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ねぇ まだなの？ 早くしてよ｡

はい ただいま｡

＜ とある街の路地裏に➡

傷ついた者が たどりつく➡

ｽﾅｯｸが あるらしい｡

その名も ｽﾅｯｸ ｷｽﾞﾂｷ＞

いらっしゃい｡

はい どうぞ｡

《おいしい》

ｱﾝﾀ ﾋﾟｱﾉやってた？

えっ？

♬(ﾋﾟｱﾉ)

＜安達さんの隣で➡

大きく足を広げている 佐藤さん＞

わかりました｡ じゃあ あとで
何案かﾒｰﾙしますんで｡

悪いね 忙しいとこ｡

＜ そんな彼も
やっぱり 傷ついている＞

(ｸﾗｸｼｮﾝ)

どうも～ こぐま屋で～す｡

ご苦労さん｡

ふぅ～｡
ん？

えっ？

あっ それ…｡
やだな～ もう わかります？

たしか前 色が違ってたよね｡

ﾊﾞｲﾄﾘｰﾀﾞｰに なっちゃったんすよ｡
ﾊﾞｲﾄﾘｰﾀﾞｰ？

あっ ﾊﾞｲﾄの ﾘｰﾀﾞｰです｡

まんまだね｡
弱っちゃいましたよ｡

俺 なんか
ﾘｰﾀﾞｰって柄じゃないし➡

他にやること たくさんあるし｡

大変だね｡
苦手なんすよね｡

なんか 人の上に立つとか
人を束ねるとか｡

そんなに たくさんいるんだ｡

俺の下に ２人いるんすよ｡

あっ なんで…｡

今の なんだよ ２人かって
思いませんでした？

ううん｡

１人は ものすごく
やる気があって｡

で もう１人は
全然 やる気がないんすよ｡

だから
あの 褒めたり おだてたり➡

ﾊｯﾊﾟかけたり 慰めたり
２人でも 結構 大変なんですよ｡

えっ？
面倒見がいいんだね｡

いや そうですか？
向いてるよ ﾘｰﾀﾞｰに｡

嫌だな～ やめてくださいよ｡

ﾍﾍ… えっと な… なんだっけ？

よし 頑張るぞ！

ﾌﾌﾌ…｡

ただいま｡

おかえり｡
ただいま｡

お母さん
飯 待ってなくていいからさぁ｡

(ﾖｼ子)うん 私も今日は
お昼 遅かったし…｡

先 食べててよ｡
うん｡

はい はい｡
ｻﾝｷｭｰ｡

さぁ いただきま～す｡

いただきます｡

んっ… あっ そうそう｡
うん？

あっ 先月
会社の健康診断だったでしょ？

うん なんともなかったよ｡
あっ そう よかった｡

お母さんも ちゃんと
受けておいたほうがいいよ｡

うん｡ 役所の案内 来てた｡

あとさ…｡
うん｡

ｴﾋﾞﾌﾗｲの尻尾 取んなくていいから｡

いいよ～
このほうが おいしいんだから｡

☎

はい 佐藤で…｡

あっ 香保｡

えっ？ 優くんが？

いや すごいじゃない｡

おめでとう よかったわね～｡

うん はい はい｡

あ～ わかった はい｡

うん 尚人さんと➡

あちらの
ご両親にもよろしくね～｡

う～ん おやすみなさい｡

香保から？

うん 優くんが
合格したんだって 京大｡

へぇ～｡
いや～ 香保も➡

ず～っと 頑張ってたもんね～｡

塾の送り迎えをしたり
毎日 夜食 作ったり｡

そっか～｡

ついに うちの家系から京大生か｡

香保も鼻高々だな｡
うん｡

あっ そうそう そうよ｡

何してんの？

近いうちに
香保が来るっていうから➡

お祝い 渡そうと思って｡

祝儀袋 まだ あったわよね？

あっ ｱﾝﾀからもいるでしょう？
お祝い 甥っ子の｡

うん｡ 渡しといてよ｡ いくら？

(ﾖｼ子)私は ５万円にするけど｡

う～ん じゃあ 俺も５万で｡

(ﾖｼ子)うん｡

ｱﾝﾀは あげるばっかりで
気の毒だけど｡

あ… あっ そうそう｡

この間… 清瀬の あの
ゆかりちゃんの結婚祝いに➡

使ったんだった｡

じゃあ 俺 買ってくるよ｡

(ﾖｼ子)あぁ… 悪いわね～｡

《京大だしな｡
５万入れるし…》

いらっしゃいませ｡

２点で 996円です｡

《最後に お祝いもらったの
いつだったっけ？》

1, 000円 お預かりします｡

《就職んときか？

あれから
なんのお祝いも もらってない》

ありがとうございました｡
ねぇ ﾊﾟﾊﾟ➡

おいしいｱｲｽ あるんだよ 買って｡
ﾌﾌｯ いいけど➡

今日は １個だけだよ｡
は～い｡

《そりゃそうか｡

何も起こってないからなぁ
祝ってもらうこと｡

結婚も 子どもが産まれることも➡

子どもが大学に入ることも…》

《ｽﾅｯｸ ｷｽﾞﾂｷ？

お酒 置いてないｽﾅｯｸ？》

いらっしゃい｡

こんばんは｡

どうぞ｡

えっと… ｺｰﾋｰを｡

了解｡

♬～

珍しいですね
お酒 置いてないｽﾅｯｸなんて｡

私が 飲めないもんでね｡

あ～ そうですか｡

私も飲めないんです｡
そう｡

お酒 置いてないから
入ってみたくなったというか｡

そりゃあ うれしいね｡

お酒 置いてないから
入ってみたくなったというか｡

そりゃあ うれしいね｡

｟井田:えっ 何？
須賀も始めたの ｺﾞﾙﾌ｡

お金かかりそうだなと思って
敬遠してたんですけど➡

やってみたらおもしろくて｡
まぁ いいんじゃない｡

仕事にも使えるし｡
えっ うち 今も➡

接待ｺﾞﾙﾌ あるんですか？
ないけどさ➡

営業で話の糸口くらいには
なんだろ｡ ねっ ｻﾄちゃん！

え？ うん｡
ｱﾊﾊﾊ…｡

(松岡)営業は いかに相手の懐に
入り込むかだからな｡

(須賀)はい｡
(井田)松っちゃんさ
趣味多すぎて➡

たまには 家族ｻｰﾋﾞｽしろって
しょっちゅう言われてんだよ｡

(松岡)ｱﾀﾀﾀ… あっ ｲﾃﾃﾃ！
(笑い声)

(須賀)松岡さんらしいな｡
(井田)わかった わかった｡

じゃ 行くか｡ ｻﾄちゃん お疲れ｡

お疲れ｡
あっ 俺たち これから➡

ちょっと一杯 串揚げ屋｡
(笑い声)

いや～ 誘いたいけど
ｻﾄちゃん飲めないし 悪いもんな｡

じゃあ お疲れ！
お疲れ｡
お疲れ！

お先に失礼します｡
ﾊｲﾎﾞｰﾙ ﾊｲﾎﾞｰﾙ｠

(ﾄﾞｱの開閉音)

どうぞ｡

今日も お疲れさん｡

どうも｡

いただきます｡

あっ うまい｡

うん うまい｡

うちは 北欧風ね｡

浅煎りで薄めだから
夜っぽいでしょ？

ちょい酸味｡

うん なるほど｡

言われてみれば ｻﾗｯとしてますね｡

ｶﾊｳﾞｨﾀｳｺ｡
はい？

ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞ語で ｶﾊｳﾞｨは ｺｰﾋｰ｡

ﾀｳｺは 休憩｡ ｺｰﾋｰﾀｲﾑってこと｡

ｶﾊｳﾞｨ… ﾀｳｺですか？

昔さ ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞを旅したときにさ➡

な～んて うまいｺｰﾋｰだって
思ったんだよ｡

ふ～ん｡

いいですね ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞなんて｡

実は私 この年になるまで➡

海外に行ったことがないんです｡

旅行は もっぱら国内でして｡

好きなんですよね～ 電車｡

というか 電車の旅｡

学生時代は
鉄道研究部に入ってまして…｡

まぁ いわゆる
乗り鉄ってやつでした｡ ﾊﾊｯ｡

いろいろ行ったなぁ｡

青森 輪島 高松｡

いちばん遠くは 九州まで｡

九州か｡
博多から入って➡

久留米 荒尾 熊本｡

あっ 知ってます？
夜明 っていう駅があるんですよ｡

へぇ～｡
昔 大分に行ったときに➡

時刻表で見つけて
行ってみたくなって｡

行ったんだ？
はい｡

最終で着いて
駅のﾍﾞﾝﾁで 一晩過ごしました｡

夜明駅で 夜明けを見るんだって
張り切ってたんですけど➡

夜中に雨 降ってきて
もう 寒くて寒くて｡

懐かしいなぁ｡

でも 何年前だ？
会社に入る前だから➡

27… 28年か｡

じゃあ 会社に入って
それくらいたつんだ…｡

そっか～｡

俺 そんなに長く 会社にいるんだ｡

｟室長 お疲れさまです｡
お～ お疲れ｡

佐藤さん お久しぶりです｡

お～ 室長 今 お帰りですか？

ちょっと やめてくださいよ 先輩｡
ｱﾊﾊﾊﾊ…｡

就任 おめでとう｡

こっちは
全然 気にしてないからさ➡

遠慮なく 何でも言ってよ｡
はい｡

また よろしくお願いします｡
いやいや そういうの➡

やめてって言ってんの｡
室長！ 室長！

ん？
すみません あの➡

ちょっと よろしいでしょうか？
あぁ…｡

はい｡
じゃあ お先に｡

お疲れさまです｡
この ﾌﾟﾛｼﾞｪｸﾄなんですけど…｡

(新城)うん｡

１回 やってみろって… なっ｡
はい ありがとうございます！

頑張ります｠

《後輩には 先を越され➡

もっと年下のﾔﾂは…》

｟瀧井くん 瀧井くん
ちょっといいかな？
はい｡

あの 例の物産展のﾁﾗｼなんだけど｡
あ～ ｵｯｹｰ出たやつですよね｡

うん それがさぁ
今 先方に寄ったら➡

あと ちょっと変更したいって｡
印刷 まだだよね？

あの～ 変更って 結構あります？

あっ いやいや
ほぼほぼ ｵｯｹｰなんだけどさ｡

文字をさ もう少し大きく
見せたいらしくてさ｡

う～ん 文字を大きくですか…｡

手間かけさせて
申し訳ないけどさぁ➡

うちも いろいろ
お世話になってて…｡

わかりました｡ じゃあ あとで
何案か ﾒｰﾙしますんで｡

悪いね
忙しいとこ｡ じゃあ 頼むね｡

了解で～す｠

《28年か～｡

人生の半分は
ｻﾗﾘｰﾏﾝやってるんだな～｡

これからも…》

今から 一緒に行くかね？
えっ？

ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞ｡

今から一緒に行くかね？
えっ？

ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞ｡

いや 行くって？

案内するよ｡

ｽﾄﾘｰﾄﾋﾞｭｰからの…｡

あ～ なるほど｡
ﾍﾙｼﾝｷ｡

はい 到着 ﾍﾙｼﾝｷ中央駅！

へぇ～ ここが首都のﾍﾙｼﾝｷ｡
うん｡

まずはさ ｺｰﾋｰ飲みに行こうよ｡

この道を ま～っすぐ進んで…｡

えっ？ 道って 石畳なんですか？
そうそう｡

へぇ～｡

この 角を曲がって…
ここのｶﾌｪにいると思って➡

はい ｺｰﾋｰ飲む｡

はい…｡

う～ん なるほど｡

えっ ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞって
森と湖の国なんでしたっけ？

でも ﾍﾙｼﾝｷは港町なんだよね｡

えっ じゃあ ここから
海は近いんですか？

近いよ｡
え～ この ｴｽﾌﾟﾗﾅｰﾃﾞｨ通りを➡

まっすぐ進むと
ほら 海が見えてきた｡

海だ｡ 港だ｡

へぇ～ いいですね｡

観覧車もあるよ｡
へぇ～ 雰囲気ありますね｡

ね～ ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞはさぁ➡

どこをとってもさ
絵になるんだよ～｡
うん う～ん｡

へぇ～ 森と湖と海！
うん｡

いいんだな 海外って｡
ﾌﾌﾌﾌ｡

はぁ～｡

♬～

あ～ いいですね
こういう ｴｱ旅行｡

ｴｱっていえばさ
ﾌｨﾝﾗﾝﾄﾞって ｴｱｷﾞﾀｰが有名でね｡

あ～ あの あれですよね｡
音楽に合わせて➡

ｷﾞﾀｰ弾く ﾌﾘするやつ｡
ﾆｭｰｽで見たことあります｡

どう？
いっちょ やっちゃいますか？

え？ やっちゃいますかって
まさか ｴｱｷﾞﾀｰをですか？

その まさか｡
いやいやいや ちょっと それは…｡

ｽｲｯﾁ ｵﾝ！

♬(ﾗｼﾞｶｾ)

え？ えっ ﾏｼﾞでやるんだ｡

♬～

あの 私は 結構ですので…｡

♬～

♬｢言いたいことがある｣

えっ 歌入り？

♬｢あるあるあるある
言いたいこと｣

♬～

はい これ ｱﾝﾀのｷﾞﾀｰ｡
えっ… はい｡

♬｢あるあるあるある
言いたいこと｣

♬～

おい こら ｸﾘｴｰﾃｨﾌﾞな お前｡

♬～

会社に ｶｰﾃﾞｨｶﾞﾝで来る お前！

俺のこと 仕事ができねえﾔﾂと
思ってること➡

じわじわ 伝えてくるのなんでだ!?

なんでだ？

おい こら ｸﾘｴｰﾃｨﾌﾞな お前！

お前！

♬～

♬｢人が話しかけてるときは｣

♬｢体ごと こっち向け｣

♬｢向け｣

♬｢うまくいってねえように
見えるんだろう 俺の人生｣

♬｢酒も飲めねえ体質｣

♬｢わかんねえよ
俺は わかんねえんだ｣

♬｢何が｣
♬｢俺の人生｣

♬～

♬｢これでいいんだってさ｣

♬｢何度も何度も｣
♬｢何度も何度も｣

♬｢自分に言い聞かせなきゃ
なんねえほど｣

♬～

♬｢俺は誰に｣
♬｢誰に｣

♬｢俺は何に｣
♬｢何に｣

♬｢見張られているんだろう｣
♬｢いるんだろう｣

♬｢人生の成功って なんだ｣
♬｢なんだ｣

♬｢人生の成功って なんだ
そのｷｰﾜｰﾄﾞ｣

♬｢俺は誰に 俺は何に
見張られているんだろう｣

♬｢いるんだろう｣
♬｢人生の成功って なんだ｣

♬｢なんだ｣
♬｢人生の成功って なんだ｣

♬｢そのｷｰﾜｰﾄﾞ
それじゃ 人生がまるで｣

♬｢商売みてえじゃねえか｣

♬｢俺は誰に 俺は何に
見張られているんだろう｣

♬｢人生の成功って なんだ
人生の成功って なんだ｣

♬｢そのｷｰﾜｰﾄﾞ｣

♬｢それじゃあ 人生が
まるで商売みてえじゃねえか｣

うわぁ～!! うぉ～!!

♬～

♬｢人生の成功って なんだ｣

(ｶｾｯﾄﾃｰﾌﾟが止まる音)

ﾊｧ ﾊｧ ﾊｧ…｡

すみません なんだか➡

本当に
弾いてる気になっちゃって｡

ｺｰﾋｰ もう一杯 どう？

はい！

あの ｱｲｽって できます？

あ～ 疲れた！

久しぶりに運動したな｡

お客さ～ん！

忘れ物｡

祝儀袋 ｱﾝﾀのだろ？

あっ すみません
ありがとうございます｡

ほれ もう一つ｡

はい？
ｱﾝﾀの ｷﾞﾀｰ｡

あぁ… ﾎﾝﾄだ 忘れてました｡

では｡

♬～

はい｡

じゃあ これ 今日の分の伝票です｡

あっ また変わったんだ｡

あっ そうなんすよ うん｡

元に戻っちゃいました｡ うん｡

戻った？
あっ 下にいた２人➡

いなくなりまして｡
いなくなった？

あっ ものすごく
やる気のないﾔﾂ 辞めちゃって｡

ものすごく やる気のあるﾔﾂは
独り立ちしまして｡

ふ～ん そうなんだ｡

ﾘｰﾀﾞｰ 卒業です｡
お疲れさん｡

はい｡

なんだか ﾎｯとしました｡

また 孤独な一匹狼っすよ うん｡

じゃあ ありがとうございました｡

(ﾄﾞｱの閉まる音)

一匹狼｡

♬～

何してんの？
ん？

いや 別に｡

さてと 仕事だ｡

手間かけさせて
申し訳ないんだけどさ➡

うちもいろいろ
お世話になってて｡

わかりました｡ じゃあ あとで
何案かﾒｰﾙしますんで｡

悪いね 忙しいとこ｡

じゃあ 頼むね｡
了解で～す｡

＜佐藤さんの部下で…＞

潤は？ 明日 ﾊﾞｰﾍﾞｷｭｰなんだっけ？

うん｡
何人くらい 集まるの？

なんか あんま詳しいこと
聞いてなくて｡

ふ～ん｡

高校の友達がさ
免許 取り立てで➡

高速 乗るのが怖いんだって｡

単なる運転手｡
そうなんだ｡

＜中田さんの彼氏の瀧井くん｡

そんな彼も また 傷ついている＞

いらっしゃい｡