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(木を打つ音)
(木を打つ音)
(ユージオ)47!
(キリト)おっ
(木を打つ音)
(木を打つ音)
(ユージオ)ハァ ハァ ハァ…
50!
プハッ!
ハァ ハァ…
(キリト) いい音がしたのは 50回中 3回だったな
えっと… 全部合わせて41回か
どうやら 今日のシラル水は―
そっちのおごりだぜ ユージオ
フン そっちだって まだ43回じゃないか
すぐに追いつくよ
そら お前の番だぞ キリト
(キリト)へいへい
1年と3か月
毎日 これだけ オノを振るってるのに
やってられないな
文句を言っても仕方ないさ
この《ギガスシダー》を 切り倒すことが
僕らの《天職》なんだから
そりゃあ 分かっちゃいるけどさ
ホント 達成感のない仕事だよな
えっと この《天命》 前はいくつだっけ?
確か23万5,590くらい
たった50…
2か月 こんだけ頑張って 23万なんぼのうち たった50
これじゃ 一生かかっても 切り倒せねえよ
アハハ… なんたって 鉄の硬さを誇る大樹だ
僕らの前に6代の刻み手が 300年 頑張ってたんだからさ
あと18代 900年くらいはかかるよ
(キリト)おーまーえーはー
(キリト)おりゃっ (ユージオ)うわっ
痛た… ん?
なんで そう優等生なんだ?
もうちょっと この理不尽な役目を どうにかしようと悩め
(ユージオ)な… 何する やめ…
(ユージオ)こ… こいつ (キリト)うわっ
(ユージオ)そら お返しだ (キリト)お… おい やめ…
(ユージオ)この! (キリトの笑い声)
どうだ 参ったか
(キリト)やったな (ユージオ)うわっ
(キリト)そら お返しだ
(ユージオ)やめてよ キリト アハハ…
(アリス)こら! またサボってるわね
ヤベッ
(ユージオ)や… やあ アリス
(キリト)し… 神聖術の勉強は 終わったのか?
今日は随分 早いけど
(ため息)
(アリス)全然 早くないわ いつもの時間よ
ケンカする元気があるなら―
ガリッタさんに言って
刻む回数を増やして もらったほうがいいかしら?
(ユージオ)うっ
いや やめて それだけは
冗談よ
さあ
早くお昼にしましょ
(2人)おお~
(アリス)今日は暑いから
悪くなっちゃう前に 急いで食べてね
(ユージオ・キリト)おおっ
(ユージオ)うーん 今日のパイはおいしいな
うんうん だいぶ腕が 上がってきたみたいだな アリスも
そ… そうかしら?
私は もうひと味 足りないような気がしたんだけど
(2人)フフッ…
それにしても
せっかくのうまい弁当なんだから もっと ゆっくり食べたいよな
なんで暑いと すぐ悪くなっちゃうんだろう
なんでって…
冬なら生の塩漬け肉を 外にほっぽっといても
何日だって もつじゃないか
そりゃあ 冬は寒いからね
そうだよ なら寒くすれば
この時期だって 弁当は長持ちするはずだ
絶対禁忌の天候操作術で 雪でも降らせる気かい?
公理(こうり)教会の整合騎士が すっとんできて―
連れていかれちゃうよ
(キリト)あ… うーん
あっ 氷だ
えっ?
氷がいっぱいあれば 十分に弁当を冷やせる
そして うまい弁当を いつまでも食べられる
そうだよ 氷だよ 氷を探しに行こう
(アリス)あんたねえ
今は夏なのよ 氷なんか どこにあるってのよ
央都の市場にだって ありゃしないわ
(キリト)あ…
うーん
なあ 英雄ベルクーリの武勇譚(たん) 覚えてるか?
(ユージオ)えっ? (アリス)どの話?
あれだよ 「ベルクーリと北の白い竜」
英雄ベルクーリは―
ルール川沿いを北に進んだ 《果ての山脈》の洞窟で―
財宝の山と その上で眠る 巨大な白竜を見つける
そして宝の中から 美しい剣を手に取るが―
その途端…
(竜の咆哮(ほうこう))
(キリト)あの話だと―
洞窟に入ってすぐ でっかいツララが生えてただろ?
そいつを折ってくれば…
お前な…
悪くない考えね
あのね 知ってるだろ? 村の掟(おきて)では…
村の掟は “大人の付き添いなく―”
“子供だけで《果ての山脈》に 遊びに行ってはならない”よ
でも氷を探しに行くのは 遊びじゃないわ
お弁当の《天命》が 長持ちするようになれば
村のみんなが助かるでしょ?
だから これは仕事のうちと 解釈するべきだわ
うん そうだな まったく そのとおり
でもさ 《果ての山脈》に行くのは 村の掟だけじゃなくて
あれでも禁じられてるだろ
“あれ”って?
決まってるだろ 禁忌目録だよ
(キリト・アリス)あっ…
(ユージオ)まさか 禁忌目録を 破るわけにはいかないだろ?
ユージオ 目録に書かれているのは こうよ
禁忌目録 第1章3節11項
“何人(なんぴと)たりとも―”
“人界を囲む《果ての山脈を》 越えてはならない”
“越える”っていうのは 《果ての山脈》の向こう
《ダークテリトリー》に 入ることだわ
(ユージオ)えっ?
洞窟に入ることは含まれないわよ
でも…
(たたく音) (ユージオ)痛っ!
よし 決まり 次の安息日は白竜
あっ… じゃない 氷の洞窟探しだ
うん
じゃあ 朝7時に北の門に集合ね
(キリト)おう 寝坊すんなよ (アリス)そっちこそ
(アリスの鼻歌)
(キリト)まったく… 荷物は俺らに持たせるんだからな
まあ いいじゃない
こうやって アリスと出かけられるのも―
今だけかもしれないよ (キリト)えっ?
(ユージオ) アリスは村長の娘だから
これからは もっと いろいろな勉強に
時間を取られちゃうだろうし
まあ 《天職》に就いてないのも
神聖術の才能を伸ばす 勉強のためだしな
それに村の規範になるよう
男の子と遊ぶのも 禁じられちゃうかも
こら! なに2人で 内緒話してるのよ
(キリト) い… いや 何でも… なあ?
(ユージオ)う… うん
夕方の鐘までには 村に帰らないといけないって
話してたんだ
(アリス)そう そうね
ソルスが空の真ん中まで来たら 引き返すことにしましょ
そうとなれば急ぐわよ
(ユージオ・キリト)あ… フフッ
(キリト)そういや 知ってるか?
この村ができたばっかりの頃は
たまに闇の国から悪鬼
ゴブリンだのオークだのが 山を越えてきて
ヒツジを盗んだり 子供をさらったりしたんだぞ
何よ 私を怖がらせようとして
知ってるわよ
最後には央都から整合騎士が来て 退治してくれたんでしょ?
(キリト)それからというもの―
晴れた日には 《果ての山脈》のずっと上を飛ぶ
白銀の竜騎士が 見えるようになったのです
(アリス・ユージオ)あっ…
ん?
(アリス)まさか… ね
あっ… 洞窟
ここが《果ての山脈》の洞窟?
とにかく 中に入ってみるしかないよね
システム・コール ジェネレート・ルミナス・エレメント
アドヒア
(キリト)うおっ (ユージオ)わあ
(ユージオ)ねえ 確か洞窟に入ってすぐ
氷のツララがあるって 言ってたよね
言ったっけ? そんなこと
言った
(キリト)ん?
(アリス)ユージオ (ユージオ)えっ?
(アリス)ちょっと 明かりを近づけて
ハァ~
あっ
ほら 見えたでしょ?
うげっ ホントかよ
どうりで さっきから 寒いと思ってたんだよ
外は夏だけど この洞窟の中は冬なんだわ
きっと氷だってあるはずよ
うん もう少し進んでみよう
(アリス)ねえ 本当に白竜に 出くわしたら どうするの?
(ユージオ) そりゃあ 逃げるしか…
(キリト)大丈夫
白竜だって ツララを取るくらい 許してくれるさ
うーん でも ウロコの1枚くらい欲しいよな
おい 何考えてるんだよ
だってさ 本物の竜を 見た証拠を持って帰れたら…
(氷が割れる音)
(アリス・キリト)ん?
(ユージオ)あっ これ 氷だ
あった あったよ 氷
この先に もっとあるはずだ
(足音)
あっ
あれは…
わあ…
(アリス)これだけあったら 村中の食べ物を冷やせるわね
(キリト)それどころか しばらく村を真冬にだってできるぜ
あっ おい 急に止まるなよ
(キリト)何だよ? これ (ユージオ)えっ?
あっ!
何なんだよ これ…
白竜の骨?
死んじゃったの?
なあ
これ いっぱい傷がついてるし 先っぽも きれいに欠け落ちてる
何かと戦ったの?
でも竜を殺せる生き物なんて…
これは剣の傷だ
この竜を殺したのは人間だ
えっ?
で… でも…
だって英雄ベルクーリでさえ 逃げることしかできなかったのよ
あっ! 整合騎士?
まさか公理教会の整合騎士が
人界の守護者である白竜を 殺したの?
分からない もしかしたら
闇の国にも すごく強い騎士が いるのかもしれない
でも それなら
闇の軍勢が《果ての山脈》を 越えてきてもおかしくないはず
ん?
何してるんだ? キリト
(キリト)うおっ めちゃくちゃ重いな
(アリス)あっ これ もしかして (キリト)ああ
ベルクーリが 盗み出そうとしたっていう―
《青薔薇(ばら)の剣》だろうな
うっ くう~
うわっ ダメだ 重すぎる
ユージオと2人がかりでも とても運べないよ
他にも いろいろ お宝があるみたいだけど
うん 持っていく気には ならないわね
墓荒らしみたいだし
(キリト)でも氷くらいなら きっと白竜も許してくれるよな
(アリス)きれい
持って帰って解かしちゃうのが もったいないね
それで俺たちの弁当が 長持ちするならいいじゃないか
“村のみんなの”でしょ
そろそろ戻らないと 夕方までに帰れなくなりそうだ
(アリス)そうね
ねえ 私たち どっちから入ってきたんだっけ?
もう随分 歩いたけど―
やっぱり 反対側の道だったのかしら
(キリト)近いほうだからって こっちの道を選んだのはアリスだろ
ん? 何か言った?
いや 何も
(ユージオ)しっ! (アリス・キリト)ん?
(風の音)
あっ 風の音?
外が近いんだ こっちでよかったんだよ
(アリス)ちょっと こんな所で走ると転ぶわよ
あっ!
出口だ
ここは…
《ダークテリトリー》
ダメだ これ以上 進んじゃ…
(剣がぶつかる音) (キリトたち)あっ
(アリス)竜騎士?
白いほうは 公理教会の整合騎士なのか?
じゃあ 黒いのは闇の軍勢?
(キリトたち)ああっ
あっ…
(キリトたち)うわっ
(ユージオ)あっ…
(キリト)ん?
あっ! ダメだ
あ…
(ユージオ)アリス!
(キリト)あっ…
あっ!
(ユージオ)ああ…
(アリス) 禁忌目録 第1章3節11項
“何人たりとも―”
“人界を囲む《果ての山脈》を 越えてはならない”
ハッ… アリス
わ… 私…
だ… 大丈夫だよ アリス
洞窟から出たわけじゃない そうだろ? そうだよな キリト
キリト?
(キリト・ユージオ)あっ
(ユージオ)何だ?
(男性)シンギュラー・ユニット・ ディテクティド
アイディー・トレーシング
コーディネート・フィクスト
リポート・コンプリート
(ユージオ)消えた
今のは一体…
分からない とにかく戻ろう
うん
(キリトたち)ハァ ハァ ハァ…
さあ 家に帰ろうぜ
ええ
じゃあ これ 地下室に入れておくね
(ユージオ)うん (キリト)じゃあな
(ユージオ・キリト)ん?
明日のお弁当 楽しみにしててね
(キリト)おう (ユージオ)う… うん
(アリス)フフッ…
(ユージオのうなされる声)
うう…
うああ~
(ユージオ)アリス
行っちゃダメだ アリス
アリス!
ハッ!
うう…
(木を打つ音)
(キリト)むん!
(木を打つ音)
(ユージオ)あっ (キリト)ん?
あっ!
おい キリト
ああ 昨日の整合騎士だ
まさか アリスを…
ウソだろ
あんな… あれだけのことで
行こう
(ユージオ)あっ… おい
(ユージオ)アリス
(アリス)キリト ユージオ
静かに
今のうちに ここから離れたほうがいい
えっ?
(どよめき)
(アリス)あ…
お父様
(ガスフト)村長を務める ツーベルクと申します
(デュソルバート) ノーランガルス北域を統括する―
公理教会 整合騎士
デュソルバート・ シンセシス・セブンである
ガスフト・ツーベルクの子 アリス・ツーベルクを
禁忌条項抵触のとがにより
捕縛 連行し 審問ののち処刑する
(ガスフト)なっ… (ユージオ・キリト)あっ…
(アリス)えっ?
(デュソルバート)罪状は 禁忌目録 第1章3節11項
《ダークテリトリー》への侵入 である
騎士様
ア… アリスは―
《ダークテリトリー》になんか 入ってません
片手をほんの少し 地面に触れさせただけなんだ
それだけなんです
(デュソルバート)それ以上 どのような行為が必要であろうか
じゃ… じゃあ 俺たちも同罪だ 俺たちも同じ場所にいた
連れていくなら 俺たちも連れていけ
ユージオ いいか?
俺がオノで打ちかかる その隙にアリスを連れて逃げるんだ
キ… キリト でも それは…
禁忌が何だ
それはアリスの命より 大切なことなのか?
(キリト)うっ…
キリト!
(デュソルバート) その子供らを広場の外に連れ出せ
(キリト)クソッ
うっ… あっ!
ユージオ 頼む 行ってくれ
あ… う…
うっ…
(キリト)ユージオ せめて こいつらをどかしてくれ
そしたら 俺が…
ユージオ!
あ… ああ…
(キリト)くっ! ううっ
アリス!
(和人(かずと))あっ…
あ…
(プレイヤーたち)あっ
(クライン)全自動 種子島だぜ
(リズベット)PK野郎ども これでも食らえ
(シリカ)うりゃっ うりゃりゃりゃ…
クソッ
(シノン)出番よ 援護する
(ヴァサゴ)フォトンソード?
(サトライザー)チームB C
グリッド4-6へ移動し チームAを援護
(サトライザー) グレネードの使用を許可する
ヘイ ボス 俺も行っていいか?
もう間に合わないだろう
おとなしく見ておけ
(キリト)あっ
(アスナ)任せて
(銃撃音)
てやー!
(キリト)またか
(アラーム)
タイムアップか
全チーム後退
グリッド1-9から離脱しろ
(ヴァサゴ)あれが 今日最後の獲物だろ?
負け戦で終わっていいのか? ボス
(サトライザー) あんなイレギュラーな スコードロンと戦っても―
訓練にはならない
本番の作戦に 悪影響が出ても困るしな
行くぞ
(ヴァサゴ)また会おうぜ
(クライン) いやあ しかし
うわさには聞いてたけど
ハードなゲームだな 《GGO》ってのは
フィールドなら どこでも PKし放題だってんだからよ
けど いくら自由に PKできるっていっても
さっき戦ったスコードロンは 異常だわ
普通のPKは お金とかアイテム狙いだけど
あいつら 俺たちを殺すことしか 考えてなかったな
グレネードやスモークも バンバン使ってたし
あれじゃ 完全に赤字じゃないか?
でしょうね でも 現れる時は いつもあんな感じなの
フィールドで 孤立してるスコードロンを襲って
皆殺しにして アイテムの ルートもしないで消える
あの人たち 勝率100%って本当なの?
私の知るかぎりはね
で とことん変則的な スタイルでなら―
勝てるかもって思って みんなに協力してもらったんだけど
ごめん 私の作戦が甘かったわ
まさか あんなに簡単に 撤退するなんて
(クライン)でも まあ 負けじゃねえよな
いや あいつらが逃げたんだから 勝ちみてえなもんだろ
正体とか目的とかは さっぱり分かんないままだけどね
いや… そこは まあ 何だ…
せめてリーダーの名前くらい 分かればよかったんだけど
あの中の誰かがリーダーなのかも はっきりしなかったですよね
ええっ… ちょっと 寝落ちしないでよ
木曜からずっと学校休んで 企業見学に行ってたみたいなの
また何か妙なことに 首を突っ込んでるんじゃないの?
(シノン)みんな 手伝ってくれて 本当にありがとう
(クライン)いいってことよ
(クライン)じゃあな (シリカ)楽しかったです
またね
(アスナ)じゃあ 私も
(シノン)あの… アスナ (アスナ)何?
実は手伝ってほしいことがあって
PKスコードロンのこと?
それとは別件なんだけど
明日 キリトと一緒に 向こう側で会えないかな
えーっと
夕方からならオッケーだよ エギルさんのお店でいい?
(シノン)もちろん
あっ 大体の相談内容は
今晩 メールしておくから 読んでおいて
(アスナ)了解
(キリト)ハッ!
(詩乃(しの))あんた また痩せた?
(和人)そうかな?
それより 俺に何か用があるんだろ?
《BoB》のことだっけ?
(詩乃)うん
第4回で優勝した
サトライザーって プレイヤーだけど
あいつ 第1回大会でも 優勝してるのよ
へえ
みんな 燃えてたんだけどね
“あの伝説のサトライザーと 戦える”って
(和人)そいつ 中継を見てる感じだと―
黙々と淡々と戦ってたな
何となく昨日のPKスコードロンの 連中に近い雰囲気があった
(詩乃)ああ 言われてみれば そうかもね
ただ サトライザーのヤツは 強さが段違いよ
(ため息)
私もそうだったけど
行動を完璧に先読みされて
超接近戦に持ち込まれて 銃を構える暇もなく死亡
すごいな 《BoB》本戦に出るような
ベテランプレイヤーたちの 行動を見切るなんてさ
逆にベテランになると セオリーが染みついちゃってて
行動パターンが 読まれやすいのかもね
そこでなんだけど
(和人)えっ?
セオリーにない 行動をするプレイヤーなら
サトライザーの裏を 取れるんじゃないかって思うの
だから気が早いけど
年末の第5回で 協力してもらおうと
こうして お呼び立てしたってわけ
(和人)えっ? ええ!?
相手が何者だろうと 次は絶対に勝つわ
どんな手を使ってもね
だいぶ平気になってきたみたいだな
(詩乃)ああ… うん
まったく怖くないわけじゃないけど よくはなってる
そういえば 彼は どんな様子なんだ?
あ… 新川(しんかわ)君は…
うん 落ち着いてきたみたい
もう少ししたら また面会に行ってみるつもり
そっか
じゃあ 《死銃(デス・ガン)》事件は これで 何もかも終わったってことかな
まだ1人 逃走中の犯人がいるけどね
(和人)そいつも逮捕は 時間の問題だって菊岡(きくおか)が言ってたよ
うん そうだね
(ドアが開く音) (明日奈(あすな))こんにちは
(明日奈)やっほー シノのん
ア… アスナ
アスナ こんにちは
(明日奈)第5回《BoB》の件 オッケーだよ
アスナにも頼んでたのか?
(詩乃)そっ あんただけじゃ暴走しそうで―
ちょっと不安だったから
制御装置的な意味も含めて
えっ…
(明日奈)ねえ キリト君 (和人)うん?
あなた 痩せたんじゃない?
そうかな?
ほら アスナだって そう思ってるじゃない
例のバイトのせいでしょ? またムチャして
(詩乃)ん?
(明日奈) 体に異常はなさそうだけど
何見てるの?
えっ? 何? これ
あんまり じっと見るなよ
えっ!? これ もしかしてキリトの…
当ったり~
えっ… でも どんな仕組みで?
俺のここんとこに超小型センサーが インプラントされてるのさ
そいつがネットを介して
アスナの端末に ほぼリアルタイムで情報を渡してる
ええっ!? なんで そんな…
ああ まさか 浮気防止システムなのか?
(キリト)違う違う (明日奈)違うよ
今のバイト始める時に 向こうから勧められてさ
毎回 胸に電極をペタペタ 貼られるのは大変だろうからって
で その話をアスナにしたら こんなことにも使われちゃって
いやあ なんか和むのよね これ 見てると
キリト君の心臓が 動いてるって思うと
こう ちょこっと
トリップしちゃうって いうか
ハハ…
うわ… なんか それ 危ないよ アスナ
まあ とにかく アスナが手伝ってくれるなら
鬼に金棒 トーチカに重機関銃だわ
期待に沿えるよう頑張るね
(詩乃)さてと
聞かせてもらうわよ あんたの怪しいバイト
新しいVRMMOゲームの アルファテストなんでしょうけど
(和人)テストしているのは ゲームアプリじゃない
新型フルダイブ・システムの
ブレイン・マシン・インターフェース そのものなんだ
開発しているのは《ラース》
聞いたことない会社ね
「鏡の国のアリス」に出てくる 空想上の生き物と同じ名前だね
ブタっていう説と カメっていう説があるけど
(詩乃)へえ そこが次世代型の フルダイブ機を発売するの?
(和人)いや どうかな
そもそも現行のフルダイブ技術とは かなり別物なんだよな
別? 中の世界はどんな感じなの?
(和人)知らないんだ 俺
えっ?
(和人)機密保持の ためなんだろうけど―
そのマシンが作る VRワールド内部の記憶は
現実世界には持ち出せないんだ
テスト中に どんなものを見て 何をしたのか
今の俺は一切合切 忘れてる
(明日奈)ええっ? (詩乃)はあ?
一切合切 忘れてる?
それってまさか 《オーグマー》みたいな?
あっ 違う違う
《オーグマー》みたいに 脳に負荷をかけるものじゃないんだ
《フラクトライト》との 経路を遮断しているから
ただ思い出せないってだけで
フラクト?
(和人)おおもとのところから 解説しようか
そのマシン
《ソウル・トランスレーター》の テクノロジーについて
(和人)人間の心って どこにあると思う?
心?
頭… 脳でしょ?
(和人)脳ってのは つまり脳細胞の固まりだよな
じゃあ 脳細胞のどこに 心は存在するんだろう
えっと…
(和人)脳細胞を含めた細胞には その構造を支える骨格がある
マイクロチューブルって いうらしいんだけどね
はあ…
(和人)チューブ つまり中空の管なんだ
その管の中には 封じ込められているものがある
何が入っているの?
光
光… 光子の揺らぎ
それこそが人間の心なんだそうだ 《ラース》によれば
その光の集合体が人間のソウル
魂だってこと?
(和人)うん
そして その人間の 魂かもしれないものが―
《ラース》では こう呼ばれている
《フラクトライト》
あ…
《フラクトライト》を 読み取る機械が
《ソウル・トランスレーター》って ことなのね
でも それって 逆もできるんじゃないの?
逆?
《アミュスフィア》は 視覚や聴覚の信号を脳に送り込んで
私たちに仮想世界を 体感させているでしょ?
同じように 《ソウル・トランスレーター》も
魂に情報を送ることが できるんじゃ…
ああ そのとおり
《ソウル・トランスレーター》 《STL》は
《フラクトライト》に 短期的な記憶を書き込むことで―
見せたいものや 聞かせたい音の情報を与える
《ニーモニック・ビジュアル・ データ》っていうらしい
俺 ごく初期のテストダイブ中の 記憶ならあるんだけど
(グラスの共鳴音)
(和人)違ったよ 全然 違った
《アミュスフィア》が作る VRワールドとは
俺は最初 そこが仮想世界だと 分からないくらいだった
(明日奈)でも それは 本当に安全なものなの?
私 怖いよ
そのアルバイトの話を 持ってきたのは
総務省の菊岡さんなんでしょ?
確かに あの男には 気の許せないところがある
でもな 俺は知りたいんだ
フルダイブ技術は 一体 どこに向かっているのか
予感がするんだよ 《STL》には何かある
まあ 《フラクトライト》とか
《ニーモニック・ビジュアル》 とか言うと
難しく聞こえるけど
《STL》が作る仮想世界は リアルな夢みたいなものなんだ
夢?
(和人)例えば 長い夢を見ることがあるだろ?
目が覚めた時 2時間とか3時間
夢を見ていたような 気分になってることがさ
でも実際に夢を見ているのは ほんの数分だったりするんだ
《STL》はそれと同じような 現象を起こさせるんだ
えっと…
人が数分間のうちに 何時間もの夢を見るように
実際のダイブ時間の数倍の時間を 仮想世界で体感できる
ええっ?
(和人)それが 《STL》最大の目玉機能
《フラクトライト・ アクセラレーション》
略して《FLA》だ
(詩乃)はあ…
(明日奈)何だか もう…
(詩乃)ということは
あんたが ダイブしてた3日の間
中でどれくらいの時間を 過ごしたわけ?
(和人)うーん どうだろう
10日なのか1か月なのか まったく覚えていないんだ
どうにか1つだけ 教えてもらえたのは
実験用仮想世界の コードネームだけさ
(詩乃)へえ 何ていうの?
《アンダーワールド》
(詩乃)アンダー… 地下の世界?
もしかしたら それも アリスなのかもしれないね
「不思議の国のアリス」って 最初の私家版は
「地下の国のアリス」って 名前だったのよね
原題は
「アリスズ・アドベンチャーズ・ アンダーグラウンド」
(詩乃)どうかしたの?
(和人)いや “アリス”って聞いて―
何か思い出せそうな 感じがしたんだ
それって つまり…
(和人)何か…
何か今すぐに しなきゃいけないことを―
忘れている気がする
(明日奈)あ…
(詩乃)エギルさん また来ますね
(エギル)おう
(詩乃)じゃ 《BoB》のことは また連絡するから
今日は来てくれてありがと
(明日奈)うん じゃあね シノのん
(詩乃)またね アスナ
行こっか ん?
どうしたの?
あっ いや… 行こうか
(ため息)
キリト君
アスナ
俺 やっぱり行こうと思う
(明日奈)アメリカ? (和人)ああ
次世代フルダイブ技術の研究は あっちのほうが進んでる
どうしても見たいんだ 次の世界が生まれるところを
うん
楽しいことだけじゃなく
つらいこと 悲しいことも いっぱいあったもんね
何のために どこにたどり着くために―
あの城に呼ばれたのか 確かめたいよね
(和人)それを 見届けようとしたら―
何百年 生きても 足りそうにないけどな
それで―
お… 俺と…
俺と一緒に来てほしいんだ アスナ
ムチャなこと言ってるって 分かってる
でも それでも やっぱり―
俺 アスナがいないとダメだ
あ… フッ…
もちろん 行くよ 一緒に
君の行く所なら どこにだって
アスナ
(明日奈)だけどさ
《ソウル・トランスレーター》は 研究したくないの?
あれも次世代の インターフェースなんでしょ?
(和人)ああ…
あれは何ていうか ただ人間を
仮想世界にフルダイブさせるための 機械じゃない気がする
じゃあ 何の?
人間の意識 《フラクトライト》を 知るためのマシンなのかも
(明日奈)ふーん
それにさ
《STL》は あいつ…
ヒースクリフの思想の延長線上に あるマシンだと思うんだ
えっ!? 団長の?
(和人)あの男が 何のために《ナーヴギア》と
《SAO》を使って 何千人もの犠牲者を出して
自分の脳も焼き切って そのうえで
《ザ・シード》なんてものを ばらまいたのか
それを知りたい気はするけど 自分の進路にはしたくない
いつまでも あいつの手のひらで 踊らされてるような気がするからな
団長の意識と キリト君は話をしたんだよね
(和人)ああ
あいつが 自分のコピーを残した目的は
今 《ラース》が《STL》で やろうとしていることと
無関係じゃないと思う
(和人・明日奈)ん?
(金本(かねもと))あっ すみません
あの… 駅はどっちのほうですか?
(明日奈)えーっと
えっ? キリト君?
お前 ダイシー・カフェの そばにいたな
(金本)ああ… やっぱ不意打ちは無理か
誰だ?
(金本)ヘイヘイ そりゃあないよ キリトさん
て あっちじゃいつも マスクかぶってたっけなあ
あっ…
(金本)ザザのヤツが 捕まっちまったから
俺が根性 見せないとじゃん?
(金本)《ラフ・コフ》 最後の1人としてさ
(和人)ジョニー・ブラック
(金本の笑い声)
ないよ! 剣 ないよ
お前 まだ逃げていたのか
(金本)オフコース
しっかし キリトさんよ
剣がないと単なる ひ弱なガキですなあ
俺をさんざん ぶちのめした 剣士様と同一人物とは思えねえな
お前だって 得意の毒武器はないんだろ?
(金本)あるよ
毒武器 あるよ
(和人)《デス・ガン》?
(金本の笑い声)
アスナ 逃げろ
(刺さる音)
あっ!
ああっ
キリト君!
♪~
~♪
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