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早く乗れ!
目と鼻の先なんだから→
歩いて行ったっていいのに。 ねえ?
私語はやめろ!
みんなで行進してくっていうのも 一興だよね。
黙れと言っているだろう! はいはい…!
全ての犯行を否認する…。
そういう事だね?
そうだ。 僕は無実だ。 おわかりかな?
しかし お前は 犯行を自白してるじゃないか。
初対面の僕を お前呼ばわりとは…。
やはり ここも ろくなところじゃないな。
記述内容に間違いがない という証拠に→
調書には お前の署名と指印がある。
これは それ相応の重みを持つんだ。
刑事裁判は 相変わらず自白偏重か…。
無理やり言わされたんだよ。 無理やりね。
おわかりかな?
お前の主張は よくわかった。
わかったならば態度で示せ。
こちらで受理されなかったら→
検察に持っていきますけど。
まあ… とりあえず お預かりしておきます。
今朝 検事の間抜け面を 拝んできたよ。
告訴してくれた?
ええ 仰せのとおりに。
無駄な事させるなって顔してるね。
何度も言いますけど 受理なんかされませんよ。
脅迫についても 法廷で その旨 主張して→
立証していくのが順当な方法です。
金を払って君を雇ってるんだ。 僕の好きにさせてくれ。
ですから そうしています。
ねえ 起訴後 保釈は無理かな?
無理です。 金なら いくらでも積むよ。
いくら積もうと無理です。
依頼人の願いを叶えるのが 君の務めだよ。
無論 最大限の努力はしますが…。
君は美人だが 僕のタイプじゃない。
はあ?
でも 君は 僕の妻たちに よく似ている。
どこがって…。
金が大好物な点だよ。 そうだろう?
つかんだ金づるは離さない。
金のためなら 危ない橋だって…。
告訴だと?
はあ… 担当弁護士から 告訴状が提出されました。
脅迫で 特命係の2人が訴えられた?
俺たち 脅迫なんかしてませんよ。
ねえ?
告訴したのは あの平井か。
ええ 平井陽です。
もし脅迫したとするならば あの2人でしょう。
なんか言ったか? いいえ。
とにかく 4人 告訴されたわけか。
みたいですね。
捜一のお二方に 特命係のお二方。
なんで俺たちまで…。
大きな顔して 捜査にしゃしゃり出るからですよ。
ん? そもそも 警視庁では→
お二方に 捜査権は 認めていないんですからね。
調子に乗ってると 足すくわれますよ。
ご忠告 どうも。
チェックメイト。
平井が犯行を自供したと聞いた時 正直 驚きましたが→
取り調べ中に脅迫 あるいは→
強要の類いが あったのでしょうかねぇ?
かもしれませんね。
あの2人なら やりかねない。
なんか言ったろ?
いいお医者さん 紹介しましょうか?
いずれにしても いささか危うい気はしていました。
危ういって? 平井陽の逮捕 送検ですよ。
僕としては まだ 証拠固めの 途中のつもりでしたからねぇ。
つまり 手柄を焦って 自白を強要したってとこか。
まあ ありがちだがな。 でも 安心しろ。
そんな告訴 受理されるわけがない。
仮に受理されたところで 俺たちは無実です。
脅迫については 無実かもしれませんけどね→
捜査権もないのに捜査してるのは 罪深い事ですよ。
うるさいな お前は さっきから さっきから…!
ねえ?
もしもし。
「あっ はじめまして。 私 警視庁の青木と申します」
「平井陽の事件?」
はい。 歴代の妻を殺害したという。
無論 知っているが…。
その被疑者の平井陽が→
警視庁に告訴状を提出した事は ご存じありませんよね?
告訴状を?
捜査員に脅迫を受けたという 告訴状です。
「警視庁は その告訴状を→
無視しようと しているんですけどね」
そういう態度でいいのかと。
事態を もっと真摯に 受け止めるべきではないかと…。
青木さんと言ったかな?
「はい」
あなたは どうやって この携帯番号を?
それは まあ… 蛇の道は蛇と申しますか…。
それじゃあ 答えになっていないな。
それは つまり 答えづらいからでして…。
フフフ… 電話じゃなんだ 会って話そうか。
正気ですか?
おかしく見えるか?
見えないから聞いてるんですよ。
そもそも そんな告訴状を→
うちで受理するなんて どうかしてる上に→
その目的が 脅迫罪の立件ではなく→
特命係の違法捜査の立件だなんて 全く尋常じゃありませんからね。
尋常じゃないから お前に頼んでる。
誰にでも出来る案件ならば→
わざわざ お前を指名したりしないよ。
しかし どうですかね→
実際のところ 捜査の違法性を 立証出来るかどうか…。
無論 簡単にはいかないだろう。
警視庁の 内部的な事務分掌に基づけば→
確かに 特命係の2人の捜査は 違法という事になるでしょうが→
対外的な捜査権という観点から 捉えると→
事は そう単純ではありません。
例えば 警視庁では→
総務部や警務部には 事務分掌上 捜査権は認められていませんが→
仮に所属部員が 上司の命令で捜査を行えば→
それは司法警察員としての行為と みなされて→
違法捜査にはならない。
つまり 特命係の2人の捜査の 合法 違法も→
ケース・バイ・ケースというわけで 一筋縄ではいかないんです。
その講釈は まだ続きそうか?
ああ… 失礼しました。
例えば 警視庁の幹部連中が こぞって→
特命係の2人の違法捜査を 証言してくれれば→
立件は可能ですが…。
まあ 無理だろうな。
杉下右京は 目の上のたんこぶ。
排除したいと考えている事は 間違いないが→
だからといって 彼らが→
我々の捜査に 素直に協力するわけがない。
立件されれば 杉下右京の 違法捜査を放置していたとして→
責任問題にも 発展しかねませんからね。
それに 少数派だが→
杉下右京を買っている人間も 警察にいる。
場合によっては 彼は 我々を妨害するだろう。
誰です? それは。
甲斐峯秋。
警察庁の元次長ですね。
数年前 息子の事件で 失脚したと聞いていますが…。
今は官房付で 表面上は くすぶっているが→
侮れない人物だ。
彼ならば 杉下右京を救うためならば→
嘘の証言ぐらい いとわないだろう。
嘘の証言?
例えば 自分が 杉下右京に捜査を命じていたとか。
なるほど。 それは厄介ですね。
命令があったとなれば 違法性は立証出来ない。
かといって その証言が虚偽だと 立証するのも容易じゃない…。
いずれにせよ 様々 困難が伴うだろうが→
なんとか立件してほしい。
わかりました。
頼むぞ。
なぜ 事務次官が 杉下右京を標的にするのか→
あえて 詳しくはお尋ねしません。
しかし 杉下右京を狙うとなれば→
一緒にいる冠城亘も 道連れになりますが→
それでよろしいんですか? …と言うと?
事務次官は…→
冠城を かわいがっていたじゃ ありませんか。
まあ 奴に恨みはないが→
道連れになる事は 致し方あるまい。
好き好んで 杉下右京と 一緒にいるんだからな。
事務次官のそういうところ 私 大いに尊敬します。
ん?
ニッコリ笑って 人を切れるところですよ。
一度 ゆっくりと話したいと 思っていた。
どんな事をでしょう?
君が考える正義について… というところかな。
正義?
例えば 今回の件だ。
はっきり言えば→
随分と余計な事をしてくれたと 思っている。
今回の事件を 不起訴にするなんて→
私には出来なかった…。
だとすれば あなたは 偏見を恐れるべきではなかった。
正々堂々と証人を説得し→
裁判を闘うべきだったのでは ありませんか?
明日にでも 辞表を書きます。
これから先 彼女がやろうとしていた→
大きな正義を失う事のほうが 大きな損失だとは思わないのか?
お言葉ですが→
法を破って正義を全う出来るとは 思えません。
よろしいでしょうか?
私は 君を許さないよ。
失礼します。
検察が?
検察でも 受理出来ますからね。
弁護士が 検察へ持ち込まないとも限らない。
検察も そんな暇じゃねえよ。
まあ そうでしょうけどね。
でも 告訴されるなんて 不徳の致すところと→
多少なりとも 反省の態度ぐらい見せても→
バチ当たりませんよ。
お前 何が言いたいの?
日々是反省。
まあ やってもいない事 反省のしようもないけどね。
仮に 告訴状が受理されたところで 俺たちは痛くも痒くもない。
右京さんの指摘どおり→
脅迫があったとしたなら 取調室だろうから→
記録を確認すりゃあ 一発。
俺たちが そんな事に 関与していない事は明白だ。
お前も知ってるだろ? 警視庁の取調室には→
録音録画機材が 取り付けられてる。
知ってますよ!
再来年の全面可視化に向けての 措置でしょ?
去年の10月からは 原則 裁判員裁判対象事件全てが→
録音録画の対象に なっているはずです。
そういう事。
しかし 平井が 脅迫で告訴状を提出したとなると→
当然 供述を 翻すつもりでしょうねぇ。
つまり 犯行を全面的に否認する。
でしょうね。
自白は脅迫によるもの って事でしょうから。
太え野郎だな。
奥さん3人も殺しといて。 ねえ?
それは 乱暴に過ぎる物言いですねぇ。
あくまでも まだ被疑者です。
でも 杉下さんは→
平井の犯行は間違いないと 確信してるんでしょ?
僕の心証など 裁判では役に立ちませんよ。
あっ ちょっとすいません。
もしもし。
冠城くん? 東京地検の田臥です。
「一度 会った事がある。 覚えてますか?」
覚えてます。
確か…→
日下部さんの事務次官就任祝いの パーティーで。
その節は どうも。 「どうも」
なんとなく記憶にあるだけで 顔は おぼろですけども…。
「何か?」
とんだ災難に 見舞われてるみたいだね。
連続殺人の被疑者から 脅迫で訴えられたとか。
東京地検の検事さんに 呼び出されたみたいですよ。
地検の?
例の告訴状の件ですよ。
なんで地検が出てくるんだよ?
さあ。
捜査権がない?
組対のフロアにありますけど→
組織図上は 全く関係なく 完全に独立しています。
つまり 物理的な位置関係にかかわらず→
特命係は 離れ小島の扱いなんです。
なるほど。
あっ これは余談でした。
すみません 貴重なお時間 割いて頂いてるのに…。
いや なかなか興味深い話だよ。
強制捜査なんて 野暮な真似するつもりはないんだ。
だから 協力よろしく。
よろしく願います。
協力するのは やぶさかではありませんがね…。
どういういきさつで→
地検が しゃしゃり出てきたんです?
犯罪捜査は 警察の専売特許じゃあるまい。
まあ そんな一般論を 言ってるわけじゃ…。
まず 手始めに 平井事件に着手したあたりから→
話を聞かせて頂けますか?
それでは お聞かせしましょう。
暦の上では すでに秋…→
とはいえ 実際は まだ夏真っ盛りといった→
厳しい暑さの 8月15日の事でした。
「この家に住む 平井陽さんの妻 めぐみさんが→
バルコニーの庭に下りる 外階段から転落し 全身を強打」
「搬送先の病院で 死亡が確認されました」
「警察は 当時 めぐみさんが 浴衣を着用しており→
階段を下りる際 誤って→
裾を踏みつけた事によって 起こった→
転落事故とみています」
『週刊フォトス』の4月21日号 まだ持ってますか?
えっ? 4月21日号です。
4月号って… とっくに処分しましたよ。
ああ 最新号ならありますけど。
冠城くんは→
『週刊フォトス』を 定期購読してるの?
定期購読ってわけじゃないけど ちょくちょく買ってる。
そこの記者が ちょっと知り合いなもんで。
今の号に 平井の歴代妻の特集が載ってるね。
ああ これな。
ああ 申し訳ない 話の腰を折ってしまって。
『週刊フォトス』の4月21日号に 何が?
どうぞ。
どうもありがとう。
調子どう? 何がですか?
いや… 潤いのある生活 送ってる?
おかげさまで。 それはよかった。
お葬式の形も→
いろいろな事情によって 違ってくる。
超質素なものから ど派手なものまで…。
そんな事を特集してみた 記事ですけど。
さっきのニュースは この方じゃありませんかねぇ。
平井陽…。
「大切にしていた妻のためならば お金は惜しまない」
その方は 亡くなった奥様のために 盛大な葬儀を出されたんですよ。
さっきのニュースって?
見てないの?
奥さんが バルコニーの階段から落ちて死んだの。
えっ?
再婚してたって事ですかね?
ええ。 しかし 立て続けに奥様が事故死とは→
お気の毒としか 言いようがありませんねぇ。
前に見た 雑誌の記事を覚えていて→
ニュースを見た時 おや? と思ったわけですか…。
なんとなく気になった という程度ですがね→
一度 気になり始めると→
確かめずにはおられない 性分なものですから。
事件への着手なんて 大げさなものじゃなく→
聞いたとおり 出発点は あくまでも個人的興味ってわけ。
個人的興味ねぇ…。
それが杉下右京の専売特許。 持ち味でもある。
続けましょうか?
お待たせしました。
少し待っててもらえるかな?
日課なんで 済ませないと気持ちが悪くて。
よかったら 一緒にどう?
いや 結構。 遠慮しときます。
けど 奥さん亡くしたばかりだと 思えませんね。
まあ 人それぞれですからねぇ。
警視庁本部の方だそうだ。 名前は聞いたが忘れた。
もう一度 名乗ってくれ。
彼女は顧問弁護士 与謝野慶子だ。
警視庁の杉下です。
冠城です。
与謝野です。 奥様の事で?
ええ まあ。
本部の方が…。 失礼ですが 所属部署は?
特命係といいます。
特命… 最前線?
あの それはドラマ…。
正確には『特捜最前線』…。
とにかく 初めて聞く部署です。
重ね重ね失礼ですが 警察手帳を拝見出来ますか?
どうも。
奥様の事というと 具体的には どういうご用件でしょうか?
お悔やみを 言いに来てくださったそうだ。
お悔やみ?
死んだめぐみのお悔やみだよ。 …でしたね?
ええ。
縁もゆかりもない方が めぐみさんのお悔やみですか?
警察には 今回の事故で お世話になったんだから→
多少のご縁はあるという事で いいじゃないか。
まさしく「多生の縁」ってやつだよ。 わかる? このシャレ。
社長は人が良すぎます!
だって わざわざ お悔やみに来てくださったのに→
追い返すなんて そんな真似 僕には出来ないからね。
シャワー浴びてくるから→
お二人を 先に めぐみのところに案内してあげて。
ああ… このプールで お亡くなりになったそうですねぇ。
えっ?
いや 裏庭の階段から落ちたんだ。
いえ 前の奥様です。
昨年の9月に お亡くなりになった。
ああ… 加世子の事か。
そう。
このプールで溺れ死んだ。
お悔やみ申し上げます。
どうもありがとう。
顧問弁護士って 平井氏の会社のって事ですか?
ええ。 もう長いんですか?
かれこれ4年ですね。
こんなふうに秘書みたいな役目も 仕事のうち?
頼まれてるうちに いろいろ するようになりましたけど→
本来の業務ではありません。
あれは焼却炉ですか? ええ。
ご自宅でゴミの焼却を?
しっかり届け出は出していますし 条例に基づく形でやっています。
特に その辺りを 疑ってはいませんがね。
そうですか。
警察は なんでもかんでも疑う 仕事だと思ってました。
でも いちいち自分で燃やすより→
ゴミ出しの日に出したほうが 楽でしょう?
好きなんですよ 社長 燃やすのが。 いいじゃありませんか。
構いませんけど。
燃やすのが好きね…。
本当の目的を 教えてもらえませんか?
まさか お悔やみなんて口実が 通用すると思ってませんよね?
ご遺体を前にして申し上げるのは 少々はばかられるのですが→
確かに お悔やみというのは口実です。
ならば 本当の目的は?
平井氏に お目にかかる事です。
えっ?
お目にかかって お話がしてみたかった。
これが 嘘偽りのない目的ですよ。
なぜ?
それについては→
「興味が湧いたから」としか 答えようがないのですがね。
警察官が どんな興味をお持ちになったのか→
気になりますね。
そもそも 我々が警察官を名乗ったのは→
怪しい者じゃない事を わかってもらうためで→
それ以上の意味はないんです。 ええ。
とはいえ 「会ってみたかった」じゃ 気持ち悪がられるだけだろうし→
だから 苦肉の策で お悔やみなんて口実を…。
でしょ? そのとおり。
あっ お待たせしてしまって申し訳ない。
これが僕の妻 めぐみだ。
…で 報告は?
君は そのために来たんだろう?
そうですが…。
なんなら 我々は席を外しましょうか?
悪いね。 そうしてもらえますか。 すぐ済む。
どうにも つかみどころのない人物ですね。
ええ。 まあ 右京さんの事だから→
ますます 興味が湧いたでしょうけど。
≫何度も言わせるな!
≫返すのは葬儀が終わってからだ。
≫そこだけは 絶対に譲れないからな。
この時点では→
めぐみさんの葬儀が終わってから 誰に何を返すのか→
気になりましたが やがて それは判明しました。
葬儀のあと 誰に何を返す って事だったんですか?
めぐみさんのご両親に めぐみさんをです。
えっ?
ご両親は めぐみさんが 平井と結婚する事に猛反対だった。
反対を押し切って結婚したのちも→
決して結婚を認めようとは しなかった。
そんな中 めぐみさんが亡くなったので→
すぐさま遺体を実家に戻せと 平井に要求した。
けれども それを平井は突っぱねた。
返すのは葬儀が済んでからだと。
これらを 焼却するって事ですかね?
恐らく そうでしょうねぇ。
燃やすのがお好き という事ですから。
これなんか まだ十分 使えそうな…。
新品ですよ。
新品だろうが関係ない。
不要な物は燃やすんだ。
お話は もう お済みですか?
済ませて廊下に出てみたら→
あなた方の姿がないんで 焦ったよ。
帰ってしまわれたのかと。
あいさつなく帰るのと 許可なく邸内をうろつくのとでは→
どちらが無礼ですかねぇ?
どっちもどっちですね。 これは失礼しました。
いえいえ…。
そもそも席を外させたのは こっちだからね。
ところで めぐみさんの葬儀の日程などは→
もう お決まりなんですか?
それは もう 準備万端だよ。
3度目ともなると 段取りも熟知してしまった。
3度目? そうだが。
あれ? 2度目じゃ…。
いや 3度目。
妻が死んだのは めぐみで3人目だ。
つまり 加世子さんの前にも 奥様がいらっしゃった。
うん。
最初の妻だ。 名前は亞矢という。
知らなかったの?
その瞬間 興味が疑惑へと変わった。
そんな感じでしょうかね? さあ…。
そもそも 僕の興味の根本には 常に疑惑があるので→
興味が疑惑へ変わった というよりも→
疑惑の比重が増した という表現のほうが→
当たっているかもしれません。
調べてみると→
最初の奥さんが亡くなったのは 平成19年だった。
2番目 3番目同様 事故死。
10年前か…。
そう。 2番目 3番目とは かなり間が空いてるし→
今の大豪邸に引っ越す前の→
マンション暮らしの時代 だったから→
妻が3人亡くなっている という事実が→
ダイレクトに 認識されづらかったようだ。
ご近所付き合いも変わるし→
何より 管轄の警察署も変わるからな。
2番目の奥様の加世子さんが 亡くなった時→
最初の奥様 亞矢さんも 事故死を遂げているという事実を→
所轄署が認識していれば あるいは その時点で→
対応が違っていたかも しれませんが→
所轄署が動き出したのは→
3番目の奥様 めぐみさんの 死亡事故が起きたあとです。
なるほど。 2番目 3番目の死亡事故が→
割と短期間に しかも同一管内で 起こっているわけですからね。
さすがに不審に思ったか…。
いや 所轄署が自主的に 捜査に乗り出したわけじゃない。
えっ?
捜査を開始したのは→
我が警視庁本部の誇る 捜査一課の精鋭2名だ。
伊丹刑事と芹沢刑事か。
特命係の凸凹バコ~。
どうも。 これは どうも。
お二人おそろいで いつも仲良しですねぇ。
お前らほどじゃねえよ。
っていうか 何コソコソ動いてんのかなあ?
ん? フフフ… とぼけても無駄だよ。
もう ネタ挙がってんだから。
別に とぼけちゃいませんけど。
平井陽 あれこれ嗅ぎ回ってんだろ?
どこから そんな情報を?
あっ… まさか 日々 俺たちをつけてるとか。
さすがにね 俺たち そこまで暇人じゃない。
風の噂だよ。
風の噂?
ちょっと待て! えっ? ちょっと…!
なんで お前 逃げるんだ?
逃げる? 僕が?
ハハッ 逃げてなんかいませんよ。 忘れ物です。
ではまた のちほど。
さては…→
お前だな? 風の噂は。
相変わらず ペラペラ ペラペラ この おしゃべりめ!
まあ別に 話されて困るような事 ないけどね。
だったら いいじゃありませんか。
さあ 始めましょうか。
君 忘れ物はいいんですか?
でも あの段階で 2人が 捜査に乗り出してくれたのは→
好都合だった。 ん?
2人に くっついていきゃあ→
ベーシックな情報が 入手出来るからな。
警視庁捜査一課の伊丹です。 芹沢です。
杉下です。 冠城です。 よろしく。
いつの間に…。 よろしくじゃねえだろ。
まあまあ まあまあ 堅い事 言わずに。
4人セットでお願いします。
おかげで 平井の3人の妻の死亡時の状況を→
知る事が出来ました。
もっとも1件目は→
すでに10年という歳月が 経っていますからねぇ→
当時の記録すら残っていません。
ですから1件目については→
捜査に当たった刑事と鑑識の 記憶の断片を→
繋ぎ合わせるよりほか ありませんでしたが。
1人目の妻 亞矢さんは バスルームで感電死。
2人目の妻 加世子さんは プールで溺死。
3人目の妻 めぐみさんは 階段から転落死。
ことごとく 事故死として 処理されていたというわけです。
死んだ妻たちに→
それぞれ巨額の保険金が かけられていた事は→
いつ つかんだんですか?
伊丹さんたちが乗り出してきて まもなくでしたね。
ええ。 その情報を 掘り起こしてきたのは→
伊丹 芹沢 捜一両エース。
それで がぜん 捜査が本格化していった。
なるほど。 ただし その情報は→
捜査を本格化させるのには 役立ちましたが→
事件解明という点では ほとんど役に立ちませんでした。
そもそもが 保険金搾取目的の事件 という見立てには→
無理がありましたからねぇ。
だって平井は 金に困っちゃいないんだから。
文字どおり 腐るほど金を持ってる。
平井の会社の財務状況は すこぶるいいらしいな。
平井の個人資産も数十億だとか。
全て父親から 譲り受けたものとはいえ→
好調を維持し続けてきたのは→
二代目として立派だと 素直に思います。
ああ。 あっ そうだ。
伊丹 芹沢 両エースが→
話に登場したついでに 言っとくけど→
平井の主張してる脅迫について→
両エースの仕業。 俺たちは無関係。
それは神に誓います。
軽々しく神に誓う奴ほど 信用出来ない奴はいない。
嘘だと思ったら→
平井の取り調べの録音録画 確認してください。
わかったよ。 まあ そうムキになるな。
順番にやるさ。
こちらで預かったじゃないか!
でも 受理して頂けそうに なかったものですから。
だからといって 同時に出すのはルール違反だろ!
こちらとしては 預かるとおっしゃった時点で→
警察は無理と判断しました。
だから 改めて検察に提出したんです。
なんなら 合同で捜査してくださいよ。
警察でも捜査して頂けると おっしゃるなら。
告訴状ですか?
出してくれ。 動くための根拠が必要なんだ。
検察で受理するつもりですか? まさか…。
詳細を話すつもりはない。
君が知って 得する事でもない。
ただ… 約束する。 迷惑はかけない。
これで田臥さんとは お近づきになれたって→
考えていいんですか?
恩に着るよ。
なんかの冗談?
それともドッキリとか?
その どちらでもない。
無論 強制捜査なんて 野暮な真似をしたくないんで→
ぜひ ご協力を。
ハッ… 強制捜査すりゃあいいだろ→
出来るもんなら。
今の翻訳すると 「おととい来やがれ」って事ね。
特命係の2人は→
脅迫は あなた方の仕業だって 言ってるんだけど→
何か反論はある?
言うのは勝手だけど→
証拠を持ってこい って言ってくれる?
取調室での記録が 証拠になるってさ。
ああ… 録音録画の事?
あったっけ? 平井の。
いいえ。 記録してませんから。
記録してない? してませんよ。
被疑者自身が 記録を拒みましたから。
ご存じかどうか知りませんけれど→
被疑者が拒んだら 記録しなくていい事になってます。
全面録音録画における 例外措置として。
平井が自ら拒んだ… か。
おあいにくさまでした。 どうも。
ああ ちょっと…。 もうひとつ確認したい。
特命係の2人は 捜査の邪魔じゃなかった?
はあ?
だって 捜一が 本格的に 捜査に乗り出してるわけでしょ?
部外者に ちょこまかされたら 目障りじゃない?
捜査の邪魔するなとか 注意しなかったの?
まあ 毎度の事ですからね。
注意したところで無駄?
言って聞くような2人じゃ ないですもん!
もういい。 行くぞ。 はい。
黙認か…。
特命係の2人の捜査行為を→
仕方ないと判断して 何も言わずにいたとなれば→
それは一種の黙認とも取れます。
つまり 上司からの命令というような→
具体的かつ積極的な許可が なくとも→
2人の行為の合法要件を 満たす事になりかねない。
立件は ますます難しそうだな。
ええ このままだと…。
なるほど。 平井が 記録する事を拒否していましたか。
これが録音録画拒否の届出書。
ちゃ~んと 平井の署名 指印があるでしょ?
まるで 俺たちが 平井を脅迫した証拠があった→
みたいな事を 言っていたらしいんで→
あまり いい加減な事を 吹聴しないほうが→
身のためだよと 老婆心ながらね。
ご親切に どうも。
仲間割れは よそうよ。
仲間?
脅迫で告訴されたのは 4人なんだから→
その点では 俺たち仲間じゃ~ん。
仲間と思って頂けて光栄です。
せっかくだから お目にかかりましょうか。
お目にかかるって? 平井陽にですよ。
せっかくだからって…?
せっかく まだ警視庁内にいるんですから→
その気になれば すぐじゃないですか。
彼は まだ 3階で勾留中でしたよね。
まあ 起訴されるまでは いるんじゃありません?
なんだかんだ こちょ… 拘置所いっぱいですからね。
しかし 会って どうするんです?
聞きたい事があります。 例えば?
録音録画拒否のいきさつなど 聞きたいじゃありませんか。
どうせ あの両エースが→
拒絶するよう誘導したに 決まってますけど。
うわっ! えっ…? また声がしました?
いや… なんでもねえ。
明日 お医者さん 予約しましょう。
いやあ わざわざ来てくれるなんて 嬉しいね。
ちょうど 話し相手が欲しかったところだよ。
告訴するなんて ひどいんじゃありません?
あっ 聞いた?
ハハッ… してみたんだよ。
でも どうせ受理されないんだろ?
つまり 無駄とわかって 告訴したって事ですか?
脅迫されたのは事実だからね。
悔しいからね。 黙っていたくはなかった。
僕の意思表示のひとつだよ。
だからって したのは伊丹刑事と芹沢刑事。
俺たちは 脅迫なんかしてないでしょう?
ここの様子は 録音録画はされてるのかな?
してません そんなの。
ならば答えよう。
実際に脅迫したか してないかは 問題じゃない。
連帯責任と考えてくれ。
連帯?
連帯責任の是非については いったん置くとして→
あなたが脅迫を受けたというのは→
取調室での 取り調べにおいてですね?
そうだ。 しかし あなたは→
現在 進めている 取調室の可視化を→
全面的に拒否した。
すなわち あなたが脅迫をされたという→
決定的な証拠がないんですよ。
だよなあ…。
いや… あの2人には してやられたよ。
あの狡猾さは… 十分 悪党だ。
全て録音録画したところで→
それを全部 確認出来るわけないだろ?
例えば 裁判員が→
録画映像を初めから終いまで 見ると思うか?
つまりだ 取り調べの様子が 証拠として採用されるにしても→
必ず編集されるんだよ。
わかるか? 編集。
馬鹿にするな。 切ったり貼ったりだろう。
そう。 都合良くな。
都合良く。 都合良くだぞ。
言い換えれば こっちの有利にって事だ。
編集で 白いものを黒くするのは簡単だ。
あえて言う。
編集された映像に真実はない。
なまじ録音や録画なんか残すと 後悔するよ。
さあ…。
転ばぬ先の杖と思って…。
こっちは手の内を明かして 警告してやってるんだぞ。
まあ 嫌なら 無理にとは言わないが。
編集なんか出来っこないのに→
そんな 見え透いた詭弁に 引っかかるなんて…。
間抜けだなあ…。
ええ。
なんとでも言ってくれ。
突然 囚われの身となって 混乱していたんだ。
通常の思考力の3分の1も なかっただろう。
僕を こんな窮地に追い込んだ あんたたちを大いに恨むよ。
恨まれるのは不本意ですねぇ。
そもそも こうなったのは 自らまいた種じゃありませんか。
実は聞きたかったんだ。 はい?
任意同行に応じたが最後 こちらの混乱に付け込む形で→
おまけに脅迫までされ→
あれよあれよと逮捕 送検されて。
その間 あんたたちに会う機会が なかったもんだからね。
…で なんでしょう?
僕にとって 妻が不要品と化していた事に→
どんなふうに思い至ったんだい?
いくつかのヒントを 繋ぎ合わせた結果→
そこに思い至ったわけですが…。
ひとつは お宅の あの焼却炉ですねぇ。
お庭の景観にそぐわない あの焼却炉が→
非常にシンボリックに感じました。
不要な物は燃やすんだ。
燃やすのが好きだと聞いて→
まるで火遊びが好きな子供だなと 思ったんですけど。
そう それ。 彼の その感想も 大きなヒントになりました。
火遊びが好きな子供… すなわち 物を燃やすのが→
子供の頃からの 習慣なのではないかと。
なるほど。 そういう思考の変遷ね。
ぜひとも確認したくなり→
あなたの幼少時代をご存じの方を 探したのですが→
ご両親は すでに他界 ご兄弟も いらっしゃらない。
それでも 小学校の同級生数名には→
お目にかかる事が出来ましたが…。
その点については いかがでしょう?
あなたの火遊びについては→
皆さん ご存じないようでした。
しかし 収穫はあった。
同級生の皆さんは→
あなたの家に 家政婦さんがいらっしゃった事を→
覚えておられました。
余談だけど 洌が達者でいた事には 感激したよ。
99だって?
ええ。 さすがに体のほうは 少々不自由なようですが→
頭のほうは はっきりなさっていました。
記憶も言葉も鮮明でした。
坊ちゃんなあ→
いらんくなったもんは なんでん燃やす。
なんでんかんでん燃やす。
燃やさんば 気の済まん質じゃった。
どうして そういうふうに なったのでしょうねぇ?
奥さんの影響じゃなかろうかね。
奥さんっていうのは 平井陽さんのお母さんですか?
そう。
奥さんが 庭で物ば燃すのを見とって→
真似たん違うかなあ…。
平井陽さんのお母様が 庭で焼却を…。
いらんもんば バンバン燃しとった。
どうかした?
ぼんやりして。
いや… なんでもないよ。
洌 懐かしいなあ。
僕はね 子供の頃 洌に とてもかわいがられていたんだ。
そうですか。
不審に思ってただろ? はい?
だって 僕の事で 警察が 突然 訪ねていったんだからさ。
洌には 詳しく話したの?
いいえ 具体的な事は何も。
捜査上 必要な 情報収集という事だけで。
でも 彼女 勘がいいからねぇ。
きっと不審に思っただろうし 僕の事を心配したに決まってる。
何か言ってなかった? 僕の事。
特には。 質問した事に お答えくださっただけです。
でも 今は きっと心配してるね。
いろんなとこで 記事になってしまっているし…。
返す返すも残念だよ。
あの時 もっと毅然としていれば→
こんな目に遭わなかったのに ってね。
あの時は 予期せぬ洌の名前が出て→
柄にもなく うろたえてしまったんだ。
不要品の焼却が→
幼少の頃からの習わしであった という洌さんの証言から→
平井さん あなたが めぐみさんのご遺体を→
両親からの強い要請が あるにもかかわらず→
葬儀が終わってからでないと 返さないと→
頑なに主張していた理由が わかりました。
葬儀で遺体を燃やす事が→
あなたにとっては 必要だったからですよ。
「不要品の最後は焼却」という 長年のルールを守るために。
『週刊フォトス』で 取り上げられていた→
2番目の奥様 加世子さんの盛大な葬儀も→
あなたにとっては→
遺体焼却の手段に 過ぎなかったわけです。
さて ここで ひとつ厄介事が。
「不要品の焼却」と 簡単に申し上げましたが→
人と物とでは その扱いに 大きな違いが生じます。
物ならば 不要になった時点で 焼却炉に投げ込めば済むけど→
人の場合は そうはいかない。
まず 殺す必要がある。
ええ。 つまり あなたには 奥様を殺す必要があった。
不要品として燃やして 捨てるために。
だから 奥様を殺した。
3人とも それぞれ 事故に見せかけて。
ええ 間違いなく あなたの仕業ですよ。
違いますか?
申し開きは 本部で聞きますよ。
ご同行願えますね?
さあ。
のこのこついていって 失敗した…。
僕からも ひとつ いいですか?
なんだい?
奥さんにかけてた巨額の保険金 あれは なんのために?
ああ…。
3人それぞれ 贅沢で 浪費家だったからね。
随分 金を消費した。 その分の補填だな。
一種の経済活動だよ。
巨額の死亡保険金なんて→
疑われると 思わなかったんですか?
ハハッ… 全然思わないねぇ。
そんな事で疑われるのは 貧乏人だろう?
僕は金持ちだ。 それも かなりの。
事実 3人目まで 誰も疑わなかったじゃないか。
あんただって 保険金が理由で 疑ったわけじゃあるまい。
確かに。
疑わしきは被告の有利に!
今の裁判では この大原則が 順守されているのかな?
さあ 残念ながら そうとは思えないですね。
まもなく 僕も被告人になると思うが→
僕は…→
断固 闘う所存だ。
弁護士も言っていた。
僕のケースは 自白に比重が置かれすぎている。
その他の証拠が乏しいと。
しかも その自白も→
脅迫によって 生まれたものだからね。
このまま 僕を有罪にするようじゃ 日本の裁判はクソだ。
同感ですね。
…何?
だからこそ たとえ 公判で自供を翻されても→
びくともしない証拠が必要です。
そんなものはない。
いや あるはずです。
あんたは どうしても 僕を有罪にしたいんだな。
ええ。 なぜなら あなたの犯行ですから。
裁判の大原則をねじ曲げる事は 許されませんが→
その大原則によって あなたが無罪になるのは→
我慢出来ません。
なんで 本当の事 言わなかったんですか?
はい? 洌さんの言葉です。
坊ちゃんは ろくでもない奴だった。
ありゃあ まともな大人になるとは 思われんかった。
仮に 坊ちゃんが 人ば殺したと聞いても→
うちは驚かん。
心配なんかしちゃいない。
心配どころか 悪し様に罵ってたって→
本当の事 言ってやればよかったのに。
まあ 本筋とは 関係ありませんからねぇ。
あえて 彼の思いを否定してまで お伝えする事もないかと。
へえ~ 右京さんも そういう情もあるんですね。
どういう意味でしょう? ちょっと意外でした。
ご無沙汰です。
まだ庁舎内?
「ええ」
仕事中?
いや その辺り うちの場合 かなりフレキシブルです。
なら 送ってくれるかしら?
どちらまで?
お家よ。
お宅まで直行します? それとも どこかで飯でも行きますか?
ご飯は またの機会に。 そう。
今日 地検の検事が来たわ。
課長のところを? 田臥准慈?
あなたの事を あれこれ聞かれた。
あれこれって… 例えば?
広報課にいた頃の仕事ぶりとか。
「非の打ち所がなかった」って 言ってくれました? ハハッ。
もちろん。
広報課の頃に→
犯罪捜査をしていた事はないか って質問もあったわ。
特命係の杉下さんと示し合わせて→
犯罪捜査をしていた というような事は?
さあ どうでしょう?
行動を逐一把握するほど→
彼に関心があったわけじゃ ありませんから。
そうですか…。
こんな事 あまり外部の方に 言いたくないんですが…。
冠城亘は 仕方なく うちで預かった人材なんですよ。
は?
だから 私も 彼に興味ありませんでしたし→
彼の事を聞かれても→
通り一遍のお答えしか 出来ないと思います。
「仕方なく」 「興味なし」… 言ってくれますね。
質問者の口を封じるには→
相手の意表の突く話を こちらから率先してするに限る。
「知らない」 「わからない」だけじゃ 相手は食い下がってくるから。
とにかく早く切り上げたかったの。 時間の無駄だもの。
私ごときの事で→
課長の貴重な時間を 取らせてしまって→
誠に申し訳ありませんでした。
私 刑事事件の捜査については 詳しくないけど→
なんか 魂胆があるんじゃないかしら?
彼 そういう印象を持ったわ。
魂胆ね…。
社課長のとこ現れて→
いろいろ 話を聞いていったそうですよ。
まあ 課長も ちょっと怪しんでました。
確かに 捜査上の情報収集活動って 言い分は→
鵜呑みに出来ない気がします。
なるほど。 わざわざ 連絡どうも。
ちょうど今 こちらにも いらっしゃってますよ。
田臥ですか?
「ええ」
来てみると 周辺情報の収集という事で→
幸子さんの話を 聞きにいらしてました。
「そうですか…」
「まあ そういう事なんで」
冠城くんですか?
社さんのところにも 行かれたそうですねぇ。
彼が警視庁に移ってからの 最初の上司でしょう?
冠城くんの仕事ぶりや 人となりなどを聞くのに→
打ってつけの人物だと 思いましてね。
さあ 僕は そろそろ引き揚げます。
女将さん お勘定お願いします。
月本幸子) はい。 少々お待ちくださいませ。
ありがとうございました。
とても美味しかったです。 お釣りは結構ですから。
いえ そんな…。 ごちそうさまでした。
どうもありがとうございました。 また どうぞ。
はあ…! 緊張した。
検事さんって なんか 独特の威圧感があるんですよね。
前に 検事調べ受けた時の 嫌な記憶がよみがえりました。
申し訳ありませんでしたね… と 僕が謝罪するのも妙ですが。
いいえ! 謝って頂いて当然ですよ。
そもそも 杉下さんが 何か しでかさなかったら→
こんな目に遭ってないんですから。
僕は 何も しでかしちゃいませんがねぇ。
でも 安心してください。
不利になるような事は 言わなかったつもりです。
それは どうも。
交代?
そうだ。
理由を教えてください。
知らん。 はあ?
益岡)いずれにしても→
雲の上からのお達しだろう。
異例の事だし 承服しかねるとは思うが→
逆らっても なんの得もないと思うぞ。
せめて 理由を…。 本当に知らんのだ。
檜山栄子)どうして 急に交代を?
さあ… 知らないよ。
栄子)理由も聞かずに 引き受けたんですか?
聞くも聞かないも 命令に従っただけさ。
検事らしくないですね。
雲上人からのオーダーのような 気配がしたからな。
余計な詮索は やめといた。
それより 勾留期限を 目いっぱい使うつもりで→
改めて捜査するから 頼むよ。
捜査資料に 目を通したんですけど…→
ちょっと 乱暴な送検だったみたいですね。
おまけに 被疑者は 自白を翻してるみたいだし…。
貧乏くじ 引かされたんじゃありませんか?
…かもな。
立件は ますます難しそうだな。
ええ このままだと。
次官。
平井事件の担当 私に代えてくれませんか?
お前が担当して どうする?
警察を指揮して 起訴に向けての 補強捜査を行います。
なるほど。
しかし 検事の担当替えとなると 俺には 少々骨の折れる仕事だな。
検事総長ならば ホホイのホイだろうが。
そんなのは 私のあずかり知らぬ事。
ただ 事務次官の目的を 達成するためには→
それが必要条件です。
衣笠藤治)あのさ→
そんな要請に 従う事はないでしょう。
内村)さようですか。
中園)では 2人を外す必要はなしと。
本人たちは 脅迫を否定してるんでしょ?
中園)はい。 っていうか そもそも→
そんな告訴状が ちゃんちゃらおかしいよね。
検察は どうかしてるんだ。 内村)おっしゃるとおりですね。
伊丹くんと芹沢くんだっけ? 中園)はあ。
まあ 検事がなんと言おうが→
2人の入れ替えの 必要などないね。
もし ごちゃごちゃ言うようなら→
「お前ら勝手に捜査しろ」と 言ってやんなさい。
そんな人手もないくせに 偉そうに…。
まったくですねぇ。
奴ら 指示権 指揮権を盾に 傲慢な態度をとるのが→
腹立たしいですなあ。
だけどさ こんな些末な事 いちいち 僕のところに→
持ってこなくたっても いいんじゃないの?
はあ…。
君たちで 判断すべき事だよね?
まあ どうせ 万が一の時の 保険のつもりでしょ?
最終的な判断は僕がしたっていう 既成事実を作っておく。
宮仕えには そういう慎重さは必要だよね。
恐れ入ります。
僕は 君たちの行動には 一定の理解を示しますよ。
さすが副総監。
ご承知のとおり 勾留期限は まだ2週間以上ある。
その時間を有意義に使って→
平井事件の証拠固めをしたいと 考えている。
その理由のひとつは→
平井が取調室での供述を翻し 否認に転じているからだ。
平井は 自白が強要されたものだと 主張している。
まあ 署名 指印された供述調書が ある以上→
否認されても 一定の証拠価値は 認められるだろうが→
自白以外 状況証拠の積み重ねで→
決定打となるような証拠に 乏しいのも事実だ。
そこで これからの捜査で→
その部分を 補強していきたいわけである。
ここまでで 何か質問あるかな?
どうぞ。
どうして 担当検事が 代わったんですか?
諸事情だ。 諸事情って?
あなたが知る必要はない。
先輩…! 事を荒立てる必要ないですよ。
俺たちを外そうとしたんだぞ! あの野郎…。
他に 何か質問は?
甲斐峯秋)いささか緊張するなあ。
副総監直々の お出ましですからね。
からかわないでくださいよ。
甲斐)さあ どうぞ。
せき払い) で 話とは?
衣笠)特命係の事なんですがね…。
ん?
特命係は 現在 どこにも属しておらんのです。
警視庁内で 完全に独立した存在なわけで。
しかし これは おかしな話である以上に→
組織運営上 大いに問題ではないかと。
何しろ 特命係を指揮監督すべき 存在がないんですからね。
衣笠)一応 冠城亘の上司は→
杉下右京という事に なるんでしょうが→
それでは 杉下右京の上司は?
いない。
警視庁のどこを探しても いない。
そりゃそうです。 特命係は 独立しているんですからな。
君の指摘は よくわかったよ。
で… どうしたいというんだね?
甲斐さん あなたに特命係の 指揮統括をやって頂けないかと。
僕が?
いや もちろん あなたに 毎朝→
特命係に行って頂こう というわけじゃありません。
組織名目上 あなたに特命係の 指揮統括をお任せしたいと。
つまり 2人は僕の部下になる というわけかね?
名目上です。
いや もちろん 必要ならば→
お二人をお使いになるのは ご自由。
しかし 特命係に捜査権がないのには→
変わりはありませんがね。
正直…→
あの2人は 我々には コントロール不能なんですよ。
あなたに お願いするしかない。
甲斐さん お引き受け頂けませんか?
どちらへ?
…と この留置場階で あえて聞くのも→
馬鹿馬鹿しいですね。
起訴へ向けて 補強捜査 始めるんだろう?
ああ。 協力するよ。
捜査にか? ああ。
どんな権限で?
何?
この捜査は 僕の指揮下で行う。
捜査権のないあなた方を 参加させるわけにはいかない。
なるほど。
どうぞ お引き取りを。
戻りましょう。
まず 彼らをはっきり拒絶します。
捜査権のない者には 参加させないと。
けれど そんな事を 素直に聞く2人じゃない。
どうせ しゃしゃり出てくるだろうな。
そこが狙いです。
私の注意を無視して 捜査したとなれば→
違法行為として立件します。
フッ… 僕は防波堤って事かね?
現状のまま 2人が問題を起こせば→
最悪 君まで 責任を取らされかねない。
だが 名目上にせよ→
僕が 2人の指揮統括を務めていれば→
責任を負うのは 僕のところで とどめておける。
フフフッ…。
さしずめ 万が一の時の保険って事だね。
おとなしく 引き下がりますか?
まさか。 ですよね。
当然です。
はあ…。
〈特命係の反撃が始まる〉
不可解ですねぇ。 俺たちを捜査に参加させろ。
〈絶体絶命の2人を待ち受ける 運命とは?〉
首を洗って 待っててください。
いつでも受けて立ちますよ。
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