小西のやつは―
女からカネもろた 言っとりましたな
敵は身近におるんやな
せやなかったら わしらが こっち来たことバレるはずない
黙ってるんや 今 病院に運ぶしな
ああ もうええ もうええ わしのことは構わんと―
姐さん はよ大阪に 戻ったほうがええ ああ…
あんたを死なせるわけにはいかん
わての大事な味方やしな
ああ… ああ… 今の言葉 幸せや
もう いつ死んでもええわ…
熊さん 熊さん!
(律子)熊さん… (熊谷)あ?
ああっ
アッ
あ…
(弾が転がる音)
アホ!
震えが来るほど ええ女になったな
今日は久しぶりに たっぷり 楽しませてもらおか ええ?
今日はビジネスで ここへ来たんです
え? 何のこっちゃ
おい どこ行くねん? おい!
副理事長さんが 会(お)うてくれはるそうです
わしは 誰にも会うて言うてへんで
わしは お前が来てほしい言うから ここに来たんやないか
(ドアチャイムの音)
おい誰や おいおいおい
(鬼怒田)誰や この人は?
お初にお目にかかります 関東柴山会理事長の茂田です
その柴山会さんが この私に何の用ですか?
いや 実は今―
全国の組織を統一する 動きが進んでおりましてね
まあ北海道から沖縄まで その…
主だった金融機関に ご協力をお願いしてるわけでして
千田の姐(あね)さんから 鬼怒田さんは―
わしらの世界には大層理解が深いと いうことを聞いておりまして…
(鬼怒田) おい 勘違いしたらあかんぞ
掛川のことで協力したんは お前が どうしてもと言うからやないか
てっきり昔みたいに わしと…
ヨリ戻すはずがないやろ
うちは今では山背の4代になる 極道の女房でっせ
何やと お前の亭主が山背の?
ハハハ 笑わしたらあかん
あんなハナタレが日本一の組織の 親分になれるわけがないやないか
なれるわ
千田は うちが見込んで 一緒になったんや
何やこれ?
あんたが自分の身内や―
株の購入のために勝手に流用した 会社のカネの明細のコピーや
(鬼怒田) なに? いつの間にこんな
(槙子) あんたの秘書兼愛人の2年半 ムダには せなんだということや
おっ お前ちゅう女は なんと…
鬼怒田さん
この勝負 あんたの完敗ですな
今後ともひとつ よろしくおつきあいのほどを
何かあると思て調べたんです 千田の姐(あね)のこと
あいつな 千田さんと一緒になる前 上徳信金で働いてて―
鬼怒田いう重役の 愛人やったそうです
そのいきさつがな
槙子の親が町工場してて―
借金で夫婦そろて車で海に 飛び込んで自殺したとかで
槙子はお金のために重役の愛人に なったのに裏切られて―
自分のほうから千田さんに 近づいたそうです
あいつ
千田さんいう極道を利用して 自分がのし上がろうとしとるんやわ
親の葬式のあと 親しい友達に―
“貧乏はイヤや”
“どんなことをしても 金持ちになってみせる”
そう言うたそうです
美智留
今のこと 自分の腹に納めて 黙っときや
せやけど うちの人の敵(かたき) やっと見えてきたのに
池内さんの件は もっと根が深い
先っぽだけ切り落としても 恨み晴らしたとは言えんのや
うち どんなことでもします
うちの人の敵 取るためやったら この命 いつでもほかします
そのときは わてがサインを送る
我慢して待つんや
三崎の親分 お忙しい中ご苦労さんでおます
(組員たち)ご苦労さんです
どうぞ
(組員3) 三崎の親分がお見えになりました
(千田)ああ おじごはん よう来てくれました
さあ さあ さあ どうぞ あちらへ
おい 料理や
はっ
(三崎) おいコラ わしはメシ食いに ここに来たんやないで え?
話て何や?
(千田)まあ まあ 座っておくんなはれ
(三崎)おお
(千田)おじご
どうぞ 食うとくなはれ
何やこれ
おじごのために―
特別に用意した料理でおます
これを わしに食わして どうしようっちゅうんや
山背組の統一連合の加盟に 力貸してほしいんですわ
何やと?
おじごかて腹の中では頭(かしら)のやり方に 疑問持ってはりますやろ
今のままでは山背は ますます 極道社会から孤立してしまうと
頭は山背の組長代行や
わしらは有無なく 従うしかないんや
次の幹部会で わしは―
頭の幹部会除名の動議を 出すつもりです
何やと
幹部会の半数から わしに賛成するとの―
約束を取りつけました
千田!
われは 何たくらんどるんや
頭に代わって山背の跡目でも 取るつもりかや
そうなったら おじごには―
一生不自由はさせませんよ
おい わしを甘(あも)う見るな
たとえ 今日明日 飢え死にしても―
わしは腐ったメシに手 つけんぞ
(ふすまの開く音)
(坂岩)三崎の
やせ我慢はらんと―
千田の料理 食うたれや
(三崎)坂岩!
やっぱり お前が千田の後ろで 糸を引いとったんか
千田は勝負かけとるんや
下手したら おまはん 池内の二の舞になるで
千田 まさか池内を お前が…
どないや
正直に言うてみい
自殺ですよ 池内は サツの言うとおり
しかし しないで済む生き方も あったと思いますがね
(坂岩)三崎の 往生せえや
もう どこにも逃げ場がないんや
この世にはな
(三崎)ハハハハハッ
50年の極道渡世の最後が これか
わしの墓石がこれかやー!
保釈は難しいようです
申請の手続きを進めてますけど―
弁護士さんの話では 多分 無理やろうと
武雄を呼べ
武雄に わしの名代をさせる
こっからでも指示は出せる
(律子) あんた 武雄さんはカタギにする 言うてはりましたやないか
生まれてくる子どものためにも 手堅い仕事をさせると
取り消しや
わしの跡を継げるんは 武雄しかない
(律子)男の二枚舌は みっともないわ
ほかに方法がないやないけ
わてが あんたの名代に立ちます
何やと
山背組若頭として あんたに代わって
フッ われ正気か
われが わしに代わって 本部に出るっちゅうんか
実は昨日 三崎のおじごさんから 武雄さんに電話があって―
あんたの処分について―
緊急の最高幹部会を開くから 出席するようにと
わしの処分?
裁判が長引くことを理由に―
あんたを幹部会から 除名するそうです
除名やと?
三崎のおじきまでが―
外道どもと つるんで わしの寝首かく気か
そういうことや
クソが!
出せ コラ! オラッ!
(警察官)やめろ! 離れるんだ
(律子)大きい声 出さんといて
すんません 何でもありません
わては あんたの何なんや?
何のために 掛川姐(あね)と呼ばれてんのや
そんなに頼りにならんのなら―
ここに何もかも終わりやと―
三くだり半 書きなはれ
形勢不利で手詰まりで それこそ どうしようもないんやから
女にしかできんバクチもおます
イチかバチか わてに賭けてみなはれ
律子
(三崎)掛川の姐(あね)さん あんたをこの場に呼んだんは―
掛川の若頭の 処分についてのことや
掛川は自分の立場をわきまえずに 不始末をして―
組と社会に対して 多大の迷惑をかけよった
本来なら破門にするとこやが これまでの功績に免じて―
最高幹部会としては掛川を 幹部会から除名することにした
本人には書面で通達するが―
あんたも その旨 心得ておいてもらいたい
お尋ねしたいことがあります
何でも聞いてくれ
最高幹部会は いつ開かれたんですか
今日の午前中や
まあ異論もあったが 結局 多数決で決まった
これ 見てもらえますか
委任状やと?
なんやと!
あんたを頭(かしら)の名代に?
権限を一任するやと
これどういうことや!
掛川が戻るまで わてが名代務めることになりました
委任状の日付は昨日ですから―
わてを抜きにした今日の幹部会は 無効ということになります
あんたが亭主に代わって 山背を仕切るっちゅうんか
確かに これは頭の字や
丁寧に ぼ印まで押してある
しかし頭が これを本気で 書いたとしたら―
ドタマ 変になったとしか思えん
帰れ!
これ以上 幹部会にあやつけたら タダでは済まんぞ
(律子)幹部会の決議は―
組長の最終認可があって 発効するのが―
山背組の定法と承知しておりますが
それがどないした
組長に代わるのは霊代さんです
霊代さんの考え 聞いてもらえませんか
ああ ムダや
霊代は3代親分が亡くなってから 一切 表には出てきはらへんのや
(組員4)おじき おじき!
霊代がお見えになりました
なんやと!
これは霊代はん 急なお出ましで
どういうことでおます?
頭(かしら)の留守中 組がゴタゴタしてると聞いてな
(三崎)ええ? 誰から そんなことを
ハハハッ 山奥におっても 目も見える―
耳もしっかり聞こえてるで
それ 見せなはれ
(幹部3)霊代はんに お見せするようなもんでは…
これを頭が あんたに渡したんやな
はい
行き届いた委任状やないか
これの どこに 問題があるというんや
あの お言葉でっけど―
紙切れ1枚で 名代を指名するのは―
あまりにもムチャやと思います
これまでにも 頭のやり方には いろいろと問題がおまして
どんな重要な問題でも―
わしらの意見には まったく耳を貸そうとせず―
不満が高まっとりました
この際 指導部を一新して 組織の結束を固めて―
一日も早(はよ)う4代目山背組を―
選出する必要があるのと 違いますやろか
候補はあるんか?
ああ 人選は わしが任されました
幹部会の同意を取ってから―
霊代にご報告するつもりでおます
うん
それやったら わての考えを 先に言うとくわ
幹部全員 すぐに集めてもらおか
(リュウ) みんなも3代が生前―
自分の跡継ぎには掛川しかないと 常々言うてたのは―
知ってるやろな
霊代として わても―
掛川以外には山背の4代は 考えられんのや
お言葉でっけど―
掛川若頭の裁判は 1年以上かかるいうことです
今 山背は組始まって以来の 危機を迎えております
指導者不在のままでは もう どないもならんと思います
せめて執行部の体制だけでも 固めんことには
(リュウ)もっともやな
掛川姐(あね)としては どや?
頭の留守中 名代として―
5000の組員を引っ張っていく 自信はあるか
自信がのうて この場に顔出しはしません
あんたは たかだか 2~300の―
掛川の台所の守(も)りしてきた だけやないか
5000の組員引っ張る力が どこにあるっちゅうねや
力では負けても―
命の重さと血の熱さは 男と女に変わりはないと思います
掛川の名代務めるからには 獄中から死ねとの指示があれば―
その場で死んでみせます
これで決まりやな
今日以降 掛川姐(あね)が 掛川頭(かしら)に代わって―
山背組組長の代行となる
(三崎)ハッ 無茶苦茶や
霊代 山背を潰す気でっか!
死は人の意思にかかわらず訪れる
わては女の体に 3代の魂を抱えて―
今日まで山背を見守ってきた
3代が これでええと―
わてに語りかけてんのや
律子さん
頼んだで
はい
霊代の言葉やが わしは受け止めることができん
掛川頭の下じゃ―
山背は生きていけんと信じて わしは改革を求めたんじゃ
掛川姐は頭の でく人形じゃ
そんなもんの下で 死ねと言うんなら―
わしは山背から離脱するぞ
離脱するんやったら離脱せいや! 遠慮はいらんぞ
鷲尾(わしお) 何とか言え!
くだらん女の世迷言で 山背潰されてええんか
霊代
掛川姐にどんな泣き入れられたか 知らんが―
女の浅知恵で わしらの生き死に 決められたらたまりまへんな
(幹部)わしもそう思う
(幹部たち)そや!
女の浅知恵と言い切るなら―
男としてシャキッと筋通したらどや
暗がりで背中狙うようなマネは 極道やない
クソにたかるウジやと
3代が一番嫌(きろ)うてたわ
わしは掛川姐についていく 命預けた
わいも ついてくで
(幹部たち)おお!
(千田)安堵してる間か
おじき!
どないしたんや
霊代の言葉は3代の言葉や
背くことはできん
死に損ないが
勝手にせえ!
うちの人が組長になったときに わてにくれた指輪や
まだ若(わこ)うて貧乏なころで安物(やすもん)や
それに わてが勝手に 山背の代紋 刻んだんや
一人の男やのうて―
山背組という 極道一家の妻になったと―
覚悟 決めてな
あんたに譲るわ
いただきます
一生の覚悟として
(坂岩)離脱はすな
あくまで山背に残って その手で代紋つかみ取るんや
(千田)霊代と掛川姐は がっしり組んどりますさかい―
幹部会に わしの居場所は おまへんのや
(坂岩)連中の狙いは 掛川戻ってくるまでの時間稼ぎや
どうしても目障りなら いてまえ
(千田)掛川姐を殺せと?
(坂岩)掛川もや
戻ってきたら お前殺(や)れ
(千田)それじゃ わしは ただの鉄砲玉じゃないすか
文句言える立場か おんどれ!
池内殺して三崎には逃げられて―
あんたのドジで わしらの計画は こじっれっぱなしだよ
このままじゃ あんたもう 同志と呼べなくなるな
千田よ
根性見せたれ 根性
このままじゃ われ 出来損ないのまま―
極道世界から 消えることになっど ん?
いよいよ旦那の尻に 火がついたようだな
支えてやんだな
あんたの助けがなきゃ ヤマ乗り切れんだろう
旦那 どっかもろいところが あるからな
(槙子) 見捨てんといてくださいね うちの人
どうして そんなこと言うんだ
(槙子)うちは関西の極道は 信用してませんのや
目先の欲得しか頭(あたま)にないしね
極道は みんな同じ穴の獣だよ
しかし わしは裏切らん
旦那より あんたのほうが 怖いからな ん?
(銃声)
(組員たち)待て コラ!
(組員5)待て コラッ! (組員6)追え!
(組員6)親分 (三崎)ああ もうイヤじゃ
わしは引退するぞ もう!
誰が どう言おうと引退や
ああ もう 極道なんてゴミじゃ
(三崎) 今日の一件は ただの脅しやない
坂岩と関東の 山背組への最後通告や
お前から掛川の姐(あね)に―
意地張らんと もういっぺん話し合うように言え
そやないと お前 たとえ女でも殺されると―
キツう言うんや ええな?
(組員5)親分 やつらの 居場所(ヤサ) 分かりました
若いもんがヒットマンの1人 見つけて 後をつけたら―
近くのプールバーに 入っていきよったそうです
(武雄)どこや そのプールバー (組員5)はい
待て!
相手にすな
今日のことは わしも忘れる なっ とにかく話し合うんや
折れるところは折れて―
時代の流れには逆らうなと 姐に言うんや
ええな?
分かったな!
うわー もう楽しいわ これ アハハハハ
久しぶりやな こんなん乗んの
(真弓)もう 楽しい!
ヤッホー!
このバッグ ホンマに欲しかってん ありがとう
そやけど気持ち悪いわ 急に優しなって どないしたん?
お前がわしの子ども 生んでくれる礼や
あんたがそんなに 喜んでくれるんやったら―
うち何人でも生むわ ウフフフ
わしになんかあったら 好きにせえ
何のこと?
(武雄)言わんかて分かるやろ
姐(ねえ)さんは―
あんたをカタギにするって 言うてくれてはった
うちも あんたが 極道の足洗(あろ)てくれるもんやと…
姐さんは兄貴に代わって死ぬ気や
男として黙って見てられるか
(真弓)子どもはどうなるの
生まれてくる子どもは…
(武雄)知るか 子どもは母親のもんじゃ 知るか!
(真弓)待ってえな あんた! 待っ… うう…
ううう…
流産しかけて 今は どうにか落ち着いてますけど
お姐さん
バチ当たったんです
うちの人に わがまま言うたから
お兄さんやお姐さんの苦労も 考えんと
うちは極道の嫁として失格や
泣いたらあかん
おなかの子どものことだけ考えて 気持ちしっかり持つんや
武雄さんは わてが守る
どんなことをしても わてが守るから
そやから安心し
お願いします
うちの人を…
お願いします お姐さん
(組員5)ここですわ
(組員6)なに!
(武雄)島本(しまもと)!
(銃声)
オリャッ!
(銃声)
(律子)来んでええ
(組員7)親分 掛川の姐(あね)さんが お見えになりました
(律子)坂岩の親分さんですね
初めてお目にかかります 掛川姐でおます
坂岩や
こちらは関東柴山会の茂田さんや
よろしく
わてのほうこそ
一人で来るとは評判どおり ええ根性しとるの
ほかならん弟のことで おますよってに
(茂田)まあ 座りいな
このたびは弟 掛川武雄が とんでもない不始末をいたしました
弟に代わって どのような償いでも させてもらう所存でおます
(坂岩)どないな償いや
お身内に ケガ人が出たそうで
見舞い金なら いかようにも
あんたの弟がチャカ向けたんは わしの枝のもんがやってる店や
カネで済むと思うんか
(律子)弟に会わせてください
(坂岩)おい
(律子)武雄さん! (坂岩)心配すな
命のひもは まだ この世とつながっとる
(律子)うっ
うう…
わびのしるしでおます
どうかお納めください
ナメとんのか
たかが女の指1本で ケリつく問題やないで
(律子)ほな どないしたら―
弟の身柄 引き渡して もらえるんでしょう
おのれの命と引き換えじゃ
千田 チャカ出せ
この女の頭 しっかり狙うんや
はよ せんかい
(坂岩)これから出す わしの謝罪の条件に―
この女がいっぺんでも 首 横に振ったら―
引き金 引けや
条件 聞かせてください
山背組若頭の名代として―
山背組の統一連合への加盟を 誓約してもらおか
(坂岩)おい (組員7)はい
(茂田)それに署名とぼ印 頼みますよ
武雄さん 堪忍してや
わては組と掛川を裏切ることは できんのや
(坂岩)千田 殺(や)れ
殺らんかい!
できんですよ
なんぼなんでも汚すぎますよ
ダボ! それでも男か
貸せよ
(武雄)うわあ
(銃声)
姐(ねえ)さん 逃げるんや!
女房と子ども 頼んます!
(銃声)
武雄さん!
(銃声) (律子)武雄さん!
武雄さん!
(組員たち)姐(あね)さん
武雄さん!
(組員8)どけ オラッ!
逃がすか ボケ オラッ!
(坂岩)千田
おんどれみたいなカス ツラも見とうないわ
(茂田) どうしたんだよ 千田さん みすみす ええ?
その手で 大阪をつかめるのによ
あんたら はなから わしに 大阪 渡す気なんてなかったんや
わしを利用するだけ利用して―
ゴミみたいに ほかす気でおったんや
違うか?
ガキみてえな泣き言並べる前に―
いっぱしの男だったら 今すぐ追っかけて―
あの女ヤクザの 息の根 止めろよ
女も殺(や)れねえで 何が極道だい
このままだったらな 大阪どころか―
この国のどこにも あんたの居場所は ねえんだよ
ええ?
(鳴り続けるクラクション)
(律子)何すんねん (真弓)お姐(ねえ)さん
わてが武雄さん死なして しもたんや
どんなことしても守ると 約束したのにな
(真弓)あっち行って!
あの人のそばに行かせて
子ども殺す気か!
医者に聞いた 元気に育ってるそうやないか
武雄さん 泣きも笑いもせん子ども抱いて―
喜ぶと思うんか!
(真弓)うう…
(律子)今から 武雄さん 引き取りに行くけど―
あんたどうする?
ここで待つか?
うちが行きます 一人で
お姐さんはもう あの人のことに 関わらんといてください
(律子)なんでや
お姐さんが あの人を カタギにすると言うたから
半端な情けかけるから あの人―
半端なままで死んだんや
極道なら極道らしく もっと―
格好のつく死に方が あったはずや
あの人がかわいそうや あああ…
ああ…
(千田)槙子 お前…
わしが まだ―
掛川の姐(あね)に未練 持っとるのかと 聞いたことあったな
わしは あの女に チャカ向けながら―
どうしても引き金が引けなんだ
茂田に“それでも極道か”って クソ扱いされて
今からでも遅ないわ
なんやったら うちがやったろか
たとえ何十年 懲役に行っても―
あんたが極道世界の頂点に 立ってくれたら うちの勝ちや
(千田)お前なら やるやろ
わしは わしのやり方で ケジメつける
お前とは―
今日限り縁切りや
どないしたんや あんた
まだ あの女の毒気に あてられたままなんか
わしは掛川の姐にホレとった
しかし お前っちゅう女に 出会(お)うて―
命懸けて―
ホレた
いっぱしの男になって お前の心を―
わしに向かせようとした
だけど わしには―
それだけの貫目がなかった
別の男 見つけて出直せ
(槙子)待って
1回こっきりの命 好きにしたらええ
けど 人間死んだら終わりや
それだけは忘れんといてや
千田 われ ようここに来れたな
最後の説得に来たんや
あんたも そろそろ 気が変わるころやと思うてな
(ドアが閉まる音)
サツが犬なら なんでもできるやろ
いっそ この場で わし殺(や)ったらどうや
山背のもんは もう1人も 犠牲にはせんよ
わしは―
高い山 見すぎとった
今から―
池内の兄貴と舎弟の武雄さんに わび入れに行くわ
千田 われ…
組長の意志はひとつや
あんたのやり方がええとは 思わんが…
山背 頼むわ
それに律子はんもな
どういう意味や
あんたの保釈取り下げたんは 律子さんや
なんやて
律子さんは あんたに代わって 死ぬ気でおるんや
あんなええ女 見殺しにしたら お互い男として… のお?
生涯の悔いが残るで
どうやった?
(千田)だいぶ弱気になっとる
もう ひと押しで解散宣言でも 出すのと違うか
そうか
掛川姐(あね)が面会に来とる 今 待合で待っとるんや
わしが呼んだんや
なに?
統一連合の件で 掛川に説得させるんや
2人っきりで会えるように 段取りつけてくれ
そんなことはできん
あんたかて 社会を守る公僕やろ
ほっといたら ごつい戦争になるで
おおお…
(亮平)千田が来た
お前と2人っきりにしたのも 千田の手配や
(律子)電話で池内さんと 武雄さんのこと わびて―
槙子に責任はない 自分一人でしたことやと
(亮平) お前のことも心配してた
あいつは死ぬ気や
すぐ 保釈の申請 やり直せ
お前を名代にしたのは 間違いやった
お前は たった今から 元の掛川姐に戻るんや
保釈なんか当てにせんかて―
あんたの無実はいつでも 証明できます せやけど…
武雄さんまで死なして ここで引くわけにはいかんのや
つまらん意地張るな
わしが何も知らんと思うとんのか
女房 こんな目に遭わせて 黙っとれるか!
坂岩 関東の外道 皆殺しにしたる
これは山背の頭(かしら)として 言うねやない
一人の男として お前の亭主として言うんや
分かりました
すぐにあんたを ここから 出られるようにします
そやけど それまでに―
もしも この命尽きたら―
骨は あんたが拾てください
お前っちゅう女は…
なんでや なんでなんや
あんたが ホレさせるからや
律子
律子!
律子… 律子 待て
(源田)掛川 やめろ
(亮平)律子! (源田)やめろ 掛川
(亮平)死ぬなよ 律子! 死ぬなよ 律子!
(源田)ええかげんにせえ! (亮平)律子!
(組員たち)降りろ コラ
降りろ コラ
(鬼怒田)君ら 何や
(早崎)覚えとるか
頭(かしら)の件で預けた命 引き出しに来る言うたやろ
あれは千田に脅かされて 契約書 作ったんや
関東の暴力団とグルやったぞ おい 命だけは助けてくれ
ああ わしらの親分に 聞いてみるけどな 高(たこ)つくで
ああ 親分でっか?
鬼怒田 捕まえましたで
大事な証人や 予定どおりに
そや 宣戦布告や
(鬼怒田)ああ…
(警察官)おい 誰だ?
(鬼怒田)あ痛たたぁ 何やって… あいつ捕まえてくれ
なんだよ この野郎 チクショウ
(警察官) “チクショウ”って何だ お前 ええ? コラ
何だと思ってるんだ 何様だ おい
(鬼怒田)助けてくれよ (警察官)大丈夫か
(鬼怒田)大丈夫じゃない 助けてくれ
(警察官) 面倒くせえぞ 関わったら 行こう
ああ いいっす 大丈夫っすよ こいつ ほっときゃいいんだ
(鬼怒田)おい (警察官)なんだ お前 黙ってろ
(警察官)行こう (鬼怒田)おい!
(鬼怒田)山背組幹部 掛川亮平氏による
上徳信用金庫恐喝事件について 申し上げます
あれは全部 私が―
山背組の千田組組長に 脅迫されてやった狂言です
(源田)掛川が釈放されるで
上徳信金の鬼怒田が うたいやがったんや
突き出したのは掛川の姐(あね)や
時限爆弾かましやがったんや
あんたらの手抜かりやで
掛川が出てくる
あの女(アマ)
しかし この時期に―
掛川 シャバに出すっちゅうのは どういう腹や
(茂田)舎弟殺されて 線ブチ切れたんだろう ん?
(幹部)いよいよ 全面戦争やな
(茂田)じゃあ 兄弟
(幹部)ほなな
茂田!
大阪を おどれら外道には 渡さんぞ
(銃声)
(幹部) アホんだら! 往生さらせ
(銃声) (幹部)うわあ
(銃声) (千田)ううっ
槙子
堪忍してくれ
これで
すまん…
千田さんがなあ 死ぬ前に わてに電話で―
今度のことで“あんたに罪はない” 言うてきたんや
あんたが この場から すぐに大阪を出たら―
千田さんの言葉 信じるわ
信じてもらう必要はありません
うちは この大阪で 一からやり直すつもりやしね
(律子)あんたのしたこと やり直しが利くと思てんのか?
選んだ男がカスやった それだけのことや
(律子)やっぱり千田さんと 一緒になったんは―
カネのためだけやったんやな
同(おんな)じ穴のムジナのくせに よう言うわ
わてを甘(あも)う見たらあかんで
鉄火場の隅で産湯つこうた 根っからの極道の女や
一皮むいたら いつ何時(なんどき)でも 鬼になるで
うちかて伊達(だて)や酔狂で 極道の女房になったわけやないわ
ここには貧乏で もがいて 首くくった親も眠ってるんや
よう言うた
山背組若頭名代として はっきり言っとく
もし この大阪で喪服脱いだら きっちりケジメ取るしな
(銃声)
はい
はい
はい
はい
うちには もう怖いもんなんか 何もないんや
生きたいように 生きてくだけや
はい
(銃声)
(ピアノの演奏)
(茂田) あんたから誘いがあるとは 思わなかったよ
あの人 ホンマに あんたを殺しに行ったんですか
(茂田)ああ 何を血迷ったか
(槙子) うちかて千田があんな腰の弱い 極道とは思わなんだわ
(茂田)だから “支えてやれ”と言っただろ
あと一歩で大阪が取れたのに あんたのミスだよ
うちは この大阪で―
一番ぜいたくな女になろうと 千田いう極道に夢かけてたんや
それも泡と消えてしもた
その夢…
わしに乗り換えてみんか?
結局あんたら関東が 何もかも飲み込む腹なんやろ
大阪の街も極道世界のすべても
最初から その絵図で 乗り込んで来たのと違う?
あんたが一番のワル言うことや
はっきり言うな
あんたに乗り換えるわ
大阪から東京に
ううん
怖いお人だ
(男)勘違いせんといてや
今日の集まりは日本の社会から 暴力を排除するためのもんや
身に寸鉄も持っとらんで
坂岩 着きました
茂田 まだです
分かった
預かっときましょか
要るときに言うてください
(熊谷)おい ゲンゴロウ
久しぶりやな
なんや お前は
忘れたんかいな
昔 ひとつ釜の飯食うた 熊谷や
(源田)ダニ熊か (熊谷)おお
こんなとこで何しとんねや
ん? まあ ちょっとおもろい話があるんや
なんや
ネタ買(こ)うてもらおう思うてな
何のネタや?
今日な掛川の姐が―
ここに一人でカチコミかけるって 話 あるんや
(源田)何やと? (熊谷)ホンマやで
そんなガセネタ 信用できるかいや
(熊谷)ホンマや (源田)おい たたき出せ
おら 出てかんかい
(司会者)皆様 グラスをお持ちください
では坂岩様 よろしくお願いをいたします
(坂岩)それでは 不肖この坂岩延人が―
乾杯の音頭を取らせてもらいます
日本侠道(きょうどう)連合結成 おめでとうございます
乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)
(司会者)皆様 どうぞご自由に ご飲食 ご歓談くださいませ
なんじゃ わりゃ!
坂岩 うちの人に代わって―
殺された身内の恨み 晴らしに来たんや
覚悟しいや
何 ほざいてんじゃ
(銃声)
(男)カチコミじゃ!
(女性の悲鳴)
(警察官) この会場は包囲されている
(男)ドリャーッ!
(律子)うっ (男)うおっ クソッ
(銃声)
うお…
おおお…
(機関銃の連射音)
(美智留)姐(ねえ)さん
姐さん
(ドアが開く音)
槙子 ハジキ出せよ
(槙子)どないしたんですか?
掛川の姐(あね)がカチコミかけて 来やがったんだ
早く ハジキ出せよ
ハア ハア…
何するんだよ ほら
決まってるやろ 千田の敵(かたき) 取るんや
てめえって女は
あんたはうちを “怖い女”と言うたやろ
これが大阪の女や
極道の女房のケジメや
死ね!
(銃声)
(茂田)グッ! (源田)茂田!
(銃声)
うああ…
茂田
(機関銃の連射音)
(男たちのうめき声)
(茂田)あの女 ぶち殺せ!
(銃声)
うっ
(銃声)
わしがダニなら おのれはクソじゃ
(銃声)
うあああっ ああ…
ハア ハア…
(機関銃の連射音)
(茂田)うあっ
分かってんのか ええ?
わし 殺したら―
お前の亭主は関東全部 敵に回すことになるぞ
じゃかあしい!
地獄への道づれや
(機関銃の連射音)
ハア ハア… うあああっ!
(銃声)
(美智留)姐(ねえ)さん!
(律子)熊さん! (熊谷)うああっ 姐さん
(熊谷)わしゃあ…
(槙子)姐さん
あんた見事に旦那 守り切ったな
うちには何も残ってへん
ホンマは心底 千田にホレてたのに―
あんたとのこと聞いて 意地張って―
あの人 ムダ死にさせてしもた
アホな女や 最低や
(律子)大丈夫か
(槙子)負けへん
あんたにだけは負けとうない
どこかで千田より ええ極道見つけて やり直すわ
掛川の姐(ねえ)さん 勝負は これからや
長生きして待っててや
(美智留)姐さん 槙子さん ほっといたら死ぬわ
あの人も立派なうちらの仲間や
野垂れ死にさせても ええのんか?
(律子)ええんや
極道の女に墓場はない
わても あんたもや
姐さん
わては山背組若頭 掛川亮平の妻や
たった今 うちの人に代わって 売られたケンカのケリつけたとこや
逃げも隠れもせえへん
そこどきや
♪~
~♪
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