All language subtitles for スナック・キズツキ＃05

＜誰かに
だまされたわけじゃない｡

誰かに 裏切られたわけでもない｡

泣きたいほど ひどい目に
遭ったわけではないけれど➡

ほんの ささいな出来事に
心が 傷つくことがある｡

なんでもないような顔をして
やり過ごしても➡

少しずつ ｽﾄﾚｽは たまっていく｡

まるで
ﾀﾝｽの裏の 綿ぼこりみたいに…＞

すみませ～ん…｡
あっ いらっしゃい｡

表の看板 壊しちゃって…｡

＜ とある街の路地裏に➡

傷ついた者が
たどりつくｽﾅｯｸが あるらしい｡

その名も ｽﾅｯｸ ｷｽﾞﾂｷ＞

(瀧井)ﾊﾊｯ｡

いや なに 言ってんの？

２点で 816円です｡ 温めますか？

あっ いや いいです｡

ﾎﾟｲﾝﾄｶｰﾄﾞ お持ちですか？
あっ…｡

お願いします｡
あっ はい｡

お待たせしました｡

ありがとうございました｡

あっ あっ お客様 あの…
ｽﾏﾎ忘れてます！

あっ… よかった～！

いや 明日 朝ｲﾁで 仕事の電話
来る予定だったんです｡

しかも 大事なお客さんなんで➡

出られなかったら
えらいことでした｡

気付いて よかったです｡

いや～ ﾎﾝﾄ 助かりました
ありがとうございました｡

いいえ｡

あっ… これ うまいですよね｡

好きなんです｡

じゃあ また お待ちしてます｡

それじゃあ｡
ありがとうございました｡
あぁ｡

どうも ありがとうございました｡

♬～

《今日は 少し話せた》

＜ そんな富田さんも また➡

傷ついている…＞

う～ん…｡

希美 今日 面接だって｡

今度は 決まるといいけど…｡

会社 辞めたい って言ったとき
もっと 引き止めればよかった｡

おい｡
んっ？

うまくいってないのは 希美が
いちばん よく わかってるんだ｡

そうね｡

♬～

どうしたんですか？ あの看板｡

看板も
傷ついちゃってるじゃないですか｡

ちょっとね…｡

ﾌｯ
さすがにね ｶﾞﾑﾃｰﾌﾟは ちょっと…｡

修理したほうが
いいんじゃないっすか？

だめ？
いや だめっていうかね➡

哀愁 漂ってます｡
哀愁か～｡

知り合いの看板屋
紹介しましょうか？

看板屋に 知り合い いるの？

あれ？ 言ってませんでしたっけ？

いや 俺 この仕事やる前
看板屋の営業 やってたんですよ｡

そうなんだ｡
自分で言うのも なんですけど➡

これでも
優秀な 営業ﾏﾝだったんですよ｡

へぇ～｡

頼む！ 辞めないでくれ 頼む！

って 頭 下げられて
引き止められまして…｡

なのに 転職したんだ？

まあ 仕事に
不満は なかったんですけどねぇ➡

他に やりたいことが
あったもんですから｡

当社では 経理職を
ご希望ということですね？

はい ずっと 経理部門で
働いておりましたので➡

こちらでも その経験が
生かせればと思っております｡

え～っと 大学を卒業されて➡

最初は 商社に入られたんですね？
はい｡

なぜ 辞められたんですか？

はい 自分なりに 新しいことに
挑戦してみたかったんです｡

ちょうど 30歳でしたので➡

挑戦できるのは
今しかないと思い➡

思い切って 転職しました｡

しかし 転職先の会社も
辞められてますよね？

ちょっと
体調を 崩してしまいまして…｡

そうでしたか｡

《なに 書いてるんだろう？

ﾐｽったかな…》

あっ… ですが
今は まったく問題ありません｡

わかりました｡

今 35歳？
はい｡

え～っと… ご実家ですか？

はい 両親と暮らしております｡

なるほど｡

あとは 資格のことなんですが…｡

はぁ～｡

≪お願いします｡
≪お願いします｡

≪こちら 部下の 森川です｡
≪森川です お願いいたします｡

ｽﾍﾟｰｽｶﾝﾊﾟﾆｰの 田中です｡
頂戴します｡
お願いします｡

よろしくお願いします｡
よろしくお願いいたします｡

あとは 記入漏れがないか
ﾁｪｯｸしたら 修正しようか？

わかりました｡

こちらの資料をもとに
進めさせていただきます｡

はい わかりました｡

ｻﾝﾌﾟﾙが出来次第
お持ちいたしますので➡

また ご連絡いたします はい｡

《みんな すごいな…》

♬｢世界中の どこにいても
私が見つけるから｣

♬｢君の君らしさに 私は恋した｣

♬～

♬｢何でも簡単にできる君に
悩みなんて…｣

ただいま～｡
(美咲)あっ おかえり｡

希美おばちゃ～ん！
あ～ 陽菜ちゃん｡

おっ おぉ～！
陽菜 希美お姉ちゃん でしょ｡

陽菜ちゃん こんにちは｡

んっ？ どうした？

なんで こんな格好してるの？

いつもと 違う格好してるから
不思議なんだよ｡

ﾌﾌｯ ちょっとね
お出かけしてたんだよ｡

お出かけ？ 陽菜も行く！
えぇ？

行く 行く！
陽菜！

あっ そうだ！ ねぇ 陽菜
冷蔵庫に ｼｭｰｸﾘｰﾑあるよ｡

ｼｭｰｸﾘｰﾑ？
うん｡
そうだ そうだ ほら｡

白いｸﾘｰﾑとﾁｮｺと どっちがいい？

ﾁｮｺ！
はい じゃあ…｡
おかえり｡

≪じゃあ おばあちゃん
お皿に取ってあげるね｡

ﾊﾙくん また 大きくなったね｡
そうなの｡

もう
だっこすると 腕が痛くて大変｡

はい どうぞ｡

うわぁ～ おいしそう！
食べてもいい？

うん いいよ｡
やった～ おいしそう！

着替えてくるわ｡
うん｡

♬～

《なんで
こんな格好 してるんだろう？》

お願いしま～す｡

ﾊﾞｲﾄ上がりに
何か買いたくなるの わかります｡

お客さんが 買ってるもの
食べたくなっちゃって｡
ﾊﾊﾊｯ｡

このﾍﾟﾍﾟﾛﾝﾁｰﾉ うまかったですよ｡
へぇ～｡

974円です｡

時給１時間 ほぼ 飛んだ…｡
(２人)ﾌﾌﾌﾌｯ｡

明日も 深夜ですか？
太陽 しばらく見てないっす｡

お疲れさまです｡

これ 温めますか？
あ～ 大丈夫｡
うん｡

(ﾊﾞｲﾌﾞ音)

《｢結果は 追ってご連絡｣

また だめかも…》

《自分なりに 新しいことに
挑戦してみたかったんです って➡

なんだよ…》

♬～

《別に つきあいたいとか
思ってたわけじゃないけど…》

♬～

《ｽﾅｯｸ ｷｽﾞﾂｷ… 変な名前｡

看板も 傷ついてたし…》

《でも なんか 気になる…》

こんばんは…｡

んっ いらっしゃい｡

あの いいですか？

どうぞ ごめんなさいね｡

あっ お酒は置いてない って
あの 表に…｡
うん｡

普通の飲み物
注文していいんですか？

もちろん｡

えっと…
じゃあ ﾎｯﾄｺｺｱを お願いします｡

了解｡

私
近くのｺﾝﾋﾞﾆで ﾊﾞｲﾄしてるんです｡

そうなんだ｡

ここの前 たまに通るんですけど
お店 全然 気がつかなくて…｡

そう｡

今夜は
なんだか 目についたというか…｡

はい どうぞ｡

えっと これは…？

ｺｰﾝ茶｡

私 頼んだの ｺｺｱなんですけど…｡

ｺｺｱ作るのに 少し時間かかるから
とりあえず これ 飲んでて｡

《あっ おいしい》

《まあ いっか…
急いで 帰りたいわけじゃないし》

♬～

お店 長いんですか？

もう ５年目｡
へぇ～｡

前は
別の仕事 してたんだけどね～｡

あっ そうなんですか｡

私も 転職したんです｡

そう｡

うん…
でも また 就活してますけど…｡

親にも 心配かけてるし➡

どんどん 周りに置いていかれて
焦っちゃって…｡

まあ 焦るばかりで
どうにもなんないんですけど…｡

はぁ～｡

はぁ… もう どうしたら…｡

えっ？

はぁ～｡

はぁ… もう どうしたら…｡

えっ？

停電かなぁ？

台風の季節でもないのに
どうしたんでしょうね？

何か あったのかなぁ？

もしも 今 何かあったら…｡

んっ？

どうします？

う～ん 困るね…｡

ｱﾝﾀのｺｺｱ 途中だし｡

ﾊﾊｯ ﾌﾌｯ…｡

｟富田:もしさ～
今 なんか あったらさ～｡

んっ 何？ なんかって？

いや わかんない…
なんか 大変なこと 世界ﾚﾍﾞﾙの｡

ﾌﾌｯ ざっくりだなぁ｡

そしたらさ 仕事 探しどころじゃ
なくなるよね…｡

就活 どう？

う～ん…｡

そっか…｡

≪(陽菜)ﾏﾏ！ 見て 見て！

ねぇ 陽菜ちゃん 危ないよ！
大丈夫 大丈夫｡

うちらの老後って
どうなってんのかなぁ…｡

ねぇ お姉ちゃん…｡
んっ？

実家 戻っても いいかな？
陽菜と悠斗 連れて…｡

離婚する｡

決定？

ほぼ…｡

ﾎｯﾎｯ…｡

ﾏｼﾞか～｡

無理かな？

いや～ ｱﾝﾀの部屋 四畳半だよ｡
私もだけど｡

つめつめに寝るし｡

ﾌｯﾊｯﾊｯ… ｶｵｽだな ﾌﾌｯ｡

ﾏﾏ！ お花｡

わぁ かわいい！

はい どうぞ｡

かわいい？
うん｡
ﾌﾌｯ｡

ﾏﾏ かわいい！
ﾎﾝﾄ？

でも
陽菜は もっと かわいいよ～！

ﾌﾌﾌﾌ…｠

《富田:確かな幸せ っていうか
確かな 安心感？

そんなもの どこにあるのかな…》

ついたね｡

何も 起きませんでしたね｡

なんも起こんなくて よかった｡
うん｡

さて 始めよっかね～ ｱﾝﾀのｺｺｱ｡

えっ ｺｺｱの粉 煎るんですか？

そう｡

弱火でね こうするとさぁ
香りも よくなるの｡

へぇ～｡

しばらく しりとりでもする？

しりとり？ 大人 ２人で？

じゃあ 私から｡

えっ ちょっと…
ﾎﾝﾄに するんですか？

しばらく しりとりでもする？

しりとり？ 大人 ２人で？

じゃあ 私から｡

えっ ちょっと…
ﾎﾝﾄに するんですか？

いくよ｡

｢ﾎｯﾄｺｺｱ 飲みたくなるって
まあまあ 疲れてる日｣｡

あぁ…｡

はい ｢ひ｣｡

えっ…
これ 文章的なやつですか？

なんでもいいよ｡
え～ なんか 恥ずかしいな…｡

あっ ｢ひ｣ですよね？ ｢ひ｣｡
う～ん…｡

｢百均の ばんそうこうを➡

靴ずれに貼って 就活｣｡

｢つ｣ですよ｡

｢つ｣… ｢つ｣…｡

｢作るよ ｱﾝﾀに うまいｺｺｱ｣｡

｢あ｣… ｢あ｣…｡

ｺｺｱの粉が 色が変わって
香りが出てきたら 火を止めて➡

牛乳を ちょい 入れて➡

よく 練るの｡

へぇ～｡

はい ｢あ｣からだよ｡

あぁ… ｢あ｣…｡

｢明るくなくてもいい｡

ありふれたものでいいから
確実な明日が欲しい｣｡

｢い｣ ｢い｣…｡

｢今の私が 求めているのは
なんなのだろう｣｡

｢う｣… ｢う｣… ｢う｣…｡

｢運命の人 なんかじゃなく➡

ただ 生き延びたい
それだけなのかも｣｡

｢も｣ですよ｡

ごめん…
今 ｺｺｱが ｸﾗｲﾏｯｸｽだから 続けて｡

あぁ…｡

｢も｣ ｢も｣…｡

｢もしも かなうなら➡

新しい恋だって したいけれど➡

いいなと思ってる
ｺﾝﾋﾞﾆの お客さんは➡

私のことなんか 眼中になくて➡

まあ でも 久しぶりに
ﾗﾌﾞｿﾝｸﾞ 聴いちゃったりして｣｡

ﾌﾌｯ｡

｢それだけでも
潤い ありがとう みたいな｣｡

ﾌﾌｯ｡

｢笑っちゃうくらい頼りない
私の人生｡

差し出せるものも 残せるものも➡

たぶん 何もないんだ｣｡

｢だ｣ ｢だ｣…｡

｢だけど 私たちは 出場している➡

この歴史に｡

歴史の上に
いやおうなしに 積もっていく➡

ちりみたいなものかも
しれんがな｣｡

ちりも積もれば ってやつですか？

そうそう ﾌﾌｯ｡

あっ ｢な｣ですね｡ ｢な｣…｡

｢なんか 壮大だけど
そう思っとこ｣｡

｢こ｣…｡

｢今夜 ｱﾝﾀは
世界一うまいｺｺｱを飲む｣｡

今日も お疲れさん｡

ﾌﾌｯ いただきます｡

おいしい｡
ﾌﾌｯ｡

ごちそうさまでした｡

《しりとり 久しぶりにしたな～｡

楽しかったな》

お父さん 今日 帰り何時？
６時半｡

いつもと おんなじね｡
あぁ｡

じゃあ いってくる｡

希美｡

しっかりな！

うん いってきます｡

いってらっしゃい｡

♬～

いってきます｡

｢す｣…
｢少し 髪でも切りたいな～｣｡

｢な｣…｡

｢なんだか
身軽になりたい気持ち｣｡

｢ち｣…
｢地下鉄 乗って 今日も面接｣｡

｢つ｣…｡

｢ついに 10社目｡

まだ 続きそう｣｡

｢う｣…｡

｢上を向いたら 飛行機雲｣｡

｢も｣…｡

｢もうひと息だ｣｡

今日も一日 頑張れ 私！

仕事 仕事… よっ！

看板 出して 今日も 営業｡

｢う｣… ｢う｣ ｢う｣か… ｢う｣…｡

うぅ！ うぅ… さぶっ！

あれ？ どうしたの？
うっ… あっ ちょっと➡

ﾄｲﾚ 借りてもいいですか？
あ～ どうぞ どうぞ｡

(ﾄｲﾚの水が流れる音)

ふぅ～｡

この先の居酒屋から
配達の依頼が 入ったんですよ｡

急に 団体の予約が入ったから
ﾋﾞｰﾙ すぐに届けてほしいって｡

お疲れさん｡

もう 事務所 戻って
着替えも済ませて➡

もう 帰るはずだったんですけど｡

いや そのままでいいから
すぐ 行ってくれ っつって…｡

もう まいっちゃいましたよ～
ﾊｯﾊｯﾊｯ…！

こぐま屋さん それ 私服？

そうですよ｡ あっ！

ﾊﾊｯ！ あれ？ 熊…｡

いや 自分でも 無意識に着てた…｡

ﾊﾊｯ ﾋﾞｯｸﾘっすよ～ ﾊﾊﾊﾊ…！

あっ じゃあ あの
配達あるんで また…｡

ご苦労さん｡
うぃ～っす！

なんだよ これじゃ
制服だか 私服だか➡

わかんねえな ﾁｸｼｮｳ｡

じゃあ また お待ちしてます｡
どうも ありがとうございました｡

印刷 まだだよね？
変更って 結構 あります？

今 入れてもらった
ｻﾊﾞなんですけど…｡
何か？

ちょっと
欠けてる身が 多くないですか？

はい 少々 お待ちください｡

＜安達さんに
細かく 注文をつけてしまった➡

香保さん＞

☎(ﾖｼ子)京大なんて
すごいわね～｡

お孫さん できるのねぇ なんて
ご近所さんに 褒められてねぇ｡

ただいま｡
香保｡
うん｡

やあね～ お母さん｡

いろんな人に
言いふらしてんじゃないの？

まあ でも これで私も
やっと ぐっすり眠れる｡

塾の先生は 大丈夫 って
太鼓判 おしてくれて➡

優も 自信あったみたいだけど➡

でも やっぱり 発表を見るまで
落ち着かなくて…｡

お母さん おなかすいた｡
ごはん まだ？

ごめん また 今度｡

明日 そっち 顔 出すから｡
はい じゃあね｡

ちょっと待ってて｡

＜一人息子の 大学合格に
喜んでいます＞

＜ しかし そんな彼女も また
傷ついている…＞

ｱﾝﾀも 重そうだね｡

いらっしゃい｡