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「子曰く 仁遠からんや。 我仁を欲すれば➡
斯に仁至るや。 陳の司敗問ふ 昭公」。
(桂昌院)おお… また学問してるんかいな。
今日習ったところが 面白うございまして。
学問もええけどな すがめになるしな ええ加減になぁ。
女が大事なんは 器量と愛嬌や。
いつか 徳子が上様になったらな 大奥中の男に恋をさせへんとあかんのや。
父上は親バカじゃ。 これではのぅ。
(もと) 徳子様は 大層お美しうございますよ。
もとは男なら 徳子様の側室にして頂きとうございま…。
もうよいよい。 そなたに言われると 何やら悲しうなってくるわ。
⚟(吉保)桂昌院様。
(桂昌院)吉保。
(泣き声)
(お伝)も… 申し訳ございませぬ!
その 高貴なお方は 泣き顔まで お美しいと!
(綱吉)では そなたは 私が好きか。
私に恋をしておるか。
(お伝)信じられねえんです。➡
俺が徳川様のご一門の親になれたなんて。
姫 どこ!
(右衛門佐)おはようございます。
佐 あの者たちはどのようにするのじゃ。
お定めでは 奥での男色は御法度にございます。
風紀を正す見せしめともなりますし 相応の罰を与えることといたします。
あまり苛烈にならぬよう よい塩梅に抑えるようにな。
男の数を減らしては 色狂いの名が廃る。
承りました。
ところで 上様 お添い寝のことにございますが➡
人を減らすこと 遠ざけること➡
こちらでできることがございまするかと。
何じゃ 優しいではないか。
大奥は 上様をお癒やしする場で あらねばなりませぬ。
添い寝がおるのにも それなりの意味がある。
案ずるな。 二度とは乱れぬ。
は。
♬~
回想 上様は 天下人にあられましょう!➡
そのお力は 天下を治めるためにこそ 使われるべきもの。
♬~
生類憐みの触れを… 取り下げたい。
放り出された犬を養うためのかかりも かさんでおりますし。
金くらい何や!
子ができひんかったらどうするんや!
父上 私➡
既に月のものがないのでございます。➡
月のものがなければ どれだけ営みを続けたところで➡
子を授かることは もはや できかねるのでございます。
ほな なおのこと 神仏にすがらんとあかんやろ。➡
できひんのやったら それこそ功徳を積んで➡
神仏のお力に頼らへんと。➡
将軍の何よりのつとめは 子を産むことや!
家光公も 有功様も そのおつとめのために 涙をのんで耐え忍ばはったんや!➡
そのたった一つのおつとめも果たさんと 投げ出すとは➡
恥ずかしいとは思えへんのか!
つとめを果たせず まこと申し訳なく。
わしは 何のために お前をもうけたんじゃ!
(吉保)そろそろ年も暮れますね。
のぅ。
もし 姫が生きておれば➡
今年は どんな年になったのであろうな。
上様。 お目汚しにございますが。
(吉保)覚えておいでですか?➡
館林で 一生おそばにおると お誓いした日のこと。
忘れるわけないであろうか。
私ごとき 何のお慰めにもならぬと 存じますが➡
私はずっと おそばにおりまする。
何を今更。
(大石)いざ!
(大石)上野介様。 お覚悟!
ついに赤穂浪士が討ち入った!➡
主君の仇 にっくき吉良上野介を討ち取った。
(お江)主君の仇討ちなんて… 男って…。
浪士たちを打ち首にはしたくない。
そなたらは そう申すのか。
恐れながら 上様。
浅野は今どきの大名家には珍しく 男が家督を継いでおります。➡
城代家老の大石内蔵助はじめ 浪士四十七士のうち➡
四十二人が男子にございまして。
江戸の民たちは 主君の仇を討ったと 男どもの働きを称賛しております。➡
ここは ひとつ なんとか ご助命を お考えになっては下さいませぬか。
は?
逆恨みをし 老女をなぶり殺しにした者たちを➡
助命しろと申すのか!
正気か!? そなたら!
生類憐みの触れを出しておきながら➡
お上が 四十人もの男子たちを処罰するとは➡
これまた道理が通らぬという話も 起こっておるようにございます!
分かった。 あい分かった。
では 打ち首ではなく 切腹を命じよ。➡
そうじゃ ついでに 以後➡
武家において 男子を跡目とすることを 禁ずると申し伝えよ!
男を政に関わらすゆえ かような血生臭いことが起こるのじゃ。
早速 触れを出せ! (老中たち)はっ。
「人を愛して親しまずんば 其の仁に反れ。➡
人を治めて治まらずんば 其の智に反れ」。
別のものにいたしましょうか。
構わぬ 続けよ。
上様➡
こたびこそ 生類憐みのお触れを 取り下げてはいかがでしょう。
民の不満のもとは このお触れにございます。
こたびのことも このお触れさえなければ➡
上様は厳しくも公正なご判断をされたと 民も受け止めたことかと。
このまま 桂昌院様のお願いをかなえるより…。
何度言うたら分かる!
つけあがるな!
たかが 大奥の采配役風情が 天下の政に口を挟むな!
上様。
(桂昌院)すまんな。 徳子。➡
お前は わしのせいで つとめを果たせへんねん。
若紫が許してくれるように わしから ようようお頼みするしな。
すぐに 子ぉができるように お願いするしな。
堪忍や。 徳子。
つらい目にあわして すまんな。
♬~
(読経)
⚟(綱吉)廊下におるのは そなたの三女であるそうじゃな。
あの者は父の身分が低く 家臣の家に出した娘にございます。
どうしても 江戸を一度見てみたいと申すので➡
連れてまいったまで。 どうぞ お捨て置き下さいませ。
入れてやれ。 吉保。
は。
信にござります。
江戸は見たか そなたら。
はい。 街ゆく民らの姿も 美しく華やかで➡
なんと楽しそうなところかと!
そうかそうか。 そなたは?
物の値が高くて困ると 民が不平を漏らしておりました。
(光貞)これ! よいよい。
そなたは よう見ておるの。 頼もしきことじゃ。
これは。
私が若い頃 使っておったものじゃ。➡
遠慮はいらぬゆえ 好きなものを持っていけ。
では 私は こちらを頂戴してよろしうございますか?
なんとも慎ましいものを選ぶの。
私は これと これと。
(光貞)これ 欲張りな! よいよい。
着飾りたいのは女の性じゃ のぅ。
そなたもよいぞ。
では 信は そちらに残った全てを 頂きとう存じます。
(光貞)の… 信!?
そなた さように かんざしに興味があるのか?
いえ いつも助けてくれる家来衆に 分けてやりたいと考えております。
ほ! これはこれは。➡
なんとも見上げた心がけではないか。
しかし お信とやら。➡
家臣にやるのはよいが 己の身なりにも もう少し気を遣ってもよいのでは?
そなたも いずれ 夫や側室を持つであろう?
その者たちをその気にさせ 世継ぎをもうけるには➡
美しゅうなくては。
そうなのでしょうか。 (光貞)信!
構わぬ。 続けよ。
信は 美しい男に 全く興味がないのでございます。➡
美しい男に興味がない信がいる ということは➡
美しい女に興味のない男も いるはずにございます。
身なりや見かけを気にかけぬ➡
信は さような者を選べば済む話なのでは ないでしょうか。
(光貞) 男女のことなど分からぬ子どものこと!➡
何とぞ お許し頂ければ!
ふふふ はははははっ…!
そうか そうか。➡
はははははっ…!
何でもない。
あまりにも思いつかぬ考えで あったものでな…➡
そう。 思ってもみなんだ…。
気に入ったぞ! 信!➡
そなたに 越前葛野三万石を取らせる!
ははっ。
(吉保)変わった姫にございましたね。
のぅ あのような考え 一体 どうしたら生まれてくるというのじゃ。
桂昌院様も 甲府ではなく紀州ならば なんとかご納得頂けないでしょうか。
(久通)今 どの辺りにございますか?
(吉宗) 綱吉公に所領と偏諱を賜った辺りじゃ。
あぁ あのかんざしを頂いた折にございますね。
そなた あのかんざし どうしたのじゃ。
上様に頂きましたもの 恐れ多くて つけられなどしませぬ。
家宝とし 大事にしまっております。
正直に言え。 つけどころがなかったのじゃろ。
何じゃ。
上様が あとどれほどで お休みになられるかと気になりまして。
どうか よろしきところで おやすみ下さいませ。
⚟上様のおなーりー。
まこと 紀州に跡を継がせるおつもりか!
お血筋 ご器量 どこをどう取っても 跡目は 甲府の綱豊様!
甲府の綱豊様は そもそも お体が弱く 産まれてくる子も短命や死産ばかり。
お年もいっておられる。 その点 紀州は年若く 剛健。
甲府ほどの仕事ぶりではないにしても 人柄は実直。➡
十分に つとめを果たせるのではないかと。➡
それでも 納得なさらぬとおっしゃるなら…➡
どうぞ私まで。
甲府はあかんで。
甲府だけはあかんで 徳子!➡
あのお夏いうんはな。 はいはい。
ですので 父上 紀州にいたしますので。
紀州はお好きにございましょう?
これが紀州でございます。 これが紀州。
紀州は好きや。
そや 子はまだできひんのか? 徳子。
⚟「其の愚を知る者は 大愚にあらざるなり。➡
其の惑いを知る者は 大惑にあらざるなり」。
⚟「大惑なる者は 終身さとらず➡
大愚なる者は 終身さとからず」。
今は荘子か。 はっ。
(綱吉)そなたは甲府推しか。
(綱吉)何じゃ。
天下の政に口を挟むなと お叱りを受けましたので。
構わぬ。 こちらから聞いておる。
「琭琭 玉の如きを欲せず。 珞珞 石の如きか」。
いたずらに道理をたがえることは 災いの種となると➡
老子も申しております。 その上で こうも考えますな。
甲府を据えて紀州だと教えれば➡
もはや 桂昌院様には お分かりにもならぬのではないか とも。
そなたらしいの。
家光公は ひどくお忙しいお方での。
私には 母の思い出はない。
欲得抜きで私を慈しんで下さったのは 父上だけじゃ。
たとえ 耄碌されたとしても➡
その父上を裏切りたくはない…。
それは 上様が己が望みをかなえるに➡
入用な器で あられたからにございましょう?
桂昌院様こそ もっとも欲得ずくで 上様に関わっておられるお人だと➡
私には思えます。
そして この期に及んでも それを慈しみとすり替え➡
すがっておられる上様が 哀れでなりませぬ。
変わらぬの。 そなたは。
上様は今日は お怒りにならぬのですか?
巧言令色鮮なし仁じゃ。
ただ そこまで言うのなら➡
あの日 私を抱いてほしかったがな。
(綱吉)佐。 そなたは 体を差し出さずに 力を得てみたい➡
と ここへ来たのだろ? 違うか?
そなたは その己が望みを➡
たかが私のためになど 捨てたくはなかった…。
そなたは とどのつまりは➡
父上と同じではないか?
♬~
ううっ… んん!
死ね。 綱吉。
(秋本)上様。 ご無事で。
あ あぁ…。
かような者が紛れ込んでいたとは。
こたびの失態は この右衛門佐。
(綱吉)さようなことはよい。
誰のたくらみじゃ?
それとも そなたの一存か?
男狂いの女狐が!➡
もはや世継ぎも産めぬくせに 相変わらずの色狂い!
恥ずかしくないのか! 皆 あきれて笑うておるわ!➡
醜い老婆が夜な夜な 男をくわえ込んでおるとな!
下がらせよ。 (綱吉)よい。
上様。
言え。
(男)犬公方!➡
何がお犬様じゃ!➡
口には出さずとも 国中 皆が貴様の死を願うておるわ!➡
死ね 綱吉。➡
死ね! 死ね! 死ね~!
恐らく あの者をたきつけたのは 甲府の者であろうよ。
が さようなことは どうでもよい。
あの刺客が言っていたことは 皆 正しい。
私は結局 何一つ 後の世につなぐことはできなかった。
将軍として善政を行うことも 世継ぎを得ることも➡
人に望まれたことは 何一つできなかった。
まったく 私は何のために生まれてきたのか。
佐。 ご苦労であった。
私は もう大事ないゆえ そなたも もう下がりゃ。
どうしたのじゃ。
頭痛があると聞いておる。 養生せい。
下がりませぬ。
なぜなら あなた様は お一人になられたら 命を絶つおつもりだからです。
何をバカな。
生きなさい。
いやじゃ もう疲れた。
上様 生きるということは 女と男ということは➡
ただ女の腹に種をつけ 子孫を残し➡
家の血をつないでいくことだけでは ありますまい!
いやじゃ もう誰一人 私が生きることなど 望んでおらぬではないか!
佐! やめよ!
佐! やめよ! 何をしておる!
人を呼ぶぞ! 佐! やめ…!
嫌や! 私の夢やったんや!
もう死ぬというんなら➡
今 かなえさせてもらう。
♬~
上様 私は上様に恋をしておりましたよ。
一目お見かけした時から。
よく言う。
ん? では 床入りする男たちが➡
「恋 恋」言うておったのは。
私の思いを 代わりに言ってもらっておりました。
はははははっ…。 なんと まぁ。
さように笑われずとも…。
しかし さような次第なら➡
もう少し はよう打ち明けてくれれば。
もう少し ましな私を見せられたものを。
上様。
私は子をなすためのしとねしか 知りませぬ。
何の目的もなく➡
女性と こうしておるのは➡
生まれてより初めてにございます。
ここには何もない。
ただの男と女として ここにおるだけです。
こうなったのが➡
今のあなたで本当によかった。
なんという幸せか!
この度 世継ぎとして➡
甲府宰相徳川綱豊を➡
正式に私の養子とすることとする。
以後 たがえることはない。 ゆえに それぞれ よう心得よ!➡
六代将軍は 私の姪 甲府の綱豊である!
許さへんで! 徳子! 何で綱豊を世継ぎにするんや。
綱豊ではございません。
私の養子にするにあたり 家宣という名に改めました。
私の子にございます。
何でや! 紀州にする言うてたやないか!
父上 将軍である私が決めたことです。
許さへん… 許さへんで 徳子!
徳子! この親不孝もんが!➡
たった一つのつとめも… つとめも果たさんと!
♬~
佐! 佐!
聞いてくれ。 先ほどの!
(秋本)上様がお戻りのあと➡
頭が痛むので眠るとおっしゃられ…。➡
先ほど それがしが参った頃には。
(秋本)安らかなお顔で ござりましょう?
♬~
宝永6年 綱吉公 御病を得られ➡
薨去にまつわるお噂あり…?
佐?
♬~
す… 佐?
吉保にございます。
そうか。
夢を見ておってな。
佐が迎えに来たのかと。
お迎えにいらっしゃるのは 佐殿なのですか。
欲得のない慈しみを教えてくれたのじゃ。
佐だけがの。
そうですか。
そうですか。
(綱吉)ん! (吉保)上様➡
館林の 覚えておいでですか? (綱吉)んー…!
あの誓いの日のこと。
そなた 父上と何をしておった。
申し訳ございませぬ!
全て 綱吉様のおそばに お仕えし続けるために…➡
私には それしか 術がなかったからにございます!
ならば 証しを。
誓うか? おもと。
何があっても 一生 私に仕えると。
決して裏切らぬと。
はい。 もとは生涯おそばに…。
気付かれなかったでしょう?
私が どれほどうれしかったか。➡
私は これで終生おそばにいられるのだと 天にも昇るような心もち…➡
私のどこに…➡
どこに欲得がございましたでしょうか!
♬~
上様。
♬~
もとは上様に恋をしておりましたよ。
幼き日よりずっと。
誰よりも 長く 深く。
佐と… お会いになれましたか?
♬~
♬~
明日 村瀬に確かめぬとな。
♬~
たわけ!
種馬扱いも ここに極まれりにございます!
奥から出すのではなかったの。
はい? 大岡忠相。
あの加納の狸ババアめは。 はい。
赤面が治らぬ では困るのだ。 この国が滅びてしまうからの。
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