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(荻原早紀) ごめんなさい。
正義を貫けないのなら→
そんな仕事は 私には必要ありません。
(長部璃子) 恋人の次は仕事もなくなって あんたに何が残ってるわけ?
(藍田光輝) あんたはバカで頑固で面倒な上に ズレてるよ。
(荻原 光) 私がいなくなっても やって行けんだろうね?
どういう意味よ それ。
ちょっと待ってよ どこ行くの? 母さん?
[TEL] 新潟総合病院です おかあ様が…。
(エレベーターの到着音)
(今田) いいから帰れよ! 何 のこのこ東京出て来てんだよ!
(今田の母親) だって あんたが 骨 折ったっていうから心配で。
健治 ちゃんと大学で勉強してる?
うるせぇよ! ぶっ殺すぞ ババア!
(今田) 早く帰れよ! 健治…。
いくら相手が母親でも→
「ぶっ殺す」と脅せば 立派な脅迫罪になります。
(医師) 本当は この前 倒れた時も 退院を許可しなかったんですが→
どうしても学校に行くと おっしゃって…。
それで 母は?
今は 何とか落ち着いてますが→
今度 発作を起こしたら 命の保証はできません。
また倒れるようなことが あったら→
娘さんに渡してほしいって…。
♪♪~
こんなもん送って来ても 迷惑だっていってるでしょ ママ。
同窓会も行けるわけないでしょ。
こっちは忙しくて 新潟に帰ってる暇がないの。
私がいないと 何もできないんだから→
この家族は。
あっ… パパによろしく じゃあね。
(長部富貴恵) 璃子さん 遠慮しないで 行って来たら? 同窓会。
え… あっ でも お義母様→
家のことを ほったらかしにする わけにはいきませんし。
大丈夫よ 三田が 全部やってくれるから ねぇ?
(三田) はい ご心配なく。
あっ でも 善隆さんに迷惑かかるし…。
(長部善隆) 大丈夫 ちょうど出張だから。
あっ でも子供達が…。
ちょうどいいわ 家族水入らずで箱根の別荘に。
善は急げだわ! 箱根の管理人に 連絡してちょうだい。
(三田) 分かりました。 (富貴恵) 夢 望→
大きいママと また芦ノ湖で お船に乗りましょうね~。
(望:夢) やったぁ! (富貴恵) ねぇ~。
ババア。
[TEL](着信音)
もしもし。
[TEL](音声ガイダンス) 電源が入っていないため…。 ダメだ。
昨日から全く つながらない。
(坂本) はぁ… もう どこ行っちゃったんだろう 早紀。
まさか変なこととか 考えてませんよね?
事務所 クビになったのが ショックで…。
ねぇ 正登さん 何とかならなかったの?
いや 俺だって 必死で説得しましたよ。
俺がボスに謝るからって。
でも早紀 ああいう性格だし 一度 言い出したら聞かなくて。
う~ん…。 何とかしてやりたいんです 俺。
こんなご時世だから いい仕事が見つかると思えないし。
あれ? 正登さん→
もしかして より戻したいの? 早紀と。
璃子さんだけが頼りなんです。
分かった。
(副署長) うちの所轄で起きた 殺人未遂事件の被疑者を→
新潟で逮捕したので→
明日 こちらに 護送してもらう予定です。
分かりました。
それから 先日 本庁で おとう様とお会いしました。
どうせ 「ウチの出来の悪い息子は ちゃんとやってるのか?」って→
いわれたんでしょ? あっ いや…。
ハハ… 冗談ですよ。
報告は以上ですか? だから 私は→
署長の知り合いなんだってば!
あっ! 光ちゃん 何とかしてよ この人達。
全然信じてくれないの 私達の関係~。
違うんですよ! 変な誤解しないでください。
(生徒) お大事に。 ありがとうございました。
あぁ…。
あんなに いったのに 「ムチャするな」って。
もうすぐ受験で 学校に来なくなるからさ→
その前に みんなに会いたくて。 だからって→
また倒れたら 何にもならないでしょ。
校長先生や生徒も 心配して来てくれたんだからね。
あぁ… みんなに謝んなくちゃ もう大丈夫だからね。
何いってんのよ そんな体で。 はぁ…。
それに 何なの? これ。
「我 死すとも いいとも」。
辞世の句みたいなもんだよ。
そんな縁起の悪いもん 渡さないでよ。
それに 意味が 全然分からないんですけど。
そんなの自分で考えな。
相変わらず やること なすこと 勝手なんだから。
もう ガミガミいわないでよ また具合悪くなるから。
私は そっちの体を心配して いってるんでしょ。
大丈夫だって あんたには迷惑かけないから。
それよりさ 帰って コート取って来てくんない?
あの黒のやつ。 まだ学校行く気?
冗談じゃないわよ 今度倒れたら どうなるか分かってるの?
構わないよ 教壇で死ねるなら本望だ。
勝手なこと いわないでよ 絶対 行かせないからね。
あんたには分かんないよ。
私はね 教師って仕事に 命張ってんだよ!
あぁ そう。
早紀ちゃ~ん。
はぁ また始まった。
すねると すぐ黙るんだから もう。
ねぇ~ ハハハ…。
あんたのせいでね→
心臓悪くなったかも しれないんだからね こっちは。
ほら いた。
すごいわね 警察って! さすが光ちゃん。
その「光ちゃん」っていうの やめてくれません?
別にいいじゃない 光輝だから光ちゃんで。
どうしたんですか? 2人とも。
ケータイが全然つながらないから 光ちゃんに頼んで→
捜してもらったのよ あんたのこと。
この人があんたが自殺でも してんじゃないかっていうから→
この前 事務所 クビになって。 そうなの? 早紀。
えっ おかあさんに まだ話してなかったの? あんた。
あっ… ご無沙汰しております 荻原先生。
っていっても覚えてないですよね 私のことなんか。
そんなことないわよ。
よく授業中に仮病使って 保健室で寝てたわね。
蓮美璃子さん。
アハハハ… ちなみに今は 長部で~す。
あなた 早紀と仲良くしてくれてんの?
あぁ… この前 偶然 15年ぶりに会って→
まぁ 私的には 何か ほっとけないっていうか…。
早紀も私みたいに 結婚しちゃえばいいんですよ。
それなのに正登さんのプロポーズ 断っちゃって。
そうなの? 早紀。
ウソっ 彼と別れたことも あんた 話してないの?
別に いう必要もないので。
あの もしかして さっきから おかあさんのこと無視してない?
別に。
この子 怒るとね こっちがいくら話しかけても→
何にもいわなくなるんです 3日も4日も。
あぁ~ だから→
こういう分かりにくい性格に なったんですか。
あの あなたは?
申し遅れました 藍田光輝と申します。
こう見えても警察官僚なんですよ。 はい。
もしかして 早紀の新しい恋人とか?
あぁ 違うんです そうじゃなくて→
何といいましょうか ある意味→
娘さんの「プチ追っかけ」とでも 申しますか。
いいんですか? 2人とも こんな所まで。
気になさらずに。
私は たまたま 小学校の同窓会があったんで。
僕も うちの所轄で起きた 事件の関係で用事がありまして。
え? あなた 早紀のこと おちょくってるほうが→
ヘタなテレビドラマ見てるより 面白いとかいってなかったっけ?
そっちこそ 彼女が不幸になればなるほど→
日頃の辛いことが忘れられるって。
何いってんのかしら この人。
冗談です 楽しんでいただけました?
ハハハ…。
(アトムの吠え声)
でもさぁ 何か似てるよね 早紀の部屋と。
きちんと片付いてるとことか。
お待たせ よいしょ。
あ~ん 光ちゃん お料理するんだ~。
いや~ おいしそう!
いただきま~す! いただきます。
すみません 食材まで買って来てもらって。
いいから 食べて食べて。
あっ そうだ! チーズもあるけど。
え~ 私 チーズには 目がない人なんだけど~!
≪へぇ~ 実は俺も!≫
共通点ないと思ったけど 変なとこで気が合うね 俺達。
(ツバを飲み込む音) やせ我慢してないで食べれば?
そうよ早紀 いいじゃない 今日ぐらい。
やっぱり 司法試験に受かるまでは。
そうやって意地張ってるから おかあさんとケンカすんのよ。
そうだよ 結局あれから病院でも 全然口きかないし。
向こうが悪いんです。
昔っから私の言うことなんて 全然聞かないし→
今日も 辞世の句だとかいって 訳 分からないもの渡されるし。
ん? 辞世の句って 昔の人が 死ぬ時とかに書いてたやつ?
こら アトム。 何て書いてあったの?
はい あれ?
それが 「我 死すとも いいとも」って。
えっ まさか また なくしたとか?
この間の財布といい あんた 物なくす癖があんじゃないの?
それより どういう意味だと思いますか?
「私が死んだら 弁護士の道を 諦めて結婚してもいいかな?
いいとも!」とかなんじゃない? どうかなぁ?
「今まで通り 弁護士になるまでは 女独りで生きてもいいかな?
いいとも!」じゃない? おかあさんに直接聞いてみたら?
「そんなの自分で考えろ」って… もう めちゃくちゃです。
でもさ お互いのことで そうやって むきになるのって→
やっぱり似てるよね 早紀と おかあさんってね。
やめてください。
(坂本) おかあさんが また? [TEL] 今がチャンスよ 早紀と より戻す。
早くこっちに来て 力になってあげれば?
そうしたいんですけど 仕事がいろいろ大変で。
え~ そうなの? じゃ とにかく電話したら?
ありがとうございます これからも助けてもらえますか?
任しといて~ じゃあね~。
なるほど そういうことか。 ビックリした~。
悪い? 早紀はね 正登さんと 結婚するのが一番いいの。
おかあさんのためにも。
そうかな? 彼と よりを戻しても 幸せになるとは思えないけどね。
あなたはね 結婚してないから 分かんないのよ 女の気持が。
そっちこそ 男の本性 分かってないんじゃないの?
結婚すると変わるよ 男は。
まぁね。 お? もしかして経験済み?
えっ 何いってんのよ そんなわけないじゃない。
何の話ですか? ううん 何でもないの。
さぁ そろそろ俺は 東京戻らないと。
今からですか?
うん 署長ってさ 毎日 署にいなきゃいけないから→
大変なのよ じゃ。
あ~ 久しぶりに お風呂で のんびりした。
いつもは 子供達と一緒だから 全然落ち着かなくてさ。
あんたさ こんな時まで勉強しなくたって。
こうしてるほうが落ち着くので。
あっそう じゃ お先に おやすみ。
おやすみなさい。
♪♪~
[TEL](振動音)
もしもし。
(坂本) あっ 俺 おかあさん大丈夫?
どうして知ってるの?
あぁ いや ほら 何度 電話しても出ないから→
また おかあさんの具合が悪くて 新潟に行ったのかなと思って。
実は そうなの。
この前は ごめんな。
結局 早紀だけを 見殺しにするみたいになって→
守ることできなくて。
[TEL](坂本) 俺も 本当は 早紀がいうように→
弁護士は 正義を貫くべきだって思う。
俺がパートナーになったら→
うちの事務所 変えてみせるからさ。
だから…。
だから また電話してもいいかな?
[TEL] このまま早紀と何のつながりも なくなるのは 嫌なんだ。
(看護師) 大変です ハギワラさん! オギワラです。
おかあ様が! [TEL] もしもし 早紀?
正登 ごめん。
(光) 邪魔しないでよ!
明日が うちのクラスのみんなに 会える 最後のチャンスなのよ。
そんなことしたら 死にに行くようなもんですよ!
大丈夫だって!
何かあったってさ あんたのせいに なんかしないからさ。
(光) 痛っ!
もう! 昔から ばか力なんだから。
離しなさい 早紀。
これは 私の人生だ! あんたには関係ないんだよ!!
人間ね 生まれ方は選べないけどね 死に方は選べるんだよ!
どいて。
うっ うぅ…。
先生… 先生! (医師) 大丈夫ですよ。
大丈夫ですよ ベッド 寝かせますからね。
よろしいですか 足置きますよ。
早紀。
大変だったんだって? どう? おかあさん。
鎮静剤を打ったので 当分は眠っているそうです。
そう。
先生にも 散々怒られました。
「二度と こんなことがないように ちゃんと見張ってろ」って。
「母親が死んでもいいのか」って。
《何やってるの? 早紀が大変よ 早く来て》
よっ あれから何かあった?
うぅん…?
そっか… 大変だったんだ。
[TEL](メールの受信音)
何やってんの? えっ 別に。
あなたこそ 何でまた来たの? 仕事は?
いや 署長って暇でさ。
こっちのほうが 事件が起こりそうな予感がして。
バッチリ当たったでしょ?
もしかして 悩んでるのかな? その顔は。
まさか 行かせたほうがいいとか→
思ってるんじゃないでしょうね? 早紀。
体のことを考えたら→
もちろん行かせるべきじゃ ないと思うんですけど→
母が生徒に会いたい気持は 痛いほど分かるし。
う~ん… じゃあ 生徒達 病院に呼んだら?
そうよ ここで最後の授業 やればいいじゃない。
教壇じゃないと 意味がないんです 多分。
そうよ そういう問題じゃないのよ 病院にも迷惑かかるしね。
じゃあ あんた どうしたいわけ?
いろいろ悩んでるみたいだけど→
娘として どうしてあげたいの? おかあさんに。
そうよ そこをハッキリさせないと。
後で後悔することになるわよ 早紀。
すみません 1ついいですか? えっ 何?
「後悔」という言葉は それ自体が→
「後で悔やむ」という 意味を持つので→
「後で後悔する」という言い方は 間違っています。
何いってんのよ こんな時に。
すみません 正確に いっておきたいので。
(ドアが閉まる音)
みんな 卒業しても…。
学校で学んだことを…。
いろいろ辛いことがあっても…。
学校で…。
早紀 学校行きたいんだよ。
このまま何もしないで 後悔するぐらいなら→
死んだほうがマシだ。
早紀 お願いだよ。
私がさ 今まで何か あんたに頼んだことあるかい?
早紀…。
早紀。
もう 分かったから。
ちょっと待ってて。
(ドアが開く音)
♪♪~
ほ~ら やっぱり。
こんなこっちゃないかと 思ったわよ。
母が… 初めて私に頼んだんです。
「行かせてくれ」って。
寝ている間も うわ言のように ずっとブツブツいってて。
夢の中でも→
教壇に立とうとしてるんです。
急いだほうが。 はい。
(ノック) はい。
(医師) ≪具合いかがですか? ハギワラさん≫
オギワラです。 (医師) ≪すいません≫
≪いいですか? 入って≫
ちょっ ちょっと… ちょっと待ってください!
どうしよう? どうしよう?
どうしよう?
あぁ~…。
何か… 痛たたた…。 どうしたんですか?
あの 何か お腹が…。
(医師) どの辺が痛みますか? 痛いんですけど…→
いや どこかな? どこかな…?
じゃ 立てますか? いや 立てません…。
いいですよ このまま診ますから ここ 横になってみましょう…。
いいですか? ちょっと お腹 触りますよ。
(看護師) 何やってるんですか あなた達!
もしかしたら 今が人生で 最も素晴らしい瞬間かもしれない。
君は僕のことを救いに来た 天使だったりして。
(看護師) 何!?
うっ… うっ…!
こっち。
こんなこともあろうかと レンタカー 用意してたんだ。
はい。
急げ! よいしょ。
≪待ちなさい! 待つんだ!≫
早く!
≪行くぞ! 押して! せ~のっ!≫
≪待ちなさい!≫
懐かしいね。
へぇ~ こんなとこで 勉強してたんだ あんた達。
ここでいいよ 早紀。
ありがとう。
こんな かあさん 許してね。
やっぱり病院に戻ろう。
何いってんのよ 早紀 ここまで来て。
そうだよ 俺達の 今までの努力は何だったわけ?
私 やっぱり母さんと…→
1分でも 1秒でも長く 一緒にいたいの。
ごめんね 早紀。
一度くらい こっちの言うこと 聞けよ クソババア!
あたしはね 今まで 散々 我慢して来たの!
それを 許してとか ごめんねで 済ませんじゃねえよ!
また シャッター開いた。
悪気ないんですよ この後 すぐに落ち込みますから。
ほら 落ち込んだ。
小さい頃から 母さんは ずっと→
私なんかより 学校のほうが大事だった。
生徒が問題を起こすと どんなに遅くても→
私を残して飛び出して行った。
私ね ずっと母さんを恨んでた。
ずっと生徒達に嫉妬してた。
何で娘をほっとくんだ→
何で私が一番じゃないんだって。
でも…。
母さんが教師という仕事に 命を懸けてて→
生徒も 母さんを 心から必要としてるって→
分かってたから…。
我慢してた。
でも もう限界です。
それでも行くっていうなら→
そんな母親は…→
私には必要ありません。
生徒に送りたい言葉があるなら→
私が伝えて来る。
私は あなたの娘です。
荻原早紀といいます。
今日は ここに来られなかった 母の代わりに→
思いを伝えに来ました。
母は 入院している間 ずっと→
あなた達に何を伝えるかを 考えていました。
きっと… それは…。
憲法 第26条では すべての国民は→
その能力に応じて ひとしく教育を受ける権利を…。
すいません 今のは忘れてください。
早紀 大丈夫かな?
今頃 頭 真っ白になってたりして。
すいません ちょっと失礼します。
♪♪~
これは 母が倒れた時→
私に伝えようとした言葉です。
辞世の句だといっていましたが→
何がいいたいのか さっぱり分かりませんでした。
でも もしかしたら これは…。
「私が死んでも いい友がいれば 大丈夫」っていう→
意味なのかもしれません。
(早紀の声) どんな時も変わらず→
必要な時は いつでも そばにいてくれる→
そんな友達がいれば→
人生は 何とかなるのかもしれません。
恥ずかしいけど→
私には まだ そんな友達がいません。
そういえば 昔→
母は こんなことも いっていました。
(早紀の声) 「その人がどんな人間かは→
友達を見れば分かる」と。
♪♪~
(ドアが開く音)
(医師) もう あまり時間がないと 覚悟していただけますか。
はい。
(医師) おかあ様がお話があるそうです。
娘さんじゃなく→
お2人に。
え? え?
何してるんですか 先生。
そんなことしないで 休んでください。
私が死んだら→
娘をよろしくお願いします。
何いってるんですか 先生。
そうですよ 俺達にいわれても。
(光の声) もうすぐ あの子は→
独りぼっちになってしまいます。
私の… 育て方が悪かったせいで→
他人と付き合うのが苦手な→
不器用で 分かりにくい人間に なってしまいました。
どうか… これからも→
あの子のこと…→
助けて… あげてください。
(読経)
先生。 ありがとうございました。
(読経)
こちらで ゆっくりして行ってください。
あ すいません。
ビールでいいですか? ええ。
誰? あのしょ。
早紀ちゃんの婚約者らと。
えぇ!? いい男らろ。
いつも早紀がお世話になってます。
≪どうも すいません≫
早紀。
俺にできることがあったら 何でもいってくれよ。
ありがとう。
おかあさんのこと 辛いかもしれないけど→
早く乗り越えてほしい。
母親が亡くなったのに→
そんなに簡単に 乗り越えられるもんかな。
俺は別に そういう意味で いったんじゃなくて。
大体 今頃 何しに来たんだ あんた。
俺は 早紀のことが心配で。
だったら 何で もっと早く来ないわけ?
口では きれい事いってるけど→
結局 自分のためにやってるとしか 思えないんだけど。
何なんですか あんた。
ちょっと やめなさいよ 2人とも。
今日ここに来た人は みんな→
心から おかあさんのこと悼んでる。
俺も さすがに お通夜で女は口説かない。
普段うるさい この人も 珍しく ひと言も喋ってない。
でも あんた どうなんだ?
亡くなった人のこと 本当に悲しんでんのか?
(アトムの鳴き声)
これから どうするの?
まさか新潟に残るとか?
いろんなことが落ち着いたら 東京に戻ります。
そうか。
最後まで母らしいんです。
余計なものが残らないように→
身の回りのことは 全部 決めていて…。
本は図書館に贈るとか→
洋服や生活用品は 施設に寄付するとか。
みんな卒業生達に頼んであって。
それは? 母の10年日記です。
死んだら 燃やしてくれっていわれて。
でも 読みたくないの?
絶対に読まないって約束したんで。
何?
あ~ もしかして これ 若い時のご両親?
でも 何で こんなピンボケな写真が?
私が撮ったんです。
私の誕生日に 父がカメラを買って→
私が撮らせてくれって ねだって。
「早紀 9歳誕生日」。
きっと おかあさん→
ずっと しおり代わりに この日記帳に挟んでたんだね。
な~んだ 結局 早紀が 一番だったんじゃない。
♪♪~
いろいろ ありがとうございました。
どうしたの? いや…。
これから 一体どうするのかなと思って。
何か あいつ見てると 胸が痛むっていうか。
ヒッヒッヒッ…。
何? その不気味な笑いは。
その胸の痛みは 実は ときめきだったりして。
はっ!?
光ちゃん 早紀のこと 好きに なっちゃったんじゃないの?
やめてくれよ 何で 俺が。
やだ 意外な展開。
何か面白くなって来た。
だから やめろってば!
ただ今 帰りました~。
あら もう帰って来たの 璃子さん。
もっと ゆっくりして来ればいいのに。
ありがとうございます。
でも 母親が子供達を放って→
いつまでも家を空けるわけには いかないので。
望 夢→
大きいママとお風呂入ろうか。
そろそろ 望は おねむだしね。
は~い。
夢。
ママと一緒に入らない?
たまには 夢と ゆっくり お話ししたいし。
大きいママと入る。
ごめ~ん 何か体調悪くって。
っていうか 心ここにあらず って感じだったけど。
他の女のことでも 考えてたんじゃないの?
まぁね。 そうなの!?
いや だから ほら→
死んだ母親のことをね。
子供の頃 死んで よく覚えてないもんで→
もしかしたら 君みたいな人 だったのかなぁって思って。
そうそう! そう思ったら→
できなくなっちゃったんだよね。
何か怪しい…。
そんなことないって。
じゃあ 頂いて行きます!
大事に読んでください。 はい。
失礼します。 失礼します。
♪♪~
[TEL](音声ガイダンス) お客様が おかけになった電話番号は→
現在 使われておりません。
[TEL] 番号をお確かめになって…。
[スピーカ]♪~ 『I Want You Back』
[スピーカ]♪~ アトム。
[スピーカ]♪~ アトム~ アト…。
[スピーカ]♪~
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