All language subtitles for Ohgon.
Afrikaans
Akan
Albanian
Amharic
Arabic
Armenian
Azerbaijani
Basque
Belarusian
Bemba
Bengali
Bihari
Bosnian
Breton
Bulgarian
Cambodian
Catalan
Cebuano
Cherokee
Chichewa
Chinese (Simplified)
Chinese (Traditional)
Corsican
Croatian
Czech
Danish
Dutch
Esperanto
Estonian
Ewe
Faroese
Filipino
Finnish
French
Frisian
Ga
Galician
Georgian
German
Greek
Guarani
Gujarati
Haitian Creole
Hausa
Hawaiian
Hebrew
Hindi
Hmong
Hungarian
Icelandic
Igbo
Indonesian
Interlingua
Irish
Italian
Japanese
Javanese
Kannada
Kazakh
Kinyarwanda
Kirundi
Kongo
Korean
Krio (Sierra Leone)
Kurdish
Kurdish (Soranî)
Kyrgyz
Laothian
Latin
Latvian
Lingala
Lithuanian
Lozi
Luganda
Luo
Luxembourgish
Macedonian
Malagasy
Malay
Malayalam
Maltese
Maori
Marathi
Mauritian Creole
Moldavian
Mongolian
Myanmar (Burmese)
Montenegrin
Nepali
Nigerian Pidgin
Northern Sotho
Norwegian
Norwegian (Nynorsk)
Occitan
Oriya
Oromo
Pashto
Persian
Polish
Portuguese (Brazil)
Portuguese (Portugal)
Punjabi
Quechua
Romanian
Romansh
Runyakitara
Russian
Samoan
Scots Gaelic
Serbian
Serbo-Croatian
Sesotho
Setswana
Seychellois Creole
Shona
Sindhi
Sinhalese
Slovak
Slovenian
Somali
Spanish
Spanish (Latin American)
Sundanese
Swahili
Swedish
Tajik
Tamil
Tatar
Telugu
Tigrinya
Tonga
Tshiluba
Tumbuka
Turkish
Turkmen
Twi
Uighur
Ukrainian
Urdu
Uzbek
Vietnamese
Welsh
Wolof
Xhosa
Yiddish
Yoruba
Zulu
Would you like to inspect the original subtitles? These are the user uploaded subtitles that are being translated:
1
00:00:00,453 --> 00:00:02,955
(鐘の音)
2
00:00:02,955 --> 00:00:06,942
〈この世界には 様々な国があり→
3
00:00:06,942 --> 00:00:13,966
その様々な文化 様々な環境の下に
私たちは生まれ育ちます〉
4
00:00:13,966 --> 00:00:19,955
〈けれど その誰しもに
唯一 生まれた瞬間から→
5
00:00:19,955 --> 00:00:22,955
平等に与えられているものが
あります〉
6
00:00:24,960 --> 00:00:27,963
〈それが時間です〉
7
00:00:27,963 --> 00:00:37,956
♬~
8
00:00:37,956 --> 00:00:40,943
〈これは まだ 時間という概念が→
9
00:00:40,943 --> 00:00:44,963
現代とは
大きく異なっていた時代に→
10
00:00:44,963 --> 00:00:50,035
時計に魅了され
平等な刻を追い求めた→
11
00:00:50,035 --> 00:00:54,035
服部金太郎の物語です〉
12
00:01:04,950 --> 00:01:06,969
(吉邨英恭)楽しみですなあ。
13
00:01:06,969 --> 00:01:09,972
(笠井恒雄)えーっと…。
(吉邨)えーっと…。
14
00:01:09,972 --> 00:01:13,942
(笠井)吉邨さん こちらですね。
で 善路さん…。
15
00:01:13,942 --> 00:01:16,942
(岩倉善路)
社長は そろそろですかね…。
16
00:01:24,036 --> 00:01:28,941
(𠮷川鶴彦の声)金太郎さん…
あっ いや… 社長。
17
00:01:28,941 --> 00:01:34,980
古希をお迎えになった事…
お祝い致します。
18
00:01:34,980 --> 00:01:37,966
本社の復旧を待って→
19
00:01:37,966 --> 00:01:40,966
この席を2年も遅らせてもらって
すまない。
20
00:01:41,970 --> 00:01:45,941
だが こうして
無事に 皆で集まれた事を→
21
00:01:45,941 --> 00:01:49,941
心から嬉しく思う。 ありがとう。
22
00:01:53,966 --> 00:01:57,936
(吉邨)社長 まだ 1人
来られていないようですが…。
23
00:01:57,936 --> 00:02:01,940
ああ…。
これで全員のはずだがな。
24
00:02:01,940 --> 00:02:03,959
(笠井)社長も
ご存じないのですか?
25
00:02:03,959 --> 00:02:05,944
ああ…。
26
00:02:05,944 --> 00:02:09,948
ともかく始めよう。 お願いします。
27
00:02:09,948 --> 00:02:13,018
〈金太郎と善路が出会ったのは→
28
00:02:13,018 --> 00:02:15,971
2人が丁稚奉公に入った
辻屋でした〉
29
00:02:15,971 --> 00:02:22,044
♬~
30
00:02:22,044 --> 00:02:23,962
≫おい 金太郎! お客様だぞ!
31
00:02:23,962 --> 00:02:26,962
へい! いらっしゃいませ。
32
00:02:27,966 --> 00:02:31,970
〈善路は
金太郎を兄のように慕い→
33
00:02:31,970 --> 00:02:34,957
金太郎も また 善路を→
34
00:02:34,957 --> 00:02:37,960
弟のように
かわいがっていました〉
35
00:02:37,960 --> 00:02:41,964
金太郎… そろそろ
お嬢様の迎えじゃないか?
36
00:02:41,964 --> 00:02:44,983
もう そんな時分ですか!
すぐに参ります。
37
00:02:44,983 --> 00:02:46,985
いえ そんな事は…。
38
00:02:46,985 --> 00:02:48,987
どうかしましたか?
39
00:02:48,987 --> 00:02:53,959
(幸三)ああ… 善路がな この手で
そろばんを教えようってんで→
40
00:02:53,959 --> 00:02:56,959
無理だって言ってたとこだよ。
ハハッ…。
41
00:03:00,966 --> 00:03:04,966
善路 隠したって変わらない。
42
00:03:08,957 --> 00:03:10,976
善路!
43
00:03:10,976 --> 00:03:12,976
逃げるな 善路!
44
00:03:15,964 --> 00:03:20,002
善路。 下の者に教えるのは
お前の仕事だ。
45
00:03:20,002 --> 00:03:24,973
でも 金太郎さん… 俺には…。
46
00:03:24,973 --> 00:03:27,960
自分が
手際良くできないからこそ→
47
00:03:27,960 --> 00:03:31,964
まだ仕事のできない者の気持ちが
わかる。
48
00:03:31,964 --> 00:03:34,964
善路の教え方は 丁寧でいいよ。
49
00:03:36,034 --> 00:03:38,971
≫(足音)
50
00:03:38,971 --> 00:03:41,971
善路さん! 続き お願いします。
51
00:03:42,941 --> 00:03:46,941
あっ… うん。
52
00:03:48,964 --> 00:03:50,964
よし 戻ろう。
53
00:03:54,970 --> 00:03:58,970
金太郎さん お嬢さんのお迎え…。
あっ そうだった!
54
00:04:03,095 --> 00:04:04,946
≪♬~(辻 浪子)
「御座れ 話しませうぞ」
55
00:04:04,946 --> 00:04:15,941
♬~「こん小松の蔭で
松の葉の様にこん細やかに」
56
00:04:15,941 --> 00:04:26,941
♬~(三味線)
57
00:04:27,969 --> 00:04:31,940
今日は 一段と熱が入りましたね。
58
00:04:31,940 --> 00:04:34,960
そうなの。
だから おなか すいちゃった。
59
00:04:34,960 --> 00:04:38,947
お団子でも食べて帰りましょう。
あっ… いや…。
60
00:04:38,947 --> 00:04:42,968
フフ… お代なら心配いらないわ。
私が払います。
61
00:04:42,968 --> 00:04:44,953
それはいけません!
62
00:04:44,953 --> 00:04:46,955
私ごときに
めっそうもありません!
63
00:04:46,955 --> 00:04:50,942
もう… 真面目なんだから。
いいから行きましょうよ。
64
00:04:50,942 --> 00:04:53,942
いけません! お嬢様… お嬢様!
65
00:04:56,932 --> 00:04:58,950
フフフフ…。
66
00:04:58,950 --> 00:05:03,972
あんなに拒んでたのに
見事な食べっぷりね。
67
00:05:03,972 --> 00:05:06,942
あっ… すみません。
68
00:05:06,942 --> 00:05:11,029
でも
どうせ 旦那様に叱られるのなら→
69
00:05:11,029 --> 00:05:13,949
げんこつに耐えられるように
腹ごしらえをして…。
70
00:05:13,949 --> 00:05:18,954
フフ… お父様は
金太郎さんに そんな事しないわ。
71
00:05:18,954 --> 00:05:21,954
だって 金太郎さんの事
気に入ってるんですもの。
72
00:05:22,941 --> 00:05:27,941
私をですか…?
そうよ。
73
00:05:28,964 --> 00:05:35,971
ねえ 金太郎さんは
年季が明けたら どうなさるの?
74
00:05:35,971 --> 00:05:39,971
何をしたいかは まだ…。
75
00:05:42,944 --> 00:05:49,944
ですが 何をやるにしても
一番になりたいと思っています。
76
00:06:09,971 --> 00:06:21,049
♬~
77
00:06:21,049 --> 00:06:24,953
(辻 粂吉)今回 英国を回って
感じたんだがね→
78
00:06:24,953 --> 00:06:28,957
鉄道は 人間の移動手段を
変えるだけでなく→
79
00:06:28,957 --> 00:06:31,943
物の流れも変えるよ。
80
00:06:31,943 --> 00:06:33,962
移動時間が短縮されれば→
81
00:06:33,962 --> 00:06:37,962
商業圏は拡大して
商業活動が活発になるからね。
82
00:06:38,950 --> 00:06:44,956
これは
洋行中に買ってきた懐中時計だ。
83
00:06:44,956 --> 00:06:46,942
これからの商売には→
84
00:06:46,942 --> 00:06:49,961
もっと正確な時間が
必要とされるだろう。
85
00:06:49,961 --> 00:06:52,964
旦那様! 手に取って見ても…?
86
00:06:52,964 --> 00:06:55,964
もちろんだよ。
さあ みんなで見なさい。
87
00:06:59,971 --> 00:07:01,971
失礼します。
88
00:07:02,941 --> 00:07:11,049
♬~
89
00:07:11,049 --> 00:07:12,951
美しいですね…。
90
00:07:12,951 --> 00:07:40,979
♬~
91
00:07:40,979 --> 00:07:45,967
やっぱり ここでしたね。
ああ…。
92
00:07:45,967 --> 00:07:52,941
どうも この時計の事が
頭から離れなくてね…。
93
00:07:52,941 --> 00:07:54,941
俺もです。
94
00:07:56,962 --> 00:08:02,962
こんな見事な彫りが
俺にも できたらいいのに…。
95
00:08:04,986 --> 00:08:08,957
そう思うなら やればいいさ。
96
00:08:08,957 --> 00:08:11,957
でも…。
97
00:08:14,980 --> 00:08:16,965
この手じゃ…。
98
00:08:16,965 --> 00:08:19,985
善路。
99
00:08:19,985 --> 00:08:26,985
この針が一つ動いた先は
誰にも わからない。
100
00:08:27,976 --> 00:08:32,964
私のこれからも
善路のこれからも→
101
00:08:32,964 --> 00:08:36,951
何一つ決まっていないんだ。
102
00:08:36,951 --> 00:08:39,971
だったら
想像するのは自由だろう?
103
00:08:39,971 --> 00:08:53,952
♬~
104
00:08:53,952 --> 00:08:57,952
(時計の音)
105
00:09:01,943 --> 00:09:05,947
(店主)駄目だ こりゃ。
(店主)今日は商売あがったりだ。
106
00:09:05,947 --> 00:09:07,947
(店主)まったくだ。
これ 駄目だ 今日は。
107
00:09:27,969 --> 00:09:29,969
お迎えに上がりました!
108
00:09:30,939 --> 00:09:33,942
師匠 お嬢様は?
109
00:09:33,942 --> 00:09:37,962
おや? 外にいなかったかい?
ええ。
110
00:09:37,962 --> 00:09:39,964
稽古は 今 終わったのですか?
111
00:09:39,964 --> 00:09:43,964
いや 今日は出来が良かったから
いつもより早く切り上げたよ。
112
00:09:46,938 --> 00:09:49,938
お嬢様! 浪子さーん!
113
00:09:52,026 --> 00:09:54,026
浪子さーん!!
114
00:09:55,029 --> 00:09:57,031
≪(浪子)やめてください!
115
00:09:57,031 --> 00:09:59,031
浪子さん…!
116
00:10:02,020 --> 00:10:06,975
≪(浪子)離してください!
誰かーっ! 助けて…!
117
00:10:06,975 --> 00:10:08,943
(男)うるせえなあ!
浪子さん!
118
00:10:08,943 --> 00:10:10,962
金太郎さん!
119
00:10:10,962 --> 00:10:14,949
浪子さんを… 離せ!
120
00:10:14,949 --> 00:10:17,949
おい かっこつけてると
痛い目 遭うぞ。
121
00:10:18,953 --> 00:10:21,956
おりゃっ! うおおーっ!
122
00:10:21,956 --> 00:10:23,975
くっ…!
123
00:10:23,975 --> 00:10:25,960
てめえ ふざけんじゃねえ オラ!
(蹴る音)
124
00:10:25,960 --> 00:10:27,962
オラァ!
125
00:10:27,962 --> 00:10:30,949
(蹴る音)
(男)オラァ!
126
00:10:30,949 --> 00:10:32,951
(泣き声)
127
00:10:32,951 --> 00:10:37,939
やめて! 金太郎さん!
金太郎さん…!
128
00:10:37,939 --> 00:10:39,939
うおおーっ…!
129
00:10:41,960 --> 00:10:43,960
うわあっ…!
130
00:10:46,965 --> 00:10:49,951
うわああーっ…!
131
00:10:49,951 --> 00:10:51,970
どうした!? かかってこい!
132
00:10:51,970 --> 00:10:53,970
おい もう行くぞ!
133
00:10:54,939 --> 00:10:56,939
(男)お前ら… 覚えてろよ!
134
00:10:59,944 --> 00:11:02,964
(泣き声)
135
00:11:02,964 --> 00:11:04,966
浪子さん…。
136
00:11:04,966 --> 00:11:08,953
(泣き声)
137
00:11:08,953 --> 00:11:11,940
もう 大丈夫ですよ。
138
00:11:11,940 --> 00:11:15,940
(浪子の泣き声)
139
00:11:16,961 --> 00:11:19,948
申し訳ございませんでした!
140
00:11:19,948 --> 00:11:23,034
私が もう少し早く
お迎えに上がっていれば…。
141
00:11:23,034 --> 00:11:24,969
(辻)何を言ってるんだ。
142
00:11:24,969 --> 00:11:29,969
君が気づいてくれなければ
それこそ大惨事になってたよ。
143
00:11:32,927 --> 00:11:36,948
浪子の事なら心配いらん。
144
00:11:36,948 --> 00:11:40,948
さあ 掛けなさい。
はい…。
145
00:11:45,940 --> 00:11:50,945
今日 呼びつけたのは
年季が明けたあとの話だ。
146
00:11:50,945 --> 00:11:54,032
率直に聞くぞ。
147
00:11:54,032 --> 00:11:57,952
君は
このまま辻屋に残る気はないか?
148
00:11:57,952 --> 00:11:59,971
えっ…?
149
00:11:59,971 --> 00:12:05,944
仕事ののみ込みの早さ 丁寧な接客
そして 学ぼうとする心。
150
00:12:05,944 --> 00:12:11,983
何より 君は
己を律する精神力にたけている。
151
00:12:11,983 --> 00:12:17,972
この2年間 君は
一番に店に入り 商いの準備をし→
152
00:12:17,972 --> 00:12:22,977
誰よりも遅くまで
仕事を学ぼうとしてきた。
153
00:12:22,977 --> 00:12:28,049
私はね
君の将来が楽しみなんだよ。
154
00:12:28,049 --> 00:12:33,049
辻屋に迎え入れて 君を
立派な商人に育ててみたいんだ。
155
00:12:34,973 --> 00:12:38,042
「迎え入れる」というのは…。
156
00:12:38,042 --> 00:12:43,965
いずれ この辻屋を
継いでほしいと思ってる。
157
00:12:43,965 --> 00:12:47,969
浪子の婿になってね。
158
00:12:47,969 --> 00:12:54,042
♬~
159
00:12:54,042 --> 00:13:00,042
お父様から聞いたわ
辻屋に残ってもらう話…。
160
00:13:01,983 --> 00:13:03,983
ええ…。
161
00:13:04,969 --> 00:13:07,972
しかし
私には もったいない話です。
162
00:13:07,972 --> 00:13:09,972
そんな事ない!
163
00:13:11,960 --> 00:13:16,965
私も ずっと思ってたから。
164
00:13:16,965 --> 00:13:20,034
えっ…?
165
00:13:20,034 --> 00:13:26,034
金太郎さんが 辻屋に
残ってくれたらいいのにって。
166
00:13:27,976 --> 00:13:32,976
だから お父様のお考えは嬉しい。
167
00:13:38,953 --> 00:13:40,939
浪子さん 私も…。
168
00:13:40,939 --> 00:13:42,941
(鼻緒の切れる音)
あっ…!
169
00:13:42,941 --> 00:13:55,954
♬~
170
00:13:55,954 --> 00:13:57,954
あっ…。
171
00:13:58,940 --> 00:14:00,942
肩を。
172
00:14:00,942 --> 00:14:10,969
♬~
173
00:14:10,969 --> 00:14:14,939
どうぞ お嬢様。
174
00:14:14,939 --> 00:14:19,944
うん… ありがとう。
175
00:14:19,944 --> 00:14:33,941
♬~
176
00:14:33,941 --> 00:14:40,941
(時計の音)
177
00:14:47,354 --> 00:14:52,354
(辻)さて…
返事を聞かせてもらおうかな。
178
00:14:58,248 --> 00:15:00,248
申し訳ありません!
179
00:15:01,268 --> 00:15:04,354
お断りさせてください。
180
00:15:04,354 --> 00:15:07,274
こんな ありがたい申し出を
断れる身分ではないのは→
181
00:15:07,274 --> 00:15:09,276
承知しております。
182
00:15:09,276 --> 00:15:14,264
ですが 私は…→
183
00:15:14,264 --> 00:15:19,269
お嬢様の一件で
自分の生きる道を見つけたのです。
184
00:15:19,269 --> 00:15:22,289
どういう事だ?
185
00:15:22,289 --> 00:15:28,278
あの日 お嬢様を
危険な目に遭わせてしまったのは→
186
00:15:28,278 --> 00:15:31,278
時を共にできていなかったから
なのです。
187
00:15:32,282 --> 00:15:38,288
今 多くの人は
それぞれの時で動いています。
188
00:15:38,288 --> 00:15:42,288
だから いつ どこにいるのか
わからないのです。
189
00:15:44,261 --> 00:15:52,352
もし 目印のようなものがあれば
お互いの動きに見当がつきます。
190
00:15:52,352 --> 00:15:56,352
それが 時計でございます!
191
00:15:57,257 --> 00:16:00,277
もう それぞれの時間で動く時代は
終わりです。
192
00:16:00,277 --> 00:16:05,282
生活の全ては 時間を基準に
行われるようになります。
193
00:16:05,282 --> 00:16:10,287
お嬢様の事だけではなく
時間を正確に知れる時計は→
194
00:16:10,287 --> 00:16:14,274
必ず
私たちの生活を変えてくれます。
195
00:16:14,274 --> 00:16:17,327
誰にでも
平等な時を与えてくれます。
196
00:16:17,327 --> 00:16:20,327
つまり 君は…。
197
00:16:21,265 --> 00:16:26,253
時計商になると… 決めました。
198
00:16:26,253 --> 00:16:33,260
♬~
199
00:16:33,260 --> 00:16:39,249
その気持ちは揺るがんのだな?
200
00:16:39,249 --> 00:16:43,249
はい… 申し訳ございません。
201
00:16:46,256 --> 00:16:50,260
だったら… 勝手にしろ!
202
00:16:50,260 --> 00:16:57,260
♬~
203
00:17:19,256 --> 00:17:22,242
金太郎さん
俺も 年季が明けたら→
204
00:17:22,242 --> 00:17:25,262
機械彫りの店に
奉公に行くつもりです。
205
00:17:25,262 --> 00:17:27,262
ああ。
206
00:17:29,266 --> 00:17:33,270
一足先に 時計を学んでくるよ。
207
00:17:33,270 --> 00:17:37,324
金太郎さん 頑張って!
208
00:17:37,324 --> 00:17:40,324
≪達者でな。
(幸三)金太郎 元気でな。
209
00:17:53,323 --> 00:17:55,323
≪(浪子)金太郎さん!
210
00:17:56,260 --> 00:18:02,266
♬~
211
00:18:02,266 --> 00:18:04,266
浪子さん…。
212
00:18:06,286 --> 00:18:11,258
これ… お父様からです。
213
00:18:11,258 --> 00:18:13,260
えっ…。
214
00:18:13,260 --> 00:18:17,260
きっと 時計修理を学ぶのに
役立つだろうって。
215
00:18:20,267 --> 00:18:22,252
旦那様が…。
216
00:18:22,252 --> 00:18:25,272
しかし こんな高価なものを…。
217
00:18:25,272 --> 00:18:29,259
(浪子)彫りのない安物だから
気にするなと言われたわ。
218
00:18:29,259 --> 00:18:31,261
しかし お嬢様…。
219
00:18:31,261 --> 00:18:42,255
♬~
220
00:18:42,255 --> 00:18:46,259
金太郎さんは 一番になる。
221
00:18:46,259 --> 00:18:49,259
すごい人になります。
222
00:18:51,264 --> 00:18:57,264
必ず 一番の時計商になります!
223
00:18:59,272 --> 00:19:01,274
その時には…。
224
00:19:01,274 --> 00:19:11,284
♬~
225
00:19:11,284 --> 00:19:15,272
また お会いしましょう?
フフッ…。
226
00:19:15,272 --> 00:19:31,288
♬~
227
00:19:31,288 --> 00:19:33,288
フフッ…。
228
00:19:35,258 --> 00:19:38,278
〈きっと 金太郎は→
229
00:19:38,278 --> 00:19:42,366
浪子と添い遂げたかったに
違いありません〉
230
00:19:42,366 --> 00:19:48,288
〈それでも 自分の信念に従い
時計商の道を選んだのです〉
231
00:19:48,288 --> 00:19:50,273
お名前は?
繁吉と申します。
232
00:19:50,273 --> 00:19:52,275
繁吉さん。
233
00:19:52,275 --> 00:19:59,282
♬~
234
00:19:59,282 --> 00:20:01,284
うーん…。
235
00:20:01,284 --> 00:20:06,273
♬~
236
00:20:06,273 --> 00:20:09,273
どうぞ。
(舌打ち)
237
00:20:12,279 --> 00:20:14,264
すまないな。
238
00:20:14,264 --> 00:20:17,284
お前は
時計の技術を学びたいだろうに。
239
00:20:17,284 --> 00:20:19,269
いえ。
240
00:20:19,269 --> 00:20:22,305
こんな新米に
修理を教えてくれて→
241
00:20:22,305 --> 00:20:25,275
道具まで
持たせてくれているのですから→
242
00:20:25,275 --> 00:20:28,261
本当に感謝しています。
243
00:20:28,261 --> 00:20:44,277
♬~
244
00:20:44,277 --> 00:21:00,260
♬~
245
00:21:00,260 --> 00:21:07,260
時計って… すごいな。
246
00:21:10,270 --> 00:21:13,290
申し訳ございません!
遅くなりまし…。
247
00:21:13,290 --> 00:21:16,290
(男)坂田さんよ!
248
00:21:18,261 --> 00:21:21,261
(坂田)
どうか… どうか ご勘弁を!
249
00:21:22,265 --> 00:21:27,270
(男)坂田さんよ
借りた金は返さねえと。
250
00:21:27,270 --> 00:21:30,240
それが
人の道理ってもんだろうが。
251
00:21:30,240 --> 00:21:33,240
おい。
(男たち)へい。
252
00:21:37,264 --> 00:21:39,332
ちょっ ちょっ ちょっ ちょっ…
ちょっと待ってください!
253
00:21:39,332 --> 00:21:41,251
それは お客様の大切な…!
254
00:21:41,251 --> 00:21:44,271
小僧は黙ってろ!
(蹴る音)
255
00:21:44,271 --> 00:21:46,256
うわっ…!
256
00:21:46,256 --> 00:21:50,260
おい お前らも もう居場所ねえぞ。
この店も差し押さえだ!
257
00:21:50,260 --> 00:21:52,262
(坂田房江)私たちは これから→
258
00:21:52,262 --> 00:21:54,264
どうやって生きていけば
いいんですか!
259
00:21:54,264 --> 00:21:56,264
うるさいな!
オラ!
260
00:21:57,267 --> 00:22:01,254
俺たちの給金はどうなるんだ?
(坂田)えっ?
261
00:22:01,254 --> 00:22:03,256
こっちにも生活があるんだよ…。
262
00:22:03,256 --> 00:22:06,259
少しでも もらわねえと
もう 死んじまうよ!
263
00:22:06,259 --> 00:22:10,263
(男)おいおい
そんなに責めてやるな。
264
00:22:10,263 --> 00:22:14,263
こいつは 借金の肩代わりを
させられただけなんだからよ。
265
00:22:16,253 --> 00:22:18,271
ほい。
266
00:22:18,271 --> 00:22:20,257
(房江)いけません!
(坂田)やめろ!
267
00:22:20,257 --> 00:22:22,259
(男)それで ちっとは
暮らしの足しにしろ。
268
00:22:22,259 --> 00:22:25,328
(坂田)やめなさい! やめろ!
269
00:22:25,328 --> 00:22:27,247
(房江)いけません いけません!
離して…!
270
00:22:27,247 --> 00:22:29,266
(坂田)やめなさい!
よこせ!
271
00:22:29,266 --> 00:22:39,266
♬~
272
00:22:51,254 --> 00:22:57,243
親方は きっと もう一度
時計商を始めるのでしょう?
273
00:22:57,243 --> 00:23:00,263
その時に→
274
00:23:00,263 --> 00:23:03,263
道具の一つも持っていなければ
困ります。
275
00:23:05,268 --> 00:23:11,257
それと ためていたお金が
7円ほどあります。
276
00:23:11,257 --> 00:23:14,260
(房江)えっ…
これは開業資金にって…。
277
00:23:14,260 --> 00:23:19,249
自分の家を店にすれば
資金はいりません。
278
00:23:19,249 --> 00:23:26,256
私には 親方に教えて頂いた
技術があります。
279
00:23:26,256 --> 00:23:28,256
それで十分です。
280
00:23:35,265 --> 00:23:39,269
頂き物ではございますが…→
281
00:23:39,269 --> 00:23:44,240
あのお方なら きっと→
282
00:23:44,240 --> 00:23:48,240
これを差し出す事を
喜んでくれるでしょう。
283
00:23:54,284 --> 00:24:04,277
♬~
284
00:24:04,277 --> 00:24:07,277
(坂田)金太郎
本当にありがとう…。
285
00:24:12,268 --> 00:24:19,275
だが これだけは
君の未来のために使ってほしい。
286
00:24:19,275 --> 00:24:26,282
♬~
287
00:24:26,282 --> 00:24:28,268
ありがとう…。
288
00:24:28,268 --> 00:24:44,268
♬~
289
00:25:07,357 --> 00:25:09,357
≪(店員)
ありがとうございました!
290
00:25:18,284 --> 00:25:23,284
大久保利通が暗殺されて
日本は どうなるんですかね?
291
00:25:24,340 --> 00:25:29,362
まあ 伊藤博文が
引き継いでいくのだろうけど→
292
00:25:29,362 --> 00:25:33,349
洋銀相場の高騰での輸入超過を
どうにかしないとな。
293
00:25:33,349 --> 00:25:35,349
≪(店員)はい お待たせ!
294
00:25:36,269 --> 00:25:39,269
俺も 全く同じ考えです!
295
00:25:41,274 --> 00:25:43,276
こっちに酒を!
あっ はい!
296
00:25:43,276 --> 00:25:45,295
金太郎さんは?
297
00:25:45,295 --> 00:25:48,281
酒は どうも 体に合わん。
よく酒なんか飲めるよ。
298
00:25:48,281 --> 00:25:51,281
そしたら お茶も1つ。
(店員)はい ただ今。
299
00:25:52,285 --> 00:25:58,285
変わったな 善路。
その手も 昔は隠していたのに。
300
00:25:59,275 --> 00:26:03,279
金太郎さんのおかげです。
301
00:26:03,279 --> 00:26:06,282
隠したって何も変わらない。
302
00:26:06,282 --> 00:26:10,282
今は 機械彫りの職人になるので
精いっぱいです。
303
00:26:11,287 --> 00:26:13,287
うん。
304
00:26:14,274 --> 00:26:20,246
私は 時計の精密さを
善路は 時計の美しさを。
305
00:26:20,246 --> 00:26:24,284
いつか 一つの時計を
2人で作れたらいいな。
306
00:26:24,284 --> 00:26:26,284
はい!
307
00:26:27,270 --> 00:26:29,272
はい 酒とお茶ね。
308
00:26:29,272 --> 00:26:31,272
ありがとう。
どうも。
309
00:26:33,243 --> 00:26:37,263
ところで どうなんですか?
うん?
310
00:26:37,263 --> 00:26:42,263
亀田時計店の娘さん。
縁談 受けたんでしょう?
311
00:26:43,269 --> 00:26:46,256
亀田時計店は大店ですからね。
312
00:26:46,256 --> 00:26:50,243
時計商で一番になるっていう夢も
近づいたんじゃないですか?
313
00:26:50,243 --> 00:26:52,243
善路!
314
00:26:56,249 --> 00:26:58,268
金太郎さん?
315
00:26:58,268 --> 00:27:02,268
だ… だ… 大丈夫だ。
316
00:27:03,256 --> 00:27:05,258
おかしいな…。
317
00:27:05,258 --> 00:27:07,258
これ 酒じゃねえか!
318
00:27:08,328 --> 00:27:12,398
≫(雨の音)
319
00:27:12,398 --> 00:27:14,398
≫(辻)金太郎。
320
00:27:15,251 --> 00:27:17,270
旦那様!?
321
00:27:17,270 --> 00:27:19,272
どうして ここに?
322
00:27:19,272 --> 00:27:22,272
開店祝いだよ。 ほら。
323
00:27:27,787 --> 00:27:33,287
こんな雨の日に… 精が出るな。
324
00:27:34,061 --> 00:27:38,265
雨の日だからこそ… です。
うん?
325
00:27:38,265 --> 00:27:43,270
お客が来ない間は
修理に専念できる。
326
00:27:43,270 --> 00:27:48,258
大切な時間を無駄にしないのも
時計商を志した理由の一つです。
327
00:27:48,258 --> 00:27:51,261
ハハハハ…。
328
00:27:51,261 --> 00:27:56,300
評判の修理屋っていうのも
うなずけるよ。
329
00:27:56,300 --> 00:27:58,285
ですが 旦那様…。
うん?
330
00:27:58,285 --> 00:28:02,289
中古の時計販売は
さっぱりでして…。
331
00:28:02,289 --> 00:28:04,258
おお…。
332
00:28:04,258 --> 00:28:07,261
他の店とは違う売りがなければ→
333
00:28:07,261 --> 00:28:10,264
わざわざ
うちで買ってはくれません。
334
00:28:10,264 --> 00:28:13,267
「売り」ねえ…。
335
00:28:13,267 --> 00:28:19,273
君は 腕に自信があるんだろ?
336
00:28:19,273 --> 00:28:27,264
もし 私が客だったら
それを証明してほしいと思うがね。
337
00:28:27,264 --> 00:28:32,264
技術の証明… ですか…。
338
00:28:35,272 --> 00:28:40,272
話は変わるが
一つ めでたい事があってね。
339
00:28:41,261 --> 00:28:45,282
浪子が嫁に行くんだ。
340
00:28:45,282 --> 00:28:50,270
あいつも いい年だ。
そろそろと思っていたところに→
341
00:28:50,270 --> 00:28:54,270
軍医をなさってる うちのお客様に
見初められてね。
342
00:29:04,334 --> 00:29:07,254
(辻)どうした?
343
00:29:07,254 --> 00:29:09,239
いえ…。
344
00:29:09,239 --> 00:29:11,241
まさか…。
345
00:29:11,241 --> 00:29:14,228
お… おめでたい事は
続くものですね!
346
00:29:14,228 --> 00:29:19,249
私も 実は 大店の亀田時計店に
縁談のお話を頂いていて!
347
00:29:19,249 --> 00:29:21,249
ぜひになんて言われてしまって。
348
00:29:22,252 --> 00:29:26,256
時計商を志す者としては
大変ありがたいお話です!
349
00:29:26,256 --> 00:29:35,249
♬~
350
00:29:35,249 --> 00:29:43,249
いい… 人ですか?
その軍医の方は。
351
00:29:46,243 --> 00:29:51,243
ああ。 気持ちのいい男だよ。
352
00:29:55,252 --> 00:29:57,252
そうですか。
353
00:30:01,241 --> 00:30:07,247
金太郎…。
はい。
354
00:30:07,247 --> 00:30:15,239
人生っていうやつは
思いどおりにはいかないもんでね。
355
00:30:15,239 --> 00:30:24,248
ただ… あとになって 振り返れば→
356
00:30:24,248 --> 00:30:32,256
その全ての出会いに意味がある
そう思える日が来る。
357
00:30:32,256 --> 00:30:34,224
必ず来る。
358
00:30:34,224 --> 00:31:04,254
♬~
359
00:31:04,254 --> 00:31:08,258
どうか… お幸せに。
360
00:31:08,258 --> 00:31:27,258
♬~
361
00:31:29,263 --> 00:31:33,267
見てみ。 1年間保証だってよ。
362
00:31:33,267 --> 00:31:35,285
タダで直すって事ですか?
363
00:31:35,285 --> 00:31:37,271
そんなうまい話が
本当にあるのかい?
364
00:31:37,271 --> 00:31:42,276
ええ。 嘘偽りはありません。
腕に自信がありますから。
365
00:31:42,276 --> 00:31:47,264
へえ~。 値段も安いし
ちょっと見せてもらうよ。
366
00:31:47,264 --> 00:31:49,264
どうぞ ご覧ください。
367
00:31:50,284 --> 00:31:56,284
(まん)ごめんください。
あの この時計なんですが…。
368
00:31:59,259 --> 00:32:01,259
直せるでしょうか?
369
00:32:03,263 --> 00:32:06,263
あまり見ない代物ですね。
370
00:32:09,269 --> 00:32:13,269
この彫りは 魚子彫り…。
371
00:32:18,245 --> 00:32:21,281
父の形見なのですが→
372
00:32:21,281 --> 00:32:24,268
群馬では
直せる職人がいなくて…。
373
00:32:24,268 --> 00:32:26,268
群馬から わざわざ…。
374
00:32:29,289 --> 00:32:32,259
わかりました。 やってみます。
375
00:32:32,259 --> 00:32:34,261
ありがとうございます!
376
00:32:34,261 --> 00:32:36,280
おところと お名前を
書いてください。
377
00:32:36,280 --> 00:32:46,273
♬~
378
00:32:46,273 --> 00:32:52,279
しかし
見るほどに美しい彫りだ…。
379
00:32:52,279 --> 00:32:58,268
♬~
380
00:32:58,268 --> 00:33:00,270
お好きなんですね。
381
00:33:00,270 --> 00:33:02,272
…えっ?
382
00:33:02,272 --> 00:33:05,272
時計です。
楽しそうに見ていらっしゃるから。
383
00:33:06,259 --> 00:33:09,259
ああ… ええ…。
384
00:33:11,264 --> 00:33:14,264
寒いな。
ああ 寒いねえ。
385
00:33:15,335 --> 00:33:18,288
≪(風の音)
386
00:33:18,288 --> 00:33:20,257
(店主)すげえもんだ。
387
00:33:20,257 --> 00:33:23,257
壊れた時計を
金に変えちまうんだから。
388
00:33:25,262 --> 00:33:27,264
それだけ 皆さんが→
389
00:33:27,264 --> 00:33:30,267
時間を考えて暮らすようになった
という事です。
390
00:33:30,267 --> 00:33:32,252
ああ…。
391
00:33:32,252 --> 00:33:36,252
あんたは
金を稼いで どうするんだい?
392
00:33:37,274 --> 00:33:40,274
そうですねえ…。
393
00:33:43,280 --> 00:33:48,285
出先でも みんなが時間を知れる→
394
00:33:48,285 --> 00:33:52,222
大きな時計の塔を
建ててみたいですね。
395
00:33:52,222 --> 00:33:56,259
(店主)時計の塔…?
396
00:33:56,259 --> 00:33:59,246
そりゃ無理ってもんだ! ハハ…!
397
00:33:59,246 --> 00:34:04,317
何万個 売ったって 無理だよ
そんなの…。 ハハハハ…!
398
00:34:04,317 --> 00:34:06,269
≪おい! おい!
(店主)ああ?
399
00:34:06,269 --> 00:34:08,255
火事だ 火事!
(店主)どこだい!?
400
00:34:08,255 --> 00:34:10,223
(半鐘の音)
401
00:34:10,223 --> 00:34:13,260
金太郎さん
あんたの店のほうじゃねえか!?
402
00:34:13,260 --> 00:34:16,260
(男性)火事だ 火事だ! 火事だ!
403
00:34:18,248 --> 00:34:21,268
(男性)このままじゃ 火が…!
(男性)駄目だ 逃げろ!
404
00:34:21,268 --> 00:34:25,238
(半鐘の音)
405
00:34:25,238 --> 00:34:28,238
(男性)もっと早く!
もっと早く行け!
406
00:34:33,263 --> 00:34:37,263
(せき込み)
407
00:34:39,269 --> 00:34:41,238
(せき込み)
408
00:34:41,238 --> 00:34:47,238
(消防組)おい! 何してやがる!
死んだら 元も子もねえだろ!
409
00:34:49,262 --> 00:34:51,248
ちょっと待ってください!
410
00:34:51,248 --> 00:34:54,248
(消防組)馬鹿野郎! 戻ってこい!!
411
00:34:55,853 --> 00:35:01,453
(せき込み)
412
00:35:01,775 --> 00:35:02,475
うっ…!
413
00:35:22,062 --> 00:35:23,081
あなたは…。
414
00:35:23,081 --> 00:35:25,083
大丈夫だったのですね?
415
00:35:25,083 --> 00:35:29,083
この辺りで大きな火災があったと
新聞で読んだもので…。
416
00:35:31,089 --> 00:35:34,089
確か… 山本まんさんでしたね。
417
00:35:39,063 --> 00:35:41,065
もしかして 服部さん それ…。
418
00:35:41,065 --> 00:35:45,069
無事だった時計を
返して回っています。
419
00:35:45,069 --> 00:35:48,056
あなたからお預かりした時計も
無事ですよ。
420
00:35:48,056 --> 00:35:50,074
とても美しい彫りでしたし→
421
00:35:50,074 --> 00:35:53,074
きっと大切なものだろうと
思ったので。
422
00:35:59,083 --> 00:36:01,083
どうしました?
423
00:36:02,070 --> 00:36:06,070
あっ… いえ。 こんな状況になって
落ち込んでいるのかと…。
424
00:36:07,058 --> 00:36:12,080
確かに 全てを失いました。
425
00:36:12,080 --> 00:36:17,080
商売道具も やっと築いた城も…。
426
00:36:21,072 --> 00:36:27,061
でも
これまで培った時計修理の腕や→
427
00:36:27,061 --> 00:36:30,165
それを認めてくれたお客様が→
428
00:36:30,165 --> 00:36:33,165
消え去ったわけでは
ないでしょう?
429
00:36:37,055 --> 00:36:41,059
しっかり動いています。
お聞きになりますか?
430
00:36:41,059 --> 00:36:43,061
えっ…?
431
00:36:43,061 --> 00:36:47,065
いつ聞いても いい音です。
432
00:36:47,065 --> 00:36:58,042
♬~
433
00:36:58,042 --> 00:37:19,063
(時計の音)
434
00:37:19,063 --> 00:37:22,063
(服部信子)お父様
何をしているのですか?
435
00:37:23,051 --> 00:37:27,038
時計というのはね
音で調子がわかるんだ。
436
00:37:27,038 --> 00:37:30,041
まん あとで見ておこう。
お願いします。
437
00:37:30,041 --> 00:37:33,061
さあ ご飯にしましょう。
(服部直子・信子)はーい。
438
00:37:33,061 --> 00:37:41,052
♬~
439
00:37:41,052 --> 00:37:45,039
勉強のほうも頑張っているね。
440
00:37:45,039 --> 00:37:50,044
(まん)ええ。 若い頃
学びの機会がなかったので。
441
00:37:50,044 --> 00:37:53,047
学ぶ事は
いくつになってもできるさ。
442
00:37:53,047 --> 00:37:57,051
まん 一つの事は
60回 繰り返して覚えなさい。
443
00:37:57,051 --> 00:37:59,053
60回?
444
00:37:59,053 --> 00:38:04,058
(信子)お父様 数字は
1 10 100と進むのですよ!
445
00:38:04,058 --> 00:38:09,063
確かにそうだが 日々の暮らしは
60秒が1分になり→
446
00:38:09,063 --> 00:38:13,034
60分が1時間になり
1日を作るんだ。
447
00:38:13,034 --> 00:38:18,072
あなたは 本当に
時間と共に生きてる人なんですね。
448
00:38:18,072 --> 00:38:23,072
違います。 お父様は
ご飯粒と共に生きているのです!
449
00:38:25,063 --> 00:38:30,063
(一同の笑い声)
450
00:38:31,069 --> 00:38:45,066
♬~
451
00:38:45,066 --> 00:38:49,053
(笠井)いらっしゃいませ。
どうぞ ご覧になってください。
452
00:38:49,053 --> 00:38:51,072
どういったものをお探しで?
453
00:38:51,072 --> 00:38:53,057
こちら
よくお似合いだと思いますよ。
454
00:38:53,057 --> 00:38:55,026
(郵便配達員)郵便です。
服部金太郎様。
455
00:38:55,026 --> 00:38:58,062
はい。 ご苦労さまです。
456
00:38:58,062 --> 00:39:04,068
♬~
457
00:39:04,068 --> 00:39:06,068
(笠井)失礼致します。
458
00:39:09,040 --> 00:39:12,040
社長 お手紙が届いています。
ああ…。
459
00:39:14,028 --> 00:39:16,064
吉邨殿か。
460
00:39:16,064 --> 00:39:18,049
新聞 ご覧になりましたか?
461
00:39:18,049 --> 00:39:20,118
パリでの万国博覧会に向けて→
462
00:39:20,118 --> 00:39:24,118
エッフェル塔なるものが
建設されるそうですよ。
463
00:39:25,073 --> 00:39:29,073
東京にも そんな塔が建てば
面白いのにな。
464
00:39:30,144 --> 00:39:37,085
≪(英語)
465
00:39:37,085 --> 00:39:41,089
海外製の懐中時計の販売枠を
増やして頂けるという事ですか?
466
00:39:41,089 --> 00:39:45,059
ええ。 うちは 数多くの時計商と
取引していますが→
467
00:39:45,059 --> 00:39:48,062
服部さんが一番信用できると
判断しました。
468
00:39:48,062 --> 00:39:53,067
服部さんは 契約書どおりに
必ず代金を納めてくれます。
469
00:39:53,067 --> 00:39:55,069
一日だって遅れた事はない。
470
00:39:55,069 --> 00:39:59,057
しかし 他の時計商は違います。
471
00:39:59,057 --> 00:40:02,060
夏の氷代 冬の餅代として→
472
00:40:02,060 --> 00:40:05,046
盆暮れにまとめて支払う方が
多いんです。
473
00:40:05,046 --> 00:40:07,081
契約書に 支払いは→
474
00:40:07,081 --> 00:40:10,084
納品から30日以内と
書かれています。
475
00:40:10,084 --> 00:40:13,071
「契約書は関係ない。
ここは日本だ」。
476
00:40:13,071 --> 00:40:17,058
「こちらの流儀に合わせろ!」
それが彼らの言い分です。
477
00:40:17,058 --> 00:40:19,060
そんな…。
478
00:40:19,060 --> 00:40:23,081
ちなみに 販売枠は どの程度
増やして頂けるんでしょうか?
479
00:40:23,081 --> 00:40:29,070
服部時計店を 最上級顧客として
厚遇するつもりです。
480
00:40:29,070 --> 00:40:33,070
つまり
お望みであれば 好きなだけ。
481
00:40:34,058 --> 00:40:36,077
君 君…。
482
00:40:36,077 --> 00:40:49,073
♬~
483
00:40:49,073 --> 00:40:52,060
今日は 東京の時計商仲間の
代表として来てる。
484
00:40:52,060 --> 00:40:55,079
わかりました。 今 お茶を…。
485
00:40:55,079 --> 00:40:59,050
茶なんて飲みたくない!
でしたら 握り飯でも…。
486
00:40:59,050 --> 00:41:01,135
ふざけてるのか!?
487
00:41:01,135 --> 00:41:03,071
あんたのおかげで
どれだけ迷惑してるか→
488
00:41:03,071 --> 00:41:05,056
わかってるのか!?
489
00:41:05,056 --> 00:41:07,075
私のせいで?
490
00:41:07,075 --> 00:41:09,060
いいか? 同業者の大半は→
491
00:41:09,060 --> 00:41:12,046
盆暮れの大商いで得た金を
支払いに充ててるんだ。
492
00:41:12,046 --> 00:41:14,082
それが日本人のやり方だ。
493
00:41:14,082 --> 00:41:16,084
待ってください。
494
00:41:16,084 --> 00:41:19,087
それでは 私にも
あなたたちと同じように→
495
00:41:19,087 --> 00:41:22,056
契約を破ってでも
日本の流儀を通せと?
496
00:41:22,056 --> 00:41:25,059
そうだ! あんたのせいで
店を畳んだ仲間もいる。
497
00:41:25,059 --> 00:41:28,059
それを なんとも思わねえのか!
498
00:41:31,065 --> 00:41:34,065
取り決めを守ってこその商売です。
499
00:41:39,073 --> 00:41:41,075
500個も…!?
500
00:41:41,075 --> 00:41:44,078
そんなにたくさん
仕入れたのですか?
501
00:41:44,078 --> 00:41:47,078
ああ。
彫りのない 廉価版の時計だがね。
502
00:41:49,066 --> 00:41:54,055
無地の時計は 確かに安いですが
売れるのですか?
503
00:41:54,055 --> 00:41:58,042
お客様は 美しい彫りを
求めているのでは…?
504
00:41:58,042 --> 00:42:02,046
だから その彫りを日本で施す。
505
00:42:02,046 --> 00:42:07,051
そうすれば 彫りの入った
海外製の時計の10分の1の値で→
506
00:42:07,051 --> 00:42:09,051
同じ数を仕入れる事ができる。
507
00:42:10,071 --> 00:42:13,057
外国製に引けを取らない
彫りを施せる職人は→
508
00:42:13,057 --> 00:42:15,042
いるのですか?
509
00:42:15,042 --> 00:42:19,042
それは
今 早急に探しているところだ。
510
00:42:24,068 --> 00:42:27,054
支払いは
いつもどおり 納品から30日以内。
511
00:42:27,054 --> 00:42:29,056
これ以上の資金繰りは無理です!
512
00:42:29,056 --> 00:42:31,042
しかも 職人のめども
立っていないなんて…。
513
00:42:31,042 --> 00:42:33,044
いつまで乗り切れる?
514
00:42:33,044 --> 00:42:37,064
家賃と 社員への給金を考えると
来月まで会社が持つかどうか…。
515
00:42:37,064 --> 00:42:39,066
社長…。
516
00:42:39,066 --> 00:42:42,066
算段を
見誤ったのではないですか?
517
00:42:44,071 --> 00:42:48,042
私は 商業会議所に
もう一度 資金繰りの相談に行く。
518
00:42:48,042 --> 00:42:51,062
笠井くんは
住安銀行に連絡してみてくれ。
519
00:42:51,062 --> 00:42:53,047
承知しました!
頼みますよ 社長!
520
00:42:53,047 --> 00:43:01,072
♬~
521
00:43:01,072 --> 00:43:04,041
あなた 古いお知り合いという方が
お見えになって…。
522
00:43:04,041 --> 00:43:06,043
お名前は 岩倉さんと…。
523
00:43:06,043 --> 00:43:09,046
善路! 久しぶりだな!
524
00:43:09,046 --> 00:43:12,049
水くさいですよ 金太郎さん。
噂は聞いてます。
525
00:43:12,049 --> 00:43:16,053
30日以内に彫りを入れて
500個の時計を完成させないと→
526
00:43:16,053 --> 00:43:18,055
会社が危ないって…。
527
00:43:18,055 --> 00:43:21,058
おおよそは そういう事だ。
528
00:43:21,058 --> 00:43:24,045
だったら なんで 俺に
声をかけてくれないんですか!
529
00:43:24,045 --> 00:43:27,048
機械彫りなら
俺にやらせてください。
530
00:43:27,048 --> 00:43:31,068
ありがとう。
だが 善路は まだ修業の身だろう。
531
00:43:31,068 --> 00:43:33,070
技術は もう 身についてます。
532
00:43:33,070 --> 00:43:37,058
金太郎さんなら
そう言うと思って…→
533
00:43:37,058 --> 00:43:39,058
持ってきました。
534
00:43:49,070 --> 00:43:52,056
はあ…! はあ…。
535
00:43:52,056 --> 00:43:55,059
これで
首の皮一枚 繋がりましたね。
536
00:43:55,059 --> 00:43:57,061
はあ…。
537
00:43:57,061 --> 00:44:01,061
その善路さんという方は
気心も知れているのでしょう?
538
00:44:02,049 --> 00:44:06,049
笠井くん その彫りを どう見る?
539
00:44:08,055 --> 00:44:11,055
(笠井)何も問題ないかと
思いますが…。
540
00:44:12,059 --> 00:44:14,061
想像してくれ→
541
00:44:14,061 --> 00:44:17,061
店先に その彫りが
並んでいるところを…。
542
00:44:18,049 --> 00:44:21,068
まさか…。 社長!
543
00:44:21,068 --> 00:44:23,070
社員は 家族同然。
544
00:44:23,070 --> 00:44:26,040
その生活を考える責任が
私にはある。
545
00:44:26,040 --> 00:44:28,040
だが…。
546
00:44:29,060 --> 00:44:31,060
(ため息)
547
00:44:32,063 --> 00:44:38,063
あの頃 2人で一緒に時計を作ろう
と話した夢が かないますね。
548
00:44:40,071 --> 00:44:44,041
粉骨砕身。
俺は 金太郎さんのために…。
549
00:44:44,041 --> 00:44:48,041
善路 聞いてくれ。
550
00:44:52,066 --> 00:44:56,070
今をしのぐには十分の
技術だと思う。
551
00:44:56,070 --> 00:45:02,043
だが 善路の彫りに
人が目を輝かせているのを→
552
00:45:02,043 --> 00:45:04,043
想像できない。
553
00:45:07,081 --> 00:45:13,081
私は お客様が胸を躍らせて
手に取る時計が作りたいんだ。
554
00:45:15,039 --> 00:45:18,042
正直に言う…。
555
00:45:18,042 --> 00:45:22,042
今は 一緒に時計を作れない。
556
00:45:24,065 --> 00:45:26,065
金太郎さん…。
557
00:45:27,051 --> 00:45:32,051
申し出は嬉しかったよ。
ありがとう。
558
00:45:43,084 --> 00:45:50,057
だったら… 教えてくださいよ。
559
00:45:50,057 --> 00:45:53,057
何が駄目だったのか…。
560
00:45:54,078 --> 00:46:02,086
♬~
561
00:46:02,086 --> 00:46:08,075
やっぱり この手のせいですか…?
562
00:46:08,075 --> 00:46:11,075
そうなんでしょう?
善路…。
563
00:46:14,065 --> 00:46:19,086
あの時 言ってくれたじゃないか!
想像するのは自由だって。
564
00:46:19,086 --> 00:46:23,074
俺は 金太郎さんの言葉を信じて→
565
00:46:23,074 --> 00:46:29,080
この手でも… この手でも彫れると
ずっと頑張ってきたんだぞ!
566
00:46:29,080 --> 00:46:36,087
♬~
567
00:46:36,087 --> 00:46:39,040
よくわかった。
568
00:46:39,040 --> 00:46:44,061
俺は もう あんたを
兄貴だと思うのはやめたよ。
569
00:46:44,061 --> 00:46:47,061
もう 仲間でも同志でもない!
570
00:46:48,049 --> 00:46:54,049
あんたは… あんたは もう…
あの頃のあんたじゃない!
571
00:46:57,074 --> 00:47:01,078
この先 見据えてるのは なんだ?
金儲けか?
572
00:47:01,078 --> 00:47:05,082
だったら
他の時計商を蹴落として→
573
00:47:05,082 --> 00:47:08,082
好きなだけ
時計を買い占めればいいんだ!!
574
00:47:09,070 --> 00:47:12,156
善路…!
575
00:47:12,156 --> 00:47:14,075
≫(戸の開閉音)
576
00:47:14,075 --> 00:47:27,088
♬~
577
00:47:27,088 --> 00:47:29,073
ふざけるな…!
578
00:47:29,073 --> 00:47:43,070
♬~
579
00:47:43,070 --> 00:47:46,056
〈その日から 善路の中で→
580
00:47:46,056 --> 00:47:51,056
金太郎への憧れは
憎悪に変わっていきました〉
581
00:47:53,063 --> 00:47:57,063
職人を目指している人なら
きっと わかってくれます。
582
00:48:02,056 --> 00:48:04,041
それで 私…→
583
00:48:04,041 --> 00:48:07,041
差し出がましいと
思ったのですが…。
584
00:48:09,079 --> 00:48:12,049
この時計 彫りが美しいって→
585
00:48:12,049 --> 00:48:15,069
おっしゃってくれたじゃ
ないですか。
586
00:48:15,069 --> 00:48:19,073
なので
この職人の方を捜しました。
587
00:48:19,073 --> 00:48:22,042
その方に お頼みするのは
どうでしょう?
588
00:48:22,042 --> 00:48:25,042
左に曲がって 2軒目ですよ。
ありがとうございます。
589
00:48:26,046 --> 00:48:30,046
(まんの声)でも
少し変わった方のようで…。
590
00:48:35,039 --> 00:48:37,039
ごめんください。
591
00:48:41,128 --> 00:48:44,128
(𠮷川ふく)いらっしゃいませ。
ご用件は?
592
00:48:45,032 --> 00:48:47,051
すみません。
593
00:48:47,051 --> 00:48:49,053
この魚子彫りは→
594
00:48:49,053 --> 00:48:52,053
こちらで入れたもので
間違いないでしょうか?
595
00:48:53,023 --> 00:48:57,061
(ふく)ええ。
確かに 夫 鶴彦の彫りですが…。
596
00:48:57,061 --> 00:48:59,046
失礼します!
597
00:48:59,046 --> 00:49:01,046
ちょっと!
598
00:49:04,134 --> 00:49:08,134
あなたが 𠮷川鶴彦さんですか?
599
00:49:09,039 --> 00:49:23,070
♬~
600
00:49:23,070 --> 00:49:30,110
私は 銀座で時計商を営む
服部金太郎と申します。
601
00:49:30,110 --> 00:49:34,110
あなたの腕を見込んで
頼みがあるんです!
602
00:49:38,068 --> 00:49:42,056
主人は このとおり
人と話すのが苦手なもので→
603
00:49:42,056 --> 00:49:47,061
どこの職場にもなじめずに
結局は独学で…。
604
00:49:47,061 --> 00:49:50,061
独学!? これを!?
605
00:49:51,065 --> 00:49:54,068
実は 500個の無地の懐中時計に→
606
00:49:54,068 --> 00:49:57,054
魚子彫りを
入れて頂きたいのです。
607
00:49:57,054 --> 00:49:59,054
そんな大量に?
608
00:50:01,058 --> 00:50:06,063
失礼ながら 随分と
とっ散らかった作業場です。
609
00:50:06,063 --> 00:50:11,051
それなのに 道具は
しっかりと手入れがなされている。
610
00:50:11,051 --> 00:50:15,051
あなたの 時計への愛情の深さを
感じます。
611
00:50:17,041 --> 00:50:21,041
一日 どのぐらい
作業できるのでしょう?
612
00:50:22,062 --> 00:50:24,064
3個… です。
613
00:50:24,064 --> 00:50:26,066
それで構いません。
614
00:50:26,066 --> 00:50:30,054
この彫りを見たら もう 他の人に
声を掛ける気にはならない。
615
00:50:30,054 --> 00:50:34,058
ですが 3個だと 166日…。
616
00:50:34,058 --> 00:50:37,044
十分です。
いや 待って!
617
00:50:37,044 --> 00:50:43,067
正確には
166日と7時間かかるな…。
618
00:50:43,067 --> 00:50:45,067
構いません。
619
00:50:47,087 --> 00:50:53,087
ご自身のできる限りでいいので
引き受けて頂けないでしょうか?
620
00:50:59,083 --> 00:51:02,069
仕事を受けた職人が
いるらしいです。
621
00:51:02,069 --> 00:51:04,088
腕のほどは わかりませんが。
622
00:51:04,088 --> 00:51:08,088
(英語)
623
00:51:09,059 --> 00:51:11,061
(カール・アズナブールの英語)
624
00:51:11,061 --> 00:51:14,064
それが 私たちに何か関係が?
625
00:51:14,064 --> 00:51:19,069
これは 日本の時計商だけの
問題ではありません。
626
00:51:19,069 --> 00:51:23,057
この方法で
安価な時計が出回れば→
627
00:51:23,057 --> 00:51:27,077
あなたたちも
打撃を受けるのではないですか?
628
00:51:27,077 --> 00:51:30,080
(秘書の英語)
(アズナブール)君の話は一理あるな。
629
00:51:30,080 --> 00:51:32,066
小ずるいまねをして→
630
00:51:32,066 --> 00:51:37,066
日本人が作った時計だと
吹聴されるのも 癪だしな。
631
00:51:38,088 --> 00:51:44,088
日本語 話せるじゃないですか…。
632
00:51:45,062 --> 00:51:49,083
この方は スイスの時計商
アズナブールさんだ。
633
00:51:49,083 --> 00:51:53,053
もし 我々と組んでくれるなら→
634
00:51:53,053 --> 00:51:57,057
先払いで 倍の金を用意しよう。
635
00:51:57,057 --> 00:52:03,046
(紙を折る音)
636
00:52:03,046 --> 00:52:07,067
時計を商いとするなら
我々と組むべきだ。
637
00:52:07,067 --> 00:52:13,056
さあ とにかく 一日でも早く
大急ぎで彫りを入れてくれ。
638
00:52:13,056 --> 00:52:17,056
(紙を折る音)
639
00:52:31,041 --> 00:52:33,043
アズナブールさん。
640
00:52:33,043 --> 00:52:35,043
おい!
641
00:52:36,063 --> 00:52:38,063
アズナブールさん!
642
00:52:57,050 --> 00:52:59,052
ああ…。
643
00:52:59,052 --> 00:53:03,052
これなら 誰もが 目を輝かせて
手に取ってくれます!
644
00:53:04,057 --> 00:53:06,057
あなた…。
645
00:53:07,044 --> 00:53:12,065
これを 東京の時計商たちの店にも
置いて頂こうと思っています。
646
00:53:12,065 --> 00:53:15,085
みんな 自分の店で
売りたいでしょうから。
647
00:53:15,085 --> 00:53:17,070
他の時計商たちにですか?
648
00:53:17,070 --> 00:53:19,056
あんな ひどい言われ方を
したのに…。
649
00:53:19,056 --> 00:53:22,042
外国商との契約は守るべきだが→
650
00:53:22,042 --> 00:53:26,079
私は 彼らから
仕事を奪いたいわけじゃない。
651
00:53:26,079 --> 00:53:30,079
同じ日本の時計商であり
仲間だと思っている。
652
00:53:31,051 --> 00:53:33,053
金太郎さん。
653
00:53:33,053 --> 00:53:35,055
はい。
654
00:53:35,055 --> 00:53:40,055
あなたにとって
時計とは なんですか?
655
00:53:42,062 --> 00:53:45,048
そうですね…。
656
00:53:45,048 --> 00:53:48,048
私にとって 時計とは…。
657
00:53:50,070 --> 00:53:53,056
(金太郎の声)
初めて 懐中時計を見た時→
658
00:53:53,056 --> 00:53:55,042
光が見えたんです。
659
00:53:55,042 --> 00:54:02,042
それを見た時に 時計とは
人が作れる宝石だと思いました。
660
00:54:05,052 --> 00:54:10,052
だから この手で
いつか作ってみたいんです。
661
00:54:15,045 --> 00:54:17,047
鶴彦さん。
662
00:54:17,047 --> 00:54:22,052
私と一緒に
夢を追いかけませんか?
663
00:54:22,052 --> 00:54:24,054
夢…。
664
00:54:24,054 --> 00:54:32,062
♬~
665
00:54:32,062 --> 00:54:35,048
ハハッ…。
666
00:54:35,048 --> 00:54:39,048
相変わらず
目を合わせてはくれませんね。
667
00:54:40,203 --> 00:54:42,203
≫お待ちください!
≫うるさい!
668
00:54:43,056 --> 00:54:45,042
(笠井)なんですか あなたは!
善路!
669
00:54:45,042 --> 00:54:48,061
おいおい… おい!
いいか? いいか? よく聞け!
670
00:54:48,061 --> 00:54:51,048
日本人は 時計は無理なんだよ!
671
00:54:51,048 --> 00:54:54,051
客が求めてるのは
海外製の時計なんだ!
672
00:54:54,051 --> 00:54:56,069
善路!
673
00:54:56,069 --> 00:54:59,056
これを見て
技術の差を学んでほしい。
674
00:54:59,056 --> 00:55:02,042
お前も職人なら…!
職人なんて もう やめたよ。
675
00:55:02,042 --> 00:55:05,062
今は アズナブール商會にいる。
676
00:55:05,062 --> 00:55:09,066
なあ この先 あんたの商売が
うまくいくと思うなよ。
677
00:55:09,066 --> 00:55:11,066
(時計を放り捨てる音)
678
00:55:17,074 --> 00:55:22,074
日本人だって… 時計は作れます。
679
00:55:27,050 --> 00:55:40,063
♬~
680
00:55:40,063 --> 00:55:43,083
本日は ジャワ島原産の
コーヒーでございます。
681
00:55:43,083 --> 00:55:45,083
ありがとう。
682
00:55:49,156 --> 00:55:52,156
(吉邨)まだ おいでに
なっていないようですね。
683
00:55:54,044 --> 00:55:56,079
(吉邨)この魚子彫りが→
684
00:55:56,079 --> 00:55:59,082
服部時計店快進撃の
のろしになったのは→
685
00:55:59,082 --> 00:56:01,068
間違いないでしょうな。
686
00:56:01,068 --> 00:56:03,070
(笠井)やはり これですよ!
687
00:56:03,070 --> 00:56:05,072
かの渋沢栄一先生が→
688
00:56:05,072 --> 00:56:08,075
社長に惚れ込んだんですから。
689
00:56:08,075 --> 00:56:12,062
惚れ込んでいたかは知らんが
人脈が広がった事で→
690
00:56:12,062 --> 00:56:16,066
自社での時計開発の
めどが付いたのは 確かだ。
691
00:56:16,066 --> 00:56:21,066
(吉邨)服部時計店の製造部門
精工舎の誕生ですね。
692
00:56:22,055 --> 00:56:24,057
とてもいい名前です。
693
00:56:24,057 --> 00:56:30,080
精緻の「精」 工業の「工」
学び舎の「舎」で→
694
00:56:30,080 --> 00:56:32,065
精工舎。
695
00:56:32,065 --> 00:56:35,085
(吉邨)まったく…。
こんな自信なさそうな人が→
696
00:56:35,085 --> 00:56:39,085
時計を設計してしまうんだから
驚きですよ。
697
00:56:42,059 --> 00:56:47,080
(笠井)精工舎の懐中時計第一号
「タイムキーパー」ですね。
698
00:56:47,080 --> 00:56:50,067
(吉邨)私が一員になったのも
この頃ですな。
699
00:56:50,067 --> 00:56:53,053
(笠井)
懐かしいですねえ。 ハハハ…。
700
00:56:53,053 --> 00:57:13,023
♬~
701
00:57:13,023 --> 00:57:18,045
確かに 社長と鶴彦さんは→
702
00:57:18,045 --> 00:57:22,045
天才2人の出会い
だったかもしれません。
703
00:57:23,066 --> 00:57:27,054
だって 普通だったら→
704
00:57:27,054 --> 00:57:32,054
あんな おかしな人間と
夢を追いかけたりしない。
705
00:57:34,044 --> 00:57:43,036
初めて
服部時計店の銀座本社を見た時→
706
00:57:43,036 --> 00:57:47,040
震えました。
707
00:57:47,040 --> 00:57:52,079
社長の隣にいるべきは→
708
00:57:52,079 --> 00:57:55,079
私だったはずなのに…。
709
00:58:04,024 --> 00:58:06,024
いよいよですね。
710
00:58:11,064 --> 00:58:14,034
フランスで
動く絵を撮影する装置が→
711
00:58:14,034 --> 00:58:16,052
公開されてたね。
712
00:58:16,052 --> 00:58:20,040
シネマトグラフですな。
ああ そうそう。
713
00:58:20,040 --> 00:58:24,040
それで この瞬間を
収めておきたかったね。
714
00:58:29,049 --> 00:58:40,060
(鐘の音)
715
00:58:40,060 --> 00:58:46,049
英恭さん 笠井くん。
716
00:58:46,049 --> 00:58:51,049
精工舎の念願である
腕時計の開発に乗りだすよ。
717
00:58:53,039 --> 00:58:58,044
その責任者は もちろん
鶴彦さんだ。
718
00:58:58,044 --> 00:59:02,044
社長 お言葉ですが…。
719
00:59:05,068 --> 00:59:08,054
私は反対です。
720
00:59:08,054 --> 00:59:12,058
大体 こんな晴れの日に
同席しないなんて…。
721
00:59:12,058 --> 00:59:16,046
あの人の頭の中は
時計の事でいっぱいだ。
722
00:59:16,046 --> 00:59:20,116
今頃 試作室にでも
こもっているんだろう。
723
00:59:20,116 --> 00:59:23,053
(笠井の声)確かに
このタイムキーパーも→
724
00:59:23,053 --> 00:59:25,055
技師長が開発しました。
725
00:59:25,055 --> 00:59:32,062
でも 私は… 人として
ついていく気になれません。
726
00:59:32,062 --> 00:59:34,064
笠井さん…。
727
00:59:34,064 --> 00:59:38,064
そう思っているのは
私だけじゃないと思います。
728
00:59:45,058 --> 00:59:48,044
(まん)笠井さんがおっしゃる事も
わかるわ。
729
00:59:48,044 --> 00:59:50,063
責任者となれば→
730
00:59:50,063 --> 00:59:54,134
職工さんたち全員を
まとめなければならないでしょう。
731
00:59:54,134 --> 00:59:57,053
𠮷川さんには荷が重いのでは?
732
00:59:57,053 --> 01:00:00,040
だが 職人としての腕は確かだ。
733
01:00:00,040 --> 01:00:03,043
お前たちも
おもちゃ 作ってもらっただろう。
734
01:00:03,043 --> 01:00:06,062
(服部せき)
でも あの人 変だよ~!
735
01:00:06,062 --> 01:00:08,048
(服部ゆき)
いつも ぶつぶつ しゃべってる。
736
01:00:08,048 --> 01:00:10,050
(服部せい)ねえ~。
(服部かう)ねえ~。
737
01:00:10,050 --> 01:00:12,068
(服部玄三)
確かに 目も合わせないな。
738
01:00:12,068 --> 01:00:16,139
(さよ)はーい おかわりでーす!
はい どうぞ!
739
01:00:16,139 --> 01:00:19,139
とにかく
鶴彦さんを責任者にする。
740
01:00:20,043 --> 01:00:22,043
問題が起きませんか?
741
01:00:28,068 --> 01:00:31,068
おはようございます。
おはようございます。
742
01:00:33,039 --> 01:00:36,059
ついに 腕時計を?
743
01:00:36,059 --> 01:00:41,059
ええ。 その開発責任者を
鶴彦さんに任せたい。
744
01:00:43,066 --> 01:00:45,066
鶴彦さん?
745
01:00:46,086 --> 01:00:48,071
(施錠音)
746
01:00:48,071 --> 01:00:50,056
鶴彦さん
まだ 話は終わってませんよ!
747
01:00:50,056 --> 01:00:54,056
鶴彦さん!
開けてください 鶴彦さん!
748
01:01:02,068 --> 01:01:04,068
ありがとうございます。
749
01:01:29,062 --> 01:01:31,062
フフッ…。
750
01:01:34,084 --> 01:01:38,071
やはり ピニオン旋盤機は
売る事はできないと→
751
01:01:38,071 --> 01:01:41,074
エドガー社に断られました。
752
01:01:41,074 --> 01:01:45,074
しかし なぜ
かたくなに うちを拒むのか…。
753
01:01:46,079 --> 01:01:51,067
言いづらいのですが 恐らく…。
754
01:01:51,067 --> 01:02:02,045
♬~
755
01:02:02,045 --> 01:02:04,047
正直に答えてくれ。
756
01:02:04,047 --> 01:02:08,047
ピニオン旋盤の販売を
止めているのは 善路か?
757
01:02:09,035 --> 01:02:11,035
だったら なんだよ?
758
01:02:12,055 --> 01:02:14,040
無駄な事は やめるんだ。
759
01:02:14,040 --> 01:02:16,059
機械で負けても 人間で勝てる。
760
01:02:16,059 --> 01:02:20,046
精工舎には
情熱を持った職人がいる。
761
01:02:20,046 --> 01:02:24,067
だから 頼む。
お前は お前の時間を生きてくれ。
762
01:02:24,067 --> 01:02:26,069
黙ってろ。
763
01:02:26,069 --> 01:02:28,069
これが俺の人生だ。
764
01:02:30,056 --> 01:02:32,056
善路! 逃げるな!
765
01:02:35,061 --> 01:02:37,061
離せ。
766
01:02:45,071 --> 01:02:56,066
♬~
767
01:02:56,066 --> 01:02:58,066
ただいま。
(スイッチを押す音)
768
01:03:02,038 --> 01:03:05,041
まん? おい!
769
01:03:05,041 --> 01:03:19,041
♬~
770
01:03:21,041 --> 01:03:27,047
♬~
771
01:03:27,047 --> 01:03:29,032
いささか大きいな…。
772
01:03:29,032 --> 01:03:40,043
♬~
773
01:03:40,043 --> 01:03:42,043
(ノック)
(濱谷)入ります。
774
01:03:43,063 --> 01:03:45,065
持ってきてくれたかい?
(濱谷)はい。
775
01:03:45,065 --> 01:03:54,040
♬~
776
01:03:54,040 --> 01:03:57,043
(濱谷)あの… 技師長?
777
01:03:57,043 --> 01:04:06,052
♬~
778
01:04:06,052 --> 01:04:10,023
(岡本正忠)またですか 技師長!
みんなも何してる。
779
01:04:10,023 --> 01:04:13,023
(濱谷)技師長のネジ回しを
捜していて…。
780
01:04:14,060 --> 01:04:16,062
(岡本)置き場を決めて
管理してください。
781
01:04:16,062 --> 01:04:19,065
これじゃ
工員たちが仕事になりません。
782
01:04:19,065 --> 01:04:21,050
代用のネジ回しで…。
何 言ってるの!
783
01:04:21,050 --> 01:04:24,070
握る感覚が違えば
手元が狂うでしょ!
784
01:04:24,070 --> 01:04:27,070
自分のじゃなきゃ駄目だよ!
どいて!
785
01:04:28,041 --> 01:04:30,059
(笠井)技師長は横暴すぎます。
786
01:04:30,059 --> 01:04:32,045
昼夜問わずに呼び出すなんて→
787
01:04:32,045 --> 01:04:35,115
人として あるまじき行為です!
(岡本)そうですよ!
788
01:04:35,115 --> 01:04:37,066
技師長の身の回りの事まで
世話していたら→
789
01:04:37,066 --> 01:04:39,035
休む時間も取れません。
790
01:04:39,035 --> 01:04:43,035
みんな 決められた時間の中で
精いっぱい作業しているんです!
791
01:04:44,057 --> 01:04:47,060
(笠井)おおっ…! 技師長!?
(岡本)技師長!?
792
01:04:47,060 --> 01:04:49,112
だ… 誰か 呼んできて!
(岡本)はい!
793
01:04:49,112 --> 01:04:51,112
技師長!?
(岡本)誰か!
794
01:04:52,048 --> 01:04:55,051
(笠井)
だから 私は反対したんです。
795
01:04:55,051 --> 01:04:57,070
飯も食わなきゃ 休みも取らない。
796
01:04:57,070 --> 01:05:00,070
夢中になると 周りが
見えなくなってしまいます。
797
01:05:02,125 --> 01:05:08,047
腕時計の責任者から
𠮷川さんを降ろしてください。
798
01:05:08,047 --> 01:05:13,047
これは…
職工たち全員の意見です!
799
01:05:15,071 --> 01:05:18,041
私たちが辞めるか→
800
01:05:18,041 --> 01:05:22,045
技師長を責任者から外して頂くか→
801
01:05:22,045 --> 01:05:24,045
どちらか お決めください。
802
01:05:26,049 --> 01:05:28,049
(ため息)
803
01:05:33,072 --> 01:05:36,075
(笠井)ストライキ決行!
間違えるなよ。
804
01:05:36,075 --> 01:05:38,077
(濱谷)はい。
805
01:05:38,077 --> 01:05:40,146
よし…。
806
01:05:40,146 --> 01:05:45,068
≫(床のきしむ音)
807
01:05:45,068 --> 01:05:54,077
♬~
808
01:05:54,077 --> 01:05:56,079
うわっ…!
809
01:05:56,079 --> 01:06:04,087
♬~
810
01:06:04,087 --> 01:06:07,073
(濱谷)うわっ…!
危ない… 危ないよ…!
811
01:06:07,073 --> 01:06:10,073
笠井くん。
(笠井)わあーっ!!
812
01:06:11,060 --> 01:06:13,079
社長…。
813
01:06:13,079 --> 01:06:16,082
こんな時間に こんな所で何を?
814
01:06:16,082 --> 01:06:19,068
ああ… 鶴彦さんが ネジ回しを
なくしたと言っただろう。
815
01:06:19,068 --> 01:06:21,070
やっと見つけたよ。
816
01:06:21,070 --> 01:06:23,172
(笠井)えっ…?
817
01:06:23,172 --> 01:06:26,172
笠井くんたちは何をしてるんだ?
818
01:06:27,060 --> 01:06:30,060
私たちは その…。
(せき払い)
819
01:06:34,150 --> 01:06:37,086
技師長には話したよ。
820
01:06:37,086 --> 01:06:40,073
一人一人が調和の中で→
821
01:06:40,073 --> 01:06:43,073
同じ方向を向くのが
会社だからな。
822
01:06:49,048 --> 01:06:54,048
だが それは間違いだったと
今は自分を恥じてる。
823
01:07:01,060 --> 01:07:09,052
ここには 育った場所も境遇も違う
様々な人が集まっているだろう。
824
01:07:09,052 --> 01:07:14,052
そもそも
同じ人間は 一人だっていない。
825
01:07:16,042 --> 01:07:20,029
時計の内部構造を
思い浮かべてほしい。
826
01:07:20,029 --> 01:07:26,069
様々な歯車やバネが
寸分たがわぬ精度で動いている。
827
01:07:26,069 --> 01:07:30,069
それが噛み合って
初めて 針が動く。
828
01:07:31,040 --> 01:07:36,062
精工舎の時計の針は
たった一秒であっても→
829
01:07:36,062 --> 01:07:39,065
会社の全員で動かすんだ。
830
01:07:39,065 --> 01:07:43,052
(岡本)
つまり 私たちに 我慢してでも→
831
01:07:43,052 --> 01:07:47,052
技師長についていけ
という事でしょうか?
832
01:07:49,042 --> 01:07:56,049
あの人の気持ちを読み取るのも
行動を予想するのも大変だ。
833
01:07:56,049 --> 01:08:01,054
だが… 鶴彦さんの思いは→
834
01:08:01,054 --> 01:08:04,040
全て ここにある。
835
01:08:04,040 --> 01:08:08,044
一心不乱に
握り続けてきたんだろう。
836
01:08:08,044 --> 01:08:13,044
あの人の思いは
時計を作る事だけに向かっている。
837
01:08:16,069 --> 01:08:21,040
だから そこに
私の人生を懸けてみたい。
838
01:08:21,040 --> 01:08:32,051
♬~
839
01:08:32,051 --> 01:08:37,039
君たちが
鶴彦さんについていくなら→
840
01:08:37,039 --> 01:08:40,039
私は 君たちについていく。
841
01:08:42,044 --> 01:08:44,046
(濱谷)あっ ちょっと…。
842
01:08:44,046 --> 01:08:47,046
(笠井)もう やめましょう。
やめてください。
843
01:08:49,068 --> 01:08:54,040
精工舎は 人も部品も→
844
01:08:54,040 --> 01:08:59,045
個性も大切にする会社だ
という事は→
845
01:08:59,045 --> 01:09:02,048
伝わりましたから!
846
01:09:02,048 --> 01:09:04,048
なあ?
(職工たち)はい。
847
01:09:07,069 --> 01:09:10,069
(岡本)まんさんだって あんなに
面倒見てくれてるのに…。
848
01:09:12,058 --> 01:09:14,060
まんが?
849
01:09:14,060 --> 01:09:16,062
どういう事だ?
850
01:09:16,062 --> 01:09:18,047
これは美味しい!
851
01:09:18,047 --> 01:09:26,038
♬~
852
01:09:26,038 --> 01:09:28,038
ああ…。
853
01:09:29,041 --> 01:09:31,060
(まん)できましたよ。
854
01:09:31,060 --> 01:09:33,062
(一同)おお~!
(濱谷)ありがとうございます!
855
01:09:33,062 --> 01:09:35,047
(まん)はい。
(濱谷)おかわり ください!
856
01:09:35,047 --> 01:09:38,067
(職工)濱谷さん 早すぎますよ!
(職工)もう食べたんですか!?
857
01:09:38,067 --> 01:09:40,067
(濱谷)お願いします。
858
01:09:44,040 --> 01:09:49,040
私たちは あなたについていくか
まだ迷っています。
859
01:09:50,046 --> 01:09:52,048
だから 技師長→
860
01:09:52,048 --> 01:09:56,048
少しだけでも
私たちに合わせて頂けませんか?
861
01:09:57,069 --> 01:10:01,057
これ… ピニオン旋盤機の
設計図ですよね?
862
01:10:01,057 --> 01:10:03,057
(笠井)えっ?
863
01:10:04,043 --> 01:10:07,043
まあ…
作れるんじゃないかと思って。
864
01:10:09,065 --> 01:10:13,069
(笠井)でも 技師長は…
英語は読めないのでは?
865
01:10:13,069 --> 01:10:15,071
そんな事 言っても
腕時計を作るのに→
866
01:10:15,071 --> 01:10:17,039
ピニオン旋盤は絶対に必要だ。
867
01:10:17,039 --> 01:10:19,075
これは
精工舎初の腕時計なんだよ。
868
01:10:19,075 --> 01:10:22,075
それを開発するのが僕の仕事だ。
869
01:10:24,080 --> 01:10:30,080
日本中… いや
世界中の人が待ってるんだから。
870
01:10:33,072 --> 01:10:35,074
(さよ)奥様のご飯
久しぶりなんじゃないですか?
871
01:10:35,074 --> 01:10:38,077
ああ。
こんなにうまいの 忘れてました。
872
01:10:38,077 --> 01:10:40,079
フフッ…。 ご飯もですけど→
873
01:10:40,079 --> 01:10:44,066
奥様の大事な話
忘れたら駄目ですよ。
874
01:10:44,066 --> 01:10:46,085
すまなかった。
875
01:10:46,085 --> 01:10:49,088
彼らの面倒を見たいと
申し出てくれていたのを→
876
01:10:49,088 --> 01:10:51,057
すっかり…。
877
01:10:51,057 --> 01:10:56,062
私も 若くして
群馬から一人で嫁いできたから→
878
01:10:56,062 --> 01:10:59,065
この子たちの気持ちが
わかるんです。
879
01:10:59,065 --> 01:11:01,083
でも 奉公に来てるのに→
880
01:11:01,083 --> 01:11:05,083
つらい さみしいなんて
泣き言は言えないでしょう?
881
01:11:07,073 --> 01:11:11,073
社員が家族同然なら
私が母親になります。
882
01:11:13,062 --> 01:11:17,083
ありがとう。
よろしくお願いします。
883
01:11:17,083 --> 01:11:21,153
すいません!
握り飯を いくつか頂けますか?
884
01:11:21,153 --> 01:11:24,056
どうしました?
885
01:11:24,056 --> 01:11:26,056
また 技師長ですよ。
886
01:11:30,079 --> 01:11:34,083
昨晩から食事もしないで
試作室にこもって…。
887
01:11:34,083 --> 01:11:40,089
ぶっ倒れたら大変なので
無理にでも食べて頂きます。
888
01:11:40,089 --> 01:11:43,142
笠井くん…。
889
01:11:43,142 --> 01:11:45,061
わかりました。
890
01:11:45,061 --> 01:11:48,061
さよちゃん。
(さよ)はい!
891
01:11:50,049 --> 01:11:52,049
私たちは…。
892
01:11:55,071 --> 01:11:57,039
社長と一緒に→
893
01:11:57,039 --> 01:12:00,042
技師長についていく事に
決めましたから。
894
01:12:00,042 --> 01:12:07,049
♬~
895
01:12:07,049 --> 01:12:11,053
〈精工舎は
タイムキーパーに続いて→
896
01:12:11,053 --> 01:12:15,057
高級懐中時計のエキセレントを
販売〉
897
01:12:15,057 --> 01:12:18,027
〈それが 国産初の→
898
01:12:18,027 --> 01:12:21,027
恩賜の時計の指定を受けました〉
899
01:12:23,065 --> 01:12:25,067
〈そして 鶴彦は→
900
01:12:25,067 --> 01:12:29,055
ピニオン自動旋盤機の
自社開発に成功〉
901
01:12:29,055 --> 01:12:32,041
〈この機械の導入により→
902
01:12:32,041 --> 01:12:37,041
25人で行っていた作業を
1人で行えるようになりました〉
903
01:12:40,049 --> 01:12:46,038
〈生産力を高めた精工舎は
いよいよ 世界へ進出〉
904
01:12:46,038 --> 01:12:50,042
〈目覚まし時計においては
ドイツを抜いて→
905
01:12:50,042 --> 01:12:54,046
世界シェアナンバーワンに
なりました〉
906
01:12:54,046 --> 01:12:57,066
〈そして ついに…〉
907
01:12:57,066 --> 01:13:07,043
♬~
908
01:13:07,043 --> 01:13:11,080
これが 精工舎製の腕時計→
909
01:13:11,080 --> 01:13:14,066
ローレルの一号機です。
910
01:13:14,066 --> 01:13:17,053
(吉邨)国内初の腕時計です。
911
01:13:17,053 --> 01:13:27,063
♬~
912
01:13:27,063 --> 01:13:30,049
鶴彦さん。
913
01:13:30,049 --> 01:13:34,049
全てをあなたに懸けて
よかった。
914
01:13:36,038 --> 01:13:40,042
随分と
時間が かかってしまいました。
915
01:13:40,042 --> 01:13:47,049
♬~
916
01:13:47,049 --> 01:13:51,049
やっと
目を合わせてくれましたね。
917
01:13:54,056 --> 01:13:56,042
〈金太郎と鶴彦は→
918
01:13:56,042 --> 01:14:01,047
きっと
この瞬間を この景色を→
919
01:14:01,047 --> 01:14:06,047
2人が出会った時から
想像できていたのでしょう〉
920
01:14:08,054 --> 01:14:13,025
最初から
勝てる相手ではなかったんです。
921
01:14:13,025 --> 01:14:19,025
だから
邪魔をするしかなかった…。
922
01:14:25,154 --> 01:14:29,041
でも 誤解なさらないでください。
923
01:14:29,041 --> 01:14:35,041
今は もう
なんのわだかまりもありません。
924
01:14:38,067 --> 01:14:46,075
ただ 今日 この日に→
925
01:14:46,075 --> 01:14:51,075
私が
ここにいてもいいものか…。
926
01:14:55,067 --> 01:14:58,067
あなたは
ここにいるべき人ですよ。
927
01:15:06,061 --> 01:15:08,063
(まん)SEIKOには→
928
01:15:08,063 --> 01:15:14,086
精密で正確であるという意味が
込められています。
929
01:15:14,086 --> 01:15:19,058
善路さんの挫折も 嫉妬も→
930
01:15:19,058 --> 01:15:25,064
今まで歩んできた道は
間違いなく ここに向かっていた。
931
01:15:25,064 --> 01:15:28,064
そうは思いませんか?
932
01:15:33,055 --> 01:15:36,055
おめでとうございます。
ああ… ありがとう。
933
01:15:43,082 --> 01:15:46,082
ああ… ありがとう。
934
01:15:50,089 --> 01:15:53,058
(ドアの開く音)
(秘書)失礼致します。
935
01:15:53,058 --> 01:15:56,058
社長
お客様がお見えでございます。
936
01:16:05,053 --> 01:16:07,053
(足音)
937
01:16:11,043 --> 01:16:16,131
はじめまして。
河村浪子と申します。
938
01:16:16,131 --> 01:16:20,131
旧姓は 辻浪子でございます。
939
01:16:23,071 --> 01:16:27,025
金太郎さんは 一番になる。
940
01:16:27,025 --> 01:16:29,025
すごい人になります。
941
01:16:33,065 --> 01:16:35,065
その時には…。
942
01:16:41,056 --> 01:16:44,056
また お会いしましょう?
フフッ…。
943
01:16:46,044 --> 01:16:50,065
大変遅くなり
申し訳ございません。
944
01:16:50,065 --> 01:16:57,055
一度は引き返したんですが
やはり 最後にと思い立って…。
945
01:16:57,055 --> 01:17:01,055
浪子さんをお呼びしたのは
私です。
946
01:17:05,063 --> 01:17:10,068
(浪子)金太郎さん
ご無沙汰しております。
947
01:17:10,068 --> 01:17:14,068
浪子さん… こちらこそ。
948
01:17:18,076 --> 01:17:21,079
勝手にごめんなさい。
949
01:17:21,079 --> 01:17:28,070
でも この席に呼ぶべきだと思って
お越し頂いたの。
950
01:17:28,070 --> 01:17:31,089
どうして…。
951
01:17:31,089 --> 01:17:35,077
浪子さんがいなかったら→
952
01:17:35,077 --> 01:17:39,081
服部金太郎は
時計を作っていなかったと→
953
01:17:39,081 --> 01:17:41,081
私は思うから。
954
01:17:44,086 --> 01:17:49,057
(浪子)
もう 二度とお会いできない→
955
01:17:49,057 --> 01:17:55,080
お会いしないと
決めておりました。
956
01:17:55,080 --> 01:17:58,066
でも…→
957
01:17:58,066 --> 01:18:01,086
「一番の時計商になる」→
958
01:18:01,086 --> 01:18:06,091
「そうなったら
また お会いしましょう」…。
959
01:18:06,091 --> 01:18:11,079
あの約束を
奥様がかなえてくださいました。
960
01:18:11,079 --> 01:18:30,065
♬~
961
01:18:30,065 --> 01:18:33,065
この時計を
どうして 浪子さんが?
962
01:18:35,087 --> 01:18:38,056
さあ… どうしてかしら。
963
01:18:38,056 --> 01:18:42,060
いや 教えてください。
気になるじゃないですか。
964
01:18:42,060 --> 01:18:44,062
フフ… 実は→
965
01:18:44,062 --> 01:18:48,166
金太郎さんが最初に奉公に行った
時計商の主が→
966
01:18:48,166 --> 01:18:51,069
辻屋を訪ねてきたの。
967
01:18:51,069 --> 01:18:54,055
「金太郎さんから
この時計をもらったけど→
968
01:18:54,055 --> 01:18:57,142
15歳の子供に
買えるわけもない」→
969
01:18:57,142 --> 01:18:59,060
「もしかしたら 辻屋からの→
970
01:18:59,060 --> 01:19:02,060
大切な頂き物だったんじゃないか」
って。
971
01:19:04,082 --> 01:19:08,086
すみません
勝手に 人に譲ったりして…。
972
01:19:08,086 --> 01:19:10,086
(浪子)いいの そんなの。
973
01:19:12,073 --> 01:19:16,073
むしろ
金太郎さんらしいと思った。
974
01:19:19,080 --> 01:19:21,080
それで これをね…。
975
01:19:24,069 --> 01:19:27,069
動かしてくださらないかしら。
976
01:19:34,062 --> 01:19:36,062
この時間は…。
977
01:19:38,049 --> 01:19:43,071
〈あの日 午前11時58分→
978
01:19:43,071 --> 01:19:47,071
日本中を絶望させる出来事が
起こりました〉
979
01:19:49,060 --> 01:19:54,060
(地鳴り)
980
01:19:56,886 --> 01:20:03,858
(地鳴り)
981
01:20:03,858 --> 01:20:05,858
あっ! ああっ…。
982
01:20:06,795 --> 01:20:12,795
〈大正12年9月1日
関東大震災です〉
983
01:20:15,804 --> 01:20:19,774
〈この震災での大火災は
2日間 続き→
984
01:20:19,774 --> 01:20:23,774
東京市のおよそ4割が
焼失しました〉
985
01:20:25,780 --> 01:20:28,800
〈服部時計店においては→
986
01:20:28,800 --> 01:20:33,788
銀座4丁目の本店と工場が全焼〉
987
01:20:33,788 --> 01:20:38,793
〈文字どおりの 焼け野原と
なってしまいました〉
988
01:20:38,793 --> 01:20:43,782
〈そんな状況下でも
社員全員が無事だったのは→
989
01:20:43,782 --> 01:20:46,801
不幸中の幸いでありました〉
990
01:20:46,801 --> 01:20:49,788
〈けれど 金太郎は→
991
01:20:49,788 --> 01:20:53,775
まるで
人生を熱波に焼かれたかのように→
992
01:20:53,775 --> 01:20:56,775
燃え尽きてしまいました〉
993
01:21:03,785 --> 01:21:06,788
善路か…。
994
01:21:06,788 --> 01:21:08,788
聞いたよ。
995
01:21:09,774 --> 01:21:14,774
社員全員
一時解雇したんだってな。
996
01:21:16,781 --> 01:21:18,781
ああ…。
997
01:21:20,785 --> 01:21:23,805
故郷に帰る者もいれば→
998
01:21:23,805 --> 01:21:28,776
壊れた家を修繕する事で
手いっぱいの者もいる。
999
01:21:28,776 --> 01:21:32,881
そんな中 無理して
会社のために働かせ…。
1000
01:21:32,881 --> 01:21:35,881
きれい事で取り繕うな!
1001
01:21:38,786 --> 01:21:44,786
その情けねえ面を隠しても
なんにも変わらない。
1002
01:21:47,779 --> 01:21:50,782
そうだな。
1003
01:21:50,782 --> 01:21:56,804
でも もう
私がいなくても時計は作れるさ。
1004
01:21:56,804 --> 01:21:59,774
冗談じゃねえぞ。
1005
01:21:59,774 --> 01:22:03,778
あの時 俺を切り捨てたのは→
1006
01:22:03,778 --> 01:22:08,778
あんたが追い求める時計を
作りたかったからじゃないのか?
1007
01:22:10,785 --> 01:22:15,773
時計塔が建ったのを見て→
1008
01:22:15,773 --> 01:22:19,761
正直 悔しかったよ。
1009
01:22:19,761 --> 01:22:25,761
それは
俺を切り捨てたあんたが…。
1010
01:22:30,788 --> 01:22:34,788
日本中の時を動かしたからだ。
1011
01:22:40,765 --> 01:22:42,765
なあ…。
1012
01:22:44,769 --> 01:22:47,769
だから 頼むよ。
1013
01:22:49,741 --> 01:22:56,781
あの時計塔の針を
もう一度 動かしてくれ。
1014
01:22:56,781 --> 01:23:02,770
止まっちまった
みんなの時間を→
1015
01:23:02,770 --> 01:23:05,770
あんたが動かすんだ!
1016
01:23:17,769 --> 01:23:19,854
(ノック)
1017
01:23:19,854 --> 01:23:21,854
≪(笠井)
社長! いらっしゃいますか?
1018
01:23:24,776 --> 01:23:29,764
あっ… 奥様。
社長は いらっしゃいますか?
1019
01:23:29,764 --> 01:23:31,764
(まん)どうぞ。
1020
01:23:41,776 --> 01:23:44,762
あっ… 社長。
1021
01:23:44,762 --> 01:23:46,764
どうしたんだ?
1022
01:23:46,764 --> 01:23:49,764
(笠井)さっきまで
工場のほうに行っておりました。
1023
01:23:51,769 --> 01:23:54,789
あそこには
もう 何もないだろう。
1024
01:23:54,789 --> 01:24:00,762
いえ 大切な機械や部品が
まだ残っています。
1025
01:24:00,762 --> 01:24:03,781
地震のあとから
窃盗集団が増えたので→
1026
01:24:03,781 --> 01:24:06,781
交代で見張っているんです。
1027
01:24:07,769 --> 01:24:11,773
機械も みんなで掘り起こして…。
1028
01:24:11,773 --> 01:24:13,775
みんな?
1029
01:24:13,775 --> 01:24:16,794
一時解雇された社員たちですよ。
1030
01:24:16,794 --> 01:24:19,794
誰に頼まれたわけでも
ありません。
1031
01:24:21,783 --> 01:24:23,768
(鶴彦の声)焼け跡から→
1032
01:24:23,768 --> 01:24:25,770
これが出てきて…。
1033
01:24:25,770 --> 01:24:50,795
♬~
1034
01:24:50,795 --> 01:24:56,801
(笠井)我が精工舎の時計です。
1035
01:24:56,801 --> 01:25:02,757
あの炎と熱風で…。
1036
01:25:02,757 --> 01:25:08,780
♬~
1037
01:25:08,780 --> 01:25:15,803
(すすり泣き)
1038
01:25:15,803 --> 01:25:19,757
あなたには
残ってるじゃないですか。
1039
01:25:19,757 --> 01:25:23,778
精工舎を こんなにも思ってくれる
人たちが…。
1040
01:25:23,778 --> 01:25:42,778
♬~
1041
01:25:46,349 --> 01:26:07,152
♬~
1042
01:26:07,152 --> 01:26:12,152
みんな 話したい事がある。
1043
01:26:20,165 --> 01:26:26,165
我々の作った時計は
全て燃えてしまった。
1044
01:26:31,143 --> 01:26:36,143
だが それは お客様も同じだ。
1045
01:26:38,166 --> 01:26:44,166
我々に預けた大切な時計を
失ってしまった。
1046
01:26:52,147 --> 01:27:00,155
それを お客様に
お返しするところから…→
1047
01:27:00,155 --> 01:27:05,143
もう一度 そこから→
1048
01:27:05,143 --> 01:27:08,143
私と一緒に始めてほしい。
1049
01:27:18,140 --> 01:27:23,161
1500ほど あったと思うが→
1050
01:27:23,161 --> 01:27:29,167
全てを 同額程度の精工舎の
新品時計をもって弁償する。
1051
01:27:29,167 --> 01:27:31,153
(ざわめき)
1052
01:27:31,153 --> 01:27:36,158
♬~
1053
01:27:36,158 --> 01:27:38,158
これは 損得じゃない。
1054
01:27:41,163 --> 01:27:43,163
お客様との繋がりなんだ。
1055
01:27:50,172 --> 01:27:56,178
今 我々 日本人は
どん底にいる。
1056
01:27:56,178 --> 01:28:04,169
だが 世界中の国々が
手を差し伸べてくれている。
1057
01:28:04,169 --> 01:28:09,174
時計商を志して50年余り→
1058
01:28:09,174 --> 01:28:16,164
国も人種も文化も超えて→
1059
01:28:16,164 --> 01:28:23,164
誰もが同じ刻を生きているのだと
今 初めて実感している。
1060
01:28:28,176 --> 01:28:34,166
この世界は
時間で結ばれている。
1061
01:28:34,166 --> 01:28:37,169
時計というのは→
1062
01:28:37,169 --> 01:28:41,173
その見えない絆を
刻んでいるのだと。
1063
01:28:41,173 --> 01:28:51,149
♬~
1064
01:28:51,149 --> 01:28:55,187
一分一秒は
誰にでも等しくある。
1065
01:28:55,187 --> 01:28:59,157
世界中の人々が
それを正確に知れる時計を→
1066
01:28:59,157 --> 01:29:01,159
我々は作れる。
1067
01:29:01,159 --> 01:29:08,166
知恵を持ち 技術を磨き→
1068
01:29:08,166 --> 01:29:12,187
時計に深い愛情を注げる者たちが
集まっているのが→
1069
01:29:12,187 --> 01:29:14,172
我が精工舎だ。
1070
01:29:14,172 --> 01:29:27,185
♬~
1071
01:29:27,185 --> 01:29:34,159
どんなに悔いても→
1072
01:29:34,159 --> 01:29:40,182
思いを巡らせても→
1073
01:29:40,182 --> 01:29:44,182
時間は 一秒たりとも戻らない。
1074
01:29:47,172 --> 01:29:51,159
だから いま一度 前に進もう。
1075
01:29:51,159 --> 01:29:57,159
そして
平等な刻を 世界中に届けよう。
1076
01:29:59,151 --> 01:30:05,157
それが 私たちの恩返しであり→
1077
01:30:05,157 --> 01:30:08,126
果たすべき使命だ!
1078
01:30:08,126 --> 01:30:10,145
(職工たち)おう!
1079
01:30:10,145 --> 01:30:29,164
♬~
1080
01:30:29,164 --> 01:30:36,154
〈金太郎は 宣言どおり
時計の弁償を実行しました〉
1081
01:30:36,154 --> 01:30:39,157
こちらになります。
ありがとうございます。
1082
01:30:39,157 --> 01:30:45,213
♬~
1083
01:30:45,213 --> 01:30:48,149
用件とは なんでしょうか?
1084
01:30:48,149 --> 01:30:51,169
なあ 善路→
1085
01:30:51,169 --> 01:30:54,155
工場を再建してからの
話になるが→
1086
01:30:54,155 --> 01:30:58,159
精工舎は
夜間学校を作るつもりなんだ。
1087
01:30:58,159 --> 01:31:02,147
そこで
お前に頼みたい事がある。
1088
01:31:02,147 --> 01:31:04,149
はあ…。
1089
01:31:04,149 --> 01:31:10,155
若い職工たちに
英語を教えてやってほしい。
1090
01:31:10,155 --> 01:31:13,158
いやいや…
私が先生って事ですか?
1091
01:31:13,158 --> 01:31:16,144
この俺が?
冗談 やめてくださいよ。
1092
01:31:16,144 --> 01:31:20,148
いや お前は人を教えるのに
向いてる。
1093
01:31:20,148 --> 01:31:25,148
お前は 人には それぞれの
進み具合があるって事を知ってる。
1094
01:31:30,141 --> 01:31:32,143
それに 善路は→
1095
01:31:32,143 --> 01:31:36,147
本場の英語を使う環境で
働いている。
1096
01:31:36,147 --> 01:31:39,167
これ以上の適任者は いないよ。
1097
01:31:39,167 --> 01:31:52,167
♬~
1098
01:31:56,167 --> 01:32:02,167
あの頃 話してた形とは違うが
一緒に時計を作るぞ。
1099
01:32:07,145 --> 01:32:09,145
はい…。
1100
01:32:17,172 --> 01:32:23,178
♬~
1101
01:32:23,178 --> 01:32:26,181
(時計の音)
1102
01:32:26,181 --> 01:32:36,174
♬~
1103
01:32:36,174 --> 01:32:39,144
はい 直りましたよ。
1104
01:32:39,144 --> 01:32:42,163
本当にすごいわ。
1105
01:32:42,163 --> 01:32:45,166
これぐらい お安い御用です。
1106
01:32:45,166 --> 01:32:48,203
違うの。
1107
01:32:48,203 --> 01:32:51,172
いつか 全ての人々が→
1108
01:32:51,172 --> 01:32:55,176
正確な時間の中で
生きる事になる…。
1109
01:32:55,176 --> 01:32:58,163
そう 父におっしゃったでしょ?
1110
01:32:58,163 --> 01:33:07,172
♬~
1111
01:33:07,172 --> 01:33:10,158
こんな世界が来る事が→
1112
01:33:10,158 --> 01:33:15,158
あの時の金太郎さんには
もう見えていたのね。
1113
01:33:18,166 --> 01:33:21,169
全ての出会いには意味がある。
1114
01:33:21,169 --> 01:33:25,169
それが いつかわかると
粂吉さんは言っていました。
1115
01:33:28,159 --> 01:33:32,159
それを今日 実感しています。
1116
01:33:36,184 --> 01:33:41,184
あの頃
私は あなたに恋をしていました。
1117
01:33:44,159 --> 01:33:48,159
こうなれたのは
あなたのおかげです。
1118
01:33:51,166 --> 01:33:53,151
いいえ。
1119
01:33:53,151 --> 01:33:57,172
ここまで支えてくれた
奥様のおかげよ。
1120
01:33:57,172 --> 01:34:00,158
あっ…。
1121
01:34:00,158 --> 01:34:02,160
ウフフフ…。
1122
01:34:02,160 --> 01:34:05,146
(笠井)ねえ。 ねえ 技師長。
鶴にしか見えませんよね。
1123
01:34:05,146 --> 01:34:14,189
♬~
1124
01:34:14,189 --> 01:34:20,161
♬~
1125
01:34:20,161 --> 01:34:27,185
♬~
1126
01:34:27,185 --> 01:34:43,985
(鐘の音)
92464