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Original subtitles

♪~

(ユウタ・妹) ♪ ぬかるんだ道を行こう

♪ どろどろの道を行こう

♪ 新しい靴が汚れた

♪ だから私は

♪ 歩くのが嫌い

♪ ぐにゃぐにゃ道を走る

♪ くねくね蛇行して走る

♪ 気持ちが悪くなってきた

♪ だから私は

♪ 走るのが嫌い

♪ にごった水

♪ くすんだ空

♪ よどんだ風

♪ すすけた雲

♪ みんな大嫌い

♪ とても大嫌い

♪ 本当に―

♪ 大嫌い

(引越業者A) 気を付けろよ

(引越業者B) はい

(引越業者B) すいません

(ユウタ・妹) せーの!

(引越業者B) これは どちらですか?

(母) はいっ ああ…

あっ じゃあ これ…

いいですか? 台所で

(引越業者B)はい (母)すいません

(母) はい お願いします

(母)この辺で (引越屋B)はい

(引越業者B)よしっ (母)はい ありがとうございます

(激しい物音) (父)ああー!!

(母) お父さん?

(父) アァ…

(母) どうしたの 何!?

(ユウタ)どうしたの!? (妹)お父さん

(ユウタ)お父さん 大丈夫!? (妹)どうしたの?

(母) どうしたの?

(妹)お父さん 大丈夫? (ユウタ)お父さん?

(父) ああ… 大丈夫 大丈夫

そこの段差に蹴つまずいて 転んだだけだから

(母)転んだだけなの? (ユウタ)ホント?

(妹)お父さん 血 (ユウタ)鼻血 鼻血

(母)あら 大変!! (父)ああ!!

(母) 鼻血出てるじゃない!

(父) ちょっ… ティッシュ! あのね そこのダン…

(ユウタ) よいしょ

何だ これ…

(母) ユウタ! ちょっと来て!

(母)ユウタ! (ユウタ)分かった 今行く!

(バイクのエンジン音)

(巧(たくみ)) この辺りだと思うんだけどなあ

(誠二(せいじ)) すいません

すいません ここです

ここ

うおぉ!

(巧) どうしました…?

(誠二) すいませんが 手を貸していただけますか?

何か ひっかかって 出られないんです

(巧) はあ… はい

でも… なんで そんなとこに いるんですか?

(誠二) 泥棒とか のぞきとかじゃないです

信じてください

バイクでこけたら

何だか こんなふうになっちゃって

そうだったんですか!

それは大変でしたね

(誠二) 植え込みに複雑に 引っかかってるのか

全然 出られないんです

あちこち痛いし

助けてください

(巧) 分かりました

でも 引っぱり出したら 痛いんじゃないんすか?

(誠二) さあ 分からないですけど

(巧) じゃ ちょっと待ってくださいね

今 体の周りの枝を広げますから

ああ…

相当 茂ってますね

ああっ… これ 網みたいだ

細い枝が とげみたいになってるし

あぁっ…

いきますよ?

(誠二) うわあ!! ああ…

大丈夫ですか?

(誠二) はい…

やっぱ 痛いですよね

(誠二) ええ 結構…

ちょっと 絡まってる枝を はずしますからね

(誠二) すいません…

(巧) ああっ…

(誠二) よいしょ…

よし これで…

あっ…

あっ…

(誠二) あっ ああっ…

ああぁー!!

(誠二) あああぁー!!

(ナレーター) 事故被害者の検視結果報告は 全身打撲による即死である

第一目撃者は運送会社勤務―

乾(いぬい) 巧 23歳

事故被害者は 畑野(はたの)誠二 19歳

(誠二) 僕は…

死んだのだろうか

きっと…

死んだのだろう

なんで こんなことになったんだ

(バイクのエンジン音)

半年前

僕は この富沼(ふぬま)市の大学に入学し―

この町で暮らすことになった

(誠二) フランス語…

だから 何?

(誠二) この町は…

どこか変だ

(友人A) ナンパでもするか? 誠二

(誠二)こんな夜遅くに? (友人A)うん

(誠二) 誰もいないけど

(友人B) ん? いた

いた いた!

(誠二) ホントだ

(友人A) めちぇめちゃ いいスタイル

バックショットは97点だな

(友人B) お~し 顔見てくる

(誠二) ハハハ

(友人A) おい ちょっと どうだった?

声も出ないほど いい女だったのか?

(友人B) いや…

何というか…

いい女とか そういうのじゃなくて…

(友人A) 逆? えっ… 逆か!?

後ろ姿は あんなにスタイルいいのに?

なら一層 見てみたいな

誠二 行くぞ

(友人B)おい (誠二)え~

(友人B) やめろよ やめろって!

(友人A) ねえねえ 君 君

これから俺たちと…

顔が… 藁(わら)?

(誠二) やっぱり…

この町は どこか変だ

(ユウタ) おしっこ

もれる もれる!

もれる…

ええっ…

何 あれ…

こっちは おしっこしたいのに…

電気つけとけば 大丈夫だよな

(悲鳴)

(店長) へえ~

バイク便のアルバイトしてたの?

(巧) あっ はい!

(店長) なんで辞めたの?

(巧) ええ…

いろいろ ありまして…

(店長) いろいろ?

ハァ… まあ いいか

とにかく 頑張って

(巧) はい! 頑張ります!

いらっしゃいませ!

(巧)何名様でしょうか (男性客A)見りゃ分かるだろ!

(男性客A) 3名だよ 3名!

(巧) おタバコは お吸いになられますか?

(男性客A) 吸わねえに決まってんだろ!

(男性客B) 吸わねえよ!

(巧) はい…

お待たせしました カルボ…

あっ ああ!

(男性客C)おい! (巧)ごめんなさい!

(男性客C) てめえ 何やってんだよ! 店長呼んでこいよ!

(巧) すいません! すいません!

(男性客C) おい どうしてくれんだよ!

(店長) 何やってんだよ 君は!

申し訳ございません!

(女性客)ちょっと触んないでよ! (巧)すみません!

(店長) 触るんじゃないよ!

(ウエイトレス) 失礼します すみません

こちら お下げいたしますね

(陽子) たまにいるんですよ あの席に

(巧) “いる”って何がいるんですか?

(陽子) 自分にしか見えない客です

(巧) 先輩も見たことあるんすか?

(陽子) “先輩”は やめてください

陽子でいいです

(巧) じゃあ… 陽子さんも 見たことあるんすか?

(陽子) ええ 何回かは

でも そういうときは 見なかったことにするんです

(巧) 見なかったことにですか…

そのほうが 身のためですよ

はい…

絶対に相手にしちゃ駄目ですよ

(巧) 分かりました…

ありがとうございます

陽子さん

(陽子) 何ですか?

何か 変じゃないですか?

この町

(陽子) そうですか?

どこにでも あるじゃないですか

そういうこと

この町だけじゃないと思いますけど

(巧) お待たせしました

激うまハンバーガーの 激辛チョリソーセットですね

ごゆっくりどうぞ

(巧) “関わり合いに ならないほうがいい”

それに こしたことはない

うわあ!

確かに そのほうがいいと思う

だが…

放ってはおけなかった

(巧) いらっしゃいませ

ご注文がお決まりになりましたら

注文ボタンを押して お呼びください

失礼します

(巧) もう その客の姿は そこにはなかった

でも…

(巧) お疲れさまでした!

(巧) ついてきた…

(誠二) 僕は ある女性とつきあい始めた

(女性) ありがと 送ってくれて

寄ってく?

(誠二) おう…

(誠二) 彼女の名前は

陽子

同じ学部の1年先輩だった

(陽子) どうぞ 入って

(誠二) ああ…

(誠二) 一見

とてもきれいな子なのだが

ちょっと というか…

かなり変わった女の子だった

(陽子) はい どうぞ

(誠二) ありがと

誠二君

薄々は 気付いてるとは思うんだけど

えっ…

私…

見えるの

いろんなものが

み… 見えるって… 何が?

何?

(陽子)分かんないの? (誠二)いや…

分かる… 分かるよ

あの…

えっと… つまり

霊的なものってことでしょ?

だから違うのよ

“霊的なもの”って ひと言で済ませないでよ!

これだから素人は…

(誠二) ごめん

何か 気に障ること言った?

うるせえ! このクソバカ野郎!

(誠二) だから 日々

いろんなストレスが 溜まっているらしい

(陽子) 何年もの間 溜めに溜めたのよ

今までの私の人生で経験した―

嫌なことや悩みごとなんかを

この中に吐き続けてたんだよね

すると 幾分 心が晴れるんだけど

そうするたび…

心なしか このティーポットが 黒ずんでいくような気がして…

今じゃ 触れるどころか

目の端に映るのも嫌なの

死ね死ね このクソバカ野郎! 死ねって言ってんだよ コラー!

随分 ディープな趣味だね

(陽子) あっ そうだ 誠二君

このポット 捨ててきてくれない?

えっ 捨てちゃうの?

そう

早く 捨ててきてよ

えっ? えっ… 俺が?

いいけど… 周りのこれ

(誠二) 悪い気とか 出てんじゃないかな これ…

(陽子) 何よ 嫌なの?

いや… 嫌じゃないけど

じゃあ さっさと言われたとおりに

分かった…

うわっ うわあっ!

(陽子) アッハハ!

超 おもしろい!

もう1回やろう もう1回見せて

(誠二)嫌だよ (陽子)いいじゃん

もう1回いこうよ

アハハ!

ハハ! もう1回やろう!

(陽子) もっかい! もう1回やろうよ!

(誠二) やっぱ…

こいつと付き合うのは無理かも

(巧) あの日から…

あいつは 毎日 あそこに立っている

おかげで 僕は外に出ることができない

なぜなら…

あいつに連れていかれるかも しれないからだ

(ユウタ・妹) ♪ ゆらゆら空を舞う

♪ 風にまかせて舞う

♪ どこに行くか

♪ 分からない

♪ だから私は

♪ 舞うのが―

♪ 嫌い

♪ ぐるぐる道をはう

♪ ひたすらに道をはう

♪ なかなか…

(ユウタ) えっ…?

(妹) お兄ちゃん 怖いよ…

(ユウタ) 大丈夫 大丈夫

(妹)暗いね (ユウタ)うん

(父) ユウタか? ん?

(ユウタ)お父さん? (父)うん

(ユウタ) どうしちゃったの?

(母) 停電かしら

(父) いやいや ブレーカー落ちただけだろ

だから お母さん レンジ使いながら

ドライヤーかけるのやめなさいって いつも言ってんじゃん

(母) えっ 私のせい?

(父) じゃあ 誰のせいって言うの

(ユウタ)ほら 見て (父)うん?

(妹) うわあ みんな真っ暗!

コンビニもファミレスも 全部 消えてるね

(母) ねえ~

やっぱリ 停電じゃないの?

(父) あっ お母さん あの…

ろうそくか懐中電灯ある?

(母) あっ そうそう そうそう

えっとね 下かな?

(ユウタ) ハイパーライト 避難袋に入ってたやつ

(父) ユウタ それ おもちゃじゃないんだから

(父)ちょっと 貸しなさい (母)えらい!

(母) けど まぶしい!

(ユウタ)ハハッ おもしろい! (妹)目 チカチカする

(ユウタ) みんなアニメみたいに ギコギコ動いてる

ねえ みんなもっと動いてみてよ!

(妹) お兄ちゃん こう?

(ユウタ) そうそうそう

(3人のはしゃぐ声)

(父) も… もういいだろ ユウタ

もう やめなさい

やめなさい ユウタ

ユウタ しつこいぞ

(母) やめなさい!

(ユウタ) はいはい しょうがないな

うわあ!

(父) どうした!

(ユウタ) 誰かいた…

(父) “誰かいた”って言ったよな…

誰もいないじゃないか

(妹) あれ? ママは?

(父) そういえば ママいないな

どこに行った? さっきまで いたのに…

(母) ギャアー!!

(父) どうした!?

(妹)お母さん! (ユウタ)ママ!

(妹)お母さん! (ユウタ)どうした!?

(父) 母さん どこだ?

(ユウタ) お母さん?

(妹) お母さん

(父)おかしいな… (妹)どこ?

(父・ユウタ) うわあ!!

(父) 何だ これ!?

(父)母さん! (ユウタ)お母さん?

(父)母さん! どこだ! (妹)お母さん!

(父) 母(かあ)… ああ!!

(妹)キャー! (父)うっ… ううっ!

(父) うぅ…

(父のむせる声)

誰だ お前…

(ユウタ)父さん? (父)あぁ…

ああっ! ユウタ!

逃げろ! 早く!

うわあ!!

お父さん!

(父) うぅ!

(ナイフが刺さる音)

ああぁ… ううう…

ぐふっ…

(ユウタ) お父さん…

お母さん…

(ユウタと妹の泣く声)

(ユウタ)ハッ!? (妹)キャッ!

(ユウタ) 逃げろ!

早く…

あぁ… ああぁ…

早く 逃げろ!

早く逃げるんだ 陽子!

(陽子の泣く声)

(陽子) お兄ちゃん…!

(誠二) それで… そのあと どうなったの?

(陽子) お父さんは死体で見つかって

お母さんとお兄ちゃんは いまだ行方不明

(誠二) そんな 壮絶な過去があったんだ

(陽子) まあね

その日以来 私は天涯孤独で この町で暮らしてきたってわけ

(誠二) あっ 家にいた男って 一体 誰だったんだろう?

(陽子) さあ よく分からない

でも あの日以来―

私は見えるようになったの

いろんなものが

それに いろんなことも 分かるようになった

例えば…

もうすぐ死んじゃう人とか

(誠二) えっ?

もうすぐ死んじゃう人?

(陽子) あなたよ 誠二君

(誠二) えっ…

やめてよ 冗談でしょ!

(陽子) 冗談じゃないわ

かなりマジです

(誠二) マジで?

もうすぐ死ぬわ あなた

確実に

そんな…

いなくなった…

ハァ…

ハァ ハァ…

ハァ…

手?

まさか!

ハッ…

ハハハ…

だよな

いくら何でも… だよな!

きっと そうだよ!

ハッハッハッ…

きっとマネキンか何かだよ

僕ってバカだよね ホント

ハァ ハァ ハァ…

確かめてくるか

何だ やっぱり…

(女性) なに勝手に触ってんのよ!

返せよ…

このバカ野郎 返せよ!

バカ野郎! 返せよ!

返せよ!

(女性)バカ野郎! (巧)痛い…

(女性)返せよ! 返せよ! (巧)痛いよ… やめてよ!

(女性) 返せよ! 返せよ! 返せよ!

返せよ! 返せよ!!

返せよ バカ野郎!

バカ野郎!

返せよ! 返せよ!

返せよ! 返せよ!

返せよ!

返せ! 返せ!

この野郎 返せ!

返せー!

(誠二) は?

何 これ…

子どものいたずらかな

うそ…

ひっついた

ハハハ…

ああ… まあ いっか

(カメラのシャッター音)

(カメラのシャッター音)

陽子

何があったの?

亡くなったって 隣の人

(警察官) よし 気を付けて

通るよ

(陽子) 死因は心筋梗塞

全裸のまま 浴室に倒れていたなんて

(誠二) このシールのせいかな…

(陽子) シールって何?

(誠二) 部屋の扉に貼ってあって

子どものいたずらかなって 思って…

隣の扉に貼ったんだけど

(陽子) どんなシール?

これぐらいの小さな…

3つ穴が開いてて 人の顔みたいなシール

(陽子) なるほどね

(誠二) え? どこ行くの?

(陽子) バイト

(巧) ああっ ああ… ああ!

(陽子) 私です!

もう大丈夫ですよ

(巧) 陽子さん…

(陽子) 陽子でいいです

(誠二) どうして… ここに?

(陽子) バイトに来ないから 心配して見にきたんです

そしたら ゴミ置き場で 血まみれで倒れてたから

(巧)あっ… (陽子)大丈夫ですか!?

(陽子) もう少し 休んでますか?

まだ痛むようだったら あの 病院に…

(巧) この町は狂ってる…

この町はおかしい…

この町は変だよ!

この町は狂ってる!

(陽子) そんなことないですよ!

(巧) 絶対おかしい…

この町は狂ってる…

絶対おかしい…

この町は狂ってる…

狂ってる…

震えてるんですか?

そんなに怖いんですか?

この町が

だったら こっから とっとと出て行きやがれ!

このクソバカが!

それができなきゃ お前みたいなやつは

この町で死ね死ね死ね死ね 死んでしまえ!

(巧) 陽子さん…

死ねよ バカ!

(ドアが閉まる音)

ううっ…

(巧) “この町から出て行けばいい”

ううう… ハアハア…

陽子さん

それは やまやまなんだけど

僕は出ることはできない

なぜなら…

外にまだ あいつらがいるからだ

うそ…

まさかね…

(ドアが閉まる音)

(誠二) どうしたの?

今度は首吊り自殺だって

ええ?

(誠二) やっぱり…

あのシール

シャレにならないくらい 異常に悪い気が出てる

(陽子) あんなシール貼られたら 確実に…

終わりよ

(大樹(だいき)) “ぼくのいえには”

“おとうさんと おかあさんと”

“たまに じいじがきます”

“それから おちょなんさんがいます”

“おちょなんさんは”

“みんながいるときは かくれています”

“ぼくが ひとりのときだけ”

“うちのなかお ぐるぐるまわります”

“おちょなんさんは”

“こんな かおです”

(大樹の母) これ… 大樹が描いたんだけど

(大樹の父) ああ…

これだよな

(少年) へいへいへい

あ~ おしい!

(少女) はいっ

(少年) うしっ!

(誠二) あのシールは…

貼られていなかった

よしっ

(巧) この町は狂ってる…

この町はおかしい…

この町は狂ってる…

この町は狂ってる…

狂ってる…

絶対に狂ってる…

この町はおかしい…

この町はおかしい…

絶対に狂ってる…

この町はおかしい…

絶対に狂ってる

狂ってる 狂ってる…

この町は変だ…

この町は狂ってる…

絶対におかしい…

この町は狂ってる…

この町はおかしい

狂ってる 狂ってる 狂ってる…

(足音)

この町はおかしい…

この町はおかしい…

この町は狂ってる…

狂ってる 狂ってる 狂ってる…

この町はおかしい…

狂ってる おかしい…

狂ってる…

狂ってる この町はおかしい…

(足音)

(足音)

(足音)

(足音)

(足音)

はっ… ああ… あああ…!

(足音)

(足音)

巧さん! 早く逃げてください!

ああ… あああ…

今なら逃げられます!

早く!

(巧) えっ?

(巧) ハア… ハア…

いない…

(陽子) もうすぐ死ぬわ あなた

確実に

(誠二) 僕は“死ぬ”という運命から 逃れられないのだろうか

いや そんなことはない

僕は生きる

絶対に生きてやる

(誠二) わあっ!!

今よ 早く!

早く逃げて!

ああ…

(巧) 陽子さん

(陽子) 陽子でいいですよ

(誠二) 陽子は逃げないの?

(陽子) 私は…

逃げない

(誠二) どうして…

できないんです

この町から出ることが

陽子…

さよなら

(誠二) うわあー!!

(少年)何だ あれ (少女)え?

(少年) 変なシール

だっせえ

(誠二) あぁ… あぁ!

ああ! ああ… ああ…

ハァ… ハァ…

じゃあ

さよなら

(誠二) この町はおかしい…

この町は狂ってる…

狂ってる…

変だよ!

この町はおかしい!

早く この町から出なきゃ!

この町はおかしい 狂ってる!

狂ってる 狂ってる…

この町は狂ってる…

この町は狂ってる…

よしっ やった!

この町から脱出した!

ハァッ ハァッ!

僕は勝ったんだ!

この町に勝ったんだ!

ハァッ! ハァッ!

ハハハッ!

うわっ うわあ!

うわあ! うわあ!

うわあぁー!!

うっ… うう…

うぅ あぁ…

ううぅ…

(カメラのシャッター音と拍手)

(アナウンサー) 本日 富沼市と 隣町の安京(あんきょう)市が合併し

富安(ふあん)市が誕生しました

(誠二) 陽子は“僕が確実に死ぬ”と言った

でも 僕は生きている

それからの僕の人生は

これといって変わったこともない

何の変哲もない人生だった

大学卒業後―

普通に就職して

陽子と結婚

子宝にも恵まれた

でも…

再び 不安はやってきた

(祖父) そうかそうか 大樹も見たか

(陽子) えっ お義父(とう)さんも―

オチョナンさん 知ってるんですか?

(祖父) うん

子どものころは よく見たもんだ へへっ

懐かしいなあ

(誠二) へえ~

親父(おやじ)もオチョナンさん 見たことあるんだ

全然 知らなかった

(祖父) 誠二が小さい頃は もう見かけなくなったがな

(大樹)怖くないの? (祖父)おお

子は心配することはない

守り神みたいなもんだ

ただし…

こういう目をしたやつは

気を付けたほうがええ

これ…

良くないやつなの?

そうだな

こういうやつに 見込まれんようにしなきゃ

(祖父) 悪いオチョナンさんに とりつかれた家は

家族全員に恐ろしい―

不幸が起こるという 言い伝えがある

(子どもの笑い声)

(祖父) まっ 大樹が いい子でいれば大丈夫だ

(全員) あ…

(誠二) あれ? ブレーカー落ちたのかな?

(陽子) 困ったわね

(誠二) あっ 大樹

台所に懐中電灯あったよな

持ってきてくれる?

(大樹) うん 今 持ってくる

ちょっと待ってて

(祖父) 気を付けて行けよ

(大樹) あれ 暗くてよく見えないなあ

うーん…

あっ あった

今 つけるね

(大樹)はい (誠二)ありがとう

ブレーカーかな? ちょっと見てくる

(陽子) うん

(誠二)あ? (大樹)消えちゃったね

(陽子) 電池切れかしら

(懐中電灯をたたく音)

(大樹)あっ ついた (祖父)よかった

(誠二) よし

はあ?

(懐中電灯をたたく音)

何だよ この懐中電灯

(懐中電灯をたたく音)

あっ…

あれ…

父さん?

陽子?

大樹?

(大きな物音)

ハッ!?

(巧) ううぅ…

ああっ ああ…!

ああっ ああっ ああ…

(誠二) 父さん!?

ああっ ああ!!

やめろ!

ああっ!!

やめろ!

(巧) ううぅ…

(誠二) うわあ! やめろ!!

(巧) ううぅ…

ああぁ…

(誠二) やめろ! うわあ!!

(巧) うぅ…

(誠二) こっち来るなよ!

こっち来るな!

うわっ! 来るな!

(巧) うあぁ…

(誠二の叫び声)

うわあ!!

(大樹) ママ

(陽子) 大樹

(大樹) パパは?

(陽子) 大丈夫よ

きっと 大丈夫だから

(男の子) ♪ ぬかるんだ道を行こう

♪ どろどろの道を行こう

♪ 新しい靴が汚れた

♪ だから私は

♪ 歩くのが嫌い

♪ ぐにゃぐにゃ道を走る

♪ くねくね蛇行して走る

♪ 気持ちが悪くなってきた

♪ だから私は

♪ 走るのが嫌い

お… お兄ちゃん?

(子どもの笑い声)

ハァッ!! 大樹!

(巧) うあぁ!!

(陽子) いやー!!

♪ ひたすら道をはう

♪ なかなか―

♪ 進まない

♪ だから私は はうのが―

♪ 嫌い

♪ にごった水

♪ くすんだ空

♪ よどんだ風

♪ すすけた雲

♪ みんな大嫌い

♪ とても大嫌い

♪ 本当に大嫌い

♪ それでも

♪ みんな生きている

♪ 一生懸命生きている

♪ 生きていない人は

♪ みんな―

♪ 死んでいる

♪~

~♪

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