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《私は今 日本一高い 歩道橋の下で➡
昇る朝日を… 見れずにいる》
< それは…>
<失ってしまうには あまりにも惜しい➡
歴史が積み重ねた その味と味わい。
これは 平日にくたびれたサラリーマンが➡
そんな絶メシに出会う 週末 1泊2日の物語。
それでは 案内を開始します>
《金曜日の夜 私は 家路を急いでいた。
愛する家族と 週末を過ごすため?》
答えは ノーだ。
《なぜなら 妻と娘は➡
アイドルグループのイベントで 地方にいるから。
帰りは 明日の夜。
よし いける》
《そのときだった》
なんだこれ。
「人生って なんだろう?」。
《それは おそらく 娘の紬が 書いたものだと思われ…》
《週末 私はちょっとした 旅に出る。
一人だけの時間を満喫できる 私の小さな大冒険。
ルールは 3つ。 その1➡
期間は 金曜の帰宅後から 翌日 妻たちが家に帰る➡
土曜日の夕方まで。
その2 誰も誘わない 誰も巻き込まない》
目的地に着きました。 案内を終了します。
運転 お疲れさまでした。
《その3 高速代 ガソリン代 食費 いろいろ含め➡
小遣いの範囲内に収める。
そのために必要不可欠なのは…。
車中泊》
《俺の人生って なんだろう…》
⦅何がないってさ 君には ビジョンがないんだよ。
ビ ジョ ン!
ここまで言われて悔しいか?
じゃあ 聞かせてよ。 君の人生のビジョンってやつをさ。
はい。 えっ ビジョンですか?
そう。 はい あります。
おう。 ビジョンは はい あります。
ねえじゃねえかよ! いや あります あります。
言葉でどうこう っていうわけではなくて➡
ちゃんと あの ここにはあるんですけど➡
あの はい ビジョンは あります はい。
もうええわ!⦆
《ビジョンを聞かせろとか 大きなお世話だよ》
眠れない。
あっ。
《家族に内緒で コンビニ受け取りで手に入れた➡
こいつの名は フィールドア車中泊マット》
《使うときは バルブを開くだけで…》
おお すごい すごい すごい…。
えっ まだいく まだいく まだいく。
お~。
《でも このマットをもってしても➡
今夜の俺を眠らすことは…》
(いびき)
《ここは 以前から 一度 来てみたかった場所。
木更津 中の島公園。
目玉は なんといっても➡
日本一高いといわれる歩道橋↴
《立入禁止?》
えっ?
《私は今 日本一高い 歩道橋の下で➡
昇る朝日を… 見れずにいる》
《車中泊をする理由は 人によってさまざまだ。
何か月もかけて 日本中を旅してる人。
私のように 独りになりたい人。
そして 車中泊をする車も 人によってさまざま》
《これ 中 どうなってんだろう?》
あっ すみません。 (笛の音)
はじめまして。 これ 僕の車。 あっ…。
あっ おはようございます。 あっ 中 見ていきます?
ああ いいです いいです。
あっ そう。
《なんか 本格的な感じだけど➡
こういう謎なキャンパーって 結構いるな》
あれ ノーマルさんは 何しに来たの?
ノーマルさん? うん あのノーマルの➡
フリードで来たでしょ。 あっ。 旅の目的は?
ああ いや 特に…。 ふ~ん。
まあ 車中泊始めた頃って➡
ただ車の中で寝るだけでも 楽しいからね。
はい。 あっ そうだ これから僕➡
浜焼き食べに行くんだけど よかったら 一緒にどうですか?
《浜焼きか… いいなぁ でも…。
私の体は 無意識に あれを求めていた》
あれ? えっ?
あっ すみません 遠慮しときます。
そう。 じゃあ また どこかで。
♬~
ちょっと待った~。
♬~
うわっ!
♬~
《さて いただきに行きますか》
《私の小さな大冒険に 彩りを与えてくれる あれ 絶メシ。
今日も出会うことができるのか?
ん?
「あなたに食べさせたい タンメンがある」。
なんか気になるな》
よし。
《大衆食堂 とみ。
この店構え 今までの俺なら➡
確実に避けていたタイプの店だ。
でも 絶メシの魅力を 知ってしまった今の私は違う。
しかし… それにしても 入りにくい》
(南城)あれ?
やってないの? あっ はい。
でも お母さんに言ったら 開けてくれるよ。
なあ? 太一。 ういっす。 自分 見てきます。
ああ。 (太一)こんちは~。
(太一)あっ 社長 やってるっす。 ああ。 じゃあ アンタも入ろう。
えっ? あっ いや… いや ちょっと すみません。
あら いらっしゃい。 何人? (南城)3人。
いや あの お二人と 一人です。 お好きな席どうぞ。
はい。 今日は ずいぶん早いのね。
ああ 土曜日は半ドンだからよ。
焼酎セットちょうだい。 はいよ。
あっ なんか決まったら教えてね。 はい。
《まさに ザ・大衆食堂の雰囲気。
都会じゃ ほとんど絶滅寸前の このテイストが➡
今も残っているなんて さすが 木更津というべきか…》
《それにしても メニューが とにかく多いな。
ラーメン どんぶりに 定食。
いったい 何を食べるのが 正解なのか…。
あれ? あんなに看板で推してた タンメンはどこだ?
タンメン タンメン タンメン… あっ あった。
タンメン 600円。
でも まったくといっていいほど 目立ってないのが 実に不安だ》
は~い お待ちどおさま。 お~ サンキュー。
はい。 はい。 お決まりですか?
あ…。
《ここは 初志貫徹でタンメンか?
いや それとも 150円プラスして アンパイ狙いでカツ丼にするべきか。
いや さんま定食 700円。
でも ラーメン 450円に比べると 700円は なかなかの金額だぞ。
わざわざ ここまで来て 100円 200円にこだわってるんだ?
いや どれもこれも かなり良心的な価格だぞ。
なら もっと思い切り 人生を楽しんでみろよ 民生!》
あの…。 はい。
この店で いちばん高いメニューって 何ですか?
えっ? あ… ポークソテーライスかな。
あれは 1, 000円。 じゃあ それでお願いします。
はい。
《タンメンを食べに来た はずだったのに…》
こんにちは。 は~い いらっしゃい。
はい。 タンメンね。 タンメンね。
《果たして 正解は…》
(泣き声)
えっ? バカ! おめえ!
太一! 何 急に泣き出してんだよ!
じ 人生っていったい 何なんすか。
(南城)はっ? どうしたのよ 急に。
いや コイツ今日 現場で ポカやらかしちゃって。
いや ごまかさないで ちゃんと教えてくださいよ。
毎日 朝から働いて➡
頑張ってるのに叱られて 人生って何なんすか?
うるせえよ! あのな 人生ってのはな…。
何だ… 何だろうね? えっ?
私には よくわかんないな。
なんせ 19の時から この店しかやってないから。
えっ 19の時から? そう 親に頼み込んで➡
ここに この店作ってもらったのが 19の時。
だから 今年で 46年か。
《へぇ~ この店 そんなやってるんだ》
19で店出すなんて すげえな 太一。
すごいっす。
えっ じゃあ 親父さんとの出会いは?
常連だったのよ 店の。
もともと トラックの運転手で。 それが 結婚したとたんに➡
「俺も店 一緒にやる」 とか言い出して➡
それから 好き放題。 嫌んなっちゃう。
《ふ~ん。
親父さん どこにいるんだろう?》
はい タンメン お待ちどおさま。 は~い。
ポークソテー もうちょっと待ってね。 あっ はい。
《あれが うわさのタンメンか。
ああ やっぱり こっちだったかな》
はい ポークソテー お待ちどおさま。
お~。 おいしいよ フフッ。
《これは 想像をはるかにしのぐ でか厚サイズ。
キング オブ とみ食堂の風格だ》
いただきます。
うわっ。 え~。
《ああ うまい。
甘辛いタレが 肉汁と絡み合う この感じ。
噛めば 噛むほど ポークが ポークが ポークが ポークが➡
どんどん押し寄せる。
口の中はパンパンだけど 更に ごはんをかきこむと➡
う~ん パラダイス!》
でかくて うまいよね ここのポークソテー。 はい。
お客さんに 喜んでもらおうと思って➡
作ってたら だんだん大きくなって➡
ここまで でかくなっちゃったんだって。
そうなんですか。 あっ あ…。
うまいよね。 うまいよね。
はい。 あれ? お母さん 俺➡
こんなの頼んでねえよ。 太一くんが好きなの➡
思い出してさ ナポリタン。 ほら 涙拭いて食べな。
泣くな! オメエは! いただきます。
ごめんね。 うちね 書いてないメニュー いろいろあるんだ。
日によってだけどね。 そうだったんですね。
最初は 今よりずっと メニュー少なくてね。
へぇ~。
⦅すみません。 はい!
ニラレバある? はい!⦆
常連さんの あれも食べたい これも食べたいって➡
リクエストに応えてるうちに こんなに増えちゃった。
何より私 料理が大好きだしさ。
《そうか このお母さんは ここで46年も こうやって➡
地元の人と寄り添ってきたんだ》
あっ 智弘 そこ切っといて。 ああ。
ちょ ちょ… あれが智弘くん?
そう。 俺 初めて見たよ。
あんまり人前に出るの 好きじゃないから。
工場辞めて 店継ぐって言ってんだろ?
よかったじゃん。 これで安泰だよ。
まだまだ半人前。 とてもじゃないけど➡
任せられない。 太一くんと一緒。
もっと頑張んないとね。 はい。
旦那さん亡くなったときは 心配だったけど➡
これで ちょっと安心だ。
《そうか… 旦那さん 亡くなっちゃってたのか》
ちゃんと切れてる?
ちょっと太いな。 あっ いい いい…。
そのまま続けて。
《それでも 元気に店を 守り続けるお母さんのポークソテーは➡
うまい!》
♬~
ごちそうさまでした。
お代 ここ置いとくよ。 ありがとうございました。
はい。 あっ 太一くん。
さっきの質問だけどさ 人生は 夢を叶えるためにある➡
ってのはどう? え~ お母さん 何それ。
私なりに考えたの。 じゃあ お母さん 今 夢あるの?
あるよ もちろん。 どんな夢?
この店を智弘に任せて いつか隣で そば屋をやるのが夢なんだ。
そば屋! 休みの日には いつも➡
そば打って練習してるんだ その日に備えて。
それが 私の夢。 へぇ~。
俺も 夢に向かって頑張ります。
お前 どんな夢あんだよ? 社長になることっす。
よし! よく言った! じゃあ お母さん また来週。
は~い。 ごちそうさまでした。
ありがとうございました。 うん また来るよ。
《お客のお腹も 心も満たす 大衆食堂 とみ。
ここもまた 絶滅してしまうかもしれない➡
絶品メシ… 絶メシ フォーエバー》
また来てください。 あっ あの。
ひとつ質問なんですけど。 はい?
あの その看板見てきたんですけど ここのイチオシって やっぱり➡
タンメンなんですか? あ… あれは なんていうか➡
芸人さんに対抗して。 芸人?
お前に食わせるタンメンはねえ!
あ… ああ!
《最後にこんなこと 聞くんじゃなかった…》
もしもし 紬?
玄関の紙 見たぞ。
人生って何なのか 父さん 考えてみたんだけどな。
(紬)ねぇねぇ そんなことより 今どこ?
今は… 車の中だけど。 じゃあ 急いで➡
ダッシュボードの中 見てくれない?
「人生ってなんだろう?」。
ねぇ ティアドロのCDあった?
いや あったけど…。 ああもう CD絶対持ってきてね➡
って お母さんに言ったのに。 ちょっと お母さん!
ごめん お母さん かばんに入れたって➡
思ってたんだけど。 CDに握手券 入ってたんだよ。
だから 玄関に紙貼ったんじゃん。
(通話が切れる音)
紬? もしもし?
(ため息)
♬「人生って AH なんだろう」
知らねえよ。
<今週も お疲れさまでした>
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