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（福長永慈ふくなが えいじ）どうですかね

（西田にしだ）ハア…

お前 何 見てきたんだよ

全部 やり直しだ

（永慈）すみません

ウソだよ バーカ

（西田）ハハッ
（永慈）え？

ホントに辞めんのか？

はい

つまんねえやつ

すんません

ちょっとだけ センス
悪くねえかなと思ったのになあ

（ライターの着火音）

（西田）んだよ つかねえんだよ
このライター

（高木薫たかぎ かおる）よいしょ　ああ…

（高木美枝子みえこ）なあ
（薫）ん？

入学式なんやけど

入学式？　えっ いつやったっけ

４月８日

８日？

えっ 私 パートの日やし

今どきの入学式って
まだ 親も出席するもんなん？

あっ 誰かに代わってもらえんか
聞いてみるけど

（美枝子）もうええって

（薫）難しい子やなあ　もう

（ドアの開閉音）

そんな母親って おる？

（永慈）うーん…

うちに興味ないんよ

忙しいだけちゃう？

（美枝子）うーん…
まあ ええねんけど ずっとやし

（妹尾槙雄せのお まきお）
じゃあ 俺 行ったろか？

（美枝子）ん？
（槙雄）どこでやんの？　入学式

（美枝子）ん… 学校やけど

おお ええやん

（槙雄）永慈も行こうや
（永慈）おう ええよ

（槙雄）…で 何なら
どっか ホテル 泊まろか

（永慈）え？　え？
（槙雄）えっ なんで？

おもろそうやん

（永慈）うん うん まあ…

（槙雄）…で どっか ビュッフェ
食べようや ビュッフェ

（永慈）ビュッフェな
（美枝子）フフフッ

（槙雄）なっ…
（永慈）何？

（槙雄）何やな　ほんまに
（永慈）いや いや いや

いや ニヤニヤしとんで

（永慈）いや いや
（槙雄）ほんまやで ほんまやで

（永慈）何が？　いや いや
（槙雄）ほんま 何だよ

（校長）新入生の皆さん
ご入学 おめでとうございます

春爛漫らんまんの季節を迎え
今日の よき日に―

本科新入生 206名の皆さんを
迎えることができました

教職員一同の
大いなる喜びであり…

（永慈）ほな 撮るで

（美枝子）うん
（榊さかきみちる）はーい

（永慈）チーズ

（シャッター音）

（永慈）ピースとかして　ピース

ああ いい　ああ いいで　はい

（シャッター音）

（みちる）見して

２人とも お姉さん なったなあ

お姉さんって何やねん

（永慈）
きれいになったってことやんか

（槙雄）ふーん
（みちる）ヒヒッ

まあ 成長したかもな

（美枝子）上からコメントすんな

（槙雄）フフフフッ
（みちる）へへへヘッ

ええやん
２人とも ええ感じやで

（伊地知いじち）みちるちゃん
（美枝子）ほんま？

（みちる）あっ
（伊地知）おお

下で お父さんたち 待ってるで

（伊地知）みんなで写真 撮ろうて
（みちる）うん

（美枝子）
伊地知君 榊の親と仲ええんやな

みちるちゃん 守れるん
俺しかいないって―

認めてもらったからなあ

（みちる）エへへへへッ
（伊地知）ハハハハッ

（美枝子）へえ
（伊地知）おお

（伊地知）ほな みちるちゃん 行くで
（みちる）うん

俺のこと 白馬やと思うてや

（みちる）えっ 馬でええの？

ええよ　乗る？

（みちる）乗る
（伊地知）おお

（美枝子）ハハハッ
（みちる）ほなね

（伊地知）じゃ
（美枝子）また

馬やって 馬やって
永慈 馬や 馬や

（槙雄）馬や　行くで
（美枝子）ハハハッ

（３人のはしゃぎ声）

（槙雄）
行くで　待ってや　追いかけんで

（永慈）あっ あっ
（槙雄）声が小さい

（永慈）痛いアハハッ
（槙雄）言うなよ

（槙雄）箸？
（美枝子）箸でって言ってたで

（槙雄）箸？
（美枝子）箸でって言ってたで
（永慈）
うん 自分の
好きなもんから…

（永慈）
おお いきなり それ いくか

（美枝子）おお

（永慈）アハハハハハハッ

（槙雄）うん うん うまい うまい
（永慈）おっ おっ うまい？

（槙雄）うん うん うまい うまい
（永慈）おっ おっ うまい？
（美枝子）
うまい？　うまい

（美枝子）
うまい？　うまい

（美枝子）
うまい？　うまい
（永慈）カボチャ
（美枝子・槙雄）カボチャ？

（永慈）カボチャ
（美枝子・槙雄）カボチャ？

（永慈）カボチャやろ
（槙雄）あっ カボチャ…

（槙雄）遠くのほうにおんな
（永慈）アハハッ

（美枝子）えっ おる？
（槙雄）うん

（永慈）何？　これ カボチャ以外 分からん
（美枝子）えっ 感じひんねんけど

（永慈）何？　これ カボチャ以外 分からん
（美枝子）えっ 感じひんねんけど
（槙雄）後ろから
２番目の…

（美枝子）後ろから…
（槙雄）２番目の席に―

（美枝子）えっ？
（槙雄）カボチャ 転校して…

（槙雄）フフフッ
（美枝子）いや な… 何 言うとんねん

（永慈）うまそやな
（美枝子・槙雄）うわ

（美枝子）軟らか
（永慈）うわ

（永慈）肉だけでええの？

（槙雄）ん？　ライス？
（永慈）アハハハッ

（美枝子）おいしかったなあ
（槙雄）せやな

（美枝子）うん
（槙雄）肉 うまかったな

ほんまやな　アハハハッ

（槙雄）えっ？　えっ？
（美枝子）えっ？

（美枝子・槙雄）エへへへッ

（美枝子）
永ちゃん えっ 何？　これ

（永慈）プレゼント
（槙雄）ええっ

（美枝子）ほんま？
（槙雄）ほんまに？

（美枝子）開けてええ？
（永慈）ええよ

（槙雄）ええっ 何？

（美枝子）何や 何や

（槙雄）ん？
（美枝子）えっ

何？　これ

（永慈）フフフッ ハハッ
（槙雄）何 これ

おおっ

（美枝子）えっ？
（槙雄）何？

（美枝子）何？　これ

（槙雄）ええっ
あ… でかい でかい でかい

（美枝子）えっ すご
（槙雄）おお

（美枝子）えっ 見て 見て
（槙雄）ん？

（美枝子）桜やで
（槙雄）おお きれいやな

（美枝子）うん
（槙雄）この色も きれいやな

（美枝子）ほんまやな
（槙雄）何で塗ってるん？　これ

（美枝子）えっ これ… えっ
（永慈）綿の反応染料ってやつ

（美枝子）あっ そうなんや
（槙雄）反応？　何 それ

（美枝子）へえ
（永慈）俺もあんのよ

ほら　アハハハッ

（槙雄）えっ めっちゃきれいやん
（美枝子）ほんまや

（美枝子）ウフフッ いや…

（槙雄）そっちもええな
（美枝子）うん

（美枝子）ありがとう
（槙雄）ええっ

（美枝子）ねえ 大事にするわ
（槙雄）ありがとう

でな いきなりで
あれなんやけど―

父さんが ２人に
会いたいって言ってんねん

入学祝いと就職祝い兼ねて
ごちそうしたいって

何か 微妙な気分やとは
思うんやけど… うん

それって
永ちゃんとマッキーのこと―

認めてくれるっていう会なんかな

（永慈）うーん… どうやろ

マッキーのこと
ええ子やって言うてたし

２人と仲良くしたいだけなんやと
思うけど

ええよ　断る理由ないやん

なっ 行こうや

（美枝子）うん

（美枝子）えっ
（槙雄）ん？

（槙雄）えっ 何？　何？
（美枝子）えっ

（槙雄）えっ 何？　何？
（美枝子）えっ
（店員）入学 就職

（店員）入学 就職

おめでとう
ございます

おめでとう
ございます
（美枝子）永ちゃん？　アハハッ
（槙雄）ええっ 何？

（美枝子）永ちゃん？　アハハッ
（槙雄）ええっ 何？

（槙雄）ありがとう
えっ これ チョコケーキや
（美枝子）
ほんま ありがとう

（美枝子）ほんまや
（永慈）おめでとう

（槙雄）えっ これ 永慈が書いたん？
（永慈）書くか

（美枝子）アハハッ
（槙雄）せやな

こんな うまいわけないもんな

（美枝子）うん　ウフフッ
（槙雄）ハハハッ　ありがとう
（永慈）
花火 消える前に
写真 撮ってええ？

（美枝子）あっ
（槙雄）おお ええで

（槙雄）ありがと うおっ
（美枝子）いやあ

（永慈）はい はい はい はい
おめでとう　アッハハッ

（美枝子・槙雄）ありがとう

（永慈）ええ写真やわ

（槙雄）永慈も撮ったる
（美枝子）じゃあ 永ちゃんも？

（永慈）えっ いいよ 俺は別に
（槙雄）消えてまう

（槙雄）消えてまう　はよ はよ はよ
（永慈）なんで？

（永慈）関係ないもん 俺
（美枝子）花火 消えるで

（美枝子）はい はい はい はい
（槙雄）いくで

（槙雄）ここやんな ボタン
（永慈）フフフッ

（美枝子）記念で
（槙雄）はい チーズ

（シャッター音）

（槙雄）おお ええやん
（美枝子）ええやん

（永慈）何の写真なん これ
（槙雄）おめでとう

（槙雄）酔いすぎやろ
（美枝子）アハハッ

（永慈）クックックックックッ…
（美枝子）酔っぱらってんなあ

クックックックックッ
楽しいなあ

（美枝子）フフッ
（槙雄）アハハッ

（美枝子）何やねん
（永慈）アハッ

（槙雄）トンビや　永慈トンビや

（永慈）助けてくれ 助けてくれ
（美枝子）嫌や 嫌や

（永慈）たすけ…
（槙雄）シューッ

（永慈）何？
（槙雄）目 回したんで

（美枝子）あっ 吐く 吐く 吐く

（槙雄）ヤバいやろ
（美枝子）ハハッ

（槙雄）ちゃんと着いや

（永慈）うん

（永慈）ありがとう
（槙雄）ええな

いや でも はよ飲みたいな
うちらも

（槙雄）せやなあ
（美枝子）うん

（槙雄）あーっ

（永慈）俺もやろうと思ったわ 今
（槙雄）ハハハッ

（永慈）やめたけど やめたけど

（槙雄）フフッ
（永慈）あーっ

（槙雄・永慈）何やねん

（永慈）ハハハハッ
（槙雄）コラ

（槙雄）やってるな
（永慈）やってるわ

（槙雄）やってんな
（永慈）自由やな

（美枝子）楽しいわ
（永慈）ハハハハッ

（槙雄）シューッ プシューッ

（永慈）何やねん
（槙雄）何やねん

（永慈）何やねん 何やねん
（槙雄）何やねん

（福長洋介ようすけ）すまん

別れてくれ

（福長令奈）ちょっと パパ

（洋介）槙雄君に恨みはない

でも 永慈も もう社会人だ

今 何を選択するかで
将来が確実に決まっていく

（永慈）
いや… いや ちょっと待って

なんで それで
別れるって話になんの？

（洋介）だから…

いや 別に
目立つ つきあい してないし

父さんに言われたからって
俺は女の人を好きになれるわけ…

（洋介）それが俺には―

受け入れられない

いい子に育ってくれたと思ってる

でも…

なんで…

なんで…

男が好きなんだよ

（美枝子）私には…
（はなをすする音）

何が問題なのか分かりません

永ちゃんが誰を好きになるとか
そんなことで―

永ちゃんの何が変わるんですか？

永ちゃんは永ちゃんのままです

ありがとう

（はなをすする音）

もう帰るわ

ごちそうさん

マッキー

（洋介）跡継ぎは どうする？

子供は？

なあ

俺もママも お前たちが生まれて
本当にうれしかった

だから お前も親になって
この幸せを感じてほしいって―

思って何が悪いんだよ！
おい おい

おい お前 言ってみろ！

（令奈）パパ やめて
（洋介）ダメなのか？　おい

（令奈）パパ やめて　やめてよ

ハア…

そんなこと言うために
呼び出したの？

やめて

（泣き声）

行こう

マッキー

（令奈の泣き声）

メシ うまかったな

（永慈）無理せんでええよ

（美枝子）別れへんやんな

（永慈）そりゃそうや
親に言われたからって

けど…

俺と つきあうことで
おっちゃんが悲しむんやったら―

それって正しいんかな？

（永慈）そんなこと
マッキーが気にせんでええ

だって 俺
おっちゃん 好きやもん

永慈やって
そんな感じのままは嫌やろ？

（永慈）そりゃ…

俺だって嫌やけど

でも…

あれが…

父さんの本当の本音やったら…

怖い

（美枝子）じゃあ 産む

うち ２人の子供 産む

産むって お前…

よう そんなん思いつくな

思いつきちゃうわ

代理母になって
うちが２人の子供 産んだら…

そしたら おじさんに
孫の顔も見せれて―

別れんで済むんじゃないん？

（はなをすする音）

いや おっちゃんが言うてることは
もっと根本的なことやし

そんな 人の気持ち
俺らで変えようがないやろ

（はなをすする音）

あんたが言うたんやろ

時間が解決してくれんって

マッキーたちのことやねんから…

マッキーが諦めんでよ

マッキーが頑張ってよ

なあ 永ちゃん

おじさんが反対するんは―

永ちゃんの幸せを
望んでるからやろ？

だったら ちゃんと
証明したらええやんか

マッキーとおるんが
こんな普通で こんな幸せやって

そんなふうに俺らに関わること
美枝子は望んでるんか？

うちは…

男の人 あんま好きじゃないし

いつか 結婚したいとも思わへん

なんで こんな
女なんやろって思ってた

けど 今 分かった

このためやったんやって

初めて女の意味があったんやって

♪～

♪～
（従業員）じゃあ 基本的な
２Ｄ作図やりましょう

♪～

♪～
ああ お願いします

♪～

♪～
ああ すいません

２Ｄ作図が使える…

（美枝子）出産や子育てのためには
お金が必要や

“まずは お金をためよう”と
永ちゃんが言った

（先生）
そして２番　手指消毒になります

そして３番はファイリング

爪の長さ　それから形

（美枝子）取れへん
（先生）そしたら―

こっち側を… リムーバー
つけていただいて…

ちょっと時間 置いて

えっ こっちやっけ？
こっちやっけ？

（生徒）こっちから
（みちる）こっちか

よいしょ　いきます

行きたい

（美枝子）じゃあね
（みちる）バイバーイ

（生徒）バイト してるん？
（みちる）え？

（タンバリンの音）

失礼します

（客たちのはしゃぎ声）

（美枝子）そうして季節は
春から夏へと移っていった

～♪

美枝ちゃん 頑張ってんな

（槙雄）うん　頑張ってる

俺ら…

これでええんかな

（槙雄）子供のこと？

（永慈）うん

分からん

けど 美枝子が俺たちのために
言ってくれたことや

（永慈）うん

そやんな

俺らは…

俺らが美枝ちゃんのために
できること…

考えなな

（槙雄）うん

（槙雄）分からんで
（永慈）違うやろ

（槙雄）
何か あるかもしれんやん

（永慈）何が？

（槙雄）何やと思う？

（永慈）えーっ

（槙雄）おおっ

（永慈・槙雄）おおっ

（美枝子）おおっ
（槙雄）広い

（美枝子）広いなあ

（槙雄）海 海 ヤバい
（美枝子）ううっ ああ ふかふかや

（永慈）ふかふか？
（美枝子）うん

（槙雄）見ようや 見ようや

（美枝子）えっ？
（槙雄）見ようや

（窓が開く音）
（槙雄）よいしょ　おおっ

（美枝子）広いなあ

（槙雄）広い

（美枝子）うわ きれいやわあ

（鳥の鳴き声）

（鳥の鳴き声）
（槙雄）うおっ

（美枝子）何か鳴いとんな　うん

今日 新月やねんて

（槙雄）ふーん

やったら 何かあるんか？

（美枝子）
願い事が かないやすいって

“空っぽの状態からのスタート”

“何事にも やる気が出て
吸収しやすい”

…やって

月の満ち欠けで そんなんあるんか

（美枝子）ぴったりやん

あんな 先に言うとくけど―

やったからって あとで
気まずくすんなや

（美枝子）
“やった”とか 言うなや

ああっ

緊張する

ほんまに
子供なんか できるんやろか

まあ 100パーではないしな

（美枝子）もし
できひんかったら意味ないやん

意味なくはないやろ

俺らが何を目的にしてたかを
伝えられて

お前が
自分が役に立つかどうかを―

ごちゃごちゃ 考えんくなるなら
それでええやん

俺らには
俺らなりの幸せの形がある

そう思うなら あるんや きっと

（美枝子）
永ちゃんの傷ついた顔も…

何も言えんままのマッキーの顔も…

もう見たくない

正しくなくても

おかしくても

でも 本当は…

どうしたらいいのか…

分からない

電気 消して

（永慈）美枝ちゃん？

（槙雄）無理せんでええねんで

（永慈）やめよか

（美枝子）やめへん

（タイマーの音）

（美枝子のせきばらい）