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(ナレーション) 新たにヴィルマとロジーナを―
側仕えとして迎えたマイン
ところが仕事をしないロジーナに デリアたちは不満を募らせていく
マインの頑張りを 目の当たりにしたロジーナは―
ようやく態度を改めた
そしてマインは本格的に 絵本作りに取りかかるのだった
♪~
~♪
(マイン)“むか~し 昔 ある所に3匹の子ブタがいました”
“3匹の子ブタは自分の家を 造ることになりました”
“長男が建てたのはワラの家”
(マイン)“次男は木の家を―”
“一番下の子ブタは レンガの家を建てました”
“ある日オオカミが やってきて その大きな息を吹くと―”
“長男のワラの家は簡単に 吹き飛ばされてしまいました”
“長男は命からがら次男の木の家に 逃げ込みましたが―”
“追ってきたオオカミは 息をひと吹き”
“木の家も簡単に 壊されてしまいました”
“2人は一番下の子ブタが建てた レンガの家へ逃げ込みました”
“そこへオオカミが 追ってきました”
“オオカミは息を大きく吸うと…”
“3匹は それからずっと―”
“レンガの家で 仲よく暮らしましたとさ”
“おしまい”
どう? 面白かった?
(子供たち)ん~…
(子供)よく分かりませんでした
えっ 分からない?
(リコ)はい マイン様 “コブタ”って何ですか?
(マイン)えっ (子供)あと“オオカミ”も
(子供たちのざわめき)
(ヴィルマ)マイン様 今のお話を絵本にするのですか?
そのつもりなのですが…
コブタやオオカミとは どのようなものでしょうか?
見たことがないものを描くのは 難しいです
そうですよね
とても参考になりました
また別のお話を考えてきますね
(子供)マイン様 また聞かせてください
では わたくしも これで
ヴィルマには もう1つ話があるのです
何でしょうか?
ロジーナから聞きました
その…
(ロジーナ)あのこと マイン様に お話ししておいたほうが―
いいと思ったの
あ…
(マイン)孤児院に残りたいと 希望したのは―
孤児院の外に出たくないから…
殿方と接したくないから なのですね?
はい 申し訳ございません
隠していたわけではないのですが…
いいのですよ ヴィルマ
それより これから ヴィルマの所に来る時は
フランではなくロジーナを 伴うことにしましたから
安心してくださいね フフッ
(ロジーナ)フッ
それで今日はロジーナと…
側仕えになる時も
マイン様は わたくしの意思を 尊重してくださいました
本当に ありがとう存じます
フフッ
(ギル) よし 来い! ニョキニョッ木!
(マイン)ていっ!
(ルッツたち)はあーっ!
(ルッツ)はっ! (ギル)やあっ!
(カイ)たあっ!
(ルッツ) みんな だいぶ慣れてきたな
紙は あとどのくらい作るんだ? マイン
(マイン)子ブタがダメってことは
桃太郎(ももたろう)とか鬼退治なんて もっと分からないし…
ヴィルマが描ける絵… う~ん…
聞いてねえし…
(ギル)マイン様は夢中になると 周りが全然 見えなくなるからな
分かってるじゃないか ギル
(2人)アハハハハ… (マイン)神殿!
(2人)あ?
(ルッツ) 神殿が どうかしたのか? マイン
ヴィルマに描いてもらう絵本
決まったのか?
うん! 子供用の聖典がいいかも
そしたら文字も覚えられるし 一石二鳥だね
ん? だったら 人数分 作らないと… だよね
コピーも印刷もできないし…
あっ! 図工でやった版画なら!
うん! 今回は木版画にしよう!
(ベンノ)インク?
はい 絵本を作るのに必要なんです
(ベンノ) ああ この間 言ってたやつか
はい
どれだけ要るんだ?
インクは高いぞ 原価は ちゃんと計算したのか?
えっ あっ ああ…
(ベンノ)ん~?
あ… あ… エヘッ してませんでした
アホ! 原価を計算しない商人が どこにいる!?
えっ… もう商人じゃないもん 巫女(みこ)見習いだもん
ううっ いだい いだい うう…
(マイン)それから 木工工房へ行って板を注文した
カルタの時の工房は忙しくて―
そこから独立した若い親方さんが やっている工房を紹介してもらった
インゴさん 納品は ギルベルタ商会に お願いします
(インゴ)分かりました 今後とも よろしくお願いします
(親方)インクだあ?
油性のインクが 欲しいんですけど
羊皮紙用のインクじゃないインクは ありますか?
インクはインクだ 1つしかない
あっ あ…
やっぱりインクも 自分で作るしかないのかなあ
インクになりそうなものって… 墨? 油性絵の具?
おい ルッツ マインは何を言っているんだ?
考えていることが 勝手に口から漏れてるだけです
いつ終わる? レストランの話がしたいんだが
答えが出るまで このままです
(ベンノ)フウ…
とりあえず片っ端から作って 一番よくできたので絵本を作ろう
ねっ ルッツ
えっ 俺?
私が考えたものは?
俺が作る
フフッ じゃあ まずはスス集めだね
(神官長)君は一体 何をたくらんでいる?
何のことでしょうか?
今年は ずいぶんと早くから
灰色神官が総出で 暖炉や煙突の掃除をしている
君の仕業であろう
人聞きの悪いことを おっしゃらないでくださいませ
植物紙に合うインクを作るために ススを集めてくれているのです
わたくしが作るのは 植物紙の絵本なので
なるほど 事情は分かったが
あまり派手なことをして 神殿長を刺激しないように
(マイン)はい
それと どんな絵本を作るのか 決まったら教えなさい
君のすることは予想がつかぬ 心臓に悪い
えっ… それなら もう決まってます 子供用の聖典絵本を作ります
子供向けの聖典か
文字や文章を覚えるのにも 役に立ちそうだな
はい そのつもりです
よろしい 許可する
ありがとう存じます
(ヴィルマ) まあ 子供用の聖典絵本ですか
(マイン)ええ これなら ヴィルマも絵を描けるでしょう?
はい 神殿のことでしたら 大丈夫です
(マイン)では お願いしますね
(マイン)下絵が描けたら 鏡文字で本文を書き―
それをルッツの所の ジークお兄ちゃんに彫ってもらった
ススに油を混ぜて よく練れば インクのでき上がりだ
これくらいツヤと粘りがあれば 大丈夫よ
(マイン)バレンは私の自作だ
(リコ)わあ! 絵になってる!
(子供)真っ黒だったのに 白い線がある
(子供たちのはしゃぐ声)
(ルッツ)う~ん…
(マイン)微妙…
絵本には向かないよね
そうだな 字も ちょっと読みにくいしな
どうしよう
(子供たち)ただいま戻りました!
(子供)本当に すごかったね
(ヴィルマ) 何が すごかったのかしら?
(子供)板にインクを塗ったら ヴィルマの絵が出てきたんだよ
わたくしの絵が?
この間 マイン様に頼まれて 板に絵を描いたけれど
それかしら?
うん! すっごくきれいだったよ!
今度はヴィルマも一緒に行こう!
はっ!
(ヴィルマ)イヤ! (リコ)うっ!
あ… うっ
(泣き声)
はっ!
(リコの泣き声)
(リコの泣き声)
ごめんなさい!
(リコの泣き声)
(リコの泣き声)
わたくし…
(リコのすすり泣き)
(ヴィルマ) 本当に ごめんなさい!
(マイン)よくできてる 思ったとおりだね
(マイン)私は一度 聖典絵本作りをやめて―
赤ちゃんの絵本を作った
どんな本にするかは 決まっていたから―
あとは道具を作るだけ
道具はヨハンに注文した
(ヨハン)あっ この間の ギルベルタ商会の方
(マイン)仕事が細かいヨハンは 私のお気に入りなのだ
(子供) マイン様 これは何ですか?
赤ちゃんのための絵本です
(子供)ふ~ん…
なあ マイン この絵 本当に赤ちゃんが喜ぶのか?
喜ぶよ!
三角や四角みたいに はっきりした形のほうが
赤ちゃんには いいんだよ
まあ マインが納得してるなら それでいいけどさ
子供用の聖典も厚紙で作れそうだな
(マイン)うん
(ヴィルマ) これが わたくしの絵ですか
ヴィルマの絵は とても繊細で
木版画では こんな感じの 仕上がりになってしまうのです
これではヴィルマの絵のよさが 失われてしまうでしょう?
そこで別の方法で 作れないかと思って―
考えてみたのが こちらです
あっ こちらはマイン様が?
(マイン) ええ ヴィルマの絵を参考に―
白と黒だけで紙を切った場合の 見本として作ってみました
こちらのほうが板を彫るよりは 手軽にできますし―
雰囲気も残せると思うのです
ただ これが みんなに 受け入れられるのか
わたくしには分からなくて…
この方法で作ってみます
そう言ってもらえると助かります
新しい手法で どこまでできるか わたくしも挑戦してみたいのです
ヴィルマ… 無理はしないでください
はい
(子供)マイン様 待ってください (マイン)あっ
お話があるのです
(マイン)ん?
(マイン) ヴィルマの様子が おかしい?
はい この間も 工房に行こうって言ったら
嫌だって言われて…
(2人)あ…
(子供) それから毎日 元気がないんです
マイン様 ヴィルマを なんとかしてあげてください
2人ともヴィルマのことが 大好きなのですね
(2人)はい
時が解決してくれるのを 待ちましょう
えっ?
他に方法は ないのですか?
そうですね
みんなの頑張りを見たら 外に出る気になるかもしれませんね
(マイン)ヴィルマに 絵を描いてもらっている間―
私は神官長に聖典絵本の内容を チェックしてもらった
(マイン)え~ また お説教?
マイン 君は一体どこで このような教育を受けた?
おっしゃる意味が よく分かりません
文章が整いすぎている
難しい言い回しが多い聖典を
子供でも分かるような 簡潔な言葉に直すというのは
決して簡単なことではない
あ…
少なくとも 初めて私が 聖典を読んでやった時には―
単語さえ おぼつかなかった者に できることだとは思えぬ
まるで別の言葉で 教育を受けてきて
ここで使う文字を知らなかった 他国の者のようではないか
神官長 わたくしは 生まれも育ちも この街です
私が行った調査の結果も 不審な点は なかったからな
だが げせぬ
ん…
前にも同じようなことを 言われたことがあります
(イルゼ)なあ マイン あんた 一体 何者なんだい?
一体どこで こんなレシピを手に入れた?
それに君は何と答えた?
“夢の中”と
(神官長)夢の中…
はい “ここではない―”
“二度と行くこともできない 夢のような所”と答えました
神官長は信じてくれますか?
(神官長)ん…
荒唐無稽(こうとうむけい)な話だが 私の予測は 間違っていないことになる
君は隠し事もウソもヘタだからな
う…
(神官長) だが だからこそ混乱する
考える時間が必要だ
(マイン)そして必要な道具を そろえているうちに―
ヴィルマの絵が完成した
どうぞ ご覧ください
わあ~! (ロジーナ)まあ!
ステキです ヴィルマ すぐ印刷してみましょう
ギルに準備するよう頼んで
かしこまりました
(ヴィルマ)あの マイン様 (マイン・ロジーナ)ん?
わたくしも 工房に
ご一緒させていただいても よろしいでしょうか?
でもヴィルマは…
新しい手法に挑戦したら
少し自信が… つきました 今なら…
今なら… 外に出られそうな気が するのです
ヴィルマ…
マイン様が一緒なら 心強いのですけれど…
わたくし 絶対ヴィルマに 殿方を近づけません!
マイン様 本来は側仕えが
あるじに殿方を 近づけないようにするのですよ
えっ?
フフッ
(2人)フフフッ
(マインたちの笑い声)
はっ
ヴィルマ 大丈夫?
はい
あっ! ヴィルマだ!
ヴィルマが来た! (ヴィルマ)あっ
(子供たちの歓声)
みんなが きれいだと 言っていた印刷を
わたくしにも見せてください
(子供たちの歓声) (リコ)わあ! すごい!
とても… とても すばらしいです
(ヴィルマのすすり泣き) (マイン)あっ あ…
(すすり泣き)
(マイン) ヴィルマ 大丈夫ですか?
うれしくて…
(子供)ヴィルマ どうしたの? (子供)泣いてるの?
マイン様 わたくし 次の絵を描いてまいります
ヴィルマ… ええ お願いね
(マイン)それからは ヴィルマの絵が完成するたびに―
印刷していった
(マイン) トゥーリ! 見て 見て!
ほら 印刷できたんだよ
(トゥーリ)わあ ステキ!
とじたら完成なの トゥーリ 手伝って
私?
うん! トゥーリの腕が必要なの
マイン 切って
えっ? あ…
うっ…
2年か…
長かったな
やったね マイン
ルッツとトゥーリのおかげだよ ありがとう
まだ1冊だ もっと もっと
読んでも読んでも終わらないくらい いっぱい本を作るんだ
なっ マイン
そう 図書館が必要になるぐらい
約束だからね ルッツ
(息を吸う音)
あ~ インクのにおいだ~
(3人の笑い声)
♪~
~♪
ハア… グーテンベルクさんには まだまだ届かないなあ
誰だよ それ?
私にとって神にも等しい偉業を 成し遂げた人だよ
私の目標!
何だ これ!?
グーテンベルクさんが発明した 活版印刷機
これを作りたいんだよね
(ルッツ)ちょっと待て これ 金属を使ってるよな?
原価計算したのか?
ルッツ ベンノさんに似てきたね
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