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⟨文学オタクのバーのママと 夫に浮気された主婦が→
運命的な出会いを果たす⟩
(貴和子) カズトは亡くなりました。
(ルナ) 最期に読んでいたのが この作品です。
⟨大阪旅を通して 元カレ・カズトの→
優しいウソを知った涼子⟩
⟨だが ルナには 涼子に隠してきた秘密が…⟩
⟨「月夜行路」 早くもクライマックス⟩
(菊雄) 涼子。
(涼子) えっ 菊雄さん!?
どうして…。
(菊雄) 迎えに来た。
彼女から聞いて。
(涼子) えっ?
重原壮助先生 僕が担当してる作家さんだ。
(涼子) 重原って…。
(ルナ) 今まで黙っていて ごめんなさい。
私が重原壮助であることは→
ごく数人の出版関係者しか 知りません。
「重原」は 母の実家がある 愛知県の地名。
「壮助」は 字は違いますが→
戸籍を変える前の名前です。
受賞してから15年間→
ずっと このペンネームで 作家活動を続けてきました。
ここのところスランプで 次の作品の題材が思い浮かばず→
長年 担当してくれてる 沢辻さんに相談してました。
沢辻さんは 私の急な呼び出しにも応じて→
アイデアを出してくれましたが→
自分の中から 湧き出るものでないと→
意味がないのではと思い 壁にぶつかっていました。
浮気を疑わせてしまったのは 本当に申し訳なかったです。
沢辻さんは とにかく仕事一筋の 真面目な方です。
涼子さんがお店に来た夜→
沢辻さんを呼び出したのは私です。
📱〔今日は お店に出てるから 今すぐ来てください〕
〔重原先生から呼び出し〕 (涼子) 〔えっ 今から?〕
(ルナ) 喫茶店で話をした後 お店に戻ったら→
ちょうど 涼子さんがいらしてました。
〔はじめまして ルナと申します〕
(涼子) じゃあ あの名刺の明奈って人は?
(ルナ) シャッフルの明奈さんは 半年ほど前→
沢辻さんが あのお店を 接待で使いたいとのことで→
ご紹介しただけです。
接待の後 お礼の電話を 1回かけたきりだ。
(ルナ) 涼子さんが マーキームーンに来た時→
沢辻さんの奥様だと ピンときました。
でも 自分は身分を伏せてますので→
沢辻さんとの関係を 言えませんでした。
あの夜→
先生から電話があったんだ。 📱〔振動音〕
〔もしもし?〕
📱〔今 奥様の涼子さんが (ルナ) お店に来てる〕
〔えっ?〕
(ルナ) 〔私 彼女と 旅に出ることにしたから〕
〔はぁ?〕
(ルナ) 〔取材旅行〕
〔書きたいものが 見つかりそうなの〕
〔いや 急にそんなこと言われても〕
〔えっ 妻は何て言ってるの?〕
(ルナ) 〔まだ詳しい話はしてない〕
〔だけど 彼女にだって お休みは必要〕
〔そう思わない?〕 📱〔いや 休みって…〕
(ルナ) 〔この旅は 彼女にとっても 意義のあるものになるはず〕
〔悪いようにはしないから 私に任せてくれない?〕
(涼子) つまり私は 2人にだまされてたってこと?
(ルナ) 沢辻さんは悪くないです。
旅の間は涼子さんに連絡しないで ほしいと頼んだのは私なので。
いや 僕も悪い。
涼子のフォローを 一切しなかったのは→
やっぱり まずかったと思う。
ごめんなさい。
(涼子) フゥ…。
ハァ…。
もういいよ。
ママの言う通り とっても意義のある旅だったから。
(ルナ) 涼子さん…。
(涼子) ママ 小説は書けそうなの?
(ルナ) はい 実は旅をしながら 執筆していました。
今朝 初稿を沢辻さんに送りました。
(涼子) よかった。
菊雄さん。
迎えに来てくれて ありがとう。
まぁ… せめてそれぐらいは。
あぁ…。
(ルナ) では お二人は 先に帰っていてください。
私は少し寄る所があるので。
(涼子) え? また文学スポット?
(ルナ) 正解です。
川端康成文学館 ず~っと行ってみたかったんです。
先生も川端康成 好きだもんな 文学館 すごくいいよ。
(ルナ) はい 楽しみです。
それじゃ。 (涼子) ママ またね。
(ルナ) さよなら。
東京着いたら 飯食べてかない? たまには2人で。
(涼子) うん 行こっか。
⟨後から気付いた⟩
⟨あの時 ママは 「またね」ではなく→
「さよなら」と言ったのだ⟩
(涼子) あぁ おいしかった。
ここに来たの20年ぶりぐらい?
いや 結婚してからは 来てないはずだから→
21年ぶりか。 (涼子) ハァ もうそんななるか。
これ 遅くなったけど 誕生日おめでとう。
(涼子) えっ? 覚えてくれてたの?
言い訳になっちゃうんだけど 篤史が生まれた頃→
「誕生日どうする?」 って聞いたら→
「そういうのはもういい」 って言われて。
(涼子) 私が言ったの? ハァ… 覚えてない。
重原先生に こっぴどく叱られた。
そんなの真に受けるヤツが あるかって。
ごめんなさい。
(涼子) あぁ ううん。
もちろん。
(涼子) えっ これってすごく高いよね?
17年分だから。
いや 悩んだんだけど アクセサリーよりも時計かなって。
何ていうか… これからも 一緒に時を重ねたいっていうか。
(涼子) ありがとう。
うれしい。
大事にするね。
ハハ…。 (涼子) ハハっ。
ママにお礼言わなきゃ。
ママ…。
重原先生は 今回の旅で どんな小説 書いたの?
あ~ 女性バディが大阪旅行中→
文学にゆかりのある場所で 事件に遭遇して→
解決する話かな。
(涼子) 何で舞台が大阪なのか 理由は聞いた?
まぁ… 小説を読んだら 何となくは。
(涼子) 話 聞いてくれる?
うん。
(涼子) ⟨カズトのこと 大阪で知った真実 全部 話した⟩
⟨夫は全て受け止めてくれた⟩
♪~
(涼子) 長いこと留守にして 心配かけて ごめんなさい。
(春子) 聞いたわよ。
(春子) 作家さんの取材旅行に 同行してたって?
(芳香) それならそうと 最初から言えばいいじゃん。
(篤史) マジそれ。 (涼子) ホントごめん。
(菊雄) いや お父さんが もっと 早くに説明するべきだった。
ごめん。
よかった~。
これで安心して埼玉に帰れるわ。
(涼子) お母さん ホントにありがとう。
タルト買ってきたから みんなで食べよう。
ヤバ~ キルフェボンじゃ~ん。 (篤史) えっ 何味?
(春子) お茶入れるわね。 (芳香) 牛乳がいい。
(引き出しを開ける音)
(涼子) ⟨カズトの優しいウソのおかげで 今の幸せに出会えた⟩
⟨これからは 毎日を大切に生きよう⟩
(涼子の声) 「先ほど無事帰宅しました。
いろいろありがとう」。
(涼子) ⟨数日たっても ママから 返事が来ることはなかった⟩
ハァ… 忙しいのかな。 (階段を下りる音)
(篤史) お父さん 今日も遅いの? (涼子) ん? どうした?
ちょっと相談 宿題のことで。
(涼子) へぇ~ 珍しい 何の宿題?
読書感想文。
何読めばいいか分かんねえ。
(涼子) ハッ。
じゃあ 文学に詳しい人に 聞いてきてあげよっか?
(バブリー) 涼子さん。 (涼子) バブリーちゃん お久しぶり!
どうしたの?
(バブリー) ママがいなくなっちゃった。
(涼子) えっ?
(バブリーの声) 戻ってきた時は 特に変わりなかったの。
元気そうだったし。
(ルナ) 〔ただいま お店 任せっきりに しちゃって ごめんね〕
〔大阪どうだった?〕 (ルナ) 〔うん 行ってよかった〕
〔ありがとう〕 ☏〔着信音〕
〔はい マーキームーンでございます〕
☏(男) 〔今日 ママは来てますか?〕
〔えっと… どちら様ですか?〕
☏〔通話が切れた音〕
(バブリーの声) その後も 何度も無言電話がかかってきて。
(客) 〔また来るね おやすみ〕 (ルナ) 〔ありがとうございました〕
♪~
(ルナ) 〔あっ バブリーちゃん→
あした リフォーム業者との打ち合わせ 立ち会ってくれる?〕
〔もちろん〕 (ルナ) 〔17時からお願いね〕
(バブリーの声) でも翌日 ママは来なかった。
(涼子) どうしたんだろう…。
もしかして 何か変なことに 巻き込まれたんじゃ。
(涼子) まさか…。
(菊雄) あ~ そういえば 全然 返信来ないなぁ。
打ち合わせの日程 打診してるんだけど。
(涼子) じゃあ 菊雄さんも連絡取れてないの?
う~ん まぁ 普段から割と そういうところあるんだけどね。
こんなに連絡ないの 珍しいかもしれない。
(ルナ) 〔さよなら〕
(涼子) ハァ…。 (モニタ) ここからはゲストを…。
あっ 七海さつき出てるよ。 (モニタ) バドミントン元日本代表の→
七海さつきさんに 来ていただきました。
(芳香) お母さん バドやってたの 知らなかったんだけど。
しかもオリンピックの強化選手って ガチのやつじゃん。
(涼子) 昔の話。
けど 七海さつきと友達とか すごくない?
(涼子) もう友達ではないかな 連絡取ってないし。
はい できたよ~。
(芳香) え~ オリンピック目指したペアでも→
そんなふうになっちゃうんだ。
私は今の親友と 一生 友達でいたいけどな~。
(涼子) そうだね。
(モニタ)(キャスター) 人気インフルエンサーの 片寄ユリアさんが→
ファンの男から襲われ 負傷した事件の続報です。
(芳香) これ マジ怖い。
ヤバいのに目つけられたら 詰むよな。
(モニタ) 度重なる無言電話に 悩まされており…。
〔何度も無言電話が かかってきて〕
(モニタ) さて あさって3月3日は 皆既月食です。
(芳香) 皆既月食って結局 何なの?
📱(振動音) (芳香) ってか皆既って何?
(篤史) だから説明聞けって。
(バブリーの声) 「ママから連絡きた? 私 不安で不安で…」。
(ドアが開く音) 涼子さん!
警察に届けた方がいいかしら?
(涼子) う~ん…。
まずは ママの友達にも 聞いてみたらどうかな?
友達…。
(バブリー) \私 あんまり ママのプライベート知らなくて/
(田村) 失礼します~ あっ。
(涼子) あっ! 友達!
(田村) ん?
(涼子) 東京に異動… 刑事さんでもそんなことあるんだ。
(田村) 正確には研修ですけどね。
4月から2年間 警視庁のお世話になります。
ママの件 どう思います?
(田村) 事件性については まだ判断しかねますが。
(涼子) 田村さんも 連絡取れてないんだよね?
(田村) 1回 留守電 入れたきりなんで 何とも言えませんけど。
ママってさ 目が大きくてキレイじゃない?
(涼子) うん。
昔 読んだ小説で ストーカーの男が→
女性の黒い目の中の湖を 裸で泳ぎたいっていうのがあって。
あ~ キモい! どうしよう! ママが変なのに目つけられてたら。
(涼子) ちょっとバブリーちゃん 落ち着いて。
(メグル) おはようございま~す! (バブリー) あっ メグルちゃん。
あの 今そこで変な男が ウロウロしてたんですけど。
(バブリー) あっ! 今の!
うろついてた男!
いた! 待ちなさいよ!
(田村) おい!
(田村) 待て!
あぁ…!
(田村) 何で逃げた?
いや… その…。
(田村) あの店に何の用だ?
(男) ど… どうやったら あの店の客になれますか?
(涼子) つまり 前から ここが気になってたけど→
入る勇気がなくて ウロウロしてたってこと?
(桜井) キレイなママもいるし ずっと気になってたんです。
でも こういう所って いちげんの客はダメなのかなって。
うちは誰でもウエルカムよ。
ママがいつも言ってるの。
常連だけで盛り上がるのはダメ。
初めてのお客さまも 楽しめるお店にしましょうって。
(田村) ふ~ん ノッピーらしいな。
(桜井) 何度も無言電話 かけちゃって すいませんでした。
次からは堂々とお店に来ます。
はい!
またね。
(ドアが閉まる音) (涼子) ストーカー説は消えたってことか。
でも 何でリフォームの打ち合わせを すっぽかしたのか…。
(メグル) えっ ヤバ!
何がヤバいの?
ママからの伝言 伝えるの忘れてました。
打ち合わせは バブリーさんに任せるって。
はぁ!? 何でそんな大事なこと 言わないのよ!
ちょっと!
(涼子) バブリーちゃん ママのこと ホントに大好きなんだね。
そりゃあね 恩人だし。
そう。
私 悪い人間にだまされて 借金 背負わされてたの。
でも ママが助けに来てくれた。
(男) 〔逃げられねえからな コラ!〕 〔さっさと返せ オラ!〕
(ルナ) 〔耳そろえてお返しします〕
〔これで文句ありませんよね?〕
(男) 〔行くぞ〕
〔あんた バカなの?〕
〔助けてくれなんて言ってない〕
(ルナ) 〔確かに 頼まれてはないね〕
〔別に死んだってよかったのよ〕
〔私みたいなクズ 生きてる意味ないし〕
(ルナ) 〔ん~ まず クズではないし 生きてる意味もあると思う〕
〔え?〕
(ルナ) 〔だって あなた 面白いもん〕
〔面白い?〕
(ルナ) 〔あっ でもお金は 貸しただけだから必ず返してね〕
〔何年かかってもいいから〕
〔私 裏切るかもよ?〕
(ルナ) 〔その時は その時〕
〔でも あなたは そんなことしない〕
人に信じてもらえるのって→
こんなに うれしいことなんだって思った。
(田村) ノッピー ああ見えて情が深いんですよね。
(涼子) うん。
(田村) ただ 自分のことは ほとんど話さない。
修学旅行の時 みんなでテレビを見ていたら→
トランスジェンダーの 人気タレントが出てきたんです。
ちょっと…〕
〔こういうのが周りにいなくて よかったわ~〕
〔そうそういねえだろ まぁ でも楽しそうでいいじゃん〕
〔いや~ 俺は無理〕 (同級生) 〔たかし君…〕
(田村の声) 無理って言ったのは ノッピーと仲のいいヤツでした。
その日の夜 ノッピーの姿が見えなくなって。
〔おい 何してんだ!〕
(田村の声) 振り返ったあいつは言いました。
「月を見ていただけ」だって。
無理して笑ってる顔を見たら 何も言えなくなりました。
(田村の声) ルナって名前に なったのを知った時→
あの夜のことを思い出しました。
一人で抱えるヤツだから→
涼子さんみたいな人がいて よかったって思ってました。
でも…。
(涼子) でも?
(田村) 実は あいつが大阪をたつ時 2人で飯食ったんです。
(ルナ) 〔あっ もう部屋決まったの?〕
(田村) 〔うん 来週 契約に行く〕
〔あっ また東京で飯でも食おうよ 涼子さんも…〕
〔湯飲み茶わんを置く音〕
(ルナ) 〔ん~ 涼子さんには もう会わないと思う〕
(涼子) えっ…。 (田村) だから てっきり→
ケンカでもしてんのかと 思ってました。
(涼子) してないよ そんなの全然ない。
ハァ…。
そっか ただの取材対象か…。
(ルナ) 〔「卍」です〕
〔ピンぼけで読めない!〕
〔とっても似合います〕 (涼子) 〔アハっ〕
(ルナ) 〔お誕生日 おめでとうございます!〕
(ルナ) 〔涼子さんは そのままで… そのままがいいです〕
(田村) え?
(涼子) あぁ ううん。
ママにとって私は その程度の 存在だったってことだね。
ハァ…。
(バブリー) 涼子さん そんなことないよ。
ママ言ってたの。
(バブリーの声) 涼子さんは私の夢だって。
これ 私がうっかりして 小さな傷 つけちゃったの。
お店では使えないから 持って帰っていいって→
ママに言われたんだけど 涼子さんにあげる。
(涼子) 私がママの夢?
(菊雄) ただいま。
何? そのグラス。
(涼子) ママが大阪で買ったの。
グラスとか絵とか彫刻とか→
リフォームや予約アプリの契約も。
お店に必要なもの 買いまくってたんだよね。
すごいなぁ。
取材旅行っていうより 爆買い旅行だ。
交通費やホテル代は うちが経費で切ってんだけどな。
(涼子) えっ?
このグラス オシャレだなぁ。
(涼子) ダーリンって…。
(ルナ) 〔ではダーリンに ホテルを取ってもらいますね〕
〔あっ 旅費はダーリンに お願いするのでご心配なく〕
(涼子) 〔この費用もダーリン持ちなの?〕 (ルナ) 〔どうでしょう?〕
(涼子) 菊雄さんが ママのダーリン?
(ルナ) 〔万年筆がない〕
〔あぁ ダーリンからもらった 大事なものなのに〕
(涼子) 〔ママのダーリンが 万年筆くれたのってさ→
応援してくれてるってこと?〕
(ルナ) 〔ダーリンは 一番の理解者です〕
(涼子) 〔もう長いの?〕
(ルナ) 〔そうですね かなり〕
(涼子) 〔何かいいな~〕
📱(振動音)
あっ 重原先生からだ。 (涼子) えっ?
やっと来たか~。
「最終章の月の描写を変更したい。
打ち合わせは もう少し待ってください」。
ん? 満月じゃないのか。
(涼子) 何それ。
今回の作品は 各章のラストに→
主人公が月の満ち欠けを見て 思いを巡らせる場面があるんだよ。
最終章は満月で終わるって 言ってたんだけどな。
あっ これ まだ内緒の話ね。
(起動する音)
(クリックする音)
(涼子) あっ これだ。
(クリックする音)
(涼子) ⟨重原壮助の新作⟩
⟨長年の恋に決着をつけるため 大阪旅行に出かけた主人公が→
文学ゆかりの場所で遭遇した 事件を解決していく物語⟩
⟨初めは 私とカズトの話かと思っていた⟩
⟨でも違う⟩
⟨これは ママ自身の物語だった⟩
〔はい〕
〔万年筆〕
〔執筆するのはパソコンでも 作家なら ちゃんとしたペン→
一つは持っといた方が いいと思って〕
♪~
(菊雄の声) 「大丈夫 きっとうまくいく」。
「ご両親には伝えたの?」。
(菊雄の声) 「そうか いつか 向き合える日がくるといいな」。
〔ドアが開く音〕
〔開店おめでとう いよいよだね〕
〔作家とママ 二足のわらじ頑張って〕
(ルナ) 〔ありがとう〕
〔いい店だなぁ〕
〔「マーキー」ってあれだよね?〕
〔アメリカの古い映画館とか 劇場の表にある→
大きな光ってる看板〕 (ルナ) 〔そう〕
〔誰もが主役ってことを 思い出してほしくて〕
〔主役?〕
(ルナ) 〔生きるって その人自身の物語を紡ぐこと〕
〔人生は物語で 誰もが主人公〕
〔でも そう思えないことって たくさんあって〕
〔大切にしてもらえなかったり 理不尽に扱われたり〕
〔私もそうだった〕
〔自分の存在を否定されて どこにも居場所がなかった〕
〔マーキーには 演目のタイトルや→
主演の名前が 表示されてるでしょ?〕
〔古い洋画で見たことがあるの〕
〔ノスタルジックな 映画館の正面に→
輝く看板が夜の街を照らしてた〕
〔月もそう〕
〔どんなに旅路が暗くても→
月は雲の向こうで光を放ち続けて また人を照らしてくれる〕
〔どちらも人生の スポットライト〕
〔わぁ…〕
(ルナ) 〔マーキーに煌々ときらめくのは 自分の名前〕
〔私の店に来てくれる人には→
自分こそが主人公なんだ ってことを思い出して→
輝いてほしい〕
〔そう思ったの〕
〔いいね すごくいい!〕
(菊雄) 〔う~ん…〕
(ルナ) 〔世間が求める 重原壮助らしさって→
こういうことでしょ?〕
〔いや そうなんだけどさ ホントに このままでいいの?〕
(ルナ) 〔え?〕
〔僕は 君の中から 湧き上がってくるものを→
書いてほしいけどね〕
📱〔振動音〕 〔あっ ちょっとごめん〕
〔うん あ~ ごめん ごめん〕
〔うん 今 打ち合わせ中〕
〔夕飯はいいや うん〕
(涼子の声) 「彼と どうこう なりたいわけじゃない。
ちゃんと終わらせたい。
ずっとそう思い続けてきた」。
(ルナの声) 「姫は お休みになりました」。
(菊雄の声) 「世話をかけて申し訳ない 家内をよろしく」。
(涼子の声) 「このまま東京に戻っても また同じことの繰り返しだ」。
♪~
📱(振動音)
(涼子) ハッ! 📱(振動音)
📱(振動音)
(涼子) もしもし ママ!?
(涼子) もしもし ママ!?
📱 田村氏から (ルナ) 留守電が入っていました。
📱 涼子さんに心配をかけるなと 叱られました。
📱 あの人 どの立場から 言ってるんでしょうね。
(涼子) ねぇ ママ 今どこに?
(ルナ) 無事ですので ご心配なく では。
📱 待って!
(涼子) 私 もうママには会えないの?
(ルナ) 会えると思いますか?
私は あなたを だましていたんですよ。
(涼子) ママの新作 勝手に読んじゃった。
(ルナ) 涼子さんを旅に連れ出したのは 取材のためだけじゃない。
沢辻さんの奥様が どんな人か知りたかったから。
📱 何不自由ない家庭の主婦が→
(ルナ) 薄い根拠で夫の浮気を疑って 昔の恋人に焦がれている。
正直 最初は 「何なの この人」って思いました。
📱 もし あなたが不誠実な人ならば→
沢辻さんは あなたと離れるべきだと思った。
📱 でも…。
涼子さんは いい人でした。
(ルナの声) 善良で純粋で→
何より ちゃんと家族を愛してた。
それが分かったので もう気が済みました。
(涼子) 私には もう用はない?
(ルナ) そうです。
お元気で。
♪~
(田村) そっか…。
(涼子) もう会うつもりはないって 駄目押しされちゃった。
(田村) まぁ 少し時間置くのも 一つの方法と思いますけどね。
ホントに その人と縁があるなら いつか必ず またつながる。
俺は そう思ってるんで。
寂しいですね… 相棒いなく なっちゃうんですって?
(小湊) いやいや 俺 全然平気よ。
寂しがってんのは あっちでしょ。
実はさ 俺も考え中なんだよね 第二の人生。
(自動ドアが開く音) あっ!
(涼子) 田村さん いろいろありがとう。
(田村) それじゃ。
📱(振動音)
(田村) はい お疲れさまです。
えっ?
涼子さん!
ノッピー 大阪にいるみたいです。
今 小湊さんが あいつに会ったって。
(涼子) えっ あっ… ちょっといい?
もしもし 小湊さん? ママ 何か言ってました?
何か 回りそびれた 文学スポットがあるから→
もっかい来たって。
(涼子) どこですか?
あ~ 分かんないけど。
ちんちん電車の乗り方は 聞かれたな。
(涼子) ちんちん電車?
(田村) あ~ えっと阪堺電車です 大阪の路面電車。
(涼子) ママ どんな様子でした?
かすうどん うまそうに食べてましたよ。
(涼子) ちんちん電車の駅って こんなにあるんだ。
(モニタ)(キャスター) 明日は どうか晴れてほしいですよね。
(モニタ) というのも 明日3月3日は いよいよ皆既月食です。
(モニタ) 日本全国で 見られるそうですよ。
(モニタ) 気になるお天気を 見てみましょう。
(涼子) どうしたの?
(篤史) 読書感想文 お父さんのお薦めの本。
書斎から持ってっていい って言うから。
(涼子) あ~ 「雪国」。
お父さんが 一番好きな作家なんだって。
(涼子) 川端康成…。
〔先生も川端康成 好きだもんな〕
♪~
(涼子) ママが行きたい文学スポット。
あっ 「日も月も」。
「月下の門」。
「白い満月」。
あっ 「月」。
♪~
(鳥の鳴き声)
(涼子) ハッ…。
最終章の満月…。
〔「月の描写を変更したい」〕
〔満月で終わるって 言ってたんだけどな〕
(涼子) 川端康成…。
(篤史) 〔お父さんのお薦めの本〕 〔先生も川端康成 好きだもんな〕
(涼子) ちんちん電車…。
(小湊) 〔回りそびれた 文学スポットがあるから→
もっかい来たって〕
(涼子) 3月3日…。
(モニタ)〔いよいよ皆既月食です〕
(ルナ) 〔涼子さんには→
自分の選択を愛せる人生を 送ってほしいです〕
(涼子) つながった。
あぁ 何だ ここにいたんだ。
何してんの?
(涼子) ねぇ 文学ってすごいね。
いろんなこと教えてくれる。
(涼子) 菊雄さん 私 大阪に行ってくる。
♪~
(涼子) あっ すいません。
あの ちんちん電車の乗り場って 分かりますか?
あ~ 阪堺電車ね あそこ下りて すぐですよ。
(涼子) あそこ… ありがとうございます。
(涼子) ハッ。
(涼子) ハァ ハァ ハァ…。
(涼子) ⟨ママはキレイだった 怖いぐらいに⟩
(涼子) ハァ ハァ ハァ…。
(ルナ) どうして ここが?
(涼子) つながったから。
ママが わざわざ もう一度 大阪に戻ってまで→
行きたかった文学スポットは→
きっと新作の最終章に関係してる。
菊雄さんが言ってた。
重原先生は 月の描写を変更するらしいって。
ということは 月に関する場所。
ひょっとしたら それは ママが好きだと言ってた→
川端康成の小説に 関係してるんじゃないかって。
調べたら この反橋に行き着いた。
川端康成の 小説のタイトルにもなった→
大阪で有名な月のスポット。
しかも今日3月3日は 月食。
月が好きな人にとっては 特別な日。
だからママは今夜 ここに来るんじゃないかって。
(ルナ) お見事です。
けど どうして わざわざ?
(涼子) 戦後間もなく発表された 川端康成の短編→
「反橋」と 「しぐれ」 「住吉」の3部作。
その22年後に書かれた「隅田川」。
この4つの作品は 全て同じ書き出しで始まってた。
「あなたは どこにおいでなのでしょうか」。
つまり 会いたかったから。
(ルナ) 文学マニアみたい。
(涼子) 恐れ入ります。
(ルナ) この反橋は 渡ると心が浄化されるという→
言い伝えがあるそうです。
だからもう→
手放すべきものは 全部流してしまおうと思って。
(涼子) 月 もうすぐ隠れるね。
(ルナ) 月食は リセットと再生の象徴だと いわれています。
♪~
(ルナ) 川端康成先生は→
ノーベル賞を受賞した時の 講演会で→
こう言ったそうです。
「雪月花の時 最も友を思う」。
(涼子) どういう意味?
(ルナ) 雪や月 花。
美しいものを見た時 人は友を思い出し→
その美しさに出会えた幸せを 共有したいと願う。
(ルナ) この間 私 ウソついた。
ホントは…。
涼子の友達になりたい。
(涼子) とっくに友達のつもりだけど。
♪~
(車が近づく音)
(涼子) あ~ この車!
(ルナ) これで東京に戻りましょう。
(涼子) いいね! ちなみに これって経費?
(ルナ) もちろん。 (涼子) フフっ。
♪~
(涼子) ⟨東京に着いたら 日常が待っている⟩
⟨でも 引き返すんじゃない⟩
⟨新しい旅に出るんだ ママも私も⟩
(涼子の声) 「ママと一緒に これから東京に戻ります」。
(田村) よかった。
📱(振動音)
(田村) もしもし?
📱(光子) こっち戻ってるんでしょ?
📱 野宮病院の院長先生の話は 聞いた?
(キーボードを打つ音)
♪~
(ルナ) ⟨涼子 私の大切な友達⟩
⟨この先は 楽しいことだけ 起きればいいと願った⟩
⟨でも神様は まだまだ私たちに→
試練を与え続けるつもりらしい⟩
♪~
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