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1
00:00:31,652 --> 00:00:41,395
♬~
2
00:00:41,395 --> 00:00:46,167
(鵜蔵)
時は元禄15年12月14日の夜も更けた頃…。
3
00:00:46,167 --> 00:00:49,537
高家筆頭 吉良上野介の屋敷を➡
4
00:00:49,537 --> 00:00:54,208
四十七名の赤穂浅野家 旧臣たちが襲撃。
5
00:00:54,208 --> 00:00:59,380
主君 内匠頭の敵と称して
上野介を殺害するという➡
6
00:00:59,380 --> 00:01:03,718
いわゆる 赤穂事件が起こります。
7
00:01:03,718 --> 00:01:10,218
首謀者は 元赤穂藩 城代家老 大石内蔵助。
8
00:01:12,393 --> 00:01:16,564
実際は
大石が山鹿流の陣太鼓も打たなければ➡
9
00:01:16,564 --> 00:01:20,868
どっかん バリバリと
門を叩き壊すこともなかった。
10
00:01:20,868 --> 00:01:26,168
ああいう派手な脚色は 全て後世の作り事。
11
00:01:27,742 --> 00:01:31,178
じゃあ 一体 誰が作ったの?
って話だが➡
12
00:01:31,178 --> 00:01:37,351
二代目 竹田出雲らが作り上げた
人形浄瑠璃が その大本。
13
00:01:37,351 --> 00:01:43,024
この大事件をもとに 四十七士を
いろは四十七文字になぞらえ➡
14
00:01:43,024 --> 00:01:51,198
「仮名手本忠臣蔵」という 全十一段の
通し狂言に仕立てて世に出した。
15
00:01:51,198 --> 00:01:55,369
これが 上方で ばか当たり。
16
00:01:55,369 --> 00:01:59,206
(大星)「御免!」。
すぐさま 歌舞伎でも上演されます。
17
00:01:59,206 --> 00:02:01,709
(師直)「おのれ 大星…!」。
18
00:02:01,709 --> 00:02:07,214
江戸での初演は
くしくも 討ち入りから47年後の寛延2年。
19
00:02:07,214 --> 00:02:10,914
(浪士)「え~い!」。
(どよめき)
20
00:02:12,553 --> 00:02:17,425
以後 歌舞伎始まって以来の
当たり演目になっていきます。
21
00:02:17,425 --> 00:02:22,263
「我が君様に申し上げまする。➡
22
00:02:22,263 --> 00:02:27,868
この御形見の九寸五分にて➡
23
00:02:27,868 --> 00:02:38,546
怨敵 師直公のお命を
頂戴つかまつってござりまする。➡
24
00:02:38,546 --> 00:02:45,019
何とぞ これにて ご無念を➡
25
00:02:45,019 --> 00:02:54,362
お晴らしなされてくださりませ」。
26
00:02:54,362 --> 00:02:57,198
高麗屋!
高麗屋!
27
00:02:57,198 --> 00:03:00,034
(すすり泣き)
28
00:03:00,034 --> 00:03:04,538
「仮名手本忠臣蔵」が
江戸にやって来て間もない頃➡
29
00:03:04,538 --> 00:03:11,212
この物語の主人公も
まだ半人前の駆け出し役者。
30
00:03:11,212 --> 00:03:17,385
(傳蔵)兄さん 高麗屋は貫目があるねえ。
31
00:03:17,385 --> 00:03:20,855
いずれ 四代目の團十郎を継ぐって話だよ。
32
00:03:20,855 --> 00:03:25,559
ああ 江戸一番の役者だ。
33
00:03:25,559 --> 00:03:27,495
俺も いつか➡
34
00:03:27,495 --> 00:03:31,365
「忠臣蔵」に出るような役者になりてえ。
35
00:03:31,365 --> 00:03:35,670
なあ 兄さんなら どの役をやってみたい?
36
00:03:35,670 --> 00:03:40,541
ん? そうさなあ…。
37
00:03:40,541 --> 00:03:42,543
「方々」。
(柝の音)
38
00:03:42,543 --> 00:03:44,679
高麗屋!
高麗屋!
39
00:03:44,679 --> 00:03:48,182
「勝ち鬨ぃ」。
(浪士たち)「おう」。
40
00:03:48,182 --> 00:03:56,691
「えい えい おう!」。
(浪士たち)「えい えい おう!」。
41
00:03:56,691 --> 00:04:04,891
(一同)「えい えい おう!
えい えい おう!」。
42
00:04:09,704 --> 00:04:11,639
当中村座のご演目~!
43
00:04:11,639 --> 00:04:15,576
やんや やんや やんや!
やんや やんや!
44
00:04:15,576 --> 00:04:18,412
大評判「仮名手本忠臣蔵」!
45
00:04:18,412 --> 00:04:23,718
このお江戸に 歌舞伎が根づいて
かれこれ 150年。
46
00:04:23,718 --> 00:04:30,791
綺羅 星のごとき役者が あまた出て
今や群雄割拠の戦国時代。
47
00:04:30,791 --> 00:04:36,330
しかし 歌舞伎の世界も
最後は出自が物を言う。
48
00:04:36,330 --> 00:04:40,201
名門に生まれるか
親類縁者でもねえ限り➡
49
00:04:40,201 --> 00:04:42,803
いっぱしの役者にはなれねえ。
50
00:04:42,803 --> 00:04:47,641
下手すりゃ 死ぬまで馬の足。
51
00:04:47,641 --> 00:04:51,345
ああ その他大勢の捕り方役が関の山だ。
52
00:04:51,345 --> 00:04:55,015
ところが この馬の足から➡
53
00:04:55,015 --> 00:05:01,522
名題看板を上げる役者にまで出世した男が
一人いる。
54
00:05:01,522 --> 00:05:06,026
中村中蔵だ!
そのとおり! 知ってるね! 通だね!
55
00:05:06,026 --> 00:05:14,702
どん底の下っ端役者から
名題にまで成り上がった男の~➡
56
00:05:14,702 --> 00:05:22,843
あ 立身出世の下克上~!
57
00:05:22,843 --> 00:05:27,214
栄屋!
日本一!
58
00:05:27,214 --> 00:05:29,550
持ってけ 持ってけ!
はい 入れて 入れて!
59
00:05:29,550 --> 00:05:32,453
はいはいはい… はい ありがとよ!
60
00:05:32,453 --> 00:05:35,156
ありがとよ!
61
00:05:35,156 --> 00:05:39,994
(音吉)鵜蔵のやつ
早速 中蔵をネタにしてやがる。
62
00:05:39,994 --> 00:05:43,030
(お駒)しっかりしてるよ 全く。
63
00:05:43,030 --> 00:05:47,868
(成兵衛)しかし 昨日の初日
中蔵の芝居には ぶったまげたねえ。
64
00:05:47,868 --> 00:05:50,004
(お松)お前さんたち
ちゃんと見れたのかい?
65
00:05:50,004 --> 00:05:53,040
いやいや 私なんぞ
すっかり油断して弁当 食ってたら➡
66
00:05:53,040 --> 00:05:57,344
花道の出を見逃しちまったよ。
ヘヘッ 実を言うと 俺も その口で。
67
00:05:57,344 --> 00:06:00,681
あたしも ご不浄に並んでる間に
中蔵が死んじまっててさ➡
68
00:06:00,681 --> 00:06:02,616
もう 悔しいったらありゃしない。
69
00:06:02,616 --> 00:06:06,554
「忠臣蔵」は 全部で 十一段もある
長~い通し狂言だ。
70
00:06:06,554 --> 00:06:10,825
ま 見せ場の少ない五段目辺りで
腹ごしらえするのは普通だよ。
71
00:06:10,825 --> 00:06:15,529
ところが その弁当幕の五段目で
中蔵がやらかした~。
72
00:06:15,529 --> 00:06:18,032
みんな
今日 もういっぺん 見なさるんだろう?
73
00:06:18,032 --> 00:06:22,203
もちろんでさ。 五段目だけ。
あたしも ここで腹ごしらえして➡
74
00:06:22,203 --> 00:06:24,238
五段目から。
じゃ せいろ三枚だな?
75
00:06:24,238 --> 00:06:28,075
セリフは たった ひと言。
おまけに すぐに死んじまう。
76
00:06:28,075 --> 00:06:33,647
そんな ちょい役の男のために
「忠臣蔵」を見に行くたぁ~➡
77
00:06:33,647 --> 00:06:36,150
あ オツだねえ。
78
00:06:36,150 --> 00:06:38,085
よっ!
よよっ!
79
00:06:38,085 --> 00:06:40,654
せいろ 三枚~!
80
00:06:40,654 --> 00:06:43,490
≪(店員)は~い!
(騒ぐ声)
81
00:06:43,490 --> 00:06:46,990
始まったみてえだな。
82
00:06:52,499 --> 00:06:55,169
鵜蔵さん 一体 何の騒ぎです?
83
00:06:55,169 --> 00:06:59,006
中村座に 中蔵の名題看板が上がるそうだ。
84
00:06:59,006 --> 00:07:01,909
ええっ 斧 定九郎
たった一役だっていうのに?
ああ。
85
00:07:01,909 --> 00:07:05,346
全く 大した男だねえ。
86
00:07:05,346 --> 00:07:08,015
上がれ~!
上がれ 上がれ~!
87
00:07:08,015 --> 00:07:11,819
今や 名題の看板 中村仲蔵➡
88
00:07:11,819 --> 00:07:15,689
前代未聞の大出世。
大出世。
89
00:07:15,689 --> 00:07:21,195
≪かねてより 所作ごと優美に秀でたる。
≪実悪にても 日の出の勢い。
90
00:07:21,195 --> 00:07:24,832
≪その仲蔵
こたびは 斧 定九郎を演ずれば…。
91
00:07:24,832 --> 00:07:28,369
演ずれば…。
もはや 山賊ではない。
92
00:07:28,369 --> 00:07:32,669
(傳九郎)えれえ騒ぎだな。
93
00:07:34,775 --> 00:07:41,548
ありゃ ほとんど おめえ見に来た客だぜ。
よしてくだせえ…。
94
00:07:41,548 --> 00:07:46,548
若太夫 そろそろ四段目が始まります。
おう。
95
00:07:50,991 --> 00:07:54,662
中さんも 支度を始めてくれ。
はいよ。
96
00:07:54,662 --> 00:08:21,462
♬~
97
00:08:23,357 --> 00:08:26,026
まずは この物語の主人公➡
98
00:08:26,026 --> 00:08:29,830
中村仲蔵という男の出生の秘密から➡
99
00:08:29,830 --> 00:08:33,133
お話しすることにいたしましょう。
100
00:08:33,133 --> 00:08:40,474
中村仲蔵 幼名を万蔵と申す
男の子が生まれたのは 元文元年。
101
00:08:40,474 --> 00:08:44,645
父親は 斎藤なにがしという
浪人だという話ですが➡
102
00:08:44,645 --> 00:08:47,648
定かではございません。
103
00:08:47,648 --> 00:08:50,517
ところが 暮らしに窮した この浪人➡
104
00:08:50,517 --> 00:08:55,656
万蔵を 町名主に託して
姿を消してしまいます。
105
00:08:55,656 --> 00:09:00,527
町名主は 八方手を尽くして
子供のおらぬ夫婦を探し出し➡
106
00:09:00,527 --> 00:09:06,000
めでたく 養子縁組する運びに
相なりました。
107
00:09:06,000 --> 00:09:11,805
この夫婦というのが どちらも
芝居町で暮らしを立てる芸人同士。
108
00:09:11,805 --> 00:09:16,643
養父は その美声で
唄は中山と もてはやされた➡
109
00:09:16,643 --> 00:09:21,015
長唄の唄方 中山小十郎。
110
00:09:21,015 --> 00:09:24,518
養母も
これまた希代の踊り手といわれた➡
111
00:09:24,518 --> 00:09:29,018
志賀山流の師範 志賀山お俊。
112
00:09:31,759 --> 00:09:35,629
歌舞伎と縁の深い この2人の
養子となったことが➡
113
00:09:35,629 --> 00:09:40,768
万蔵少年の運命を
大きく変えることになります。
114
00:09:40,768 --> 00:09:44,638
〽 いやーはっはっ いやーはっはっ
115
00:09:44,638 --> 00:09:48,308
〽 いよー よっ よっ よっ
116
00:09:48,308 --> 00:09:52,646
〽 いよー いよー いやー
117
00:09:52,646 --> 00:09:57,317
〽 おおさえ おさえ
118
00:09:57,317 --> 00:10:00,654
万蔵に 舞の才があると見たお俊は➡
119
00:10:00,654 --> 00:10:05,159
志賀山流の踊りを 徹底的に叩き込んだ。
120
00:10:05,159 --> 00:10:09,329
このお俊さん
日頃は優しいおっかさんだが➡
121
00:10:09,329 --> 00:10:15,202
殊 踊りとなると 鬼に変わるという
怖~い女。
122
00:10:15,202 --> 00:10:22,042
〽 思ふ
123
00:10:22,042 --> 00:10:28,182
〽 いよー いよー いよー
124
00:10:28,182 --> 00:10:37,691
〽 にせ紫も なかなかに
125
00:10:37,691 --> 00:10:45,432
志賀山流というのは 当時の歌舞伎界で
最も名の知られた踊りの流派。
126
00:10:45,432 --> 00:10:49,703
中でも お俊は
その才能をうたわれた踊り手ですから➡
127
00:10:49,703 --> 00:10:55,843
跡継ぎになる万蔵には
とりわけ厳しく指南した。
128
00:10:55,843 --> 00:10:59,213
さす手 引く足が僅かでも違うと➡
129
00:10:59,213 --> 00:11:04,852
ビシビシ 愛の鞭が容赦なく飛んでくる。
130
00:11:04,852 --> 00:11:06,920
ちょいと お待ち!
131
00:11:06,920 --> 00:11:10,557
指先まで 気持ち込めるの。 もういっぺん。
はい!
132
00:11:10,557 --> 00:11:12,860
「いけぬ汀」。
よ~い…。
133
00:11:12,860 --> 00:11:21,401
〽 いけぬ汀の石亀や
134
00:11:21,401 --> 00:11:24,304
〽 ほんに鵜の
135
00:11:24,304 --> 00:11:29,143
かたい! もっと丸く踊れって
言ってんだろう。 もういっぺん!
136
00:11:29,143 --> 00:11:31,678
何度…。
137
00:11:31,678 --> 00:11:36,183
あまりの稽古の厳しさに
逃げ出すことも しばしばだった万蔵。
138
00:11:36,183 --> 00:11:39,520
駆け込む先は
孫のように かわいがってくれる➡
139
00:11:39,520 --> 00:11:42,022
中村座の座元夫婦のところ。
140
00:11:42,022 --> 00:11:45,692
江戸三座の筆頭に挙げられる
中村座の座元は➡
141
00:11:45,692 --> 00:11:50,030
代々 中村勘三郎を名乗って
この時は 六代目。
142
00:11:50,030 --> 00:11:54,368
このじい様に 万蔵が甘えて直訴した。
143
00:11:54,368 --> 00:11:56,403
おいら 歌舞伎役者になりてえ。
144
00:11:56,403 --> 00:11:59,840
おっかさんの厳しい稽古から
逃れたい一心で➡
145
00:11:59,840 --> 00:12:01,909
そう口走っちまった万蔵。
146
00:12:01,909 --> 00:12:08,709
六代目 勘三郎じい様 それじゃあってんで
手っとり早く 自分の息子の弟子にした。
147
00:12:10,484 --> 00:12:13,420
師匠になったのは 座元の次男坊で➡
148
00:12:13,420 --> 00:12:19,059
間もなく 二代目 中村傳九郎を
継ぐことになる筋目の役者。
149
00:12:19,059 --> 00:12:22,863
これじゃあ お俊さんも
諦めるしかありません。
150
00:12:22,863 --> 00:12:29,069
坊よ 本当に役者になりてえか?
151
00:12:29,069 --> 00:12:33,340
役者の道は厳しいぜ?
なまはんかなことじゃ続かねえ。
152
00:12:33,340 --> 00:12:36,176
その覚悟はあるんだな?
153
00:12:36,176 --> 00:12:38,512
はい!
確かに聞いたぜ?
154
00:12:38,512 --> 00:12:41,014
子供といえど 男に 二言はなしだ。
155
00:12:41,014 --> 00:12:46,887
約を たがえた時は
師匠として 厳しい罰を与えるぜ。
156
00:12:46,887 --> 00:12:49,189
はい!
フッ。
157
00:12:49,189 --> 00:12:56,530
おめえは 芝居小屋を遊び場として育った
芝居の申し子だ。
158
00:12:56,530 --> 00:13:01,401
中村座の「中」を取って…➡
159
00:13:01,401 --> 00:13:03,704
中蔵と名乗れ。
160
00:13:03,704 --> 00:13:10,504
今日から おめえは 中村中蔵だ。
161
00:13:12,212 --> 00:13:14,548
入門から およそ10年。
162
00:13:14,548 --> 00:13:17,248
おう 中坊!
あっ おはようございます。
163
00:13:19,720 --> 00:13:23,590
中蔵は
人気役者 中村傳九郎の弟子として➡
164
00:13:23,590 --> 00:13:30,390
江戸一番の芝居小屋 中村座で
役者修業に いそしんでおりました。
165
00:13:32,165 --> 00:13:34,668
おはようございます。
おはようございます。
166
00:13:34,668 --> 00:13:36,603
おはようございます。
167
00:13:36,603 --> 00:13:40,807
大物役者の弟子というのは
大名のお小姓みたいなもの。
168
00:13:40,807 --> 00:13:43,510
師匠に養われる内弟子だから➡
169
00:13:43,510 --> 00:13:49,310
座元から給金をもらう一人前の役者よりは
身分が下になります。
170
00:13:51,818 --> 00:13:55,689
要するに 役者見習いの半人前ですが➡
171
00:13:55,689 --> 00:13:59,693
一本立ちの時に 師匠の引き立てで
いい役をもらったり➡
172
00:13:59,693 --> 00:14:05,193
そこそこの名跡を継がせてもらったり
という利点はある。
173
00:14:08,402 --> 00:14:10,537
この中村座には➡
174
00:14:10,537 --> 00:14:16,337
70人を ちょいと超える役者と
300人近い裏方がおります。
175
00:14:18,045 --> 00:14:21,848
ここいらで
歌舞伎役者の厳しい身分制度を➡
176
00:14:21,848 --> 00:14:24,751
ご紹介しておきましょう。
177
00:14:24,751 --> 00:14:32,159
一番身分が低いのが 1階の大部屋にいる
通称 稲荷町と呼ばれる役者たち。
178
00:14:32,159 --> 00:14:36,997
名前の由来は 楽屋口に祭ってある
お稲荷さんの神棚。
179
00:14:36,997 --> 00:14:40,867
大概 その向かい側に大部屋があった。
180
00:14:40,867 --> 00:14:43,770
で そこにいる下っ端役者のことも➡
181
00:14:43,770 --> 00:14:48,175
十把一からげで
稲荷町と呼ばれるようになったとか。
182
00:14:48,175 --> 00:14:53,513
上の階にいる役者連中からは
お下なんて見下されております。
183
00:14:53,513 --> 00:15:00,287
あてがわれる役は セリフのねえ通行人や
捕り方みてえな その他大勢。
184
00:15:00,287 --> 00:15:05,125
駕籠かき 中間 馬の足。
185
00:15:05,125 --> 00:15:11,832
その上 掃除に洗濯 裏方の手伝いまで
させられるってんだから 容赦がねえ。
186
00:15:11,832 --> 00:15:15,702
給金は 年7両。 安い!
187
00:15:15,702 --> 00:15:23,210
大工が普通に働いて年25両ってとこだから
所帯も持てません。
188
00:15:23,210 --> 00:15:26,113
階段を トント~ンと上りますと➡
189
00:15:26,113 --> 00:15:34,788
1つ上は 女形のお姐さん方専用の
中二階と申します楽屋。
190
00:15:34,788 --> 00:15:39,626
更に上がって3階にあたる部分が
本二階と呼ばれる場所。
191
00:15:39,626 --> 00:15:45,999
男役 つまり 立役の楽屋や
稽古場がございます。
192
00:15:45,999 --> 00:15:49,503
壁際に 鏡を並べている連中は➡
193
00:15:49,503 --> 00:15:52,406
中通りと呼ばれる ちょい役の役者たち。
194
00:15:52,406 --> 00:15:56,676
稲荷町との違いは
少ないが セリフがあるってこと。
195
00:15:56,676 --> 00:15:59,179
給金は 年30両ほどで➡
196
00:15:59,179 --> 00:16:04,985
稲荷町から はい上がってきた
苦労人も多い。
197
00:16:04,985 --> 00:16:07,888
こちらは その1つ上の位➡
198
00:16:07,888 --> 00:16:11,358
相中と呼ばれる中堅の役者たち。
199
00:16:11,358 --> 00:16:13,693
筋目の役者の親類縁者や➡
200
00:16:13,693 --> 00:16:17,197
一門の中から 芝居巧者の弟子が選ばれる。
201
00:16:17,197 --> 00:16:23,703
相中ともなれば 給金も 年百両は堅い。
202
00:16:23,703 --> 00:16:25,639
おはようございます。
おはようございます。
203
00:16:25,639 --> 00:16:27,707
(一同)おはようございます。
(助五郎)おはよう。
204
00:16:27,707 --> 00:16:33,313
のれんをくぐった この広めの場所を
ついたてで仕切って楽屋にしているのは➡
205
00:16:33,313 --> 00:16:35,348
名題と呼ばれる役者たち。
206
00:16:35,348 --> 00:16:41,054
演目にもよりますが 一つの芝居に
3~4人の名題役者が名を連ね➡
207
00:16:41,054 --> 00:16:45,325
それを目当てに見物客が集まる。
208
00:16:45,325 --> 00:16:50,497
つまり 人気と実力を兼ね備えた
役者じゃなきゃいけません。
209
00:16:50,497 --> 00:16:55,802
給金も
年に3百~4百両は持っていきます。
210
00:16:55,802 --> 00:17:01,341
芝居小屋の表には
演目が変わるごとに 人気役者の絵姿や➡
211
00:17:01,341 --> 00:17:03,376
名題看板が上がりますが➡
212
00:17:03,376 --> 00:17:05,512
そういう看板役者自体も➡
213
00:17:05,512 --> 00:17:08,815
名題と呼ぶようになりました。
214
00:17:08,815 --> 00:17:11,518
おい 中坊。
へい。
215
00:17:11,518 --> 00:17:16,356
俺の楽屋は こんなに広くなくていい。
仕切りを もそっと こっちに寄せな。
216
00:17:16,356 --> 00:17:20,026
あ~ ありがとうございます。
ですが うちも これで十分で。
217
00:17:20,026 --> 00:17:23,363
いや~ 中村座の若太夫が
それじゃいけねえ。
218
00:17:23,363 --> 00:17:27,234
しかも 今度は
大星由良之助をやりなさるんだ。
219
00:17:27,234 --> 00:17:29,703
ほれ ずずいと。
220
00:17:29,703 --> 00:17:33,306
では お言葉に甘えまして。
うん。
221
00:17:33,306 --> 00:17:36,142
すみません。 よっ!
おう。
222
00:17:36,142 --> 00:17:40,013
名題役者の中にも
格というものがあります。
223
00:17:40,013 --> 00:17:49,689
主役や準主役 一門の本家筋にあたる
役者には気を遣うのが この世界の礼儀。
224
00:17:49,689 --> 00:17:51,689
≪(階段を駆け上がる音)
225
00:17:54,494 --> 00:17:57,797
あっ すまねえ 兄さん!
傳蔵 ここんとこ緩んでるぜ。
226
00:17:57,797 --> 00:17:59,733
ああ 面目ねえ。
227
00:17:59,733 --> 00:18:03,336
若太夫が 江戸橋 渡るのを
追い抜いてきた。
そうかい。
228
00:18:03,336 --> 00:18:07,173
ばか野郎… すぐそこじゃねえか!
229
00:18:07,173 --> 00:18:12,012
中蔵の師匠 傳九郎は
中村座の次の座元になる予定の若太夫。
230
00:18:12,012 --> 00:18:15,815
血筋に加え 芸歴も人気も申し分ない。
231
00:18:15,815 --> 00:18:20,186
こういう役者を 立者と呼んで
別格扱いしました。
232
00:18:20,186 --> 00:18:22,222
(一同)おはようございます。
おう。
233
00:18:22,222 --> 00:18:25,825
給金も別格の年5百両!
234
00:18:25,825 --> 00:18:27,761
てっ!
235
00:18:27,761 --> 00:18:30,664
よく寝たようだな?
236
00:18:30,664 --> 00:18:35,502
歌舞伎の名門に生まれ かつ才に恵まれ➡
237
00:18:35,502 --> 00:18:40,640
厳しい稽古に耐え抜いて人気を勝ち取った
一握りの歌舞伎役者。
238
00:18:40,640 --> 00:18:44,144
それが 名題の立者。
239
00:18:44,144 --> 00:18:46,079
おはようございます。
おう。
240
00:18:46,079 --> 00:18:48,879
おはようございます。
おはようございます。
241
00:18:50,917 --> 00:18:54,487
「妻を捨て子に別れ…」。
242
00:18:54,487 --> 00:18:59,659
おう お俊さんの具合 どうだ?
243
00:18:59,659 --> 00:19:06,533
へい。 寝たり起きたりで
もう随分 稽古場にも立っておりません。
244
00:19:06,533 --> 00:19:12,005
美声で鳴らした親父殿も
喉潰して隠居しちまったし➡
245
00:19:12,005 --> 00:19:16,205
稼ぎ手のおめえに実入りがねえと
食ってけねえか。
246
00:19:17,811 --> 00:19:23,350
そろそろ 前髪落として
一本立ちしてみるか?
247
00:19:23,350 --> 00:19:25,285
お許しいただけるので?
248
00:19:25,285 --> 00:19:27,220
喜ぶのは まだ早え。
249
00:19:27,220 --> 00:19:31,458
筋目じゃねえ おめえは
年7両の稲荷町から始めなきゃなんねえ。
250
00:19:31,458 --> 00:19:34,127
それが しきたりだ。
そりゃもう…。
251
00:19:34,127 --> 00:19:38,999
おめえは 踊りはもちろん
諸芸も手堅く身につけてる。
252
00:19:38,999 --> 00:19:44,838
精進すりゃあ…
3年ほどで 中通りに引き上げてやるぜ。
253
00:19:44,838 --> 00:19:47,474
3年…。
254
00:19:47,474 --> 00:19:51,311
そりゃそうと…➡
255
00:19:51,311 --> 00:19:55,482
初日がはねたあと
俺と一緒に和泉屋に来な。
256
00:19:55,482 --> 00:19:59,786
ひいき筋の桝屋さんが
おめえを呼べと言ってなさる。
257
00:19:59,786 --> 00:20:02,489
へい…。
258
00:20:02,489 --> 00:20:07,994
若太夫 座頭が入られました。
おっ そうかい。
259
00:20:07,994 --> 00:20:10,030
御三家よりは将軍家➡
260
00:20:10,030 --> 00:20:13,500
将軍家よりは京の帝ってな具合に➡
261
00:20:13,500 --> 00:20:16,536
世の中 上には上がおります。
おはようございます。
262
00:20:16,536 --> 00:20:20,006
名題の立者を超える役者のてっぺん➡
263
00:20:20,006 --> 00:20:23,810
それが 大立者。
264
00:20:23,810 --> 00:20:26,713
何しろ 大立者ですから➡
265
00:20:26,713 --> 00:20:30,517
全ての役者を束ねる
座頭を務めることが多い。
266
00:20:30,517 --> 00:20:36,322
座頭が誰かで
見物の入りも大きく違ってきます。
267
00:20:36,322 --> 00:20:38,825
この幸四郎さんくらいになると➡
268
00:20:38,825 --> 00:20:43,530
給金も破格の年千両。
いよっ 千両役者!
269
00:20:43,530 --> 00:20:48,201
親方 この度は初めての大星役を
仰せつかりまして➡
270
00:20:48,201 --> 00:20:50,236
身の引き締まる思いでございます。
271
00:20:50,236 --> 00:20:54,541
柏屋さんの由良之助が
どうしても見たくてねえ。
272
00:20:54,541 --> 00:20:58,044
あんた 分別のある役が似合う。
273
00:20:58,044 --> 00:21:02,849
実事なら 私なんかより上だ。
め… めっそうもない!
274
00:21:02,849 --> 00:21:09,222
(小声で)私は 根が腹黒いせいか
実悪の方が性に合ってんだよ。
275
00:21:09,222 --> 00:21:11,558
ご冗談を。
276
00:21:11,558 --> 00:21:14,594
よろしく… 頼みますよ。
277
00:21:14,594 --> 00:21:19,432
お心にかないますよう
務めさせていただきます。
278
00:21:19,432 --> 00:21:24,571
千両役者を 仕切り壁の楽屋に
入れるわけにはいかねえってんで➡
279
00:21:24,571 --> 00:21:29,242
一番奥の1人部屋に お入りいただきます。
280
00:21:29,242 --> 00:21:37,517
♬~
281
00:21:37,517 --> 00:21:42,217
≪おっかさん。
ああ…。
282
00:21:44,190 --> 00:21:46,226
具合は どうだい?
283
00:21:46,226 --> 00:21:49,696
ああ 今日は随分と気分もいい。
284
00:21:49,696 --> 00:21:53,396
起こしとくれ。
ちょっと待っとくれ。
285
00:21:57,036 --> 00:22:00,073
はあ~。
286
00:22:00,073 --> 00:22:06,713
この分なら… 月が変われば
また稽古場に立てる。
287
00:22:06,713 --> 00:22:10,049
お弟子さんの稽古は 俺が見るから。
288
00:22:10,049 --> 00:22:13,853
お前は 傳九郎様の
お身回りの務めがあるだろう?
289
00:22:13,853 --> 00:22:17,724
近頃は 弟弟子も増えて
少し楽になった。
290
00:22:17,724 --> 00:22:21,724
心配いらないよ。
そうかい。
291
00:22:29,435 --> 00:22:32,235
おとっつぁん。
292
00:22:34,808 --> 00:22:38,608
行ってまいります。
うん。
293
00:22:41,347 --> 00:22:47,821
酒は… ほどほどにね。
ああ。
294
00:22:47,821 --> 00:23:09,542
♬~
295
00:23:09,542 --> 00:23:11,477
いーよっ。
296
00:23:11,477 --> 00:23:23,556
(仲居たち)
〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ
297
00:23:23,556 --> 00:23:29,229
「とらまえて 酒呑ましょ」。
298
00:23:29,229 --> 00:23:34,000
(仲居たち)「こちらでございます」。
299
00:23:34,000 --> 00:23:36,336
〽
300
00:23:36,336 --> 00:23:48,514
(仲居たち)
〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ
301
00:23:48,514 --> 00:23:55,021
「とらまえて 酒呑ましょ」。
302
00:23:55,021 --> 00:24:01,321
〽
303
00:24:06,532 --> 00:24:08,468
(喜三郎)中坊。
304
00:24:08,468 --> 00:24:13,039
ああ。 杵屋のおじさん。
305
00:24:13,039 --> 00:24:17,377
小十郎のあんばいは どうだい?
306
00:24:17,377 --> 00:24:21,214
それが…。
307
00:24:21,214 --> 00:24:26,085
隠居してからこっち
もう抜け殻みてえな様子で➡
308
00:24:26,085 --> 00:24:28,388
医者に止められてる酒の量も➡
309
00:24:28,388 --> 00:24:32,158
減らねえありさまで。
そうかい…。
310
00:24:32,158 --> 00:24:35,061
あいつは 30年来の相方だ。
311
00:24:35,061 --> 00:24:39,666
近えうち 一度 見舞いに行くよ。
312
00:24:39,666 --> 00:24:42,335
これ お岸 こっち来な。
313
00:24:42,335 --> 00:24:44,804
(お岸)はい。
314
00:24:44,804 --> 00:24:47,674
あ… あのお岸ちゃんかい?
315
00:24:47,674 --> 00:24:52,345
はい。 小さい時分
よく遊んでいただきました。
316
00:24:52,345 --> 00:24:54,814
見違えたろう?
へい。
317
00:24:54,814 --> 00:24:57,717
三味線の腕も 随分と上がってな。
318
00:24:57,717 --> 00:25:03,022
男なら
喜三郎の名を継がせてえところだが…。
319
00:25:03,022 --> 00:25:08,361
(錦次)もし 柏屋さんの…。
320
00:25:08,361 --> 00:25:14,233
詳しい話は 近えうち。
小十郎に よろしく言ってくんな。
321
00:25:14,233 --> 00:25:16,433
へい。
322
00:25:20,073 --> 00:25:25,545
随分と昔に 親同士で決めた話だが➡
323
00:25:25,545 --> 00:25:30,984
おめえさえよけりゃ
中蔵の嫁にならねえか?
324
00:25:30,984 --> 00:25:35,321
どうだ? 嫌かい?
325
00:25:35,321 --> 00:25:39,158
私の方は 何も…。
326
00:25:39,158 --> 00:25:44,664
瀬川菊之丞の門人で 瀬川錦次と申します。
327
00:25:44,664 --> 00:25:47,667
中蔵でございます。
何でございましょう?
328
00:25:47,667 --> 00:25:51,337
フフッ そんな かたい物言いは
よしてくださいな。
329
00:25:51,337 --> 00:25:54,173
年は そんなに違わないはずですよ。
330
00:25:54,173 --> 00:25:58,011
でも お前様は確か
中通りでいらっしゃる。
331
00:25:58,011 --> 00:26:06,811
女形は数も少ないから 立役の皆様より
ちょいとばかり 出世が早いだけですよ。
332
00:26:10,023 --> 00:26:15,528
菊之丞の色子だから
引き立てられただけさ。
333
00:26:15,528 --> 00:26:17,528
あ…。
334
00:26:21,834 --> 00:26:27,034
まさか あいつら
できてんじゃねえだろうな…。
335
00:26:29,575 --> 00:26:33,780
中蔵さんは
志賀山流の跡取りって聞いてます。
336
00:26:33,780 --> 00:26:36,149
あっ いや~ うちは分家みたいなもんで➡
337
00:26:36,149 --> 00:26:39,786
志賀山流二代目は
ここの振り付け師の万作です。
338
00:26:39,786 --> 00:26:42,155
分家でも本家でも 構いやしない。
339
00:26:42,155 --> 00:26:48,795
あんたが ひとかどの踊り手なのは
物腰を見てりゃ分かる。
340
00:26:48,795 --> 00:26:54,600
さっきの振りに もう一工夫したいんで
知恵を貸しておくんなさいな。
341
00:26:54,600 --> 00:26:59,539
知恵も何も 見事でした。
あれは 錦次さんの工夫で?
342
00:26:59,539 --> 00:27:06,813
ええ。 でも お茶屋のざれ言だから
もう少し 華やかな振りにしたいんです。
343
00:27:06,813 --> 00:27:11,684
是非にも 座頭の目に留まるような…。
344
00:27:11,684 --> 00:27:16,022
幸四郎親方の…。
345
00:27:16,022 --> 00:27:18,524
私は女形の弟子ですが➡
346
00:27:18,524 --> 00:27:23,696
ゆくゆくは 立役になりたいと思っている。
347
00:27:23,696 --> 00:27:30,203
そのためなら
破門されたって構いやしない。
348
00:27:30,203 --> 00:27:38,778
私は 松本幸四郎って役者に
心酔していますのさ。
349
00:27:38,778 --> 00:27:43,778
この機会を逃したくねえ。
350
00:27:45,551 --> 00:27:47,551
お師さん。
351
00:27:49,322 --> 00:27:51,991
お呼びですかな?
あいすみませんが➡
352
00:27:51,991 --> 00:27:56,329
もう一度 女形だけで
頭から さらっておきたいんです。
353
00:27:56,329 --> 00:27:58,664
ようござんす。
354
00:27:58,664 --> 00:28:03,169
由良之助は…➡
355
00:28:03,169 --> 00:28:06,005
中蔵さんがやってくださる。
356
00:28:06,005 --> 00:28:07,940
えっ?
357
00:28:07,940 --> 00:28:09,876
いーよっ。
358
00:28:09,876 --> 00:28:15,681
(仲居たち)〽 由良鬼ゃ まだァえ
359
00:28:15,681 --> 00:28:22,188
(仲居たち)〽 手の鳴る方へ
360
00:28:22,188 --> 00:28:28,528
「とらまえて 酒呑ましょ」。
361
00:28:28,528 --> 00:28:35,334
(仲居たち)「こちらでございます」。
362
00:28:35,334 --> 00:28:41,107
(仲居たち)〽 由良鬼ゃ まだァえ
363
00:28:41,107 --> 00:28:46,913
(仲居たち)〽 手の鳴る方へ
364
00:28:46,913 --> 00:28:53,986
「とらまえて 酒呑ましょ」。
365
00:28:53,986 --> 00:29:04,330
(仲居たち)
〽 由良鬼ゃ まだァえ 手の鳴る方へ
366
00:29:04,330 --> 00:29:06,265
(仲居たち)「ひゃあ~」。
367
00:29:06,265 --> 00:29:13,005
「とらまえて 酒呑ましょ」。
368
00:29:13,005 --> 00:29:18,705
〽
369
00:29:21,714 --> 00:29:25,351
「師直 この年になって➡
370
00:29:25,351 --> 00:29:31,157
鮒が裃をつけて登城するを➡
371
00:29:31,157 --> 00:29:34,060
初めて見た。➡
372
00:29:34,060 --> 00:29:39,865
ハッハ これは おかしい。➡
373
00:29:39,865 --> 00:29:46,305
判官は 鮒に似てまいられた。➡
374
00:29:46,305 --> 00:29:55,314
鮒ェー 鮒ェー➡
375
00:29:55,314 --> 00:29:58,351
鮒だ 鮒だ➡
376
00:29:58,351 --> 00:30:05,024
鮒侍だ。 ハッハッハッハ…」。
377
00:30:05,024 --> 00:30:07,793
[ 回想 ]
(錦次)私は女形の弟子ですが➡
378
00:30:07,793 --> 00:30:12,498
ゆくゆくは
立役になりたいと思っている。➡
379
00:30:12,498 --> 00:30:16,669
そのためなら
破門されたって構いやしない。
380
00:30:16,669 --> 00:30:23,009
(判官)「本性なれば」。
381
00:30:23,009 --> 00:30:29,782
[ 心の声 ]
俺には そこまでの覚悟があるか?
382
00:30:29,782 --> 00:30:31,717
(師直)「殿中だ」。
383
00:30:31,717 --> 00:30:35,021
〽 いよー
384
00:30:35,021 --> 00:30:40,359
「殿中だ。 殿中だぞ。➡
385
00:30:40,359 --> 00:30:42,828
殿中で 鯉口三寸くつろげば➡
386
00:30:42,828 --> 00:30:47,700
お家は断絶
その身は切腹だぞ。➡
387
00:30:47,700 --> 00:30:52,204
お手前 それを… ご承知か?」。
388
00:30:52,204 --> 00:30:54,707
高麗屋!
高麗屋!
389
00:30:54,707 --> 00:31:00,379
♬~(三味線)
390
00:31:00,379 --> 00:31:04,050
(吉川)初めての大星とは思えぬ
さすがの出来栄え。
391
00:31:04,050 --> 00:31:10,389
(傳九郎)いや お恥ずかしい限りで。
これも 幸四郎親方のおかげで。
392
00:31:10,389 --> 00:31:14,060
(吉川)初日から上々の滑り出し。
また寄らせてもらいますよ。
393
00:31:14,060 --> 00:31:17,760
(傳九郎)ええ 精進させていただきます。
394
00:31:23,069 --> 00:31:27,239
中蔵… 中蔵!
395
00:31:27,239 --> 00:31:32,078
おい 中蔵! アハハハッ…。
へい。
396
00:31:32,078 --> 00:31:38,517
吉川様が 御酒を下さるってんだ。
ボ~ッとしてねえで 早くお受けしろよ。
397
00:31:38,517 --> 00:31:40,517
はっ。
398
00:31:55,935 --> 00:31:58,635
頂戴いたします。
399
00:32:09,482 --> 00:32:14,720
中蔵 何か ひとさし踊ってくれまいか?
400
00:32:14,720 --> 00:32:50,823
〽 千歳を結ぶ松山に
401
00:32:50,823 --> 00:33:08,207
〽 逢いたや見たや
402
00:33:08,207 --> 00:33:12,378
(吉川)中蔵の踊りは 品があっていい。
403
00:33:12,378 --> 00:33:15,414
あれは ただの町育ちじゃないんだろう?
404
00:33:15,414 --> 00:33:19,251
唄方と踊りの師匠夫婦にもらわれた
みなしごで➡
405
00:33:19,251 --> 00:33:24,857
実の父親は… 斎藤様とかいう➡
406
00:33:24,857 --> 00:33:26,926
お武家様だと聞いております。
407
00:33:26,926 --> 00:33:31,997
そうだろう。 是非もなく
役者風情に身を落としているのが➡
408
00:33:31,997 --> 00:33:35,334
ふびんになってくる。
409
00:33:35,334 --> 00:33:40,673
おや… あっ 気を悪くしたなら謝るよ。
許しておくれ。
410
00:33:40,673 --> 00:33:46,011
ああ いえいえ。
手前どもは 所詮 人外の身。
411
00:33:46,011 --> 00:33:50,182
派手な振る舞いは
人気商売ゆえとおぼし召し➡
412
00:33:50,182 --> 00:33:53,085
どうか ご容赦を。
413
00:33:53,085 --> 00:33:58,785
ざれ言 ざれ言。
ハハハハ ハハハハ…。
414
00:34:01,527 --> 00:34:05,030
ひいき筋とはいえ 虫ずが走るぜ。
415
00:34:05,030 --> 00:34:08,067
お上に金貸して
名字帯刀を許されてるらしいが➡
416
00:34:08,067 --> 00:34:11,804
商人のくせに お大身の旗本気取りだ。
417
00:34:11,804 --> 00:34:17,042
おめえは残って やつの酌でもしろ。
私一人で?
418
00:34:17,042 --> 00:34:23,042
芸で食えねえうちは
ひいき筋の世話になるのも方便だ。
419
00:34:24,917 --> 00:34:30,217
多少のことは… 我慢しろ。 ん?
420
00:34:32,491 --> 00:34:34,426
あっ…。
421
00:34:34,426 --> 00:34:44,003
♬~
422
00:34:44,003 --> 00:34:47,303
吉川様?
423
00:34:49,341 --> 00:34:52,641
厠にでも行かれたか…。
424
00:34:58,017 --> 00:35:00,517
(障子の閉まる音)
425
00:35:06,525 --> 00:35:09,028
帯を解いて くつろいだらどうだい?
426
00:35:09,028 --> 00:35:11,697
あっ… わ… 私は これにて。
427
00:35:11,697 --> 00:35:17,369
私も 日本橋桝屋の主だ。
一晩限りなんて ケチなことは言わない。
428
00:35:17,369 --> 00:35:21,707
お前さえよければ
後ろ盾にもなってやろう。
429
00:35:21,707 --> 00:35:24,376
あっ な… 何のことやら 私には…。
430
00:35:24,376 --> 00:35:28,247
傳九郎も承知のことさ。
若太夫が!?
431
00:35:28,247 --> 00:35:36,322
聞くところによれば 両親とも病がちで
手元不如意だそうじゃないか。
432
00:35:36,322 --> 00:35:39,658
それじゃあ 芸にも身が入らない。
433
00:35:39,658 --> 00:35:45,998
私はね こういうことばかりが
目当てじゃないんだ。
434
00:35:45,998 --> 00:35:49,335
お前の濁りのない芸➡
435
00:35:49,335 --> 00:35:54,006
湧き水のような
すがすがしい踊りが好きなのさ。
436
00:35:54,006 --> 00:35:59,345
それが 金の苦労で薄汚れるのなんて
見たくない。
437
00:35:59,345 --> 00:36:02,247
あっ!
お前の師匠にも話してないが➡
438
00:36:02,247 --> 00:36:06,218
できれば 役者稼業から身を引かせたい。
439
00:36:06,218 --> 00:36:08,354
そ… それは!
440
00:36:08,354 --> 00:36:10,289
あっ あっ… ああ~っ!
441
00:36:10,289 --> 00:36:13,692
私の手元で芸を磨いて
志賀山流を世に広めるんだ。
442
00:36:13,692 --> 00:36:18,530
お前の親たちも
まとめて面倒見てやろうじゃないか。
443
00:36:18,530 --> 00:36:21,367
あっ あっ… ああ~!
444
00:36:21,367 --> 00:36:32,367
≪あっ! あああっ!
あっ あっ あっ あっ あ~っ!
445
00:37:04,677 --> 00:37:07,977
(小十郎)ううっ うっ…。
446
00:37:16,689 --> 00:37:21,560
おとっつぁん? おとっつぁん!
447
00:37:21,560 --> 00:37:25,698
おお… おとっつぁん!
448
00:37:25,698 --> 00:37:28,600
お… おとっつぁん!
449
00:37:28,600 --> 00:37:30,969
い… 医者! 医者 呼んでくるから➡
450
00:37:30,969 --> 00:37:33,639
動いちゃいけねえよ! いいかい!?
451
00:37:33,639 --> 00:37:42,314
♬~
452
00:37:42,314 --> 00:37:47,986
≪(医者)少し落ち着いた。
しばらくは大丈夫だ。
453
00:37:47,986 --> 00:37:50,322
≪(お俊)ありがとうございました。
454
00:37:50,322 --> 00:37:55,994
≪(医者)前にも言ったが
胃の腑が 酒で ひどく荒れている。➡
455
00:37:55,994 --> 00:38:01,667
こうなった以上は 酒断ちだ。 いいね?
456
00:38:01,667 --> 00:38:03,967
はい。
457
00:38:05,537 --> 00:38:08,340
よいお薬がありましょうか?
458
00:38:08,340 --> 00:38:12,811
(医者)今 のませている薬湯じゃ
効き目が薄い。
459
00:38:12,811 --> 00:38:19,017
独参湯でも のませたいところだか…
かなり値が張る。
460
00:38:19,017 --> 00:38:22,354
独参湯…。
461
00:38:22,354 --> 00:38:28,227
歌舞伎の世界じゃ 「忠臣蔵」のことを
「芝居の独参湯」というらしいね。➡
462
00:38:28,227 --> 00:38:31,630
「忠臣蔵」をやれば 必ず当たる。➡
463
00:38:31,630 --> 00:38:37,970
潰れかかった芝居小屋も生き返らせる
妙薬に似たり… という意味だとか。
464
00:38:37,970 --> 00:38:39,905
(お俊)おっしゃるとおり。
465
00:38:39,905 --> 00:38:46,605
(医者)それほど…
病は進んでいるということだ。
466
00:38:53,519 --> 00:38:56,355
中坊 お疲れさん。
467
00:38:56,355 --> 00:38:59,855
お疲れさまでした。
お疲れさん。
468
00:39:06,665 --> 00:39:11,003
[ 回想 ]
(吉川)お前さえよければ
後ろ盾にもなってやろう。➡
469
00:39:11,003 --> 00:39:14,673
できれば 役者稼業から身を引かせたい。➡
470
00:39:14,673 --> 00:39:19,545
お前の親たちも
まとめて面倒見てやろうじゃないか。
471
00:39:19,545 --> 00:39:53,512
♬~
472
00:39:53,512 --> 00:39:56,982
[ 回想 ]
(師直)「殿中で 鯉口三寸くつろげば➡
473
00:39:56,982 --> 00:40:00,786
お家は断絶 その身は切腹だぞ。➡
474
00:40:00,786 --> 00:40:05,986
お手前 それを… ご承知か?」。
475
00:40:09,995 --> 00:40:13,795
「その手は何だ」。
476
00:40:17,669 --> 00:40:20,339
「この手は…」。
477
00:40:20,339 --> 00:40:22,839
「その手は!」。
478
00:40:28,213 --> 00:40:31,350
「この手は…!」。
479
00:40:31,350 --> 00:40:37,350
「その手は… 何だ!」。
480
00:40:39,691 --> 00:40:46,832
「この手をついて…➡
481
00:40:46,832 --> 00:40:53,038
お詫びつかまつる…!」。
482
00:40:53,038 --> 00:40:59,912
「判官は 詫びさっしゃるか➡
483
00:40:59,912 --> 00:41:06,051
泣かっしゃるか➡
484
00:41:06,051 --> 00:41:10,722
かわいそうに…➡
485
00:41:10,722 --> 00:41:14,593
おかわいそうに…」。
486
00:41:14,593 --> 00:41:20,893
「師直 待て~! ダ~ッ」。
487
00:41:35,047 --> 00:41:41,186
[ 心の声 ]
俺は…➡
488
00:41:41,186 --> 00:41:45,357
芝居が好きだ。
489
00:41:45,357 --> 00:41:56,368
(すすり泣き)
490
00:41:56,368 --> 00:42:03,241
や… やめたくねえ。
491
00:42:03,241 --> 00:42:07,941
や… やめたくねえよ。
492
00:42:13,218 --> 00:42:17,389
やめたくない…。
493
00:42:17,389 --> 00:42:26,589
♬~
494
00:42:30,802 --> 00:42:34,172
小十郎さんが 血ぃ吐いたのかい。
495
00:42:34,172 --> 00:42:36,508
はい。
496
00:42:36,508 --> 00:42:43,015
中 おめえ 俺のもとに何年いた?
497
00:42:43,015 --> 00:42:47,686
足かけ 10年です。
498
00:42:47,686 --> 00:42:52,557
薬代くれえ
俺の方で なんとか できたんだがなあ。
499
00:42:52,557 --> 00:42:55,027
これ以上は 若太夫に
ご迷惑はかけられ…。
何で➡
500
00:42:55,027 --> 00:42:56,962
誰より先に相談しなかったと
言ってんでえ!
501
00:42:56,962 --> 00:42:59,898
そう声を荒げるんじゃない。
吉川様➡
502
00:42:59,898 --> 00:43:04,369
芸の上の師弟は
親兄弟より 固え絆で結ばれておりやす。
503
00:43:04,369 --> 00:43:06,705
どうか お口出しは ご無用に。
504
00:43:06,705 --> 00:43:10,709
役者を引かせるのは 私のわがままだ。
中蔵に罪はないよ。
505
00:43:10,709 --> 00:43:17,215
いやいや 約定をたがえた罪はございやす。
506
00:43:17,215 --> 00:43:23,021
覚えてるか? 中蔵。
507
00:43:23,021 --> 00:43:24,956
はい。
508
00:43:24,956 --> 00:43:30,562
坊よ 本当に役者になりてえか?
509
00:43:30,562 --> 00:43:35,000
役者の道は厳しいぜ?
なまはんかなことじゃ続かねえ。
510
00:43:35,000 --> 00:43:38,503
その覚悟はあるんだな?
はい!
511
00:43:38,503 --> 00:43:45,677
約を たがえた時は
師匠として 厳しい罰を与えるぜ。
512
00:43:45,677 --> 00:43:52,184
約を たがえました以上は
厳しい罰を受ける覚悟です!
513
00:43:52,184 --> 00:43:54,684
そうかい。
514
00:43:56,521 --> 00:43:58,457
ああっ!
(吉川)よ… よさないか 傳九郎!➡
515
00:43:58,457 --> 00:44:01,026
大事な顔に傷がつく!
顔が命なのは➡
516
00:44:01,026 --> 00:44:02,961
役者のうちだけでございやしょう?
517
00:44:02,961 --> 00:44:09,201
今日から こいつは
芝居とは 縁もゆかりもねえ人間だ!
518
00:44:09,201 --> 00:44:13,038
[ 心の声 ]
破門… された。
519
00:44:13,038 --> 00:44:22,547
今より 私と中蔵は赤の他人。
どうぞ ご存分になされませ。
520
00:44:22,547 --> 00:44:37,062
♬~
521
00:44:37,062 --> 00:44:45,504
中蔵 今後 お前は
あたしの家に住むといい。
522
00:44:45,504 --> 00:44:48,704
手をお出し。
523
00:44:52,811 --> 00:44:56,681
これは 当座の支度金だ。
524
00:44:56,681 --> 00:45:02,821
百両ある。 これで よい薬を買っておやり。
525
00:45:02,821 --> 00:45:05,821
ありがとうございます。
526
00:45:07,526 --> 00:45:10,028
行くよ。
527
00:45:10,028 --> 00:45:27,045
♬~
528
00:45:27,045 --> 00:45:30,382
そこのお若えの。
529
00:45:30,382 --> 00:45:34,786
ど… どちら様で?
530
00:45:34,786 --> 00:45:39,586
ああ やっぱり 柏屋んとこの。
531
00:45:41,493 --> 00:45:44,329
こ… 幸四郎親方!
532
00:45:44,329 --> 00:45:48,500
中蔵と申します!
よせよせ。
ここは天下の往来だ。
533
00:45:48,500 --> 00:45:52,800
こっちへ入んな。
へえ…。
534
00:45:56,007 --> 00:45:58,510
師匠のお供かい?
535
00:45:58,510 --> 00:46:03,014
へえ…。
座頭も これから ごひいき筋と?
536
00:46:03,014 --> 00:46:09,788
いや 俺は舞台中には酒は飲まねえ。
それに 宴席が苦手でな。
537
00:46:09,788 --> 00:46:15,360
では…。
ここぁ 俺の実家だ。
538
00:46:15,360 --> 00:46:18,396
えっ?
生まれてすぐ➡
539
00:46:18,396 --> 00:46:21,833
先代の幸四郎んところに
養子に出されたのさ。
540
00:46:21,833 --> 00:46:24,736
あ~ 知りませんでした。
541
00:46:24,736 --> 00:46:29,708
おめえ 志賀山流の家の子だってな。
542
00:46:29,708 --> 00:46:33,144
「一力」のくだりで
所作事を取り入れたのは➡
543
00:46:33,144 --> 00:46:37,983
あれは いい考えだ。
グッと華が出たぜ。
544
00:46:37,983 --> 00:46:41,853
いや あれは錦次さんの工夫で
私は何も…。
545
00:46:41,853 --> 00:46:50,328
ともかく おめえさんほどの踊り上手を
この年まで内弟子のまま ほっとくたぁ➡
546
00:46:50,328 --> 00:46:54,828
傳九郎も のんきな師匠だぜ。
547
00:46:56,668 --> 00:46:59,170
どうしたい?
548
00:46:59,170 --> 00:47:08,346
いえ…。 実は この度 家の事情で➡
549
00:47:08,346 --> 00:47:12,183
芝居より引かせていただくことと
相なりました。
550
00:47:12,183 --> 00:47:15,883
そうなのか…。
551
00:47:17,822 --> 00:47:23,361
顔は役者の命だ。 大事にしな。
552
00:47:23,361 --> 00:47:32,470
俺が外を歩く時 頭巾で顔を隠すのは
この顔が売りもんだからさ。
553
00:47:32,470 --> 00:47:39,344
舞台以外では 簡単に顔をさらさねえ。
それが 役者の慎みってもんだ。
554
00:47:39,344 --> 00:47:44,182
私はもう… 役者ではございません。
555
00:47:44,182 --> 00:47:47,182
いつか また戻るさ。
556
00:47:49,788 --> 00:47:57,996
それまで この顔を大事にするんだな。
557
00:47:57,996 --> 00:48:16,996
♬~
558
00:48:19,184 --> 00:48:24,522
その1年後…。
559
00:48:24,522 --> 00:48:27,425
お前が… 女房を?
560
00:48:27,425 --> 00:48:31,296
みなしごの私を養い 育ててくれた養父➡
561
00:48:31,296 --> 00:48:35,096
中山小十郎たっての
願いでござりますれば。
562
00:48:36,768 --> 00:48:41,606
そう言われてもね…。
563
00:48:41,606 --> 00:48:46,511
父は… もう長くありません。
564
00:48:46,511 --> 00:48:49,011
何とぞ!
565
00:48:51,349 --> 00:48:56,049
どんな… どんな子なんだい?
566
00:48:57,789 --> 00:49:03,161
父の古い朋輩
杵屋喜三郎と申す三味線方の娘にて➡
567
00:49:03,161 --> 00:49:07,861
親同士が ひそかに約しおりましたる次第。
中蔵!
568
00:49:11,035 --> 00:49:14,339
あっ!
あたしはね➡
569
00:49:14,339 --> 00:49:21,639
お前のこと 我が子とも思って
慈しんできたつもりだよ。
570
00:49:23,681 --> 00:49:27,881
ご恩は 一生 忘れません。
571
00:49:32,390 --> 00:49:38,129
暇を… 暇を出そう。
572
00:49:38,129 --> 00:49:43,935
あっ… ありがとうございます!
573
00:49:43,935 --> 00:49:49,140
最後の… 親孝行ができます。
574
00:49:49,140 --> 00:49:53,011
親の養いぶちとして頂戴した
酒屋の株を お返しいたし➡
575
00:49:53,011 --> 00:49:55,914
支度金として頂戴した百両も必ず…!
576
00:49:55,914 --> 00:49:58,214
返さなくていい!
577
00:50:00,318 --> 00:50:06,018
これ以上 あたしに
恥かかさないでおくれ。
578
00:50:16,668 --> 00:50:25,368
苦しい家計を助けるため
ひいき筋のお大尽に囲われて1年余り…。
579
00:50:28,813 --> 00:50:35,520
中村中蔵 晴れて自由の身となりにけり。
580
00:50:35,520 --> 00:50:38,823
よいっとな! よい よーいっ!
581
00:50:38,823 --> 00:51:03,982
〽 ことぶきの鶴と亀との
582
00:51:03,982 --> 00:51:11,222
中蔵の女房になるお岸は
三味線方 七世 杵屋喜三郎の娘。
583
00:51:11,222 --> 00:51:14,559
父親譲りの三味の腕もさることながら➡
584
00:51:14,559 --> 00:51:19,063
唄や踊りもたしなむ芸達者。
585
00:51:19,063 --> 00:51:23,568
まさに 似合いの夫婦。
586
00:51:23,568 --> 00:51:31,376
〽
587
00:51:31,376 --> 00:51:36,814
どうか 末永く。
588
00:51:36,814 --> 00:51:40,514
お頼申します。
589
00:51:50,028 --> 00:51:52,931
じゃ。
ああ! そ… その前に。
590
00:51:52,931 --> 00:51:56,534
えっ ええっ?
聞いておきたいことが。
591
00:51:56,534 --> 00:51:59,837
何だい?
592
00:51:59,837 --> 00:52:05,137
役者をやめたのは 本心ですか?
593
00:52:09,514 --> 00:52:12,216
なぜ そんなことを聞く?
594
00:52:12,216 --> 00:52:16,554
楽屋のお稽古場で
久しぶりに お会いした時➡
595
00:52:16,554 --> 00:52:21,854
心底 芝居が好きなお人なんだって
思ったから。
596
00:52:24,295 --> 00:52:29,867
お岸。
はい。
597
00:52:29,867 --> 00:52:34,706
俺は みなしごだった。
598
00:52:34,706 --> 00:52:40,011
もらわれてきた時 痩せっぽっちの
年中 病気ばっかりしてる子で➡
599
00:52:40,011 --> 00:52:43,815
死にかけたことも
何度もあったらしい。
600
00:52:43,815 --> 00:52:49,621
その度に おとっつぁんは舞台のあと
妙見様に お百度を踏み➡
601
00:52:49,621 --> 00:52:53,558
おっかさん 稽古そっちのけで
俺に添い寝して➡
602
00:52:53,558 --> 00:52:58,830
一日中 体 さすってくれたそうだ。
603
00:52:58,830 --> 00:53:02,033
あの人たちが そう言ったんじゃねえ。
604
00:53:02,033 --> 00:53:08,533
みんな おめえの おとっつぁんが
教えてくれたことだ。
605
00:53:16,547 --> 00:53:23,421
芝居は好きだ。
死ぬほど好きだが…➡
606
00:53:23,421 --> 00:53:27,921
あの2人と引き換えになんかできねえ。
607
00:53:30,662 --> 00:53:34,999
よく分かりました。
608
00:53:34,999 --> 00:53:38,670
すっきりした。
609
00:53:38,670 --> 00:53:42,173
じゃ。
あっ!
610
00:53:42,173 --> 00:53:49,681
〽 つてどん
つりりんりん ひげ男 つてどん
611
00:53:49,681 --> 00:53:53,518
2人の祝言を見届けて安心したのか➡
612
00:53:53,518 --> 00:53:58,318
その翌年に 養父 中山小十郎が死去。
613
00:54:00,024 --> 00:54:04,362
お稽古の人数 また減りましたね。
614
00:54:04,362 --> 00:54:09,834
ああ 役者衆も
すっかり 顔を見せなくなったし。
615
00:54:09,834 --> 00:54:11,903
傳九郎…。
616
00:54:11,903 --> 00:54:18,209
チッ。 あの若太夫の差し金だよ。
617
00:54:18,209 --> 00:54:21,245
おっかさん それ 考え過ぎだよ。
618
00:54:21,245 --> 00:54:25,550
中村座の振り付けは
同じ志賀山流なんですよね?
619
00:54:25,550 --> 00:54:30,054
私には 義理の兄さんになるお人が
振り付け師をやってなさる。
620
00:54:30,054 --> 00:54:33,925
稽古を見られない分を
ここで引き受けてたんだが…。
621
00:54:33,925 --> 00:54:39,731
最近じゃあ
弟子の藤島勘太夫に やらせてるらしい。
622
00:54:39,731 --> 00:54:43,334
そう しむけてる人間がいるってことさ。
623
00:54:43,334 --> 00:54:46,170
勘太夫さんは
教えるのが うめえお人だから。
624
00:54:46,170 --> 00:54:53,344
ありゃ お前 うちの弟子筋だよ?
悔しくないのかい?
625
00:54:53,344 --> 00:54:58,015
すまねえ。 俺が ふがいねえばかりに。
626
00:54:58,015 --> 00:55:03,187
お前の踊りは 勘太夫より数段勝ってる。
627
00:55:03,187 --> 00:55:08,025
聞いた話じゃ
初春興行で踊る吉例の「三番叟」。
628
00:55:08,025 --> 00:55:12,363
あれを踊れる役者が
今の中村一門に いないそうじゃないか。
629
00:55:12,363 --> 00:55:17,034
「三番叟」って 中さんが
毎年踊ってた あれですか?
そうさ。
630
00:55:17,034 --> 00:55:24,542
で 困った若太夫が
役者でもない勘太夫に頼んだらしい。
631
00:55:24,542 --> 00:55:28,846
本当かい?
チッ。 悔しいねえ。
632
00:55:28,846 --> 00:55:34,318
「三番叟」は 志賀山のお家芸だよ。
そうなんですか?
633
00:55:34,318 --> 00:55:38,656
能 狂言のたしなみがないとできない
特別な踊りなんだ。
634
00:55:38,656 --> 00:55:41,993
あの勘太夫に踊れんのかねえ。
635
00:55:41,993 --> 00:56:00,344
〽 海老も曲がりし 腰のしめ
636
00:56:00,344 --> 00:56:13,891
〽 宝尽くしや たから船
637
00:56:13,891 --> 00:56:16,794
〽
638
00:56:16,794 --> 00:56:23,701
〽 鯉の滝登り
639
00:56:23,701 --> 00:56:27,839
やりにくいぜ あの人らの前で踊るのは。
640
00:56:27,839 --> 00:56:32,643
〽 から松を
641
00:56:32,643 --> 00:56:36,514
〽
642
00:56:36,514 --> 00:56:40,518
〽 見事に見事に
643
00:56:40,518 --> 00:56:45,223
〽 さっても見事に手を尽くし
644
00:56:45,223 --> 00:56:51,796
あ~あ。 慣れてねえとはいえ
上がっちまって 動きが かてえや。
645
00:56:51,796 --> 00:56:57,668
そりゃそうですよ。
中蔵兄さんと お俊さんが見に来てる。
646
00:56:57,668 --> 00:57:00,338
〽
647
00:57:00,338 --> 00:57:02,273
遅い!
648
00:57:02,273 --> 00:57:07,678
〽 参ろかの 肩車に
649
00:57:07,678 --> 00:57:09,614
(音吉)何だか ぎこちねえぞ!
650
00:57:09,614 --> 00:57:12,817
かたい かたい!
正月明けの鏡餅か!
651
00:57:12,817 --> 00:57:23,194
(笑い声)
〽 乗せて参ろの氏神
652
00:57:23,194 --> 00:57:27,064
(お岸と お俊の笑い声)
653
00:57:27,064 --> 00:57:29,700
下手だったねえ!
654
00:57:29,700 --> 00:57:33,971
からくり人形みたい。
アッハハハハハハ…!
655
00:57:33,971 --> 00:57:40,271
(せきこみ)
656
00:57:41,846 --> 00:57:45,646
はい 薬湯。
ああ。
657
00:57:49,520 --> 00:57:54,659
はあ~… はあ。
658
00:57:54,659 --> 00:57:56,661
中蔵は?
659
00:57:56,661 --> 00:58:00,798
稽古場にいます。 踊りをさらうって。
660
00:58:00,798 --> 00:58:07,571
そうかい。 火をつけちまったかねえ…。➡
661
00:58:07,571 --> 00:58:11,809
今日 久方ぶりに
芝居小屋の空気を吸って➡
662
00:58:11,809 --> 00:58:16,681
埋み火が また燃えだしたのさ。➡
663
00:58:16,681 --> 00:58:27,024
私や小十郎さんのために役者をやめてから
ずっと心の中で くすぶってた火だよ。
664
00:58:27,024 --> 00:58:31,295
ふっ。
いやっ ちゃちゃ ちゃんちゃん ちゃん。
665
00:58:31,295 --> 00:58:36,467
おっかさん とうに気付いてたんですね。
666
00:58:36,467 --> 00:58:42,340
フフッ。 あの子に伝えておくれ。
667
00:58:42,340 --> 00:58:50,540
冥土の土産に 本物の志賀山「三番叟」を
見せとくれってね。
668
00:58:54,852 --> 00:58:59,156
その装束は 何とした?
669
00:58:59,156 --> 00:59:04,662
昨日の勘太夫が踊りを見て
思いついた工夫にございます。
670
00:59:04,662 --> 00:59:07,665
いかなる工夫か?
671
00:59:07,665 --> 00:59:15,306
からくり人形が 「三番叟」を舞いまする。
672
00:59:15,306 --> 00:59:22,680
〽
673
00:59:22,680 --> 00:59:27,351
〽 いやーはっはっ いやーはっはっ
674
00:59:27,351 --> 00:59:33,624
〽 いよー よっ よっ よっ
〽 いよー いよー いよーい いよーい
675
00:59:33,624 --> 00:59:38,295
〽 いやー いやー いやー
676
00:59:38,295 --> 00:59:42,466
〽 おおさえ おさえ
677
00:59:42,466 --> 00:59:48,339
〽 喜びありや 喜びありや
678
00:59:48,339 --> 01:00:03,154
〽 我が この所より外へは遣らじとぞ思ふ
679
01:00:03,154 --> 01:00:06,657
〽
680
01:00:06,657 --> 01:00:13,431
〽 よっ いよー いよー いよー
681
01:00:13,431 --> 01:00:27,678
〽 にせ紫も なかなかに 及ばぬ筆に
682
01:00:27,678 --> 01:00:34,819
[ 心の声 ]
おっかさん 俺は もう一度
役者で生きてみてえ。
683
01:00:34,819 --> 01:00:38,355
[ 心の声 ]
誰に遠慮がいるもんか。➡
684
01:00:38,355 --> 01:00:44,028
自分の道を進みなされ。
685
01:00:44,028 --> 01:00:49,366
〽 石亀や
686
01:00:49,366 --> 01:00:54,238
中蔵の育ての母であり
厳しい師匠であり➡
687
01:00:54,238 --> 01:00:58,843
希代の踊り手とうたわれた 志賀山お俊。
688
01:00:58,843 --> 01:01:05,382
年が明けて間もなく
50歳で この世を去った。
689
01:01:05,382 --> 01:01:10,721
〽
690
01:01:10,721 --> 01:01:23,434
(鐘の音)
691
01:01:23,434 --> 01:01:28,734
とうとう
2人っきりになっちまいましたね。
692
01:01:30,674 --> 01:01:33,174
嫌かい?
693
01:01:36,347 --> 01:01:40,818
フフッ フッ…。
694
01:01:40,818 --> 01:01:42,753
中さ~ん。
695
01:01:42,753 --> 01:01:46,190
お岸 金がねえ。
696
01:01:46,190 --> 01:01:50,694
本当にねえ。 もう全然ねえ。
697
01:01:50,694 --> 01:01:56,500
分かってますよ。
米も みそも ありませんし。
698
01:01:56,500 --> 01:02:01,205
ねえな。
699
01:02:01,205 --> 01:02:04,241
今から 若太夫に
帰参のお願いに行くんでしょ?
700
01:02:04,241 --> 01:02:08,546
ああ… 気が重いぜ。
701
01:02:08,546 --> 01:02:14,718
師匠の許しが出ねえなら
初めは振り付けの手伝いでも構わねえ。
702
01:02:14,718 --> 01:02:22,593
給金は いいところ
年15両ってところかな。
703
01:02:22,593 --> 01:02:26,330
苦労かけるが 我慢してくれ。
ハッ!
704
01:02:26,330 --> 01:03:07,705
〽
705
01:03:07,705 --> 01:03:09,640
行ってくらあ…。
706
01:03:09,640 --> 01:03:34,865
〽
707
01:03:34,865 --> 01:03:36,867
このころの中村座は➡
708
01:03:36,867 --> 01:03:41,171
中蔵を孫のように かわいがった
温厚な六代目が隠居し➡
709
01:03:41,171 --> 01:03:44,675
長男が 七代目を継いでおりましたが➡
710
01:03:44,675 --> 01:03:49,546
この人が 全く中蔵になじみの薄い男。
711
01:03:49,546 --> 01:03:54,018
ふ~ん おめえ 役者やめてたんだっけ?
712
01:03:54,018 --> 01:03:56,920
…などというような人だったから➡
713
01:03:56,920 --> 01:04:02,726
いやおうなく その弟で 元師匠の
傳九郎を頼らざるをえない。
714
01:04:02,726 --> 01:04:06,697
傳九郎 おめえの弟子だったんだろ?
715
01:04:06,697 --> 01:04:09,497
おめえのいいようにしな。
716
01:04:20,544 --> 01:04:25,215
(ため息)
717
01:04:25,215 --> 01:04:29,553
堅気になったが どうにも食えず➡
718
01:04:29,553 --> 01:04:33,791
この世界に
出戻ってまいりやしたってやつを➡
719
01:04:33,791 --> 01:04:39,330
元のとおり受け入れたとあっちゃ
ほかの連中が納得しねえ。
720
01:04:39,330 --> 01:04:43,167
稲荷町から出直してもらおうか。
721
01:04:43,167 --> 01:04:49,340
お下の下の下
裏方の仕事も手伝う人足から始めろ。
722
01:04:49,340 --> 01:04:53,811
給金は 年7両。
723
01:04:53,811 --> 01:04:58,015
[ 心の声 ]
し… 7両!
724
01:04:58,015 --> 01:05:00,050
いいな?
725
01:05:00,050 --> 01:05:03,050
えっ… へい。
726
01:05:08,359 --> 01:05:11,829
すまねえ!
たった7両ぽっちじゃ食わせていけねえ。
727
01:05:11,829 --> 01:05:15,699
さんざん 頭下げてきたんでしょ?
728
01:05:15,699 --> 01:05:20,371
うちにいる時くらい
顔上げて 胸張って。
729
01:05:20,371 --> 01:05:23,273
うん。
うん。
730
01:05:23,273 --> 01:05:25,242
お… おい おいおいおい。
731
01:05:25,242 --> 01:05:28,045
食わせられねえって話の端から…。
732
01:05:28,045 --> 01:05:31,345
余分な着物は 質に入れちゃったし。
733
01:05:38,322 --> 01:05:43,660
中村座への帰参 おめでとうございます。
734
01:05:43,660 --> 01:05:45,662
稲荷町かあ…。
735
01:05:45,662 --> 01:05:47,998
よっ! 出戻り!
736
01:05:47,998 --> 01:05:50,498
よせやい。
フフフ。
737
01:05:59,176 --> 01:06:01,111
はあ…。
738
01:06:01,111 --> 01:06:04,014
おはようございます!
おお 中坊。
739
01:06:04,014 --> 01:06:06,049
おはようございます。
740
01:06:06,049 --> 01:06:08,685
失礼します。 お願いします。
741
01:06:08,685 --> 01:06:11,385
おお!
おはようございます。
742
01:06:25,836 --> 01:06:31,642
ええっ 今日から お仲間に加えていただく
中蔵と申します。
743
01:06:31,642 --> 01:06:38,315
(任三郎)久しぶりだな 中坊。
若太夫から聞いてるよ。
744
01:06:38,315 --> 01:06:41,151
お下から やり直すことに相なりました。
745
01:06:41,151 --> 01:06:44,988
ハッ 「お下」なんて➡
746
01:06:44,988 --> 01:06:49,793
上の役者さんたちみてえな
言いぐさじゃねえの。
あっ…。
747
01:06:49,793 --> 01:06:54,631
おい てめえら
この こざっぱりした あんちゃんはな➡
748
01:06:54,631 --> 01:07:00,804
長らく 若太夫の内弟子やってた
中村中蔵さんだ。
749
01:07:00,804 --> 01:07:07,010
名題の付き人だったから
俺たち お下の仕事は ご存じない。
750
01:07:07,010 --> 01:07:11,515
手取り足取り 教えてさしあげな。
(一同)へい。
751
01:07:11,515 --> 01:07:15,352
一等最初は 道具方の手伝いだ。
752
01:07:15,352 --> 01:07:17,821
脱ぎな。
えっ?
753
01:07:17,821 --> 01:07:22,526
ふんどし一丁になれって言ってんの!
754
01:07:22,526 --> 01:07:25,026
穴蔵行きだ。
755
01:07:27,030 --> 01:07:31,635
(太鼓の音)
756
01:07:31,635 --> 01:07:36,635
(歓声)
757
01:07:39,510 --> 01:07:43,647
よしよし よしよし よしよし。
758
01:07:43,647 --> 01:07:46,149
やっと慣れてきたな。
759
01:07:46,149 --> 01:07:49,486
今のは よかったぜ。
へい ありがとうございます。
760
01:07:49,486 --> 01:07:53,156
〽 いよー
761
01:07:53,156 --> 01:07:55,659
〽
762
01:07:55,659 --> 01:07:58,662
高麗屋!
高麗屋!
高麗屋!
763
01:07:58,662 --> 01:08:02,162
おい 次だ 次。 次 次…。
764
01:08:05,002 --> 01:08:39,502
〽
765
01:08:47,578 --> 01:08:49,578
あっ…。
766
01:08:52,149 --> 01:08:54,985
中蔵さん?
767
01:08:54,985 --> 01:08:56,920
お久しぶりで 錦次さん。
768
01:08:56,920 --> 01:09:00,791
今は 改名して 市川武十郎と申します。
769
01:09:00,791 --> 01:09:03,694
相中におなりとは お早い ご出世で。
770
01:09:03,694 --> 01:09:06,997
幸四郎の親方のお引き立てですよ。
771
01:09:06,997 --> 01:09:08,932
それじゃあ…。
772
01:09:08,932 --> 01:09:11,868
そろそろ いくぜ。
へい。
773
01:09:11,868 --> 01:09:13,870
はい。
774
01:09:13,870 --> 01:09:17,570
ひの ふの… み!
775
01:09:20,177 --> 01:09:23,213
〽
776
01:09:23,213 --> 01:09:25,349
成田屋!
成田屋!
777
01:09:25,349 --> 01:09:48,138
〽
778
01:09:48,138 --> 01:09:50,974
お~ うめえじゃねえか。
779
01:09:50,974 --> 01:09:55,312
もののけの せり上がりは
こうじゃなきゃいけねえや。
780
01:09:55,312 --> 01:10:01,112
いや… 役者なら どう上がりてえか
考えたまでで。
781
01:10:02,786 --> 01:10:06,323
ほれ。
うっ…。
782
01:10:06,323 --> 01:10:26,343
〽 あやしかりける
783
01:10:26,343 --> 01:10:28,679
〽 いよー
784
01:10:28,679 --> 01:10:34,017
〽
785
01:10:34,017 --> 01:10:36,717
高麗屋!
高麗屋!
786
01:10:39,356 --> 01:10:41,391
(観客)ああ…。
787
01:10:41,391 --> 01:10:44,194
(幸四郎)
早く引きゃあいいってもんじゃねえ。
788
01:10:44,194 --> 01:10:47,698
もっと芝居の余韻を考えて幕を引くんだ。
いいな?
789
01:10:47,698 --> 01:10:50,398
へい! 申し訳ございません。
790
01:10:55,839 --> 01:10:58,742
「我が夫様」。
791
01:10:58,742 --> 01:11:08,852
「おう。 めでたい。 めでた~い」。
792
01:11:08,852 --> 01:11:22,432
〽
793
01:11:22,432 --> 01:11:24,735
高麗屋!
高麗屋!
ご両人!
794
01:11:24,735 --> 01:11:39,182
〽
795
01:11:39,182 --> 01:11:41,518
(音吉)いよっ 幕引き!
796
01:11:41,518 --> 01:11:44,020
うまい!
いい幕切れだぜ!
797
01:11:44,020 --> 01:11:47,820
≪(笑い声と ざわめき)
798
01:11:52,729 --> 01:11:54,698
斬られ役を?
799
01:11:54,698 --> 01:11:58,368
今度 「双蝶々曲輪日記」で➡
800
01:11:58,368 --> 01:12:02,038
助五郎が 濡れ髪長五郎をやるんだが➡
801
01:12:02,038 --> 01:12:06,843
それに斬られて死ぬ 駕籠かきの役だ。
802
01:12:06,843 --> 01:12:09,546
ひと言だが セリフもある。
803
01:12:09,546 --> 01:12:11,746
セリフが?
804
01:12:14,851 --> 01:12:16,787
どうだ? やってみねえか?
805
01:12:16,787 --> 01:12:19,556
へい! そりゃあ もう。
806
01:12:19,556 --> 01:12:23,059
だが このセリフで 場が幕になる。
807
01:12:23,059 --> 01:12:26,730
下手を打つと
締まらねえ芝居になっちまう。
808
01:12:26,730 --> 01:12:29,230
心いたしやす!
809
01:12:35,438 --> 01:12:38,375
「人殺し~!」。
810
01:12:38,375 --> 01:12:42,212
「人… 人殺し~!」。
811
01:12:42,212 --> 01:12:44,214
うっ!
812
01:12:44,214 --> 01:13:05,914
♬~
813
01:13:14,544 --> 01:13:16,580
「うわ~!」。
814
01:13:16,580 --> 01:13:20,350
「あっ… ああっ!」。
「人殺し~!」。
815
01:13:20,350 --> 01:13:23,720
下手くそ!
816
01:13:23,720 --> 01:13:29,392
(笑い声)
817
01:13:29,392 --> 01:13:31,995
「ああ… あっ あっ あっ ああっ!」。
818
01:13:31,995 --> 01:13:33,930
声も悪けりゃ 間も悪い!
819
01:13:33,930 --> 01:13:52,682
(笑い声)
820
01:13:52,682 --> 01:13:56,553
すいません すいません…。
この野郎!
821
01:13:56,553 --> 01:13:58,555
うっ!
822
01:13:58,555 --> 01:14:00,557
ん~!
823
01:14:00,557 --> 01:14:03,693
あっ ご勘弁を!
(助五郎)勘弁ならねえ!
824
01:14:03,693 --> 01:14:06,393
俺の見せ場 ぶっ壊しやがって!
825
01:14:10,200 --> 01:14:13,036
こいつ 手向かいするか。
826
01:14:13,036 --> 01:14:16,539
顔は やめてくだせえ。
何だと?
827
01:14:16,539 --> 01:14:20,339
顔だけは やめてくだせえ。
828
01:14:22,345 --> 01:14:26,645
顔は役者の命だ。 大事にしな。
829
01:14:30,654 --> 01:14:33,556
んっ!
あいてて…。
830
01:14:33,556 --> 01:14:35,992
何があった?
どうも 兄さんが➡
831
01:14:35,992 --> 01:14:38,328
幕切れを しくじっちまったみてえで。
832
01:14:38,328 --> 01:14:40,328
おい 任三郎!
833
01:14:42,198 --> 01:14:45,001
この悪声の大根を なんとかしろい!
834
01:14:45,001 --> 01:14:48,672
へい 二度と へまをしねえよう
思い知らせます。
835
01:14:48,672 --> 01:14:50,672
うん。
836
01:14:54,544 --> 01:15:01,017
おい
できるだけ汚え古わらじ集めろや。
837
01:15:01,017 --> 01:15:03,317
(一同)へい。
838
01:15:11,027 --> 01:15:14,698
おっ!
ほらよっと!
839
01:15:14,698 --> 01:15:17,534
(笑い声)
840
01:15:17,534 --> 01:15:19,734
いいざまだな。
841
01:15:23,206 --> 01:15:26,843
(笑い声)
こりゃいいや!
842
01:15:26,843 --> 01:15:30,380
(笑い声)
843
01:15:30,380 --> 01:15:34,250
さあ 立ちませい!
844
01:15:34,250 --> 01:15:36,186
ほら 立て!
845
01:15:36,186 --> 01:15:40,190
(笑い声)
846
01:15:40,190 --> 01:15:42,325
ほら。
847
01:15:42,325 --> 01:15:49,099
ハハハハ…
さあさあ さあさあ ほら 座れ!
848
01:15:49,099 --> 01:15:54,504
この男 芝居を損ないし者にて候。
849
01:15:54,504 --> 01:16:01,678
その科により 楽屋引き回しの上
さらし者にいた~す!
850
01:16:01,678 --> 01:16:04,378
ハッハッハッ…。
851
01:16:08,551 --> 01:16:13,189
ほら 立ちませい!
ああ…。
852
01:16:13,189 --> 01:16:21,364
この男は 芝居を損ないし者にて候。➡
853
01:16:21,364 --> 01:16:32,008
その科により 楽屋引き回しの上
さらし者にいた~す!
854
01:16:32,008 --> 01:16:34,310
ほら。
855
01:16:34,310 --> 01:16:40,116
ふん なかなか しゃれが効いてるぜ。
856
01:16:40,116 --> 01:16:44,788
黙ってねえで 何か お答えしろい!
857
01:16:44,788 --> 01:16:47,657
余計なこと すんじゃねえ!
えっ?
858
01:16:47,657 --> 01:16:53,329
これ以上
こいつの悪声なんぞ聞きたくねえ。
859
01:16:53,329 --> 01:16:56,800
アッハハ! こ… こりゃ
うまいこと おっしゃいます!
860
01:16:56,800 --> 01:16:59,169
ハハハハハ…。
861
01:16:59,169 --> 01:17:02,669
(助五郎)ふん いい座興だったぜ。
862
01:17:06,342 --> 01:17:11,181
さあさあ 皆様
近くに寄って とくとご覧あれ!
863
01:17:11,181 --> 01:17:17,481
(騒ぐ声)
864
01:17:28,198 --> 01:17:35,498
ん~… 後先考えねえで
うめえ話に飛びつくと こうなる。
865
01:17:41,311 --> 01:17:47,111
俺に ひと言 相談すべきだったな。
866
01:18:05,335 --> 01:18:11,508
(任三郎)なあ 中坊
身に染みて よく分かったろう?
867
01:18:11,508 --> 01:18:15,178
そろそろ 分別して➡
868
01:18:15,178 --> 01:18:21,518
あっちの役者になろうなんて夢は諦めな。
869
01:18:21,518 --> 01:18:29,259
どんなに頑張ったところで
血縁が物を言う理不尽な世界だ。
870
01:18:29,259 --> 01:18:33,129
稲荷町は稲荷町。➡
871
01:18:33,129 --> 01:18:38,001
分を守って うまくやろうや。
872
01:18:38,001 --> 01:18:42,472
こんなところで終わる気はねえ。
あっ?
873
01:18:42,472 --> 01:18:49,646
俺は もっと芝居がしてえ。
874
01:18:49,646 --> 01:18:54,984
ここから抜け出してやる。
875
01:18:54,984 --> 01:18:58,488
ここから出て➡
876
01:18:58,488 --> 01:19:01,991
上に行く!
877
01:19:01,991 --> 01:19:08,291
ほう… そうかい。
878
01:19:19,542 --> 01:19:22,011
中蔵さん!
879
01:19:22,011 --> 01:19:25,311
中蔵さん! 大丈夫かい?
880
01:19:27,684 --> 01:19:32,956
もしやと思って戻ってきたが…
災難だったな。
881
01:19:32,956 --> 01:19:36,626
う… うう…
武十郎さん…。
882
01:19:36,626 --> 01:19:40,296
しでえことしやがる…。
883
01:19:40,296 --> 01:19:46,970
私も女形の時代に
何度か 楽屋なぶりに遭ったが➡
884
01:19:46,970 --> 01:19:50,270
ここまでの仕打ちは見たことがねえよ。
885
01:19:55,645 --> 01:19:58,982
武十郎さん…。
886
01:19:58,982 --> 01:20:04,654
すまねえ… 見ないでくれ…。
887
01:20:04,654 --> 01:20:12,328
こんな姿… もう 見ねえでくれ…。
888
01:20:12,328 --> 01:20:15,665
(すすり泣き)
889
01:20:15,665 --> 01:20:18,365
分かったよ。
890
01:20:20,336 --> 01:20:28,011
中蔵さん 気持ちが落ち着いたら
風呂へ入って➡
891
01:20:28,011 --> 01:20:31,881
まっすぐ うちに帰るんだよ?
892
01:20:31,881 --> 01:20:36,686
いいかい?
へい。
893
01:20:36,686 --> 01:20:40,686
いいね?
へい。
894
01:20:42,492 --> 01:20:44,692
へい…。
895
01:20:56,706 --> 01:21:01,377
うう… うう…。
896
01:21:01,377 --> 01:21:06,577
うう~… ああ…。
897
01:21:14,724 --> 01:21:26,235
〽
898
01:21:26,235 --> 01:21:32,008
〽 ぬし様ぁ
899
01:21:32,008 --> 01:21:38,348
〽 帰るを
900
01:21:38,348 --> 01:21:46,848
〽 松の枝
901
01:21:50,526 --> 01:21:56,332
中さん… おなかすいた。
902
01:21:56,332 --> 01:22:39,876
♬~
903
01:22:39,876 --> 01:22:45,681
(水に落ちる音)
904
01:22:45,681 --> 01:22:49,685
おいおいおい…
魚が逃げちまうだろうが。
905
01:22:49,685 --> 01:22:54,385
≪うう~… 助けてくれ! 助けて~!
906
01:23:00,530 --> 01:23:02,730
気が付いたか?
907
01:23:05,201 --> 01:23:07,901
随分 水 飲んだな。
908
01:23:15,545 --> 01:23:20,850
あ~ あ~!
袖にかかっちまったじゃねえか 汚えな!
909
01:23:20,850 --> 01:23:24,720
(せきこみ)
910
01:23:24,720 --> 01:23:27,557
お… 俺… 俺は… 俺は…!
911
01:23:27,557 --> 01:23:30,057
ああ 生きてるな。
912
01:23:32,161 --> 01:23:37,967
ああ… ああ~…。
913
01:23:37,967 --> 01:23:42,872
何で… 何で助けたんですか~!
914
01:23:42,872 --> 01:23:47,510
何だよ 身投げか お前。
ああ~…。
915
01:23:47,510 --> 01:23:53,710
それはそれは…
それは助けてしまって悪かった。
916
01:23:56,018 --> 01:24:01,318
改めて… あの世へ送ってやろう。
はあ?
917
01:24:03,893 --> 01:24:06,662
え?
心配いらぬ。 痛くはない。
918
01:24:06,662 --> 01:24:10,199
いや ちょ…。
スパッと 首飛ばすから。
919
01:24:10,199 --> 01:24:15,071
いや いや… ひい~!
920
01:24:15,071 --> 01:24:17,271
な~んてな。
921
01:24:19,909 --> 01:24:23,746
はあ… はあ…!
922
01:24:23,746 --> 01:24:29,446
何だよ 寄ってたかって
なぶり者にでもされたか?
923
01:24:31,521 --> 01:24:33,523
へ… へい…。
924
01:24:33,523 --> 01:24:37,159
そういう時はな なめられたら しめえだ。
925
01:24:37,159 --> 01:24:41,998
かなわねえまでも 一矢報いるぞって
殺気を放て。
926
01:24:41,998 --> 01:24:44,800
どうすればよいので?
自分を殴るやつから目を背けるな。
927
01:24:44,800 --> 01:24:51,007
相手の目を
いちいち グッと にらみつけてやる。
928
01:24:51,007 --> 01:24:55,678
そうされると 手を出しにくくなる。
929
01:24:55,678 --> 01:24:59,682
グッとですか?
そうだ。
930
01:24:59,682 --> 01:25:06,389
「お前の顔は決して忘れぬぞ」ってな。
931
01:25:06,389 --> 01:25:08,691
口に出してもいい。
932
01:25:08,691 --> 01:25:11,594
あっ ああっ!
やってみろ。
933
01:25:11,594 --> 01:25:15,197
こ… こ…➡
934
01:25:15,197 --> 01:25:17,833
こうですかい?
そうだ 言ってみろ。
935
01:25:17,833 --> 01:25:19,769
「お前の顔は決して」…。
936
01:25:19,769 --> 01:25:23,639
もっと喉を締める感じで。 語気鋭く。
「お前の顔は」…。
937
01:25:23,639 --> 01:25:27,376
「お前の顔は 決して忘れぬぞ。➡
938
01:25:27,376 --> 01:25:31,376
以後 夜道は気を付けて歩くがよい」。
939
01:25:34,150 --> 01:25:37,486
無駄な人助けしちまった。
940
01:25:37,486 --> 01:25:40,523
ハハハハッ!
941
01:25:40,523 --> 01:25:45,661
おめえ 役者だな?
942
01:25:45,661 --> 01:25:50,800
俺はな 役者が大嫌えなんだよ。
なぜでございます?
943
01:25:50,800 --> 01:25:53,336
俺たち武士をネタにして
楽しんでやがる。
944
01:25:53,336 --> 01:25:55,805
特に「仮名手本忠臣蔵」。
945
01:25:55,805 --> 01:25:59,175
あれなんざ 気に食わないね。
946
01:25:59,175 --> 01:26:01,510
おめえらが思うほど
武士は単純じゃねえ。➡
947
01:26:01,510 --> 01:26:04,413
忠義か自分の命かと迫られたら➡
948
01:26:04,413 --> 01:26:08,818
大概の武士は てめえの命が大事と思う。
当たり前の話だ。
949
01:26:08,818 --> 01:26:14,357
美談に仕立て上げて 俺たちの生き方
窮屈にしてんじゃねえ。
950
01:26:14,357 --> 01:26:17,193
痛っ! いった!
951
01:26:17,193 --> 01:26:22,031
いって… ああ…。
(物音)
952
01:26:22,031 --> 01:26:25,368
えっ ちょっと… えっ? 何!?
953
01:26:25,368 --> 01:26:28,404
えっ ええっ うわ~!
954
01:26:28,404 --> 01:26:31,104
命助けた礼に もらっとく。
955
01:26:35,978 --> 01:26:39,482
あっ あの… せめて お名前を!
956
01:26:39,482 --> 01:26:41,682
うるせえ!
957
01:26:47,223 --> 01:26:53,423
お前の顔は 決して忘れぬ…。
958
01:26:55,665 --> 01:27:17,687
♬~
959
01:27:17,687 --> 01:27:27,363
[ 心の声 ]
昨日で 俺は一度死んだ。➡
960
01:27:27,363 --> 01:27:34,136
怖えもんは もう何もねえ!
961
01:27:34,136 --> 01:27:47,683
♬~
962
01:27:47,683 --> 01:27:50,586
落ちるところまで落ちた
中蔵の出世物語は➡
963
01:27:50,586 --> 01:27:52,988
どう展開していくのでありましょうか?
964
01:27:52,988 --> 01:27:57,159
(小声で)あいすいません
セリフが飛びました。
965
01:27:57,159 --> 01:27:59,195
しかし その行く手を阻む者が…。
966
01:27:59,195 --> 01:28:02,031
魔王 金井三笑の登場だ。
967
01:28:02,031 --> 01:28:04,500
(三笑)ハッハッハッハッハッハッハッ!
968
01:28:04,500 --> 01:28:07,536
だが 阻む者あれば 救う者あり。
969
01:28:07,536 --> 01:28:10,306
し… しかし この男が救世主?
970
01:28:10,306 --> 01:28:14,210
大丈夫かあ? 中村中蔵~!
971
01:28:14,210 --> 01:28:41,637
♬~
972
01:28:41,637 --> 01:29:11,333
♬~
973
01:29:11,333 --> 01:29:25,033
♬~
974
01:30:35,551 --> 01:30:39,521
(魚沼陽太)俺… マンガ家 やめます!
975
01:30:39,521 --> 01:30:43,125
♬~
976
01:30:43,125 --> 01:30:46,795
(西 海斗)連載 打ち切られたぐらいで
諦めんの早いって。
977
01:30:46,795 --> 01:30:50,666
まだ 陽… え いくつだっけ?
978
01:30:50,666 --> 01:30:55,104
35ですよ。
あ~…。
979
01:30:55,104 --> 01:30:58,407
そっか…。
ちょちょちょちょ
そっかじゃないでしょうよ。
84379