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(大楽(たいらく)のいびき)
(いびき)
(大楽)ギャー!
(瀬戸(せと))お久しぶり 有彦(ありひこ)
(大楽)瀬戸さん
合い鍵 返しに来たの
(大楽)えっ…
あっ! ていうか 何で土足?
(瀬戸)勢いで
(大楽)勢い?
何 このカーテン? 何で こんなもん…
誰?
(大楽)あっ 違う あの 違う違う それはあの…
この子はあの… たまたまベッドにいただけで…
(綾(あや))有彦の彼女です
は?
(瀬戸)マジで?
何だ 独身生活最後の思い出に
有彦と悪いことしようと 思って来たんだけど 残念
悪いこと?
もう冗談よ 有彦 動揺しすぎ
ああ…
あっ 私 瀬戸紀香(のりか)っていいます
有彦の元カノ
あっ 白樺(しらかば)綾です 有彦の…
今カノです!
ちょっと!
ごめんね 今カノさん 本能むき出しなこと言っちゃって
でも安心して 私 今度 結婚するから
結婚?
だから結婚のお祝いにおごってよ
おごる…
あー まあ おごるのは別にいいけど
じゃあ 明日の夜ね
明日?
大丈夫でーす 明日の夜
ちょっと綾君… ちゃん!
私も一緒にお祝いさせてください
ええー!
(チャイム)
(小野(おの))えー 文化祭で 我々 教師の出し物をどうするか
何かご提案はありますか?
(大山(おおやま)) 何かありますかね 五月(さつき)先生
(五月)あっ えっと…
去年みたいに みんなで 合唱するっていうのはいかがですか
(大山)いいですねえ
でも僕は断然 やり投げだな
は?
(五月)文化祭で? (あおい)やり投げ?
どうやってやんだよ
僕は やり投げ経験者なんですけど
大楽先生
やり投げで一番 大切なことって 何だと思いますか?
えっと よく分からないですけど…
力ですか?
そう思われがちなんですけど 一番 大切なのは…
パワーなんです
(あおい)大体 合ってんだろ
じゃあ 2番目に大切なことって 何だと思いますか? 五月先生
あっ よく分からないんですけど…
気合いとか?
なるほどな 違うんだな
2番目に大切なのは…
スピリッツ
(戸川(とがわ))もっと教師として
生徒に伝わること しなくていいんですか?
(大楽)あ…
サンバやりましょ
五月先生と―
ニューハーフを カミングアウトしたあおい先生が
情熱のリズムに合わせて 3センチ幅の水着で踊れば
必ず 生徒に愛が伝わります
ああ…
オレ!
(2人)アモーレ
コモエスタ!
(2人)シュトウバイン!
(小野)この議題は 次に持ち越しましょう
(戸が開く音)
(大久保(おおくぼ))表情いいね うん
(シャッター音)
(荒井(あらい))じゃあ 次 アートなパターンいってみようか
(大久保)うん (荒井)うんうん
(荒井) じゃ ちょっとスカート上げてみよ
(大久保)そう スカート上げて
(荒井)そう いこう そうそう… (大久保)さあ スカート上げて
(シャッター音)
ベロ出してみて
ベロ そう! もっとエロく出してみて
エロく そう!
とってもいいね うん かわいい 最高だね!
(サキ)やめやめやめ!
おかしいだろ 思い出の卒業写真でこのポーズ!
(大久保)写真は芸術ですから
どうも オボ山(やま)紀信(きしん)です
(愛(あい))何だよ それ 篠山(しのやま)じゃねえのかよ
あっ そちらのお方は?
(荒井)どうも
時代に呼ばれた写真家 荒山(あらやま)紀信です
あっ 弟のほうです
(ツグミ)弟とかないでしょ
とにかく今日は 監修で呼ばれて来ています
(ゆりあ) ぜってえ呼ばれてねえだろ
あのさ アバンギャルドな日常を 切り取る感じのさ
非日常な感じなやつとか そういう… 撮れるといいな
どうせ やらしい写真ばっか 撮るつもりだろ
お言葉ですが お嬢さん
私が撮りたいのは 非日常を逸脱したアート
つまり芸術です
(荒井) そこにはメモリーがあります
(荒井)つまり思い出です (大久保)そう
卒業まで あと1年
さあ 皆さん
時間がありません
今日は私と一緒に 思い出と芸術 撮りましょう!
パンチラは?
それは最高のアートです (荒井の拍手)
(大久保)はい 皆さん パンチラを撮りますよ
(大久保)はい スカートを上げて (サキ)やっぱ最低だな
(大久保) そう スカートを上げて そう!
最低かな…
有彦 悪いことしよ
(大楽)うーん
とはいえ つい期待しちゃう 自分がいる…
(綾)ジャーン! お待たせ
(大楽)大人 成熟 フェロモン
綾ちゃん ちょっと背伸びして OL風にしてみました
どう?
(大楽)どうもこうも…
あっぱれ!
働き方改革!
別の意味でのサービス残業しよ
(大楽)あっ…
ヤバッ うっ…
何 そんなにヤバい? この格好
あー そういうことじゃなくて あの…
まあ どっちかっつうと…
きれい
ホントに?
うん
やった うれしい!
あっ そうだ
あっ!
これ?
えっ…
買ったからさ おそろ
ああ…
(大楽)フフ… (綾)フッ…
ありがと
フフ…
(2人)フフ…
(客たちの話し声)
プハー うめえ!
ちょっと大丈夫? ビールなんか飲んで
(瀬戸)あら 飲めないの?
あー いや それはあの…
平気平気
今日は めでてえ席じゃねえか 堅(かて)えこと言うなよ 大楽さんよ!
イッタ!
もう 何で急に江戸っ子?
よかったね 有彦
とりあえず きれいな彼女とつきあえて
あざーす!
お二人が つきあってた以上に ラブラブになりまーす!
おーい 強烈にラブラブしようぜ
ちょっと!
(綾)ダメなんですか?
いや ダメじゃないけど…
(瀬戸)ハハハハ… (大楽)えっ?
2人はホントにお似合いね
あざーす!
じゃあ 今日は有彦のおごりだから 全メニュー頼みましょ
あざーす!
えっ… はあ?
あっ もうちょっと綾… ちゃん!
もう何してんの…
(大楽)いやあ でも懐かしいね
ハァ 参ったな…
ノンアルコールビールなのにな
ちょっと連れて帰る前に トイレ行ってくるわ
ハァ…
フゥー
あっ 瀬戸さんもトイレ…
えっ ちょちょ ちょちょ…
あっ…
2人になりたい
えっ?
ねえ 悪いことしよ
はあ?
はあ…
(あおい)昔みたいに
えっ…
ああ… いやいやいや…
瀬戸さん 結婚するんでしょ
そんなの関係ないよ
それに あの子って ホントに有彦の彼女なの?
あー いや それはあの…
やっぱりね
えっ…
じゃあ いいじゃん
えっ ちょちょちょ…
いやいや いやいや…
ちょっと んっ!
綾ちゃんのことは放っておけないよ
へえ 一応は彼女のこと 大事にしてんだ
一応じゃない
瀬戸さんも ちゃんと好きな人は 大事にしなきゃダメだよ
“瀬戸さんも”って
じゃあ 本気で 好きっちゃ好きなんだね
彼女に好きって言ったの?
会計してくる
あのね
どうでもいいと思ってる男は 簡単に好きって言うけど
本当に好きな男は
思っていても 好きって言えないんだよ
ほーら 起きて 行くよ
(綾)うーん…
あーあ 残念
誰かさんのおかげで
有彦様は 昔ほど 優柔不断じゃなくなっちゃいました
昔のほうがよかった
(大楽)ハハ… 何言ってんの
よし
ほら 肩つかまって
帰りますよ
よいしょ
よいしょ
瀬戸さん
(瀬戸)ん?
末永くお幸せに
(瀬戸)あんたもね (大楽)えっ…
もう大切な人 離すなよ
フッ…
(大楽)大切な人か…
(綾)先生?
起きた?
(綾)ありがと
重くない?
ん?
手が もげそう
(綾)はあ? (大楽)ヘヘヘ
もう!
どの口が言ってんだ あー?
(綾)この口か? (大楽)んがー!
(大楽)もげる もげる もげる!
(大楽)イテテテ… (綾)もげろ!
(大楽)イッテ! (綾)あっ…
(大楽)いってえ…
えっ? ちょっと綾君!
綾君?
どうしたの?
(大楽)えっ…
何 どういうこと?
ドラマとかで よくある 誰かに追われてます的な感じ?
今の人 うちの組の健司(けんじ)さん
えっ…
(綾)先生を離して
ああ… あの白樺組の
そう
監視されてんだよね 私
さっきの居酒屋でも
(大楽)綾… ちゃん!
何で監視されてんの?
実は 許嫁(いいなずけ)がいるんだ
あー 許嫁…
許嫁!
えっ 誰?
誰 誰? 初めて聞いた
ヒロミさん
ヒロミさんって…
(ヒロミ)組長 セメントの準備ができました
えっ!
側近じゃん 頭(かしら)じゃん ナンバー2じゃん!
そう
マジか…
マジだ
(大楽)はあ… (綾)ハハ
あっ
それって ドラマとかでよくある…
あの ヤクザの 政略的結婚的な感じのやつ?
しょうがないよ 極道の娘だもん
ああ 極道の娘…
えっ… 何とかならないの
じゃ…
何とかしてよ
えっ?
先生が私のこと 奪ってよ
あっ いや…
だってほら 教師と生徒じゃ…
ねえ ほら 限界がさ
そんな分かりやすく動揺すんなよ
最初から諦めてるし…
そんなことしたら お父様に殺されちゃうもんね
アハハ だよね…
もう諦めてるからさ
今を生きろ
一瞬一瞬を大切に
何かごめん…
無理なものは無理
諦める
その代わり 今を めいっぱい楽しむ!
(大楽)ハハハ…
えっ?
今日は恋人って設定でしょ
いや でもほら 誰かに見られたりしたらさ
約束は守るためにある
帰るまでが遠足です
(大楽)もう… (綾)フフフ
(2人の笑い声)
私が笑うとさ
いつも笑い返してくれるよね
えっ?
多分
この世で一番 私の笑顔を 見てるのは先生で
だから…
先生といると
いつか ハッピーエンドに なれる気がさ…
するんだよね
ハッピーエンド…
お互い 幸せになろうね
うん
よし 綾ちゃんは決めました
明日から しばし実家に戻る
えっ 何で?
これからのこと 自分の気持ちで ちゃんとお父様と話をします
ハッピーエンド つかまえる
そっか
じゃ できることあったら 何でも言って
ありがとよ
あっ 変わっちゃう 信号
(チャイム)
有彦さん
あっ 弥生(やよい)さん
あの… 今夜って 空いてないですか?
えっ…
よかったら うちに 来てもらいたいんですけど
マジっすか
はい
(大楽)おおー! ひょっとして ひょっとするぞな
もしかして!
ニャン パラリ
ニャン パラリ…
ニャオ
ニャオ
(五月) あっ 申し訳ないんですけど
あの 両親に 会ってもらいたくって…
えっ 両親?
はい
(卯吉(うきち))粗茶でごぜえます
あ… ありがとうございます この前…
シーッ!
(睦(むつみ))うちの弥生と おつきあいされてるそうで
へっ?
本当に娘を よくしてくださって ありがとうございます
いや あの…
こちらこそ 弥生さんには お世話になっております
私 本当は お見合い勧めに来たんですよ
お母さん!
だって本当のことじゃない
同じ学校の先生と おつきあいしてるなんて…
この前 初めて聞いて もうびっくりしちゃって
(大楽)何かすいません
で… どうなんですか?
(大楽)えっ? (睦)弥生はもう年頃なんです
それなりのお考えは おありなんですか?
と言いますと…
ああもう 結婚よ 結婚!
結婚…
どうですか 有彦さん
あー はい
疲れが癒やされます
(綾)先生
はい
あっ…
(綾)先生どう?
あ… 綾君まで
ああ…
でも気持ちいい
気持ちいいー!
(大楽)ああ… こんな時になぜ 綾君のことを
(五月) ちょっと待ってよ お母さん
だって私たち まだそんな…
んだ 何もそっただ 急ぐこともなかんべ
あなたは黙ってて
はい!
一応 ご用意しました
はい…
大楽さんに そのおつもりが ないのでしたら
弥生のことは きっぱりと 諦めてもらえませんか?
お母さん
分かりました
有彦さん
えっ 留学?
(剛造(ごうぞう))ああ
お母さんが死んでから ふさぎ込んでた綾の気持ちが
ようやく落ち着いた頃だと思ってな
イヤです
留学なんてしたくありません
随分はっきり ものが言えるようになったな
大楽先生のおかげか?
白樺組の将来も 考えていかないとな
(五月)ごめんなさい
えっ…
結婚なんて ホント うちの母はせっかちで
いえ
お似合いですね
ん?
ブレスレット
えっ…
あ… ありがとうございます
(大楽)外すの忘れてた
綾君は どう思うかな…
実は 許嫁がいるんだ
先生が私のこと 奪ってよ
(五月)どうしました?
ああ いや 何でもないです
あの… 弥生さん
(五月)はい
僕…
ちゃんと正式に 言ってなかったですよね
何がですか?
僕と 結婚を前提に
おつきあいしてください
はい
(大楽)あ… (五月)フフ
よかった
ありがとうございます
こちらこそ
(2人)ハハハ…
弥生さん
有彦さん
(大楽)きっと これでいいんだ
これで…
(ドアの開閉音)
お嬢さん
これでいいんです
これで…
(大楽)フゥー
これでいいのかな…
貯金とかないし
ちゃんと弥生さん 養っていけんのかなあ…
綾君 結婚の話 聞いたら 何て言うんだろ
(チャイム)
(大楽)はい
はい
(舞(まい))先生 久しぶり
(大楽)えっ どう… 何で?
(舞)初めてなんですか こういう所に来るの
まだ恥ずい?
(大楽)うわっ ぐは…
明日
全額 お支払いできます
(大楽)舞ちゃん…
ごめんなさい
こんな遅くに 勝手に押しかけちゃって
あっ いや…
でも どうしたの?
てか どうして ここが分かったの?
先生のことは 何でも分かっちゃうんだよ
はあ
ていうか それより舞ちゃん
あの… こないだみたいに 怖い人 来たりしないよね?
大丈夫
私 先生に会って変わったんだ
えっ?
ちゃんとしようって
ちゃんとして 普通な幸せ 手に入れようって
普通な幸せ?
うん 夢があってね
小さな雑貨店をやる夢
そのために今 一生懸命 働いてるんだ
へえ そうなんだ
うん
これ
お借りしてたお金
(大楽)えっ? (舞)100万円
えー!
先生 ホントにごめんなさい
えっ!
ホントに?
ありがとう!
ウフフ…
お礼を言うのは こっちでしょ
えっ?
先生 かわいい
えっ…
あっ…
ちゃーんと利息も お支払いしますからね
高利貸しさん
(大楽)ああ ちょっと…
(舞)フフ…
私が利息じゃ不足?
利回り最高よ
あっ…
(舞)ほら こっちは正直だよ
(大楽)ああ…
(舞)フフ (大楽)ああ…
(大楽)とろける たまらん…
ああ… しかし―
倫理 モラル 道徳が…
僕と 結婚を前提に
おつきあいしてください
私が先生を 幸せにしてあげる
この世で一番 私の笑顔を 見てるのは先生で
だから…
先生といると
いつか ハッピーエンドに なれる気がさ…
するんだよね
あ… ごめん 舞ちゃん!
気持ちは うれしいんだけど
今の僕は そういうことはできない
何で?
好きな人がいるの?
(大楽)うん
その人だけは 裏切りたくない
分かった
幸せだね 先生に愛される人って
じゃあね 先生 好きな人と幸せにね
ありがとう
舞ちゃんも夢 頑張ってね
うん
(ヒロミ)先生
(大楽)ヒロミさん
あんまり お嬢さんの気持ちを もてあそばないでください
あっ いや
彼女は そんなんじゃなくて…
(チャイム)
綾君
昨日 ヒロミさんから 何か聞いた?
えっ ヒロミさんに会ったの?
ああ うん…
何か言われた?
いや 別に…
ふーん
綾君は 何か言われた?
別に
(大楽)ふーん
何か変な感じ
らしくないぞ 先生 元気出せよ!
(大楽)ああ
(大久保)おい 大楽
ん?
どうした 何かあった?
ん? 別に
あんまり無理すんなよ
つらい時はつらいって顔してみ
そしたら誰かが助けてくれっから
うん
誰かって 俺だけどな
ありがと
(大久保)これ 頼まれてた みんなの写真と
おっ
データも入れといたから
おう サンキュ
卒業アルバム 楽しみだな
じゃあな 大楽
(大楽)大久保
写真係 やってくれてありがとな
大楽先生が いいカメラを 貸してくれたおかげで
まだまだ芸術が撮れそうです
ああ…
フフフ ハッハハ!
オーケー いいね! 黄色いいね!
あっ!
お先です
(大久保)あっ 芸術には 速さも大切なんですね
(荒井) そうですね でも一概には そうとは言い切れません
(大久保)んー 女子トイレです
(荒井)入りましょう
(大楽)あっ… (大久保)失礼!
芸術?
愛欲を超越したところに 芸術があるの
お分かり?
芸術か
(チャイム)
(大楽)よし
ハァ…
あの…
はい
どうしようか悩んだんですけど
これ
あっ…
母が どうしても 有彦さんに渡せって
でもプレッシャーとかだったら 捨ててください
すいません 母に断れなくって…
フフ…
お母さんの気持ちも 大事にしないと
ありがとうございます
あっ 大楽!
何?
綾がケガした!
綾君が?
サキが早く呼んでこいって!
早く 何してんだよ! 保健室!
(綾)先生!
大げさだよ ちょっと ひざ擦りむいただけ
ハァ… よかったー!
よし じゃあ帰っか!
ほら 行くぞ
(大久保)えっ? (サキ)帰るぞ
(大久保)えっ 何で?
(荒井) まだ心配させろよ ダチだろ?
ダチだから行くんだろ ほら
(大久保)えっ… (荒井)えっ 何だよ…
誰かが助けてくれんだよ
じゃあな 綾
(大久保)な… 何…
(サキ)早く
卒業写真 撮んだろ 協力してやるよ!
(大久保・荒井) いいですね ハハハ…
(大久保)いい顔してよ…
あ…
ああ よかったよ 無事で
うん
いつ帰ってくんの?
分かんない
そう…
飛んできてくれて… ありがとう
いや 別に
心配してくれて ありがとう
先生は…
いつも私を守ってくれる
先生がいなくなったら
私は どうなっちゃうのかな…
私ってさ 無力だよね
どんなに あがいても―
どうしようもないことばっか…
先生
助けて…
私を守ってよ
(あおい)大丈夫だって ちゃんとプロポーズされたんでしょ
まあ でも…
結婚を前提にって言われただけで
それで十分じゃん
3年生は この時期 みーんな不安なもんだよ
白樺綾だって 別に大楽先生だから 抱きついてたわけじゃないでしょ
だだの担任だから
ああ もう!
だったら あの現場にいっそのこと 踏み込んどきゃよかった
“てめえらは 一体 何やってんだ!”って
大楽先生のこと 信じらんない?
信じてる…
だったら ほら もっと自信を持ちな
あんたは十分いい女だよ
うん ありがとう…
先生
助けて…
私を守ってよ
ごめん 綾君
(愛)“ああ そうだ ぼくのおっかさんは”
“あの遠い 一つの ちりのように見える―”
“橙(だいだい)いろの三角標のあたりに いらっしゃって”
“いまぼくのことを 考えているんだった…”
(大楽)僕が綾君に してあげられることなんて
限られてるんだ…
教師と生徒の関係なんて あと半年ちょっとで終わってしまう
きっと卒業したら 君はヒロミさんと結婚して
手の届かない 遠い世界の人になってしまう
そしたら多分 二度と君とは会えない…
だから俺は ただの教師と 生徒の関係で終われるよう
君の心に 俺が何も残さないよう
努力すべきなんだ…
(大楽)んんっ…
綾君…
戻ってきてたんだ
うん 昨日の夜遅く
あっ…
ああ 起こしてくれれば よかったのに
だって寝てたから
あっ 先生 一緒に学校行こ
うん
ねえ 今度の日曜さ どっか行かない?
何それ デートのお誘い?
いや 別に そういうわけじゃないけど…
そんなお誘いなんて初めてじゃん
何かキモいんですけど
は? キモい?
イヤならいいよ 別に
考えといたげる
(大楽)うん
(綾)五月先生
お話があります
(綾)急に呼び出しちゃって ごめんなさい
実は私…
(女子生徒) 何か分かんないとこがあって…
どこ?
103ページ
103ページ うん…
“人類は小さな球の上で 眠り起きそして働き”
“ときどき火星に 仲間を欲しがったりする”
“火星人は小さな球の上で 何をしているか 僕は知らない”
“或(ある)いは ネリリし キルルし ハララしてるか”
“しかしときどき地球に 仲間を欲しがったりする”
(チャイム)
(大楽)あっ…
有彦さん
(大楽)はい
今 いいですか?
(大楽)ああ
どうぞ
ちょっと お話があります…
(大楽)ん?
どうしました?
(荒井)何だ コラ!
どうした?
何なんだ お前ら!
(荒井)やんのか コラ!
やめて!
(大久保)えっ?
綾?
先生
えっ…
先生 だーい好き!
ずーっと人前で 言ってみたかったんだ
じゃあね
バイバイ
あの 白樺さんが…
はい
白樺さんは…
(綾)実は私…
留学?
はい 明日
あっ でもナイショに しといてください
しんみりお別れとか らしくないんで
大楽先生にも
留学って…
どこに?
バンクーバー
じゃあ お世話になりました
ああ…
バカ…
(大楽)綾君!
綾君!
綾君!
何だよ…
何だよ 自分だけ正直になって!
(すすり泣き)
(綾)“先生 ありがとう”
“私は あなたに会って たくさんの気持ちを知りました”
“人って こんなにも怒れるんだ”
“こんなにも笑えるんだ”
“そして 人に好きって 伝えると―”
“こんなに涙が溢(あふ)れるんだ”
“きっとこれは とんでもなく 幸せなことなんだよね”
“五月先生とお幸せに”
“ありがとう 先生”
“綾”
(大楽)ダメじゃないか タバコなんか吸っちゃ
(綾)誰よ あんた?
16歳の か・ら・だ
(大楽)ちょ… 何すんだよ!
綾のファーストキス
何で君がいんの
約束したでしょ お父様と…
私は先生に
いつも教科書に載ってない いろんなことを教わってるよ
(鼻をすする音)
俺って何で…
無力なんだ…
(ドアの開閉音)
ヒロミさん
約束のカネをお持ちしました
は?
1億 入ってます
どうぞ お納めください
これで全て終了です
お疲れさまでした
待ってください
はい?
失礼ですね
誰が こんなお金…
持って帰ってください こんなお金!
よろしいんですか?
二度とお嬢様に会えないうえに カネも残らないとなると
あなたには何も残りませんよ
残ってますよ
たくさん…
確かに あなたみたいな人には
思い出だけで 十分なのかもしれませんね
では
(ドアの開閉音)
(大楽)ハァ…
何だよ 留学って…
ひと言も言わないでさ
僕たちの関係って そんなもんだったのかよ
2年も一緒に同棲させられて
ボディーガードみたいに 拳銃まで渡されて
それがカネ渡して “はい 終了”って
そんなのありかよ…
(大楽)五月先生
あっ…
ハハ…
返事がなかったから
勝手に入っちゃって ごめんなさい
あっ いえ…
どうぞ
五月先生か…
(大楽)えっ?
いえ 呼び方 変わったなと思って
あ…
すいません
さっき 急に走ってっちゃったから
どうしたのかなって思って
ああ すいません…
あー でもあの…
何でもないです
ご心配かけて すいませんでした
ちょっと…
目を閉じてもらってもいいですか?
えっ…
はい
有彦さんの―
愛する人の顔を 思い浮かべてください
えっ?
もう大切な人 離すなよ
幸せだね 先生に愛される人って
誰が見えますか?
それは 私ですか?
先生 だーい好き!
正直ですね
私は
私は そんな有彦さんが…
大好きでした
(ドアの開閉音)
ごめんなさい
あなたを
あなたを追いかけることは できません…
これ以上
ウソはつけません…
(大楽)あの…
綾君の忘れ物です
会わせてください
先生 悪いことは言いません
これ以上 うちと関わることは およしなさい
2年も一緒に過ごしてきたのに
ちゃんとした挨拶もなしに 終わりっていうのも…
娘には会えませんよ
じゃ せめて…
これだけでも渡してもらえませんか
何ですか?
綾君の写真です
最後に渡そうと思って
撮りためておきました
渡しておきます
はい
やっぱり僕が渡します
(箱が床に落ちる音)
喜ぶ顔が見たいんです!
(大楽の荒い息)
(達夫(たつお))ナメてんのか コラ!
(健司)ぶっ殺すぞ てめえ!
(大楽)綾君 開けて 綾君!
(大楽)やあ (綾)先生!
(達夫)あっ クソ!
(健司)組長!
(達夫) お嬢さん 開けてください!
(達夫)おい 出てこい コラ! (健司)オラ!
(達夫) てめえ この野郎! 開けろや!
ごめん 綾君
君のお父さんに こんなことして…
こんなことして タダで済むと思ってんのか
でも
これ
どうしても返さなきゃって思って…
先生…
もう マジでバカ
綾は妻が残した唯一の宝物だ
ごめんなさ… あっ!
貴様ごときに渡すか
(綾)逃げよ
綾…
お前 何言ってんだ!
(綾)ごめん パパ…
(達夫)組長!
(健司) お嬢さん 開けてください!
(ドアノブを壊す音) (達夫)貸せ 健司
(ドアノブを壊す音) (達夫)うっ!
(ドアノブを壊す音) (達夫)うわっ!
組長!
大丈夫っすか?
あいつは?
逃げた
(剛造)パパか…
何年ぶりだ そんなふうに呼ばれたの
(2人の荒い息)
やめて!
どいてください お嬢さん
イヤ!
あなたに そんな覚悟が おありですか?
綾君のためなら…
先生 大丈夫?
早く
こっちへ!
(達夫)ヒロミさん!
(ヒロミ)大丈夫
防弾チョッキ…
あの野郎 本気で撃ちやがった
ハァ…
ハァ…
大丈夫? 顔色悪いよ
ずっと気を張ってたから…
でも もう大丈夫
先生
あっ イッタ!
(綾)えっ? (大楽)あー!
(大楽)あっ… (綾)先生 これ
ハハハ…
やっぱり当たってたか
やっぱりって…
ちょっと見せて
(大楽)あー イタタタ…
(うめき声)
(綾)かすり傷じゃん
えっ?
ウソ マジで?
当たった瞬間 熱ってなって ヤバいなって思ったんだけど…
あっ ホントだ
すぐ言いなさいよ
何か確かめるのが怖くってさ
この小心者
フフフ…
せっかく素直に なれるっていうのに
死んでられないって思った
やっと言える
愛してる
(綾)好きな人のぬくもりって どうして こんなに心地いいの?
(綾)えっ? ちょ ちょっと こんなとこじゃ…
シャワーだって… んっ…
イッタ!
痛い 先生!
(綾)ちょっとストップ! (大楽)ちょ… 綾君 綾君
(大楽)あっ イッタ! イッタ 痛い痛い痛い…
(殴る音) (大楽)痛ーい!
これから どうしよう…
(大楽)うん
僕もずっと それを考えてた
やっぱり 戻ろうと思う
えっ?
何 バカなこと言ってんの
ここで戻っちゃったら
命懸けでやってきたこと 全部ムダになっちゃうじゃん
ムダなんかじゃないよ
君のお父さんに 本気だってことが示せたんだ
それに このままずっと…
逃げて生きてくのはイヤなんだ
でも…
戻ったら殺されちゃうよ
ハハハ…
まさか君の赤ちゃんのパパを 殺したりはしないでしょ
えっ?
あっ いや その…
ゆうべのはつい 久々で…
我慢ならずに…
(2人の笑い声)
バカもん!
ハハハ
大丈夫
たとえ反対されたとしても
必ず また君を連れ去ってみせる
じゃあ せめて戻るのは明日にしよ
えっ 明日?
今日は どこかにお泊まりして 先生の生存率を高めよ
えっ?
お泊まりって…
えっ つまりその また…
またエッチ系の変な妄想的なこと 始めちゃってんでしょ
ハハハハ!
よし 行こう!
(大楽)すぐ行こう! (綾)ちょっと…
(大楽)ほら 立って
何 急に元気になってんの?
大楽ゲス彦!
違うよ 生きることに 必死なだけだよ
(綾)ウソだ! 絶対にその必死さは違う
ウソじゃねえでゲス!
ウソ 言っとくけどね 昨日だって痛かったんだからね
うっ…
痛いと思うから痛いんだよ
ほら 痛いことと 友達になればいいんだよ
はあ? 教師っぽい いいこと言ってる感じ出してるけど
意味 分かんないから!
は? 教師っぽいって
わたくし こう見えても 教師ですから!
(2人の笑い声)
先生 逃げて!
(達夫)お嬢様は あちらの車へ
(綾)やだ 離して!
離してよ!
先生 先生!
綾君!
(綾)ふん!
必ず また会える
その時まで
お互いに子供の名前
考えておこう
うん
あー そうそう
(綾)ねえ 先生 (大楽)ん?
(大楽)私のどこが好き?
えっ 君の?
(綾)うん ちゃんと言ってよ
えっと…
まあ
料理が
…は作れないけど
あー でもほら 気は強いけど
えっと その…
(綾)ひょっとして今 後悔してる?
えっ?
そ… そんなことないよ
あなたには借りがありましたよね
綾君の好きなとこは その…
うまくは言えないけど…
(大楽)君の全て
(銃声)
(大楽)君の存在が…
好き
♪~
~♪
(チャイム)
(大楽) えー 今日から新しく入ってくる 転校生をご紹介します
白樺綾さんです
(綾)白樺綾です よろしくお願いします
(女子生徒)おかえり (女子生徒)かわいい
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