All language subtitles for [Beatrice-Raws] Mononoke Hime (Princess Mononoke) [DCPrip bt2020 ver 1998x1080 HEVC TrueHD]asa

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Original subtitles

(たいこの音)

(おどろおどろしい音楽) (キーキーとなく鳥の声)

(何かが動く音)

(木のたおれる音)

(メインテーマ 管弦(かんげん)楽曲)

ヤックル

(カヤ)兄(あに)さま

ちょうどよかった ヒイ様が みな村へもどれと

(カヤ)じいじも そう言うの

(アシタカ)じいじが? (カヤ)山が おかしいって

鳥たちがいないの

ケモノたちも…

そうか じいじの所へ行ってみよう

みんなは早くもどりなさい

(3人)はい

はっ…

何か来る

じいじ 何だろう?

判(わか)らぬ 人ではない

村の方はヒイ様が みなを呼びもどしている

来おった

(くだける音)

(不気味な音楽)

(山おじ)タタリ神だ! (アシタカ)タタリ神?

(タタリ神のさけび声)

ヤックル 逃(に)げろ

(山おじ)うわぁ… (威圧(いあつ)的な音楽)

村の方へ行く 襲(おそ)う気だ

(山おじ)アシタカ!

タタリ神に手を出すな 呪(のろ)いをもらうぞ!

ヤックル! (指笛)

(テンポのよい音楽)

(アシタカ) 鎮(しず)まれ 鎮(しず)まりたまえ!

さぞかし名のある 山の主と見うけたが

なぜ そのように荒(あら)ぶるのか

(村の人々のざわめき)

(女の子)おばけ (カヤ)村へ!

とまれ! なぜ我が村を襲(おそ)う やめろ! 鎮(しず)まれ

(息ぎれ)

あっ

(カヤ)しっかり

(タタリ神のさけび声)

(タタリ神のさけび声)

(男)倒(たお)した

兄(あに)さま!

(左の男)ヒイ様を早く (後方の男)火を絶やすな

(カヤ)兄(あに)さま

カヤ 触(ふ)れるな ただの傷ではない

(男)アシタカが手傷を負った ヒイ様は?

(ヒイ)みんな それ以上 近づいてはならぬぞ

ヒイ様

(ヒイ) この水をゆっくり かけておやり

(カヤ)はい

(アシタカ)うっ… (ジューという音)

(低いうめき声)

(ヒイ)いずこよりいまし 荒(あら)ぶる神とは存ぜぬも―

かしこみ かしこみ申す

この地に塚(つか)を築き あなたの御霊(みたま)をおまつりします

恨(うら)みを忘れ 鎮(しず)まりたまえ

(タタリ神)汚(けが)らわしい人間どもめ

我が苦しみと憎(にく)しみを知るがいい

さて困ったことになった

かのシシは はるか 西の国からやってきた

深傷(ふかで)の毒に気ふれ 身体(からだ)は腐(くさ)り―

走り走るうちに呪(のろ)いを集め タタリ神になってしまったのだ

(ヒイ)アシタカヒコや (アシタカ)はい

(ヒイ)みなに右腕(みぎうで)を見せなさい

おおっ…

ヒイ様

アシタカヒコや

そなたには自分の運命(さだめ)を見すえる 覚悟(かくご)があるかい?

はい タタリ神に矢を射る時 心を決めました

うーむ

そのアザはやがて 骨まで届いて―

そなたを殺すだろう

ヒイ様 何とかなりませぬか?

アシタカは村を守り 乙女(おとめ)らを守ったのですぞ

ただ死を待つしかないというのは…

だれにも運命(さだめ)は変えられない

だが ただ待つか 自ら おもむくかは決められる

見なさい

あのシシの身体(からだ)に 食いこんでいたものだよ

(ヒイ) 骨をくだき 腹わたを引き裂(さ)き―

むごい苦しみを与(あた)えたのだ

(ヒイ)さもなくばシシが タタリ神などになろうか

西の国で何か不吉(ふきつ)なことが 起こっているのだよ

その地におもむき 曇(くも)りのない眼(まなこ)で 物事を見定めるなら

(ヒイ)あるいは その呪(のろ)いを 断つ道が見つかるかもしれぬ

はい

大和(やまと)との戦(いく)さに敗れ この地に潜(ひそ)んでから五百有余年

今や大和(やまと)の王の力は萎(な)え―

将軍どもの牙(きば)も折れたと聞く

だが 我が一族の血も また衰(おとろ)えた

この時に 一族の長(おさ)となるべき若者が―

西へ旅立つのは運命(さだめ)かもしれぬ

(ヒイ)おきてに従い見送らぬ 健やかにあれ

(しずかな音楽)

(カヤ)兄(あに)さま

(アシタカ)カヤ 見送りは禁じられているのに

おしおきは受けます

どうか これを私の代わりに お供させてください

大切な玉(ぎょく)の小刀(こがたな)じゃないか

お守りするよう息を 吹(ふ)き込(こ)めました

いつもいつも カヤは兄(あに)さまを 思っています きっと きっと…

私もだ いつもカヤを思おう

(壮大(そうだい)な音楽)

(虫の声)

(遠くに人々のざわめき)

戦(いく)さ…

(遠くで悲鳴)

(雑兵)うぬらー (女)きゃー

(男)おのれ!

(雑兵)回り込(こ)め

(兵)野郎(やろう) カブトクビだ! (兵が口々に)勝負 勝負!

(ヤックルの驚(おどろ)く声)

(女)ひぇー (雑兵)やーっ

(アシタカ)やめろ!

はっ!

(緊張(きんちょう)感のある音楽)

え?

ひゃー

何だ この腕(うで)は

(侍(さむらい))逃(に)がさぬぞ 見参!

(アシタカ)押(お)し通る 邪魔(じゃま)するな

鬼(おに)だ

アザが濃(こ)くなっている

ふん… なんとも白湯(さゆ)みたいなメシだな

おっ いた いた

(アシタカ)これでよいか

何だい こりゃ おアシじゃないじゃないか

おアシがなきゃ米を返しな

待て待て 拙僧(せっそう)が見てやろう

ん?

おっ これは! 女 これは砂金の大つぶだぞ

(ジコ坊(ぼう)) そうだ ゼニがいいなら代金は ワシが払(はら)おう これを譲(ゆず)ってくれ

みなの衆(しゅう) この近くに 両替(りょうがえ)屋はおらんかの? あ?

おらんか?

拙僧(せっそう)の見るところ米一俵か…

いや 三俵か (人々のざわめき)

ああ ちょっと待ちなさい

(女)返しとくれ! 私んだから

(ジコ坊(ぼう))おーい そう急がれるな

いや 礼などと申す気はない 礼を言いたいのは拙僧(せっそう)の方でな

田舎侍(いなかざむらい)の小競(こぜ)り合いに 巻きこまれたおり

そなたのおかげで助かったのだ

(ジコ坊(ぼう))いやあ 鬼神(きしん)のごときとは まさに あれだなあ

ほほー 気づいたか 人前で砂金など見せるとなあ

(ジコ坊(ぼう)) まことに人の心の すさむこと 麻(あさ)のごとしだ

寝込(ねこ)みを襲(おそ)われてもつまらぬ 走るか? え?

(ジコ坊(ぼう))ほお イノシシが タタリ神になったか

足あとをたどって来たのですが

里に下りた途端(とたん) わからなくなりました

そりゃあ そうだろう そこらを見なさい

この前 来た時には―

ここにも それなりの村が あったのだがなあ

(ジコ坊(ぼう))洪水(こうずい)か地すべりか… さぞ たくさん死んだろうに

戦(いく)さ 行きだおれ 病に飢(う)え

人界(じんかい)は恨(うら)みを飲んで死んだ亡者(もうじゃ)で ひしめいとる

タタリというなら この世はタタリそのもの

ふうっ ふうっ ふうっ

うん うまい

里へ下りたのは間違(まちが)いでした 二人も あやめてしまった

(ジコ坊(ぼう)) いや おかげで拙僧(せっそう)は助かった

わんを出しなさい まず食わねば

(ジコ坊(ぼう))人は いずれ死ぬ おそいか早いかだけだ

ほう 雅(みやび)なわんだな

そなたを見ていると 古(ふる)い書に伝わる古(いにしえ)の民(たみ)を思い出す

東の果てにアカシシにまたがり―

石のヤジリを使う 勇壮(ゆうそう)なるエミシの一族ありとな

(おいしそうに食べる音)

肝心(かんじん)なことは死に食われぬことだ

いや これは師匠(ししょう)の受け売りだがな

さあ そなたの米だ どんどん食え

この様なものを 見たことはありませんか

これは?

イノシシの体から出てきました

巨大(きょだい)なイノシシに ひん死の傷(きず)を与(あた)えたものです

これより更(さら)に 西へ西へ進むと 山のおくの また山おくに―

人を寄せつけぬ深い森がある

(ジコ坊(ぼう))シシ神の森だ (アシタカ)シシ神の森…

そこでは獣(けもの)は みな大きく 太古(たいこ)のままに生きていると聞いた

(壮大(そうだい)な音楽)

(遠ざかる足音) (ジコ坊(ぼう))やはり行くか

(ねむりにつく声)

(人が牛をせかす声)

(エボシ)みな あとわずかだ 油断すまいぞ

(ワラットの一人)出たぞ (もう一人)犬神だ!

(エボシ)牛を落ちつかせろ 焦(あせ)らずに陣(じん)を組め

(ゴンザ)せいて火薬をぬらすな 充分(じゅうぶん)に引きよせよ

一番 放て!

(弾着(だんちゃく)音)

(エボシ)二番 放て!

化け物め 口ほどにもない

あれは子どもだ 母親は なぜ来ない

(牛のなき声)

モロだ!

(男たち)うわーっ

モロ 来い

やりました

きやつは不死身だ このぐらいでは死なん

だいぶ やられましたな

すぐ出発しよう

谷に落ちた者はいかがします?

(エボシ)隊列を組み直せ

あっ!

(アシタカ)息がある しっかりしろ

(男がセキをする)

はっ

(モロのうなり声)

わが名はアシタカ 東の果てより この地へ来た

そなた達は シシ神の森に住むと聞く古い神か?

(清らかな音楽)

(サン)去れ

(後方で悲鳴)

ひっ… ああ…

コダマ? ここにもコダマがいるのか

(たじろぐ声) 静かに 動くと傷にさわるぞ

(カタカタという音)

好きにさせておけば悪さはしない 森が豊かな印だ

こいつらシシ神を呼ぶんだ

シシ神? 大きな山犬か?

(甲六(こうろく))ちがう もっとおっかねえ 化け物の親玉だ

ああっ 消えた! うわーっ

アイタタ…

ヤックルが平気でいる 危険なものは近くにはいない

ひゃーっ

すまぬが そなた達の森を 通らせてもらうぞ

(カタカタという音)

お願いです 戻(もど)りましょうよ

向こう岸なら道がありやす この森をぬけるなんて無茶だ

流れが強すぎて渡(わた)れない

それに このけが人は 早くしないと手おくれになるぞ

道案内をしてくれてるのか 迷いこませる気なのか

(息ぎれ)

ダンナ こいつらワシらを 帰さねえ気なんですよ

どんどん増えてやすぜ

お前たちの母親か 立派な樹(き)だ

おお…!

あの少女と山犬の足あとだ ここは彼(かれ)らの縄張(なわば)りか

ダンナ 今度こそヤバいですよ ここは あの世の入り口だ

そうだな ちょっと休もう

足あと?

ヒヅメが3つ まだ新しい

ハッ

うっ!

ううっ くそっ…

ダンナ どうしたんで?

(アシタカ)ううっ

(鼓動(こどう)の音)

はあっ はあっ はあっ…

ダンナ だいじょうぶですかい? 顔色が真っ青ですぜ

(甲六(こうろく))だからヤバイって

お前 何か見たか?

(甲六(こうろく))えっ? (アシタカ)いや いい

もうちょっとの辛抱(しんぼう)だ しっかりしろ

すまねえ…

行ってしまった

(アシタカ)なぜだ あれから急に 体が軽くなった

あれっ? 痛くねえ

治った! イテテ… やっぱり折れてる

うわあ ダンナすげえ! ドンピシャだ タタラについた

(鉄を打つ音)

まるで城だな

(甲六(こうろく))エボシ様の大タタラでさあ

(甲六(こうろく))砂鉄を沸(わ)かして 鉄を作ってるんです

(甲六(こうろく))おーい

(甲六(こうろく))おーい

(左の人足)森から人が来る (右の人足)もののけか

(甲六(こうろく))おーい オレだー 牛飼いの甲六(こうろく)だ!

(牛飼い達のざわめき)

(男)ウソじゃない いま舟(ふね)で こっちへ来る

顔をしかと見たのか

ええい 何事(なにごと)か! オレが字を書いてる時は静かにしろ

(牛飼い)死んだはずの甲六(こうろく)が 向こう岸に出たんです

なに?

幽霊(ゆうれい)じゃねえな

他のやつは どうした?

あと2人落ちたんだ

助けられたのはオレたちだけだ

(つらそうな声)

死ぬのは牛飼いばかりさ

あけろ

ゴンザ様 あの頭巾(ずきん)の者は 何者でしょう

見なれぬ姿だな

(甲六(こうろく))石火矢(いしびや)の衆(しゅう)よ この旦那(だんな)が ずっと おぶってくださったんだ

礼を言っとけ ああっ… イテテ… そこを持つなって

アイタタ… あっ!

ちっ そこの者 待て!

(ゴンザ) ケガ人をとどけてくれたこと まず礼を言う

だが得心(とくしん)がいかぬ

我らがここへ着いて 半刻もせぬうちに お前は来た

しかも谷底から大の大人を担ぎ シシ神の森をぬけてだと…

(トキ)甲六(こうろく)! 生きとったんか

(甲六(こうろく))おトキ!

(トキ)あーあ!

このグズ!

牛飼いが足をくじいて どうやって おマンマ食ってくんだよ

(甲六(こうろく))だって… (トキ)心配ばかりかけやがって

いっそ山犬に食われちまえば よかったんだ

(笑い声)

(トキ)そうすりゃ あたいは もっといい男を見つけてやる

おトキ 堪忍(かんにん)してくれよ

トキ 夫婦ゲンカは よそでやらんかい

なにさ えらそうに

ケガ人を捨てて来やがって 何のための護衛なのさ

ふだん タタラのひとつも 踏(ふ)まないんだ

いざという時は命を張りやがれ

仕方なかろう…

ありがとう あんな亭主(ていしゅ)でも 助けてくれて うれしいよ

(アシタカ)よかった

連れて来てはいけなかったのかと 心配してしまった

え? あはは!

へえ いい男じゃないか ちょっと顔 見せておくれよ

(エボシ)ゴンザ

あとで礼を言いたい 客人を案内しなさい

甲六(こうろく)

へ… へい!

(エボシ)よく帰って来てくれた すまなかったな

へ… へい!

そんな めっそうもない エボシ様 バカがつけ上がるだけですよ

トキも堪忍(かんにん)しておくれ 私がついていたのにザマアなかった

いいえ 男達だけだったら 今ごろ みんな仲良く―

山犬の腹ん中におさまってますよ

(笑い声) (女たち)ほんと ちがいない

旅のお方 ゆるりと休まれよ

あら やっぱり いい男じゃない!

(やぐらの鐘(かね)をたたく音)

(のどかな音楽)

(力を入れる声)

(にぎやかな人々の声)

(男)モロをやっつけて運んだ米だ ありがたく食えよ

(女)早くしなよ

(女たち口々に) どこどこ? あの人?

ほんと トキの言った通りじゃん

いい男ねえ

ちょっと若すぎない?

(女)年なんか平気なくせに (女たちの笑い声)

静かにしねえか 通夜をやってるんだぞ

いい男なら ここにもいるぞ

やなこった 牛飼いなんて

ねえ 旅のお方 あたい達の所へ来なよ

こんなクサイ小屋は やめてさ

何でい オレたちが 命がけで運んだ米を食らってよ

口が腐(くさ)るぜ

ふん! その米を買う鉄は だれが作ってるのさ

あたい達は夜(よ)っぴて タタラを踏(ふ)んでるんだ

もし良かったら―

あなた達の働く所を ぜひ見せてください

本当かい?

じゃあ おしろい塗(ぬ)って たたら踏(ふ)まなきゃ

紅もさす? (笑い声)

(女たち笑いながら) きっとだよ 待ってるからね

ダンナ 気を悪くしねえでくだせえ

だいたい エボシ様が 甘(あま)やかしすぎるんで

いい村は女が元気だと聞いています

でもなあ タタラ場に 女がいるなんてなあ

普通(ふつう)は鉄を汚(けが)すって そりゃ イヤがるもんだ

エボシ様ときたら―

売られた娘(むすめ)を見ると みんな引き取っちまうんだ

優しい方なんだよ

じいさん 口から飯が出てるよ

そのくせよ オキテもタタリも ヘッチャラな こわい人よ

そうそう 山犬なんぞ目じゃねえさ

ナゴの守(かみ)をやった時なんか 見せたかったぜ なあ?

ナゴのカミ?

すげえ でかいイノシシでよ この辺りの主だったのよ

でよ だあれも山に近寄れねえ

お宝の山を見ながら 人間様は指をくわえてたのよ

このしもじゃ砂鉄を 採り尽(つ)くしちまったからな

何人ものタタラ師が ここを狙(ねら)ってよ

みんな やられちまったんだ

オレたちの稼業(かぎょう)は山を削(けず)るし 木を切るからな

山の主が怒(おこ)ってな

(人々の悲鳴)

(イノシシの鼻息)

わっはっは!

おっ 始めたな ハハハ!

ハハハハ!

そこへエボシ様が 石火矢衆(いしびやしゅう)を 連れて現れたってわけだ

(スリリングな音楽)

(イノシシのさけぶ声)

ダンナ どうしたんで?

うでが痛むんで?

いや そのイノシシのことを 考えていた

いずくで果てたか さぞ恨(うら)みは深かろう

アシタカとやら 待たしてすまぬな いい鋼(はがね)だ

あすの送りの支度に手間どってね

ちょっと休もう みなに そう言っておくれ

(女)はい

(エボシ)そなたを侍(さむらい)どもか もののけの手先と疑う者がいるのだ

このタタラ場を狙(ねら)う者は たくさんいてね

旅のわけを聞かせてくれぬか

このつぶてに覚えがあるはず

(アシタカ)巨大(きょだい)なイノシシ神の 骨をくだき 肉を腐(くさ)らせ―

タタリ神にした つぶてです

このアザは そのイノシシに 止(とど)めをさした時に受けたもの

死にいたる呪(のろ)いです

そなたの国は? 見慣れぬシシに乗っていたな

東と北の間より… それ以上は言えない

(ゴンザ)きさま! 正直に答えぬと たたき斬(き)るぞ

そのつぶての秘密を調べて 何とする

曇(くも)りなき眼(まなこ)で見定め 決める

曇(くも)りなき眼(まなこ)?

はっはっは…

わかった 私の秘密を見せよう 来なさい

エボシ様!

ゴンザ 後をたのむよ

ちぇっ!

(鉄を打つ音) (火の燃える音)

ここは みな恐(おそ)れて 近寄らぬ私の庭だ

秘密を知りたければ来なさい

じゃまするよ

(くぐもった笑い声)

(病者の女) ちょうど組み上がった所ですよ

(エボシ)まだちょっと重いな

(女)そのように 軽々と持たれているのに

(男)あまり削(けず)ると 銅金(どうがね)がはじけます

私だけが使うのではない ここの女達に持たせるのだ

(女)ハハハ さぞ見ものでしょうね

この者達が考案した 新しい石火矢(いしびや)だ 明国(みんこく)のものは重くて使いにくい

(エボシ)この石火矢(いしびや)なら化け物も 侍(さむらい)のよろいも撃(う)ちくだけよう

(男)こわや こわや エボシ様は国崩(くにくず)しをなさる気だ

急がせて すまぬな あとで酒など届けよう

(男)そりゃ ゴウギじゃ

あなたは山の神の森を奪(うば)い タタリ神にしても飽(あ)き足らず―

その石火矢(いしびや)で さらに新たな恨(うら)みと 呪(のろ)いを生み出そうというのか

そなたには気の毒だった あのつぶて 確かに私の放ったもの

おろかなイノシシめ 呪(のろ)うなら私を呪(のろ)えばいいものを

その右腕(みぎうで)は 私を殺そうとしているのか

呪(のろ)いが消えるものなら 私もそうしよう

だが この右腕(みぎうで) それだけでは止まらぬ

ここの者すべてを殺すまで 鎮(しず)まらぬか

(男)エボシ様 長(おさ)が何か申しております

(長(おさ))エボシ様 その若者の力を あなどってはなりません

(長(おさ))お若い方 私も呪(のろ)われた身ゆえ―

あなたの怒(いか)りや悲しみは よくわかる

(長(おさ))わかるが どうかその人を 殺さないでおくれ

(長(おさ))その人は わしらを人として 扱(あつか)って下さった たった一人の人だ

わしらの病(やまい)を恐(おそ)れず―

わしの腐(くさ)った肉を洗い 布を巻いてくれた…

(苦しそうな声)

(男)おさ…

(長(おさ))生きることは まことに苦しく つらい

夜を呪(のろ)い 人を呪(のろ)い それでも生きたい

どうか おろかなワシに免(めん)じて…

(山犬の遠ぼえ)

(発砲(はっぽう)音)

また来ていたか 夜になると ああして戻(もど)ってくるのだ

山を取り戻(もど)そうと木を植えに来る

アシタカ ここにとどまり 力を尽(つ)くさぬか

あなたはシシ神の森まで 奪(うば)うつもりか

古い神がいなくなれば―

もののけ達も ただのケモノになろう

森に光が入り 山犬どもが鎮(しず)まれば ここは豊かな国になる

もののけ姫(ひめ)も人間に戻(もど)ろう

もののけ姫(ひめ)?

山犬に心を奪(うば)われた あわれな娘(むすめ)だ 私を殺そうと狙(ねら)い続けている

シシ神の血は あらゆる病(やまい)を癒(いや)すと聞いている

業病(ごうびょう)に苦しむ あの者達を癒(いや)し―

そなたのアザを消す力も あるかもしれぬぞ

(病者の男)エボシ様 首尾(しゅび)はいかがでしょうや?

上出来だ 正に国崩(くにくず)しにふさわしい

が やはり ちょっと重いな

(病者)ハハハ こわや こわや

(女たちの歌声)

あら?

あんた!

おトキさん 私も踏(ふ)ませてくれ

え? ちょっと あんた… (歌声が続く)

(アシタカ)代わってくれないか (女)え?

せっかくだから代わってもらいな

(女)ええ… (女たちの歌声)

(女たちの歓声(かんせい))

(女たち)すごい力!

(女)本当に来てくれたんだね

(トキ)ね いい男だろ

あらあら この人 すそを気にしてるよ

だって…

そんなにリキむと続かないよ 旅人さん

きびしい仕事だな

そうさ 四日五晩 踏(ふ)みぬくんだ

ここの暮らしは つらいか?

そりゃさ

でも下界に比べりゃ ずっといいよ ねえ?

うん お腹いっぱい食べられるし 男が いばらないしさ

そうか

(女たち)えーっ!

明日行っちゃうの?

もっといればいいのに

ここで働きなよ

ありがとう

どうしても会わなければならない 者がいるんです

ハッ…

(女たちのざわめき)

(アシタカ)来る (女たち)えっ?

(鉄板を打つ音)

(見張り)もののけ姫(ひめ)だ

(発砲(はっぽう)音)

(男)うわーっ

やっ!

(男の悲鳴)

(後方の男)いたぞ 姫(ひめ)だ

(アシタカ)やめろ!

そなたと戦いたくない

(男)このやろう!

(もう一人の男)上だ 飛んだぞ!

(前の男)ご殿(てん)の方へ行くぞ

(男)入ったのは姫(ひめ)ひとりだ

(男たち)おのれ! 今夜こそ!

かがり火を増やせ 石火矢衆(いしびやしゅう)は 柵(さく)を固めて外へ逃(に)がすな

持ち場をはなれるな うろたえるんじゃねえぞ

(女)この屋根の上にいるらしいよ (女たちの悲鳴)

騒(さわ)ぐんじゃない 休まず踏(ふ)みな 火を落とすと取り返しがつかないよ

ひとりか?

ハッ よほど追いつめられたと 見えます

エボシ様を狙(ねら)ってのことでしょう

仕方がない 来なさい

(男たちのざわめき)

もののけ姫(ひめ) 聞こえるか 私は ここにいるぞ

(エボシ)お前が一族の あだを討(う)とうというなら―

こちらにも山犬に食い殺された 夫の無念を晴らそうと―

心に決めた者たちがいる

出ておいで 今夜こそケリをつけてやる

ハッ…

(堂々たる音楽)

(人々)出た いたぞ

(人々 口々に)もののけ姫(ひめ)だ 降りてきががれ!

(ゴンザ)前をあけろ 流れ弾(だま)に当たるぞ

ワナだ やめろ!

山犬の姫(ひめ) 森へ帰れ みすみす死ぬな!

退くも勇気だ 森へ帰れ

あいつ やはり…

好きなようにさせておけ

(山犬の遠ぼえ)

やった! 落ちるぞ (どよめく人々)

動くな

首だけになっても 食らいつくのが山犬だ

え?

(エボシ)落ちたところを狙(ねら)いな (女)はい

放て!

(ゴンザ)おーっ!

動くな!

(人々のさけび) (ゴンザ)あちち

しっかりしろ

(サン)うーっ!

(アシタカ)やめろ!

(刀を振(ふ)りきる声)

(ゴンザ)うわっ…

(人々の驚(おどろ)く声)

(サン)やあーっ

(武器のチンという音)

(人々のかけ声) (武器の重なる音)

(二人の力を入れる声)

(人々)やっちまえ 袋(ふくろ)のネズミだ 逃(に)しちゃダメだよ

(男)殺せ!

ゴンザさま お気を確かに

(重くるしい音楽)

オレにかまうな 行けっ

ん?

うぬは… やはり もののけの類か

止まれ!

どいてくれ

ん? うわーっ!

(人々のさわぎ声)

(武器を振(ふ)る声)

(サン)うーっ! ああっ!

何の真似(まね)だ アシタカ

この娘(むすめ)の命 私がもらう

その山犬を嫁(よめ)にでもする気か

そなたの中には夜叉(やしゃ)がいる この娘(むすめ)の中にもだ

ああっ…!

みんな見ろ これが身の内にすくう 憎(にく)しみと恨(うら)みの姿(すがた)だ

肉を腐(くさ)らせ 死を呼び寄せる呪(のろ)いだ

(アシタカ) これ以上 憎(にく)しみに身を委ねるな

さかしらに わずかな不運を 見せびらかすな

その右腕(みぎうで) 切り落としてやろう

(人々のどよめき)

(女たち)エボシ様!

だれか 手を貸してくれ

(女たち)エボシ様!

心配するな じきに気がつく

(女たち)エボシ様… たいへん

(女)エボシ様!

この娘(むすめ) 私がもらい受ける

お待ち! 逃(に)がしゃないよ よくもエボシ様を…

動くんじゃない

キヨ やめな!

(爆発(ばくはつ)音)

当たったのに歩いとる

(ゴンザ)エボシ様は? (男)ご ご無事です

オレの石火矢(いしびや)を持って来い 石火矢衆(いしびやしゅう)は ここへ集まれ

このまま逃(に)がしてなるか

おトキ 早く!

あ あんた…

(静かな音楽)

ダンナ ここは通れねえ

許しがなければ 門は開けられねえんだ

(男)どうか お戻(もど)りを

(男)あなたは仲間を助けてくださった 敵にしとうありません

(男)どうか

私は自分で ここへ来た 自分の足で ここを出て行く

(男)無理です 10人かかって開ける扉(とびら)です

ダンナ いけねえ 死んじまう

(人々のどよめき)

(人々)動いた

どけーっ!

山犬だ 火? 火! 火!

やめろ そなた達の姫(ひめ)は無事だ

(うなり声)

今そっちへ行く ヤックル 行こう

世話になった

行ってしまわれた

(サン)ハッ! くっ…

(サン)お待ち

私の獲物(えもの)だよ

お前 撃(う)たれたのか… 死ぬのか

なぜ私の邪魔(じゃま)をした! 死ぬ前に答えろ!

(アシタカ 小声で) そなたを死なせたくなかった…

死など怖(こわ)いもんか

人間を追いはらうためなら 命などいらぬ

わかっている 最初に会った時から…

余計な邪魔(じゃま)をして 無駄死(むだじ)にするのは お前の方だ

そのノド切り裂(さ)いて―

二度と無駄口(むだぐち) たたけぬようにしてやる!

生きろ…

まだ言うか! 人間の指図は受けぬ

そなたは美しい…

(山犬)どうした サン オレが かみ砕(くだ)いてやろうか

(山犬のうなる声)

ショウジョウたち…

(山犬) ショウジョウども 我らがモロの一族と知っての無礼か

ここは我らの森

その人間 よこせ

人間よこして さっさと行け

(山犬)失せろ 我が牙(きば)がとどかぬうちに

(ショウジョウたち)行け 行け オレたち 人間食う

(ショウジョウたち)その人間食う その人間食わせろ

ショウジョウ達

森の賢者(けんじゃ)とたたえられる あなた達が―

なぜ人間など 食おうというのか

(ショウジョウ) 人間食う 人間の力もらう

人間やっつける力ほしい だから食う

いけない 人間を食べても 人間の力は手に入らない

あなた達の血が汚(けが)れるだけだ ショウジョウじゃなくなっちゃう

木植えた 木植え 木植えた

みな人間ぬく 森戻(もど)らない 人間コロシタイ

私達にはシシ神様がついてる あきらめないで木を植えて

モロの一族は最後まで戦うから

シシ神様 戦わない わしら死ぬ

山犬のヒメ平気 人間だから

(山犬)無礼なサルめ その首 かみ砕(くだ)いてやる!

(どよめき声)

おやめ!

(山犬が近づく足音)

平気 気にしない お前たち 先に帰りな

この人間の始末は私がする

(山犬) あいつは? 食べていい?

(サン)食べちゃダメ さあ行きな

おいで 仲直りしよう

お前の主人を運ぶから 力を貸しておくれ

(幻想(げんそう)的な音楽)

(水に入る音)

(やさしい音楽)

(サン)お前はかしこいね この島には登らない方がいい

人間くさい

(水に入る音)

好きな所へ行き 好きに生きな

(水のせせらぎ)

(神秘的な音楽)

(カタカタという音)

ああ… おおっ 出た! ディダラボッチだ ついに見つけた

何をしとる 早く見んか

何のために こんなクサイ毛皮を かぶって耐(た)えてきたんじゃ

シシ神様を見ると目がつぶれるわい

それでもヌシは西国一の狩人(かりゅうど)か

この天朝(てんちょう)様の書きつけを 何とこころえる

天朝様がシシ神退治を認めとるんだ はやくしろ!

ディダラボッチはシシ神の夜の姿だ

今に夜から昼の姿に変わる

そこがシシ神のすみかだ おお 消えるぞ! あそこだ

(風の音とカタカタという音)

ジコ坊(ぼう)さま

(ジコ坊(ぼう))わかっておる

あそこを

(リズミカルな音楽)

ん?

(イノシシの声)

なんとも おびただしい数だな

ありゃ この森のもんじゃねえ

それぞれ いずくかの山の 名のあるヌシだ

お! (たいこの音)

鎮西(ちんぜい)の乙事主(おっことぬし)だ

鎮西(ちんぜい)? 海をわたって来たというのか

まちがいねえ あの4本キバ 一族を率いて来やがったんだ

(ジコ坊(ぼう)) バレた 引きあげだ 急げ!

(イノシシのさけび声)

(イノシシのさけび声)

早くしろ 飛べっ 飛べっ!

(小鳥のさえずり 水の音)

あ… 傷がない

うっ…

ヤックル

(ヤックルの声)

はあ…

(やさしい音楽)

目が覚めてたら ヤックルに礼を言いな

ずっとお前を守っていたんだ

どうしてヤックルの名を?

自分から色々 話してくれた お前のことも 故郷(ふるさと)の森のことも

シシ神様が お前を生かした だから助ける

ふしぎな夢を見た… 金色(こんじき)の鹿(しか)だった

食べろ

かめ

(苦しそうに せき込(こ)む)

(ゴーという足音) (イノシシの声)

(大イノシシ)我らは人間を殺し 森 守るために来た

なぜ ここに人間がいる?

(モロ)私の娘(むすめ)だ 人間など どこにでもいる

自分の山に戻(もど)り そこで殺せばいい

(大イノシシ) シシ神の森を守るために殺すのだ

なぜ人間がここにいる? (イノシシの声)

この人間の傷をシシ神様が癒(いや)した だから殺さずにかえす

シシ神が人間を助けた? シシ神が人間を癒(いや)しただと?

なぜナゴの守(かみ)を助けなかったのだ

シシ神は森の守り神ではないのか?

(モロ)シシ神は命を与(あた)えもし 奪(うば)いもする

そんな事も忘れてしまったのか イノシシども

(大イノシシ) ちがう 山犬がシシ神を 独(ひと)り占(じ)めしているからだ

ナゴを助けず裏切ったからだ

(モロ)きゃつは死を恐(おそ)れたのだ いまの私のように

ワタシの体にも 人間の毒つぶてが入っている

ナゴは逃(に)げ ワタシは逃(に)げずに 自分の死を見つめている

(サン)モロ だからシシ神様に…

(モロ)サン ワタシはすでに 充分(じゅうぶん)に生きた

シシ神は傷を治さず 命を吸いとるだろう

そんなはずない 母さんは シシ神様を守ってきた

(大イノシシ)だまされぬぞ ナゴは美しく強い兄弟だ

逃(に)げるはずがない

山犬どもが食ったんだ 食っちまったんだ

だまれ! 母さんをバカにすると許さんぞ

(アシタカ)荒(あら)ぶる山の神々よ 聞いてくれ

ナゴの守(かみ)にとどめを刺したのは私だ

村を襲(おそ)ったタタリ神を 私は やむなく殺した

大きなイノシシ神だった これが証拠(あかし)だ

あるいは この呪(のろ)いを シシ神がといてくれぬかと―

この地へ来た

だがシシ神は傷は癒(いや)しても アザは消してくれなかった

呪(のろ)いが我が身を食い尽(つ)くすまで 苦しみ生きろと…

(モロ)乙事主(おっことぬし)だ 少しは話のわかるやつが来た

待って 乙事主(おっことぬし)さま この人を食べてはダメ

(乙事主(おっことぬし))モロの娘(むすめ)だね うわさは聞いていたよ

あなた目が…

(乙事主(おっことぬし))どいておくれ 食いはしない

(アシタカ)山犬の姫(ひめ) かまわない ナゴの守(かみ)の最期(さいご)を伝えたいから

(乙事主(おっことぬし))ありがとうよ お若いの

悲しい事だ 一族からタタリ神が出てしまった

乙事主(おっことぬし)どの このタタリを 消す術(すべ)はないのだろうか

森を去れ 次に会う時は お前を殺さねばならぬ

乙事主(おっことぬし)よ 数だけでは 人間の石火矢(いしびや)には勝てぬぞ

モロ わしの一族を見ろ みんな小さくバカになりつつある

このままでは わしらは ただの肉として―

人間に狩(か)られるようになるだろう

気に入らぬ 一度にケリをつけようなどと

人間どもの思うつぼだ

山犬の力を借りようとは思わぬ

たとえ我が一族 ことごとく滅(ほろ)ぶとも 人間に思いしらせてやる

(遠ざかるイノシシの声)

シシ神様

(牛の声)

(牛飼い)乱れて牛を散らすな

まだ撃(う)つな 引き寄せろ

(エボシ)放て!

(ゴンザ)弾込(たまご)め急げ!

(侍(さむらい))もどせ…

(もう一人の侍(さむらい))おのれ…

やれやれ エボシのやつ 相手がちがうだろうに

お前たち 先に行き潜(ひそ)んでおれ

(女)見えた! 帰って来たよ

(石火矢衆(いしびやしゅう))おかしら

おう 苦労をかけるな

(ジコ坊(ぼう))そろそろ動く みなにも そう伝えよ

(石火矢衆(いしびやしゅう))はっ

ジコ坊(ぼう)か

師匠連(ししょうれん)から矢の催促(さいそく)だ イナカ侍(ざむらい)と遊んどる時ではないぞ

アサノ公方(くぼう)が地侍(じざむらい)どもを そそのかしているのだ

アサノか… 大侍(おおざむらい)だな

鉄を半分よこせと言ってきた

そりゃあ ごうつくだ

だが今は人間とやりあうヒマはない

森にイノシシ神が集まっておる じきに来るぞ

(ジコ坊(ぼう)) この際 鉄など全部くれてやれ

(ジコ坊(ぼう))師匠連(ししょうれん)への約束を果たしてから 戦(いく)さでも何でもやればよかろう

(女たち)エボシ様 お早く 侍(さむらい)が来ます 早く!

うわさをすれば あれはアサノの使者だな

使者だ 丁重にもてなしなさい

(女たち)はーい

(女たち)お帰りなさい

お… おい 会わんのか?

(使者)タタラ者エボシとやら 先ほどの地侍(じざむらい)相手の戦(いく)さ 見事なり

(使者) 我らは公方さまの使者として参った かしこまって門をひらけ!

ふん! 用があるなら そこで言いな

この山はエボシ様が もののけから切りとったんだ

金になるとわかって 手のばしやがって とっとと帰れ!

女ども 使者への無礼ゆるさんぞ

無礼だってさ

こっちは生まれた時から ずーっと無礼だい!

(全員そろって)ベーっ

鉄が欲しけりゃ くれてやるよ (発砲(はっぽう)音)

(女たちの笑い声)

いやあ まいった まいった

大侍(おおざむらい)も もののけも眼中になしか

エボシタタラの女たちの 勇ましいことよ

こんな紙切れが役に立つのか

まあ 色んな輩(やから)を集めるには 効き目がある

獣(けもの)とはいえ 何しろ神を殺すのだ

はい エボシさま

そなた達 この書き付けがわかるか 天朝(てんちょう)さまのだ

(女)天朝さま? (もう一人の女)天朝さまって?

(エボシ)みかどだ (女たち)みかど…

いやあ まいった まいった

(エボシ)いいよ (女たち)はい

私達が ここで鉄を作り続ければ 森の力は弱まる

それからの方が犠牲(ぎせい)も少なくすむが

金も時間も充分(じゅうぶん)に つぎこんだ

石火矢衆(いしびやしゅう)40名を貸し与(あた)えたのは 鉄を作るためではないぞ

…と まあ 師匠連(ししょうれん)は言うだろうなあ

まさか そなたまで シシ神の生首に―

不老不死の力があるとは 思っていまいな?

やんごとなき方々や師匠連(ししょうれん)の考えは わしにはわからん

わからん方がいい

約束は守る

モロ一族の代わりに イノシシの群れが―

森にひしめくなら かえって やりやすかろう

崖(がけ)の裏に潜(ひそ)んでいる あやしげな 手下どもを呼び寄せるがいい

いや ハハハ… バレていたか

ああ そうだ もう一つ

(ジコ坊(ぼう))少年が一人 訪ねて来なかったか

アカシシに乗った ふしぎな少年だが

去った

なんか気味が悪いよ

あれは ただの狩人(かりゅうど)じゃねえ ジバシリだ

ジバシリ?

私達もお伴(とも)させてください

(女の一人)あんな連中を 信用しちゃダメです

エボシ様に何かあったら 取り返しがつかないもの

せっかく石火矢(いしびや)を覚えたんだから

だからこそ みんなに ここを守ってもらいたいのさ

怖(こわ)いのは もののけより 人間の方だからね

シシ神殺しが済んだら いろいろ わかるだろうよ

唐傘連(からかされん)の師匠(ししょう)達がシシ神の首だけで ここから手を引くもんかね

侍(さむらい)だけじゃないよ 石火矢衆(いしびやしゅう)が 敵となるかもしれないんだ

(エボシ)男は頼(たよ)りにできない しっかりやりな みんな

エボシ様のことは案ずるな このゴンザ 必ずお守りする

それが本当ならね

なにい?

あんたも女だったら良かったのさ

(ゴンザのすくむ声) (エボシの笑い声)

♪「もののけ姫(ひめ)」

(苦しそうな声)

(モロ)つらいか?

(モロ)そこから飛び降りれば 簡単にケリがつくぞ

体力が戻(もど)ればアザも暴れ出す

私は何日も眠(ねむ)っていたようだな

夢うつつに あの子の世話に なったのを覚えている

(モロ)お前が一声でも うめき声をあげれば―

かみ殺してやったものを 惜しいことをした

美しい森だ 乙事主(おっことぬし)は まだ動いていないのか

穴(あな)にもどれ 小僧(こぞう) お前には聞こえまい

イノシシどもに食い荒(あ)らされる 森の悲鳴が

(モロ)私は ここで朽(く)ちていく体と 森の悲鳴に耳を傾(かたむ)けながら―

あの女を待っている あいつの頭を かみ砕(くだ)く瞬間(しゅんかん)を夢見ながら

モロ 森と人が争わずに すむ道はないのか

本当に もう止められないのか

人間どもが集まっている

きゃつらの火が じきに ここへ届くだろう

サンをどうする気だ あの子も道連れにするつもりか

いかにも人間らしい 手前勝手な考えだな

(モロ)サンは我が一族の娘(むすめ)だ 森と生き 森が死ぬ時は共に亡(ほろ)びる

あの子を解きはなて あの子は人間だぞ

だまれ 小僧(こぞう)! お前に あの娘(むすめ)の不幸が癒(いや)せるのか

森を侵(おか)した人間が―

我が牙(きば)を逃(のが)れるために 投げてよこした赤子がサンだ

(モロ)人間にもなれず 山犬にもなりきれぬ

(モロ)あわれで みにくい かわいい我が娘(むすめ)だ

お前にサンを救えるか!

わからぬ… だが共に生きることはできる

はははっ どうやって生きるのだ サンと共に人間と戦うというのか

ちがう それでは憎(にく)しみを 増やすだけだ

小僧(こぞう) もうお前にできることは 何もない

お前は じきに アザに食い殺される身だ

夜明けとともに ここを立ち去れ

(足音)

歩けたか?

ありがとう サンとシシ神様のおかげだ

(鳥のさえずり)

ヤックル 心配かけたな

足が すっかり なまってしまった

静かすぎる コダマ達もいない

タタラ場のにおいが かすかに風にまじっている

案内ご苦労 ひとつ頼(たの)みがある

サンに これを渡(わた)してくれ

行こう

(森を走る山犬の息)

(たいこの音楽)

(サン)ひどいにおい 鼻がもげそう

(モロ)ただの煙(けむり)じゃない

(モロ)私達の鼻を きかなくしようとしているのさ

あの女がいる

こっちに気づいている

(モロ)見え透(す)いたワナを はったものだ

ワナ?

イノシシどもをいきり立たせて―

森から おびき出そうと しているのだよ

よほどの仕掛(しか)けがあるのだろう

教えなきゃ イノシシ達は動き始めてる

みんな やられてしまう

乙事主(おっことぬし)とてバカではない

すべてわかっていても―

イノシシ達は 正面から攻撃(こうげき)したいのさ

それがイノシシの誇(ほこ)りだからね

最後の一頭になっても 突進(とっしん)して ふみ破る

木を切りはじめた

(モロ)あれも誘(さそ)いだ

(サン)母さん ここでお別れです

(サン)私 乙事主(おっことぬし)さまの 眼(め)になりに行きます

(サン) あの煙(けむり)に困っているはずだから

(モロ)それでいいよ

お前には あの若者と 生きる道もあるのだが

人間はキライ

(山犬の荒(あら)い息)

アシタカが私に?

きれい

(モロ)お前たちはサンとお行き

(モロ)私はシシ神のそばにいよう

行こう

モロ一族も共(とも)に戦う 乙事主(おっことぬし)さまは どこか?

(イノシシの声)

ありがとう

(遠くの雷鳴(らいめい))

(大爆音(ばくおん))

(石火矢(いしびや)の発射(はっしゃ)音)

タタラ場からだ

(スリリングな音楽)

行こう

何者か?

侍(さむらい)だ

(侍(さむらい))止まれ!

押(お)し通る!

来いやあ!

こりゃあ たまげた

(侍(さむらい))止めたぞ やるのお! (侍(さむらい))くそ!

やめとけ 矢のムダだ

早く 早く!

ほんとだ あの人だよ

幽霊(ゆうれい)じゃないよね

(トキ)アシタカさま!

おトキさんか みんな無事か?

(トキ)見ての通りさ

男達の留守を狙(ねら)って 侍(さむらい)どもが おしよせて来やがった

下は やられちまった

(トキ)女ばかりと甘(あま)く見やがって

エボシ殿(どの)は?

(トキ)動ける男は みんな連れて シシ神退治に行っちまってる

こう囲まれては 知らせようがなくてさ

シシ神退治? やはり さっきの音は…

ダンナ 預かってましたぜ

なんでクラとミノも 持ってこなかったのさ

(甲六(こうろく))だって… (トキ)この役立たず!

甲六(こうろく) ありがとう エボシ殿(どの)を呼びに行く

それまでもつか?

(トキ)いざとなったら溶(と)けた鉄を ぶっかけてやるさ

アシタカさま お願いします

エボシ様に早く!

くっ… はずしたか 船が来ますぞ お早く

エボシ様を頼(たの)みます わたしらも戦いますゆえ

必ずもどる がんばれ!

(トキ)頼(たの)むよ!

出たぞ いけ!

(緊張(きんちょう)感のある音楽)

追手(おって)がかかった 頼(たの)むぞ ヤックル

生きものの焼けるにおいだ

(矢の音) (刺さる音)

(アシタカ)うわあっ…

ヤックル!

(苦しそうな声)

ほいやーっ!

うああああー!

おりゃぁー!

来るな!

ヤックル 傷を見せろ

すまない ここで待っててくれ 必ずもどる

ダメだ 待ってろ

(アシタカ)がんばれ もう少しだ

(唐傘連(からかされん))何者か?

ここは修羅(しゅら)の庭 よそ者は すぐに立ち去れ

この死者たちの世話になった者だ

急ぎ伝えることがある エボシ殿(どの)に会いたい

(唐傘連(からかされん)) エボシは ここにはいない

伝えよう 用向きを話せ

本人に話す エボシ殿(どの)はどこか?

ダンナ! 生きとったんですか?

かしら ムゴイことになったな

(牛飼い) まだ何人も埋(う)まってるんでさ

ひでえなんてもんじゃねえ

タタラ場が侍(さむらい)に襲(おそ)われた

(牛飼いたち)ええっ?

女たちが上の曲輪(くるわ)に立てこもって がんばっている

今なら まだ間に合う

えれえことになった

アサノのやつらだ 留守を狙(ねら)いやがった

エボシ殿(どの)は ここにはいないのか?

(牛飼い) へえ シシ神殺しに森へ…

すぐ呼びもどせ 間に合わなくなるぞ

(唐傘連(からかされん))用向きが済んだなら 即刻(そっこく)立ち去れ みな仕事にもどれ!

おい ほっとく気かよ!

ちょっと待ってくだせえ

やつら タタラ場を 見殺しにする気だぞ

(牛飼い)帰りを待ってたりしちゃ 手おくれになっちまう

(牛飼い)すぐ使いを出せ!

(唐傘連(からかされん))森は広くて深い つかいの出しようがないのだ

(牛飼い)のろしでもなんでも あんたらの得意だろうが

エボシ様は やつらに おどらされてるんだ

攻(せ)めよせたイノシシの中に 山犬はいなかったか?

サン… いや もののけ姫(ひめ)は?

さあ わからねえ 真っ黒になって押(お)し寄せてきたから

(牛飼い)いました… オレ達が一番前にいたから

それで?

わからねえ 突然(とつぜん)なんにも わからなくなっちまって…

(牛飼い)唐傘(からかさ)の奴(やつ)ら オレ達をエサに イノシシをおびき寄せ―

地面ごと吹(ふ)っ飛ばしやがったんでさ 上からも地雷火(じらいか)を投げやがった

(人々の悲鳴)

はっ!

(山犬のうなり声)

サンは どうした?

落ち着け お前を助けたい

ああっ! 山犬だ! 山犬が生きてるぞ

ダンナ 何を?

ダンナ!

(唐傘連(からかされん))どけ 小僧(こぞう) 何をしている

この者に案内を頼(たの)むのだ 私がエボシを呼びに行く

(唐傘連(からかされん))さては魔性(ましょう)の類か?

(別の唐傘連(からかされん))どけっ

シシ神の首とタタラ場と どちらが大切なのだ

毒針だ!

やめろ!

(やじる声)

(人々が集まる声)

みんな力を出せ テコを使え

(男たち)せーやっ せーやっ!

出たぞ! (男たちの驚(おどろ)く声)

みんなは沢(さわ)を下って湖の近くに かくれていてくれ

へい

お気をつけて 石火矢衆(いしびやしゅう)も やつらの仲間です

預かってくれ 最後の矢が折れてしまった

お前は みんなと行きな ヤックルを頼(たの)む

(アシタカ)サンのところへ! そこにエボシもいる

ジバシリどもに遅(おく)れるな 今日こそケリをつけるのだ

(ジバシリ)ジコ坊(ぼう)さま (ジコ坊(ぼう))おう 様子はどうだった

深傷(ふかで)を負った乙事主(おっことぬし)は―

もののけ姫(ひめ)と さらに森の奥(おく)へ 向かっております

やはりシシ神に助けを求める気だ ぴったり張りつけよ

(ジコ坊(ぼう))人と見破られては シシ神は出て来ぬぞ

言われるまでもねえ

やつの顔に塗(ぬ)ったのは イノシシの血か?

ハハハ… ジバシリの技だ おぞましいものよ

がんばって もうじき シシ神様の小池(おいけ)だから

あっ!

うっ…!

何か来る

乙事主(おっことぬし)さま 様子がおかしいの

もうちょっとだから がんばって

(山犬)とてもイヤなものが来る

何だろう 血のにおいで鼻がきかない

(葉がゆれる音)

ショウジョウたち

お前たちのせいだ

お前たちのせいで この森 終わりだ

何を言う 森のために戦った者への これがショウジョウの礼儀(れいぎ)か?

お前たち 破滅(はめつ)つれて来た

生きものでも人間でもないもの つれて来た

生きものでも人間でもないもの?

(ネズミの声)

来た! 森の終わりだ

戦士たちが…

(乙事主(おっことぬし))もどって来た!

あっ…

(乙事主(おっことぬし)) もどって来た ああ ヨミの国から 戦士達が帰って来た

(さけび声)

(乙事主(おっことぬし))続け戦士たち シシ神のもとへ行こう

(サン)乙事主(おっことぬし)さま 落ち着いて 死者は よみがえったりしない

戦士の生皮をかぶって においを消しているんだ

中は人間だ

止まって やつらシシ神様の所へ 案内させる気なんだ ああっ!

(乙事主(おっことぬし))シシ神よ いでよ なんじが森の神なら―

我が一族をよみがえらせ 人間を亡(ほろぼ)ぼせ

乙事主(おっことぬし)さま 心をしずめて

(山犬) 囲まれるぞ そいつはもうダメだ 捨てて行こう

だめ いま見捨てたら タタリ神になってしまう

(サン) お前は母さんに このことを知らせて 人間の狙(ねら)いはシシ神様だ

(サン)母さんが生きていれば 知恵(ちえ)をかしてくれる

お行き! 山犬の血を途絶(とだ)えさせちゃダメ

(サン)いい子

最初の者を殺す 森中に お前たちの正体を知らせてやる

(山犬の遠ぼえ)

アシタカが?

(おたけび)

(サン)おのれ!

(乙事主(おっことぬし)) あついぞ 体が火のようだ

あっ だめ!

(サン)乙事主(おっことぬし)さま タタリ神なんかにならないで

(サン)乙事主(おっことぬし)さま…

こたえた (山犬の遠ぼえ)

(アシタカ)わかるか? (山犬)サンがあぶない

(アシタカ)行こう

(乙事主(おっことぬし)のおたけび)

(スリリングな音楽)

(サン)あつい…

ああ! うっ!

いやだ タタリ神なんかに なりたくない 乙事主(おっことぬし)さま!

(山犬)おそい! 乗れ!

あっ

(男たち)山犬だ! 出た!

エボシ!

(人々)うわっ!

くそっ 先に行け

エボシ 話をきけ!

やめ やめ!

アシタカか?

タタラ場が侍(さむらい)に襲(おそ)われている シシ神殺しをやめて すぐもどれ

(アシタカ)女たちが戦っている

(アシタカ)男たちも山を下った みな そなたの帰りを待っている

その話 信ずる証拠(しょうこ)は?

ない! できるなら タタラ場にとどまり 戦いたかった

シシ神殺しをやめて 侍(さむらい)殺しをやれと言うのか

ちがう 森とタタラ場 双方(そうほう)生きる道はないのか?

あいつ どっちの味方なのだ

エボシ様 戻(もど)りましょう

女たちには できるだけの備えを させてある

自分の身は自分で守れと

(エボシ)池だ シシ神は近いぞ

いよいよ正念場だ 油断するな

(唐傘連(からかされん))あの女 いなくとも

神殺しは怖(こわ)いぞ あいつにやってもらわにゃ

モロ 死んだのか? サン! サン どこだ? サーン!

(アシタカ)サン!

アシタカ!

はっ!

乙事主(おっことぬし)…

(ジバシリ)去れ ワッパ

ここで争うと シシ神は出て来ぬぞ

乙事主(おっことぬし)よ しずまりたまえ

(アシタカ) 乙事主 山犬の姫(ひめ)をかえしてくれ

(アシタカ)サンは どこだ?

サン 聞こえるか 私だ アシタカだ

(乙事主(おっことぬし)のさけび声)

(勢いのある音楽)

(アシタカ)サン!

(ジバシリ)わあ! (唐傘連(からかされん))あいつをしずめろ

(唐傘連(からかされん))殺せ やつを射ころせ

(唐傘連(からかされん)たちのさけび声)

(乙事主(おっことぬし)のさけび声)

(ジバシリたち)うわあ!

サン!

サン!

アシタカ!

うわっ

アシタカ!

(モロ)やれやれ あの女のために 残しておいた最後の力なのに

(唐傘連(からかされん))結界をはれ (人々のさけび声)

(乙事主(おっことぬし)のさけび声)

(モロ) お前たち手出しをするんじゃないよ タタリなんぞ もらうもんじゃない

(乙事主(おっことぬし)のさけび声)

(モロ)もう言葉までなくしたか…

おう よくやった もういいぞ ケガ人の手当てをしてやれ さがれ

いやいや おそろしい眺(なが)めよ

ふむ…

出た

(モロ)私の娘(むすめ)をかえせ

(モロ)アシタカ お前にサンが救えるか?

(アシタカ)シシ神…

(発砲(はっぽう)音)

ああっ!

エボシ 撃(う)つな!

あっ…!

エボシ! そなたの敵は 他にいるはずだ

石火矢(いしびや)が効かぬ

首を飛ばさねばダメか

サン!

死ぬな!

な なんと! シシ神は命を吸いとるのか!

いかん ディダラボッチになるぞ

みな よく見とどけよ

神殺しが いかなるものか

(エボシ)シシ神は死をも司る神だ おびえて遅(おく)れをとるな

(ゴンザ)うおお…

やめろ!

うっ…

エボシ!

くそっ バケモノめ!

(アシタカ)うっ! (サン)ああ!

ああ… ううっ うう!

やった! 首おけを急げ

(男たち)うおーっ

(奇妙(きみょう)な音楽)

ジコ坊(ぼう) 首おけを持って来い

かつぎ手がやられた 早く 早く!

シシ神の体に触(ふ)れるな 命を吸いとられるぞ

受け取れ 約束の首だ!

ああ おっとっと…

(ゴンザ)エボシ様

モロめ 首だけで動きよった

(ジコ坊(ぼう))やばいぞ やばいぞ おい 急げ

(ジコ坊(ぼう))急げって ほら…

(ワラット)ジコ坊(ぼう)さま!

(ジコ坊(ぼう))逃(に)げろ!

(アシタカ)島へ逃(に)げろ

わしは泳げんのだ

(アシタカ)水の底を歩ける

うおっ!

そいつをよこせ 八つ裂(ざ)きにしてやる

モロが かたきを打った もう罰(ばつ)はうけてる

(ゴンザ)エボシ様 (アシタカ)手をかせ

よけいな情けは… うっ!

おトキさんたちに 連れて帰ると約束した

首を探している ここも危ない サン 力をかしてくれ

いやだ お前も人間の味方だ その女を連れて さっさと行っちまえ

サン…

来るな 人間なんか大キライだ

私は人間だ そなたも 人間だ

だまれ! 私は山犬だ

(アシタカ)サン… (サン)寄るな!

すまない 何とか止めようとしたんだが

(サン)もう終わりだ 何もかも 森は死んだ…

まだ終わらない 私たちが生きているのだから

力をかしておくれ

(ふしぎな音楽)

(ジコ坊(ぼう))こら 待て 手伝え!

どいつも こいつも…

(ジコ坊(ぼう))いかん いかん! いかん いかん いかん

首が動いとる

こいつが呼んどるんだ (おびえる声)

(病者の女)取れたよ トキ (トキ)ありがとう

(病者の女)やけに静かだね (トキ)夜明けを待つつもりさ

あの若者はエボシ様に 知らせてくれただろうか

アシタカさまは きっと やってくれるよ

もう その辺に 来てるかもしれないよ

あーあ だらしない顔しちまって おいっ 甲六(こうろく)

今のうちさ 寝(ね)かしといてやりなよ

(遠くからごう音)

何だろう 気味が悪いね (病者の女)ハッ!

ディダラボッチだ

(侍(さむらい)たち)ディダラボッチだ

(トキ) 持ち場をはなれるんじゃないよ

どうしよう こっちへ来るよ

(甲六(こうろく))だめだ 逃(に)げよう

(トキ)タタラ場を守るんだ エボシ様と約束したんだから

あの人だ アシタカさまだ

みんな逃(に)げろ!

シシ神が首を取りもどそうと 追って来たんだ

(アシタカ) あのドロドロに触(さわ)ると死ぬぞ

(アシタカ)水の中へ行け ドロドロが遅(おそ)くなる

男たちとエボシは 対岸をこっちへ向かっている

私たちは首を取りもどして シシ神に返す

(サン)アシタカ! (アシタカ)急げ!

(女たち)来るよ どうしよう (甲六(こうろく))来るぞー

どうしよう トキ

騒(さわ)ぐんじゃない!

(トキ)みんなを湖へ (女たち)はい

落ち着いて ケガ人や病人に手をかすんだよ

(トキ)そっちへ行っちゃダメだ

ああ… 大屋根が…

もうダメだ

タタラ場が燃えちまったら 何もかも おしまいだ

生きてりゃ何とかなる もっと深いとこへ 早く

いた あそこ

お行き

(アシタカ)その首 待て!

おお おぬしも生きとったか よかった

首をシシ神に返します 置いて早く逃(に)げなさい

バカを言うな 今さら取り返しはつかん

陽が出れば すべて終わる

(ジコ坊(ぼう)) 見ろ 命を吸って ふくらみすぎた のろまな死神だ

陽に当たれば やつは消えちまう

ジコ坊(ぼう)さま 追いつかれます はやく!

なあ 天地(あまつち)の間にある すべてのものを欲するは―

人の業というものだ

あなたを殺したくはない

へへ いやあ まいったな そう怖(こわ)い顔を…

(ジコ坊(ぼう))するな! (アシタカ)うっ…

きえーっ!

走れ!

(唐傘連(からかされん))うわっ

(唐傘連(からかされん))ダメだぁ (サン)あっ…

アシタカ

おうっ ああーっ…

あ いかん!

囲まれた

朝陽(あさひ)よ いでよ

(アシタカ)おけを開けろ

わからんやつだな もう手遅(ておく)れだ

アシタカ 人間に話したって無駄(むだ)だ

人の手で返したい

(ジコ坊(ぼう))どうなっても知らんぞ うわあ!

シシ神よ 首をお返しする

(アシタカ)鎮(しず)まりたまえ!

来おる 来おる 来おるぞ!

(壮大(そうだい)な音楽)

動かなくなったぞ

(女)男たちだ (人々)ええ?

(男たち)おーい! おーい!

(トキ)エボシ様

(ゴンザ) ええい さわぐな 傷にさわる

(男)ああっ 倒(たお)れる! 倒(たお)れる!

(人々)つかまれ 離(はな)すな

(ピアノの優しい音楽)

すげえ シシ神は 花咲(さ)かじじいだったんだ

サン 見てごらん

よみがえっても ここはもう シシ神の森じゃない

シシ神様は死んでしまった

シシ神は死にはしないよ

命そのものだから 生と死と 二つとも持っているもの

私に生きろと言ってくれた

アシタカは好きだ でも人間を許すことはできない

それでもいい サンは森で 私はタタラ場で暮らそう

共に生きよう 会いに行くよ ヤックルに乗って

ざまあない 私が山犬の背で運ばれ 生き残ってしまった

礼を言おう だれかアシタカを 迎(むか)えに行っておくれ

みんな初めから やり直しだ ここをいい村にしよう

いやあ まいった まいった バカには勝てん

(カタカタという音)

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