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(八重)こうすて…。
ダン!
命中!
(権八)そこで 何すてる?
お父っつぁま…。
これは何だ?
本さ 書き写しました。
見ではなんねえと 言ったはずだぞ。 はい…。
こんなに何枚も。
私 やっぱり鉄砲さ やりでえ。 お父っつぁま 教えてくなんしょ。
駄目だ。 ならぬことは ならぬ。
なして? ぐだぐだ言うな!
あっ…。
にしは 何にも分がってねえ。
(子弟たち)「子 曰わく
千乗の国を道むるには 事を敬んで信あり」。
「常の心 さだかだましく 女の道 明かならざる事」。
「女今川」には おなごの たしなみが書いてある。
仮名と一緒に よ~ぐ覚えねばなんねえ。
(時尾)はい!
あれ 珍しや。 八重さんが おとなしぐ手習いして。
うん? まあ!
八重さん!
ちゃんと しっせい!
覚えでるだげは 書ぎ残すべと思ったのに…。
お師匠様に破がれちまったな。
おなごは 仮名の読み書きだけ できればいいど言うげんじょ
仮名だけでは 鉄砲の本は読めねえ。
面白いの? その本。 字が難しぐて…。
(3人) 「子 曰わく 千乗の国を道むるには 事を敬んで信あり
用を節して 人を愛し」。
与七郎さん! ちと 尋ねるげんじょも。
これ 何と読むのがし?
(与七郎)これなら「蓋」だげんじょ。
蓋… あっ 火の蓋だ!
(鉄之助)おなごと 口きくな。
(幸之進)しっぺいだぞ。 分がってる。
与七郎さん! ありがとなし。
おがしな おなごだ。
嘉永7年3月。
幕府は 日米和親条約を締結。
下田と箱館の開港が決まった。
(塾生1)あの傲慢なペルリが 頭を下げたというのだから
さすがは象山先生と 大層な評判よ。
(塾生2) しかし こう 客が多くては 休講ばかりで 学問が進まぬ。
(塾生1)勝先生の塾でも のぞいてみるか。
(川崎)覚馬さん。
覚馬さん! (覚馬)あ?
また 黒船の事ですか? うん…。
何も できねえうちに 黒船は 伊豆の下田に行っつまった。
談判が済んで メリケンに帰れば もう 手も足も出ねえ。
ええ。
なじょしたもんか…。
あ~ こうしていでも 知恵は浮かばねえ。
作業場の掃除でも すっか! はい。
(塾生)おい 豚が逃げるぞ! そっちだ!
(豚の鳴き声)
回れ 回れ!
(豚の鳴き声)
(覚馬)何の騒ぎだ?
(新島)お手をお貸し下さい。
(覚馬)こら 待て!
(豚の鳴き声)
いけない!
(豚の鳴き声)
ないご ごあんそ。
(西郷)こいが 体当たりしてきもした。
真ん丸肥えっせえ ハハッ うんまかろそな豚じゃ。
(塾生)来い!
申し訳ありませぬ。 申し訳ありませぬ。
(殴る音) 申し訳ありませぬ。
申し訳ありませぬ。 とんだ粗相を致しました。
それがしは 上州安中藩士 新島民治の子で
新島七五三太と申します。
なして 豚さ 逃がしたんだ?
逃がしたのでは ありません。 かんぬきを掛け忘れたのです。
これを描いていました。
へえ~ うまいもんだな。
おう!
(新島)不思議な鳴き声が 気にかかり
つい 入り込んでしまいました。 熱中すると どうも いけません。
よか よか! そいくらいの熱が なきゃあ
ないも ものには なりもはん。 のう そうごわんそ?
はい!
(塾生)薩摩の西郷殿 いずれに おいでですか?
おっ ようやく おいの番が来もした。
それでは。
この男は 西郷吉之助。
薩摩藩主 島津斉彬に抜擢され お庭方を務めていた。
(新島)ここは 何を学ぶところですか?
(川崎)西洋の学問ですよ。 (新島)どんな事を やるのです?
(覚馬)異国の言葉 兵学に舎密術 医術。
書物で学び 実際に やっでみる。 私も入れて頂けるでしょうか?
もうちっと大ぎくならねえとな。
(川崎)何年かして 藩からお許しを 頂いたら また いらっしゃい。
はい。
先生は 下田開港に不服と 承っておいもす。
下田は伊豆半島の突端だ。
かの地を メリケンの艦隊に押さえられては
それこそ 東西の海路を断たれたも同然だ。
そいなら どこを 開港すべき ごわんそかい。
横浜だ。
江戸に近すぎっとでは ごわはんか。
だから よいのだ。 警護も 一層 厳重になり
間近で黒船を見る事もできる。
なるほど。
おのずと 異国ん術を 知る事にも なりもすな。
そなた 地理にも 昨今の情勢にも 明るいと見えるな。
全て 我が主君の教えに ございもす。
やっぱり 乗るしかねえ。 はっ?
行ぐか! 下田に。
黒船ですか? ああ。
どうやって乗る気です? 捕まれば 死罪になりますよ。
そんじも 俺は見でえ。 船の中が なじょなってるか。
異人の大筒が どれほど すげえもんか
乗って この目で 確かめてえ。 むちゃですよ。
むちゃしねえと 何も始まんねえべ。
断固として 事を行う時 人は皆 狂気だ。 狂気?
寅次郎さんが 前に そう言ってた。
狂気っつうのは やむにやまれず 命 懸けるって事だべ。
それぐらいの熱がねえど 黒船には太刀打ちできねえ。
しかし なぜ そこまで?
会津には海がねえ。 えっ?
そったのに 蝦夷だ 上総だと 海の警護さ 任されできた。
今は 品川砲台だ。 いざっつう時は
先人切って 黒船とも 戦わねばなんねえ。 ええ…。
会津は強え。 んだげんじょ
敵の力が なじょなもんか 分がんねえままでは
戦いようもねえ。
会津のためか…。
そんだけじゃねえ。 俺が取りつかれてる。
横浜で見で以来 頭の中は 黒船で いっぺえだ。
さっきの子どもと同じだな。
夢中になって ほかのものが目に入んねえ。
分かりました。 では 私も参ります。
えっ? お供します。 一緒に 黒船に乗りましょう。
簡単に言うな。 捕まっと死罪だぞ。
それは さっき 私が言った事です。
第一 どうやって 乗船を 掛け合うつもりですか?
覚馬さんの その下手くそな蘭語じゃ
異国人には通じませんよ。 それは…。
私だって 蘭学者の端くれです。
西洋の技術の固まり この目で見てみたい。
それに 覚馬さんと一緒なら うまくいくような気が致します。
では決まりです! 出立は いつに致しましょう?
ちっと待て。 もう止めても無駄です。
ここに火が付きました。
今すぐという訳には いがねえんだ。
なぜです? ぐずぐずしていたら 気持ちが鈍ります。
行ぐ前に やる事がある。 国禁を犯すのだからな。
失敗して捕まった時に 会津に おとがめが あっちゃなんねえ。
家の者に 累が及んでも いけねえ。 そうか…。
藩を抜げる お許しが要んだ。 家も勘当してもらわねえど。
黒船の事は秘したままで。
さて なじょしたもんか…。
うん? 何だ?
覚馬さん 会津のために 会津を お捨てになるんですね。
ばか言うんでねえ。 脱藩したって変わんねえ。
俺は会津武士だ。
(キジの鳴き声)
その日 八重は 初めて 鳥撃ちの供を許された。
(銃声)
あっ 当だった!
八重 落ちた鳥さ 拾ってこい。 はい!
(徳造)んだら おらが。 いい。 八重が行げ。
はい!
お父っつぁま とうとう 鉄砲 教えてくれんべがな。
(羽ばたく音)
(鳴き声)
(権八)そご どいてろ。
(銃声)
死んだか?
はい…。
息の根を止めたのは 鉄砲の弾だ。
弾に急所さ 射ぬがれたら 必ず死ぬ。
鳥も 獣も 人間もだ。
鉄砲は武器だ。 殺生する道具だ。
戦になれば 人さ 撃ぢ殺す。
角場の的撃ちは 面白ぐ見えるかもしんねえ。
んだげんじょ 的さ 撃ぢ抜ぐという事は
すなわち 人間の心の臓さ 撃ぢ抜ぐっつう事だ。
恐れる事を知らず 形だけ まねで いでは
いづか 己の身が 鉄砲に滅ぼされる。
んだがら 砲術やる者は 学問と技を磨がねばなんねえ。
何より 立派な武士でなければ なんねえ。 分がんべ?
はい…。
わしは 山本家に婿に入り
砲術の家の誉れど 重いお役目とを受げ継いだ。
次は 覚馬と三郎が背負う。
おなごの おめえには 到底 背負いきんねえ。
二度と 鉄砲のまね事は すんな。 いいな?
徳造。 へい。
お嬢様…。
(徳造)お嬢様。
(機を織る音)
(お吉)徳造さん ちぃと 手 貸してくなんしょ。
≪(徳造)おう!
(機を織る音)
どした?
(佐久)これ 糸が…。 あ~。 あっ。
ほれ…。
こうして こう…。
なあ 八重。
糸繰りは 何のために やる? えっ?
機を織るためだべ。 はい…。
一家の着物を そろえるのは おなごの大切な役目だからなし。
はい。
んだら 鉄砲は 何のために やる?
何のため?
鉄砲撃づのは おなごの役目じゃねえ。
それでも やんねばなんねえ訳が 八重には あんのがしい?
(機を織る音)
鉄砲をやる訳は…。
ダン! (銃声)
(川崎)奉行所からの呼び出しとは どういう事でしょうか?
さてな。
すぐに戻る。
奉行所から 呼び出しが来たのです。
奉行所…。
半月前 寅次郎は 下田で黒船に乗り込み
アメリカへの密航を企てた。 しかし 計画は失敗。
(佐久間の声)
(井戸)その送別の詩は その方が 吉田寅次郎に送ったもの。
密航をそそのかした事 明白である。
国禁を犯せし段 恐れ入るか。
海外渡航を禁ずる法など もはや意味をなさぬ。 何?
港を開いた今 諸外国の事情を 探索する事こそ急務。
寅次郎 国を思い やむにやまれぬ心で
渡航を企てたのでござる。
それを 捕まえて罰する。
なんたる大ばかか!
(雷鳴)
半年後 国元蟄居の判決が下り
象山は松代に 寅次郎は萩に
それぞれ 護送されていった。
寅次郎さんに 先 越されちまったな。
(川崎)はい。
断固として 事を行う時 人は皆 狂気。
あの人の命懸けに比べっと 俺は まだまだ半端だ。
(川崎)みんな… 消えてしまいましたね。
(覚馬)消えだ。 先生も 黒船も。
(勝)よう! (覚馬)勝先生!
何をしておいでです? こいつを取りに来たのさ。
おいらの塾に掲げようと思ってね。
象山先生は もう お戻りにならないのでしょうか?
当分 無理だろうな。 首が 助かっただけでも もうけもんよ。
これがらって時に…。 幕府は 大べらぼうよ!
この国が変わるために 一番役に立つ人間を
罪人にしちまった。
けどよ… 日本という小舟は もう
世界って海に こぎ出したんだ。
今に誰もが 大手を振って 海を越えていくようになる。
本当に来るんでしょうか? そんな日が。
来る! いや… 俺たちが そういう時代を作るのさ。
西洋の技術と 東洋の道徳でな。
勝先生…。
これから どうすんだい? よかったら おいらの塾に来なよ。
今 野戦砲の鋳造を 請け負ってんだが
手が足りなくて弱ってんだ。
野戦砲ですか! 是非やらせてくなんしょ。
よし 決まった。
「海舟」か…。 どうだい? いい字だね。
(2人)はい!
翌年の安政2年 勝 海舟は 長崎の海軍伝習所に入所。
やがて 日本の舵取り役として 頭角を現していく。
(照姫)婚家を離縁されて 戻って参りました。
申し訳ございませぬ。 また ご厄介になります。
(容保)姉上の育った屋敷です。
ゆるりと過ごされ お疲れをお取り下さい。
ありがとう存じます。
(容保)「今日よりは 君がもとぞと 庭の松」。
(照姫)それは…。
姉上が贈って下さった歌です。
また 歌会を開きましょう。 父上がいらした 昔のように。
はい…。
(敏姫)姉上様。
お敏様。
また 仲良うして下さりませ。 はい。
兄上は 近頃 少しも相手をして下さらぬので
敏は 寂しゅうございました。
姉上が お戻りになられて うれしゅうございます。
あっ… 喜んでは いけませんね。
(照姫の声)
[ 回想 ] (照姫)あの子は誰?
(滝瀬)銈之允君にござります。 姫様の弟君として
会津松平家に 養子に入られたのですよ。
私の弟…。
照にございます。 私も 4年前
保科家より こちらに参ったのです。
仲良う致しましょうね。 (銈之允)はい。
(馬子唄)
変わんねえな 磐梯山は。
山は 動がねえがらっし。 お侍様 会津は久しぶりがし?
ああ 長え事 江戸に いだがらな。
帰ってきたぞ 会津に。
(佐久)八重!
(にぎわう声)
(覚馬)やげに にぎやがだな。 (馬子)米蔵に 俵 運んでんだべ。
あ~ 子どもだちの力比べか。 ちぃと すまねえなし。
また 担いだ。 てえした力持ちだ。
あっ さすけねえが?
(見物人たち)お~!
またまた 持ち上げた。 たまげだ娘だ。
八重!
兄つぁま?
お帰りなんしょ! おう!
(覚馬)しかし たまげだ。 八重は てえした力持ちだ。
両国の見せ物より まだ すげえ。 力では ねえ。
俵は 呼吸で持ち上げんだし。 腰を こう入れで…。
(佐久)あ~ 男の子みたいな まねして。
そったら事では 土産のくしが似合わねえがら。
(覚馬)おう よぐ似合ってる。 ありがとなし。
(佐久)お吉! (お吉)へい。
(権八)江戸での学問の事は ご重役の耳にも入ってる。
にしが 日新館の砲術教授方に 取り立てられるのは
まず 間違いねえ。 そうがし。
これで 砲術の家の面目も立づし わしも 肩の荷が下りるぞ。 ハハハ。
(三郎)兄つぁま! おう 三郎か!
江戸でのお勤め 御苦労さまで ごぜえやした。
挨拶も もう一人前だな。 江戸に 出た時は こんな ちっこくて
八重の後ろに こそこそ 隠れでたが…。
ありがとうごぜえます。 (佐久)今では 什の仲間と
毎日毎日 暴れ回ってる。
父上から 砲術も 習い始めたそうだな?
はい。 (覚馬)んだら これは分がっか?
火薬さ 作るのに 硝石1貫目に 硫黄 何匁 入れる?
硝石が1貫目… え~と…。
分がんねえか。 200…。
215匁!
なして 八重が知ってる?
(佐久)さで 明日にでも 親戚中に知らせて お祝いを…。
私 砲術さ 習いでえのです。
えっ? (権八)よさねえか。
何の話だ?
お父っつぁまには 叱られるし
おなごのやる事でねえのも よ~ぐ分がってる。
んだげんじょ やっぱり やりでえ。
砲術の事 知りでえ。 鉄砲 撃ってみでえ。
兄つぁまや三郎ど同じように 砲術の家に生まれで
私だけ やれねえのは悔しい。
お父っつぁま! 兄つぁま!
私に 砲術さ 教えてくなんしょ。
子どもの戯言と 昔は聞ぎ流しておりやしたが
ずっと考えでいだどは…。
(落ちる音)
これ 八重が? 昔 叱って 取り上げだげんじょ
親の目盗んで 今でも 続げでんのは分がってた。
子どもの絵でも 勘どころは つかんでる。
一づも教えねえのに 天性っつうもんだべ。
やっぱり 鉄砲の家の娘だ。
八重は 力もある。 胆力でも 男に負げねえ。
仕込んだら ものになんべ。
んだげんじょ それが 何になんだ。
今でせえ 世間並みがら 外れたおなごだ。
この上 鉄砲なんぞやったら 物笑いの種だ。
ヘボならば まだいい。 いい腕になったら 困んだ。
おなごが鉄砲の腕 振るう場所は どごにも ねえ。
いずれ 切ねえ思いする。
(覚馬)八重も同じだ…。
やむにやまれず描いでる。
(鳥の鳴き声)
(覚馬)おい! ちっと来い。 はい。
構えでみろ。
えっ? いいがら 早ぐ!
重いが?
はい。
それが鉄砲の重さだ。
命のやり取りする 武器の重さだ。
にしは侍の娘だ。
始めっと決めだら 極めるまで 引ぐ事は許さねえ。
弱音 吐ぐ事も許さねえ。
また 極めたところで
誰が褒めでぐれる という事も ねえ。
嫌なら 今すぐ 銃を置げ。
覚悟は いいな? はい!
(川崎)覚馬さんの文に 会津で 蘭学所を開くとありましたので。
(覚馬)語学に砲術 舎密術 医術も教える。
おなごが 鉄砲 撃づのが そんなに おかしいべか?
(簗瀬)お家の軍制に
砲術指南風情が 口を挟むものではない。
(内蔵助)下がれ。
(覚馬) 殿は黒船を よくご存じだ。
弓矢で戦うだの 蘭学は要らぬなど。
まるで「井の中の蛙」だ!
長野市 松代。
幕末の思想家 佐久間象山は この町で生まれました。
生家跡に創建された象山神社は
学問の神様として 地元の信仰を集めています>
時代を担う若き志士たちに 大きな影響を与えた象山。
西洋の科学技術を熱心に研究し
電信実験や写真機の開発などを 行ったといわれています。
松陰の海外密航を 促したとして
象山は 松代での蟄居を 言い渡されました>
来客が絶えず
高杉晋作とも ここで 朝まで 議論を交わしたといいます。
「開国して 欧米の文化を吸収すべきだ」。
象山の目は 信州の山々を越え
世界を見据えていました>
(大西水樹)おばあちゃん 脱走したんだって?
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