All language subtitles for VOICE～命なき者の声～＃01

≫たくさんツイートありがとうご
ざいました。

あっという間にエンディングです
けど

横山さん
いかがでしたでしょうか。

≫やっぱ
ミルクボーイ面白いですね。

≫ほんまに？

≫嫌やなぁ。

≫また遊びに来たいですね、ほん
とに。

≫ぜひお願いします。
≫リラックスできた。

「よ～いドン！」と
「スロイジ」は最高ですね。

≫このあと「報道ランナー」も
出られるそうで。

≫片平さんと同じ
スケジュールです、僕。

♬～

♬～

♬～

(大己)＜人は
死んだら おしまいだ＞

＜僕らは そう思っていた＞

＜医学とは
消えゆく命を 救うため｡➡

死を 少しでも
先延ばしにするために➡

存在するのだと
そう 思っていた＞

♬～

＜医大に入って ４年目の冬＞

(佐川)では 始めます｡

(佐川)よろしく お願いします｡
(玲子)お願いします｡

＜僕らは 失われた命を救う
医学と出会った＞

(亮介)大己！

(亮介)
いつまで見てんだよ？ 行こうぜ｡

(大己)
ねえ｡ 亮介 名前 あったの？

うん｡ 法医学ゼミな｡
えっ？ 法医学？

どうして？
いや 第一志望なんで｡

親父の病院で 消化器内科
継ぐって 約束で➡

ここに 入ったんじゃないの？
いいの いいの｡

俺は 一生 他人の
小腸やら大腸を のぞく気ないし｡

やっぱり ホルモンは治療するより
食べるに 限りますからね｡

カルビしか 頼まないくせに｡
あーあ｡

何だ｡ また 大己と一緒かよ｡
何が？

だって お前の名前 あったぞ｡
はっ!?

法医学…｡

どうして ここに あんの!?
知らねえよ｡

ゼミなしだと 単位 つらいぞー｡

まっ 運が よかったと思って
入っとけよ｡

俺 ちょっと 行ってくる｡

フッ｡

♬～

あのう｡

(佐川)おう！ 加地 大己！
ええ｡

よく来た！
まあ まあ まあ｡ ほら 入れ 入れ｡

いや…｡ ここで 大丈夫です｡
すぐ 帰りますから｡

まあ そんなこと言わずに
ほら ゆっくりしてけよ｡

今 おいしい中国茶
入れてやるから｡

これが うまいんだ｡

掲示板の名前 移動させました？
うん？

俺 心臓外科学ゼミに
受かってたんじゃないんですか？

どうして
そんなこと したんですか？

フフフ…｡ じゃあ 聞くけど
心臓外科学ゼミを 志した理由は？

うーん｡
今 注目されてる 分野だし➡

見学したとき
活気ある ゼミだなって｡

それだけか？

心臓が 最後の とりでかなって
思ったんです｡

心臓が 止まってしまったら➡

どんな医学も
意味を 成さないから｡

ホントに そう思うのか？
えっ？

亡くなった人の声に 耳を傾ける｡

そういう医学が あってもいいと
思わないか？

よし できた！

俺も 学生時代
自分が 法医学を選ぶなんて➡

思ってもみなかったよ｡

それが あるとき 突然 教授に
｢お前は 法医学に向いてる｣って➡

言われた｡
えっ？

まっ 理由は
それだけなんだけどな｡

まっ きっかけなんか
何だって いいんじゃないか？

いや でも…｡

でも どうして 俺を？

気になるか？ まあ 座れ｡
いや…｡

いや 気になります｡ だから
こうして 聞きに来てるんです｡

そういうところだよ｡
えっ？

合格か 不合格か 普通の学生は
結果にしか 興味がない｡

でも お前は 違う｡
結果よりも まず 理由｡

｢どうして？ 何で？
どうして？ 何で？｣ってな｡

いそうで いないんだよな｡
そういうやつって｡

最初に 会ったときから
言おうと 思ってたんだけどな｡

お前は 法医学に向いている｡

それに もう
手続き しちゃったからなぁ｡

後には 引けないな｡ うん｡

(佐川)今 配ってもらっている
カリキュラムに 従って➡

授業を 進めていきます｡
わたしが いないときは➡

彼女が 実習から 講義までを
担当します｡ 玲子君 一言｡

(玲子)助教の 夏井川 玲子です｡
よろしく｡

あの顔
すげー タイプなんですけど｡

性格 きつそうじゃん｡
そこが いいんだよ｡

そこ 何 しゃべってんの？
やる気 ない人は➡

出てっていいのよ｡
すいません｡

ゼミ生は 君たち ５人で 全員｡

(佐川)今日から この５人で
実習や 課題に➡

取り組んでもらいます｡
みんな 仲良くするように｡

いいね？
(哲平･亮介)はい…｡

(佐川)ええー 法医学の第一義は
人の死因を 解明すること｡➡

ただ 死因究明制度が ちゃんと
整備されていない 日本では➡

異状死した遺体の
およそ １割しか➡

解剖が なされていないのが
現状です｡

たった １割ですか？

(玲子)解剖を行うための
医師も 不足してるし➡

解剖したくても 予算の都合上
できない地域も 多いの｡

(佐川)死者の体は その人が
最後に 伝えたかった言葉を➡

明確に 語りかけてくれます｡➡

法医学者にしか
聞こえない 声がある｡

その声を つなげるのが
俺たちの仕事だ｡

(事務員)南府中署の
大和田さんからです｡

(佐川)はい｡➡

はい お電話 代わりました｡
佐川です｡

司法ですか？ 行政ですか？➡

許可状は 発行されてますか？
遺体の状況は？➡

分かりました｡ じゃあ １時から
始めたいと 思いますので➡

ご遺体の搬送を お願いします｡
はい 失礼します｡

１時から 司法解剖｡
(玲子)はい｡

(佐川)それから ５人にも
立ち会ってもらおうか｡

分かりました｡ 行きましょう｡
(一同)はい｡

(玲子)準備は できた？
あっ｡ 今 行きます｡

よし｡ 行くぞ｡

(玲子)南府中署の刑事さん｡
(大和田)うん｡ 大和田だ｡➡

うん｡ うん｡ うん｡
うん｡ うん｡ うん｡➡

ええー 死亡者は 市原 良平 50歳｡
職業は 電気工事士｡➡

現場は
オフィス街の 建設現場前｡➡

第一発見者が 見つけたのは
昨日 日曜の 午後３時20分ごろ｡➡

そのときは わずかに
意識が あったそうだが➡

病院で 間もなく 死亡｡
現場の 状況から見て➡

近くのビルに 修理に向かう途中に
落下物の下敷きに なったもようと｡

落下物というのは？
(大和田)まだ 見つかってない｡

おそらく 犯人は証拠隠滅のために
持ち去ったんだろう｡

えっ？ 他殺なの!?
(大和田)あっ？➡

ため口!?
あっ すいません｡

(大和田)事件当日
建設現場は 休みだった｡➡

作業中に 誤って 上から
資材が落下した 可能性はない｡➡

犯人は
休みだった 現場に侵入し➡

市原さんを狙って
故意に落とした｡

まあ そう考えるのが 妥当ですね｡

(佐川)では 始めます｡➡

よろしく お願いします｡
(一同)よろしく お願いします｡

(佐川)えー まず 最初に 頸部から
恥骨上部まで 正中切開します｡

(哲平)うわぁ｡ すげえ…｡

(玲子)皮下脂肪 ２cm｡
(男性)２cm｡

(佐川)鎖骨が 折れてんな｡➡

写真 お願いします｡
(男性)はい｡

(シャッター音)
(男性)ＯＫです｡

(佐川)次に 横隔膜の高さを
肋骨の下に 手を入れて 測ります｡

(佐川)左 第４肋間｡
(男性)左 第４肋間｡

(佐川)右 第４肋骨｡
(男性)右 第４肋骨｡

(佐川)次に 肋骨を切断して
前胸部を 摘出します｡

(彰)うっ…｡

(哲平)大丈夫ですか？

おい｡ お前も 大丈夫かよ？

あの人さぁ➡

昨日まで 普通に
生きてたんだよな｡

♬～

(亮介)ええー 前頭骨を 陥没骨折｡
前頭骨に被った 衝撃は➡

およそ 10ｍの高さから➡

30kg程度の 落下物が
当たったものに 相当する｡➡

死因は その衝撃による➡

頸椎骨折による
頸髄損傷だってさ｡

(哲平)30kgのものって
言われても➡

なかなか
思い浮かばないですよね｡

(彰)薄型の液晶テレビ
46インチが およそ 30kg｡➡

全自動洗濯機も そんなもんだよ｡

詳しいね｡ ねえ｡
ほかにも 何か あるかな？

(彰)子供用のベッド｡
高級 リクライニングチェア｡

12畳の ペルシャじゅうたん｡

(哲平)いや じゅうたんじゃ
人は死なないと 思いますけど！

30kgぐらいのもの
答えてるだけだろ｡

はい｡ すみません…｡
まあまあ まあまあ｡ ねっ｡ ねっ｡

でもさ この人…｡

これ 何で おでこの辺り
骨折してるんだと思う？

普通 上から ものが落ちてきたら
頭頂部だよね？

(佳奈子)上を 見上げてたから｡
あっ｡ ああ 確かに｡

考えなくても
すぐ 分かりそうなことだけど｡

じゃあ どうして 上 向いたの？
いや 知らないよ｡

上を見るときねぇ｡
羽井君は？

羽井君｡ どんなとき 上 向く？
夕焼け 見たり 星 見たり…｡

(哲平)プッ！
意外と ロマンチックだ…｡

人間って こういう状況のときに
上 向くんですね｡

確かに よっぽどのことがないと
人って 上 向かないんだよな｡

あのう 今
よっぽどの状況なんですけど｡➡

聞いてます？
落ち着いてくださいよ｡➡

顔だけは やめてくださいよー｡

思ってたより 低いな｡

(哲平)僕も 10ｍって
もっと 高いかと 思ってました｡

♬～

まあ でも
これだけ 静かな場所だったら➡

上で ちょっとした
物音がしただけでも 上 見るな｡

だったら なおさら➡

落下物に 気付いたら
避けられると 思わない？

近くに来るまで
気付かなかったとか？

(哲平)それに
長いものとかだったら➡

どんなに 早く 気付いても
当たっちゃうと 思うんですよね｡

長いものか…｡

だったら 被害者に当たった後に
地面と 接触してるはずだよね｡

報告書にも ありませんでしたし
そういう跡も 見当たりませんね｡

ねえ｡ 被害者って 発見されたとき
どこに いたんだっけ？

｢ビルの脇にある 花壇に向かって
突っ伏す 格好です｡➡

膝を地面につけ 手を伸ばしたまま
気を失っていた｣と…｡

えっ!? 僕が やるんですか？
何か そういうの うまそうじゃん｡

はい｡

ええー 第一発見者の証言｡

｢遠くから見たら まるで
お祈りをしてるようだった｣

確かに 変な格好だ｡

｢近づいて 呼び掛けてみたら
意識はあったが 言葉は発せず｡➡

表情は ほほ笑んでいるように
見えたので 驚いた｣

♬～

♬～

あなたたち 法医学って何だか
はき違えてない？

現場で 推理ごっこしてる
暇があったら➡

解剖の手順を 体で覚えなさい｡

分析した データを
穴が開くほど 見比べなさい｡

論文を 徹底的に
読み返しなさい！

分かった？
はい｡

(哲平)何にも
収穫 ありませんでしたね｡

そうだねぇ｡

(哲平)まっ 結局
データが 全てなんですけどね｡

(彰)じゃあ お先に｡

(哲平)お疲れさまです｡
うん｡

ああ ちょっと 哲平｡
(哲平)はい｡

ちょっと それ 借りていい？
(哲平)構わないですけど｡

お疲れさまです｡
お疲れ！

よし｡ 俺も行くわ｡

あっ 亮介｡
あっ？

今日 時間 ある？
いやー 今から バイト｡

どうして？
うん？

ちょっと 気になる場所 あってさ｡
お前も 懲りないねぇ｡

バッカみたい｡

♬～

♬～

♬～

(女性)《かわいそうに｡
心臓発作だってよ》

(男性)《過労だろ｡
１人で 働き過ぎたんだよ》

(女性)《あんな
小さい子供たち 残して》

(佳奈子)《母さんの足に
あざがあるの おかしいもん》

(男性)《佳奈子ちゃん｡
心臓発作だから➡

あざは関係ないよ》

(女性)《信じたくない気持ちは
分かるけど➡

これからは あなたが
しっかりしなきゃ 駄目なのよ》

(同僚)いやー｡
しかし かわいそうだよな｡➡

身寄りもいないし 葬式も
やらねえっつーんだからさ｡

ああ｡ 市原さんって
どんな人だったんですか？

(同僚)ああ｡ 地味な人だったよ｡
いやー｡ たまに➡

仕事帰りに 飲みに行く程度の
仲だったんだけどさ｡ いや｡

昔 奥さんがいたなんて 警察に
聞いて 初めて知ったんだよ｡

まあ 過去の話は あんまり
したがらなかったからな｡

おう｡ サンキュー｡
はい｡ よいしょっと｡

えーっと｡

変なこと 聞きますけど｡
えっ？

もしかして 市原さんって
反射神経 悪かったですか？

反射神経？ いや｡
そんなこと 分かんねえよ｡

ああ｡ ですよね｡

別に 運動音痴に
見えなかったしな｡

(野球中継の音声)

ああ｡ そういえば
一緒に 飲みに行ったときに➡

居酒屋で 野球の中継が
始まったら➡

テレビ 消してくれって
頼んでたよ｡

それで ほかの客と
１回 もめたことがあんだよ｡

野球ですか｡
もしかしたら あんまり➡

スポーツとか 好きじゃ
なかったのかもしんねえなぁ｡

(医師)あっ お疲れさまです｡
(看護師)お疲れさまです｡

お願いします｡
(看護師)はい お預かりします｡

(ｽﾀｯﾌ)お疲れさまです｡
お疲れさまです｡

(ｽﾀｯﾌ)ありがとうございます｡

(貴之)亮介｡➡

こいつね 島田先生んとこで
世話してもらうことに なってね｡

(部下)島田ゼミっていったら
名門じゃないですか｡

(貴之)ああ｡
(部下)じゃあ 病院長を継ぐ日も➡

近いですね｡
(貴之)さっさと 一人前になって➡

楽を させてもらいたいもんだな｡
(３人の笑い声)

(佐川)《法医学者にしか
聞こえない 声がある｡➡

その声を つなげるのが
俺たちの仕事だ》

(テレビの音声)

おい！ 何してんだ!?
早く つけろよ！

やっと 出てきたんだよ 遺言状！
やっぱ 変だよね？

はっ？
野球が 嫌いだからって➡

わざわざ テレビ 消してって
言うと思う？

何の話だよ？
いいから 早く 遺言！

市原さん 居酒屋で
野球中継のテレビ 消して➡

ほかの客と もめたらしいんだよ｡
ちょっと｡

まだ
そんなこと やってんのかよ｡

うーわ｡ 終わってるし｡

どうして そんなに
野球 嫌いなんだろう｡

また どうして どうしてって｡
いただきまーす｡

(哲平)あの すいません｡ これ｡
うん？ 何？ これ｡

(哲平)ゼミの 親睦会の案内です｡
えっ？ これが？

何だ？ このデザイン｡
哲平が 幹事 やんの？

(哲平)いえ｡ 羽井さんが｡
何で？

ああ｡ まあ 座んなさいよ｡
(哲平)あっ はい！➡

何か 全員で １回
飲まなきゃ 落ち着かないって｡

ハハッ｡
羽井君って 何か 変だよね｡

(哲平)はい｡
あれは？ アキちゃん 誘ったの？

(哲平)誰ですか？ それ｡
いや いるじゃんかよ｡

あの ほら｡
うちのゼミの 唯一のヒロイン｡

アキなんて 名前だったっけ？
名字が 久保秋だろ｡

だから 面倒くさいから もう
アキちゃんで いいかなと思って｡

(哲平)さっき チラシは
渡しましたけど｡

まっ 来ないだろ あいつは｡

えっ？ まだ 調べてるんですか？
昨日 働いてた職場まで➡

わざわざ 行ったんだって｡
暇なやつだろ？

(彰)何か 分かったのか？
うーん｡

離婚歴が あるってことと 野球が
嫌いだったってことぐらいかな｡

そんなこと 聞くために 電車で
１時間だぜ｡ 信じらんない｡

≪(ドアの開く音)
(彰･鳳子)いらっしゃい！

おっ！ アキちゃん 来た！
こっち こっち こっち｡ ほい｡

わたしさ いつから
アキちゃんに なったの？

いや｡ 今日から｡
(哲平)アキさん！➡

何 飲みますか？
じゃあ 生｡

(哲平)生 １つ お願いします！
(鳳子)はい｡ 生 １丁｡

絶対 来ないと 思ってたけどな｡
女子は 当然 ただなんでしょ？

(一同)はい 残念！
はい｡

チラシを よく ご覧ください｡
ここにですね➡

女性の参加費は １万円って
これ 書いてあるんですね｡

何？ これ｡ ちょっ｡
詐欺じゃないのよ ちょっと！

いや｡ 作った 羽井君に言えよ｡
(彰)みんなで➡

現場 見に行くときに
輪を乱した罰だ｡

はあ？
冗談だよ 冗談｡

今日はさ 大己が
おごってくれっから 心配すんなって｡

あっ｡ ごちそうさまです｡
いや ふざけんなよ！

(哲平)アキさん 知ってました？
羽井君って 昔➡

ヤンキーだったんですよ｡
へえー｡ そうなんだ｡

(哲平)あれ？ アキさん
全然 驚かないですね｡

いや｡ そうなのかぁと
思ってたからさ｡

(哲平)ああ そっか！ アキさん
そう 思ってたんですね！

お前 何 こっそり アキさん
アキさん 連呼してんだよ？

(哲平)いや｡ そんなつもりは｡
(彰)へい｡ お待ちどお｡

ねえ？ どうして
うちの大学に 入ったの？

もともと 法医学 やるつもりで？
(彰)うん｡➡

俺 法医学の おかげで 刑務所に
入らずに 済んだからさ｡

｢どうしてですか？｣って 聞けよ！
いや ほら 何か｡

あんまり 突っ込んで 聞いちゃ
いけないのかなと思って｡ なっ？

(哲平)会話で 刑務所行きの話とか
出てきたこと ないんで➡

体が びっくりしちゃって｡

ハァー｡ 絡んできた相手が
死んじゃってさ｡

警察は 一発も殴ってないのに
俺を 犯人だと決め付けた｡

(彰)司法解剖の結果
死因は 脳出血だったが➡

持病によるものと 分かった｡

法医学がなかったら 俺の人生は
まったく 別物に なってたんだよ｡

(鳳子)あの日から
きっぱり 族 やめて➡

死ぬ気で 勉強したのよ｡
学費も 自分で払うって➡

勉強しながら 引っ越し屋の
バイトで お金 ためてねぇ｡

だから ものの重さとか
詳しかったと｡

(鳳子)この子
苦労して 頑張ったんだよー｡

別に 頑張ってねえし｡
(鳳子)すげえ 頑張っちゃったっすよ｡

よし｡ じゃあ 乾杯しようか？
なっ？ アキも来たことだし｡

お前 何 さらっと
呼び捨てにしてんだよ｡

(哲平)今 さりげなかったですね｡

いや｡ 別に いいじゃん｡
あだ名なんだし｡ ねっ？

おごってくれるんだから
呼び捨てでも いいよ｡

いや おごんないよ｡
ケチ｡

ケチって 言えばいいと
思ってんですか？

はいはい はいはい｡
じゃあ これからも➡

仲良く やっていきましょうと
いうことで｡

はい 乾杯！
(一同)乾杯！ ほいー｡

ああー｡ おいしい！
おいしいね アキ｡

アキ｡ エビ 食べる？

食べない｡
どっから 持ってきたんだよ？

タイ 食べる？
ヤダ｡ この 酔っぱらい｡

アハハハハ｡

♬～

ねえ？ これ 見て｡
今回の事件と 似てない？

えー｡ ｢額から あごにかけての
粉砕骨折｡➡

被害者の頭上から 20kg相当の
鉄骨を落とし 犯行後に持ち去る｣

かなり 似てるな｡

やっぱり 建設現場の資材が
凶器に 使われたんですかね？

でも 鑑識の調べでは
資材から 事件性のある反応は➡

出なかったって｡
ねえ？

おでこの陥没以外に 骨折のある
個所って どこだったっけ？

鼻骨と鎖骨 頸椎｡
あと 左右前腕の尺骨｡

左右前腕の尺骨？
尺骨って こっち？

そう｡ 花壇に打ちつけたと
思われる 打撲の跡も残ってる｡

変だな｡
何が？

どうして 外側なんだろ？

落下物から 逃げようとする人が
腕の外側を 下に向けるかな？

どういうこと？
上から もの 落ちてきたら➡

どうやって 逃げる？
まあ こう？

手のひらを 上に向けて
逃げる人なんて いると思う？

ああ｡ 確かに おかしいかも｡
もし 普通に 歩いてたとしても➡

外側 ぶつけるって 変だよね｡

発見されたときの 被害者って
どんな格好だったっけ？

よし！ 哲平！
えっ？ またですか？

はい｡

羽井君｡ 何に見える？
(彰)雨ごい｡

(哲平)雨ごいって｡
すいません｡ 雨ごい｡➡

雨｡ 雨よ 降れー！
この 日照りの畑に 雨よ 降れー！

それじゃ ゴール 決めたときの
サッカー選手じゃねえかよ｡

(哲平)ゴール！ 決めたのは 戸田｡
戸田って 懐かしいなぁ｡

あっ｡ あれさ 今
どこのチームに いるんだっけ？

ジェフ 千葉｡
詳しいね｡

(彰)あいつの スライディングは
一級品だ｡

♬～

(佐川)《法医学者にしか
聞こえない 声がある｡➡

その声を つなげるのが
俺たちの仕事だ》

(亮介)《｢近づいて
呼び掛けてみたら➡

意識はあったが 言葉は発せず｡➡

表情は ほほ笑んでいるように
見えたので 驚いた｣》

(同僚)《いや｡
昔 奥さんが いたなんて➡

警察に聞いて
初めて 知ったんだよ｡➡

居酒屋で 野球の中継が
始まったら➡

テレビ 消してくれって
頼んでたよ》

受け止めたかったんだ｡
受け止める？

おい？ おい！ 大己！
おい！ ちょっ｡

えっ？
おい！ ちょっ｡ 待てって！

どこ 行くのよ!? ちょっと！
(哲平)待ってくださいよ！

えっ？ もう！ ヤダ！

おっ｡ いた いた｡

来たら｡

(チャイム)
あっ｡ 俺!?

すいません｡ 東凛大学
法医学研究室の者ですが｡

(秀子)はい？

川鍋 秀子さんですか？
(秀子)ええ｡

あの｡ 市原 良平さんの件で
伺ったんですが｡

あの｡
中に 入ってもらえますか？

すいません｡

(秀子)あの人とは もう 20年も
会ってませんでした｡➡

まさか
こんなことに なるとはねぇ｡

市原さん
野球 お好きだったんですね？

えっ？ ええ｡

最初は ずっと 野球が
嫌いな人だと 思ってたんです｡

ここに来る前
聞いてきたんですが➡

学生時代 ずっと
野球部だったんですね｡

(秀子)あの人 息子の誕生日に➡

野球の グローブを
買ってあげたんです｡➡

息子にも
やらせたかったみたいで｡

あの子が
小学校 １年のときでした｡

わたしたちが
留守にしている間に➡

ベランダから 転落したんです｡➡

現場には
ボールが 転がっていて➡

手には グローブを
はめてました｡➡

警察の方の話では
手すりから 身を乗り出して➡

ボールを 捕ろうとして
そのまま 転落したんだろうって｡

(秀子)あの人
ずっと 自分を責めてました｡➡

グローブなんか
買ってやったからだ｡➡

野球なんか
やってたからだって｡➡

わたしたち あの子の死を
乗り越えられなくて｡

あの事件から １年も しない間に
別れてしまったんです｡

あの人 最期まで
かわいそうな人だったのね｡

それは 違うと思います｡

市原さんは
１人の命を 救ったんです｡

あの日 見上げた ビルの屋上には
おそらく 子供が立っていました｡

重さ 30kgといえば
小学校 ４年生くらいでしょうか｡

その子は…｡

自殺しようと思って
飛び降りたんだと 思います｡

えっ!? 自殺？

息子さんと 同じくらいの子が➡

飛び降りようとするのを
目撃した瞬間➡

市原さんは 手を伸ばして
救いに行かずには➡

いられなかったんじゃ
ないでしょうか｡

♬～

♬～

(市原)《あっ！》

♬～

その子 どうなったんです？

きっと 助かった｡
僕は そう思います｡

(市原)《ううっ｡ ああー》

落下物は 現場になく
いまだに 発見されていません｡

地面に 何かが落ちたような
形跡も 見つかりませんでした｡

その子は➡

歩いて 帰ることが
できたんだと 思います｡

市原さんは
遠ざかる 意識の中で➡

その子に向かって
言ったんじゃないでしょうか｡

いいから 行きなさいって｡

(市原)《ああ…｡ ああー》

(男の子)《おじさん》

(市原)
《気にしなくて いいんだよ｡➡

行きなさい｡
ほら 行きなさい》

《生きてて よかった｡➡

もう 死ぬなんて
思っちゃ駄目だよ｡➡

ほら 行きなさい》

(男の子)《おじさん》
(市原)《行きなさい》

♬～

♬～

♬～

市原さんにしか
救えなかった 命だと思います｡

いや｡

救ったのは
命だけじゃないのかもしれない｡

♬～

すごいなぁって 思いました｡

ありがとう｡

♬～

♬～

≪(ノック)
(佐川)はーい｡

(玲子)失礼します｡➡

ＤＮＡ鑑定の 結果が出ました｡➡

被害者の洋服に 付着していた
髪の毛は 別の人間の髪の毛で➡

毛根から 小学生くらいの年齢と
判明しました｡➡

教授が
おっしゃっていたとおり➡

市原さんの歯に 付着していた
血液と 同一人物でした｡

警察には 報告済みです｡

分かりました｡
ご苦労さんです｡

あっ｡ コーヒーでも 飲んでく？
(玲子)はい｡➡

教授｡
(佐川)うん？

(玲子)ゼミ生のことなんですが｡
(佐川)うん｡

(玲子)今日も
無断で 外出してまして➡

リポートの 提出期限を
誰も 守っていません｡

(佐川)そりゃ 困ったもんだ｡

(玲子)教授からも 厳しく
言っていただけませんか？➡

彼らの行動は
法医学から 外れ過ぎです｡

(佐川)そうかもしれないね｡
(玲子)ハァー｡➡

それに 加地 大己｡
志望者じゃないのに➡

拾ってくるなんて
どういうおつもりですか？➡

わざわざ うちに入れるほどの
人材だとは➡

とても 思えないんですけど｡

(佐川)あいつに
初めて 会ったときから➡

ずっと 法医学に向いてると
思ってたんだ｡➡

まさか こんなとこで
会うとはねぇ｡

(玲子)おっしゃってる意味が
分かりませんが｡

(佐川)はい どうぞ｡
(玲子)あっ すいません｡➡

いただきます｡
(佐川)玲子君さ➡

法医学を志す 人間にとって
必要な資質って 何だと思う？

医学的な あらゆる知識と
客観的な判断｡

うん｡
それだけじゃないんだ｡

イマジネーション｡➡

常識にとらわれない 自由な発想が
これからの法医学に➡

もっと
求められるような 気がするんだ｡

(玲子)うん｡

だとしても
教授の意見は 納得できません｡

あんな 無謀な賭け するなんて
どうかしてるんじゃないですか？

えっ？

ゼミに ５人 全員 残るだなんて
あり得ません｡

もっと こう イマジネーション？
働かせてくださいね｡➡

ごちそうさまでした｡
失礼します｡

♬～

(隊員)《大丈夫っすか？》
(隊員)《どっちか！》

(職員)《前 開けて！
開けてください！》

(佐川)《しっかりしてください！
頑張ってくださいね！》

(鈴の音)

♬～

(医師)《死んでる者は
後回しだ！➡

お前も 治療テントの方に回れ！》
(佐川)《はい》

(鈴の音)

(大己)《この お母さん
声が 出なくなっちゃったんだね》

《｢もうちょっとだよ｡
頑張れ｣って➡

言ってあげられなくなったから➡

鈴 鳴らしてあげたんだね｡
きっと》

(鈴の音)

(鈴の音)

♬～

♬～

♬～

大己｡
うん？

いつ 子供だって思ったの？
えっ？

最初に 現場に行ったときかな｡

(哲平)えっ？
そんなに 早くからですか？

道路脇に
花束 置いてあったでしょ？

花屋で売ってる 包装された
花束に交じって➡

１つだけ ｢野原で 一生懸命
摘んできました｣って感じのが➡

あったんだよ｡
そんなの あったか？

(哲平)いやー｡
全然 覚えてないですね｡

あの辺 オフィス街だし
市原さん 独身だったから➡

どうして 子供が作った花束
置いてあるんだろうって➡

不思議でさ｡
ふーん｡

その花が 妙に
懐かしかったんだよね｡

懐かしい？
小学校んとき 初めて➡

女の子から もらった 花束が
あんな 感じだったんだ｡

こう 茎んところ ピンクの
ゴムで 止めてあってさ｡

それって 昔は モテたって自慢？
ハハハ｡ そんなんじゃないから｡

俺は ハルジオンだったな｡
ハルジオン？

うん｡
初めて 女の子から もらった花｡

よく 野原に咲いてる
ひょろっとした➡

白と黄色の花 あんだろ？
(哲平)ああ 知ってます！➡

それ 僕の地元では
貧乏花って 呼ばれてました｡

ああ 懐かしい｡ わたしの地元でも
貧乏花って 呼んでた｡

(哲平)うわー！ ごめんなさい！
すいません！ 冗談です 冗談！➡

ごめんなさい！ ああー！

やっぱ 俺には できねえな｡
うん？

市原さんと 同じこと｡

うん｡

ねえ？

＜人は いつか 必ず 死ぬ＞

＜それでも その死から➡

かすかな声を 必死で
拾おうとする者たちが いる＞

＜医大に入って ４年目の冬＞

＜僕らは 失われた命を救う
医学と出会った＞

♬『刹那』

♬～

行こっか｡

♬～

♬～

♬～

♬～

♬～

◆当番組は同時入力のため、誤字
脱字が発生する場合があります。

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