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いつも
ご利用 ありがとうございます｡

＜ｺｰﾙｾﾝﾀｰで働く 中田さん｡

その彼氏の 瀧井くん＞

潤は？ 明日 ﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰなんだっけ？

いや もう 単なる運転手｡

＜彼女は いつも聞き役＞

また 連絡するわ｡
うん｡

＜ それが 時々 やるせない…｡

一方 瀧井くんも また…＞

(一同)かんぱ～い！

＜傷ついている…＞

(ﾊﾞｲﾌﾞ音)

いらっしゃいませ｡

合計で 375円です｡

あっ…｡

これも お願いします｡

はい｡

合計が １万と 3, 059円です｡
はい｡

ﾎﾟｲﾝﾄｶｰﾄﾞは お持ちですか？
あっ あります｡

おはよう｡
おはよう｡

あ～ なんとか ここまで来られた｡

お～｡
ごめんね 免許 取り立てでさ➡

高速 まだ 怖くて…｡
いいって｡

ねっ 言ったとおりでしょ？

あっ 今日 一緒に行く 葵ちゃん｡

おはようございます｡
どうも｡

高校の同級生 ｲｹﾒﾝでしょ？
ﾌﾌﾌｯ｡

えっ ｽｷｭｰﾊﾞﾀﾞｲﾋﾞﾝｸﾞの
ｽｸｰﾙの集まりなんだっけ？

あっ そう｡
せっかくの休みに 駆り出して➡

申し訳ないんだけど でも 行って
絶対 損させないから！

ﾋﾞｯｸﾘすると思うよ～ ねっ｡
(笑い声)

じゃあ 運転 お願い！
はい｡

鍵 ささってる？
うん｡
ｵｯｹｰ｡

(ﾐﾄﾞﾘ)よいしょ～！

どうしたの？ これ｡
もらったんですよ｡

ﾒﾛﾝを？
うん…｡

ちょっ… ちょっと見てください｡

高級ﾒﾛﾝですよ｡
みたいね｡

さっき ﾀﾜﾏﾝの最上階
行ってきたんですよ｡

ｼｬﾝﾊﾟﾝ ８ｹｰｽも
注文あったんですよ｡

昼間っから
ﾎｰﾑﾊﾟｰﾃｨｰ やるらしいですよ｡

ｾﾚﾌﾞの集まりですよ｡
ほ～う｡

そしたら そこの奥さんに➡

｢人手が足りないから
手伝ってくださる？｣って➡

頼まれまして｡

帰りしなに
｢ご苦労さま どうぞ｣って｡

それで ﾒﾛﾝか｡

俺 子どものころからの
夢だったんですよ～｡

真っ二つに割ったﾒﾛﾝ 食べるのが｡

うん｡
はい｡

食べません？
食べる？

ﾊﾊﾊｯ やった～！
じゃあ 切ってしまうよ？

切ってください 怖い 怖い！

一思いに｡
(笑い声)

やあ！
ｸﾞｱｯ！

うわぁ～！
おっ｡

わ～ すごい！

♬～

でかくない？
え～ 羽振り いいな～｡

行こう！ 行こう｡
はい｡

ｽｸｰﾙの社長
家が すっごい お金持ちらしい｡

えっ
ねぇ 会費とか ﾎﾝﾄにいいの？

ｵｰｹｰ ｵｰｹｰ｡ なんか 生徒の連れも
誘っていいって 言ってたし｡

てかさぁ
ﾊﾟｰｷﾝｸﾞ 高級車ばっかだったよね！

たぶん 社長の知り合いだよ｡

(ﾐﾄﾞﾘ)いただきま～す｡

ねぇ
なに このお肉 脂とろける～！

うまっ！
う～ん｡
うっめ！

これさぁ
Ａ５ﾗﾝｸとかだよ きっと｡

松阪牛とか神戸牛｡
ﾏｼﾞか…｡

でもさぁ 葵ちゃん
食べ慣れてるんでしょ？

そんなことないですよ｡
ﾎﾝﾄ？
えっ？

池袋に ﾋﾞﾙ 持ってて
それぞれ 会社経営してるの｡

すごくない？
へぇ～！
いいえ 全然 そんなことないです｡

すごいよ｡
あっ 松原さん！

あ～ ﾐﾄﾞﾘちゃんも来てたんだ｡

同じｽｸｰﾙの 松原さん｡

っていっても 私なんかが
気安く話せる人じゃないんだけど｡

なに 言ってるの｡

友達の 瀧井くんです｡

松原です よろしく｡
あっ 名刺… 持ってきたっけ…｡

あった あった あった｡
≪肉 持ってって～｡

ちょっと…
私 もっと もらってくるわ➡

Ａ５ﾗﾝｸ｡
うんうん｡
私も 手伝います｡

よいしょ…｡

お待たせしました｡
改めまして…｡

大雄企画というと どういう…｡

あ～ 広告代理店です｡

というと CMとか ｲﾍﾞﾝﾄとか？
あっ いえいえ いえ｡

もう あの
地方の小さな物産展とか…｡

物産展…｡

ｱﾊﾊｯ いいですね…｡

あっ いえいえ…｡

あぁ～ 飯田さん…｡
あっ どうも｡

じゃあ また｡
はい｡

株式会社ｸﾞﾙﾒｲﾄﾚｽﾄﾗﾝｸﾞﾙｰﾌﾟ CEO｡

♬～

《瀧井:なんか 場違いだな～》

(ﾊﾞｲﾌﾞ音)

(和也の声)
｢お疲れ！ 出張の件だけど➡

来週の水曜からになった｡

一緒に飯でも食うか？｣｡

ﾌﾌｯ｡

｟和也:どんどん焼くぞ
いくよ～！ はい ﾄﾞｰﾝ！ はい｡

あっ 赤いｳｲﾝﾅｰ！
翔太 ｳｲﾝﾅｰ 大好きだもんね～！

うちの焼き肉
絶対 これ入ってたよな！

わりと大きくなるまで 焼き肉って
こういうもんだと思ってた｡

あっ 俺も！
やっぱり？
ﾊﾊﾊﾊ…！

時々 食べたくなるよね
赤いｳｲﾝﾅｰ｡

あと 母さんの だし巻き卵とかな｡

そうそう そう｡
ﾊﾊﾊﾊ…！

よ～し ほらほら 野菜も ほら
どんどん もっと もっと もっと｡

ﾌﾌﾌ…！ いくね！

今日 頑張ってんじゃないのか？

♬～

うん… 潤が ほら 来てるから
野菜 頑張って食べてんだよ｡

ﾊﾊﾊﾊﾊ…！
すごいな お前！

自分で取っちゃって…｠

(葵)お肉 もらってきました｡

おっ ｻﾝｷｭｰ｡

ﾐﾄﾞﾘさん
ｷｬﾋﾞｱも もらってくるそうです｡

えっ!?

≪は～い 皆さ～ん！

ｼｬﾄｰﾏﾙｺﾞｰ
差し入れ いただきました～！

お～っ！

高い お酒なんですか？
うん まぁ…｡

そうなんですね…
私 詳しくなくて…｡

ふ～ん…｡

えっ 葵ちゃんは➡

将来 お父さんと お母さんの
会社に入るの？

いえ 兄は 父の会社に
入ったんですけど…｡
うん｡

私は 語学に 興味があったんで｡
へぇ～｡

親も わりと
自分で選べばいい って感じで｡

ふ～ん 語学か～｡

えっ じゃあ 専攻は？
ﾄﾞｲﾂ語です｡

実は 来月から 留学するんです｡
えぇ!?

一応 １年の予定なんですけど➡

そのまま 向こうの大学に
移ってもいいかな～ って➡

思っていて…｡
へぇ～｡

≪じゃあ 皆さん かんぱ～い！

(一同)かんぱ～い！

≪うん あ～ いい香り｡

≪こりゃ すごい！
≪おいしい！

≪最高！
≪最高です！

≪もっと 飲みましょう｡

≪皆さん お肉も食べてね｡
≪はい｡

≪ありがとうございます｡
≪まだまだ ありますよ～！

よっと…｡

♬～

あ～ よかった… うん…｡

よっし お疲れ～｡

今日 ﾎﾝﾄ ありがとね｡

いやいや 楽しかったよ｡
よかった｡

鍵｡
はい｡

えっ ﾎﾝﾄに
家まで 送っていかなくていいの？

うん いい｡

じゃあ ちょっと部屋 寄ってく？

それ だめでしょ｡

冗談だよ！
ﾌﾌｯ｡

まあ
半分 本気だけど… なんつって｡

じゃあ また｡
うん｡

はぁ～ 真面目なんだから…｡

《なんだか 疲れたな～》

(石が看板にぶつかる音)

やっべ！

うわぁ～｡

すみませ～ん｡

あっ いらっしゃい｡
あっ 客じゃなくて あの➡

表の看板 壊しちゃって ﾋﾋﾞが…｡

弁償させてもらう…｡
そんなことより➡

ちょっとさぁ
ここの電球 取り替えてくれない？

えっ？

これ｡

あっ はい…｡

悪いねぇ…｡
いえ｡

これで いいのかなあ…｡

ありがとう…｡

おかげで 助かった｡
いえ｡

座って｡
はい｡

お礼と言っては なんだけど➡

ｺｰﾋｰでも どう？
えっ？

はい｡
あっ… なんか 逆に すみません｡

♬～

たまに この前 通るんですけど➡

この店 全然 気付かなかったです｡

最近 できたんですか？

もう ５年目｡

へぇ～｡

なんか 雰囲気も いいですよね～｡

ちょっと ﾚﾄﾛで➡

なんか 懐かしい感じがします｡

そう？

あっ…｡

料理も いっぱい あるんですね｡

うん｡

今日 友達に誘われて
ﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰ 行ってきたんですけど➡

ちっとも 食べた気がしなくて…｡

はい どうぞ｡

今日も お疲れさん｡

はい どうぞ｡

今日も お疲れさん｡

いただきます｡

はぁ～ うまい｡

うちのｺｰﾋｰは 北欧風ね｡

へぇ～｡

旅先で飲んだｺｰﾋｰが おいしくて
やってみたってわけ｡

北欧に 旅とか行ってみたいなぁ｡

ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞ ｽｳｪｰﾃﾞﾝ ﾉﾙｳｪｰ｡

あっ ﾉﾙｳｪｰって 村上春樹の小説に
たしか ありましたよね？

うん 『ﾉﾙｳｪｲの森』｡

うん それです｡

ﾉﾙｳｪｰが 舞台じゃないけどね｡

あっ そうなんですね｡
読んだことなくて｡

ねぇ｡

お金持ちであることの
最大の利点って なんだと思う？

えっ？

『ﾉﾙｳｪｲの森』の一節｡

ずいぶん前に 読んだんだけど
覚えてるんだよね～｡

主人公の青年に
女の子が 問いかけるｾﾘﾌ｡

青年は わからないな って言うの｡

女の子は なんて答えたんですか？

｢お金がない って
言えることなのよ｣って｡

その子は 高校まで➡

お金持ちの女学校に
通ってたのよ｡

親が 無理して入れたもんだから➡

友達のなかで 自分だけが
お金持ちじゃなかったわけ｡

例えば 友達に
｢何か しましょ｣って言うと➡

友達は➡

｢私は今 お金がないから だめ｣
って言う｡

でも 逆の立場になったら➡

自分は とても そんなこと
言えないな って思うわけ｡

だって
私が ｢お金がない｣って言ったら➡

それは 本当に
お金が ないことなんだもん｡

惨めなだけよ って｡

♬～

｟瀧井:もう 行くよ｡
あ～ ちょっと待って待って｡

よいしょ…｡

はい！
はい！

いってきます｡

いってらっしゃい｡

気をつけてね！

えっ 明西大にしたの？
うん｡

お前 美大 行きたいって
言ってなかったっけ？

いや まぁ… うちから近いんだよ｡

俺 朝 弱いしさ｡
そんな理由？

それは ありえないだろう｠
(笑い声)

《瀧井:｢お金がない｣
とは 言えなかった…》

そうだ…｡

朗読でも しよっか？

朗読？

こっちは ｱﾝﾀの本｡

あっ いやいや いや…
そういうのいいですから 俺｡

しかも これ… 白紙ですから｡

創作すんの｡
創作？

♬～

じゃあ 私から読むね｡

♬～

｢ｳﾐｳｼは 思った｣｡
ｳﾐｳｼ？

あっ ほら
海の中にいる ﾅﾏｺっぽいやつ｡

特に 意味はなく 思いつき｡

｢ｳﾐｳｼは 思った｡

いろいろ 嫌になっちまった｡

そう思ったところで
彼には 今夜 行く当てもなかった｡

ｳﾐｳｼは 思った｣｡

｢ｳﾐｳｼは 思った｣｡

えっと…｡

♬～

｢ｼｬﾄｰﾏﾙｺﾞｰなんて 知らねえ｣｡

♬～

｢でも➡

彼は
知らないなんて言えなかった｣｡

｟ｼｬﾄｰﾏﾙｺﾞｰ
差し入れ いただきました～！

お～っ！

高い お酒なんですか？
うん まぁ…｡

そうなんですね…
私 詳しくなくて…｡

ふ～ん…｠

｢知らないと
あっけらかんと言えることが➡

金持ちなんだ って…｡

ｳﾐｳｼは➡

海の底で思った｣｡

｢ｳﾐｳｼは 知らなかった｡

他に どんな世界が
広がってるかなんて➡

想像したことさえ なかった｣｡

｢ある夜➡

ｳﾐｳｼは 豪華客船に潜り込んだ｣｡

｢そこでは 毎夜➡

舞踏会が開かれていた｣｡

｢生まれて初めて見る景色だった｣｡

｢けれど それは
参加者たちにとっては➡

よくある 夕食の席だった｣｡

｢ｳﾐｳｼは 知らなかった｣｡

｢誰も 教えてはくれなかった｣｡

｢選択できることが➡

富を持つ者の
最大の利点なんだ って➡

ｳﾐｳｼは 知らぬまま生きてきた｣｡

｟いえ 兄は
父の会社に入ったんですけど➡

私は 語学に興味があって｡

親も
自分で選べばいい って感じで｡

えっ 明西大にしたの？

お前 美大 行きたいって
言ってなかったっけ？｠

｢彼は… 知らなかったんだ｡

何が 選択できたかさえも…｣｡

なんか 食べる？

あの…｡

ﾒﾆｭｰにない料理も
ﾘｸｴｽﾄできますか？

うん｡

だし巻き卵…｡

了解｡

♬～

はい どうぞ｡

いただきます｡

｟瀧井:できた？ あっ うまそ｡
あっ ちょっと待って もう 時間？

ちょっと！
入れる分 なくなっちゃうでしょ！

うまっ…｡
食べるんだったら
ﾌﾞﾛｯｺﾘｰ 食べなさい｡

それより あと なんか入るの？
あと１個 ちょっと…！

だめ？
だめ！
だって 足りなかったんだもん｡

食べ過ぎでしょ 詰めるの
なくなっちゃうんですけど～｠

♬～

ごちそうさまでした｡

｢ﾎﾀﾃは言った｣｡

ﾎﾀﾃ？

｢逃げることも できたのに➡

ｱﾝﾀは 店に入ってきた｣｡

あっ…｡

ﾌﾌｯ｡

♬～

あっ 兄ちゃん？

うん ﾒｰﾙ見たよ｡

いや 別に 急じゃないって｡

ﾒｰﾙ見たから 電話したの｡

♬～

ｺﾞﾐ出し してきま～す｡

(瀧井)ﾊﾊｯ なに？

いや なに 言ってんの？
いやいや まあ いいけどさぁ…｡

飯？ いいよ｡
＜ｺﾝﾋﾞﾆで働く 富田さん｡

そんな彼女も また
傷ついている…＞

こんばんは…｡

んっ… いらっしゃい！