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古代生物学者 アルバート・ペイン博士
緊急来日
ピクルです
間違いない
獲物となった巨大生物ですが
博士の目からは どのように?
巨大生物…
ピクルの目には 危険のない手ごろな餌と
映ったことでしょう
かつて我々の前から こつぜんと姿を消した⸺
ミスター・ピクル
どう過ごしていたと お考えでしょうか
下水道です
ん… 下水…
大都市の下水道とは
実は理想的なジャングルなのです
絶えることなく 注がれ続ける温水
1年を通して 適度な気温と湿度が 維持されている
ある日 気まぐれで飼ったペット
気付いたら 予測を超えるビッグサイズ
処分に困った飼い主
ある夜 (よ)下水へ
ところが そこは
ペットたちにとり 理想の楽園だった
ワニ
トカゲ
カメ
大蛇
おびただしい数の熱帯生物が 東京地下に存在するのです
ピクルを地下の住人として
この先 何を最善と考えますか
議論を待つまでもなく
彼は人類にとっての遺産です
言うまでもないこと
直ちに捕獲です
このコメントを政府は重視
警視庁へ指令
直ちに機動隊 91名が編制された
ペイン博士 指示の下
やはり… というか クロロフォルム5トンを準備
中心をピクル目撃地に設定
半径1000メートル以内に 10か所
同時一斉に放った
周辺下水道は瞬く間に クロロフォルムで満たされた
おい 来たぞ - 伏せろ!
下がって
見えました ピクルです あのピクルです!
せんだって 私が目撃した 原人ピクルに間違いありません
シベリアトラをも ひねり殺す⸺
白亜紀最強のファイターです
搬送されます どこへ向かうのでしょう
我々 報道陣の問いに
関係者は重い口を閉ざしたままです
す… すごいにおいですね
2メートルを凌駕(りょうが)するホームレス
放つ臭気も致し方あるまい
すみません
おっしゃるとおりです はい…
それにしてもだ
すごい施設だな
東京スカイツリー 地下366メートル
ツリー頂上から1000メートル
オフィシャルな施設では ありませんが
世界一と自負します
確かに
遅くなった ん?
ご老…
宮本(みやもと)武蔵(むさし)じゃねえか!
ああ ご老公!
え? あ… お知り合い…
フフッ… 下水道で 狩りをしておったと?
史上初じゃ
東京の都心で狩猟生活 一体 誰にできる?
おとなしいのぉ 武蔵
有名なのか? この者は
世界中に知られる 有名人じゃよ
しかも 地上最強との声もある
ふむ…
武蔵?
なっ…
何をすんじゃあ 武蔵!
なんちゅう…
クレイジー
見ろ
顔面をまともに打たれながら この有り様(よう)
眠ったままだ
んん…
なんと頼もしい
う… んんっ
素っ首 はね飛ばすつもりが
刃(やいば)が通らん
斬ったんかい
あっぱれな素っ首
かつて将軍の御前で 八ツ胴(やつどう)の両断を果たした
両の腕 6本を含む 土壇までも斬り込む余力
“あっぱれ”の嵐
降り注ぐ“さすが”の雨
有頂天
それが どうだ?
範馬(はんま)勇次郎(ゆうじろう)の鎖骨の切断に 不覚を取り
そして 今また⸺
この者の首の骨に 刃を止められた
あっぱれな肉の宮(みや)
そのとおりだ ピクルとやら
斬ったのは俺だ
命は断てなかったがな
グハッ
ああっ…
獣だ 俺に勝るとも劣らず
造作もなく 甲冑(かっちゅう)をも両断する俺の剣
皮膚に触れた瞬間に分かった
肉の弾み 物が違う
その下にある臓腑(ぞうふ)や骨まで 剣が達しない
見ろ
深手を見舞ったつもりが
もはや アザを残すのみ…
ああ…
ピクルは思い出していた
かの地
己の100倍以上の超重量級
そんな猛者たちの中にあって…
嫌な野郎がいた
小さい だが速い
そして敏捷(びんしょう)
しかし 何よりヤバいのが あれだ
あの両脚のデカいトゲ
幾度も傷つけられた
T(ティー)レックスは たまに死肉をあさっていた
だが やつは違う
いつだって 生きのいい いつだって 獰猛(どうもう)な…
とびっきりの超重量級ばかりに
挑みかかっていった
んん…
…的な内容に思いをはせていた
名称 デイノニクス
やつがカブる
実験場です
クローン誕生後 運動機能をここで試す
壁はジュラルミン 床はラバー製
ここなら存分に…
待ちたまえ
本気なのか 君ら
聞けば ミスター武蔵
あなたはクローン技術による 奇跡の存在
一方 ピクル
厚さ1000メートルに及ぶ 岩塩層から発掘された⸺
白亜紀に恐竜を常食していたという
まごうことなき奇跡の存在
我々は今 誤った判断により
その奇跡のどちらかを
あるいは その両方を 失おうとしている
ムサシ・ミヤモトとピクル どちらが強い
そんな子供じみた好奇心のため
我々は かけがえのないものを 失おうとしているのだ
目を覚ますのだ!
声がデカいわ
目覚めてしまうわい
戦国期最強の剣士と 白亜紀最強の戦士が
ここに出会ってしまった
剣士は雌雄を決したく
戦士は剣士を食したがる
その場に居合わせた我々は 幸運というほかない
見たくないなら 出ていけばよい
ただ この“夢”を 中断することだけは許さん!
おお…
私を牙も持たぬ 理屈だけで戦う⸺
老いぼれとでも思ったかね ?
ミスター徳川が来ると聞いて 胸騒ぎがした
今 まさに起ころうとしてる この事態が頭をかすめた
予感 まさに的中
私の入国は国賓扱い
手荷物はノーチェックなのだよ
さあ ファイトの観戦は諦めて⸺
このまま解散する
たった それだけのことだ
え… ああっ
ハッ!
短筒の類いか?
こうか?
おっ!
うう…
手裏剣よりは たやすいが よく当たる
怖いな
“道”にはならんがな
ピクルとやら もう誰も邪魔はせんぞ
ウマいぞ 俺は
おお…
いざ
斬られた
ムサシ・ミヤモトは 刃物を持たぬ手で
私を切り刻んだ!
はっきりと記憶している
冷たい刃が私の皮膚へ やすやすと滑り込む
脂肪層と筋肉層を難なく通過し
頑丈な骨をカットし
脆弱(ぜいじゃく)で無抵抗な内臓へと達した
頭部を失ったまま感じていた
吹きこぼれる血液は生温かく
鮮やかに宙へと振りまかれた
死…
死んだのだ
脳が…
37兆個の細胞が それを認識した
あの時 私は死んだのだ!
振り切ろうとしていた
この視線を
その背後に感じる猛威を
かの地で てこずらされた強敵の姿を
振り切った
せいぜいが肉 骨は断ててない
何者?
ふんっ
ふむ
せいぜいが肉
飛び出す臓腑が見えぬ
一体 何者?
どれとも似ない
こやつ…
何と戦ってきた?
お?
おお~
こやつ…
ピクルの背後に見る絶賛と褒賞
ふむ すごい量だ
分かるぞ ピクル
ただ事ではない 異形(いぎょう)だ
異形の姿に見る 一方(ひとかた)ならぬ これまで
強いのだな
とてつもなく強いのだな
うれしいぞ その強さ
うれしいぞ その有名
うれしいぞ その これまで
お前の持つ あれもこれも…
根こそぎ 俺のものとする
ん?
あっ!
ふんっ
えらいものを持っとるな ピクル
それを俺に受け止めろと?
奇遇… この時 双方が共有した思い
“捕まえた”
うおおっ! よもやの手四(てよ)つ
どっちだ?
最大の恐竜期 白亜紀をして
最強の座をつかみ取った握力と
生の青竹の節を 一瞬で粉砕してのける あの握力と
どっちが強(つえ)え?
おおっ! なんちゅう…
すっげえ!
どっちだ?
どっち?
思えば こんなにも つかまれたことって
あったっけ?
ピクルは狩猟の徒(と)
つかむことが日常
捕まえることが日常
握ることが日常だった
思えば 彼らは誰も つかむことが不得手
そう 間違いない
俺が彼らをそうであるように
この人は
俺を大好きなんだ
うぐっ…
さて…
ご老公 壁が…
壁?
へこんでます
厚さ30センチの ジュラルミンの壁が
へこんでいる
あの一発です
常人なら あの時点で即死でしょう
じゃろうな
これが いにしえ…
もののふの肉体というもの なのでしょう
徳川 この勝負 改めてもらえぬか
えっ?
見えぬ剣
幾たび 振るったことか
見事なり ピクル 肉の宮
刃の全てを 肉で食い止めてみせおった
骨は断たれず 臓腑は守られた
見事なり 肉の宮
本身を使いたい
おっ!
なんという膂力(りょりょく)か…
野生の裸馬でも もっと おとなしいぞ
ただし 本日 仮に 真剣での立ち合いならば
俺をはね上げる膂力は 残っていたかどうか…
ん?
た… 確かに…
武蔵が加えた攻撃 全て本身で行われたなら…
たとえ骨で食い止めたとしても
深手は深手
いかに原始の肉体といえど 出血は止められぬ
失血死
斬ってみなきゃ分からん
バカを言うな!
ピクルをなんだと思ってるんだ
人類の遺産を! 世界の宝を!
く… うお! んぐっ…
南蛮語は解さんが 南蛮のお人
決着を恐れるな
価値観…
大宇宙を隔てるほどの価値観の違い
ノーベル化学賞 受賞者 アルバート・ペイン
その温度差に 反論 見つけられず
時に徳川 聞きたいことがある
俺の愛刀は今 残されておるのか?
ん? フフッ…
無銘 金重(かねしげ)
肥後(ひご)の国に眠っておるよ
皆に見せたい その希代の切れ味
宮本武蔵 対 ピクル
武器使用可って…
ウソばっかり
“引きこもりてえ”とか言っておいて
皮膚の張り 筋肉の盛り 拳のデカさ
前より増してるくらいだ
フフッ
そういう君はどうなんだ
以前にも増して
鍛え上げている気配 ありありだが
癒やされるなあ
負けた同士で褒め合ってる
いいじゃないか
褒め合って よくなるなら ベタベタに褒め合えばいい
ところで…
あっ - ん?
きっと同じこと 言おうとしてる
死合(しあ)い
試し合いではない
結果が出た時には 片方はいない
試し合いではなく 殺し合い
フフッ
いいんですかね やっちゃって
おめえさん やったじゃねえか
ええ やりました
いやに素直だ
自分は よくって 武蔵は よくねえと?
真面目じゃねえもの あの人
ほう
フッ…
真面目じゃなきゃダメか 刃牙よ
純粋じゃなきゃダメかい
そのセリフ まんま宮本武蔵!
ああ…
照れるな なんか…
おやじが俺に告げ口した
ぬけぬけと ほざきおった
いかんか 黄金は - 必要か 純度
褒められて… - 出世したいのだ!
逃げも隠れもできぬ身と なりたいのだ!
言ったのか それを
すがすがしいほどだ
あ…
刃牙よ
功名心ってやつも そこまで行くとよ…
裏返るとか?
それだ
それだぜ 刃牙
カオスといえど 徹すりゃ おめえ
透明感を帯びるってもんだ
そ そ… そうなの?
純粋なんだよ やつは
ああ…
面白くなってきやがったぞ
ガタイは あれだけど 心は赤子同然のピクル
片や 純度を帯びるまでに 俗に徹した宮本武蔵
こりゃ純度勝負だぜ 刃牙
あ… ハハッ
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