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グランド・キャニオン
その裂け目の全長は 446キロメートル
不毛に見える冬でも 生き物たちを支えている
ピューマのメスが 娘と共に寒さをしのいでいる
だが餌を与えるには 休んでばかりいられない
食料を探すのは常に難しいが
いい獲物を仕留めれば 1週間以上はもつ
主な餌食はエルクだ
渓谷では 逃げ道が限られている
毎日を生き抜くための闘いが
アメリカ最大級の 国立公園で行われる
アメリカ~国立公園を巡る旅 グランド・キャニオン
ルーズベルト大統領は
グランド・キャニオンの 保護を求めて言った
“言葉では 言い尽くせないほど見事で〟
“世界でも 唯一無二の場所だ〟と
彼の言うとおりだ
その中心を担うのが この渓谷だ
壮大な場所で 宇宙からも見ることができる
渓谷の間には コロラド川が流れている
川は500万年の年月をかけ
岩を削り 巨大な渓谷を形成し...
独自の気候を誕生させた
断崖は太陽熱を放射する
だから冬でも岸壁は温かい
頂上はマイナス30度まで 下がることもあるが
谷底はマイナス13度くらいだ
谷底の空気が暖まると 寒気を通り抜けて上昇し
上昇気流を発生させる
上昇気流が 渓谷より高く上がると
それを利用する 北米最大の鳥がいる
カリフォルニアコンドルだ
上昇気流に乗っかり 4600メートルの高さまで飛ぶ
1980年代には 絶滅寸前まで減少した鳥だ
現在グランド・キャニオン 国立公園では
100羽強が 大空を飛び回っている
全羽に監視タグが 装着されている
彼らの生息地を守ることが 重要だ
なぜならユニークな仕事を してくれるからだ
動物の死骸を 1羽あたり1日2キロ食べる
量が足りない時もある
このオスは満腹だ
他に関心事があるようだ
オスたちは 交尾相手を探すため
ダンスフロアに躍り出た
だがフレッド・アステアには かなわない
メスの気を引くために 大きな翼を見せつける
選択権のあるメスは 大英断を迫られる
一生を添い遂げる相手だ
ようやく彼の努力が報われ
相手が見つかった
コンドルの未来を 考えるうえで
新たなつがいは不可欠だ
コンドルの住みかは 高い岩肌にある
断崖は1919年に 国立公園になって以来
保護されている
だが渓谷は さらに長い歴史を持つ
岩壁は地球の歴史を 垣間見せてくれる
最古の地層は 18億年前までさかのぼる
世界で最も調査された 地形の1つだが
未知な部分も多い
岩陰に潜むものがいる
グレート・ベースン ガラガラヘビだ
何千匹もの冷血動物が 冬を共に過ごす
科学者たちはその姿を “とぐろ山〟と呼ぶ
寒くなると代謝が遅くなり
秋以降はエネルギーを ほぼ使わない
冬眠から覚めたようだ
数か月も食べていないため 皆 腹ペコだ
外の温度が15度を超えると 急いで出かけていく
春の日光を浴びて 狩りに備えるのだ
だが大きな課題に直面する
北壁ノースリムに住む彼らは
渓谷があるため 南壁サウスリムには行かれない
食事は小型の哺乳類と 鳥やトカゲに限定される
見つかればの話だ
ヘビにとって
グランド・キャニオンは 広大な岩群いわむらだ
より遠くへ行けたなら
この公園の多様性を 発見できただろう
動物の生息地は 川と渓谷で分断される
上空2700メートルには 驚きの光景が広がっている
カイバブ高原だ
2600平方キロメートルに及ぶ 原生林が広がっている
緑のオアシスには
ここにしかいない動物が 暮らしている
カイバブリス
グランド・キャニオンでは 珍しい哺乳類だ
この住民はこの木と 特別な関係を持っている
ポンデローサマツは 住みかであり
リスを捕食者から守り 主な食料源を提供している
リスはこの木の あらゆる部分を食べる
葉に枝 そして松ぼっくりも
その代わり リスは種をまき散らし
健全な森林づくりに励む
小さいが大したものだ
高原の南西部には
数少ないポンデローサ森林が 残されている
国立公園に保護された 独自の生育環境であり
壮観な光景だ
年間600万の観光客のうち この断崖を越える人は
5%にも満たない
多くの人は 展望台に行くだけで
この公園の美しさに 満足している
だが冒険好きな人は
公園の中心へ向かう旅に ワクワクするはずだ
渓谷でのラフティングは スリル満点の大冒険だ
川を全て下るには 2週間かかる
運命を川に委ね
少なくとも80の 急流ポイントを下っていく
悪名高いラバ・フォールズも その1つだ
コロラド川は ラフティング愛好家の聖地だ
だが落ちるのは避けたい
グランド・キャニオン・ ガラガラヘビだ
この地域にしかおらず
渓谷での生活に 見事に適応している
川が障害になる動物もいるが 彼にとってはチャンスだ
泳げば自由に 新しい狩りの場所を探せる
公園内を広範囲に動き回り
げっ歯類を駆除する 役割を担っている
春はガラガラヘビを 見つけやすい
渓谷の谷底にも頂上にもいる
サウスリムはノースより 300メートル低地に位置し
春は気温が5度ほど 高くなることもある
動物にとっては より暮らしやすい
エルクの群れは 春の新緑を楽しむ
袋角ふくろつのが生えてきたオスは 食事に専念している
一方メスは より大きな仕事をこなす
群れから離れた場所で 出産を行っていた
夜に生まれた子供が もう歩いている
だが脚力が弱いため 母親には追いつけず
食料の調達には同行できない
母親は難しい決断を迫られる
食料を探すか
ピューマやコヨーテから 子供を守るか
母親は狩りへ向かう
子供は一見 弱そうに見える
だが無防備なわけではない
身を守る能力を持っている
生まれて数日は においを発しないのだ
においをかぎつけなければ 捕食動物は追ってこない
かがむだけで十分だ
動かずに じっとしていればいい
エルクの子が 身を潜めている一方
他の動物は子供を守るために 自然の避難所を利用する
渓谷の高地にある洞穴には
コンドルの夫婦が交替で 卵をかえしていた
ダッシュ6と66は 生涯の伴侶になって
8年になる
年に12個前後しか 産卵しないため
かなり貴重だ
50日強で ひながかえる
それまで新米の両親は 卵が落ちないように守る
800メートル下の谷底に 落ちたら大変だ
1か月後
グランド・キャニオンに住む コンドルが1羽増えた
ダッシュ6と66の子供が 数日前に生まれた
驚くほどの食欲で 両親は大忙しだ
断崖は避難所を提供する
だが子供にとって 優しい環境とは言えない
両親と一緒に飛ぶなら 用心深くなる必要がある
その機会が 無事に訪れるとしても
半年先の話だ
渓谷では 異なる世界が共存している
生命を育むコロラド川は 一年中 流れている
だが高原に来ると 状況は一変する
この豚のように見えるのは ペッカリーだ
悪臭から “スカンク豚〟とも呼ばれる
その体臭で家族の絆を深め 縄張りを作る
結束が固いため “戦隊〟とも呼ばれる
彼らは食料と水を求めて 常に移動している
今日のペッカリーは ついているようだ
雨の水たまりで命をつなぐ
彼らは この貴重な水を できる限り飲む
だが夏には すぐに干上がってしまう
1年で最も暑いこの季節は 脱水症が心配だ
荒野の死は避けて通れない
だが残されたものは 悲しみに襲われる
ペッカリーは賢く 死を悼むと言われている
このメスは身内の死骸から 3日間 離れなかった
だが ずっとはいられない
水不足に苦労しているのは ペッカリーだけではない
ミュールジカの母子が 危険を冒していた
水を求め 1600メートル先の 渓谷まで下っていく
急斜面で足場も不安定だ
一歩 間違えれば
300メートル下まで 真っ逆さまだ
ミュールジカは機敏だが 子供は経路を知らない
何年もかけて
谷底への険しい崖の経路を 学んでいく
下っていくと 砂漠の植物が咲いていた
岩壁がハマアカザと サボテンで覆われている
ようやく親子は 緑の楽園にたどり着いた
ここまで来れば
自然の水源が あちこちにあると気づく
水たまりと泉の数々
そのどれもがユニークだ
古代の帯水層から しみ出たものや
川の水が激しく流れて 滝になったものもある
小鹿の危険な旅は ようやく終わった
このオアシスには 多様な生き物がいる
多くの昆虫にとって 理想の環境だ
最近やってきたイトトンボが 卵を産んだ
狙われないか警戒している
渓谷の地図には 1000以上の泉が記されている
しかし未発見のものも多い
先住民が何千年もの間 使ってきた泉もある
11の部族が この国立公園と 重要な関わりを持っている
ズニ パイユート ホピ ナバホ族にとっては
ここは聖地だ
ハバスパイとワラパイ族は ここに居住している
1万3000年以上前から 住み続けてきた
現在 公園は部族と 積極的に関わり
新たな協力関係を 築こうとしている
夏になると 暑さも厳しくなる
干上がった川床が増えていく
居住する動物にとっては 理想の道路だ
珍しい動物も ここを通る
アメリカドクトカゲだ
全長60センチで
北米で最も大きく 唯一 毒を持つトカゲだ
一生の95%を 地下の巣穴で暮らしている
だが空腹に駆られ
このメスは 軽食を見つける旅に出た
視力が弱いため 先端が分かれた舌で
180メートル先の においをかぎ分ける
今日は運が悪い
狩りは空振り
最後に 期待できる所へ向かう
ここは他の動物の隠れ家だ
サバクゴファーガメが 住んでいる
カメは 涼しく静かな場所を見つけ
卵を産む
ドクトカゲのごちそうだ
だが確認するも 卵が見当たらない
早すぎたようだ
カメは幸運だった
空腹のドクトカゲは 狩りを続ける
長く外にいると 砂漠の熱で うだってしまう
早く仕留めるべきだ
ようやく 何かのにおいを捉えた
ウズラの卵がある巣に近づく
餌を見つけたら 迷いなく飛びかかる
体重の3分の1ほどもある 卵を一気に平らげる
過剰なカロリーは 脂肪として蓄えられる
おなかを膨らませたまま 巣穴に戻って消化する
そして最大の捕食動物から 身を隠す
ピューマだ
4900平方キロメートルの 国立公園内を歩き回る
巨大な荒野で 獲物を見つけるのは
簡単ではない
彼女の狩りの範囲は 400平方キロメートル
だが今日は遠くに行かない
数日前に仕留めた動物の所へ 向かう
木の下に隠したため 他の動物に狙われずに済んだ
コンドルに見つかれば 数時間で食べ尽くされる
生存の鍵は隠し続けること
しかし渓谷では
運命は一瞬にして変わりうる
グランド・キャニオンは 夏の雷雨に襲われた
ピューマは避難する
砂漠の熱を冷ますのに 豪雨はぴったりだ
川から離れた所に住む動物は その恵みを利用する
ガラガラヘビは 体を平らにし...
とぐろを巻いて できる限り水分を蓄える
雨水を貯めておく バケツの役割を
うろこが果たす
水の乏しい陸地では
とても便利な能力だ
カイバブ高原において 雷雨は火災の主な原因だ
近年の気温の上昇が 異常気象と火災をもたらし
深刻さを増している
だが被害が大きすぎなければ 火災は枝葉を減らし
日光が届きやすくなって 植物が活性化する
新たに草が生え 花が咲き始める
昆虫や鳥 小動物たちが 高原に引き寄せられる
この独自の森で 彼らは繁殖していく
夏が終わる頃
ある動物が 岩の洞穴から出てきた
コンドルの子供は 4か月になった
付近を散策して 羽の推進力を試している
親の羽とほぼ同じ大きさだ
だが食事は親に頼っている
死肉には弾薬が含まれるが
運がよければ 鉛中毒を回避できる
公園を象徴する鳥にとって 保護区の必要性は高い
彼が空に飛び立つのは晩秋だ
危険な世界に 踏み出すことになる
洞穴を使うのは コンドルだけではない
公園には1000以上の 洞穴があると考えられるが
その多くは発見されていない
小さな岩の割れ目で
赤ちゃんガメが 旅立とうとしている
一番遅くに卵から出てきた
母親は とうの昔に去り 独りぼっちだ
ここ数日は卵黄嚢のうの中で 生き延びていた
だがついに広大な世界に 出ていく時が来た
においのついた巣を離れて 新たな隠れ家を探す
全長が5センチのため
2メートル歩くだけでも 遠くに感じる
小さく動きも遅いため 標的にされやすい
成体まで生きられるのは 5%だけ
まだ甲羅も柔らかい
盾のように硬くなるには 5年かかる
それまでは少しの運に頼って
巨大な渓谷の中で 身を隠すしかない
ようやく巣穴を見つけ 入っていく
静かに身を隠す動物もいるが
その存在を主張する 動物もいる
秋口はエルクの発情期だ
オスたちの叫び声が鳴り響く
メスに向けて アピールしている
角を覆う柔らかい袋を オスが破ると
その下に鋭い枝角が現れる
ライバルを威嚇する目的だ
大きな金切り声と 枝角があれば
メスを引きつける可能性が 高まる
若いオスが 初の発情期を迎えた
枝角が小さい彼はどうする?
じかにアプローチすると 決めた
メスは若い彼を軽くあしらう
作戦の練り直しだ
体に尿をかけて―
においを拡散させ メスの気を引く作戦だ
全身にかけると 行動に出た
漂う空気から メスが発情期か見極める
やっと注目を浴びた
1頭のメスが 引き寄せられていく
2頭は静かな場所へ向かった
エルクが交尾に 気を取られている間...
カイバブ高原には冬に備えて 働く動物たちがいた
カイバブリスは 他のリスと違って
あまり貯蔵しない
その代わり 年中 食料を探している
1500平方キロメートルの 松林が住みかなので
食料は余るほどある
だが冬が来る前に もう1つ大切な仕事がある
巣の本格的な メンテナンスが必要だ
針葉と小枝で作った巣を
彼女は雪対策で 頑丈にする必要がある
普段は単独生活だが 暖を取るため
他のメスたちと同居する
早めに修繕を始めるべきだ
4週間後には 初雪が降る予定だからだ
公園にいる動物たちは
厳しい冬に向けて 準備が必要だ
巣を作る動物もいれば
巣を初めて出る動物もいる
コンドルの子供が 正念場を迎える
半年 洞穴にとどまっていたが 飛び立つ時が来た
一か八かの瞬間だ
子供から一瞬のうちに 自立したコンドルに成長した
4000平方キロメートルの 公園の中を
思う存分 探検できる
この特別な場所は 絵はがきでは伝えきれない
究極の地であり
世界有数の渓谷と動物が 保護されている
驚きにあふれ
冒険好きにとっては 楽園だ
アメリカの国立公園は 自然に対する愛の証しだ
そして人間が 自然を必要とするように
自然も 人間を必要としている
日本語字幕 長島 咲織
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