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「山へ行こう 次の日曜」
「昔みたいに 雨が降れば」
「川底に沈む橋越えて」
「胸まである 草分けて」
「ぐんぐん進む背中を」
「追いかけていた」
「見失わないように」
「抱えられて」
「渡った小川」
「今はひらり」
「飛び越えられる」
「一緒にね いろんな話ししよう」
「晴れたらいいね 晴れたらいいね」
「晴れたらいいね」
元から高血圧気味だった小三郎が 倒れたのは
ひらりが 秋田にいる最中のことでした。
とにかく しばらく安静にしてください。
脳卒中や心筋梗塞の心配は ないんでしょうか。
ないわけではありませんが 今は そこまで お考えにならなくていいと思います。
特に入院も必要ありません。
はあ… ありがとうございました。
ただし 高血圧の場合
肉体疲労より精神疲労が 影響することもありますので
くれぐれも ご注意いただきまして。 はい。
あの 店番などは…。
まあ やらないに越したことは ありませんね。はあ。
じゃ 僕は これで。
どうも ありがとうございました。 お茶も差し上げませんで
失礼いたしました。 すいません どうも。
昨日は みのりさんに ご迷惑をおかけいたしました。
とんでもありません。 面白いバイトだったって
本人も喜んでました。 そうですか。
先生 ご結婚 本気で考えてらっしゃらないの?
いや 考えてますよ。 お相手がいらっしゃる?
いや お相手 いません。
お母様 心配なさるでしょ。 ああ まあ。
私も みのりのこと 心配ですもの。 本人はケロっとしてますけどね。
何か そうみたいですね。 じゃ 失礼します。
どうも ありがとうございました。
エディ 準備OK? イエー OK。
ひらり。ん? これ お土産。
秋田のいぶりがっことか じゅんさいとか いろいろ入ってるから。 ね!
ありがとう 叔母ちゃん。 ホントに楽しかった。
エディ エディには 秋田娘のお人形ね。 部屋の方に送っておくから
ハワイのママにプレゼントね。 ありがとう。
エディ これからも ずっと 久男と仲よしでいてやってね。
ここを エディのおうちだと思って 久男が帰ってくる時は
必ず 一緒に帰っておいで。 ね!
⚟ただいま! お帰り!
あ お帰り!
どうだった? クラスメートの激励会は。
夏休みなのに たくさん来てくれた。 校長先生まで。
そう! よかったね。
さ じゃあ そろそろ行こうか。
おやじは? うん。
お父さん! お父さん!
ひらり エディ 玄関で待ってて。
あっ OK。 行こ!
お世話をかけました。 ありがとうございました。
そんな… 他人行儀な言い方しないでよ。
今度帰れるのは いつになるか分かりませんが
必ず 勝ち越して帰ってきます。
そんな言葉遣いしないでって! 勝ち越さんでもええから
けがするな。 な!
はい。 親方や兄弟子の言うこと聞いて
みんなに めんこがってもらえ。
はい。
そいから こいだけは言っておく。
嫌になったら いつでも ここさ戻ってこい。
おめえのことを邪魔するもんは 一人もいねえからな。 心配すんな。
はい。 ありがとうございます。
そんな言葉遣い しないでって 言ってるでしょ 久男…。
飛行場まで 店の車出すから。
ママ。
ママの作った じゅんさいの酢の物 うまかった。
元気でね。
久男! 久男!
あ そう… バイトって言ったの。
強がる気持ち 分かるんです 私。
私も分かる。
でもまあ あの竜太のやつ 全く 女心ズタズタにしてくれたわね。
みのりのこと 何とも思ってないんですもの
しょうがありません。
分かりました。 じゃ 私からも 竜太先生には何も触れないでおくわ。
だけど まあ 余計なことして つらい思いさせちゃったわね
みのりちゃんに。 とんでもありません。
これで あの子も 吹っ切れるでしょうし
そうすれば 次の出会いもあるでしょうから。
そうね。 そうかもしれないわ。
私 竜太先生って 誠実だと思って。
ちょっと 気の利いた男の人なら 冗談じゃないって すぐに気が付いて
適当に気を持たせるでしょ。
最初から 全然その気がないって 示してくれたんですから。
そうね。 フフッ。
でも どうしたの? 突然 ここに寄りたいなんて言って。
いや 別に…。
いい寺だろ。 うん。
天徳寺っていうんだ。 うん。
⚟加賀谷く~ん!
きっと ここにいると思ってた。
あの 同じクラスの…。
五十嵐千恵です。
いとこの 藪沢ひらりです。
エディ!
山門の方 歩いてこよっか。 ね!
どうぞ。
どうもありがとうございました。 ありがとうございました。
フフッ。
久男ね 言ってたことがあるの。
「好き」って やっと言ったのに
ひとつきも たたないうちに 東京に出てきちゃったって。
千恵さん?
きっと ここで言ったんだね。
よいしょ。 あれも撮っちゃおう。
えい。
行こう。 えっ 彼女は?
送らないって。
秋田の短い夏が終わろうとしていました。
そして それは 寒風山や力士たちにとって
九月場所が すぐ そこまで来ている ということでした。
おかみさん いろいろ 気を遣っていただいたのに
すみませんでした。 ううん。 こっちこそ ホントにごめんね。
私が ちゃんと 間を取り持てばよかったのに。
みのりちゃん ホントに ごめんなさいね。
いえ 私 会ってみて それほどタイプじゃないって
分かりましたから。
私 先生が ほかの人と お見合いしても 恋愛しても
全然 平気です。
だから おかみさん 気にしないでください。
私 好きじゃないって… 分かりましたから…。
やだ 私 泣いてる。
うれしい… 泣き方忘れたと思ってたのに。
でも 何これ 何で 好きでもない人のために…。
やだ もう。
ほら。
もう 肩の力抜きなさい。 ね?
お母さんにホントのこと言えなくても 私には 何言ったっていいのよ。
みのりちゃん 私が もう一回 うまく お見合いさせるから。 ね。
もう いいの。 私に任せて。
駄目。 どうして?
だって…。
だって ひらりが。 ひらりちゃん?
竜太先生のこと好きな若い子って ひらりちゃん?
おかみさん 絶対 誰にも言わないで。
お母さんも竜太先生も知らないの。
私 自分の足で歩くことを考えます。
絶対 誰にも言わないで。 ひらりのこと。
大したことはないんだからね 心配するな。
連絡くれれば 一番の飛行機で帰ってきたのに。
竜太先生が診てくれて 大丈夫と言ったんだから。
ちゃんと診てくれた?
もう 丁寧で優しくて
若いのに名医だよ うん。
よかった。 竜太先生に いっぱい お土産買ってきて。
お父さん 起きられるようになるまで 店を閉めた方がいいと思うんですが。
いや 明日から店に出る。
な~に 座っているだけの仕事だ。 こうしてるのと同じだよ。
そりゃ そうですけども 疲れ方が違いますよ。
客が来る以上 一日も看板は外せん。
看板より体でしょう。
体より看板だ。
頑固は やめていただきます。 お父さん!
病人に そういう言い方しないで。 そういう言い方しないと分かんないから。
洋一 つい せんだってまで どこの質屋でも
帳場に 格子がはめられていた。
その格子を何と呼んだか知ってるか?
地獄格子。
格子の向こうの浮き世が地獄なのか
格子から差し出される金が 地獄の入り口という意味なのか
俺は知らん。
ただ 俺は 生きている以上 いや 死ぬまで
みんなと一緒に 地獄で生きていたい。
こんな部屋に隔離しないでくれ。
いや ですから 何も永久に…。 私が帳場に座ります。
私 お店のこと よく分かりませんから いちいち お義父さんに伺いますけど
それでよろしかったら 私にやらせてください。
一日でも看板下ろすの 私も反対です。
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