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(少年のせき込み)
(鈴の音)
(鈴の音)
(鈴の音)
(鈴の音)
(足音)
(鈴の音)
( 敬太 けいた ) 松島翔平 まつしましょうへい くん?
大丈夫?
これ?
ああ 熊よけの鈴
(翔平)あくまよけ?
あげる
(翔平が鈴を鳴らす音)
(敬太)帰ろう
(人々のざわめき)
(翔平)お兄ちゃん
(鈴を鳴らす音)
(アナウンサー)…保護されました
群馬県警の発表によると 翔平くんは
行方不明になった林道から 3キロほど離れた川の近くで
捜索をしていたボランティアの 男性によって発見されました
(ドアが開く音)
( 司 つかさ )あっ おはよう
(敬太)ただいま
今 起きたの?
(司)うん
あっ ちょ! まぶしい まぶしい もう!
ああ…
連絡くれたら 迎えに行ったのに
司だって仕事でしょ
(司)まあね
ああ それ敬太宛
(敬太)また母さんから?
(司)うん
うちの親なんて 頼んでも送ってこないよ
(開封する音)
(司)どうした?
(司)腹減った?
なんか作ろっか?
あ… 大丈夫
ああ いや やっぱ なんか食べようかな
(司)ああ 分かった
あのさ…
うちって ビデオデッキあったっけ?
あの なんか用ですか?
( 美琴 みこと )突然すみません
私 群馬新報社会部の 久住 くずみ 美琴といいます
はあ…
(美琴) 兒玉 こだま 敬太さんに お伺いしたいことがあって
さっき部屋のチャイム 鳴らしたんですけど 誰も出なくて
(司)ああ
さっき帰ってきたばっかなんで 寝てるんじゃないですかね
(美琴)そっか そうですよね
えっと 兒玉敬太さんの…
同居人です なんかありました?
先日 行方不明になって見つかった—
松島翔平くんという 少年の件なんですけど
(司)ニュースで見ましたよ それが何か?
ああ 歩きながらでもいいですか
あ… はい
松島翔平くんを見つけて 現場から消えた—
ボランティアがいるんです
それが 兒玉敬太さんなんじゃないかなあと
それで?
13年前の失踪事件 ご存じですか?
兒玉さんの弟の 日向 ひなた くんのこと
こんなの失礼かもですけど
その防犯ブザー
多分ですけど
久住さんにつきまとってるの ストーカーじゃないです
俺 見えちゃうんですよ そういう類いのもの
詮索されるのって嫌なもんでしょ
天野 あまの 司です
敬太のことは 協力できないかもですけど
もしそういうのでお困りなら 話くらいは聞けるんで
それじゃあ 失礼します
これ 弟と関係あんの?
なんで 司が知ってるの?
新聞記者の人が 今日 話しかけてきて
敬太のこと知りたがってた
こないだの群馬の子を見つけた ボランティア 探してるって
取材は断ったけど
行方不明になった
俺が小学生の時
まだ見つかってない
ごめん 黙ってて
(ケースを外す音)
(司)部屋 行ってるね
司…
司にも一緒に見てほしい
(日向の話し声)
(幼い敬太)日向とお父さんは キャッチボールしてます
(日向と健吾の話し声)
(幼い敬太)日向は…
(寛子)敬太
それ お父さんのでしょ また怒られるよ
(幼い敬太)別にいいでしょ お父さんもいいって言ってたもん
(寛子)そう?
でも ほら じゃあ 敬太 一緒に遊んでおいでよ 外で
(幼い敬太)うっさいなあ
(階段を駆け上る音)
(幼い敬太の独り言)
(幼い敬太)行くか…
なんだあれ
行くか…
(幼い敬太)ダムみたい
うわ ヤバ! たっか…
魚がいない
ヤバめだ ここ
怖いな ここ
うわ 石だらけじゃん
(日向)お兄ちゃん
(幼い敬太)あっち行ってろって
(日向)なんで?
(幼い敬太) にいには1人で遊びたいの
(日向)かくれんぼしたい
(幼い敬太)俺はしたくないから
なんで?
(幼い敬太) なんでなんで うっさいなあ
とりあえず あっち行ってろって
ほら お母さんとこ行っときな
(幼い敬太)なんだ ここ…
すごいな
(日向)ぷよぷよがいるよ
(幼い敬太)何? 虫?
(日向)ぷよぷよ!
(幼い敬太)は? なんだよそれ
何もいないじゃん ほら
(日向)お兄ちゃん 見えないの?
(幼い敬太)見えない
じゃあ かくれんぼやろう
んーと 日向はあっちに隠れて
にいに 鬼やるから
(日向)やだ
(幼い敬太) もうさ そういうのいいから
はい 行って
1 2 3
4 5 6
7 8 9
10
もういいかい
行っていいのかな…
(幼い敬太)いないな
(幼い敬太)ここもいないか
どこだ…
(幼い敬太)はい みっけ
じゃあ 次は日向が鬼ね
あれ?
(幼い敬太)日向?
日向?
(幼い敬太)日向?
日向?
(幼い敬太の荒い息)
(幼い敬太の荒い息)
(幼い敬太)もういいよ
(幼い敬太)もういいよ
日向…
もういいよ
日向…
もうい…
(砂嵐の音)
このあとは?
ふもとに下りて
父さんと母さんに話して
警察が来た
でも いくら捜しても あの 廃墟 はいきょ 自体 見つからなかった
それっきり?
なんか 感じる?
これ 燃やすなり捨てるなり したほうがいいと思う
やっぱ そうだよね
敬太のお母さん なんで こんな…
(ノック)
あ… 開いてたんで
あとちょっとで 子供たち来るんで
少しだけなら大丈夫ですよ
失礼します
(司)なんか怒ってます?
私の番号教えたの 天野さんですよね?
(司)誰にですか?
兒玉敬太さんのお父様から 昨日 電話が来たんです
でも あんま会話にならなくて
(司) ちょっと話が見えないんですけど
“息子を よろしくお願いします”って
あれ一体 何なんですか
(司)あの…
あいつの父親 去年 亡くなってますよ
(美琴)え?
(司)遺骨 今うちにあるんです
あいつの両親 離婚したから
引き取り手が 他にいなかったらしくて
え… そ… そんなこと…
こちらで大丈夫ですかね
(客)ありがとうございます (敬太)はい
ありがとうございます
(真由) 大和 やまと … 大和?
大和?
大和?
大和?
大和?
(本多)兒玉くん ちょっと レジ行ってもらってもいい?
(真由)大和?
あれ 迷子?
(真由)大和?
(本多)いやいや すぐ見つかるでしょ
見つからなかったら?
え?
(大和)ママ…
(真由)大和!
ほら 見つかったでしょ
レジね 頼むよ レジ
失踪する瞬間が映った ビデオテープ… ですか
はい
あいつの母親
荷物 整理して 見つかった父親の遺品
たまに送ってくるんですよ
その中に交じってて
それ 見たりできますか?
いや それはちょっと
ですよね
でも なんで急に?
敬太 たまに何考えてるか 分かんない時があって
それで ちょっと人に 話したくなったって感じですかね
(美琴のため息)
や… すいません
本来予定していた記事の方向と どんどんずれちゃってるんで
どうしようかなあと…
どうするんすか?
(美琴)うーん…
ちょっと天野さんの話も お聞きしてもいいですか?
えっ 関係あります?
個人的な興味です
ああ はい
普通の人には見えないものが 見えるわけですよね
つまり…
死んだ人が
そうなりますね
(美琴)見えた場合 その…
どう対処するんですか?
別に何もしないですよ
大抵のものは する必要ないんで
(美琴)大抵は…
はい
(美琴)普段の生活に影響は?
まあ 見えるのが当たり前なんで
特にそういうのはないです… けど
(美琴)けど?
強いて言うなら
隠し事が増えるとかですかね
(美琴)兒玉敬太さんは 知ってるんですか
はい 敬太は知ってます
見えてることは
(美琴)なるほど
(美琴)私 これ…
部屋の中でも持ってないと ダメなんです
なんか 自分が何に怖がってるか—
ちょっと分かってきました
(司)よかったら 一度 敬太に
話しだけでもできないか 聞いてみますよ
どういう心変わりですか?
(司)悪い人じゃなさそうなんで
あ… はい
(ドアが開く音)
(司)あ… おはよう
じゃあ 私は これで
ああ ちょっと待ってて
もうすぐ終わるから
それじゃあ 明日 よろしくお願いします
はい
あの…
天野さんは怖くはないんですか
俺は 怖くはないですよ
はい
(司)ただいま
おかえり
(司)ああ 疲れた
何してんの
やっぱり このビデオ 母さんに返しに行ってくる
そんなん 送り返せばいいじゃん
話がしたい
母さんには会いたくないけど
でも こういうの 送ってきたりするの—
もうやめてくれって
それは 敬太が家族だから
俺のことなんにも知らないよ 母さんは
家族とか
かわいそうなお兄ちゃんみたいな 顔して生きてることとか
そういうの全部 終わりにしたい
なら 俺も一緒に行くよ
(携帯電話の振動音)
(足音)
(敬太)携帯 ずっと鳴ってるけど
(司)ああ 大丈夫
(司)ああ 大丈夫 (着信を切る)
(司)ああ 大丈夫
(講師)天野 今日 休みですね
(美琴)ああ…
(講師)今朝 連絡あったんで 明日には来ると思いますけど
(美琴)分かりました
(講師)はい (美琴)ありがとうございます
(携帯電話の振動音)
お疲れさまです 久住です
( 塚本 つかもと )どう? 例のスーパーボランティアは
話しできた?
あの彼で間違いなさそう?
はい 兒玉敬太さんで 間違いありませんでした
(塚本)おっ じゃあ
明日の朝刊に間に合いそうだな
それが状況が変わってきまして
(塚本)あれ? 会って話したんでしょ
それが約束を 反故 ほご にされちゃって
(塚本)今日中にでも 当たっとかないと
ちょ… ちょっと待ってください
もう少しだけ時間もらえますか?
(塚本)どんくらい?
今日 一度そっち戻ります
そこから 2~3日くらい
(塚本)早くしないと
そろそろ よその会社が 嗅ぎつけちゃうよ
(美琴)すいません 行きたい所があるんです
じゃ 夜には戻るんで
こんにちは
(ドアの開閉音)
(鍵を取り出す音)
(解錠音)
ただいま
(スイッチを入れる音)
(スイッチを操作する音)
(司)お邪魔します
母さん
(敬太)どうしたの?
俺 下にいてもいい?
2階 怖い?
(天井を駆け回る足音)
母さん いなかった
(司)そっか
(敬太) それ 小さい時に使ってたやつ
敬太の家族 初めて見たかも
お父さんの遺影とかもないし
なんか 不思議な感じがする
そう?
こうして見てると
聞いてたよりも ずっとまともな家族っぽい
あっ ごめん
ハハ…
この近所にさ ちっちゃい公園があって
そこで よくキャッチボールしてたんだけど
休日に 父さんが俺と日向を連れて
日向は まだ小さかったから 見てて
“ちゃんとお兄ちゃんから見て 学ぶんだぞ”って
なんか その時から俺
“この人は父親を演じてるな”って 思ってて
それが気持ち悪くて
日向がいなくなってからも
休日になると父さんが
“キャッチボールしよう”
“日向の分も キャッチボールしよう”って
母さんもおんなじ
毎年 日向の誕生日になると
必ずホールケーキ買ってきて 祝うんだよ
楽しそうに
まるで そこに日向が いるんじゃないかってくらいに
“日向 誕生日おめでとう”って 呼んで
父さんも一緒になって
もう普通じゃないのに
(ボールの落下音)
なんか 家族って
父親 母親 子供っていう 役を演じてるんじゃないかって
小さい時 思ってた
司…
父さんも母さんも
多分 俺が日向を 殺したって思ってた
そんなことあるわけないよ
分かってる
今から あの山に行こうと思う
車なら1時間くらいで着くし
(司)山って…
日向がいなくなった山
(車のドアが閉まる音)
(車のドアが閉まる音)
ここ 今から登んの?
(敬太)大丈夫
装備 そんな持ってきてないし
あんま深いとこまでは行かないよ
(司)マジか
(敬太)運動不足解消
(司)きっついな
(老人)今から登んのかい?
(敬太)はい
ああ そう
気ぃつけなね
暗くなるの早いから
ああ
兒玉日向くんね
知ってるんですか
(老人)そりゃもちろん
この辺の人は 一生懸命 捜したんだから
俺ね この子がいなくなったあと
山で一度 姿 見つけたことがあるんだよ
え?
あとを追ったんだけどね
すぐにどっか行っちまった
この子…
ずっと かくれんぼしているんでは ないかなあ
そう思ったほうが幸せだよ
そう思うんだけどね あんた どう思う?
すいません
ちょっと待って 敬太
待って… 休憩…
ああっ
ハァ… ハァ…
(敬太)大丈夫?
はい
(鈴の音)
(鈴の音)
ああ そっか
鈴 あげちゃったんだ
(司)もう暗くなっちゃうよ
日向?
(走る足音)
(走る足音) 日向!
(走る足音)
(敬太)日向! (司)ちょ… 敬太!
(敬太)日向
(物につまずく音)
(敬太)あっ…
(司)敬太 それ…
(敬太)え…
(敬太) 骨壷 こつつぼ …
でも なんで こんな…
(司)こっちにもある (敬太)え?
(司)どうなってんだ
(牧野)長いこと 引き止めてしまって すいません
(司)いえ
(牧野)恐らく どこかで墓じまいをした時に
改葬業者が不法投棄したんでしょう
不法投棄…
あんなものをですか
(牧野)罰当たりな話ですよ
お話は以上となりますので ありがとうございました
自力で帰れますか?
あ… 大丈夫です 車なんで
( 滝打 たきうち )兒玉敬太さん
はい
(滝打)14年前に失踪した…
13年前です
(滝打)失礼
13年前に失踪した 兒玉日向くんのお兄さん
ですよね
(敬太)はい
(滝打)私がこっちに 赴任した時のことなんで
よく覚えてます
そうですか
(滝打)日向くんの件は 今も尽力しています
不甲斐 ふがい ない思いです
お母さんも よくいらっしゃってましたよ
最近はあまり お見かけしませんでしたが
ご存じかもしれませんが あの山では…
(牧野)滝打さん
そろそろ
ああ…
じゃあ すみません ご協力ありがとうございました
敬太
(美琴)その業者は まだ見つかっていない?
はい
あ… あとお聞きしたいのが 通報者なんですけど
登山客以外に分かってること…
なるほど
はい ありがとうございます
びっくりした…
ああ すまん
なんか いつにも増して 気合い入ってるな
そうですか?
そもそもは
翔平くんが見つかって よかったねって話でしょ
兒玉さんの過去の事件 深追いして どうするわけ
分かってるんですけど…
電話で言ってた 行きたい場所ってのは 摩白山 ましろやま ?
はい
県またいじゃってるけど
そうなんですよね
経費 下りないよ
まあ そこは
で… これ以上 追うなら 現地に行くしかないと
はい
20年前 俺が追ってた 事件があるんだけど
(美琴) “ 明洋 めいよう 大学山岳部 集団失踪事件”
部員たちの何人かが こっちの県の人間だったからな
当時 俺が取材してた
摩白山自体は大した山じゃない
あんな山で いまだに遺体 見つかってないほうがおかしい
(美琴)“見つからない廃墟”?
手がかりなしの中 1つだけ遺留品が見つかったんだ
カセットテープとレコーダー
失踪した部員たちの声が 残されていた
中身は?
部員たちが登山中
とある廃墟に たどり着いてるように
会話の内容から聞き取れた
そして…
その中に入ったところで 音声が途切れてる
でも その廃墟は 見つかっていない?
まともに書くと オカルト話だと思われるからな
それで 表には出なかった
で…
これがそのテープ
証拠物件じゃないですか
(塚本)フッ… 警察の知り合いからちょっとな
こんな話 警察もまともに 扱えなかったんだろ
( 雪斗 ゆきと )ガラガラだよ
(敬太)あ… あの この宿の方ですか?
(雪斗)まあね
もしかして 骨壷 見つけたのって あんた?
(敬太)だったら?
(雪斗)いや…
日向のこと 知ってるんですか?
それは この辺 住んでれば みんな知ってるよ
(戸が開く音)
(冬美)雪斗
あんた 何やってんの
ごめんなさいね 息子なんですけど態度悪くて
うっせえ
(冬美)どうぞ (敬太)あっ えっと…
(敬太)まだ 連れがいるんで 呼んできますね
(携帯電話の振動音)
(司)敬太
(敬太)ん?
ちょっと風呂 行ってくるわ
(敬太)ああ 分かった
ちょっと見せたい資料とかあって ビデオ通話のほうが
はい 電波 切れるかもしれないですけど
通報した時は兒玉さんも一緒に?
はい
それで 久住さんのほうで つかんだ情報って
ちょっと 見えづらいかもしれないんですけど
摩白山では 他にも不可解な事件が 定期的にありました
神隠し
これは 集団自殺
一家心中
こんなにですか?
これだけ事例があると 逆に心霊スポットとして
有名だったりすると思うんですが
ネット上に そういった書き込みは 非常に少ないです
摩白山って名前じゃないのも ありましたよね
山の名前が 何度か変わってるんです
町の吸収合併や 区画整理なども繰り返されていて
集めるのに苦労しました
(司)なるほど
よく調べられましたね
で… これがさっき言ってた 聞いてほしい音声なんですけど
(司)ああ 大学生が失踪したっていう
はい
これも聞きづらいとは思うんですが
(再生する音)
(男子学生)はい えー…
予定より2時間ほど遅れて スタートしました
スタート地点からしばらくは 舗装道路を歩くので楽ちんです
(男子学生)頭が遅刻しました
(男子学生)マジかよ…
(男子学生たちの笑い声)
(早送りする音)
(再生する音)
(男子学生)建物がある
えっと…
地図にもどこにも載ってない…
(早送りする音)
(再生する音)
(男子学生)廃墟に入りました
廃墟ですよね 誰もいない
(男子学生)誰かいますか? (男子学生)やめろって
(男子学生) 一応 上も見てきます
一緒に行きます?
(男子学生)いや 俺はいいや
(男子学生)2階 怖いですか?
(男子学生)いや 別に 怖いとかじゃないけど
(女子学生の悲鳴)
(男子学生)大丈夫?
(女子学生)誰かいる
(男子学生)は? (女子学生)たくさん ほら…
(女子学生)あっちの部屋にも
その部屋… (再生が終わる音)
どう… 思われますか?
この音声に出てくる廃墟
日向くんが失踪した所を 収めたビデオテープにも
映ってました
廃墟は どんな外観でした?
(司)家っていうよりは
何かの施設みたいなとこでした
明治までさかのぼって 調べましたが
そもそも あの辺り 登山道の整備以外に
大きな施設の建設はないようでした
(司)そうなると
登山部の学生たちも 敬太たちも
存在しない場所に 行ったってことになりますね
ありえると思います? そんなこと
ありえない
…って思いますよね
大丈夫ですか?
敬太が実家に行った時
さっきの音声と 同じようなこと言ってました
2階は怖くないかって
どういうことですか?
分かりません
でも 俺 敬太の実家に 行ってみようと思います
あの 私も 今からそちらに 向かおうと思ってるんです
(司)今から?
この目で見たいんです
それに 兒玉敬太さんにも
そろそろ 直接 お話 伺いたいですし
すいません 約束 破っちゃって
それはいいんです そっちで落ち合いましょう
じゃ またあとで
(司)あ… 久住さん あの…
(司)あ… 久住さん あの… (通話が切れる音)
あっ ちょっと…
(敬太)あの
連れ 見ませんでした?
風呂行ったきり なかなか戻ってこないから
外 出てくの さっき見ましたけど
ああ… そうですか
あの
(雪斗)まだ何か?
ちょっと 話しできないかな?
(雪斗)なんの?
日向のこと 知ってるって言ってましたよね
弟なんです
何 話せばいいの?
あの山のことなら なんでも
弟を捜す手がかりになれば
捜すって…
日向を見たんです
骨壷を見つける前に
お客さんが やっぱ見つけたんだ
あそこには ああいうもんなんて いっぱい捨ててあるんだよ
みんな 昔から知ってる
警察の人も 似たようなこと言ってました
知ってて なんで ほっとくんですか
捨ててもいい場所だから
捨ててもいい場所?
なんつうかな…
亡くなったばあちゃんが 言ってたんだけど
この民宿始めた 俺のばあちゃん
あそこは あの山は
小さい頃から行くなって 親から言われてたみたいで
でも 大人たちは
夜に子供が寝たあとに
みんなこっそり山に行ってて
だから ばあちゃんは 大人はズルいって思ってたって
小さい頃のばあちゃんは
大人たちが そこで何か 楽しいことしてんじゃないかなって
思ってたらしい
でも 全然違った
それで?
ばあちゃん 我慢できなくて
ある夕方に
友達と何人かで山 行って 鬼ごっこしたんだって
別に なんにもなかったんだけど
あとでそれがバレた時に
なんか異常なくらい 叱られたって言ってて
で… ばあちゃんが
“私は大人たちが 遊びに行ってるの知ってる”って
そしたら ばあちゃんのお母さん
ひいばあちゃん?
ひいばあちゃんに
“大人は山に遊びに行ってる わけじゃないんだよ”って言われて
で… ばあちゃんが
“じゃあ 何をしてるの?”って 聞いたら
“捨てに行ってるんだよ”って
何を?
神様を
え?
神様とか仏様とか
死んだ人のものとか
遺骨とかも
そういうの全部 あの山に捨ててきたんだよって
俺さ
ばあちゃん 中学 入る前あたりに 初めて生理が来たみたいなんだけど
その時 すっごい怖くて 恥ずかしかったんだって
それに小さい村だから
あそこの家の子 女になったって
すぐうわさが広まっちゃうから
それだけは どうしても 避けたかったんだって
その時に あの山のことを ふと思い出した
“そうだ あそこに 捨てに行けばいいんだ”って…
思った
で… ばあちゃんは 夜にこっそり 汚れた下着を持って
山に行った
山の奥には 暗くてよく見えなかったんだけど
鳥居とか しめ縄が
ゴミみたいに たくさんほっぽられていて
その中に ばあちゃん 血の付いた下着を投げ込んだんだって
そしたら
ばあちゃん そこから一度も 生理が来ることがなかったって
うれしい うれしいって
あんな面倒くさいものに 悩まされない人生でよかったって
よく笑ってたんだけど
その話 初めて聞いた時は俺も
ばあちゃん よかったねって
でも 今は
ばあちゃんが笑った顔を 思い出すたびに
怖くなる
だって それじゃ ばあちゃんって一体 誰を産んで
俺って ばあちゃんの 何なんだろうって
母さんは?
お客さんも さっき会ったでしょ
あの人は
俺の母さんって ばあちゃんの子供じゃない
そういうこと?
だから もう俺 考えるのやめた
俺は なるべく あの山には近寄りたくない
実家がここだから 逃げられないっていうのはあるけど
でも とにかく 考えないようにしてる
(敬太)ありがとう
どうするつもりとか知らないけどさ
連れの人と さっさと帰ったほうが いいと思うよ
俺ならそうする
(テレビがつく音)
(寛子・健吾)1本
2本
3本
4本
5本
6本
7本
(寛子)わあ 今日は
日向の7歳のお誕生日です おめでとう!
(健吾)日向 おめでとう (寛子)おめでとう
(健吾)おめでとう
(健吾)撮って (寛子)はいはい
(寛子)はい 日向くん 7歳 お誕生日
(寛子・健吾)おめでとう!
(健吾) よし ハッピーバースデー歌おう
(寛子)あっ 歌う? ちょっと待って
(健吾)せーの (寛子)どうぞ
(寛子・健吾) ♪ ハッピーバースデー トゥ ユー
(健吾)ほら 敬太も
♪ ハッピーバースデー トゥ ユー
♪ ハッピーバースデー ディア 日向
♪ ハッピーバースデー トゥ ユー
(健吾)おめでとう (寛子)わあ おめでとう
(健吾)吹き消して… (寛子)うん
(寛子)はい おめでとう 7歳 おめでとう
(健吾)おめでとう
(天井から聞こえる足音)
(呼び出し音)
(留守電アナウンス) ただ今 電話に出ること…
母さん
(寛子)明日は日向の誕生日よ
忘れちゃダメでしょ? お兄ちゃんなんだから
別に 忘れてない
(寛子)また ウソついてる
ウソじゃない
(寛子)日向は ずーっと待ってるのよ
これは 母さんの人生じゃない
(割れる音)
ハッ…
(寛子)早く見つけてあげて
(美琴) 兒玉敬太さん… ですよね
はじめまして
(美琴)兒玉さん
あの山の廃墟に 行ったことあるんですよね
ええ まあ
このカセットテープ
どういう理由か分かんないけど 道中を全部 記録してる
これと 兒玉さんの記憶を 頼りにしたら
どうにか たどり着けないですかね?
どうして そこまで行きたいんですか?
どうして… だろ…
(携帯電話の振動音)
あっ 電話 出ていいですか
(敬太)はい
(美琴)もしもし 久住です
(司)久住さん
敬太 近くにいますか?
(美琴)いますけど
敬太の実家の2階に
あいつのお母さんの 死体がありました
多分 何日も前に自殺してる
天野さんが見つけたんですか?
(司)今日の昼に 敬太だけで
一度 2階に上がってて
その時 敬太も見えたはずなんです
なのに 多分 見えてなかった
あいつ とっくに あの山の影響 受けてたんです
久住さん
敬太がどこかに行きたがっても 絶対に止めてください
(司の声) 今から山に行ってください (ノイズ)
敬太を連れて
え?
どういうことですか…
(ノイズ)
え? 久住さん?
もしもし 久住さん?
(敬太)僕 1人で行ってきます
久住さんは 司を待っててもらえますか?
(美琴)大丈夫ですか? 何も今すぐ行かなくても
(敬太)今なら あの場所 行ける気がして
司が聞いたら止めると思うんで
(美琴)いや でも…
(敬太)すぐ戻るって 伝えといてください
(レコーダーを操作する音)
(再生する音)
(男子学生) 登山口から1時間ほど来ました
えー だいぶ開けたルートに 出てきましたね
ここまで来ると あと2時間から 2時間半ほど歩いたら
頂上の予定です
木が倒れてるのは 先月の台風の影響でしょうか
えっと それから
あれ? 今の音なんですかね?
(男子学生)何が?
(男子学生)なんか後ろから 誰か呼んでるみたいな
(男子学生)え? 聞こえた?
(女子学生)聞こえない
(男子学生)やっぱ 聞こえますよ
(男子学生)えー 堺(さかい)が転んで 軽く足をひねったようです
本人は大丈夫って言ってますが ちょっと心配ですね
(男子学生)先 行ってますよ (男子学生)はい
(学生たちの話し声)
(男子学生)えー
まだ14時なのに真っ暗です
木が多くなって だいぶ険しくなってきました
(女子学生) えっ… 今 誰か見てる
(男子学生)落ち着けって
(女子学生)え? ほらほらほら あそこ…
(学生たちの話し声)
(男子学生) えー 看板を見つけました
山頂まで あと3.8キロメートル地点です
(女子学生) あと どんだけあんの…
(男子学生)真っ暗だな…
(男子学生)戻りますか?
(男子学生)いや…
(女子学生)え? あれ何?
(男子学生)どれ?
(男子学生)建物がある
(男子学生)えっと… 地図にもどこにも載ってないよ
(男子学生) そこで雨宿りできんじゃない?
行こ
(携帯電話の振動音)
もしもし
塚本さん?
(塚本の声)お前 行ってやったほうがいいじゃないか
会いに行ってやったほうが
会いに行ってやったほうが…
(美琴)え? (ノイズ)
(男の声)あの…
(美琴) あの ちょっと音が…
(美琴) あの ちょっと音が… 息子をよろしくお願いします
息子をよろしくお願いします
あの 美琴 美琴…
ああ… ああ… あ…
(不気味な声)
(大きくなる不気味な声)
(鈴の音)
(鈴の音)
(防犯ブザーの音)
(ノック)
(司)敬太は?
行っちゃいました
待ってください
前に “大抵のもの”には 何もする必要がないって
言ってましたよね
(司)はい
じゃあ
この山にいるのは…
大抵… じゃないものですね
日向くんはそれを “ぷよぷよ”と呼んでました
きっと あの子には そうとしか説明できなかった
俺も…
なんと呼んだらいいのか 分かりません
私も行かせてください
(司)それは…
前 怖くないって言ってましたよね
すみません
ウソついてました
正直 一度だって 怖くないなんて思ったことないです
それ聞いて むしろ安心しました
(美琴) これ 兒玉さんが持っていった…
多分 敬太は 思い出したんだと思います
(再生する音)
(男子学生) 廃墟… 誰もいない…
(男子学生)誰かいますか? (男子学生)やめろよ お前…
(男子学生)一応 上も見て…
行きます…
(美琴)どうしました?
(司)いや…
行きましょう
(美琴)こ… これ…
(足音)
(美琴)今のって…
(司)敬太
(司の走る足音)
(敬太)日向
見~つけた
(走る足音)
(司)敬太!
帰ろう 一緒に
うん… 日向も
そいつは 日向くんじゃない
何 言ってるの
敬太に ずっと隠してたことがある
何?
日向くんは 敬太の隣にずっといる
今も
俺には最初から見えてた
初めて敬太と出会った時から
だから…
日向くんは もう死んでる
敬太に今 見えてる そいつは 日向くんじゃない
そいつは…
そっか
そうだよね
ごめんなさい
離して
えっ…
(幼い敬太)はい みっけ
じゃあ 次は日向が鬼ね
え?
(幼い敬太)日向
(司)敬太
(幼い敬太)日向?
日向?
日向?
司は?
うわーっ!
うわーっ!
ああーっ!
(幼い敬太)はい みっけ
じゃあ 次は日向が鬼ね
(松山)それ 塚本さんに 記事にならんって怒られてたやつでしょ
まだ追ってんの?
まだ終わってないから
それにいつかは ちゃんとした 記事になるかもしれないし
(雪斗)ハッ…
(解錠音)
ただいま
(荷物を置く音)
司?
♪~
(子供たちの遊ぶ声)
(子供たち)1 2 3
4 5
6 7 8…
6 7 8… ~♪
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