All language subtitles for Kurara -Hokusai no musume 眩~北斎の娘 The dazzling life of Hokusais daughter (2017) V.O.S.Japonés

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24 00:02:50,792 --> 00:02:53,561 (弥助)また始やりやしたね。 25 00:02:53,561 --> 00:02:57,465 おい。 へえ。 こんな足首で歩けるかい? 26 00:02:57,465 --> 00:03:02,203 あっ… へえ 確かに。 27 00:03:02,203 --> 00:03:04,872 ま~た ざる耳だよ。 28 00:03:04,872 --> 00:03:07,775 そんなとこだきゃ お父っつぁんに似ちまって。➡ 29 00:03:07,775 --> 00:03:11,212 それじゃなくても 女だてらに絵筆しか持たない➡ 30 00:03:11,212 --> 00:03:14,549 変わり者だとか 平気で枕絵を描いてるだとか➡ 31 00:03:14,549 --> 00:03:19,220 知れ渡っちまったもんだから いずれ様もが尻込みしちまってさ。 32 00:03:19,220 --> 00:03:22,557 ようやく決まった縁だってえのに。 33 00:03:22,557 --> 00:03:26,894 言い返さなくていいんですかい? 言い返して どうする? 34 00:03:26,894 --> 00:03:30,231 口答えなんかしようもんなら かえって 長引かあ。 35 00:03:30,231 --> 00:03:37,231 大体 絵なんか描いて 何になろうってんだい? ええ? 36 00:03:40,241 --> 00:03:44,112 (ため息) なあ! お前さんも悪いんだよ! 37 00:03:44,112 --> 00:03:46,581 小さい頃から 甘い顔して。 38 00:03:46,581 --> 00:03:49,484 「お栄は 自分から絵筆を持ちやがった。➡ 39 00:03:49,484 --> 00:03:54,922 こいつは 見どころがある」なんて 目尻下げるもんだからさあ もう。 40 00:03:54,922 --> 00:03:57,258 おっ 何しやがんでい いきなり。 41 00:03:57,258 --> 00:04:01,529 見てごらんよ。 すっかり本意気になっちまって。 42 00:04:01,529 --> 00:04:06,400 この子はね 弟子じゃないんだよ。 娘なんだよ。 43 00:04:06,400 --> 00:04:08,402 こと 絵についちゃ➡ 44 00:04:08,402 --> 00:04:11,873 どんなに偉いお殿様の言う事も 聞かねえ北斎先生でも➡ 45 00:04:11,873 --> 00:04:13,808 女房には 何にも言えねえってんですから。 46 00:04:13,808 --> 00:04:16,544 (笑い声) 47 00:04:16,544 --> 00:04:20,882 男は所詮 女の出がらしだぁな。 逆らうまいってね。 48 00:04:20,882 --> 00:04:22,817 お~い お栄! 49 00:04:22,817 --> 00:04:25,219 口を動かしてる暇あったら とっとと手ぇ動かせ。 50 00:04:25,219 --> 00:04:28,890 はい。 弟子じゃないって 言ってる先から…。 51 00:04:28,890 --> 00:04:32,560 …ったく 子が子なら 親も親だよ。 ええ? 52 00:04:32,560 --> 00:04:35,463 何だい こりゃ。 よせよ。 53 00:04:35,463 --> 00:04:38,432 何でもかんでも 勝手に触るんじゃねえ! 54 00:04:38,432 --> 00:04:42,904 何だよ。 何だい…。 55 00:04:42,904 --> 00:04:48,776 <さて ここは 江戸の浮世絵師 葛飾北斎の仕事場だ。➡ 56 00:04:48,776 --> 00:04:51,913 なかなかの散らかりようだろう? しかたぁねえ。➡ 57 00:04:51,913 --> 00:04:56,584 おやじ殿 つまり ここの主が 掃除するのを嫌がるんだ。➡ 58 00:04:56,584 --> 00:05:01,189 ちなみに そこのクモの巣も おやじ殿のお気に入りだ。➡ 59 00:05:01,189 --> 00:05:04,859 役者絵 枕絵 読み本の挿絵…。➡ 60 00:05:04,859 --> 00:05:07,528 何でもやるのが おやじ殿の流儀だ。➡ 61 00:05:07,528 --> 00:05:12,867 おやじ殿が顔姿を描き 細かいところは 弟子の仕事。➡ 62 00:05:12,867 --> 00:05:18,206 そうやって 師匠の画風や筆遣いを 目に刻み込む。➡ 63 00:05:18,206 --> 00:05:20,875 おやじ殿が どんなに名が売れようと➡ 64 00:05:20,875 --> 00:05:22,810 決して 鍛錬を怠らないもんだから➡ 65 00:05:22,810 --> 00:05:25,746 私らは 足を引っ張らないよう ついていくだけで➡ 66 00:05:25,746 --> 00:05:28,046 てんてこまいだ> 67 00:05:32,486 --> 00:05:36,891 (鐘の音) 68 00:05:36,891 --> 00:05:40,561 半鐘だ。 69 00:05:40,561 --> 00:05:42,861 ああ 火事ですね! 70 00:05:45,233 --> 00:05:48,233 私が いっち速えよ! 71 00:05:55,877 --> 00:05:58,246 瀬戸物町じゃねえか? 72 00:05:58,246 --> 00:06:02,246 いや そこまで南じゃあないね。 73 00:06:07,054 --> 00:06:10,825 代わっとくれ。 ああ? 何だ。 74 00:06:10,825 --> 00:06:21,469 ♬~ 75 00:06:21,469 --> 00:06:27,469 いや~… なんてえ色だ。 76 00:06:30,544 --> 00:06:34,415 (善次郎)ハハハ 世話ねえな。 77 00:06:34,415 --> 00:06:36,884 善さん。 78 00:06:36,884 --> 00:06:39,787 どうせ どうやったら あんな色 出せんのか 考えてたんだろう。 79 00:06:39,787 --> 00:06:42,223 何してんだい こんなとこで。 80 00:06:42,223 --> 00:06:48,095 そりゃ お前と同じ 酔狂さ。 酔狂? バカ言え。 81 00:06:48,095 --> 00:06:50,564 みんな 大変な思いしてるってのに。 82 00:06:50,564 --> 00:06:53,564 ああ。 こりゃひでえ。 83 00:06:56,904 --> 00:07:00,508 風の噂で聞いたぜ。 誰かさんが➡ 84 00:07:00,508 --> 00:07:03,844 旦那が描いた絵を 鼻で笑って 出戻ったって。 85 00:07:03,844 --> 00:07:10,518 はあ~ そんな噂が出回ってんのか。 86 00:07:10,518 --> 00:07:15,389 まあ 違えねえけど。 ハハハ! 違えねえのかい! 87 00:07:15,389 --> 00:07:18,859 ハハハ お栄らしいや。 88 00:07:18,859 --> 00:07:20,795 (笑い声) 89 00:07:20,795 --> 00:07:22,730 <この善次郎も➡ 90 00:07:22,730 --> 00:07:25,733 前に うちに出入りしていた 浮世絵師の一人だ。➡ 91 00:07:25,733 --> 00:07:29,503 画号は 溪斎英泉> 92 00:07:29,503 --> 00:07:32,406 そっちは近頃 景気いいらしいね。 93 00:07:32,406 --> 00:07:35,876 あの馬琴先生に気に入られたって。 94 00:07:35,876 --> 00:07:39,747 昔は 私とおんなじ からっ下手だったくせに。 95 00:07:39,747 --> 00:07:42,750 ああ? からっ下手? 96 00:07:42,750 --> 00:07:46,050 お前の色気のねえ枕絵と 一緒にするなよ。 97 00:07:50,891 --> 00:07:53,561 なあ 善さん。 98 00:07:53,561 --> 00:07:56,897 お前は 何で絵なんか描いてる? 99 00:07:56,897 --> 00:07:59,233 何でえ? いきなり。 100 00:07:59,233 --> 00:08:02,533 名か? それとも 銭か? 101 00:08:08,042 --> 00:08:10,511 いい女 抱くためだ。 102 00:08:10,511 --> 00:08:14,181 ハハハ ほかに何がある? 103 00:08:14,181 --> 00:08:17,518 何だい 人が真面目に話してんのに。 104 00:08:17,518 --> 00:08:21,818 ハハハハ! ハハハハハ。 105 00:08:29,864 --> 00:08:33,534 オランダ国から 絵の注文? (弥助)へえ。 106 00:08:33,534 --> 00:08:38,205 それが そのシーボルトって先生は 北斎先生の絵が好きで➡ 107 00:08:38,205 --> 00:08:41,876 世界一の絵師だって 言ってるってんで。 ふ~ん。 108 00:08:41,876 --> 00:08:45,546 …で 江戸の絵なら 何でもいいってか? 109 00:08:45,546 --> 00:08:50,418 それが 一つ お望みがあるそうで。 110 00:08:50,418 --> 00:08:54,221 蘭画です。 蘭画。 へえ。 111 00:08:54,221 --> 00:08:58,092 蘭画ってえと? 西洋の絵だよ。 えっ? 112 00:08:58,092 --> 00:09:01,495 北斎に 西洋の画法に 挑んでほしいんだとよ。 113 00:09:01,495 --> 00:09:04,165 何でえ。 114 00:09:04,165 --> 00:09:07,835 俺の腕を試そうって寸法か。 115 00:09:07,835 --> 00:09:10,738 面白えじゃねえか。 116 00:09:10,738 --> 00:09:12,706 <おやじ殿は➡ 117 00:09:12,706 --> 00:09:16,177 そのオランダからの注文を 15枚の絵とし➡ 118 00:09:16,177 --> 00:09:19,080 そのうち 12枚の下絵を あっという間に仕上げ➡ 119 00:09:19,080 --> 00:09:23,851 残りは 一番弟子の弥助さんと私が 描く事になった。➡ 120 00:09:23,851 --> 00:09:26,754 私の画題は 「遊女」だ> 121 00:09:26,754 --> 00:09:32,193 蘭画ってえのは 見えたものを そのまま描き写してやがる。 122 00:09:32,193 --> 00:09:39,493 あと この色。 ひとところでも 色が濃く薄く…。 123 00:09:43,537 --> 00:09:49,410 (カナリアの鳴き声) 124 00:09:49,410 --> 00:09:53,547 いいねえ あんたは。 125 00:09:53,547 --> 00:09:57,218 いつ見ても いい色だ。 126 00:09:57,218 --> 00:10:02,890 へえ~ こいつが 噂のカナリア鳥か。 127 00:10:02,890 --> 00:10:06,760 おお~ 善さん! 久しぶりじゃねえか! 128 00:10:06,760 --> 00:10:11,232 おうよ。 みんな 壁がパンパン膨れ上がりそうなほど➡ 129 00:10:11,232 --> 00:10:13,901 熱入れて取っ組んでるんで 入っていいか迷ったぜ。 130 00:10:13,901 --> 00:10:17,571 ヘヘヘヘヘ。 驚いたろう それ。 131 00:10:17,571 --> 00:10:20,474 馬琴先生が おやじ殿にってな。 132 00:10:20,474 --> 00:10:25,246 ああ。 何せ 馬琴先生と北斎おやじといやあ…。 133 00:10:25,246 --> 00:10:28,916 [ 回想 ] こいつに 草履をくわえさせろだと? 134 00:10:28,916 --> 00:10:34,616 (馬琴)そうだ! 絵師は 黙って言う事を聞け! 135 00:10:36,257 --> 00:10:39,957 誰が そんな汚え図 見て 喜ぶってんだい! 136 00:10:43,931 --> 00:10:49,603 そうも言うんなら てめえが 口にくわえてみやがれ! 137 00:10:49,603 --> 00:10:53,941 それ以来 けんか別れで 20年 一度も組んでねえ。 138 00:10:53,941 --> 00:10:56,844 今でも 顔合わす度に ほえ合う仲だって聞いたのによ。 139 00:10:56,844 --> 00:11:08,455 ♬~ 140 00:11:08,455 --> 00:11:13,894 おやじ殿の絵を見りゃ なるほどと思わぁ。 141 00:11:13,894 --> 00:11:18,566 けど いざ 蘭画と考えた途端に 手出しができなくなるんだ。 142 00:11:18,566 --> 00:11:23,237 ざまあねえよ。 遊女なんぞ 描き慣れてるはずなのに。 143 00:11:23,237 --> 00:11:26,140 そうか? 144 00:11:26,140 --> 00:11:30,110 俺には お前も パンパン膨れて見えるぜ。 145 00:11:30,110 --> 00:11:34,848 それ また 自分で色作ってんだろ。 146 00:11:34,848 --> 00:11:39,787 ああ。 私の作る色は おやじ殿のお気に入りなのさ。 147 00:11:39,787 --> 00:11:42,256 料理は とんと できなくても➡ 148 00:11:42,256 --> 00:11:44,191 石や根っこを 干したり煮たりするのは➡ 149 00:11:44,191 --> 00:11:46,594 苦にならないからね。 150 00:11:46,594 --> 00:11:49,930 本当か? 151 00:11:49,930 --> 00:11:52,833 本当は 己で思うがまま 色を差配してみたいって➡ 152 00:11:52,833 --> 00:11:55,533 思ってんじゃねえのか? 153 00:11:57,271 --> 00:12:00,541 お前は 昔っから色に目がねえ。 154 00:12:00,541 --> 00:12:02,476 どうやったら 蘭画みてえな 見た事もねえ色みが➡ 155 00:12:02,476 --> 00:12:07,476 自分に出せんのか 試したくて 描きたくて しかたがねえんだ。 156 00:12:09,883 --> 00:12:15,883 違うよ。 私は ただ おやじ殿の役に立とうと…。 157 00:12:17,758 --> 00:12:22,463 俺相手に しらは切れねえぜ。 158 00:12:22,463 --> 00:12:25,899 お前は 前から 描きたい絵を ず~っと胸の中で温めてる。 159 00:12:25,899 --> 00:12:30,237 その ちっこい胸によ。 「ちっこい」は余計だ。 160 00:12:30,237 --> 00:12:35,109 フフッ やけるねえ…。 161 00:12:35,109 --> 00:12:38,409 お前は 目指すべきものを持ってる。 162 00:12:41,582 --> 00:12:44,485 何 訳の分かんねえ事 言ってんだい。 163 00:12:44,485 --> 00:12:47,254 ちょっと売れたからって 上から もの言いやがって。 164 00:12:47,254 --> 00:12:51,925 ハハハハ。 俺が 今 何て いわれてるか 知ってるか? 165 00:12:51,925 --> 00:12:55,796 「溪斎英泉は 北斎の再来か」だぜ。 166 00:12:55,796 --> 00:12:58,265 豪儀じゃねえか。 167 00:12:58,265 --> 00:13:02,870 ああ おやじ殿も よく言い暮らしてたな。 168 00:13:02,870 --> 00:13:06,740 「技を磨きてえなら まねて まねて 体の中にたたき込め。➡ 169 00:13:06,740 --> 00:13:09,743 技もねえのに 画風がどうのと よそ見をすりゃあ➡ 170 00:13:09,743 --> 00:13:12,880 先は行き止まりだ」ってね。 171 00:13:12,880 --> 00:13:20,754 けどよ… フフフ 再来じゃあな。 172 00:13:20,754 --> 00:13:24,224 私は まだ そんなとこ 行き着いてもいない。 173 00:13:24,224 --> 00:13:28,095 どうしたら もっと おやじ殿が 思うように描けるのか➡ 174 00:13:28,095 --> 00:13:31,795 おやじ殿の絵の役に立てんのか…。 175 00:13:34,568 --> 00:13:38,238 よし。 176 00:13:38,238 --> 00:13:40,574 いいとこ 連れてってやる。 177 00:13:40,574 --> 00:13:43,243 まだ 仕事だ。 ああ? 178 00:13:43,243 --> 00:13:46,146 たまには 仕事なんか うっちゃるもんだ。 179 00:13:46,146 --> 00:13:48,446 ほら。 えっ ちょ…。 180 00:13:52,920 --> 00:13:56,620 (弥助)どうした? ちょっと そこまで。 181 00:13:58,258 --> 00:14:08,535 ♬「とんび からすに ならるるならば」 182 00:14:08,535 --> 00:14:19,179 ♬「はあ 飛んで行きたや 主の側」 183 00:14:19,179 --> 00:14:26,086 ハハハ。 ♬「つるつるつん」 ♬「はあ つるつるつん」 184 00:14:26,086 --> 00:14:29,823 ♬「はあ」 ♬「ちりちりちん」 185 00:14:29,823 --> 00:14:39,900 ♬~ 186 00:14:39,900 --> 00:14:41,835 ♬「ちりちりちん」 ♬「はっ」 187 00:14:41,835 --> 00:14:44,238 ♬「つるつるつん」 ♬「よっ」 188 00:14:44,238 --> 00:14:51,578 ♬「とんび からすに ならるるならば」 189 00:14:51,578 --> 00:14:55,249 ♬「飛んで行きたや」 190 00:14:55,249 --> 00:14:58,152 よっ 善さん。 よう。 調子は どうでえ? 191 00:14:58,152 --> 00:15:00,852 見てのとおりですよ。 192 00:15:10,731 --> 00:15:14,735 <善さんは かつては 二本差しのお侍だったと➡ 193 00:15:14,735 --> 00:15:16,870 誰かに聞いた事がある。➡ 194 00:15:16,870 --> 00:15:20,207 それ以上は 何も知らない> 195 00:15:20,207 --> 00:15:31,218 ♬~ 196 00:15:31,218 --> 00:15:34,888 (お滝)吉原一の合奏です。 197 00:15:34,888 --> 00:15:38,559 すげえ…。 198 00:15:38,559 --> 00:15:45,232 ♬~ 199 00:15:45,232 --> 00:15:52,105 俺の妹だよ。 3人とも。 200 00:15:52,105 --> 00:15:56,243 俺が養いきれずに 芸者の置き屋に預けた。 201 00:15:56,243 --> 00:16:01,515 それを恨みもせず こうして 芸を身につけてくれた。 202 00:16:01,515 --> 00:16:15,529 ♬~ 203 00:16:15,529 --> 00:16:17,865 はっ。 204 00:16:17,865 --> 00:16:41,889 ♬~ 205 00:16:41,889 --> 00:16:43,824 はっ。 206 00:16:43,824 --> 00:16:47,761 ♬~ 207 00:16:47,761 --> 00:16:52,533 おい お栄も来い。 どうぞ どうぞ。 208 00:16:52,533 --> 00:16:54,468 ああ… いいよ 私は。 209 00:16:54,468 --> 00:16:56,904 ほらほらほら! 210 00:16:56,904 --> 00:17:11,418 ♬~ 211 00:17:11,418 --> 00:17:13,854 <目を凝らせば➡ 212 00:17:13,854 --> 00:17:19,526 この世の どこもかしこもが 色の濃い淡いで出来ている> 213 00:17:19,526 --> 00:17:45,218 ♬~ 214 00:17:45,218 --> 00:17:49,556 <人の顔も体も 光の当たり方で色が違う。➡ 215 00:17:49,556 --> 00:17:51,892 一色じゃない。➡ 216 00:17:51,892 --> 00:17:55,228 光が強く当たっているところは 色が薄く➡ 217 00:17:55,228 --> 00:17:59,900 暗い場では 色は沈む> 218 00:17:59,900 --> 00:18:05,900 そうか。 光だ…。 219 00:18:07,708 --> 00:18:10,510 光が…➡ 220 00:18:10,510 --> 00:18:16,383 光と影が 色や形を作ってるんだ。 221 00:18:16,383 --> 00:18:35,083 ♬~ 222 00:18:45,412 --> 00:18:55,088 辛うじて 遠い近いはある。 影もついてる。 223 00:18:55,088 --> 00:19:01,795 けれど まるで コクがねえや。 224 00:19:01,795 --> 00:19:06,166 あの~… 描き直させてやもらえやせんか。 225 00:19:06,166 --> 00:19:09,503 このままじゃ おやじ殿の名折れになりやす。 226 00:19:09,503 --> 00:19:12,172 明日 納めるぞ。 227 00:19:12,172 --> 00:19:16,843 ちょっと待っとくれよ。 こんな代物 納められねえよ。 228 00:19:16,843 --> 00:19:19,179 なら お前ら いつ 満足する!? 229 00:19:19,179 --> 00:19:24,851 あと3日か? それとも 30日か? 230 00:19:24,851 --> 00:19:28,551 3年かければ きっと できると 言い切れんのかい! 231 00:19:31,191 --> 00:19:38,532 三流の玄人でも 一流の素人に勝る。 232 00:19:38,532 --> 00:19:43,403 なぜだか分かるか? 233 00:19:43,403 --> 00:19:48,208 こうして 恥を忍ぶからだ! 234 00:19:48,208 --> 00:19:50,877 己が満足できねえもんでも➡ 235 00:19:50,877 --> 00:19:55,749 歯ぁ食いしばって 世間の目にさらす! 236 00:19:55,749 --> 00:20:02,222 悔いてる暇あったら とっとと次の仕事にかかれ。 237 00:20:02,222 --> 00:20:05,125 お栄。 238 00:20:05,125 --> 00:20:09,425 お前が持ってけ。 239 00:20:17,237 --> 00:20:19,906 へえ。 240 00:20:19,906 --> 00:20:31,251 ♬~ 241 00:20:31,251 --> 00:20:33,587 お待ちしておりました。 242 00:20:33,587 --> 00:20:37,287 さあ こちらでございます。 どうぞ。 243 00:20:41,928 --> 00:20:47,601 いやあ よか絵ば ありがとうございました。 244 00:20:47,601 --> 00:20:50,937 どうぞ。 245 00:20:50,937 --> 00:20:55,809 残りの金は 明日お届けすると 言うとらしたです。 246 00:20:55,809 --> 00:20:59,613 へえ…。 247 00:20:59,613 --> 00:21:03,483 あっ… 本当にいいんですか? あの絵で。 248 00:21:03,483 --> 00:21:08,221 ああ もちろんですたい。 さすがは北斎先生だって➡ 249 00:21:08,221 --> 00:21:11,892 シーボルト先生も 死ぬほど喜んでおられました。 250 00:21:11,892 --> 00:21:15,562 そうですか…。 251 00:21:15,562 --> 00:21:18,899 あなた様は ご覧になったんですか? 252 00:21:18,899 --> 00:21:24,571 ええ 拝見しましたばい。 いかがでした? 253 00:21:24,571 --> 00:21:32,913 う~ん… あっ 遊女の絵は気になったです。 254 00:21:32,913 --> 00:21:36,583 気になった? 255 00:21:36,583 --> 00:21:40,253 あいは きっと 北斎先生の筆じゃなかと。 256 00:21:40,253 --> 00:21:44,591 息ばしとらん へったくそな絵です。 257 00:21:44,591 --> 00:21:47,260 何か描こうとして➡ 258 00:21:47,260 --> 00:21:52,132 思いに 手のついてっとらんと でしょうな。 うん。 259 00:21:52,132 --> 00:21:56,269 へったくそだと…? 260 00:21:56,269 --> 00:21:59,940 思いに 手がついてっていないなんてな! 261 00:21:59,940 --> 00:22:03,543 そんな事は 己で一番分かってんだよ! 262 00:22:03,543 --> 00:22:06,843 こんちくしょう…。 263 00:22:14,187 --> 00:22:18,091 お~い 何してんだ? お栄。 264 00:22:18,091 --> 00:22:22,091 己の腕に腹が立つのさ。 265 00:22:24,831 --> 00:22:29,569 わ~っ! 266 00:22:29,569 --> 00:22:31,869 はあ…。 267 00:22:34,241 --> 00:22:39,913 何で 私は 絵なんてもんに 魅入られちまったんだろうね。 268 00:22:39,913 --> 00:22:42,613 苦しいばっかりだ。 269 00:22:44,251 --> 00:23:00,533 ♬~ 270 00:23:00,533 --> 00:23:08,233 俺だって お前 満足なんざしてねえよ。 271 00:23:12,545 --> 00:23:19,886 ああ もっとうまく もっと もっとって➡ 272 00:23:19,886 --> 00:23:24,557 いつも願うのに➡ 273 00:23:24,557 --> 00:23:31,557 思う先から 描きてえもんが逃げていきやがる。 274 00:23:33,566 --> 00:23:36,236 おやじ殿でもか? 275 00:23:36,236 --> 00:23:38,936 あったぼうよ。 276 00:23:42,909 --> 00:23:47,209 お前なんかに満足されて たまるかい。 277 00:23:49,582 --> 00:23:52,485 よ~し。 278 00:23:52,485 --> 00:23:56,456 この橋を渡ったら 忘れるぞ。 279 00:23:56,456 --> 00:24:03,863 忘れて 俺たちは また 性根入れて あがいて あがいて➡ 280 00:24:03,863 --> 00:24:08,163 ヘヘ あがきまくるんだ! あっ! 281 00:24:14,207 --> 00:24:17,110 <あがいて あがいて➡ 282 00:24:17,110 --> 00:24:21,548 あがいて あがいて…> 283 00:24:21,548 --> 00:24:38,898 ♬~ 284 00:24:38,898 --> 00:24:41,568 あっ。 285 00:24:41,568 --> 00:24:45,438 ああ。 食わねえかい。 286 00:24:45,438 --> 00:24:49,909 ≪(小兎)なあ 善さん 来てくれないかね うちに。 287 00:24:49,909 --> 00:24:54,581 ああ? お栄の婿に 入ってもらうって事だよ。➡ 288 00:24:54,581 --> 00:24:58,451 そしたら お前さんだって 安心して隠居できるし…。 289 00:24:58,451 --> 00:25:03,857 はっ 俺は隠居なんかしねえよ。 婿養子なんか要るかい。 290 00:25:03,857 --> 00:25:07,727 ちょいと おっ母さん。 何 勝手に話してんだい。 291 00:25:07,727 --> 00:25:10,196 だってさあ お前…。➡ 292 00:25:10,196 --> 00:25:15,535 あら? 善さん。 今の聞かれちまったかね? 293 00:25:15,535 --> 00:25:18,835 ハハハハ。 いつもいつも余計な事を…。 294 00:25:20,407 --> 00:25:23,877 おやじ殿? 295 00:25:23,877 --> 00:25:27,547 大丈夫か? おおお… お前さん! 296 00:25:27,547 --> 00:25:30,450 おやじ殿? おやじ殿!? 297 00:25:30,450 --> 00:25:33,219 (弥助)おやじ殿!? おやじ殿! 298 00:25:33,219 --> 00:25:36,122 弥助。 医者だ。 医者だよ 医者。 299 00:25:36,122 --> 00:25:42,562 おやじ殿… しっかりしとくれよ! 後生だからさ! 300 00:25:42,562 --> 00:26:11,724 ♬~ 301 00:26:11,724 --> 00:26:16,863 あのしるしは 中気でござろう。 302 00:26:16,863 --> 00:26:23,563 一たび寝ついてしまえば いずれ ここも呆ける。 303 00:26:31,211 --> 00:26:34,547 <おやじ殿が倒れたという噂は➡ 304 00:26:34,547 --> 00:26:40,887 すぐに 江戸だけではなく 諸国の版元や絵師に知れ渡った> 305 00:26:40,887 --> 00:26:43,556 どうも ありがとうございました。 306 00:26:43,556 --> 00:26:46,556 五助。 へえ。 307 00:26:48,228 --> 00:26:51,898 ああ… は~い。 308 00:26:51,898 --> 00:26:56,198 は~い 気持ちいいね。 309 00:27:01,708 --> 00:27:06,412 お栄さん。 ここは あっしらが なんとか しのぎやすから➡ 310 00:27:06,412 --> 00:27:09,849 おやじ殿の介抱に専念して下さい。 311 00:27:09,849 --> 00:27:14,149 うん… ありがとう。 312 00:27:15,722 --> 00:27:17,724 おい ちょうさん。 へえ。 313 00:27:17,724 --> 00:27:22,428 こっち 頼まあ。 はいよ。 何でもやりますぜ。 314 00:27:22,428 --> 00:27:28,535 (小兎)ああ~ うまくのめたねえ。 315 00:27:28,535 --> 00:27:32,872 お栄が作ってくれたのさ。 ねえ。 316 00:27:32,872 --> 00:27:35,208 ああ ちょうどよかった。 317 00:27:35,208 --> 00:27:38,545 下帯をきれいに洗っといとくれ。 もう替えがないんだ。 318 00:27:38,545 --> 00:27:42,545 なあ おっ母さん…。 (小兎)ん? 何だい? 319 00:27:44,217 --> 00:27:46,886 もう10日だ。 320 00:27:46,886 --> 00:27:52,886 おやじ殿 そろそろ 筆を持つ修練 始めてみても…。 321 00:27:55,895 --> 00:27:58,565 何だって? 322 00:27:58,565 --> 00:28:02,835 養生してる最中の親に向かって よくも そんな…。 323 00:28:02,835 --> 00:28:06,172 でも… これじゃ まるで赤ん坊だ。 324 00:28:06,172 --> 00:28:08,841 なあ おっ母さん。 325 00:28:08,841 --> 00:28:13,713 おやじ殿は… おやじ殿にとって 絵を描くって事は…。 326 00:28:13,713 --> 00:28:15,715 ご覧よ! 327 00:28:15,715 --> 00:28:18,715 これ以上 どこに かじる すねがあるってんだい! 328 00:28:20,453 --> 00:28:24,153 ひどいよ お前は ひどいよ…。 329 00:28:46,212 --> 00:29:30,723 ♬~ 330 00:29:30,723 --> 00:29:35,194 <絵師としての おやじ殿を 失いたくない。➡ 331 00:29:35,194 --> 00:29:41,067 これは 私の欲なんだろうか> 332 00:29:41,067 --> 00:29:55,515 ♬~ 333 00:29:55,515 --> 00:29:58,217 ≪御免! 334 00:29:58,217 --> 00:30:00,917 何だい…。 335 00:30:04,557 --> 00:30:07,226 ああ 滝沢と申す。 336 00:30:07,226 --> 00:30:11,898 付近をたまたま… たまたま 通りすがった故に➡ 337 00:30:11,898 --> 00:30:14,233 北斎翁にお取り次ぎを願いたい。 338 00:30:14,233 --> 00:30:16,169 滝沢様? 339 00:30:16,169 --> 00:30:20,573 鳥を逃がしてしもうたそうな。 340 00:30:20,573 --> 00:30:24,444 あれほどのカナリアは おらんというのに もう➡ 341 00:30:24,444 --> 00:30:28,915 粗忽 軽率 愚の骨頂 極まりないわ。 342 00:30:28,915 --> 00:30:32,915 滝沢馬琴先生…。 343 00:30:47,934 --> 00:30:51,270 無様よのう! 344 00:30:51,270 --> 00:31:00,570 葛飾北斎が… こんな掃きだめで恍惚としおって。 345 00:31:05,218 --> 00:31:10,890 絵師風情が このまま 枯れ木のごとく枯れ果てようと➡ 346 00:31:10,890 --> 00:31:13,793 わしには 何の痛痒もござらん。 347 00:31:13,793 --> 00:31:19,899 人並みの往生を望もうとも わしの知ったこっちゃない。 348 00:31:19,899 --> 00:31:23,599 だが…。 349 00:31:28,241 --> 00:31:37,541 わしは かような往生は望まぬな! 350 00:31:39,252 --> 00:31:45,925 たとえ右腕が動かずとも この目が見えぬ仕儀に至りても➡ 351 00:31:45,925 --> 00:31:50,263 わしは 必ずや戯作を続ける。 352 00:31:50,263 --> 00:31:52,198 まだ何も書いておらぬ。 353 00:31:52,198 --> 00:31:57,603 己の思うように書けた事などは ただの一度もござらぬ。 354 00:31:57,603 --> 00:32:04,603 その方も… さようではなかったのか? 355 00:32:11,551 --> 00:32:18,424 葛飾北斎! いつまで養生しておるつもりぞ! 356 00:32:18,424 --> 00:32:22,562 ここで もう満ち足りたのか! 357 00:32:22,562 --> 00:32:29,862 描きたき事 挑みたき事は まだ 山とあるのではなかったのか! 358 00:32:34,173 --> 00:32:36,873 あの野郎…。 359 00:32:44,250 --> 00:32:47,587 そなたが お栄さんか。 360 00:32:47,587 --> 00:32:50,923 拙宅で取れた柚子だ。 361 00:32:50,923 --> 00:32:55,595 これを細かく刻んで酒を加え 焦がさぬように煮詰めろ。 362 00:32:55,595 --> 00:32:58,264 水あめのごとき様子にならば 火から下ろし➡ 363 00:32:58,264 --> 00:33:01,167 白湯で割って 口に含ませてやれ。 364 00:33:01,167 --> 00:33:03,870 柚子と酒? さよう。 365 00:33:03,870 --> 00:33:08,541 酒の毒は 煮詰めれば とぶ。 366 00:33:08,541 --> 00:33:14,241 柚子を刻むは 竹べら。 煮るは 土鍋に限る。 367 00:33:17,884 --> 00:33:20,786 ≪おおお…。 368 00:33:20,786 --> 00:33:23,786 おやじ殿…。 369 00:33:25,758 --> 00:33:29,228 ああ…。 ああ… どうした どうした! 370 00:33:29,228 --> 00:33:33,099 どっか痛むのかい? おお… お栄 お栄。 371 00:33:33,099 --> 00:33:35,902 無茶しないどくれよ! 骨でも折れたら…。 372 00:33:35,902 --> 00:33:38,902 お栄…。 ああ… うわっ! 373 00:33:41,774 --> 00:33:44,074 お栄…。 374 00:33:46,245 --> 00:33:55,545 養生は… もう… 飽いた。 375 00:34:01,727 --> 00:34:04,530 はっ…。 376 00:34:04,530 --> 00:34:07,867 よし。 377 00:34:07,867 --> 00:34:39,799 ♬~ 378 00:34:39,799 --> 00:34:44,236 <私は 柚子を刻み続けた。➡ 379 00:34:44,236 --> 00:34:47,573 これさえ飲んだら 必ず 元に戻れる。➡ 380 00:34:47,573 --> 00:34:52,573 おやじ殿は そう信じているようだった> 381 00:35:18,204 --> 00:35:21,204 お栄 帰ったよ。 382 00:35:29,215 --> 00:35:34,553 また 作ってるのかえ。 ああ。 もう無くなると思うと➡ 383 00:35:34,553 --> 00:35:37,223 見計らったみたいに 届けてくれんだよ。 384 00:35:37,223 --> 00:35:39,923 ありがたいよ。 385 00:35:52,238 --> 00:35:55,141 お栄。 あっ? 386 00:35:55,141 --> 00:35:57,841 (小兎)お父っつぁんを頼んだよ。 387 00:36:20,399 --> 00:36:24,170 <季節が変わった頃➡ 388 00:36:24,170 --> 00:36:28,074 おやじ殿は 絵こそ まだ描けないものの➡ 389 00:36:28,074 --> 00:36:33,074 筆を持っても 落とさないところまでは回復した> 390 00:36:41,887 --> 00:36:46,887 <亡くなったのは おっ母さんだった> 391 00:36:59,238 --> 00:37:01,507 どうも お待たせしました。 392 00:37:01,507 --> 00:37:04,207 ありがとうございました。 393 00:37:14,520 --> 00:37:17,189 よう。 394 00:37:17,189 --> 00:37:21,060 どうした? こんな所で。 乙粋じゃねえか。 395 00:37:21,060 --> 00:37:25,531 西村屋に品を納めた帰りだよ。 396 00:37:25,531 --> 00:37:29,201 おやじ殿の安茶と大福餅さ。 397 00:37:29,201 --> 00:37:33,072 もう描いてるらしいじゃねえか。 398 00:37:33,072 --> 00:37:36,542 ああ お医者も目ぇ丸くしてる。 399 00:37:36,542 --> 00:37:42,842 もう二度と描く事を 手放すまいって思ってんだろうな。 400 00:37:45,885 --> 00:37:48,788 お前は? 401 00:37:48,788 --> 00:37:51,488 お前も描いてんだろ? 402 00:37:53,225 --> 00:37:56,225 私か…。 403 00:37:57,897 --> 00:38:01,897 私 何なんだろうな…。 404 00:38:04,703 --> 00:38:09,842 おやじ殿の事ばっかり考えて…➡ 405 00:38:09,842 --> 00:38:14,542 私 ちっともおっ母さんの事なんか 思いもつかなかった。 406 00:38:18,184 --> 00:38:21,854 そうさ…。 407 00:38:21,854 --> 00:38:30,196 私は おやじ殿を… おやじ殿の 絵を失うのが怖かったんだよ。 408 00:38:30,196 --> 00:38:37,196 親よりも絵が大事なんて 私ってやつは…。 409 00:38:39,205 --> 00:38:42,107 大丈夫だよ。 410 00:38:42,107 --> 00:38:45,107 おっ母さん きっと 全部分かってる。 411 00:38:47,880 --> 00:38:53,580 分かってるさ。 大丈夫。 412 00:39:00,226 --> 00:39:04,496 善さんにも いろいろ世話になったな。 413 00:39:04,496 --> 00:39:08,167 おっ母さんの野辺送りには 妹さんたちや…➡ 414 00:39:08,167 --> 00:39:13,038 あの お滝さんだっけ。 あの人も来てくれて。 415 00:39:13,038 --> 00:39:17,176 本当 ありがたかったよ。 416 00:39:17,176 --> 00:39:22,176 そうか お滝も行ったのか。 417 00:39:23,849 --> 00:39:26,185 あいつ 毎日 顔突き合わせてんのに➡ 418 00:39:26,185 --> 00:39:29,485 そんな事 ひと言も言いやがらねえから。 419 00:39:31,523 --> 00:39:35,194 毎日? 420 00:39:35,194 --> 00:39:40,494 ああ 今 一緒に住んでる。 421 00:39:49,208 --> 00:39:53,078 おっ そうだった。 422 00:39:53,078 --> 00:39:57,378 これ これ。 これ どうだ? 423 00:40:06,558 --> 00:40:10,896 何? この青。 ヘヘッ。 ベロよ。 424 00:40:10,896 --> 00:40:14,566 浮世絵で このベロ使ったの 俺が初めてなんだぜ。 425 00:40:14,566 --> 00:40:18,237 おやじ殿に見てもらいてえと 思ってよ。 426 00:40:18,237 --> 00:40:21,573 うん… 深い青だ。 427 00:40:21,573 --> 00:40:24,243 普通の藍じゃないね これ。 428 00:40:24,243 --> 00:40:27,943 おうよ。 さすが お栄だ。 429 00:40:29,581 --> 00:40:34,453 あ~ お前に 先に見せるんじゃなかったな。 430 00:40:34,453 --> 00:40:36,455 親子ともども➡ 431 00:40:36,455 --> 00:40:40,592 あっと のけぞらせてやるつもり だったのによ。 432 00:40:40,592 --> 00:40:42,592 ああ? 433 00:40:44,463 --> 00:40:47,463 どうした? 434 00:40:50,602 --> 00:40:53,939 具合でも悪いのか? 435 00:40:53,939 --> 00:41:49,928 ♬~ 436 00:41:49,928 --> 00:41:53,799 <善さんの優しさは 毒だ。➡ 437 00:41:53,799 --> 00:41:59,099 私は とうとう 毒を食らう> 438 00:42:00,873 --> 00:42:03,542 439 00:42:03,542 --> 00:42:21,093 ♬~ 440 00:42:21,093 --> 00:42:24,563 <一度限りと思ってたのに…➡ 441 00:42:24,563 --> 00:42:29,435 こんな事になっちまって お滝さんに気が差さないのかい?> 442 00:42:29,435 --> 00:42:33,906 差すよ。 あっし あの人 嫌いじゃない。 443 00:42:33,906 --> 00:42:36,575 <本当かね?➡ 444 00:42:36,575 --> 00:42:38,911 いっそ奪っちまいたいって 思ってるんだろう> 445 00:42:38,911 --> 00:42:40,846 うるさい うるさい。 446 00:42:40,846 --> 00:42:43,782 私は きっと 相手は 誰だってよかったんだよ。 447 00:42:43,782 --> 00:42:47,920 たまさか 気の合う男が そばにいただけの事。 448 00:42:47,920 --> 00:42:50,589 これから先 どうなるかなんて 思案に暮れるのは➡ 449 00:42:50,589 --> 00:42:53,289 真っ平ごめんだよ。 450 00:42:57,463 --> 00:43:00,265 はあ いいじゃないか。 451 00:43:00,265 --> 00:43:04,870 朝になれば 家に帰っていくんだから。 452 00:43:04,870 --> 00:43:08,540 (小声で) あれ 誰としゃべってんですかい? 453 00:43:08,540 --> 00:43:11,443 知るかい。 454 00:43:11,443 --> 00:43:16,143 じゃあ あっしは これで。 455 00:43:18,217 --> 00:43:22,087 ほら 行こう。 気ぃ付けて。 456 00:43:22,087 --> 00:43:24,556 こいつは また。 おう。 457 00:43:24,556 --> 00:43:27,856 <弥助さんは 独り立ちする事になった> 458 00:43:31,897 --> 00:43:36,897 459 00:43:59,591 --> 00:44:03,195 おやじ殿! 火事ですぜ! 佐久間町の辺りだって!➡ 460 00:44:03,195 --> 00:44:05,531 もう 京橋辺りまで 火が来てるって。 461 00:44:05,531 --> 00:44:09,401 そりゃあ 芝まで火にのまれるぞ。 462 00:44:09,401 --> 00:44:12,204 じゃ 善さんの住む惣十郎町も…。 463 00:44:12,204 --> 00:44:32,524 ♬~ 464 00:44:32,524 --> 00:44:37,229 <昼夜を問わず 江戸は よく燃える> 465 00:44:37,229 --> 00:44:41,567 善さん…。 466 00:44:41,567 --> 00:44:43,502 <天を焦がし➡ 467 00:44:43,502 --> 00:44:47,906 朝焼けでも夕焼けでもない色を 見せる。➡ 468 00:44:47,906 --> 00:44:52,578 善さんの家は 焼け落ち それから3年➡ 469 00:44:52,578 --> 00:44:58,578 生きていると噂は聞くものの 姿を見せる事はなかった> 470 00:45:22,207 --> 00:45:24,876 (与八)あの己丑の大火で➡ 471 00:45:24,876 --> 00:45:31,550 手前ども西村屋は 大事な版木の全てを失いました。 472 00:45:31,550 --> 00:45:33,885 うちだけじゃない。 473 00:45:33,885 --> 00:45:39,224 江戸の版元のほとんどが 同様のありさまです。 474 00:45:39,224 --> 00:45:48,567 でも うちは だからこそ やってやりたいんです。 475 00:45:48,567 --> 00:45:52,267 こいつは 大博打になるな。 476 00:45:53,905 --> 00:45:58,905 ねえ おやじ殿は 何を描く? 477 00:46:01,513 --> 00:46:04,513 そりゃあもう決まってる。 478 00:46:11,857 --> 00:46:14,557 お待たせ致しやした。 479 00:46:20,198 --> 00:46:22,534 これは…。 480 00:46:22,534 --> 00:46:26,204 <おやじ殿は どんどん富士を描き➡ 481 00:46:26,204 --> 00:46:29,541 西村屋は 「富嶽三十六景」と名付け➡ 482 00:46:29,541 --> 00:46:31,877 鳴り物入りで売り出した。➡ 483 00:46:31,877 --> 00:46:35,177 ほかの仕事は 一切 私が引き受けた> 484 00:46:39,551 --> 00:46:42,888 <「富嶽三十六景」は 売れに売れまくって➡ 485 00:46:42,888 --> 00:46:45,557 新しい名所絵の流行りを 作り出し➡ 486 00:46:45,557 --> 00:46:49,227 日本諸国 北は松前 南は薩州まで➡ 487 00:46:49,227 --> 00:46:53,565 あらゆる所で おやじ殿の富士が 拝まれるようになった。➡ 488 00:46:53,565 --> 00:46:58,236 北斎の名を知らぬ者は いなくなった> 489 00:46:58,236 --> 00:47:02,107 途中で落とすんじゃねえぞ。 はい。 ねえさん 頂いていきます! 490 00:47:02,107 --> 00:47:04,509 ご苦労さん。 491 00:47:04,509 --> 00:47:06,845 じゃあ ねえさん あっしらは これで。 ああ。 492 00:47:06,845 --> 00:47:09,845 これ。 へえ。 493 00:47:14,186 --> 00:47:17,186 ありがとよ。 494 00:47:22,060 --> 00:47:26,060 あっしも これで。 失礼しやす。 ご苦労さん。 495 00:47:41,413 --> 00:47:44,413 よう。 496 00:47:47,886 --> 00:47:50,586 変わりはねえか? 497 00:47:53,225 --> 00:47:55,925 変わりねえみてえだな。 498 00:47:57,896 --> 00:48:03,502 何だよ その面。 びっくりし過ぎだろう。 499 00:48:03,502 --> 00:48:09,841 変わりねえ訳ねえだろ。 何年たってると思ってんだい。 500 00:48:09,841 --> 00:48:15,514 ご挨拶だな。 桜餅買ってきたのによ。 501 00:48:15,514 --> 00:48:18,183 おやじ殿は? 502 00:48:18,183 --> 00:48:22,854 絵 描きに出かけちまったよ。 そっちは? 503 00:48:22,854 --> 00:48:24,790 ん? 504 00:48:24,790 --> 00:48:31,863 根津で女楼屋してるなんてえ 聞いたけど うそだろ? 505 00:48:31,863 --> 00:48:34,766 ああ 本当さ。 506 00:48:34,766 --> 00:48:38,537 所帯持って女楼屋始めた。 507 00:48:38,537 --> 00:48:41,873 そうか。 508 00:48:41,873 --> 00:48:47,212 ハハッ! しっかし…➡ 509 00:48:47,212 --> 00:48:50,549 ますます売れっ子だってえのに 本当に変わりねえな。 510 00:48:50,549 --> 00:48:53,218 もうちっと いい暮らし できそうなもんだ。 511 00:48:53,218 --> 00:48:56,555 食って寝られりゃ上等だよ。 512 00:48:56,555 --> 00:49:02,255 おかげさまで 酒も煙草も 好きな時に好きなだけ味わえる。 513 00:49:06,364 --> 00:49:10,664 私は 描いてさえいれば幸せさ。 514 00:49:14,039 --> 00:49:19,177 この間の「菊に虻」 あれ お前の筆だろ。 515 00:49:19,177 --> 00:49:24,049 虻は おやじ殿。 でも 菊はお前だ。 516 00:49:24,049 --> 00:49:27,519 それから 「牡丹に蝶」。 517 00:49:27,519 --> 00:49:31,857 あっちは 花が おやじ殿で 蝶がお前。 518 00:49:31,857 --> 00:49:34,192 当たりか? 519 00:49:34,192 --> 00:49:40,065 分かっちまうのかい。 そりゃ よくねえな。 520 00:49:40,065 --> 00:49:44,365 お前の絵には 色気がねえからな。 ほっとけ。 521 00:49:47,739 --> 00:49:51,543 お前も もう てめえの名前で 注文が来てるらしいじゃねえか。 522 00:49:51,543 --> 00:49:54,543 これからは もっと 己の名前で描きゃあいい。 523 00:49:57,883 --> 00:50:03,883 おやじ殿は 私にとっちゃ光だよ。 524 00:50:05,557 --> 00:50:09,427 眩すぎて 到底届かない。 525 00:50:09,427 --> 00:50:16,127 それに おやじ殿の名で描いた方が よっぽど高く売れるってのにさ。 526 00:50:19,905 --> 00:50:22,574 これ 桜か? 527 00:50:22,574 --> 00:50:28,274 ああ。 向島の料理屋から受けた注文でね。 528 00:50:30,448 --> 00:50:37,589 灯籠と こっちも灯籠って事は これ 夜桜か? 529 00:50:37,589 --> 00:50:42,260 座敷に飾って お客の目に触れるのは夜の宴だろ。 530 00:50:42,260 --> 00:50:46,131 ぼんぼりをともした 薄闇の床の間には➡ 531 00:50:46,131 --> 00:50:49,935 こういうのもいいかと思ってさ。 532 00:50:49,935 --> 00:50:53,605 夜に夜の景色 見せんのか。 533 00:50:53,605 --> 00:51:00,305 夜の闇の中にも いくらだって 光と影があるだろ。 534 00:51:01,880 --> 00:51:06,880 闇のおかげで 光も いろんな色を見せる。 535 00:51:08,753 --> 00:51:15,226 この子は今 灯籠の明かりを頼りに 歌を詠もうとしてるんだ。 536 00:51:15,226 --> 00:51:21,526 夜には きっと 昼には書けない歌が詠める。 537 00:51:27,806 --> 00:51:31,106 本当 お前ってやつは…。 538 00:51:32,777 --> 00:51:36,247 お前は 本当 己の腕を分かっちゃいねえんだよ。 539 00:51:36,247 --> 00:51:38,947 あきれるほど。 540 00:51:41,920 --> 00:51:46,620 どういう意味だ? 意味が分からねえ。 541 00:51:48,259 --> 00:51:51,930 俺にとっちゃ お前も光って事よ。 542 00:51:51,930 --> 00:51:57,230 くらくらする 眩しい光だ。 543 00:51:59,804 --> 00:52:02,540 ハハッ…。 544 00:52:02,540 --> 00:52:07,412 俺は もう 絵は描かねえ。 545 00:52:07,412 --> 00:52:10,882 お前は描き続けろ。 546 00:52:10,882 --> 00:53:15,182 ♬~ 547 00:53:27,225 --> 00:53:31,525 (笑い声) 548 00:53:37,235 --> 00:53:40,905 家移りは これっきりにしてもらうからね。 549 00:53:40,905 --> 00:53:44,576 もう ごめんだよ…。 550 00:53:44,576 --> 00:53:47,276 奥だぞ。 551 00:53:50,248 --> 00:53:53,548 じゃあ あっしは これで。 ああ。 552 00:53:56,121 --> 00:53:59,257 <おやじ殿は 80を過ぎた頃から➡ 553 00:53:59,257 --> 00:54:03,957 徐々に一点物の絵に 力を注ぐようになった> 554 00:54:15,740 --> 00:54:18,543 帰ったよ。 555 00:54:18,543 --> 00:54:25,543 おや 珍しい。 起きてたのかえ。 お栄…。 556 00:54:45,770 --> 00:54:48,907 西村屋さんに スイカもらったけど➡ 557 00:54:48,907 --> 00:54:52,243 長屋の女将さんに あげちゃっていいよね。 558 00:54:52,243 --> 00:54:54,913 私 こんなの切るの面倒くさくて。 559 00:54:54,913 --> 00:54:58,583 お栄。 えっ? 560 00:54:58,583 --> 00:55:01,883 善次郎が死んだ。 561 00:55:06,858 --> 00:55:12,730 寝ぼけてんのかえ? 縁起でもない夢…。 562 00:55:12,730 --> 00:55:17,030 さっき 女房から使えが来た。 563 00:55:19,204 --> 00:55:23,204 今夜 野辺送りだそうだ。 564 00:55:30,548 --> 00:55:33,248 あっ そう。 565 00:55:34,886 --> 00:55:38,556 嘉永元年 夏➡ 566 00:55:38,556 --> 00:55:43,856 溪斎英泉こと 池田善次郎 死んじまうってね…。 567 00:55:46,231 --> 00:55:53,231 あんな ずうずうしいのが 風邪なんぞで逝っちまうとは…。 568 00:56:02,180 --> 00:56:12,180 ちゃんと見送らねえと いつまでも尾を引くぞ。 569 00:56:15,526 --> 00:56:19,526 今からなら まだ間に合うかもしれねえ。 570 00:57:09,514 --> 00:57:58,563 ♬~ 571 00:57:58,563 --> 00:58:02,863 あばえ… 善さん。 572 00:58:08,373 --> 00:58:11,142 <真ん中は 若い遊女だ。➡ 573 00:58:11,142 --> 00:58:14,512 きっと まだ 閨の事は好きじゃない。➡ 574 00:58:14,512 --> 00:58:17,181 いつか 自分も 花魁のようになれるかどうか➡ 575 00:58:17,181 --> 00:58:19,117 不安でたまらない。➡ 576 00:58:19,117 --> 00:58:24,856 でも わちきも琴は好きだ。 お客が喜んでくれる。➡ 577 00:58:24,856 --> 00:58:30,528 右手には 婀娜な女芸者。 年は 25か26か。➡ 578 00:58:30,528 --> 00:58:33,865 心底ほれた男が これまでに1人いる。➡ 579 00:58:33,865 --> 00:58:36,200 けれど その恋は かなわなかった。➡ 580 00:58:36,200 --> 00:58:40,538 今は 親子ほど年の離れた 旦那がいる。➡ 581 00:58:40,538 --> 00:58:45,410 もの足りなくもあるけれど 私には 三味線の腕がある。➡ 582 00:58:45,410 --> 00:58:49,213 左で胡弓を弾く娘は 町娘だ。➡ 583 00:58:49,213 --> 00:58:51,149 商家の一人娘で➡ 584 00:58:51,149 --> 00:58:56,087 いずれ 遠縁から婿を迎える事が 幼い頃から決まっている。➡ 585 00:58:56,087 --> 00:58:59,557 許嫁は 洒落者を気取って 「芝居を見よう。➡ 586 00:58:59,557 --> 00:59:03,161 菊細工見物は どうだ」と 誘ってきて煩わしい。➡ 587 00:59:03,161 --> 00:59:06,497 本当は 若い手代の一人が気になる。➡ 588 00:59:06,497 --> 00:59:11,797 ふとした拍子に目が合えば 胸がどきついて…> 589 00:59:37,195 --> 01:00:58,943 ♬~ 590 01:00:58,943 --> 01:01:01,943 酔女? 591 01:01:04,549 --> 01:01:09,220 世を捨てたような画号だな。 592 01:01:09,220 --> 01:01:12,890 お栄の栄と 酔うっていう字は➡ 593 01:01:12,890 --> 01:01:15,560 おんなじ音だからな。 594 01:01:15,560 --> 01:01:29,106 ♬~ 595 01:01:29,106 --> 01:01:32,406 私らしいだろ? 596 01:01:44,255 --> 01:01:46,924 ああ こいつは軽い。 597 01:01:46,924 --> 01:01:53,598 藍群青に子持ち縞たあ 乙粋だ。 598 01:01:53,598 --> 01:01:58,469 卒寿の祝いだから 紫群青が いいって言ったんですけどね➡ 599 01:01:58,469 --> 01:02:03,207 うちのかかあが こっちの方が 顔写りがいいからっつって➡ 600 01:02:03,207 --> 01:02:05,507 聞かねえんでさ。 601 01:02:12,550 --> 01:02:17,421 この墨絵 お栄さんですかい? ああ。 602 01:02:17,421 --> 01:02:22,893 おやじ殿が 正月に富士の絵を やりたいって言いだしてね。 603 01:02:22,893 --> 01:02:28,766 う~ん… このままじゃ 絵組みがさみしい気もするけど…。 604 01:02:28,766 --> 01:02:32,066 う~ん…。 605 01:02:33,904 --> 01:02:37,775 お栄。 ん? 606 01:02:37,775 --> 01:02:42,580 富士を仕上げるぞ。 607 01:02:42,580 --> 01:03:10,741 ♬~ 608 01:03:10,741 --> 01:03:13,878 刷毛 筆。 609 01:03:13,878 --> 01:04:12,069 ♬~ 610 01:04:12,069 --> 01:04:14,538 水。 611 01:04:14,538 --> 01:05:08,838 ♬~ 612 01:05:10,528 --> 01:05:14,828 (弥助)はあ~…。 613 01:05:28,546 --> 01:05:32,546 はあ~… すげえ。 614 01:05:37,555 --> 01:05:41,225 すげえ。 615 01:05:41,225 --> 01:05:48,925 ああ… うまくなりてえ…。 616 01:05:57,575 --> 01:06:10,521 天が あと10年… いや 5年 命をくれるなら➡ 617 01:06:10,521 --> 01:06:17,521 俺は 本当の絵描きになってみせる。 618 01:06:19,864 --> 01:06:26,737 きっと なってみせる。 619 01:06:26,737 --> 01:06:48,225 ♬~ 620 01:06:48,225 --> 01:06:51,525 621 01:06:53,898 --> 01:06:59,198 622 01:07:03,507 --> 01:07:06,207 (猫の鳴き声) 623 01:07:14,151 --> 01:07:17,054 (鳴き声) 624 01:07:17,054 --> 01:07:39,354 ♬~ 625 01:07:54,224 --> 01:08:07,771 (泣き声) 626 01:08:07,771 --> 01:08:12,176 私も うまくなりてえなあ…。 627 01:08:12,176 --> 01:08:24,755 (泣き声) 628 01:08:24,755 --> 01:08:27,725 なりてえなあ…。 629 01:08:27,725 --> 01:08:56,553 ♬~ 630 01:08:56,553 --> 01:09:01,853 631 01:09:04,828 --> 01:09:09,500 <黒船が来て 地揺れが起きて…➡ 632 01:09:09,500 --> 01:09:14,200 弟の家に やっかいになった> 633 01:09:21,111 --> 01:09:25,849 (弥生)義姉上 また黙ってお出かけになって。 634 01:09:25,849 --> 01:09:29,520 新吉原へ行ってたんだよ。 (崎十郎)そうですか。 635 01:09:29,520 --> 01:09:32,189 大変な にぎわいだったでしょうね。 636 01:09:32,189 --> 01:09:37,861 供も連れずに。 私たちが いかほど案じていた事か。 637 01:09:37,861 --> 01:09:42,199 それは 心配をかけて 申し訳のない事だったね。 638 01:09:42,199 --> 01:09:46,070 また そうやって 口先だけで わびられる。 639 01:09:46,070 --> 01:09:48,872 武家にとって あらぬ噂を立てられる事が➡ 640 01:09:48,872 --> 01:09:50,808 いかほど不面目か。 641 01:09:50,808 --> 01:09:53,744 笑われるのは あなた様の弟君と私です。 642 01:09:53,744 --> 01:09:56,547 そう お盆の頃だって…。 もう分かったから➡ 643 01:09:56,547 --> 01:10:00,217 くどくど言うんじゃないよ。 644 01:10:00,217 --> 01:10:15,566 ♬~ 645 01:10:15,566 --> 01:10:19,236 (弥生)ほんに 義姉上ほど 気随気ままな方はいません。 646 01:10:19,236 --> 01:10:22,573 まあまあ。 石や草 木の実まで 家の中に持ち込んで…。 647 01:10:22,573 --> 01:10:29,246 それが 父上や姉上の生業だ。 目くじらを立てるな。 648 01:10:29,246 --> 01:10:32,246 はあ…。 649 01:10:34,918 --> 01:10:37,588 ほ~れ。 650 01:10:37,588 --> 01:10:42,588 こうして ここに 深~い黒を落とすだろう。 651 01:10:45,929 --> 01:10:56,229 そうすると こっちの明かりが 余計強く宿って…。 652 01:11:03,213 --> 01:11:06,213 そう…。 653 01:11:07,885 --> 01:11:13,223 これが光さ。 654 01:11:13,223 --> 01:11:18,223 655 01:11:19,897 --> 01:11:27,597 <影が万事を形づけ 光が それを浮かび上がらせる> 656 01:11:29,573 --> 01:11:40,217 ♬「とんび からすに ならるるならば」 657 01:11:40,217 --> 01:11:42,517 (笑い声) 658 01:11:44,121 --> 01:11:58,421 ♬「飛んで行きたや 主の側」 659 01:12:00,871 --> 01:12:05,542 ♬「はっ ちりちりちん」 660 01:12:05,542 --> 01:12:08,879 ♬「つるつるつん」 661 01:12:08,879 --> 01:12:57,579 ♬~ 54876

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