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(ルーデウス)未来…。
(ルーデウス)未来の俺… ってことか?
(老ルーデウス)そう。 俺は今から だいたい50年後の お前だ。
いきなり そんなこと言われて 信じられるはずないだろう。
俺は お前の かつての名前を知っていた。
信じる理由は それだけじゃ足りないか?
この世界には魔術ってもんがある。
記憶ぐらい読めても 不思議じゃない。
魔術で人の記憶が読めるなら➨
タイムスリップがあっても おかしくはないだろう?
悪いが お前に➨
過去転移魔術の理論を 説明している暇はない。
ハリウッド映画みたいな言葉で悪いが 本当に時間がない。 聞いてくれ。
ハリウッド映画って…。
本当に 俺なのか?
けど…。
地下室には何もない。 あっ…。
俺は地下室に行って 何もないと思った。
そして後日 ヒトガミから➨
「何もなかったんなら いいよ」➨
という言葉を聞いて 安心することになる。
でも それは間違いだ。
間違い? 地下室に行って数週間後➨
ロキシーが死ぬ。
は…?
あっ…。
ロキシーが死ぬ?
なんで地下室に行くだけで そうなるんだよ!?
まぁそう思うよな。 いいか 落ち着いて聞け。
たぶんだが 地下室にはネズミがいる。
病気になったネズミだ。
ネズミは地下室の扉を開けたお前に 驚き 逃げる。 台所へとな。
そして 昨日の飯の 食い残しをあさる。
その食い残しは 翌日にはアイシャの手で➨
野良猫に分け与えられ なくなる。
だがその前に 小腹のすいたロキシーが その食い残しを少しつまむ。
その結果 ネズミの持っていた病気に感染する。
病気? 魔石病だ。
体が しだいに魔石と化していき やがて死に至るという難病だ。
最初は気付かない。
何せ 人間は魔石病には めったにかからないからな。
あの病原菌は体の中に宿る もう一つの生命にしか感染しない。
もう一つの生命…?
ハッ! まさか…。
胎児だ。 あっ…。
いや でも ロキシーはまだ…。 妊娠してるはずだ。
けど それはいい やることやってんだ 当然だろ。
魔石病は ネズミをキャリアにしている。
歯が紫色の結晶になっているから 一目でわかる。
感染経路は経口感染のみ。
病原菌は胎児を作り替えて 母体ごと魔石化させる。
そんな病気に ロキシーがかかるってのか?
これから 何も考えずに地下室に行けば➨
数日以内に ロキシーは熱を出す。
そして…。
死ぬ。 ハァッ…!
治らなかったのか? 治そうとはしたんだろ?
俺は なんとか助けようと ミリス神聖国まで行き➨
神級解毒魔術の詠唱を 手に入れることに成功した。
だが 帰ってきたときには➨
すでに遅かった…。 そんな…。
んっ…。 ハッ!
それから一連の出来事が つながるのは 更に30年後。
ヒトガミの言葉からだ。
ヤツの言葉に惑わされるな。
前世の知識がある お前なら そのくらいわかるだろう。
ヤツこそが諸悪の根源 ラスボスだ。
でも なんでその… ロキシーを?
わからない いまだにな。
だが 目的があったのは確かだ。
ヤツが 最後にこう言ったんだ。
「君がバカなおかげで➨
僕の思いどおりに事が進んだよ」 ってな。 クソッ…。
ヒトガミが そんなことを…。 ヤツの目的については➨
もしかすると オルステッドあたりなら➨
何か知っているのかも しれないが…。
俺は 50年間会えなかった。 あっ!
ナナホシは オルステッドの居場所を 知らなかったのか?
ナナホシは どうなったんだ?
最後の最後で 実験に失敗するんだ。
それで 落ち込んで。
俺は フォローに失敗して… それで…。
わかった。 もう いい…。
ああ 俺も言いたくない。
ハァ…。
いいか お前も知ることになるが➨
ヒトガミは もともと そう呼ばれていない。
どういう意味だ?
「ジンシン」。 かつてヤツは そう呼ばれていたらしい。
だが今は ヒトガミを名乗っている。
なぜそんなことを? 知るか。
どうせ ろくでもない理由に 決まってる。
ヤツは一見すると➨
俺のためになるようなこと ばかりを口にしてきた。
確かに 今この瞬間まで ウソはついてこなかった。
俺にわかるようなウソはな。
それもこれも この一回のため➨
うたぐり深いお前が なんのためらいもなく従う➨
この瞬間のためにだ…!
あっ! だまされるな!
漫画で読んだだろ?
信じる 信じないを口にするヤツは 必ずウソをつくんだ。
そりゃ わかるけど…。
わかっていない!
ロキシーの次は 次は…。
シルフィだぞ!
ハァ… ハァ…。
ロキシーを失って傷心のお前は➨
シルフィのことが しばらく考えられなくなる。
シルフィは傷つき鬱になり➨
そこにヒトガミが ルークを操って付け入る。 ルークを?
ルークが アリエルに進言し➨
シルフィは俺を捨てて アスラ王国に行ってしまう。
ペルギウスの取り込みに失敗した アリエルと共にだ!
アリエルは内乱を起こし… そして敗北する。
シルフィは 戦死だ。
死ぬ? シルフィが?
お前はあの2人を 失うんだよ…!
あぁ 種明かしのときのヤツの声が 今でも耳に残っている。
「お疲れさん」と 肩を叩かれたときの感触が➨
甲高い笑い声が…。
グッソ…! ぢくしょ~!
ハァ ハァ もう一度言う。
ヤツを信用するな。 後悔することになるぞ。 グッ…。
クククッ…! ハァ… ハァ…。
とはいえ 何をしていいか わからないだろう。
まずはそうだな エリスのことだ。
エリス?
アイツに 今すぐに 手紙を書いてやってほしい。
まぁちょっと浮気したけど お前のことは愛してるって。
愛してない。 俺はアイツのせいで 不能になったんだぞ。
許してやれよ。 それが男の器ってもんだろ?
っても 俺は許せなくて➨
何年もアイツと対立することに なったんだけどな。 対立?
何度も何度も エリスに殺されかけたよ。
アイツは俺をどこまでも追ってきて➨
見かけるたびに 全力での戦闘になった。
けど まぁ 手加減してたんだな。 アイツがその気になれば➨
いくらでも 俺を殺す方法はあったのに。
それどころか 俺がピンチになると➨
陰ながら助けてくれたもんだ。
まるで野菜の国の 王子様みたいなヤツだな。
フッ… アイツは➨
ずっと俺のことが好きだったんだ。
でも 口下手で どうしていいかわからないから➨
結局 殴るしかできなかったんだ。
そりゃ エリスのことが 好きだった時期もあったけど➨
俺には シルフィとロキシーが…。
問題ないさ。 んっ…。
2人なら 事前に説明しておけば 納得はする。
お前だって 本当のところは まだエリスが好きだろう?
あっ…。
んなこといったって…。
好きって言ってくれる女を 全員囲う。 いいじゃねえか。
ひと事だと思って 勝手なことを言うなよ。
俺は誰も手元に残っていない。
自分のことだから言ってるんだよ。
エリスは俺のそばにいるために ず~っと頑張ってたんだ。
受け入れてやらなきゃ アイツの努力はなんだったんだ。
そうギレーヌに 責められることになるぞ。
エリスの なきがらの前でな。
ハッ…。
エリスも 死ぬのか…?
ああ 戦いの中で 俺をかばってな。
いいか 絶対に手紙を送れ。 後悔したくなかったらな…。
あっ ああ…。 まぁそう言うなら送るけど。
でも どこに送るんだよ。
剣の聖地だよ。 うすうす感づいてただろ。
突き放すようなことは書くなよ。
エリスが自暴自棄になったら お前 殺されるぞ。
わかってるよ。 フッ…。
俺は わからなかったさ…。
エリスがどういうヤツか 知っているつもりだったのに。
アイツは俺を捨てたつもりなんて なかったんだ。
だが 俺には それがわからなかった。
そうして すれ違って 不幸を生むんだ。
ハァ…。
重要なことを言い忘れていたが ヒトガミとは敵対するな。
敵対するなって だましてたんだろ?
ああ。 でも ヒトガミには勝てない。
俺では ヒトガミのところには たどりつけないんだ。
それがわかったときは震えたよ。
俺は ロキシーやシルフィの敵を 取ることすらできないんだ。
あっ! ヤツを倒すために➨
こんなに頑張ったのにさ 届かないんだぜ?
俺の手の届く範囲に ヤツは来ないんだ。
宙に浮くこともできるし➨
遠くの相手に 通信することもできる。
それどころか 時間すら飛び越えて➨
過去に飛べるようにまでなった…。
まぁ この魔術は失敗だがな。
失敗?
この世界の魔術ってのは万能だ。
そこに気付けば だいたい なんだってできる。
失った腕を生やすことだってな。
だが こんな力 もうなんの意味もない。
俺が強くなったとき➨
守りたいヤツは誰一人として 残っていなかった。 うっ…。
おっ おい! (うめき声)
どこか悪いのか? ハァ… ハァ…。
いいか もう一度言うぞ。
ヒトガミには勝てない。 勝つ方法がない。
だから こびへつらってでもいい アイツと敵対するな。
いいように やられるだけだ…。
お前がやるべきことは 3つだ。
ナナホシに相談しろ。 エリスに手紙を送れ。
ヒトガミを疑い でも敵対はするな。
いきなりそんなことを 言われても…。
もっと具体的なアドバイスとか ないのか?
アドバイスね。
ハッ 懐かしいな。
そういや このころの俺は たるんでいたなぁ…。
まぁ俺としても もっと細かく 教えてやりたいところだが…。
時間切れだ…。
時間はないとか 時間切れって さっきからなんなんだ。
深夜アニメでも始まるのか?
いいや… 終わるんだよ。
っていうか あんまり他人に甘えるなよ。
こっちの世界に来た頃は➨
そんな誰かに頼ってばっかりじゃ なかっただろう…。
それに こうして俺が来たことで 歴史は変わったはずだ。
そして 過去転移が こういう形になった以上➨
俺の歩んできた歴史は 変わらない…。
グゥッ…! ハァ… ハァ… ハァ…。
お前は… 俺とは 違う人生を… 送るだろう。
今までどおり 成功もすれば➨
失敗もする…。
反省もするし… 後悔もする…。
グッ…!
おい 大丈夫か!?
俺が… 未来から来たからって➨
失敗に取り返しがつくとは 思うなよ。
本当は 人生に やり直しは ないんだ…。
俺の経験したことが書いてある…。
お前は… 後悔しないように 頑張ってくれ…。
あんなヤツに 笑われて 俺みたいに ならないでくれ…。
なんだよ その体…?
ハッ… 俺の過去転移では➨
体すべてを持ってくることが できなかった…。
だって 腕も生やせるって さっき。
もう 魔力がないんだ。
せめて クリフが生きていれば 過去転移も うまく…。
もうちょっと ここで 情報を…。
(落ちる音)
ごめん もういいから しゃべるなよ。
お前に… 後悔を… ヒトガミの思いどおりに…。
なんで こんなところで…。
言うべきことは… 過去に来たんだか…。
せめて 一目…。
うっ!
あぁ シルフィ ロキシー…。
クソ… 相変わらず かわいいなぁ…。
(ドアの開く音)
あっ!
(シルフィエット)ルディ なんか 声と物音が聞こえたけど➨
誰かいるの? (ロキシー)泥棒ですか?
ごめん ちょっと寝ぼけてさ。
変な夢見て魔術使っちゃったんだ。
寝ぼけて魔術って… 大丈夫なの?
またつらいなら 一緒に寝ようか?
いや いいよ 今日は。
ルディ?
本当に大丈夫だから 2人は部屋に戻って。
俺も部屋を片づけたら寝るからさ。
悩みがあれば 遠慮なく言ってくださいね。
ありがとう。 じゃあ 一つお願いなんだけど…。
2人とも 今晩は もう部屋を出ないでほしい。
(シルフィエット)部屋を? えっと… なんで?
それは…。
わかりました。 ルディが言うならそうしましょう。
うん。 そうだね。
うん。 ルディが言うなら…。
フッ…。
では おやすみなさい。 おやすみ ルディ。
うん おやすみ。
(ドアの開閉音)
《前世の男:いろいろと唐突すぎて 信じきれないのも確かだが➨
これだけは言える。
俺は あの2人を失いたくない。
そして あの老人のように 後悔して死にたくもない》
あっ!
あぁ…。
♬~
《この骨は パウロと同じ場所に埋めてやろう。
老人が本当に俺なら➨
それが いちばんうれしいはずだ》
《老人は行くなと言った。 だが…》
んっ?
ハッ!
⸨たぶんだが 地下室にはネズミがいる⸩
ハッ…! あっ…。
フロストノヴァ。
フロストノヴァ。
ハァ…。
んっ!
(足音)
ハッ!
《この死体は 魔術ギルドあたりに預けて➨
研究してもらおう。
老人の言った 魔石病の情報と 併せて報告すれば➨
本当かどうか 確かめるすべにもなる。
まずは 何をすべきだろうか。
今できることは なんだろうか》
《これを読めば これから先に➨
何が起こるか わかるかもしれない。
だが 歴史は変わると言っていた。
あるゲーム風に言うなら ここは別の世界線。
未来から俺が来て変化した世界だ。
この日記を読んで予習をしても➨
そのとおりのことは 起こらない可能性も高い》
⸨お前がやるべきことは 3つだ。
ナナホシに相談しろ。 エリスに手紙を送れ。
ヒトガミを疑い でも敵対はするな⸩
《この日記を放置して 次に進むわけにはいかない。
この日記は あの老人の軌跡なのだから》
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