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(エンジンを吹かす音)
(イリエ) あ… あ… あ〜 ちょちょちょ…
ちょっと待って待って 来ないで来ないで あ〜!
あ〜 お願いします… ああ…
おお〜… あ… 危ない危ない…
ああ… 許してください〜!
(安藤忠臣(あんどうただおみ)) イリエさん あんた うちからいくら借りてる?
(イリエ)100万円です〜!
利息は?
(イリエ)と… 10日で10万円!
約束が違うよね〜!
(エンジン音) (イリエ)あああ〜!
わあ〜 やめて〜!
(安藤) おい こいつ担保に貰(もら)ってくぞ
ええ!? いや… 車だけは勘弁してください
こいつは… こいつは俺の シンボルなんだよ〜!
うりゃああ〜!
おあああ〜!
ああ…
うう…
(安藤)おい あんじゃねえかよ (イリエ)ああ…
残り8万…
いや こんだけ元気なら—
強盗 ひったくり 恐喝 なんでもできるだろ
(イリエ)いや… できないっす
なら5分で 100万稼げる取引するか?
(イリエ)5分で100万?
(安藤)時給1200万
(イリエ) いや ど… どんな取引ですか?
(安藤) 元気な体は価値が高(たけ)えからな
(イリエ) く… 車持ってってください
♪〜
貰ってくぞ
(携帯の着信音)
(安藤)ラストファイナンス
(男) 安藤社長 いつもありがとうございます
(安藤)おお どうだった?
(男) いや〜 この前のアメ車 年式は古いんですけども—
内装の程度が かなりよかったんで 客も喜んでましたよ
(安藤)そりゃあよかったな
(男) また手頃な外車があるときは うちに流してくださいよ
では 失礼します
(安藤)おう
(早乙女(さおとめ)) ヘヘ〜 安藤社長 お忙しいところ どうもすいません
(安藤) 早乙女さん お久しぶりですね
(早乙女)おげんきそうで ヘヘ
(安藤)まあ そこ座ってて (早乙女)ああ はい
(早乙女)これ どうぞ
(安藤)糖尿 大丈夫っすか?
ハハ まあどうにかこうにか
安藤社長 ビジネスのほうは 順調ですか?
相変わらず締め付けは厳しくて…
ああ〜 弁護士先生は 闇金がお得意さんですからね
金に困ってる連中に 訴訟を起こさせては—
低金利 長期返済でボロ儲(もう)け
か〜 どっちがアコギやらねえ ハハ
あっ さてと またね 決算が終わりまして—
色々な… こうやって不良債権が 入ってきてるんですよ
あっ そうそう これこれ
前々から潰れるって ウワサが流れてた—
横浜中華街の桃源郷(とうげんきょう)飯店
これなら 1億円の借用書ですけど 7000万でどうですか?
1億は重いでしょ
ん〜 じゃあ…
うん これこれ 大塚(おおつか)駅前の 老舗スナック ミルキー
ここのママは… いやいや ババアは守銭奴でねえ
裏でずいぶん 金溜(た)め込んでるって話ですよ
さすが安藤社長!
これだったら1000万のところ 出血大サービスで500万でいいです
どんな物件ですか?
(早乙女) はい 債務者の伊良部慎太郎(いらぶしんたろう)は—
新進気鋭のデザイナーで—
3年前に ふんどしの新ブランド フンドシックスを起ち上げましてね
フンドシックス?
(早乙女) あれ? ご存じないですか? 結構評判だったんですよ
ちょっと待ってくださいね
え〜と… フンドシックスと ほら これです
(電子音)
(早乙女) 素材を厳選した ペルシャシルクのふんどしが—
ネット通販で話題を呼んで—
大手アパレルメーカーからも 発注を受けるようになって…
(伊良部慎太郎) ふんどしは ファッションだけじゃない
団塊世代から 悟りジェネレーションに
もう一度 大和(やまと)魂を呼び起こす
ガジェットになるんだよ
お前ら ふんどしして
日本代表の試合 応援行ってみ
マジ ジャポニズムたぎるぜ〜
たぎるでしょ〜 え? たぎった?
たぎってるよ
(電子音)
(早乙女) 1年前 吉祥寺にショップを オープンしてたんですが—
経営は すぐに悪化 資金繰りにも行き詰って—
借金が2000万に 膨れ上がったそうです
(安藤)たった1年で? (早乙女)はい
(安藤)同業ですか?
(早乙女) まあ そんなところですね
イージーカンパニーは 伊良部に実家の土地を売らせて—
1000万 回収してます
ただ この物件のうまみは—
女房の実家も 土地持ちでしてね
うま〜く引っ張れば残りの1000万も 回収できるってところです
フウ…
こんな出がらし物件で 500はないんじゃないすか?
450!
弁護士先生に相談されたら 紙っぺらですよ
もうひと声お願いできませんか?
ハア…
ごちそうさま
分かりましたよ! じゃあ400万
ええ〜 いや あの…
おいしいんだけどな〜
いただきます
はあ〜
(須藤(すどう) 司(つかさ)) もしも〜し トモコちゃん? いい加減 電話返してね〜
チッ ハア…
(早乙女) 確かに それじゃあ早速 先方に話を進めてまいります
(安藤)では これでお願いします (早乙女)はい
え〜 仲介料が40万円 そして先方に360万円と…
ありがとうございました
ああ そうそう
焦げ付いた債権があったら 教えてください
強いね 大口があるんで 買わせてもらいますよ
(安藤) うちは小口なんで そんなデカい商売は…
ハハ それじゃ またよろしくお願いします ヘヘ
(安藤) ああ それ 忘れ物なんですよ
(早乙女)ああ 忘れ物…
こんな? ハハ そうですか
どうもお邪魔しました ありがとうございま〜す
(安藤) 司 こいつブラックか調べてくれ
(須藤)はい
こいつ もう真っ黒っすね 大丈夫っすか?
こんな多重債務で 回収できるんすか?
人間の体の値段って知ってるか?
いや… え?
例えば骨髄なら グラム200万
皮膚は1平方センチ 1000円
眼球 臓器 血液—
何から何まで売りさばけば—
人間には31億円の価値があるんだよ
結局—
俺らには こういう債権しか 回ってこねえ
ただ どうせ死ぬなら—
死にかたひとつで金になる
回収できるかできねえかは—
腹のくくりかた次第だ
さっきの 回収やっといてくれ
(須藤)いや… すいません
ウィーメンダイヤルの 取り立てがあるんで…
(安藤) そういうや 最近 お前の回収少ねえのな
(須藤) どいつもこいつも… 生理前みたいで
(安藤)だからなんだよ
冗談 フフ
ハア…
(チャイム)
(チャイム)
(ドアノブを回す音) (ドアをたたく音)
(安藤)おい!
お前 伊良部か?
(男)あ… 違います
行こう 行こう…
(須藤) ねえ お金を返してくれる 約束の日だよね?
(女) ごめん 司 今日これしかない
(須藤)困るんだよな〜
だったら一緒に実家行く?
(女) え? 親に結婚の挨拶してくれるの?
(須藤)そういうことじゃなくて…
利息払ってジャンプするって 指切りしたじゃん
(女)怒っちゃ や〜 (須藤)チッ…
(女) ごめんなさい… ごめんなさい ごめんなさい
許してください そのお金ないと死んじゃうよ
ああ!
(須藤)知るかよ
人殺し
(沼岸(ぬまぎし)のうめき声)
う…
(女)うわあ…
(須藤)ゲホ…
冗談だよな
(須藤)マジです
ふぬけてんじゃねえぞ
忠臣さん 俺…
あ?
(荒木未奈美(あらきみなみ))あの…
(安藤)どなた?
(荒木)伊良部の妻です
行方不明って言われても 困るんだよね
そんなんで通用すると思ってんの?
おい 旦那どこだよ
おい てめえグラサン取れよ 礼儀だろうが
ここに借用書あんだよ
おい
何笑ってんだよ
(荒木)気が付かない? (安藤)ああ!?
(荒木)私…
お前…
(荒木)久しぶりだね 安藤
何やってんだよ 荒木
何って… 旦那の代理で…
は? 結婚してたのか?
うん
だったら先言えよ
フフ いつ気が付くかな〜と思って
チッ…
(荒木) 中学のころと 全然変わんないね
(安藤)ああ? (荒木)ぶっきらぼう
(安藤)うるせえよ
(荒木) でも よかった 死んだってウワサもあったから
ふ〜
昔の話より金の話
(安藤)荒木の奥さんさ… (荒木)伊良部の奥さんね
ハア…
借金は1000万 債務者は旦那 債権者は俺
それが どういうことか 分かってますか?
ごめんなさい 迷惑をかけているのは…
(安藤) 行方不明で済む話じゃないですよね
分かってます
失踪届けも出しました
思い当たるところには みんな連絡しました
だけど なんの連絡もなくて…
本当に何も知らねえのか?
チッ ハア…
携帯です
(安藤)なんか分かったら連絡しろ
うん
(安藤)おい どうした
(須藤)いや—
なんでもないっす
(早乙女) 伊良部が失踪!?
(安藤) そのことでイージーカンパニー 行ってきたんすけど…
借用書の住所デタラメで
あ〜 そうでしたか〜
まあ そうでしょうねえ
(安藤) これ イージーカンパニー代表 荻野(おぎの)の連絡先を知りたいんですよ
ビジネスは信用が第一なんでね
いや…
伊良部の嫁さんとは 接触できないんですか?
(安藤)いや…
だったら いくらでも 回収できるんじゃないですかね〜
あの手この手で—
しゃぶり尽くせるんじゃ ないんですか?
(安藤) 借金は1000万 債務者は旦那 債権者は俺
それが どういうことか 分かってますか?
(携帯の着信音)
はい
(安藤) ラストファイナンスの安藤ですが
安藤?
おい イージーカンパニーって 知らねえか?
イージーカンパニー? なんだっけ…
旦那が借金してた金融屋
借用書に書いてあったろ
そうなんだ
(安藤) 連絡先を知りたい
ごめん 私よく分かってなくて…
家中 片っ端から探してみろよ
(携帯:音声ガイダンス) ただいま 電話に出ることができません
ピーっという発信音のあとに メッセージをお話しください
(電子音) チッ ハア…
ハア…
旦那から連絡は?
(荒木)ごめんなさい
(安藤)フウ…
(荒木)どうしたらいいんだろう
(安藤) なんでそんなヤツと結婚したんだよ
(荒木)なんでって…
(安藤) フッ どうだっていいんだけどな
どうだっていいんだ?
ああ
ごちそうさまでした お金はちゃんと返済するから…
そうじゃないと 安藤困るんでしょ?
(安藤)1000万だぞ
(荒木)どうにかします (安藤)どうやって?
(荒木)色々どうにかやってみる (安藤)色々って?
色々は色々だって…
(安藤)甘い考えしてんじゃねえぞ
てめえ いい加減にしねえと 追い込みかけんぞ
なんでそういう言いかたするかな…
結局 安藤はお金なんだね
割り勘の計算もできない バカヤンだったくせに
おい 自分の立場分かってんのか?
約束も… 一方的に破ってさ
あの場所で どんだけ待ったと思ってんのよ
なんで勝手にいなくなったの? 約束したのに…
(安藤)あ?
だよね
覚えてないよね
結局 思い出なんて 一方的なんだよね
そりゃそうだよね
私たち10年以上も まったく 別の世界で生きてきたんだもんね
分かりました
私がバカでした
あのバカ…
大事な話ってなんだよ
(女)私は弄ばれた
月5万 利息返しても 司は会ってくれない
だから死ぬ
(須藤)バカ言うなって… (女)本気だよ
(女) ねえ なんで取り立てないの?
(須藤) 別にいいだろ 金返さなくていいんだから
闇金なんて卒業しな
(女)卒業?
借金帳消しになれば 普通に生きれんだろ?
簡単に言わないでよ
私の手取りは 1日4800円
ねずみのように走り回って ひたすら仕分け…
毎晩 足つって頑張ってんのに…
生き地獄だよ!
(沼岸) だったら あの この2万円…
うっ うっ うう〜!
地獄…
(女) 1か月フル稼働で働いた バイト代は返済で消えるしさ
家賃と光熱費は滞納しっぱなし
自分にご褒美のご馳(ち)走は—
3割引きのコロッケ弁当
だから私 利息高くても—
私には優しく笑ってくれる 司に会いたくて—
お金借りてたのにさ
もう 全部嫌んなった 私 自殺する
(沼岸) 母ちゃん ごめん…
おいバカ… やめろ!
さよなら
ハア…
ウソぽよ〜ん
心配した? フフフ 今スンゴく愛された〜
ブハッ…
(せき込み)
(流水音) (須藤)ゲホ… ガハ…
プッ ゲッホ… ガハ…
プッ ハア ハア…
お前が追い込んだんだよ
ハア… ゲホ…
ゲホ… ハア ハア…
ハア ハア…
ハア ハア…
(ママ)ご挨拶
(荒木)はじまして 未奈美です
(客)メチャクチャかわいいじゃん
え… ああ あの これおこづかい
ちょ… え… え… そんな… 貰えませんよ
(ママ)いいから貰っときなさい (荒木)でも…
もう辛気臭い スマイルスマイル
ありがとうございます
(客) じゃあ 今日 これから歓迎会やっちゃう? ね?
(ママ)どうぞどうぞ (客)歓迎会やろう ね?
(客) 歓迎会やろう 行こう行こう…
(客)いくつ? (荒木)26歳です
(客)へえ〜 彼氏いるの? (荒木)アハハ…
(ドアベルの音)
あ〜…
じゃあ 俺らも そろそろ行こうか
どこにですか?
ハハ 分かってんでしょ〜? もうお金払ってんだから〜
ここ 連れ出しスナックだよ?
え?
う… ちょ… ちょっと やめてくださいよ
(客)は? おい…
(荒木)え… ママ? (客)ちょ… おい
(客) どこ行くんだよ おい ほら 行くぞほら
(客)未奈美ちゃん ほら… (荒木)やめて!
(客)おい!
おい 未奈美 どこ行くんだ おい
おい ここか おい…
開けろ おい
(荒木)来ないで!
開けろよ おい
開けろって なあ…
(携帯の着信音)
(安藤)荒木? (荒木)安藤! 安藤!
(客) おい… おい…
(安藤)おい どうした? (荒木)だから—
(荒木)スナックなんだけど… (安藤)落ち着けって
(安藤) おい 訳分かんねえぞ
連れてくスナックで… ハア…
本町(ほんまち)… 本町のスナック! セビアってスナック!
(客) こういうプレイ好きなんだよな〜
開けろって おい!
開けろって… 開けろっての!
(荒木) うう… ううう…
(荒い息)
おい 焦らすんじゃねえよ おい
開けろって ほら
なあ おい!
ハハ… ハア
おい 行くぞほら 行くよほら 来いって ほら!
(荒い息)
来いよ ほら おい 来いって ほら
おい!
大丈夫だよ すぐ慣れるからさ
そうだ ここでヤる? ママ いいでしょ?
2万円追加になりま〜す
いいってさ
(荒木)う…
(客)よし ヘヘヘ
すぐ済むからさ ね… ジっとしてればいいから
なあ おい いいだろ? フフ おい
(ドアベルの音) (安藤)荒木!
(ママ)閉店ですけど
(安藤)おい! (客)ああ…
(安藤)うう!
ううっ ううっ ううっ…
ううっ ううっ ううっ…
うう!
おい
(血が吹き出す音)
何やってんだよ
だって… 借金返そうと思って
(安藤) お前 あの店がどんな店か 知ってんのか?
ホント 世間知らねえな
(荒木) さっきの人… 死んじゃったらどうすんの?
知るかよ!
(荒木)どうして そうなのかな…
あ?
あんな暴力振るわなくたって よかったのに
助けかただって… 色々あったでしょ?
あれじゃ…
あれじゃヤクザと同じじゃない
ヤクザだったんだよね?
あの日… そっち側を選んだんだよね?
安藤は…
こっち側じゃなくて…
本当は—
借金だけの話なら行かなかった
うちに名刺置いて帰ったでしょ?
名前見て すぐに安藤だって 分かったんだよね
だって—
安藤忠臣なんて ほかにいないでしょ?
待たせすぎ…
これ 少しでも返済
(安藤)いらねえよ… (荒木)返すってば…
いらねえって
(荒木)助けに来てくれて—
ありがとう
(ライターを点ける音)
(安藤)ふ〜
(せき込み)
(安藤)やめとけって
ウフ
ねえ
これ覚えてる?
なんか捨てらんなくてさ
あの場所に まだ残ってるのかな
聞いてる? 安藤
(安藤)さあな もうねえだろ
そうだよね
10年以上も前の思い出なんて 残ってるわけないよね きっと
もし…
もしまだ残ってたら—
(荒木)安藤… (安藤)爺(じい)さん元気か?
え?
ああ うん
よくアイスくれたよな
ああ そうだったね
まあ元気は元気なんだけど 最近もの忘れが酷くてさ
生活に支障は ないみたいなんだけど—
お母さん 1人だと大変そうだから—
たまに 実家帰るようにはしてんだよね
フフ また1人で喋(しゃべ)らせる
(安藤)ふ〜
旦那の借金—
別れれば苦労することねえじゃん
(荒木) 別れたら… 一緒になれる?
おい 今日の回収分は?
忠臣さん
闇金やってて 幸せっすか?
たかだか1万も返済 できないようなヤツ追い込んで…
むしり取るだけむしり取って…
ぶっちゃけ悲しくないすか?
(安藤)酔っぱらってんのか?
世の中の仕事には 大抵 守るもんがあって—
ヤクザだって—
組とか子分とか 守るものあるじゃないすか…
闇金って何守るんすか?
結局 金じゃないすか
金追って 金に追われて…
これじゃ 野良犬どころか—
どぶねずみっすよ!
てめえ 誰に向かって吠(ほ)えてんだ?
(須藤) 女幸せにしたいとか ないんすか?
惚(ほ)れた女 泣かせねえように コツコツ働いて—
発泡酒の泡で1日が終わる
例えば—
そんなようなことっすよ
フフ… ねえか
ああ〜
(安藤)ほかから借金してねえか?
イージーカンパニーから スゲえ振り込まれてんな
金融屋から500万借りるなんて—
お前の旦那 どんだけ切羽詰まってたんだよ
(荒木)なんか… なんかな〜
(安藤)ん? どうした (荒木)いや…
ね… そういえば—
このイージーカンパニーからの お金って—
最初は借金じゃ なかったんじゃないかな
(安藤)どういうことだよ
荻野って人に才能を 見込まれたとかで—
定期的に投資してくれてた みたいなんだけど—
なぜか借金になってて…
私もよく分かんないんだけど…
(安藤) それってもしかして 押し貸しじゃねえよな?
押し貸し?
なんでそれ早く言わねえんだよ バカかお前は…
私?
押し貸しっていうのは 一方的に口座に金振り込んで—
あとから法外な利息請求する 金融犯罪の手口なんだよ
じゃあ主人は騙(だま)されたってこと?
その可能性は高いな
警察に連絡…
いや 居所も掴(つか)めねえで動くかよ
ハア…
(荒木)安藤?
まだ生きてんな
(携帯:音声ガイダンス) …メッセージをお話しください
(電子音)
先日から何度もお電話すみません 木下(きのした)と申します
実は お金に困ってて—
知り合いから番号を 教えてもらいまして…
また あらためてお電話します
(電子音)
(安藤) 何度もすみません 木下です
どうしても お金が必要で…
(携帯:音声ガイダンス) ただいま 電話に出ることができません
ピーっという発信音のあとに メッセージをお話しください
(電子音) 木下です〜
また あらためます
(呼び出し音)
(荻野) ああ もしもし
イージーカンパニーさんですか?
(荻野)木下さん? (安藤)木下です
(荻野) 何度か お電話いただいてましたよね
(ドアが開く音)
ああ 何度もご連絡いただいて 失礼しました
木下さんは どなたのご紹介ですか?
(安藤)伊良部慎太郎
(荻野)ああ そうでしたか
フンドシックスの社長さんの お知り合いですか
ふんどしだけに お知り合い ナハハハハハ
(安藤)伊良部はどこだ? (荻野)え? なんですか?
(安藤) お前 ふんどしに押し貸ししただろ
(荻野)誰だ お前
(安藤)ラストファイナンス
ラストファイナンス… はて…
早乙女さんの紹介で—
あんたんとこの 債権買ったんだけどな
伊良部に姿消されて困ってんだよ
あ〜 その節は お買い上げありがとうございます
で あいつにうまく取り入って—
500万押し貸しして1000万 むしり取った荻野さんなら—
居場所知ってんじゃねえかと 思ってよ
さあ 知らねえな
いいから 教えろ
返品不可ですよ〜
焦って 回収してえのは分かるけどな—
あいにく俺は あいつの居場所知らねえし…
まあ たとえ知ってたとしても お前に教える気にはならねえな
ただ 1つだけ教えてやるよ
お前も あのふんどしバカも—
マヌケっていうんだよ 勉強になったな〜 ええ?
ハッハッハッハッハ…
アッハッハッハッハ…
アッハッハ これはおかしい
おかしくて死にそうだ ハッハッハッハ
(笑い声)
ああ おなか痛い… おなか痛い…
(笑い声)
ありがとう
なんもしてねえだろ
ごめん
(須藤)お客さん
(伊良部)未奈美 ここだったか…
え?
(伊良部)俺だよ 俺
慎太郎…
未奈美 こっち来い
来いよ!
このクソ汚え闇金が…
俺の借金地獄につけ込んで 架空の債権者になりすましか?
嫁を騙して ソープに沈めようって魂胆だろ
架空? あんた何言ってんだ?
これだよ
こんな物 偽造しやがって…
この借金はな ご覧のとおり バンコクで身銭を切って—
400万でチャラにしてきたんだよ
ウソでしょ?
これがサプライズに見えるか?
(安藤)金はどこに返した?
イージーカンパニーに 決まってんだろ
未奈美 いきなり 消えてごめんな
荻野のヤツ納得させんの これしか方法なくってな…
バカンスがてら 左目と こっちの腎臓と—
左の睾(こう)丸 売ってきたんだわ
(荒木)慎太郎…
(伊良部)未奈美 一緒に帰ろう
(荒木)慎太郎 あのね…
(伊良部) かわいそうに 怖い思いしたんだろうな
おい てめえ闇金! 警察に通報すっからな
(荒木)ハア 違うの…
(伊良部)未奈美…
(安藤)俺が話してやろうか?
(伊良部)え? (泣き声)
(伊良部) 未奈美 どういうことだよ!
(安藤) あんたイージーカンパニーの 荻野に騙されて—
尻の穴の毛どころか 睾丸まで 引っこ抜かれちまったんだな
(伊良部) は? てめえ何言ってんだよ
(安藤) あんたの債権は俺が持ってる 残りは1000万
ウソだろ! こんなん偽物だろ!
本物だって!
(伊良部)え…
え?
じゃ… じゃあ なんだ?
荻野は 俺に体を売らせときながら—
その間に ほかの奴に 債権利売ったってことか?
俺は返さなくていい400万を… 渡したってことか?
あの野郎…
よくも騙しやがって…
ぶっ殺してやる!
(伊良部)おいやめろ おい! (安藤)戦う相手間違ってんぞ
放せ! 放せよ!
残ってんのは 俺の債権だけだよ
1000万払え
あああ… あああ…
うわあ〜!
(荒木)慎太郎
(伊良部)見えねえよ…
お前 そっちいたら見えねえよ
(安藤) いつまで夫婦愛情物語やってんだよ
安藤…
俺は あんたの債権者だ
(泣き声)
きっちり回収してやるからな
うつむいてる場合じゃ ねえだろうが!
今日は勘弁してやる
あした必ず返済に来い
(須藤)400万か…
忠臣さん 本当に 臓器売るヤツっているんすね
どうやって回収すんの?
(イリエ)安藤さん すいませ〜ん
またバカラでやっちゃって いくらか用立ててもらえませんか?
すいません
ヘヘ 今度は嫁さん担保にするんで 10万ばかし…
え? な… お願いしますよ〜
今日は負ける気がしなくて 絶対勝てるからさ〜
いや なんだったら うちの嫁さん乗ってもいいし
いや 中古車だけど オイル スゴいんだから
もうビショビショ… ああ!
え? え? なあ…
ああ! う…
(せき込み)
司 荒木の実家行ってくれ
(須藤)今月の給料 まだっすよね
てめえ 状況分かってんだろうが!
(須藤)分かってますよ
旦那は キンタマまで しゃぶられてるし—
だったらあの奥さまから 取り立てればいいじゃねえか
ソープでもデリヘルでもAVでも 働き口いくらでもあんだろ
ブレすぎだよね
元カノか? 反吐が出るぜ
(椅子を蹴る音)
(伊良部)未奈美
(荒木)ん?
(伊良部) 俺 バンコク行ってよかったわ
(荒木)え?
(伊良部) ふんどし… 日本よりタイのほうが—
ムーブメント起こせる文化 根付いてる気がしてさ
未奈美 聞いてる?
フフ そうなんだ
あっちは ゲイも多いし… ん〜
年中暑いから 裸になる機会も多いだろう
ふんどし流行(はや)ると思うんだよね〜
左半分はこんなんなっちまって 力入んないけど—
右はこの通りだし…
神は乗り越えられない試練は 与えないっていうし…
こういうときこそ行動すんのが—
大和魂なわけで… よし…
あれ… う… あれ? ちょ…
く… クソ…
あれ… く…
(荒木)これ
(安藤)どうしたんだよ
(荒木)指輪を売って…
(安藤)こんなんじゃ もたねえぞ
(荒木)もう無理なのかな…
なんとかなんないのかな…
(泣き声)
(荒木)助けて…
分かった
じゃあ あいつと離婚しろ
(荒木)え?
それから爺さん呼んで来い
どうするつもり?
黙って言うこと聞け
(安藤)荒木弘彦(ひろひこ)
これで あんたの借金は3000万だ
サイン
(安藤)早乙女さん
いい物件あるんですよ
(早乙女)え?
3000万円じゃないですか
土地も担保に入ってるし—
身内が連帯保証人なんて 好条件じゃないですか
これイージーさんに 1500で斡旋(あっせん)してもらえません?
安藤社長
なんか 裏があるんじゃないんですか?
フ…
金箔(ぱく)をあしらった 饅頭(まんじゅう)ですよ
(早乙女) いや… ビジネスは信用第一ですからね
うう… く…
手数料20パーセント 300万円
いや あの最近 血糖値下がってきましてね
まあ これが最後の 甘みっていうことで—
もう1つオマケに金のおまんじゅう 食べさせてもらえるんでしたら…
分かりました
(早乙女) いや〜 分かりました! 分かりました もういただきますよ
いただきます はい いただきま〜す! ハハ
うんうんうんうん うんうんうん ウフフ
甘〜い ヌハハ うんうんうん
(荻野) なるほど おいしい物件だな
この値(ね)で現金取引できるのは—
荻野社長しか 思い当たりませんでして…
1500万円でいかがでしょうか?
(荻野)1000 (早乙女)1500万
(荻野)1100 (早乙女)1500万でお願いします
1150
すいません 先方から変動なしでと 頼まれておりますので…
待った
いいよ あんたの紹介なら 間違いないだろう
ありがとうございます
それでは債権譲渡の ご契約をお願いいたします
(チャックを開ける音)
仲介 ありがとうございました
毒饅頭は どんな味ですかね
家庭裁判所?
“甲 株式会社イージーカンパニー”
“乙 荒木弘彦”
“金銭消費貸借契約書”?
“青年後見人制度に基づき—”
“本契約を無効とする”!?
おう こらてめえ どういうことだ 説明しろ!
ま… 大変でしたね
野郎 金返せ こら!
債権が紙切れになったんだ 契約無効にしろ!
荻野社長 私はあくまで 仲介業者ですからね
クレームがあるなら ウィーメンズダイヤルに—
直接 申し立ててくださいよ
おい! 誰もいねえのか!?
(安藤)いらっしゃい
(荻野) お前… ラストファイナンスの…
(安藤)どうした? 血相変えて
(荻野) ウィーメンダイヤルの 安藤ってのは?
(安藤)何言ってんだ?
俺らの業界じゃ いくつも 屋号持ってんのは常識だろ
安藤! この債権が 無効ってのはどういうことだ!
(安藤)裁判所から通達来ただろ
この荒木って爺さんには 任意後見契約が発効されてる
青年後見人制度に基づき—
補佐人の同意を得なければ 金の貸し借りは契約失効
つまり 法に守られた痴呆(ほう)老人や 障害者からは—
むしり取ることが できないってわけだ
(安藤) 爺さん あんたに3000万貸してやるよ
(安藤) 同じ金融屋なら当然知ってるよな
(荻野) 最初っから そのつもりだったのかよ
てめえ ハメやがったな!
(安藤) ハメた!? あんた人聞き悪いな
俺の金 返せ! 詐欺で訴えんぞ!
(安藤)出るとこ出たっていいぜ
あ…
(安藤) お前が訴えれば こいつらが訴えるだけだ
お前の争える法廷なんて ねえ
持ちつ持たれつ 仲良くグレーでやってかねえと
ううう…
うううう〜 ああああ〜!
(安藤)フッ…
お疲れさん
(荒木)このお金は?
押し貸しじゃねえから貰っとけよ
(荒木)ありがとうございます
ふ〜
これ 担保に 10万貸してもらえませんか?
ピカソ 100万は下らないんですよ?
ええ!?
え?
(安藤)んん! (イリエ)ああ!
(殴りつける音)
(安藤)ハア…
(携帯の着信音)
ラストファイナンス
(荒木) 安藤
なんの用だよ
あの場所に まだ残ってたよ
少しだけ 待っててもいいかな
安藤に言われた通り 荒木未奈美になったよ
(ライターを点ける音)
フ…
フ…
おい 司!
♪〜
〜♪
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