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1
00:00:03,590 --> 00:00:07,070
(風早市之進)安坂長七郎という方のことを
覚えておいででしょうか?
2
00:00:07,930 --> 00:00:10,900
普請にまつわる着服の疑いをかけられて➡
3
00:00:10,900 --> 00:00:14,990
城内で轟殿に斬りかかり
切腹となった者です。
4
00:00:15,330 --> 00:00:20,600
(轟 平九郎)さように 取るに足らぬことは
忘れたわ。
5
00:00:21,940 --> 00:00:24,800
(桂木仙之助)市之進殿が
謹慎を命じられた…!
6
00:00:24,800 --> 00:00:26,470
濡れ衣を着せられたのだ!
7
00:00:26,470 --> 00:00:27,500
何?
何?
8
00:00:27,840 --> 00:00:29,490
もはや 手だては 一つ…!
9
00:00:42,830 --> 00:00:44,720
≪轟 平九郎か?
10
00:00:45,420 --> 00:00:47,490
いかにも。
11
00:00:48,120 --> 00:00:49,220
お命頂戴!
12
00:00:49,850 --> 00:00:51,360
≪覚悟!
13
00:01:25,000 --> 00:01:27,890
風早の一味か?
14
00:01:38,590 --> 00:01:40,130
身の程を知れ。
15
00:01:44,110 --> 00:01:44,810
うせろ。
16
00:02:04,520 --> 00:02:12,470
日本語字幕 Jpsubbers
計時機構 Jean: www.giftedones.net
17
00:02:37,620 --> 00:02:40,270
随分と遅かったな。
18
00:02:41,060 --> 00:02:41,730
どうした?
19
00:02:43,320 --> 00:02:44,650
(菜々)強いです…!
20
00:02:44,650 --> 00:02:49,530
あの… あの人
轟という人は とてつもなく…!
21
00:02:52,920 --> 00:02:54,980
落ち着け。
22
00:03:06,560 --> 00:03:09,500
轟殿に会ったのか?
23
00:03:10,970 --> 00:03:16,000
叔父上様のお屋敷を訪ねた帰り
巽橋のたもとで。
24
00:03:17,260 --> 00:03:18,570
[ 回想 ] 轟 平九郎か?
25
00:03:19,210 --> 00:03:20,710
[ 回想 ] 風早の一味か?
26
00:03:27,990 --> 00:03:31,510
侍たちは 逃げたのだな?
27
00:03:32,270 --> 00:03:36,730
はい。 ひどいけがを負ったようですが…。
28
00:03:37,300 --> 00:03:38,610
そうか…。
29
00:03:39,940 --> 00:03:45,300
轟 平九郎様は この風早家にも
災いを もたらそうとしているのですか?
30
00:03:46,670 --> 00:03:48,730
お前は 轟殿を知っておるのか?
31
00:03:53,560 --> 00:03:59,870
菜々… お前が武士の娘だということは
佐知から聞いておる。
32
00:04:03,450 --> 00:04:06,290
轟殿と何か関わり合いがあるのか?
33
00:04:12,690 --> 00:04:17,930
亡くなった母が申しておりました。
34
00:04:17,930 --> 00:04:26,380
父は… 轟 平九郎様に陥れられ
切腹させられたのだと。
35
00:04:29,200 --> 00:04:32,550
菜々の父上が…。
36
00:04:33,650 --> 00:04:37,210
安坂長七郎殿か…!
何故 父の名を…!
37
00:04:41,120 --> 00:04:47,740
14年前の普請費用横領の一件で
お名前を耳にした。
38
00:04:48,540 --> 00:04:51,500
安坂殿は 実のところ➡
39
00:04:51,500 --> 00:04:54,010
轟殿に関わる不正を調べていたようだ。
40
00:04:55,100 --> 00:04:58,090
お前の母上が申されていたように➡
41
00:04:58,090 --> 00:05:04,510
そのため 逆に罪を着せられ
切腹に追い込まれたのかもしれぬ。
42
00:05:07,240 --> 00:05:09,980
でも 旦那様…➡
43
00:05:10,400 --> 00:05:14,860
旦那様が蟄居を命じられたのは
轟 平九郎のせいなのですか?
44
00:05:16,590 --> 00:05:18,580
恐らく。
45
00:05:18,580 --> 00:05:21,880
濡れ衣を晴らす手だてはないのですか?
46
00:05:21,880 --> 00:05:25,620
轟が犯した不正の証しでもあれば
別だが…。
47
00:05:27,370 --> 00:05:30,500
こよい見たことは忘れろ。
48
00:05:41,710 --> 00:05:47,130
[ 回想 ] (五月)父上は あのような
無念な最期を遂げられましたが➡
49
00:05:47,130 --> 00:05:50,590
何事にも誠実で ご立派なお方でした。➡
50
00:05:50,960 --> 00:05:52,860
けれど あなたは武家の娘。➡
51
00:05:53,250 --> 00:05:56,930
その誇りだけは
忘れないで生きるのですよ。
52
00:06:12,230 --> 00:06:15,620
(日向屋孫右衛門)
闇討ちに遭ったそうだな。
53
00:06:15,620 --> 00:06:20,980
にらんでいたとおり。
ちと遅いくらいでした。
54
00:06:20,980 --> 00:06:28,380
とどめを刺さず
表沙汰にもしなかったのは➡
55
00:06:28,380 --> 00:06:32,020
魂胆あってのことか?
56
00:06:32,020 --> 00:06:36,960
血気にはやる若造どもは
愚かで たわいない。
57
00:06:36,960 --> 00:06:40,750
泥水を たっぷり飲ませてやりました。
58
00:06:40,750 --> 00:06:43,490
狙うは…➡
59
00:06:44,240 --> 00:06:47,980
風早市之進。
60
00:07:08,800 --> 00:07:10,000
≪(雪江)御免くださいませ。
61
00:07:12,250 --> 00:07:13,400
はい ただいま。
62
00:07:16,620 --> 00:07:20,400
風早様にお取り次ぎください。
63
00:07:20,400 --> 00:07:21,000
あの…。
64
00:07:21,490 --> 00:07:25,760
武具奉行 本田内記の娘
雪江と申します。
65
00:07:25,760 --> 00:07:28,440
風早様の叔父上がお世話してくださった➡
66
00:07:28,440 --> 00:07:30,790
縁談の相手だとお伝えください。
67
00:07:32,580 --> 00:07:33,890
はい…。
68
00:07:36,010 --> 00:07:40,530
ご覧のとおり 私は 今 蟄居の身。
69
00:07:40,530 --> 00:07:44,140
こんな所へ来られては
雪江殿のためになりません。
70
00:07:44,140 --> 00:07:46,810
だからこそ参りました。
71
00:07:46,810 --> 00:07:51,160
私は 風早様をお助けしたいのです。
72
00:07:51,160 --> 00:07:51,940
しかし…。
73
00:07:52,330 --> 00:07:58,280
お城の花見の宴で 初めて
あなた様をお見かけして以来➡
74
00:07:58,280 --> 00:08:03,000
ずっとお慕いしておりました。
75
00:08:03,000 --> 00:08:08,770
田所様の奥様には それとなく
私のほうから お話を持ちかけました。
76
00:08:10,920 --> 00:08:11,900
≪失礼いたします。
77
00:08:22,700 --> 00:08:25,440
はしたない女とお思いでしょうか?
78
00:08:25,440 --> 00:08:28,570
いや そんなことは…。
79
00:08:36,850 --> 00:08:38,220
風早様。
80
00:08:39,220 --> 00:08:39,840
はい。
81
00:08:39,840 --> 00:08:44,200
私 風早様の蟄居が 早々に解かれるよう➡
82
00:08:44,200 --> 00:08:47,600
ご家老様にお願いしてもらいたいと
父に せがむつもりです。
83
00:08:47,600 --> 00:08:53,010
雪江殿 お気持ちはありがたいが➡
84
00:08:53,010 --> 00:08:57,200
こたびのご縁はなかったものとして
どうぞお忘れください。
85
00:08:58,460 --> 00:08:59,630
いえ…!
86
00:08:59,630 --> 00:09:05,550
私 そんなことで あなた様のお気を
引こうというつもりでは ないのです。
87
00:09:06,130 --> 00:09:11,540
ただただ お力になりたくて。
88
00:09:13,000 --> 00:09:19,480
風早様が 亡き奥様を
それは大事にしてこられたことも➡
89
00:09:19,480 --> 00:09:21,140
承知しております。
90
00:09:22,090 --> 00:09:28,970
そのうえで どうか もう一度
私とのご縁 お考えくださいまし。
91
00:09:43,540 --> 00:09:45,990
≪(雪江)もし。
はい…!
92
00:09:46,330 --> 00:09:47,860
何かご用でございますか?
93
00:09:48,140 --> 00:09:51,550
風早様が 裏口から出たほうがよいと
おっしゃったので…。
94
00:09:52,960 --> 00:09:57,660
ああ… あちらでございます。
今 お履物を。
95
00:10:28,030 --> 00:10:32,490
旦那様 朝餉をお持ちいたしました。
96
00:10:45,820 --> 00:10:46,490
佐知?
97
00:10:50,150 --> 00:10:53,820
あっ… 菜々か。
98
00:10:53,820 --> 00:10:56,520
それはそうだな。
99
00:11:01,690 --> 00:11:06,000
これ… 奥様が作ってくださいました。
100
00:11:06,670 --> 00:11:09,020
佐知が?
101
00:11:27,030 --> 00:11:29,390
おお… 露草か。
102
00:11:30,630 --> 00:11:36,730
はい。 俳諧では「螢草」というのだと
奥様に教わりました。
103
00:11:37,440 --> 00:11:38,560
螢草…。
104
00:11:52,590 --> 00:11:54,320
私の宝物です。
105
00:12:02,520 --> 00:12:03,970
大切にしてやってくれ。
106
00:12:06,940 --> 00:12:08,750
はい。
107
00:12:15,150 --> 00:12:24,520
桂木仙之助 益田源三郎
大内新右衛門 宇野清次郎…。
108
00:12:25,300 --> 00:12:27,900
この4人か…。
(甚兵衛)はい。
109
00:12:27,900 --> 00:12:32,720
皆様 急な病ということで
登城しておられませんでした。
110
00:12:32,970 --> 00:12:38,970
それで お屋敷をお訪ねして
ご様子を伺ったのですが➡
111
00:12:38,970 --> 00:12:43,580
下働きの者まで
固く口止めされているようで➡
112
00:12:43,580 --> 00:12:45,600
話を聞くことはできませんでした。
113
00:12:47,210 --> 00:12:53,270
轟殿が 自分を襲った仙之助たちを訴えず
泳がせているのは➡
114
00:12:53,270 --> 00:12:56,510
何か 周到な企みがあってのことだろう。
115
00:12:59,220 --> 00:13:01,500
あした もう一度 お訪ねして…。
116
00:13:01,500 --> 00:13:05,540
いや もう動くな。
117
00:13:06,450 --> 00:13:08,620
ご苦労であった。
118
00:13:13,700 --> 00:13:19,840
仙之助… 早まったか…!
119
00:13:24,700 --> 00:13:28,190
[ 回想 ](佐知)菜々 菜々。➡
120
00:13:30,810 --> 00:13:36,220
女は… 命を守るのが役目。
121
00:13:43,470 --> 00:13:45,290
奥様…。
122
00:13:46,470 --> 00:13:48,480
≪菜々。
123
00:13:51,630 --> 00:13:53,030
はい…!
124
00:13:53,660 --> 00:13:56,800
すまぬが… 私の部屋へ来てくれ。
125
00:13:58,890 --> 00:14:00,670
はい。
126
00:14:15,990 --> 00:14:21,020
お前は 赤村へ帰れ。
127
00:14:21,020 --> 00:14:22,520
えっ…?
128
00:14:23,310 --> 00:14:28,300
私は いつ 江戸送りになるか分からぬ。
129
00:14:28,300 --> 00:14:34,020
そうなれば
もう ここへは帰ってこられないだろう。
130
00:14:36,710 --> 00:14:45,220
何の因果か 私は 菜々の
お父上と同じ定めのようだ。
131
00:15:00,950 --> 00:15:07,620
とよと正助は
田所の叔父上に頼むことにする。
132
00:15:07,620 --> 00:15:14,190
お前と甚兵衛には
できるだけのことをしてやりたい。
133
00:15:14,190 --> 00:15:18,340
すまぬが 家の物を整理して
あの質屋に…。
134
00:15:18,340 --> 00:15:21,250
嫌でございます!
135
00:15:22,170 --> 00:15:27,270
私は 奥様と約束しました。
136
00:15:27,270 --> 00:15:30,870
旦那様と坊ちゃまとお嬢様を
お守りすると。
137
00:15:32,690 --> 00:15:33,940
それはそうだが…。
138
00:15:33,940 --> 00:15:36,550
ですから お願いでございます!
139
00:15:36,550 --> 00:15:41,430
もし 旦那様が
江戸へ送られるようなことになったら➡
140
00:15:41,430 --> 00:15:44,690
坊ちゃまとお嬢様のお世話は
田所様ではなく➡
141
00:15:44,690 --> 00:15:46,230
私にお任せくださいまし。
142
00:15:48,850 --> 00:15:53,090
しかし お前に そこまで甘えるのは…。
143
00:15:57,930 --> 00:16:01,420
出過ぎたことを申しました。
144
00:16:02,020 --> 00:16:06,520
私のような者より その…➡
145
00:16:07,190 --> 00:16:13,830
きのう お越しになった あのお方のほうが
ふさわしゅうございますね。
146
00:16:17,380 --> 00:16:19,110
雪江殿か…?
147
00:16:25,130 --> 00:16:30,530
菊の花のように
あでやかで美しいお方でした。
148
00:16:32,870 --> 00:16:38,030
縁談話は無うなった。
もう 何の関わり合いもない。
149
00:16:47,440 --> 00:16:54,300
菜々 私は 鉢植えの菊より➡
150
00:16:54,300 --> 00:16:57,520
どこにでも咲いている螢草のほうがいい。
151
00:17:00,630 --> 00:17:02,540
はい。
152
00:17:03,600 --> 00:17:06,630
私も 螢草が大好きです。
153
00:17:21,180 --> 00:17:25,950
もし…! もしものときは 私が
坊ちゃまとお嬢様をお世話いたします!
154
00:17:26,350 --> 00:17:30,730
赤村へは帰りません。 失礼します!
155
00:17:54,610 --> 00:18:00,250
[ 回想 ] (佐知)私 この花を見るたびに
なぜか 菜々のようだと思うのです。➡
156
00:18:03,330 --> 00:18:07,090
けなげに咲いているさまが。
157
00:18:22,520 --> 00:18:24,840
もうよい!
158
00:18:26,610 --> 00:18:28,670
いや~ 久々によう笑うた。
159
00:18:30,310 --> 00:18:33,330
さあ 皆さん 御汁が冷めてしまいますよ。
160
00:18:33,330 --> 00:18:35,510
(正助)よし! 行くぞ とよ。
161
00:18:41,870 --> 00:18:43,790
≪風早市之進!➡
162
00:18:44,630 --> 00:18:48,370
ご上意である! 門を開けよ!
163
00:19:03,690 --> 00:19:06,510
これは 一体 何事ですか?
164
00:19:10,170 --> 00:19:12,590
風早市之進に相違ございません。
165
00:19:15,050 --> 00:19:16,760
風早市之進。
166
00:19:17,100 --> 00:19:21,300
轟 平九郎殿を襲った
首謀者として召し捕り➡
167
00:19:21,300 --> 00:19:23,870
しばらく 瀬田獄に留め置く。➡
168
00:19:25,800 --> 00:19:28,810
家の者は ただちに出て行くよう
申しつくる。
169
00:19:29,380 --> 00:19:33,480
首謀者など… 一体 何の証しがあって…!
170
00:19:34,420 --> 00:19:36,910
ご上意である!
171
00:19:37,470 --> 00:19:40,260
父上! 父上!
172
00:19:40,260 --> 00:19:41,770
(甚兵衛)いけません! 正助様!
173
00:19:41,770 --> 00:19:44,870
(正助)父上!
正助 控えよ!
174
00:19:44,870 --> 00:19:47,020
これ 邪魔だ。
175
00:19:47,760 --> 00:19:49,780
幼子に何をなさいます!
176
00:19:49,780 --> 00:19:51,680
控えろ!
177
00:19:51,680 --> 00:19:54,860
甚兵衛さん 大丈夫ですか?
甚兵衛さん…!
178
00:20:01,000 --> 00:20:03,400
旦那様!
179
00:20:09,310 --> 00:20:13,590
轟殿を襲った者が白状したのだ。
口書があるらしい。
180
00:20:13,590 --> 00:20:16,370
それは 轟殿が仕掛けた罠です!
181
00:20:16,370 --> 00:20:19,380
風早家をお取り潰しにしおって!
182
00:20:19,380 --> 00:20:22,520
あの世で 我が兄上は泣いておられるわ!
183
00:20:24,780 --> 00:20:25,530
旦那様!
184
00:21:01,840 --> 00:21:05,380
(とよ)お家に入れないのですか?
185
00:21:05,380 --> 00:21:08,100
そうだよ。
186
00:21:08,910 --> 00:21:15,770
うちに来ても わしの世話まで
しょい込むことに なりかねんからな…。
187
00:21:17,630 --> 00:21:21,750
甚兵衛さんがいてくださると思うだけで
心強いです。
188
00:21:21,750 --> 00:21:23,450
今は しっかり養生してください。
189
00:21:23,910 --> 00:21:26,290
すまんなあ。
190
00:21:26,840 --> 00:21:30,120
こんなときに このざまだ…!
191
00:21:39,160 --> 00:21:43,540
お二人のことを くれぐれも…!
192
00:21:44,710 --> 00:21:46,810
はい。
193
00:21:51,600 --> 00:21:56,300
お嬢様 泣いている暇なぞ ございません。
194
00:21:56,300 --> 00:22:01,120
旦那様がお帰りになるまで
みんなで力を合わせて生き抜くのです。
195
00:22:04,660 --> 00:22:07,660
さあ 参りましょう。
196
00:22:46,970 --> 00:22:51,380
(舟)こら!
ここは子どもの遊び場じゃないよ!
197
00:22:51,380 --> 00:22:56,580
じゃあ 三両。
ありがとうございます。
198
00:22:56,580 --> 00:22:59,240
しかし ばかな子だねえ。
199
00:22:59,240 --> 00:23:02,110
それで この子らを
引き受けちまったのかい。
200
00:23:02,110 --> 00:23:05,420
ばかだとは思っていません。
ばかに決まってんだろ。
201
00:23:05,930 --> 00:23:10,280
住む家もない分際で
よくもまあ 安請け合いをしたもんだ。
202
00:23:10,280 --> 00:23:13,360
でも お金も貸していただきましたし
今から探します。
203
00:23:17,000 --> 00:23:19,910
借家なら… あるよ。
204
00:23:21,190 --> 00:23:22,070
えっ?
205
00:23:24,610 --> 00:23:26,500
ここ。
206
00:23:29,930 --> 00:23:31,300
ここだっつってんだろ!
207
00:23:33,700 --> 00:23:36,050
これって… 家?
208
00:23:36,050 --> 00:23:39,700
あん? 屋根が付いてんだから
立派な家だ。➡
209
00:23:40,170 --> 00:23:45,010
で あたしが大家。 店賃は 六百文。
210
00:23:45,010 --> 00:23:48,500
きっちり払ってもらうからね…!
よいしょ…!
211
00:23:52,520 --> 00:23:53,330
さあ!
212
00:24:10,760 --> 00:24:13,090
お化け 出そう…。
213
00:24:14,750 --> 00:24:15,960
出るよ…。
214
00:24:20,620 --> 00:24:23,740
大家さん。
何だい? 文句あんのかい?
215
00:24:24,330 --> 00:24:28,900
お化けが出るんなら 店賃 半分…。
216
00:24:28,900 --> 00:24:32,810
いや そのまた半分でも高いです。
えっ?
217
00:24:33,270 --> 00:24:36,390
お化けが出るような家
誰が借りてくれます?
218
00:24:36,390 --> 00:24:40,080
見たところ
もう何年も住んでないみたいだし。
219
00:24:40,080 --> 00:24:44,950
半分の半分 百五十文でも
御の字じゃないですか?
220
00:24:44,950 --> 00:24:49,560
だから… 出ないよ!
本当はね 出ない… 出ないからね?
221
00:24:52,660 --> 00:24:57,340
だから 出ないって…。 出ないから…。
222
00:24:57,340 --> 00:25:03,020
う~ん もう… 分かったよ! 百五十文!
223
00:25:03,690 --> 00:25:06,110
ありがとうございます。
224
00:25:15,600 --> 00:25:17,390
ちょっ ちょっ…! えっ…!
225
00:25:20,830 --> 00:25:25,510
申し訳ございません。
こんなに遅くなってしまって。
226
00:25:25,510 --> 00:25:28,140
おむすび すごくおいしい。
227
00:25:28,140 --> 00:25:30,150
腹が減ったからな。
228
00:25:30,150 --> 00:25:33,740
お二人とも
随分とよく働いてくださいました。
229
00:25:33,740 --> 00:25:35,340
ありがとうございます。
230
00:25:35,340 --> 00:25:38,100
今日は 早く寝て…。
231
00:25:41,090 --> 00:25:43,510
すぐ つけます。
232
00:25:51,070 --> 00:25:52,950
(正助)菜々…。
はい。
233
00:25:53,670 --> 00:25:57,800
ひょっとしたら やっぱり この家…。
234
00:25:57,800 --> 00:26:00,340
兄上…。
何だよ!
235
00:26:00,340 --> 00:26:04,360
あそこの格子窓に 何か…。
236
00:26:14,600 --> 00:26:17,340
(正助)お化けだ お化け!
237
00:26:18,540 --> 00:26:21,020
えいっ!
(椎上節斎)冷たい…! あっ あっ…!
238
00:26:23,400 --> 00:26:25,540
お化けではない!
239
00:26:26,210 --> 00:26:31,750
わしは隣の家に住む
儒学者 椎上節斎じゃ!➡
240
00:26:32,330 --> 00:26:36,550
ずっと空き家だったこの家に
明かりが見えたので➡
241
00:26:36,550 --> 00:26:39,230
火付け 物取りかと様子を見に来たんじゃ。
242
00:26:44,500 --> 00:26:52,780
で この子らは
お主が仕えていた武家のお子だと申すか。
243
00:26:52,780 --> 00:26:54,960
はい。
244
00:26:54,960 --> 00:27:00,260
しかし 投獄されたなら
それ相応の悪事を…。
245
00:27:00,260 --> 00:27:04,930
違います! 旦那様は決して 悪事に
手を染めるようなお方ではございません。
246
00:27:04,930 --> 00:27:08,160
必ず 旦那様の潔白が
明らかにされる日が参ります。
247
00:27:10,640 --> 00:27:13,470
我があるじに僻事なし➡
248
00:27:13,470 --> 00:27:18,270
我があるじに仇なす者こそ僻事ありか。
249
00:27:19,330 --> 00:27:22,420
お主 なかなか 忠義の者のようじゃの。
250
00:27:23,900 --> 00:27:28,120
我が塾にも 御家中のお子たちが大勢…。
251
00:27:28,120 --> 00:27:32,560
は~っくしょん!
いかん… かぜをひく前に帰る。
252
00:27:33,340 --> 00:27:37,330
申し訳ございません 死神先生。
「死神」?
253
00:27:37,630 --> 00:27:42,500
いや わしの名は 椎上節斎じゃ!
254
00:27:43,060 --> 00:27:45,530
(正助 とよ)おやすみなさい! 死神先生!
255
00:27:48,000 --> 00:27:52,020
お~や~す~み~…。
256
00:28:13,310 --> 00:28:16,040
どうしよう…。
257
00:28:23,140 --> 00:28:30,050
店賃 米代 それから…。
258
00:28:50,310 --> 00:28:52,970
[ 回想 ] 菜々 嫁に来てくれ! 頼む!
259
00:29:01,480 --> 00:29:06,280
宗太郎の気持ちに
応えてくれるのかと思った。
260
00:29:06,280 --> 00:29:08,910
ぬか喜びだったか…。
261
00:29:09,290 --> 00:29:12,000
申し訳ありません…。
262
00:29:12,730 --> 00:29:15,270
いずれにしろ お前一人で➡
263
00:29:15,270 --> 00:29:18,150
2人のお子たちを
どうやって育てるつもりだ?
264
00:29:19,730 --> 00:29:24,480
ここへ来る間 ずっと考えておりました。
265
00:29:26,430 --> 00:29:29,300
叔父さん。
うん?
266
00:29:29,300 --> 00:29:34,140
ここの野菜を売って
暮らしの足しにさせてもらえませんか?
267
00:29:34,140 --> 00:29:36,500
勝手なことは重々承知しております!
268
00:29:36,500 --> 00:29:41,420
でも 今の私には これしか…。
お願いします!
269
00:29:41,420 --> 00:29:44,460
ずうずうしいにも程があるよ!
270
00:29:44,460 --> 00:29:48,990
その旦那様は お前に
一銭も渡さなかったのかい?
271
00:29:51,500 --> 00:29:54,000
お前は何も分かっちゃいないよ。
272
00:29:54,000 --> 00:29:56,780
子を育てることが どんなに大変なことか。
273
00:29:56,780 --> 00:30:00,040
お武家の子なら なおさらだろ。
学問やら何やらかんやら。
274
00:30:00,480 --> 00:30:04,140
そうですね…。
叔母さんのおっしゃるとおりです!
275
00:30:04,550 --> 00:30:07,680
ありがとうございます!
礼なんて言われる筋合いはないよ!
276
00:30:09,610 --> 00:30:12,790
野菜を譲るのはいいが
どうやって運ぶつもりだ?
277
00:30:13,750 --> 00:30:15,980
五日に一度 私が頂きに参ります。
278
00:30:15,980 --> 00:30:18,380
そりゃ なかなか大変だぞ?
279
00:30:19,580 --> 00:30:22,500
(宗太郎)それ 俺が運んでやる。
280
00:30:22,500 --> 00:30:23,930
宗太郎!
281
00:30:23,930 --> 00:30:27,860
お前 菜々にいいようにあしらわれてるのが
まだ分からないのか!
282
00:30:28,930 --> 00:30:32,270
俺は 俺がしたいようにしてるだけだ!
283
00:30:34,930 --> 00:30:39,620
やっぱり
宗太郎さんに甘えるわけにはいかない。
284
00:30:39,620 --> 00:30:42,290
お前が お子たちを預かるのは➡
285
00:30:42,290 --> 00:30:45,000
風早家の旦那様を好いとるからだろ?
286
00:30:48,400 --> 00:30:53,120
お前の気持ちが本物なら
俺も本物だからな。
287
00:30:56,500 --> 00:30:57,760
宗太郎さん…。
288
00:30:58,450 --> 00:31:01,140
野菜 届けてやるから安心しろ。
289
00:31:04,240 --> 00:31:06,770
ありがとう。
290
00:31:32,370 --> 00:31:34,540
母上…。
291
00:31:34,540 --> 00:31:36,850
[ 回想 ]お前の母上が
申されていたように➡
292
00:31:36,850 --> 00:31:40,300
罪を着せられ
切腹に追い込まれたのかもしれぬ。
293
00:31:41,180 --> 00:31:43,110
[ 回想 ]濡れ衣を晴らす手だては
ないのですか?
294
00:31:43,390 --> 00:31:46,940
[ 回想 ]轟が犯した不正の証しでもあれば
別だが…。
295
00:32:03,710 --> 00:32:10,430
[ 心の声 ]不正の証し。
何か… もしも 何かが…。
296
00:32:46,560 --> 00:32:49,040
父上…。
297
00:33:09,690 --> 00:33:11,650
ただいま 戻りました!
298
00:33:12,170 --> 00:33:14,010
(正助)菜々!
(とよ)菜々!
299
00:33:15,890 --> 00:33:21,500
お骨さん ありがとうございました。
心ばかりのお礼です。
300
00:33:21,500 --> 00:33:26,120
二度と御免だよ!
あたしの寿命が縮んじまう。
301
00:33:26,120 --> 00:33:29,530
大体 あの子ら
遊んでばっかりじゃないか!
302
00:33:29,530 --> 00:33:33,050
おっしゃるとおりです。
遊んでばかりでは だめです。
303
00:33:33,380 --> 00:33:35,620
そこで お骨さん! 頼みがあります!
304
00:33:36,530 --> 00:33:37,380
いっ… 嫌だよ…。
305
00:33:38,250 --> 00:33:41,620
荷車はありますか? それに野菜を積んで
売り歩こうと思って。
306
00:33:42,010 --> 00:33:44,710
荷車?
はい!
307
00:33:44,710 --> 00:33:48,630
ああ… あるよ。
あすにでも都合してやるよ。
308
00:33:48,930 --> 00:33:50,710
さすが お骨さん!
309
00:33:50,710 --> 00:33:52,870
いや だから お骨じゃねえって…。
310
00:33:52,870 --> 00:33:57,270
さあ 坊ちゃま お嬢様 参りますよ!
311
00:34:09,750 --> 00:34:11,650
話は分かった。
312
00:34:12,410 --> 00:34:17,450
正助の入門は 無論 拒むものではない。
313
00:34:17,450 --> 00:34:20,590
月謝もきちんと頂くゆえ。
314
00:34:20,590 --> 00:34:24,860
だが… 子守まで引き受けるつもりはない。
315
00:34:26,500 --> 00:34:29,680
先生は 儒学を教えておられるんですよね。
316
00:34:29,680 --> 00:34:31,970
ああ そうだが?
317
00:34:31,970 --> 00:34:36,130
私が野菜を売って働かなければ
食べていけません。
318
00:34:36,130 --> 00:34:41,010
正助様が塾で学んでおられる間
まだ4歳のとよ様は独りぼっちです。
319
00:34:41,940 --> 00:34:46,010
儒学の教えとは 人を大切に慈しむ
というものではありませんか?
320
00:34:46,120 --> 00:34:48,850
屁理屈を申すな!
321
00:34:48,850 --> 00:34:51,150
それなら
野菜売りに連れて行けばいいだろう!
322
00:34:51,150 --> 00:34:54,710
正助様と とよ様は 私がお仕えしている
お武家のお子たちです。
323
00:34:54,710 --> 00:34:56,360
そんなことはできません。
324
00:34:56,620 --> 00:35:04,420
お主 本気で 野菜を売って
たった一人で この子らを育てる覚悟か?
325
00:35:06,500 --> 00:35:07,440
もちろんです。
326
00:35:17,930 --> 00:35:20,110
相分かった。 引き受けよう。
327
00:35:21,230 --> 00:35:23,070
ありがとうございます!
328
00:35:23,070 --> 00:35:27,820
さあ 次は だんご兵衛さんの道場です。
剣術も身につけねばなりません。
329
00:35:27,820 --> 00:35:31,270
(とよ 正助)だんご兵衛さん?
さあ 行きますよ。
330
00:35:31,270 --> 00:35:33,140
(とよ 正助)さようなら。 死神先生。
331
00:35:34,090 --> 00:35:37,310
えっ…? 死神ではない!
332
00:35:42,360 --> 00:35:45,650
菜々は 何を読んでいるの?
333
00:35:46,490 --> 00:35:50,510
これは 和歌の本です。
334
00:35:50,510 --> 00:35:58,520
私の父のものですが
父が 何か書き留めていないかと…。
335
00:36:02,880 --> 00:36:08,900
この絵草子
菜々のおとと様のお土産ですね。
336
00:36:08,900 --> 00:36:10,540
菜々?
337
00:36:21,550 --> 00:36:24,790
菜々 疲れてる。
338
00:36:24,790 --> 00:36:28,020
菜々に心配かけないようにしよう。
339
00:36:28,020 --> 00:36:28,690
はい。
340
00:36:30,390 --> 00:36:33,460
兄上。
何?
341
00:36:33,720 --> 00:36:36,260
父上 お達者でしょうか?
342
00:36:39,260 --> 00:36:40,360
お達者だ。
343
00:36:41,890 --> 00:36:43,070
はい。
344
00:36:43,760 --> 00:36:47,440
うどは いかがですか?
おいしいですよ!
345
00:36:47,810 --> 00:36:51,500
ごぼうは いかがですか?
おいしいですよ…!
346
00:37:00,590 --> 00:37:03,830
えいっ! えいっ! えいっ! えいっ!
347
00:37:08,430 --> 00:37:14,010
[ 心の声 ]不正の証し… 不正の証し…。
348
00:37:14,290 --> 00:37:18,060
(一同)朋あり 遠方より来る。
349
00:37:18,060 --> 00:37:20,020
また楽しからずや。
350
00:37:20,500 --> 00:37:24,070
(正助)また楽しからずや。
351
00:37:30,240 --> 00:37:32,990
れんこん いかがですか?
おいしいですよ!
352
00:37:32,990 --> 00:37:34,830
いかがですか? いかがですか…?
353
00:37:49,850 --> 00:37:52,680
[ 回想 ](五兵衛)風早殿が
瀬田獄から出され➡
354
00:37:52,680 --> 00:37:54,210
いよいよ 江戸送りになるそうだ。
355
00:37:54,850 --> 00:37:59,840
[ 回想 ]私は いつ 江戸送りになるか分からぬ。
356
00:37:59,840 --> 00:38:04,230
そうなれば
もう ここへは帰ってこられないだろう。
357
00:38:06,400 --> 00:38:09,480
[ 心の声 ]嫌…! 嫌です!
358
00:38:17,200 --> 00:38:20,200
[ 回想 ](五兵衛)昼過ぎには
瀬田獄から出されるとのこと。
359
00:38:31,740 --> 00:38:36,180
[ 回想 ]私は 鉢植えの菊より➡
360
00:38:36,180 --> 00:38:39,390
どこにでも咲いている螢草のほうがいい。
361
00:38:42,550 --> 00:38:44,760
[ 心の声 ]旦那様…!
362
00:38:51,150 --> 00:38:52,310
≪旦那様!
363
00:38:58,960 --> 00:38:59,830
旦那様!
364
00:39:05,990 --> 00:39:08,430
旦那様! 旦那様!
何者だ!
365
00:39:08,430 --> 00:39:09,420
旦那様!
366
00:39:09,420 --> 00:39:11,580
≪身内の見送りは相ならん!
367
00:39:11,680 --> 00:39:15,700
身内ではありません!
私は 風早家の女中でございます!
368
00:39:15,810 --> 00:39:18,860
≪ならば なおのこと!
≪帰れ!
369
00:39:19,220 --> 00:39:20,620
旦那様…!
370
00:39:21,870 --> 00:39:24,000
≪出立!
旦那様…!
371
00:39:24,000 --> 00:39:25,810
旦那様に会わせてくださいまし!
372
00:39:26,500 --> 00:39:29,640
旦那様…!
≪邪魔するな!
373
00:39:36,780 --> 00:39:39,010
菜々…。
374
00:39:40,440 --> 00:39:42,780
旦那様! 旦那様!
375
00:39:49,360 --> 00:39:53,530
[ 回想 ](五兵衛)御嶽神社の鳥居で
いったん かごを止め➡
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00:39:53,530 --> 00:39:56,280
罪人に国との別れを告げさせる
ならいがある。
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00:40:42,310 --> 00:40:43,620
旦那様…。
378
00:41:02,160 --> 00:41:04,230
≪出立!
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