All language subtitles for 충신구라전편

af Afrikaans
ak Akan
sq Albanian
am Amharic
ar Arabic
hy Armenian
az Azerbaijani
eu Basque
be Belarusian
bem Bemba
bn Bengali
bh Bihari
bs Bosnian
br Breton
bg Bulgarian
km Cambodian
ca Catalan
ceb Cebuano
chr Cherokee
ny Chichewa
zh-CN Chinese (Simplified)
zh-TW Chinese (Traditional)
co Corsican
hr Croatian
cs Czech
da Danish
nl Dutch
en English
eo Esperanto
et Estonian
ee Ewe
fo Faroese
tl Filipino
fi Finnish
fr French
fy Frisian
gaa Ga
gl Galician
ka Georgian
de German
el Greek
gn Guarani
gu Gujarati
ht Haitian Creole
ha Hausa
haw Hawaiian
iw Hebrew
hi Hindi
hmn Hmong
hu Hungarian
is Icelandic
ig Igbo
id Indonesian
ia Interlingua
ga Irish
it Italian
ja Japanese
jw Javanese
kn Kannada
kk Kazakh
rw Kinyarwanda
rn Kirundi
kg Kongo
ko Korean Download
kri Krio (Sierra Leone)
ku Kurdish
ckb Kurdish (Soranî)
ky Kyrgyz
lo Laothian
la Latin
lv Latvian
ln Lingala
lt Lithuanian
loz Lozi
lg Luganda
ach Luo
lb Luxembourgish
mk Macedonian
mg Malagasy
ms Malay
ml Malayalam
mt Maltese
mi Maori
mr Marathi
mfe Mauritian Creole
mo Moldavian
mn Mongolian
my Myanmar (Burmese)
sr-ME Montenegrin
ne Nepali
pcm Nigerian Pidgin
nso Northern Sotho
no Norwegian
nn Norwegian (Nynorsk)
oc Occitan
or Oriya
om Oromo
ps Pashto
fa Persian
pl Polish
pt-BR Portuguese (Brazil)
pt Portuguese (Portugal)
pa Punjabi
qu Quechua
ro Romanian
rm Romansh
nyn Runyakitara
ru Russian
sm Samoan
gd Scots Gaelic
sr Serbian
sh Serbo-Croatian
st Sesotho
tn Setswana
crs Seychellois Creole
sn Shona
sd Sindhi
si Sinhalese
sk Slovak
sl Slovenian
so Somali
es Spanish
es-419 Spanish (Latin American)
su Sundanese
sw Swahili
sv Swedish
tg Tajik
ta Tamil
tt Tatar
te Telugu
th Thai
ti Tigrinya
to Tonga
lua Tshiluba
tum Tumbuka
tr Turkish
tk Turkmen
tw Twi
ug Uighur
uk Ukrainian
ur Urdu
uz Uzbek
vi Vietnamese
cy Welsh
wo Wolof
xh Xhosa
yi Yiddish
yo Yoruba
zu Zulu
Would you like to inspect the original subtitles? These are the user uploaded subtitles that are being translated: 1 00:00:31,652 --> 00:00:41,395 ♬~ 2 00:00:41,395 --> 00:00:46,167 (鵜蔵) 時は元禄15年12月14日の夜も更けた頃…。 3 00:00:46,167 --> 00:00:49,537 高家筆頭 吉良上野介の屋敷を➡ 4 00:00:49,537 --> 00:00:54,208 四十七名の赤穂浅野家 旧臣たちが襲撃。 5 00:00:54,208 --> 00:00:59,380 主君 内匠頭の敵と称して 上野介を殺害するという➡ 6 00:00:59,380 --> 00:01:03,718 いわゆる 赤穂事件が起こります。 7 00:01:03,718 --> 00:01:10,218 首謀者は 元赤穂藩 城代家老 大石内蔵助。 8 00:01:12,393 --> 00:01:16,564 実際は 大石が山鹿流の陣太鼓も打たなければ➡ 9 00:01:16,564 --> 00:01:20,868 どっかん バリバリと 門を叩き壊すこともなかった。 10 00:01:20,868 --> 00:01:26,168 ああいう派手な脚色は 全て後世の作り事。 11 00:01:27,742 --> 00:01:31,178 じゃあ 一体 誰が作ったの? って話だが➡ 12 00:01:31,178 --> 00:01:37,351 二代目 竹田出雲らが作り上げた 人形浄瑠璃が その大本。 13 00:01:37,351 --> 00:01:43,024 この大事件をもとに 四十七士を いろは四十七文字になぞらえ➡ 14 00:01:43,024 --> 00:01:51,198 「仮名手本忠臣蔵」という 全十一段の 通し狂言に仕立てて世に出した。 15 00:01:51,198 --> 00:01:55,369 これが 上方で ばか当たり。 16 00:01:55,369 --> 00:01:59,206 (大星)「御免!」。 すぐさま 歌舞伎でも上演されます。 17 00:01:59,206 --> 00:02:01,709 (師直)「おのれ 大星…!」。 18 00:02:01,709 --> 00:02:07,214 江戸での初演は くしくも 討ち入りから47年後の寛延2年。 19 00:02:07,214 --> 00:02:10,914 (浪士)「え~い!」。 (どよめき) 20 00:02:12,553 --> 00:02:17,425 以後 歌舞伎始まって以来の 当たり演目になっていきます。 21 00:02:17,425 --> 00:02:22,263 「我が君様に申し上げまする。➡ 22 00:02:22,263 --> 00:02:27,868 この御形見の九寸五分にて➡ 23 00:02:27,868 --> 00:02:38,546 怨敵 師直公のお命を 頂戴つかまつってござりまする。➡ 24 00:02:38,546 --> 00:02:45,019 何とぞ これにて ご無念を➡ 25 00:02:45,019 --> 00:02:54,362 お晴らしなされてくださりませ」。 26 00:02:54,362 --> 00:02:57,198 高麗屋! 高麗屋! 27 00:02:57,198 --> 00:03:00,034 (すすり泣き) 28 00:03:00,034 --> 00:03:04,538 「仮名手本忠臣蔵」が 江戸にやって来て間もない頃➡ 29 00:03:04,538 --> 00:03:11,212 この物語の主人公も まだ半人前の駆け出し役者。 30 00:03:11,212 --> 00:03:17,385 (傳蔵)兄さん 高麗屋は貫目があるねえ。 31 00:03:17,385 --> 00:03:20,855 いずれ 四代目の團十郎を継ぐって話だよ。 32 00:03:20,855 --> 00:03:25,559 ああ 江戸一番の役者だ。 33 00:03:25,559 --> 00:03:27,495 俺も いつか➡ 34 00:03:27,495 --> 00:03:31,365 「忠臣蔵」に出るような役者になりてえ。 35 00:03:31,365 --> 00:03:35,670 なあ 兄さんなら どの役をやってみたい? 36 00:03:35,670 --> 00:03:40,541 ん? そうさなあ…。 37 00:03:40,541 --> 00:03:42,543 「方々」。 (柝の音) 38 00:03:42,543 --> 00:03:44,679 高麗屋! 高麗屋! 39 00:03:44,679 --> 00:03:48,182 「勝ち鬨ぃ」。 (浪士たち)「おう」。 40 00:03:48,182 --> 00:03:56,691 「えい えい おう!」。 (浪士たち)「えい えい おう!」。 41 00:03:56,691 --> 00:04:04,891 (一同)「えい えい おう! えい えい おう!」。 42 00:04:09,704 --> 00:04:11,639 当中村座のご演目~! 43 00:04:11,639 --> 00:04:15,576 やんや やんや やんや! やんや やんや! 44 00:04:15,576 --> 00:04:18,412 大評判「仮名手本忠臣蔵」! 45 00:04:18,412 --> 00:04:23,718 このお江戸に 歌舞伎が根づいて かれこれ 150年。 46 00:04:23,718 --> 00:04:30,791 綺羅 星のごとき役者が あまた出て 今や群雄割拠の戦国時代。 47 00:04:30,791 --> 00:04:36,330 しかし 歌舞伎の世界も 最後は出自が物を言う。 48 00:04:36,330 --> 00:04:40,201 名門に生まれるか 親類縁者でもねえ限り➡ 49 00:04:40,201 --> 00:04:42,803 いっぱしの役者にはなれねえ。 50 00:04:42,803 --> 00:04:47,641 下手すりゃ 死ぬまで馬の足。 51 00:04:47,641 --> 00:04:51,345 ああ その他大勢の捕り方役が関の山だ。 52 00:04:51,345 --> 00:04:55,015 ところが この馬の足から➡ 53 00:04:55,015 --> 00:05:01,522 名題看板を上げる役者にまで出世した男が 一人いる。 54 00:05:01,522 --> 00:05:06,026 中村中蔵だ! そのとおり! 知ってるね! 通だね! 55 00:05:06,026 --> 00:05:14,702 どん底の下っ端役者から 名題にまで成り上がった男の~➡ 56 00:05:14,702 --> 00:05:22,843 あ 立身出世の下克上~! 57 00:05:22,843 --> 00:05:27,214 栄屋! 日本一! 58 00:05:27,214 --> 00:05:29,550 持ってけ 持ってけ! はい 入れて 入れて! 59 00:05:29,550 --> 00:05:32,453 はいはいはい… はい ありがとよ! 60 00:05:32,453 --> 00:05:35,156 ありがとよ! 61 00:05:35,156 --> 00:05:39,994 (音吉)鵜蔵のやつ 早速 中蔵をネタにしてやがる。 62 00:05:39,994 --> 00:05:43,030 (お駒)しっかりしてるよ 全く。 63 00:05:43,030 --> 00:05:47,868 (成兵衛)しかし 昨日の初日 中蔵の芝居には ぶったまげたねえ。 64 00:05:47,868 --> 00:05:50,004 (お松)お前さんたち ちゃんと見れたのかい? 65 00:05:50,004 --> 00:05:53,040 いやいや 私なんぞ すっかり油断して弁当 食ってたら➡ 66 00:05:53,040 --> 00:05:57,344 花道の出を見逃しちまったよ。 ヘヘッ 実を言うと 俺も その口で。 67 00:05:57,344 --> 00:06:00,681 あたしも ご不浄に並んでる間に 中蔵が死んじまっててさ➡ 68 00:06:00,681 --> 00:06:02,616 もう 悔しいったらありゃしない。 69 00:06:02,616 --> 00:06:06,554 「忠臣蔵」は 全部で 十一段もある 長~い通し狂言だ。 70 00:06:06,554 --> 00:06:10,825 ま 見せ場の少ない五段目辺りで 腹ごしらえするのは普通だよ。 71 00:06:10,825 --> 00:06:15,529 ところが その弁当幕の五段目で 中蔵がやらかした~。 72 00:06:15,529 --> 00:06:18,032 みんな 今日 もういっぺん 見なさるんだろう? 73 00:06:18,032 --> 00:06:22,203 もちろんでさ。 五段目だけ。 あたしも ここで腹ごしらえして➡ 74 00:06:22,203 --> 00:06:24,238 五段目から。 じゃ せいろ三枚だな? 75 00:06:24,238 --> 00:06:28,075 セリフは たった ひと言。 おまけに すぐに死んじまう。 76 00:06:28,075 --> 00:06:33,647 そんな ちょい役の男のために 「忠臣蔵」を見に行くたぁ~➡ 77 00:06:33,647 --> 00:06:36,150 あ オツだねえ。 78 00:06:36,150 --> 00:06:38,085 よっ! よよっ! 79 00:06:38,085 --> 00:06:40,654 せいろ 三枚~! 80 00:06:40,654 --> 00:06:43,490 ≪(店員)は~い! (騒ぐ声) 81 00:06:43,490 --> 00:06:46,990 始まったみてえだな。 82 00:06:52,499 --> 00:06:55,169 鵜蔵さん 一体 何の騒ぎです? 83 00:06:55,169 --> 00:06:59,006 中村座に 中蔵の名題看板が上がるそうだ。 84 00:06:59,006 --> 00:07:01,909 ええっ 斧 定九郎 たった一役だっていうのに? ああ。 85 00:07:01,909 --> 00:07:05,346 全く 大した男だねえ。 86 00:07:05,346 --> 00:07:08,015 上がれ~! 上がれ 上がれ~! 87 00:07:08,015 --> 00:07:11,819 今や 名題の看板 中村仲蔵➡ 88 00:07:11,819 --> 00:07:15,689 前代未聞の大出世。 大出世。 89 00:07:15,689 --> 00:07:21,195 ≪かねてより 所作ごと優美に秀でたる。 ≪実悪にても 日の出の勢い。 90 00:07:21,195 --> 00:07:24,832 ≪その仲蔵 こたびは 斧 定九郎を演ずれば…。 91 00:07:24,832 --> 00:07:28,369 演ずれば…。 もはや 山賊ではない。 92 00:07:28,369 --> 00:07:32,669 (傳九郎)えれえ騒ぎだな。 93 00:07:34,775 --> 00:07:41,548 ありゃ ほとんど おめえ見に来た客だぜ。 よしてくだせえ…。 94 00:07:41,548 --> 00:07:46,548 若太夫 そろそろ四段目が始まります。 おう。 95 00:07:50,991 --> 00:07:54,662 中さんも 支度を始めてくれ。 はいよ。 96 00:07:54,662 --> 00:08:21,462 ♬~ 97 00:08:23,357 --> 00:08:26,026 まずは この物語の主人公➡ 98 00:08:26,026 --> 00:08:29,830 中村仲蔵という男の出生の秘密から➡ 99 00:08:29,830 --> 00:08:33,133 お話しすることにいたしましょう。 100 00:08:33,133 --> 00:08:40,474 中村仲蔵 幼名を万蔵と申す 男の子が生まれたのは 元文元年。 101 00:08:40,474 --> 00:08:44,645 父親は 斎藤なにがしという 浪人だという話ですが➡ 102 00:08:44,645 --> 00:08:47,648 定かではございません。 103 00:08:47,648 --> 00:08:50,517 ところが 暮らしに窮した この浪人➡ 104 00:08:50,517 --> 00:08:55,656 万蔵を 町名主に託して 姿を消してしまいます。 105 00:08:55,656 --> 00:09:00,527 町名主は 八方手を尽くして 子供のおらぬ夫婦を探し出し➡ 106 00:09:00,527 --> 00:09:06,000 めでたく 養子縁組する運びに 相なりました。 107 00:09:06,000 --> 00:09:11,805 この夫婦というのが どちらも 芝居町で暮らしを立てる芸人同士。 108 00:09:11,805 --> 00:09:16,643 養父は その美声で 唄は中山と もてはやされた➡ 109 00:09:16,643 --> 00:09:21,015 長唄の唄方 中山小十郎。 110 00:09:21,015 --> 00:09:24,518 養母も これまた希代の踊り手といわれた➡ 111 00:09:24,518 --> 00:09:29,018 志賀山流の師範 志賀山お俊。 112 00:09:31,759 --> 00:09:35,629 歌舞伎と縁の深い この2人の 養子となったことが➡ 113 00:09:35,629 --> 00:09:40,768 万蔵少年の運命を 大きく変えることになります。 114 00:09:40,768 --> 00:09:44,638 〽 いやーはっはっ いやーはっはっ 115 00:09:44,638 --> 00:09:48,308 〽 いよー よっ よっ よっ 116 00:09:48,308 --> 00:09:52,646 〽 いよー いよー いやー 117 00:09:52,646 --> 00:09:57,317 〽 おおさえ おさえ 118 00:09:57,317 --> 00:10:00,654 万蔵に 舞の才があると見たお俊は➡ 119 00:10:00,654 --> 00:10:05,159 志賀山流の踊りを 徹底的に叩き込んだ。 120 00:10:05,159 --> 00:10:09,329 このお俊さん 日頃は優しいおっかさんだが➡ 121 00:10:09,329 --> 00:10:15,202 殊 踊りとなると 鬼に変わるという 怖~い女。 122 00:10:15,202 --> 00:10:22,042 〽 思ふ 123 00:10:22,042 --> 00:10:28,182 〽 いよー いよー いよー 124 00:10:28,182 --> 00:10:37,691 〽 にせ紫も なかなかに 125 00:10:37,691 --> 00:10:45,432 志賀山流というのは 当時の歌舞伎界で 最も名の知られた踊りの流派。 126 00:10:45,432 --> 00:10:49,703 中でも お俊は その才能をうたわれた踊り手ですから➡ 127 00:10:49,703 --> 00:10:55,843 跡継ぎになる万蔵には とりわけ厳しく指南した。 128 00:10:55,843 --> 00:10:59,213 さす手 引く足が僅かでも違うと➡ 129 00:10:59,213 --> 00:11:04,852 ビシビシ 愛の鞭が容赦なく飛んでくる。 130 00:11:04,852 --> 00:11:06,920 ちょいと お待ち! 131 00:11:06,920 --> 00:11:10,557 指先まで 気持ち込めるの。 もういっぺん。 はい! 132 00:11:10,557 --> 00:11:12,860 「いけぬ汀」。 よ~い…。 133 00:11:12,860 --> 00:11:21,401 〽 いけぬ汀の石亀や 134 00:11:21,401 --> 00:11:24,304 〽 ほんに鵜の 135 00:11:24,304 --> 00:11:29,143 かたい! もっと丸く踊れって 言ってんだろう。 もういっぺん! 136 00:11:29,143 --> 00:11:31,678 何度…。 137 00:11:31,678 --> 00:11:36,183 あまりの稽古の厳しさに 逃げ出すことも しばしばだった万蔵。 138 00:11:36,183 --> 00:11:39,520 駆け込む先は 孫のように かわいがってくれる➡ 139 00:11:39,520 --> 00:11:42,022 中村座の座元夫婦のところ。 140 00:11:42,022 --> 00:11:45,692 江戸三座の筆頭に挙げられる 中村座の座元は➡ 141 00:11:45,692 --> 00:11:50,030 代々 中村勘三郎を名乗って この時は 六代目。 142 00:11:50,030 --> 00:11:54,368 このじい様に 万蔵が甘えて直訴した。 143 00:11:54,368 --> 00:11:56,403 おいら 歌舞伎役者になりてえ。 144 00:11:56,403 --> 00:11:59,840 おっかさんの厳しい稽古から 逃れたい一心で➡ 145 00:11:59,840 --> 00:12:01,909 そう口走っちまった万蔵。 146 00:12:01,909 --> 00:12:08,709 六代目 勘三郎じい様 それじゃあってんで 手っとり早く 自分の息子の弟子にした。 147 00:12:10,484 --> 00:12:13,420 師匠になったのは 座元の次男坊で➡ 148 00:12:13,420 --> 00:12:19,059 間もなく 二代目 中村傳九郎を 継ぐことになる筋目の役者。 149 00:12:19,059 --> 00:12:22,863 これじゃあ お俊さんも 諦めるしかありません。 150 00:12:22,863 --> 00:12:29,069 坊よ 本当に役者になりてえか? 151 00:12:29,069 --> 00:12:33,340 役者の道は厳しいぜ? なまはんかなことじゃ続かねえ。 152 00:12:33,340 --> 00:12:36,176 その覚悟はあるんだな? 153 00:12:36,176 --> 00:12:38,512 はい! 確かに聞いたぜ? 154 00:12:38,512 --> 00:12:41,014 子供といえど 男に 二言はなしだ。 155 00:12:41,014 --> 00:12:46,887 約を たがえた時は 師匠として 厳しい罰を与えるぜ。 156 00:12:46,887 --> 00:12:49,189 はい! フッ。 157 00:12:49,189 --> 00:12:56,530 おめえは 芝居小屋を遊び場として育った 芝居の申し子だ。 158 00:12:56,530 --> 00:13:01,401 中村座の「中」を取って…➡ 159 00:13:01,401 --> 00:13:03,704 中蔵と名乗れ。 160 00:13:03,704 --> 00:13:10,504 今日から おめえは 中村中蔵だ。 161 00:13:12,212 --> 00:13:14,548 入門から およそ10年。 162 00:13:14,548 --> 00:13:17,248 おう 中坊! あっ おはようございます。 163 00:13:19,720 --> 00:13:23,590 中蔵は 人気役者 中村傳九郎の弟子として➡ 164 00:13:23,590 --> 00:13:30,390 江戸一番の芝居小屋 中村座で 役者修業に いそしんでおりました。 165 00:13:32,165 --> 00:13:34,668 おはようございます。 おはようございます。 166 00:13:34,668 --> 00:13:36,603 おはようございます。 167 00:13:36,603 --> 00:13:40,807 大物役者の弟子というのは 大名のお小姓みたいなもの。 168 00:13:40,807 --> 00:13:43,510 師匠に養われる内弟子だから➡ 169 00:13:43,510 --> 00:13:49,310 座元から給金をもらう一人前の役者よりは 身分が下になります。 170 00:13:51,818 --> 00:13:55,689 要するに 役者見習いの半人前ですが➡ 171 00:13:55,689 --> 00:13:59,693 一本立ちの時に 師匠の引き立てで いい役をもらったり➡ 172 00:13:59,693 --> 00:14:05,193 そこそこの名跡を継がせてもらったり という利点はある。 173 00:14:08,402 --> 00:14:10,537 この中村座には➡ 174 00:14:10,537 --> 00:14:16,337 70人を ちょいと超える役者と 300人近い裏方がおります。 175 00:14:18,045 --> 00:14:21,848 ここいらで 歌舞伎役者の厳しい身分制度を➡ 176 00:14:21,848 --> 00:14:24,751 ご紹介しておきましょう。 177 00:14:24,751 --> 00:14:32,159 一番身分が低いのが 1階の大部屋にいる 通称 稲荷町と呼ばれる役者たち。 178 00:14:32,159 --> 00:14:36,997 名前の由来は 楽屋口に祭ってある お稲荷さんの神棚。 179 00:14:36,997 --> 00:14:40,867 大概 その向かい側に大部屋があった。 180 00:14:40,867 --> 00:14:43,770 で そこにいる下っ端役者のことも➡ 181 00:14:43,770 --> 00:14:48,175 十把一からげで 稲荷町と呼ばれるようになったとか。 182 00:14:48,175 --> 00:14:53,513 上の階にいる役者連中からは お下なんて見下されております。 183 00:14:53,513 --> 00:15:00,287 あてがわれる役は セリフのねえ通行人や 捕り方みてえな その他大勢。 184 00:15:00,287 --> 00:15:05,125 駕籠かき 中間 馬の足。 185 00:15:05,125 --> 00:15:11,832 その上 掃除に洗濯 裏方の手伝いまで させられるってんだから 容赦がねえ。 186 00:15:11,832 --> 00:15:15,702 給金は 年7両。 安い! 187 00:15:15,702 --> 00:15:23,210 大工が普通に働いて年25両ってとこだから 所帯も持てません。 188 00:15:23,210 --> 00:15:26,113 階段を トント~ンと上りますと➡ 189 00:15:26,113 --> 00:15:34,788 1つ上は 女形のお姐さん方専用の 中二階と申します楽屋。 190 00:15:34,788 --> 00:15:39,626 更に上がって3階にあたる部分が 本二階と呼ばれる場所。 191 00:15:39,626 --> 00:15:45,999 男役 つまり 立役の楽屋や 稽古場がございます。 192 00:15:45,999 --> 00:15:49,503 壁際に 鏡を並べている連中は➡ 193 00:15:49,503 --> 00:15:52,406 中通りと呼ばれる ちょい役の役者たち。 194 00:15:52,406 --> 00:15:56,676 稲荷町との違いは 少ないが セリフがあるってこと。 195 00:15:56,676 --> 00:15:59,179 給金は 年30両ほどで➡ 196 00:15:59,179 --> 00:16:04,985 稲荷町から はい上がってきた 苦労人も多い。 197 00:16:04,985 --> 00:16:07,888 こちらは その1つ上の位➡ 198 00:16:07,888 --> 00:16:11,358 相中と呼ばれる中堅の役者たち。 199 00:16:11,358 --> 00:16:13,693 筋目の役者の親類縁者や➡ 200 00:16:13,693 --> 00:16:17,197 一門の中から 芝居巧者の弟子が選ばれる。 201 00:16:17,197 --> 00:16:23,703 相中ともなれば 給金も 年百両は堅い。 202 00:16:23,703 --> 00:16:25,639 おはようございます。 おはようございます。 203 00:16:25,639 --> 00:16:27,707 (一同)おはようございます。 (助五郎)おはよう。 204 00:16:27,707 --> 00:16:33,313 のれんをくぐった この広めの場所を ついたてで仕切って楽屋にしているのは➡ 205 00:16:33,313 --> 00:16:35,348 名題と呼ばれる役者たち。 206 00:16:35,348 --> 00:16:41,054 演目にもよりますが 一つの芝居に 3~4人の名題役者が名を連ね➡ 207 00:16:41,054 --> 00:16:45,325 それを目当てに見物客が集まる。 208 00:16:45,325 --> 00:16:50,497 つまり 人気と実力を兼ね備えた 役者じゃなきゃいけません。 209 00:16:50,497 --> 00:16:55,802 給金も 年に3百~4百両は持っていきます。 210 00:16:55,802 --> 00:17:01,341 芝居小屋の表には 演目が変わるごとに 人気役者の絵姿や➡ 211 00:17:01,341 --> 00:17:03,376 名題看板が上がりますが➡ 212 00:17:03,376 --> 00:17:05,512 そういう看板役者自体も➡ 213 00:17:05,512 --> 00:17:08,815 名題と呼ぶようになりました。 214 00:17:08,815 --> 00:17:11,518 おい 中坊。 へい。 215 00:17:11,518 --> 00:17:16,356 俺の楽屋は こんなに広くなくていい。 仕切りを もそっと こっちに寄せな。 216 00:17:16,356 --> 00:17:20,026 あ~ ありがとうございます。 ですが うちも これで十分で。 217 00:17:20,026 --> 00:17:23,363 いや~ 中村座の若太夫が それじゃいけねえ。 218 00:17:23,363 --> 00:17:27,234 しかも 今度は 大星由良之助をやりなさるんだ。 219 00:17:27,234 --> 00:17:29,703 ほれ ずずいと。 220 00:17:29,703 --> 00:17:33,306 では お言葉に甘えまして。 うん。 221 00:17:33,306 --> 00:17:36,142 すみません。 よっ! おう。 222 00:17:36,142 --> 00:17:40,013 名題役者の中にも 格というものがあります。 223 00:17:40,013 --> 00:17:49,689 主役や準主役 一門の本家筋にあたる 役者には気を遣うのが この世界の礼儀。 224 00:17:49,689 --> 00:17:51,689 ≪(階段を駆け上がる音) 225 00:17:54,494 --> 00:17:57,797 あっ すまねえ 兄さん! 傳蔵 ここんとこ緩んでるぜ。 226 00:17:57,797 --> 00:17:59,733 ああ 面目ねえ。 227 00:17:59,733 --> 00:18:03,336 若太夫が 江戸橋 渡るのを 追い抜いてきた。 そうかい。 228 00:18:03,336 --> 00:18:07,173 ばか野郎… すぐそこじゃねえか! 229 00:18:07,173 --> 00:18:12,012 中蔵の師匠 傳九郎は 中村座の次の座元になる予定の若太夫。 230 00:18:12,012 --> 00:18:15,815 血筋に加え 芸歴も人気も申し分ない。 231 00:18:15,815 --> 00:18:20,186 こういう役者を 立者と呼んで 別格扱いしました。 232 00:18:20,186 --> 00:18:22,222 (一同)おはようございます。 おう。 233 00:18:22,222 --> 00:18:25,825 給金も別格の年5百両! 234 00:18:25,825 --> 00:18:27,761 てっ! 235 00:18:27,761 --> 00:18:30,664 よく寝たようだな? 236 00:18:30,664 --> 00:18:35,502 歌舞伎の名門に生まれ かつ才に恵まれ➡ 237 00:18:35,502 --> 00:18:40,640 厳しい稽古に耐え抜いて人気を勝ち取った 一握りの歌舞伎役者。 238 00:18:40,640 --> 00:18:44,144 それが 名題の立者。 239 00:18:44,144 --> 00:18:46,079 おはようございます。 おう。 240 00:18:46,079 --> 00:18:48,879 おはようございます。 おはようございます。 241 00:18:50,917 --> 00:18:54,487 「妻を捨て子に別れ…」。 242 00:18:54,487 --> 00:18:59,659 おう お俊さんの具合 どうだ? 243 00:18:59,659 --> 00:19:06,533 へい。 寝たり起きたりで もう随分 稽古場にも立っておりません。 244 00:19:06,533 --> 00:19:12,005 美声で鳴らした親父殿も 喉潰して隠居しちまったし➡ 245 00:19:12,005 --> 00:19:16,205 稼ぎ手のおめえに実入りがねえと 食ってけねえか。 246 00:19:17,811 --> 00:19:23,350 そろそろ 前髪落として 一本立ちしてみるか? 247 00:19:23,350 --> 00:19:25,285 お許しいただけるので? 248 00:19:25,285 --> 00:19:27,220 喜ぶのは まだ早え。 249 00:19:27,220 --> 00:19:31,458 筋目じゃねえ おめえは 年7両の稲荷町から始めなきゃなんねえ。 250 00:19:31,458 --> 00:19:34,127 それが しきたりだ。 そりゃもう…。 251 00:19:34,127 --> 00:19:38,999 おめえは 踊りはもちろん 諸芸も手堅く身につけてる。 252 00:19:38,999 --> 00:19:44,838 精進すりゃあ… 3年ほどで 中通りに引き上げてやるぜ。 253 00:19:44,838 --> 00:19:47,474 3年…。 254 00:19:47,474 --> 00:19:51,311 そりゃそうと…➡ 255 00:19:51,311 --> 00:19:55,482 初日がはねたあと 俺と一緒に和泉屋に来な。 256 00:19:55,482 --> 00:19:59,786 ひいき筋の桝屋さんが おめえを呼べと言ってなさる。 257 00:19:59,786 --> 00:20:02,489 へい…。 258 00:20:02,489 --> 00:20:07,994 若太夫 座頭が入られました。 おっ そうかい。 259 00:20:07,994 --> 00:20:10,030 御三家よりは将軍家➡ 260 00:20:10,030 --> 00:20:13,500 将軍家よりは京の帝ってな具合に➡ 261 00:20:13,500 --> 00:20:16,536 世の中 上には上がおります。 おはようございます。 262 00:20:16,536 --> 00:20:20,006 名題の立者を超える役者のてっぺん➡ 263 00:20:20,006 --> 00:20:23,810 それが 大立者。 264 00:20:23,810 --> 00:20:26,713 何しろ 大立者ですから➡ 265 00:20:26,713 --> 00:20:30,517 全ての役者を束ねる 座頭を務めることが多い。 266 00:20:30,517 --> 00:20:36,322 座頭が誰かで 見物の入りも大きく違ってきます。 267 00:20:36,322 --> 00:20:38,825 この幸四郎さんくらいになると➡ 268 00:20:38,825 --> 00:20:43,530 給金も破格の年千両。 いよっ 千両役者! 269 00:20:43,530 --> 00:20:48,201 親方 この度は初めての大星役を 仰せつかりまして➡ 270 00:20:48,201 --> 00:20:50,236 身の引き締まる思いでございます。 271 00:20:50,236 --> 00:20:54,541 柏屋さんの由良之助が どうしても見たくてねえ。 272 00:20:54,541 --> 00:20:58,044 あんた 分別のある役が似合う。 273 00:20:58,044 --> 00:21:02,849 実事なら 私なんかより上だ。 め… めっそうもない! 274 00:21:02,849 --> 00:21:09,222 (小声で)私は 根が腹黒いせいか 実悪の方が性に合ってんだよ。 275 00:21:09,222 --> 00:21:11,558 ご冗談を。 276 00:21:11,558 --> 00:21:14,594 よろしく… 頼みますよ。 277 00:21:14,594 --> 00:21:19,432 お心にかないますよう 務めさせていただきます。 278 00:21:19,432 --> 00:21:24,571 千両役者を 仕切り壁の楽屋に 入れるわけにはいかねえってんで➡ 279 00:21:24,571 --> 00:21:29,242 一番奥の1人部屋に お入りいただきます。 280 00:21:29,242 --> 00:21:37,517 ♬~ 281 00:21:37,517 --> 00:21:42,217 ≪おっかさん。 ああ…。 282 00:21:44,190 --> 00:21:46,226 具合は どうだい? 283 00:21:46,226 --> 00:21:49,696 ああ 今日は随分と気分もいい。 284 00:21:49,696 --> 00:21:53,396 起こしとくれ。 ちょっと待っとくれ。 285 00:21:57,036 --> 00:22:00,073 はあ~。 286 00:22:00,073 --> 00:22:06,713 この分なら… 月が変われば また稽古場に立てる。 287 00:22:06,713 --> 00:22:10,049 お弟子さんの稽古は 俺が見るから。 288 00:22:10,049 --> 00:22:13,853 お前は 傳九郎様の お身回りの務めがあるだろう? 289 00:22:13,853 --> 00:22:17,724 近頃は 弟弟子も増えて 少し楽になった。 290 00:22:17,724 --> 00:22:21,724 心配いらないよ。 そうかい。 291 00:22:29,435 --> 00:22:32,235 おとっつぁん。 292 00:22:34,808 --> 00:22:38,608 行ってまいります。 うん。 293 00:22:41,347 --> 00:22:47,821 酒は… ほどほどにね。 ああ。 294 00:22:47,821 --> 00:23:09,542 ♬~ 295 00:23:09,542 --> 00:23:11,477 いーよっ。 296 00:23:11,477 --> 00:23:23,556 (仲居たち) 〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ 297 00:23:23,556 --> 00:23:29,229 「とらまえて 酒呑ましょ」。 298 00:23:29,229 --> 00:23:34,000 (仲居たち)「こちらでございます」。 299 00:23:34,000 --> 00:23:36,336 〽 300 00:23:36,336 --> 00:23:48,514 (仲居たち) 〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ 301 00:23:48,514 --> 00:23:55,021 「とらまえて 酒呑ましょ」。 302 00:23:55,021 --> 00:24:01,321 〽 303 00:24:06,532 --> 00:24:08,468 (喜三郎)中坊。 304 00:24:08,468 --> 00:24:13,039 ああ。 杵屋のおじさん。 305 00:24:13,039 --> 00:24:17,377 小十郎のあんばいは どうだい? 306 00:24:17,377 --> 00:24:21,214 それが…。 307 00:24:21,214 --> 00:24:26,085 隠居してからこっち もう抜け殻みてえな様子で➡ 308 00:24:26,085 --> 00:24:28,388 医者に止められてる酒の量も➡ 309 00:24:28,388 --> 00:24:32,158 減らねえありさまで。 そうかい…。 310 00:24:32,158 --> 00:24:35,061 あいつは 30年来の相方だ。 311 00:24:35,061 --> 00:24:39,666 近えうち 一度 見舞いに行くよ。 312 00:24:39,666 --> 00:24:42,335 これ お岸 こっち来な。 313 00:24:42,335 --> 00:24:44,804 (お岸)はい。 314 00:24:44,804 --> 00:24:47,674 あ… あのお岸ちゃんかい? 315 00:24:47,674 --> 00:24:52,345 はい。 小さい時分 よく遊んでいただきました。 316 00:24:52,345 --> 00:24:54,814 見違えたろう? へい。 317 00:24:54,814 --> 00:24:57,717 三味線の腕も 随分と上がってな。 318 00:24:57,717 --> 00:25:03,022 男なら 喜三郎の名を継がせてえところだが…。 319 00:25:03,022 --> 00:25:08,361 (錦次)もし 柏屋さんの…。 320 00:25:08,361 --> 00:25:14,233 詳しい話は 近えうち。 小十郎に よろしく言ってくんな。 321 00:25:14,233 --> 00:25:16,433 へい。 322 00:25:20,073 --> 00:25:25,545 随分と昔に 親同士で決めた話だが➡ 323 00:25:25,545 --> 00:25:30,984 おめえさえよけりゃ 中蔵の嫁にならねえか? 324 00:25:30,984 --> 00:25:35,321 どうだ? 嫌かい? 325 00:25:35,321 --> 00:25:39,158 私の方は 何も…。 326 00:25:39,158 --> 00:25:44,664 瀬川菊之丞の門人で 瀬川錦次と申します。 327 00:25:44,664 --> 00:25:47,667 中蔵でございます。 何でございましょう? 328 00:25:47,667 --> 00:25:51,337 フフッ そんな かたい物言いは よしてくださいな。 329 00:25:51,337 --> 00:25:54,173 年は そんなに違わないはずですよ。 330 00:25:54,173 --> 00:25:58,011 でも お前様は確か 中通りでいらっしゃる。 331 00:25:58,011 --> 00:26:06,811 女形は数も少ないから 立役の皆様より ちょいとばかり 出世が早いだけですよ。 332 00:26:10,023 --> 00:26:15,528 菊之丞の色子だから 引き立てられただけさ。 333 00:26:15,528 --> 00:26:17,528 あ…。 334 00:26:21,834 --> 00:26:27,034 まさか あいつら できてんじゃねえだろうな…。 335 00:26:29,575 --> 00:26:33,780 中蔵さんは 志賀山流の跡取りって聞いてます。 336 00:26:33,780 --> 00:26:36,149 あっ いや~ うちは分家みたいなもんで➡ 337 00:26:36,149 --> 00:26:39,786 志賀山流二代目は ここの振り付け師の万作です。 338 00:26:39,786 --> 00:26:42,155 分家でも本家でも 構いやしない。 339 00:26:42,155 --> 00:26:48,795 あんたが ひとかどの踊り手なのは 物腰を見てりゃ分かる。 340 00:26:48,795 --> 00:26:54,600 さっきの振りに もう一工夫したいんで 知恵を貸しておくんなさいな。 341 00:26:54,600 --> 00:26:59,539 知恵も何も 見事でした。 あれは 錦次さんの工夫で? 342 00:26:59,539 --> 00:27:06,813 ええ。 でも お茶屋のざれ言だから もう少し 華やかな振りにしたいんです。 343 00:27:06,813 --> 00:27:11,684 是非にも 座頭の目に留まるような…。 344 00:27:11,684 --> 00:27:16,022 幸四郎親方の…。 345 00:27:16,022 --> 00:27:18,524 私は女形の弟子ですが➡ 346 00:27:18,524 --> 00:27:23,696 ゆくゆくは 立役になりたいと思っている。 347 00:27:23,696 --> 00:27:30,203 そのためなら 破門されたって構いやしない。 348 00:27:30,203 --> 00:27:38,778 私は 松本幸四郎って役者に 心酔していますのさ。 349 00:27:38,778 --> 00:27:43,778 この機会を逃したくねえ。 350 00:27:45,551 --> 00:27:47,551 お師さん。 351 00:27:49,322 --> 00:27:51,991 お呼びですかな? あいすみませんが➡ 352 00:27:51,991 --> 00:27:56,329 もう一度 女形だけで 頭から さらっておきたいんです。 353 00:27:56,329 --> 00:27:58,664 ようござんす。 354 00:27:58,664 --> 00:28:03,169 由良之助は…➡ 355 00:28:03,169 --> 00:28:06,005 中蔵さんがやってくださる。 356 00:28:06,005 --> 00:28:07,940 えっ? 357 00:28:07,940 --> 00:28:09,876 いーよっ。 358 00:28:09,876 --> 00:28:15,681 (仲居たち)〽 由良鬼ゃ まだァえ 359 00:28:15,681 --> 00:28:22,188 (仲居たち)〽 手の鳴る方へ 360 00:28:22,188 --> 00:28:28,528 「とらまえて 酒呑ましょ」。 361 00:28:28,528 --> 00:28:35,334 (仲居たち)「こちらでございます」。 362 00:28:35,334 --> 00:28:41,107 (仲居たち)〽 由良鬼ゃ まだァえ 363 00:28:41,107 --> 00:28:46,913 (仲居たち)〽 手の鳴る方へ 364 00:28:46,913 --> 00:28:53,986 「とらまえて 酒呑ましょ」。 365 00:28:53,986 --> 00:29:04,330 (仲居たち) 〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ 366 00:29:04,330 --> 00:29:06,265 (仲居たち)「ひゃあ~」。 367 00:29:06,265 --> 00:29:13,005 「とらまえて 酒呑ましょ」。 368 00:29:13,005 --> 00:29:18,705 〽 369 00:29:21,714 --> 00:29:25,351 「師直 この年になって➡ 370 00:29:25,351 --> 00:29:31,157 鮒が裃をつけて登城するを➡ 371 00:29:31,157 --> 00:29:34,060 初めて見た。➡ 372 00:29:34,060 --> 00:29:39,865 ハッハ これは おかしい。➡ 373 00:29:39,865 --> 00:29:46,305 判官は 鮒に似てまいられた。➡ 374 00:29:46,305 --> 00:29:55,314 鮒ェー 鮒ェー➡ 375 00:29:55,314 --> 00:29:58,351 鮒だ 鮒だ➡ 376 00:29:58,351 --> 00:30:05,024 鮒侍だ。 ハッハッハッハ…」。 377 00:30:05,024 --> 00:30:07,793 [ 回想 ] (錦次)私は女形の弟子ですが➡ 378 00:30:07,793 --> 00:30:12,498 ゆくゆくは 立役になりたいと思っている。➡ 379 00:30:12,498 --> 00:30:16,669 そのためなら 破門されたって構いやしない。 380 00:30:16,669 --> 00:30:23,009 (判官)「本性なれば」。 381 00:30:23,009 --> 00:30:29,782 [ 心の声 ] 俺には そこまでの覚悟があるか? 382 00:30:29,782 --> 00:30:31,717 (師直)「殿中だ」。 383 00:30:31,717 --> 00:30:35,021 〽 いよー 384 00:30:35,021 --> 00:30:40,359 「殿中だ。 殿中だぞ。➡ 385 00:30:40,359 --> 00:30:42,828 殿中で 鯉口三寸くつろげば➡ 386 00:30:42,828 --> 00:30:47,700 お家は断絶 その身は切腹だぞ。➡ 387 00:30:47,700 --> 00:30:52,204 お手前 それを… ご承知か?」。 388 00:30:52,204 --> 00:30:54,707 高麗屋! 高麗屋! 389 00:30:54,707 --> 00:31:00,379 ♬~(三味線) 390 00:31:00,379 --> 00:31:04,050 (吉川)初めての大星とは思えぬ さすがの出来栄え。 391 00:31:04,050 --> 00:31:10,389 (傳九郎)いや お恥ずかしい限りで。 これも 幸四郎親方のおかげで。 392 00:31:10,389 --> 00:31:14,060 (吉川)初日から上々の滑り出し。 また寄らせてもらいますよ。 393 00:31:14,060 --> 00:31:17,760 (傳九郎)ええ 精進させていただきます。 394 00:31:23,069 --> 00:31:27,239 中蔵… 中蔵! 395 00:31:27,239 --> 00:31:32,078 おい 中蔵! アハハハッ…。 へい。 396 00:31:32,078 --> 00:31:38,517 吉川様が 御酒を下さるってんだ。 ボ~ッとしてねえで 早くお受けしろよ。 397 00:31:38,517 --> 00:31:40,517 はっ。 398 00:31:55,935 --> 00:31:58,635 頂戴いたします。 399 00:32:09,482 --> 00:32:14,720 中蔵 何か ひとさし踊ってくれまいか? 400 00:32:14,720 --> 00:32:50,823 〽 千歳を結ぶ松山に 401 00:32:50,823 --> 00:33:08,207 〽 逢いたや見たや 402 00:33:08,207 --> 00:33:12,378 (吉川)中蔵の踊りは 品があっていい。 403 00:33:12,378 --> 00:33:15,414 あれは ただの町育ちじゃないんだろう? 404 00:33:15,414 --> 00:33:19,251 唄方と踊りの師匠夫婦にもらわれた みなしごで➡ 405 00:33:19,251 --> 00:33:24,857 実の父親は… 斎藤様とかいう➡ 406 00:33:24,857 --> 00:33:26,926 お武家様だと聞いております。 407 00:33:26,926 --> 00:33:31,997 そうだろう。 是非もなく 役者風情に身を落としているのが➡ 408 00:33:31,997 --> 00:33:35,334 ふびんになってくる。 409 00:33:35,334 --> 00:33:40,673 おや… あっ 気を悪くしたなら謝るよ。 許しておくれ。 410 00:33:40,673 --> 00:33:46,011 ああ いえいえ。 手前どもは 所詮 人外の身。 411 00:33:46,011 --> 00:33:50,182 派手な振る舞いは 人気商売ゆえとおぼし召し➡ 412 00:33:50,182 --> 00:33:53,085 どうか ご容赦を。 413 00:33:53,085 --> 00:33:58,785 ざれ言 ざれ言。 ハハハハ ハハハハ…。 414 00:34:01,527 --> 00:34:05,030 ひいき筋とはいえ 虫ずが走るぜ。 415 00:34:05,030 --> 00:34:08,067 お上に金貸して 名字帯刀を許されてるらしいが➡ 416 00:34:08,067 --> 00:34:11,804 商人のくせに お大身の旗本気取りだ。 417 00:34:11,804 --> 00:34:17,042 おめえは残って やつの酌でもしろ。 私一人で? 418 00:34:17,042 --> 00:34:23,042 芸で食えねえうちは ひいき筋の世話になるのも方便だ。 419 00:34:24,917 --> 00:34:30,217 多少のことは… 我慢しろ。 ん? 420 00:34:32,491 --> 00:34:34,426 あっ…。 421 00:34:34,426 --> 00:34:44,003 ♬~ 422 00:34:44,003 --> 00:34:47,303 吉川様? 423 00:34:49,341 --> 00:34:52,641 厠にでも行かれたか…。 424 00:34:58,017 --> 00:35:00,517 (障子の閉まる音) 425 00:35:06,525 --> 00:35:09,028 帯を解いて くつろいだらどうだい? 426 00:35:09,028 --> 00:35:11,697 あっ… わ… 私は これにて。 427 00:35:11,697 --> 00:35:17,369 私も 日本橋桝屋の主だ。 一晩限りなんて ケチなことは言わない。 428 00:35:17,369 --> 00:35:21,707 お前さえよければ 後ろ盾にもなってやろう。 429 00:35:21,707 --> 00:35:24,376 あっ な… 何のことやら 私には…。 430 00:35:24,376 --> 00:35:28,247 傳九郎も承知のことさ。 若太夫が!? 431 00:35:28,247 --> 00:35:36,322 聞くところによれば 両親とも病がちで 手元不如意だそうじゃないか。 432 00:35:36,322 --> 00:35:39,658 それじゃあ 芸にも身が入らない。 433 00:35:39,658 --> 00:35:45,998 私はね こういうことばかりが 目当てじゃないんだ。 434 00:35:45,998 --> 00:35:49,335 お前の濁りのない芸➡ 435 00:35:49,335 --> 00:35:54,006 湧き水のような すがすがしい踊りが好きなのさ。 436 00:35:54,006 --> 00:35:59,345 それが 金の苦労で薄汚れるのなんて 見たくない。 437 00:35:59,345 --> 00:36:02,247 あっ! お前の師匠にも話してないが➡ 438 00:36:02,247 --> 00:36:06,218 できれば 役者稼業から身を引かせたい。 439 00:36:06,218 --> 00:36:08,354 そ… それは! 440 00:36:08,354 --> 00:36:10,289 あっ あっ… ああ~っ! 441 00:36:10,289 --> 00:36:13,692 私の手元で芸を磨いて 志賀山流を世に広めるんだ。 442 00:36:13,692 --> 00:36:18,530 お前の親たちも まとめて面倒見てやろうじゃないか。 443 00:36:18,530 --> 00:36:21,367 あっ あっ… ああ~! 444 00:36:21,367 --> 00:36:32,367 ≪あっ! あああっ! あっ あっ あっ あっ あ~っ! 445 00:37:04,677 --> 00:37:07,977 (小十郎)ううっ うっ…。 446 00:37:16,689 --> 00:37:21,560 おとっつぁん? おとっつぁん! 447 00:37:21,560 --> 00:37:25,698 おお… おとっつぁん! 448 00:37:25,698 --> 00:37:28,600 お… おとっつぁん! 449 00:37:28,600 --> 00:37:30,969 い… 医者! 医者 呼んでくるから➡ 450 00:37:30,969 --> 00:37:33,639 動いちゃいけねえよ! いいかい!? 451 00:37:33,639 --> 00:37:42,314 ♬~ 452 00:37:42,314 --> 00:37:47,986 ≪(医者)少し落ち着いた。 しばらくは大丈夫だ。 453 00:37:47,986 --> 00:37:50,322 ≪(お俊)ありがとうございました。 454 00:37:50,322 --> 00:37:55,994 ≪(医者)前にも言ったが 胃の腑が 酒で ひどく荒れている。➡ 455 00:37:55,994 --> 00:38:01,667 こうなった以上は 酒断ちだ。 いいね? 456 00:38:01,667 --> 00:38:03,967 はい。 457 00:38:05,537 --> 00:38:08,340 よいお薬がありましょうか? 458 00:38:08,340 --> 00:38:12,811 (医者)今 のませている薬湯じゃ 効き目が薄い。 459 00:38:12,811 --> 00:38:19,017 独参湯でも のませたいところだか… かなり値が張る。 460 00:38:19,017 --> 00:38:22,354 独参湯…。 461 00:38:22,354 --> 00:38:28,227 歌舞伎の世界じゃ 「忠臣蔵」のことを 「芝居の独参湯」というらしいね。➡ 462 00:38:28,227 --> 00:38:31,630 「忠臣蔵」をやれば 必ず当たる。➡ 463 00:38:31,630 --> 00:38:37,970 潰れかかった芝居小屋も生き返らせる 妙薬に似たり… という意味だとか。 464 00:38:37,970 --> 00:38:39,905 (お俊)おっしゃるとおり。 465 00:38:39,905 --> 00:38:46,605 (医者)それほど… 病は進んでいるということだ。 466 00:38:53,519 --> 00:38:56,355 中坊 お疲れさん。 467 00:38:56,355 --> 00:38:59,855 お疲れさまでした。 お疲れさん。 468 00:39:06,665 --> 00:39:11,003 [ 回想 ] (吉川)お前さえよければ 後ろ盾にもなってやろう。➡ 469 00:39:11,003 --> 00:39:14,673 できれば 役者稼業から身を引かせたい。➡ 470 00:39:14,673 --> 00:39:19,545 お前の親たちも まとめて面倒見てやろうじゃないか。 471 00:39:19,545 --> 00:39:53,512 ♬~ 472 00:39:53,512 --> 00:39:56,982 [ 回想 ] (師直)「殿中で 鯉口三寸くつろげば➡ 473 00:39:56,982 --> 00:40:00,786 お家は断絶 その身は切腹だぞ。➡ 474 00:40:00,786 --> 00:40:05,986 お手前 それを… ご承知か?」。 475 00:40:09,995 --> 00:40:13,795 「その手は何だ」。 476 00:40:17,669 --> 00:40:20,339 「この手は…」。 477 00:40:20,339 --> 00:40:22,839 「その手は!」。 478 00:40:28,213 --> 00:40:31,350 「この手は…!」。 479 00:40:31,350 --> 00:40:37,350 「その手は… 何だ!」。 480 00:40:39,691 --> 00:40:46,832 「この手をついて…➡ 481 00:40:46,832 --> 00:40:53,038 お詫びつかまつる…!」。 482 00:40:53,038 --> 00:40:59,912 「判官は 詫びさっしゃるか➡ 483 00:40:59,912 --> 00:41:06,051 泣かっしゃるか➡ 484 00:41:06,051 --> 00:41:10,722 かわいそうに…➡ 485 00:41:10,722 --> 00:41:14,593 おかわいそうに…」。 486 00:41:14,593 --> 00:41:20,893 「師直 待て~! ダ~ッ」。 487 00:41:35,047 --> 00:41:41,186 [ 心の声 ] 俺は…➡ 488 00:41:41,186 --> 00:41:45,357 芝居が好きだ。 489 00:41:45,357 --> 00:41:56,368 (すすり泣き) 490 00:41:56,368 --> 00:42:03,241 や… やめたくねえ。 491 00:42:03,241 --> 00:42:07,941 や… やめたくねえよ。 492 00:42:13,218 --> 00:42:17,389 やめたくない…。 493 00:42:17,389 --> 00:42:26,589 ♬~ 494 00:42:30,802 --> 00:42:34,172 小十郎さんが 血ぃ吐いたのかい。 495 00:42:34,172 --> 00:42:36,508 はい。 496 00:42:36,508 --> 00:42:43,015 中 おめえ 俺のもとに何年いた? 497 00:42:43,015 --> 00:42:47,686 足かけ 10年です。 498 00:42:47,686 --> 00:42:52,557 薬代くれえ 俺の方で なんとか できたんだがなあ。 499 00:42:52,557 --> 00:42:55,027 これ以上は 若太夫に ご迷惑はかけられ…。 何で➡ 500 00:42:55,027 --> 00:42:56,962 誰より先に相談しなかったと 言ってんでえ! 501 00:42:56,962 --> 00:42:59,898 そう声を荒げるんじゃない。 吉川様➡ 502 00:42:59,898 --> 00:43:04,369 芸の上の師弟は 親兄弟より 固え絆で結ばれておりやす。 503 00:43:04,369 --> 00:43:06,705 どうか お口出しは ご無用に。 504 00:43:06,705 --> 00:43:10,709 役者を引かせるのは 私のわがままだ。 中蔵に罪はないよ。 505 00:43:10,709 --> 00:43:17,215 いやいや 約定をたがえた罪はございやす。 506 00:43:17,215 --> 00:43:23,021 覚えてるか? 中蔵。 507 00:43:23,021 --> 00:43:24,956 はい。 508 00:43:24,956 --> 00:43:30,562 坊よ 本当に役者になりてえか? 509 00:43:30,562 --> 00:43:35,000 役者の道は厳しいぜ? なまはんかなことじゃ続かねえ。 510 00:43:35,000 --> 00:43:38,503 その覚悟はあるんだな? はい! 511 00:43:38,503 --> 00:43:45,677 約を たがえた時は 師匠として 厳しい罰を与えるぜ。 512 00:43:45,677 --> 00:43:52,184 約を たがえました以上は 厳しい罰を受ける覚悟です! 513 00:43:52,184 --> 00:43:54,684 そうかい。 514 00:43:56,521 --> 00:43:58,457 ああっ! (吉川)よ… よさないか 傳九郎!➡ 515 00:43:58,457 --> 00:44:01,026 大事な顔に傷がつく! 顔が命なのは➡ 516 00:44:01,026 --> 00:44:02,961 役者のうちだけでございやしょう? 517 00:44:02,961 --> 00:44:09,201 今日から こいつは 芝居とは 縁もゆかりもねえ人間だ! 518 00:44:09,201 --> 00:44:13,038 [ 心の声 ] 破門… された。 519 00:44:13,038 --> 00:44:22,547 今より 私と中蔵は赤の他人。 どうぞ ご存分になされませ。 520 00:44:22,547 --> 00:44:37,062 ♬~ 521 00:44:37,062 --> 00:44:45,504 中蔵 今後 お前は あたしの家に住むといい。 522 00:44:45,504 --> 00:44:48,704 手をお出し。 523 00:44:52,811 --> 00:44:56,681 これは 当座の支度金だ。 524 00:44:56,681 --> 00:45:02,821 百両ある。 これで よい薬を買っておやり。 525 00:45:02,821 --> 00:45:05,821 ありがとうございます。 526 00:45:07,526 --> 00:45:10,028 行くよ。 527 00:45:10,028 --> 00:45:27,045 ♬~ 528 00:45:27,045 --> 00:45:30,382 そこのお若えの。 529 00:45:30,382 --> 00:45:34,786 ど… どちら様で? 530 00:45:34,786 --> 00:45:39,586 ああ やっぱり 柏屋んとこの。 531 00:45:41,493 --> 00:45:44,329 こ… 幸四郎親方! 532 00:45:44,329 --> 00:45:48,500 中蔵と申します! よせよせ。 ここは天下の往来だ。 533 00:45:48,500 --> 00:45:52,800 こっちへ入んな。 へえ…。 534 00:45:56,007 --> 00:45:58,510 師匠のお供かい? 535 00:45:58,510 --> 00:46:03,014 へえ…。 座頭も これから ごひいき筋と? 536 00:46:03,014 --> 00:46:09,788 いや 俺は舞台中には酒は飲まねえ。 それに 宴席が苦手でな。 537 00:46:09,788 --> 00:46:15,360 では…。 ここぁ 俺の実家だ。 538 00:46:15,360 --> 00:46:18,396 えっ? 生まれてすぐ➡ 539 00:46:18,396 --> 00:46:21,833 先代の幸四郎んところに 養子に出されたのさ。 540 00:46:21,833 --> 00:46:24,736 あ~ 知りませんでした。 541 00:46:24,736 --> 00:46:29,708 おめえ 志賀山流の家の子だってな。 542 00:46:29,708 --> 00:46:33,144 「一力」のくだりで 所作事を取り入れたのは➡ 543 00:46:33,144 --> 00:46:37,983 あれは いい考えだ。 グッと華が出たぜ。 544 00:46:37,983 --> 00:46:41,853 いや あれは錦次さんの工夫で 私は何も…。 545 00:46:41,853 --> 00:46:50,328 ともかく おめえさんほどの踊り上手を この年まで内弟子のまま ほっとくたぁ➡ 546 00:46:50,328 --> 00:46:54,828 傳九郎も のんきな師匠だぜ。 547 00:46:56,668 --> 00:46:59,170 どうしたい? 548 00:46:59,170 --> 00:47:08,346 いえ…。 実は この度 家の事情で➡ 549 00:47:08,346 --> 00:47:12,183 芝居より引かせていただくことと 相なりました。 550 00:47:12,183 --> 00:47:15,883 そうなのか…。 551 00:47:17,822 --> 00:47:23,361 顔は役者の命だ。 大事にしな。 552 00:47:23,361 --> 00:47:32,470 俺が外を歩く時 頭巾で顔を隠すのは この顔が売りもんだからさ。 553 00:47:32,470 --> 00:47:39,344 舞台以外では 簡単に顔をさらさねえ。 それが 役者の慎みってもんだ。 554 00:47:39,344 --> 00:47:44,182 私はもう… 役者ではございません。 555 00:47:44,182 --> 00:47:47,182 いつか また戻るさ。 556 00:47:49,788 --> 00:47:57,996 それまで この顔を大事にするんだな。 557 00:47:57,996 --> 00:48:16,996 ♬~ 558 00:48:19,184 --> 00:48:24,522 その1年後…。 559 00:48:24,522 --> 00:48:27,425 お前が… 女房を? 560 00:48:27,425 --> 00:48:31,296 みなしごの私を養い 育ててくれた養父➡ 561 00:48:31,296 --> 00:48:35,096 中山小十郎たっての 願いでござりますれば。 562 00:48:36,768 --> 00:48:41,606 そう言われてもね…。 563 00:48:41,606 --> 00:48:46,511 父は… もう長くありません。 564 00:48:46,511 --> 00:48:49,011 何とぞ! 565 00:48:51,349 --> 00:48:56,049 どんな… どんな子なんだい? 566 00:48:57,789 --> 00:49:03,161 父の古い朋輩 杵屋喜三郎と申す三味線方の娘にて➡ 567 00:49:03,161 --> 00:49:07,861 親同士が ひそかに約しおりましたる次第。 中蔵! 568 00:49:11,035 --> 00:49:14,339 あっ! あたしはね➡ 569 00:49:14,339 --> 00:49:21,639 お前のこと 我が子とも思って 慈しんできたつもりだよ。 570 00:49:23,681 --> 00:49:27,881 ご恩は 一生 忘れません。 571 00:49:32,390 --> 00:49:38,129 暇を… 暇を出そう。 572 00:49:38,129 --> 00:49:43,935 あっ… ありがとうございます! 573 00:49:43,935 --> 00:49:49,140 最後の… 親孝行ができます。 574 00:49:49,140 --> 00:49:53,011 親の養いぶちとして頂戴した 酒屋の株を お返しいたし➡ 575 00:49:53,011 --> 00:49:55,914 支度金として頂戴した百両も必ず…! 576 00:49:55,914 --> 00:49:58,214 返さなくていい! 577 00:50:00,318 --> 00:50:06,018 これ以上 あたしに 恥かかさないでおくれ。 578 00:50:16,668 --> 00:50:25,368 苦しい家計を助けるため ひいき筋のお大尽に囲われて1年余り…。 579 00:50:28,813 --> 00:50:35,520 中村中蔵 晴れて自由の身となりにけり。 580 00:50:35,520 --> 00:50:38,823 よいっとな! よい よーいっ! 581 00:50:38,823 --> 00:51:03,982 〽 ことぶきの鶴と亀との 582 00:51:03,982 --> 00:51:11,222 中蔵の女房になるお岸は 三味線方 七世 杵屋喜三郎の娘。 583 00:51:11,222 --> 00:51:14,559 父親譲りの三味の腕もさることながら➡ 584 00:51:14,559 --> 00:51:19,063 唄や踊りもたしなむ芸達者。 585 00:51:19,063 --> 00:51:23,568 まさに 似合いの夫婦。 586 00:51:23,568 --> 00:51:31,376 〽 587 00:51:31,376 --> 00:51:36,814 どうか 末永く。 588 00:51:36,814 --> 00:51:40,514 お頼申します。 589 00:51:50,028 --> 00:51:52,931 じゃ。 ああ! そ… その前に。 590 00:51:52,931 --> 00:51:56,534 えっ ええっ? 聞いておきたいことが。 591 00:51:56,534 --> 00:51:59,837 何だい? 592 00:51:59,837 --> 00:52:05,137 役者をやめたのは 本心ですか? 593 00:52:09,514 --> 00:52:12,216 なぜ そんなことを聞く? 594 00:52:12,216 --> 00:52:16,554 楽屋のお稽古場で 久しぶりに お会いした時➡ 595 00:52:16,554 --> 00:52:21,854 心底 芝居が好きなお人なんだって 思ったから。 596 00:52:24,295 --> 00:52:29,867 お岸。 はい。 597 00:52:29,867 --> 00:52:34,706 俺は みなしごだった。 598 00:52:34,706 --> 00:52:40,011 もらわれてきた時 痩せっぽっちの 年中 病気ばっかりしてる子で➡ 599 00:52:40,011 --> 00:52:43,815 死にかけたことも 何度もあったらしい。 600 00:52:43,815 --> 00:52:49,621 その度に おとっつぁんは舞台のあと 妙見様に お百度を踏み➡ 601 00:52:49,621 --> 00:52:53,558 おっかさん 稽古そっちのけで 俺に添い寝して➡ 602 00:52:53,558 --> 00:52:58,830 一日中 体 さすってくれたそうだ。 603 00:52:58,830 --> 00:53:02,033 あの人たちが そう言ったんじゃねえ。 604 00:53:02,033 --> 00:53:08,533 みんな おめえの おとっつぁんが 教えてくれたことだ。 605 00:53:16,547 --> 00:53:23,421 芝居は好きだ。 死ぬほど好きだが…➡ 606 00:53:23,421 --> 00:53:27,921 あの2人と引き換えになんかできねえ。 607 00:53:30,662 --> 00:53:34,999 よく分かりました。 608 00:53:34,999 --> 00:53:38,670 すっきりした。 609 00:53:38,670 --> 00:53:42,173 じゃ。 あっ! 610 00:53:42,173 --> 00:53:49,681 〽 つてどん つりりんりん ひげ男 つてどん 611 00:53:49,681 --> 00:53:53,518 2人の祝言を見届けて安心したのか➡ 612 00:53:53,518 --> 00:53:58,318 その翌年に 養父 中山小十郎が死去。 613 00:54:00,024 --> 00:54:04,362 お稽古の人数 また減りましたね。 614 00:54:04,362 --> 00:54:09,834 ああ 役者衆も すっかり 顔を見せなくなったし。 615 00:54:09,834 --> 00:54:11,903 傳九郎…。 616 00:54:11,903 --> 00:54:18,209 チッ。 あの若太夫の差し金だよ。 617 00:54:18,209 --> 00:54:21,245 おっかさん それ 考え過ぎだよ。 618 00:54:21,245 --> 00:54:25,550 中村座の振り付けは 同じ志賀山流なんですよね? 619 00:54:25,550 --> 00:54:30,054 私には 義理の兄さんになるお人が 振り付け師をやってなさる。 620 00:54:30,054 --> 00:54:33,925 稽古を見られない分を ここで引き受けてたんだが…。 621 00:54:33,925 --> 00:54:39,731 最近じゃあ 弟子の藤島勘太夫に やらせてるらしい。 622 00:54:39,731 --> 00:54:43,334 そう しむけてる人間がいるってことさ。 623 00:54:43,334 --> 00:54:46,170 勘太夫さんは 教えるのが うめえお人だから。 624 00:54:46,170 --> 00:54:53,344 ありゃ お前 うちの弟子筋だよ? 悔しくないのかい? 625 00:54:53,344 --> 00:54:58,015 すまねえ。 俺が ふがいねえばかりに。 626 00:54:58,015 --> 00:55:03,187 お前の踊りは 勘太夫より数段勝ってる。 627 00:55:03,187 --> 00:55:08,025 聞いた話じゃ 初春興行で踊る吉例の「三番叟」。 628 00:55:08,025 --> 00:55:12,363 あれを踊れる役者が 今の中村一門に いないそうじゃないか。 629 00:55:12,363 --> 00:55:17,034 「三番叟」って 中さんが 毎年踊ってた あれですか? そうさ。 630 00:55:17,034 --> 00:55:24,542 で 困った若太夫が 役者でもない勘太夫に頼んだらしい。 631 00:55:24,542 --> 00:55:28,846 本当かい? チッ。 悔しいねえ。 632 00:55:28,846 --> 00:55:34,318 「三番叟」は 志賀山のお家芸だよ。 そうなんですか? 633 00:55:34,318 --> 00:55:38,656 能 狂言のたしなみがないとできない 特別な踊りなんだ。 634 00:55:38,656 --> 00:55:41,993 あの勘太夫に踊れんのかねえ。 635 00:55:41,993 --> 00:56:00,344 〽 海老も曲がりし 腰のしめ 636 00:56:00,344 --> 00:56:13,891 〽 宝尽くしや たから船 637 00:56:13,891 --> 00:56:16,794 〽 638 00:56:16,794 --> 00:56:23,701 〽 鯉の滝登り 639 00:56:23,701 --> 00:56:27,839 やりにくいぜ あの人らの前で踊るのは。 640 00:56:27,839 --> 00:56:32,643 〽 から松を 641 00:56:32,643 --> 00:56:36,514 〽 642 00:56:36,514 --> 00:56:40,518 〽 見事に見事に 643 00:56:40,518 --> 00:56:45,223 〽 さっても見事に手を尽くし 644 00:56:45,223 --> 00:56:51,796 あ~あ。 慣れてねえとはいえ 上がっちまって 動きが かてえや。 645 00:56:51,796 --> 00:56:57,668 そりゃそうですよ。 中蔵兄さんと お俊さんが見に来てる。 646 00:56:57,668 --> 00:57:00,338 〽 647 00:57:00,338 --> 00:57:02,273 遅い! 648 00:57:02,273 --> 00:57:07,678 〽 参ろかの 肩車に 649 00:57:07,678 --> 00:57:09,614 (音吉)何だか ぎこちねえぞ! 650 00:57:09,614 --> 00:57:12,817 かたい かたい! 正月明けの鏡餅か! 651 00:57:12,817 --> 00:57:23,194 (笑い声) 〽 乗せて参ろの氏神 652 00:57:23,194 --> 00:57:27,064 (お岸と お俊の笑い声) 653 00:57:27,064 --> 00:57:29,700 下手だったねえ! 654 00:57:29,700 --> 00:57:33,971 からくり人形みたい。 アッハハハハハハ…! 655 00:57:33,971 --> 00:57:40,271 (せきこみ) 656 00:57:41,846 --> 00:57:45,646 はい 薬湯。 ああ。 657 00:57:49,520 --> 00:57:54,659 はあ~… はあ。 658 00:57:54,659 --> 00:57:56,661 中蔵は? 659 00:57:56,661 --> 00:58:00,798 稽古場にいます。 踊りをさらうって。 660 00:58:00,798 --> 00:58:07,571 そうかい。 火をつけちまったかねえ…。➡ 661 00:58:07,571 --> 00:58:11,809 今日 久方ぶりに 芝居小屋の空気を吸って➡ 662 00:58:11,809 --> 00:58:16,681 埋み火が また燃えだしたのさ。➡ 663 00:58:16,681 --> 00:58:27,024 私や小十郎さんのために役者をやめてから ずっと心の中で くすぶってた火だよ。 664 00:58:27,024 --> 00:58:31,295 ふっ。 いやっ ちゃちゃ ちゃんちゃん ちゃん。 665 00:58:31,295 --> 00:58:36,467 おっかさん とうに気付いてたんですね。 666 00:58:36,467 --> 00:58:42,340 フフッ。 あの子に伝えておくれ。 667 00:58:42,340 --> 00:58:50,540 冥土の土産に 本物の志賀山「三番叟」を 見せとくれってね。 668 00:58:54,852 --> 00:58:59,156 その装束は 何とした? 669 00:58:59,156 --> 00:59:04,662 昨日の勘太夫が踊りを見て 思いついた工夫にございます。 670 00:59:04,662 --> 00:59:07,665 いかなる工夫か? 671 00:59:07,665 --> 00:59:15,306 からくり人形が 「三番叟」を舞いまする。 672 00:59:15,306 --> 00:59:22,680 〽 673 00:59:22,680 --> 00:59:27,351 〽 いやーはっはっ いやーはっはっ 674 00:59:27,351 --> 00:59:33,624 〽 いよー よっ よっ よっ 〽 いよー いよー いよーい いよーい 675 00:59:33,624 --> 00:59:38,295 〽 いやー いやー いやー 676 00:59:38,295 --> 00:59:42,466 〽 おおさえ おさえ 677 00:59:42,466 --> 00:59:48,339 〽 喜びありや 喜びありや 678 00:59:48,339 --> 01:00:03,154 〽 我が この所より外へは遣らじとぞ思ふ 679 01:00:03,154 --> 01:00:06,657 〽 680 01:00:06,657 --> 01:00:13,431 〽 よっ いよー いよー いよー 681 01:00:13,431 --> 01:00:27,678 〽 にせ紫も なかなかに 及ばぬ筆に 682 01:00:27,678 --> 01:00:34,819 [ 心の声 ] おっかさん 俺は もう一度 役者で生きてみてえ。 683 01:00:34,819 --> 01:00:38,355 [ 心の声 ] 誰に遠慮がいるもんか。➡ 684 01:00:38,355 --> 01:00:44,028 自分の道を進みなされ。 685 01:00:44,028 --> 01:00:49,366 〽 石亀や 686 01:00:49,366 --> 01:00:54,238 中蔵の育ての母であり 厳しい師匠であり➡ 687 01:00:54,238 --> 01:00:58,843 希代の踊り手とうたわれた 志賀山お俊。 688 01:00:58,843 --> 01:01:05,382 年が明けて間もなく 50歳で この世を去った。 689 01:01:05,382 --> 01:01:10,721 〽 690 01:01:10,721 --> 01:01:23,434 (鐘の音) 691 01:01:23,434 --> 01:01:28,734 とうとう 2人っきりになっちまいましたね。 692 01:01:30,674 --> 01:01:33,174 嫌かい? 693 01:01:36,347 --> 01:01:40,818 フフッ フッ…。 694 01:01:40,818 --> 01:01:42,753 中さ~ん。 695 01:01:42,753 --> 01:01:46,190 お岸 金がねえ。 696 01:01:46,190 --> 01:01:50,694 本当にねえ。 もう全然ねえ。 697 01:01:50,694 --> 01:01:56,500 分かってますよ。 米も みそも ありませんし。 698 01:01:56,500 --> 01:02:01,205 ねえな。 699 01:02:01,205 --> 01:02:04,241 今から 若太夫に 帰参のお願いに行くんでしょ? 700 01:02:04,241 --> 01:02:08,546 ああ… 気が重いぜ。 701 01:02:08,546 --> 01:02:14,718 師匠の許しが出ねえなら 初めは振り付けの手伝いでも構わねえ。 702 01:02:14,718 --> 01:02:22,593 給金は いいところ 年15両ってところかな。 703 01:02:22,593 --> 01:02:26,330 苦労かけるが 我慢してくれ。 ハッ! 704 01:02:26,330 --> 01:03:07,705 〽 705 01:03:07,705 --> 01:03:09,640 行ってくらあ…。 706 01:03:09,640 --> 01:03:34,865 〽 707 01:03:34,865 --> 01:03:36,867 このころの中村座は➡ 708 01:03:36,867 --> 01:03:41,171 中蔵を孫のように かわいがった 温厚な六代目が隠居し➡ 709 01:03:41,171 --> 01:03:44,675 長男が 七代目を継いでおりましたが➡ 710 01:03:44,675 --> 01:03:49,546 この人が 全く中蔵になじみの薄い男。 711 01:03:49,546 --> 01:03:54,018 ふ~ん おめえ 役者やめてたんだっけ? 712 01:03:54,018 --> 01:03:56,920 …などというような人だったから➡ 713 01:03:56,920 --> 01:04:02,726 いやおうなく その弟で 元師匠の 傳九郎を頼らざるをえない。 714 01:04:02,726 --> 01:04:06,697 傳九郎 おめえの弟子だったんだろ? 715 01:04:06,697 --> 01:04:09,497 おめえのいいようにしな。 716 01:04:20,544 --> 01:04:25,215 (ため息) 717 01:04:25,215 --> 01:04:29,553 堅気になったが どうにも食えず➡ 718 01:04:29,553 --> 01:04:33,791 この世界に 出戻ってまいりやしたってやつを➡ 719 01:04:33,791 --> 01:04:39,330 元のとおり受け入れたとあっちゃ ほかの連中が納得しねえ。 720 01:04:39,330 --> 01:04:43,167 稲荷町から出直してもらおうか。 721 01:04:43,167 --> 01:04:49,340 お下の下の下 裏方の仕事も手伝う人足から始めろ。 722 01:04:49,340 --> 01:04:53,811 給金は 年7両。 723 01:04:53,811 --> 01:04:58,015 [ 心の声 ] し… 7両! 724 01:04:58,015 --> 01:05:00,050 いいな? 725 01:05:00,050 --> 01:05:03,050 えっ… へい。 726 01:05:08,359 --> 01:05:11,829 すまねえ! たった7両ぽっちじゃ食わせていけねえ。 727 01:05:11,829 --> 01:05:15,699 さんざん 頭下げてきたんでしょ? 728 01:05:15,699 --> 01:05:20,371 うちにいる時くらい 顔上げて 胸張って。 729 01:05:20,371 --> 01:05:23,273 うん。 うん。 730 01:05:23,273 --> 01:05:25,242 お… おい おいおいおい。 731 01:05:25,242 --> 01:05:28,045 食わせられねえって話の端から…。 732 01:05:28,045 --> 01:05:31,345 余分な着物は 質に入れちゃったし。 733 01:05:38,322 --> 01:05:43,660 中村座への帰参 おめでとうございます。 734 01:05:43,660 --> 01:05:45,662 稲荷町かあ…。 735 01:05:45,662 --> 01:05:47,998 よっ! 出戻り! 736 01:05:47,998 --> 01:05:50,498 よせやい。 フフフ。 737 01:05:59,176 --> 01:06:01,111 はあ…。 738 01:06:01,111 --> 01:06:04,014 おはようございます! おお 中坊。 739 01:06:04,014 --> 01:06:06,049 おはようございます。 740 01:06:06,049 --> 01:06:08,685 失礼します。 お願いします。 741 01:06:08,685 --> 01:06:11,385 おお! おはようございます。 742 01:06:25,836 --> 01:06:31,642 ええっ 今日から お仲間に加えていただく 中蔵と申します。 743 01:06:31,642 --> 01:06:38,315 (任三郎)久しぶりだな 中坊。 若太夫から聞いてるよ。 744 01:06:38,315 --> 01:06:41,151 お下から やり直すことに相なりました。 745 01:06:41,151 --> 01:06:44,988 ハッ 「お下」なんて➡ 746 01:06:44,988 --> 01:06:49,793 上の役者さんたちみてえな 言いぐさじゃねえの。 あっ…。 747 01:06:49,793 --> 01:06:54,631 おい てめえら この こざっぱりした あんちゃんはな➡ 748 01:06:54,631 --> 01:07:00,804 長らく 若太夫の内弟子やってた 中村中蔵さんだ。 749 01:07:00,804 --> 01:07:07,010 名題の付き人だったから 俺たち お下の仕事は ご存じない。 750 01:07:07,010 --> 01:07:11,515 手取り足取り 教えてさしあげな。 (一同)へい。 751 01:07:11,515 --> 01:07:15,352 一等最初は 道具方の手伝いだ。 752 01:07:15,352 --> 01:07:17,821 脱ぎな。 えっ? 753 01:07:17,821 --> 01:07:22,526 ふんどし一丁になれって言ってんの! 754 01:07:22,526 --> 01:07:25,026 穴蔵行きだ。 755 01:07:27,030 --> 01:07:31,635 (太鼓の音) 756 01:07:31,635 --> 01:07:36,635 (歓声) 757 01:07:39,510 --> 01:07:43,647 よしよし よしよし よしよし。 758 01:07:43,647 --> 01:07:46,149 やっと慣れてきたな。 759 01:07:46,149 --> 01:07:49,486 今のは よかったぜ。 へい ありがとうございます。 760 01:07:49,486 --> 01:07:53,156 〽 いよー 761 01:07:53,156 --> 01:07:55,659 〽 762 01:07:55,659 --> 01:07:58,662 高麗屋! 高麗屋! 高麗屋! 763 01:07:58,662 --> 01:08:02,162 おい 次だ 次。 次 次…。 764 01:08:05,002 --> 01:08:39,502 〽 765 01:08:47,578 --> 01:08:49,578 あっ…。 766 01:08:52,149 --> 01:08:54,985 中蔵さん? 767 01:08:54,985 --> 01:08:56,920 お久しぶりで 錦次さん。 768 01:08:56,920 --> 01:09:00,791 今は 改名して 市川武十郎と申します。 769 01:09:00,791 --> 01:09:03,694 相中におなりとは お早い ご出世で。 770 01:09:03,694 --> 01:09:06,997 幸四郎の親方のお引き立てですよ。 771 01:09:06,997 --> 01:09:08,932 それじゃあ…。 772 01:09:08,932 --> 01:09:11,868 そろそろ いくぜ。 へい。 773 01:09:11,868 --> 01:09:13,870 はい。 774 01:09:13,870 --> 01:09:17,570 ひの ふの… み! 775 01:09:20,177 --> 01:09:23,213 〽 776 01:09:23,213 --> 01:09:25,349 成田屋! 成田屋! 777 01:09:25,349 --> 01:09:48,138 〽 778 01:09:48,138 --> 01:09:50,974 お~ うめえじゃねえか。 779 01:09:50,974 --> 01:09:55,312 もののけの せり上がりは こうじゃなきゃいけねえや。 780 01:09:55,312 --> 01:10:01,112 いや… 役者なら どう上がりてえか 考えたまでで。 781 01:10:02,786 --> 01:10:06,323 ほれ。 うっ…。 782 01:10:06,323 --> 01:10:26,343 〽 あやしかりける 783 01:10:26,343 --> 01:10:28,679 〽 いよー 784 01:10:28,679 --> 01:10:34,017 〽 785 01:10:34,017 --> 01:10:36,717 高麗屋! 高麗屋! 786 01:10:39,356 --> 01:10:41,391 (観客)ああ…。 787 01:10:41,391 --> 01:10:44,194 (幸四郎) 早く引きゃあいいってもんじゃねえ。 788 01:10:44,194 --> 01:10:47,698 もっと芝居の余韻を考えて幕を引くんだ。 いいな? 789 01:10:47,698 --> 01:10:50,398 へい! 申し訳ございません。 790 01:10:55,839 --> 01:10:58,742 「我が夫様」。 791 01:10:58,742 --> 01:11:08,852 「おう。 めでたい。 めでた~い」。 792 01:11:08,852 --> 01:11:22,432 〽 793 01:11:22,432 --> 01:11:24,735 高麗屋! 高麗屋! ご両人! 794 01:11:24,735 --> 01:11:39,182 〽 795 01:11:39,182 --> 01:11:41,518 (音吉)いよっ 幕引き! 796 01:11:41,518 --> 01:11:44,020 うまい! いい幕切れだぜ! 797 01:11:44,020 --> 01:11:47,820 ≪(笑い声と ざわめき) 798 01:11:52,729 --> 01:11:54,698 斬られ役を? 799 01:11:54,698 --> 01:11:58,368 今度 「双蝶々曲輪日記」で➡ 800 01:11:58,368 --> 01:12:02,038 助五郎が 濡れ髪長五郎をやるんだが➡ 801 01:12:02,038 --> 01:12:06,843 それに斬られて死ぬ 駕籠かきの役だ。 802 01:12:06,843 --> 01:12:09,546 ひと言だが セリフもある。 803 01:12:09,546 --> 01:12:11,746 セリフが? 804 01:12:14,851 --> 01:12:16,787 どうだ? やってみねえか? 805 01:12:16,787 --> 01:12:19,556 へい! そりゃあ もう。 806 01:12:19,556 --> 01:12:23,059 だが このセリフで 場が幕になる。 807 01:12:23,059 --> 01:12:26,730 下手を打つと 締まらねえ芝居になっちまう。 808 01:12:26,730 --> 01:12:29,230 心いたしやす! 809 01:12:35,438 --> 01:12:38,375 「人殺し~!」。 810 01:12:38,375 --> 01:12:42,212 「人… 人殺し~!」。 811 01:12:42,212 --> 01:12:44,214 うっ! 812 01:12:44,214 --> 01:13:05,914 ♬~ 813 01:13:14,544 --> 01:13:16,580 「うわ~!」。 814 01:13:16,580 --> 01:13:20,350 「あっ… ああっ!」。 「人殺し~!」。 815 01:13:20,350 --> 01:13:23,720 下手くそ! 816 01:13:23,720 --> 01:13:29,392 (笑い声) 817 01:13:29,392 --> 01:13:31,995 「ああ… あっ あっ あっ ああっ!」。 818 01:13:31,995 --> 01:13:33,930 声も悪けりゃ 間も悪い! 819 01:13:33,930 --> 01:13:52,682 (笑い声) 820 01:13:52,682 --> 01:13:56,553 すいません すいません…。 この野郎! 821 01:13:56,553 --> 01:13:58,555 うっ! 822 01:13:58,555 --> 01:14:00,557 ん~! 823 01:14:00,557 --> 01:14:03,693 あっ ご勘弁を! (助五郎)勘弁ならねえ! 824 01:14:03,693 --> 01:14:06,393 俺の見せ場 ぶっ壊しやがって! 825 01:14:10,200 --> 01:14:13,036 こいつ 手向かいするか。 826 01:14:13,036 --> 01:14:16,539 顔は やめてくだせえ。 何だと? 827 01:14:16,539 --> 01:14:20,339 顔だけは やめてくだせえ。 828 01:14:22,345 --> 01:14:26,645 顔は役者の命だ。 大事にしな。 829 01:14:30,654 --> 01:14:33,556 んっ! あいてて…。 830 01:14:33,556 --> 01:14:35,992 何があった? どうも 兄さんが➡ 831 01:14:35,992 --> 01:14:38,328 幕切れを しくじっちまったみてえで。 832 01:14:38,328 --> 01:14:40,328 おい 任三郎! 833 01:14:42,198 --> 01:14:45,001 この悪声の大根を なんとかしろい! 834 01:14:45,001 --> 01:14:48,672 へい 二度と へまをしねえよう 思い知らせます。 835 01:14:48,672 --> 01:14:50,672 うん。 836 01:14:54,544 --> 01:15:01,017 おい できるだけ汚え古わらじ集めろや。 837 01:15:01,017 --> 01:15:03,317 (一同)へい。 838 01:15:11,027 --> 01:15:14,698 おっ! ほらよっと! 839 01:15:14,698 --> 01:15:17,534 (笑い声) 840 01:15:17,534 --> 01:15:19,734 いいざまだな。 841 01:15:23,206 --> 01:15:26,843 (笑い声) こりゃいいや! 842 01:15:26,843 --> 01:15:30,380 (笑い声) 843 01:15:30,380 --> 01:15:34,250 さあ 立ちませい! 844 01:15:34,250 --> 01:15:36,186 ほら 立て! 845 01:15:36,186 --> 01:15:40,190 (笑い声) 846 01:15:40,190 --> 01:15:42,325 ほら。 847 01:15:42,325 --> 01:15:49,099 ハハハハ… さあさあ さあさあ ほら 座れ! 848 01:15:49,099 --> 01:15:54,504 この男 芝居を損ないし者にて候。 849 01:15:54,504 --> 01:16:01,678 その科により 楽屋引き回しの上 さらし者にいた~す! 850 01:16:01,678 --> 01:16:04,378 ハッハッハッ…。 851 01:16:08,551 --> 01:16:13,189 ほら 立ちませい! ああ…。 852 01:16:13,189 --> 01:16:21,364 この男は 芝居を損ないし者にて候。➡ 853 01:16:21,364 --> 01:16:32,008 その科により 楽屋引き回しの上 さらし者にいた~す! 854 01:16:32,008 --> 01:16:34,310 ほら。 855 01:16:34,310 --> 01:16:40,116 ふん なかなか しゃれが効いてるぜ。 856 01:16:40,116 --> 01:16:44,788 黙ってねえで 何か お答えしろい! 857 01:16:44,788 --> 01:16:47,657 余計なこと すんじゃねえ! えっ? 858 01:16:47,657 --> 01:16:53,329 これ以上 こいつの悪声なんぞ聞きたくねえ。 859 01:16:53,329 --> 01:16:56,800 アッハハ! こ… こりゃ うまいこと おっしゃいます! 860 01:16:56,800 --> 01:16:59,169 ハハハハハ…。 861 01:16:59,169 --> 01:17:02,669 (助五郎)ふん いい座興だったぜ。 862 01:17:06,342 --> 01:17:11,181 さあさあ 皆様 近くに寄って とくとご覧あれ! 863 01:17:11,181 --> 01:17:17,481 (騒ぐ声) 864 01:17:28,198 --> 01:17:35,498 ん~… 後先考えねえで うめえ話に飛びつくと こうなる。 865 01:17:41,311 --> 01:17:47,111 俺に ひと言 相談すべきだったな。 866 01:18:05,335 --> 01:18:11,508 (任三郎)なあ 中坊 身に染みて よく分かったろう? 867 01:18:11,508 --> 01:18:15,178 そろそろ 分別して➡ 868 01:18:15,178 --> 01:18:21,518 あっちの役者になろうなんて夢は諦めな。 869 01:18:21,518 --> 01:18:29,259 どんなに頑張ったところで 血縁が物を言う理不尽な世界だ。 870 01:18:29,259 --> 01:18:33,129 稲荷町は稲荷町。➡ 871 01:18:33,129 --> 01:18:38,001 分を守って うまくやろうや。 872 01:18:38,001 --> 01:18:42,472 こんなところで終わる気はねえ。 あっ? 873 01:18:42,472 --> 01:18:49,646 俺は もっと芝居がしてえ。 874 01:18:49,646 --> 01:18:54,984 ここから抜け出してやる。 875 01:18:54,984 --> 01:18:58,488 ここから出て➡ 876 01:18:58,488 --> 01:19:01,991 上に行く! 877 01:19:01,991 --> 01:19:08,291 ほう… そうかい。 878 01:19:19,542 --> 01:19:22,011 中蔵さん! 879 01:19:22,011 --> 01:19:25,311 中蔵さん! 大丈夫かい? 880 01:19:27,684 --> 01:19:32,956 もしやと思って戻ってきたが… 災難だったな。 881 01:19:32,956 --> 01:19:36,626 う… うう… 武十郎さん…。 882 01:19:36,626 --> 01:19:40,296 しでえことしやがる…。 883 01:19:40,296 --> 01:19:46,970 私も女形の時代に 何度か 楽屋なぶりに遭ったが➡ 884 01:19:46,970 --> 01:19:50,270 ここまでの仕打ちは見たことがねえよ。 885 01:19:55,645 --> 01:19:58,982 武十郎さん…。 886 01:19:58,982 --> 01:20:04,654 すまねえ… 見ないでくれ…。 887 01:20:04,654 --> 01:20:12,328 こんな姿… もう 見ねえでくれ…。 888 01:20:12,328 --> 01:20:15,665 (すすり泣き) 889 01:20:15,665 --> 01:20:18,365 分かったよ。 890 01:20:20,336 --> 01:20:28,011 中蔵さん 気持ちが落ち着いたら 風呂へ入って➡ 891 01:20:28,011 --> 01:20:31,881 まっすぐ うちに帰るんだよ? 892 01:20:31,881 --> 01:20:36,686 いいかい? へい。 893 01:20:36,686 --> 01:20:40,686 いいね? へい。 894 01:20:42,492 --> 01:20:44,692 へい…。 895 01:20:56,706 --> 01:21:01,377 うう… うう…。 896 01:21:01,377 --> 01:21:06,577 うう~… ああ…。 897 01:21:14,724 --> 01:21:26,235 〽 898 01:21:26,235 --> 01:21:32,008 〽 ぬし様ぁ 899 01:21:32,008 --> 01:21:38,348 〽 帰るを 900 01:21:38,348 --> 01:21:46,848 〽 松の枝 901 01:21:50,526 --> 01:21:56,332 中さん… おなかすいた。 902 01:21:56,332 --> 01:22:39,876 ♬~ 903 01:22:39,876 --> 01:22:45,681 (水に落ちる音) 904 01:22:45,681 --> 01:22:49,685 おいおいおい… 魚が逃げちまうだろうが。 905 01:22:49,685 --> 01:22:54,385 ≪うう~… 助けてくれ! 助けて~! 906 01:23:00,530 --> 01:23:02,730 気が付いたか? 907 01:23:05,201 --> 01:23:07,901 随分 水 飲んだな。 908 01:23:15,545 --> 01:23:20,850 あ~ あ~! 袖にかかっちまったじゃねえか 汚えな! 909 01:23:20,850 --> 01:23:24,720 (せきこみ) 910 01:23:24,720 --> 01:23:27,557 お… 俺… 俺は… 俺は…! 911 01:23:27,557 --> 01:23:30,057 ああ 生きてるな。 912 01:23:32,161 --> 01:23:37,967 ああ… ああ~…。 913 01:23:37,967 --> 01:23:42,872 何で… 何で助けたんですか~! 914 01:23:42,872 --> 01:23:47,510 何だよ 身投げか お前。 ああ~…。 915 01:23:47,510 --> 01:23:53,710 それはそれは… それは助けてしまって悪かった。 916 01:23:56,018 --> 01:24:01,318 改めて… あの世へ送ってやろう。 はあ? 917 01:24:03,893 --> 01:24:06,662 え? 心配いらぬ。 痛くはない。 918 01:24:06,662 --> 01:24:10,199 いや ちょ…。 スパッと 首飛ばすから。 919 01:24:10,199 --> 01:24:15,071 いや いや… ひい~! 920 01:24:15,071 --> 01:24:17,271 な~んてな。 921 01:24:19,909 --> 01:24:23,746 はあ… はあ…! 922 01:24:23,746 --> 01:24:29,446 何だよ 寄ってたかって なぶり者にでもされたか? 923 01:24:31,521 --> 01:24:33,523 へ… へい…。 924 01:24:33,523 --> 01:24:37,159 そういう時はな なめられたら しめえだ。 925 01:24:37,159 --> 01:24:41,998 かなわねえまでも 一矢報いるぞって 殺気を放て。 926 01:24:41,998 --> 01:24:44,800 どうすればよいので? 自分を殴るやつから目を背けるな。 927 01:24:44,800 --> 01:24:51,007 相手の目を いちいち グッと にらみつけてやる。 928 01:24:51,007 --> 01:24:55,678 そうされると 手を出しにくくなる。 929 01:24:55,678 --> 01:24:59,682 グッとですか? そうだ。 930 01:24:59,682 --> 01:25:06,389 「お前の顔は決して忘れぬぞ」ってな。 931 01:25:06,389 --> 01:25:08,691 口に出してもいい。 932 01:25:08,691 --> 01:25:11,594 あっ ああっ! やってみろ。 933 01:25:11,594 --> 01:25:15,197 こ… こ…➡ 934 01:25:15,197 --> 01:25:17,833 こうですかい? そうだ 言ってみろ。 935 01:25:17,833 --> 01:25:19,769 「お前の顔は決して」…。 936 01:25:19,769 --> 01:25:23,639 もっと喉を締める感じで。 語気鋭く。 「お前の顔は」…。 937 01:25:23,639 --> 01:25:27,376 「お前の顔は 決して忘れぬぞ。➡ 938 01:25:27,376 --> 01:25:31,376 以後 夜道は気を付けて歩くがよい」。 939 01:25:34,150 --> 01:25:37,486 無駄な人助けしちまった。 940 01:25:37,486 --> 01:25:40,523 ハハハハッ! 941 01:25:40,523 --> 01:25:45,661 おめえ 役者だな? 942 01:25:45,661 --> 01:25:50,800 俺はな 役者が大嫌えなんだよ。 なぜでございます? 943 01:25:50,800 --> 01:25:53,336 俺たち武士をネタにして 楽しんでやがる。 944 01:25:53,336 --> 01:25:55,805 特に「仮名手本忠臣蔵」。 945 01:25:55,805 --> 01:25:59,175 あれなんざ 気に食わないね。 946 01:25:59,175 --> 01:26:01,510 おめえらが思うほど 武士は単純じゃねえ。➡ 947 01:26:01,510 --> 01:26:04,413 忠義か自分の命かと迫られたら➡ 948 01:26:04,413 --> 01:26:08,818 大概の武士は てめえの命が大事と思う。 当たり前の話だ。 949 01:26:08,818 --> 01:26:14,357 美談に仕立て上げて 俺たちの生き方 窮屈にしてんじゃねえ。 950 01:26:14,357 --> 01:26:17,193 痛っ! いった! 951 01:26:17,193 --> 01:26:22,031 いって… ああ…。 (物音) 952 01:26:22,031 --> 01:26:25,368 えっ ちょっと… えっ? 何!? 953 01:26:25,368 --> 01:26:28,404 えっ ええっ うわ~! 954 01:26:28,404 --> 01:26:31,104 命助けた礼に もらっとく。 955 01:26:35,978 --> 01:26:39,482 あっ あの… せめて お名前を! 956 01:26:39,482 --> 01:26:41,682 うるせえ! 957 01:26:47,223 --> 01:26:53,423 お前の顔は 決して忘れぬ…。 958 01:26:55,665 --> 01:27:17,687 ♬~ 959 01:27:17,687 --> 01:27:27,363 [ 心の声 ] 昨日で 俺は一度死んだ。➡ 960 01:27:27,363 --> 01:27:34,136 怖えもんは もう何もねえ! 961 01:27:34,136 --> 01:27:47,683 ♬~ 962 01:27:47,683 --> 01:27:50,586 落ちるところまで落ちた 中蔵の出世物語は➡ 963 01:27:50,586 --> 01:27:52,988 どう展開していくのでありましょうか? 964 01:27:52,988 --> 01:27:57,159 (小声で)あいすいません セリフが飛びました。 965 01:27:57,159 --> 01:27:59,195 しかし その行く手を阻む者が…。 966 01:27:59,195 --> 01:28:02,031 魔王 金井三笑の登場だ。 967 01:28:02,031 --> 01:28:04,500 (三笑)ハッハッハッハッハッハッハッ! 968 01:28:04,500 --> 01:28:07,536 だが 阻む者あれば 救う者あり。 969 01:28:07,536 --> 01:28:10,306 し… しかし この男が救世主? 970 01:28:10,306 --> 01:28:14,210 大丈夫かあ? 中村中蔵~! 971 01:28:14,210 --> 01:28:41,637 ♬~ 972 01:28:41,637 --> 01:29:11,333 ♬~ 973 01:29:11,333 --> 01:29:25,033 ♬~ 974 01:30:35,551 --> 01:30:39,521 (魚沼陽太)俺… マンガ家 やめます! 975 01:30:39,521 --> 01:30:43,125 ♬~ 976 01:30:43,125 --> 01:30:46,795 (西 海斗)連載 打ち切られたぐらいで 諦めんの早いって。 977 01:30:46,795 --> 01:30:50,666 まだ 陽… え いくつだっけ? 978 01:30:50,666 --> 01:30:55,104 35ですよ。 あ~…。 979 01:30:55,104 --> 01:30:58,407 そっか…。 ちょちょちょちょ そっかじゃないでしょうよ。 84379

Can't find what you're looking for?
Get subtitles in any language from opensubtitles.com, and translate them here.