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♬~
♬~
♬~
♬~
♬~
♬~
♬~
(明)叔父ちゃん おかえんなさい (一郎)んっ
よしよし ご褒美だ ほれ
どうもありがとう ああ ハッ…
≪♪(ピアノ)
(敏子)これ あげるわ (二郎)悪いよ 姉さん➡
取っときの配給品だろ? (敏子)いいから 持ってらっしゃい
すまんなあ
お隣のヨシエさん➡
家が焼けるまで ピアノ弾いてるんだなあ 立派だよ
(明)お母さん 叔父ちゃんに キャラメルもらった
(敏子)そう よかったわね
おかえんなさい ただいま
今どき キャラメルを配給されるなんて 軍人の余得だな
悔しかったら お前も軍人になれ
キャラメルと命の引き換えじゃ 割が悪いよ
こいつ! お前なんか軍隊に入って➡
性根をたたき直さなきゃダメだ
≪ 義兄さん (中島)おう
連隊の防空壕は10トン爆弾でも びくともしないぜ
それは すごいな ハハッ はい
入れてもらいたいところだが 空襲警報が出るたびに➡
近衛連隊まで駆けつけるわけにも いかんしなあ
二郎 どこ行くんだ 中国地方の工場慰問だよ
姫路 岡山 広島と 2週間の予定でね
お前たちなんかの芝居でも 役に立つことがあんのか
そうバカにしたもんでもないよ
舞台に立たせると 二郎君 なかなかやるぜ
僕だって これでも 演劇を通して 国家に奉仕してるんだよ
フッ…
(敏子) 一郎さん あなた 朝ごはんは?
うん もう済んだ そう
叔父ちゃん オートバイ乗っていい?
(敏子)あっ ダメ! 二郎さん 刀 取って
(二郎)こらっ ハハッ…
(二郎)ハァー (中島たちの笑い声)
キャラメルは? (二郎)兄さん➡
姉さんたちに来てもらって 助かったね
兄さん てんで帰ってこないし 今度みたいに僕が出かけると➡
家は空っぽだ うん
助かったのは私たちよ まったくだ
この家が無かったら 官舎 焼け出されて➡
親子3人 行くとこがなかったよ (敏子)うん
義兄さん だいぶ疲れてるようだね お互いにな
しょうがないよ 総理大臣秘書官ともなりゃ
私 つくづく 放送局にいたほうが よかったと思うわ
☎
(敏子)はい…
汽車は何時だ? 11時 順調に出ればね
(敏子)あなた 官邸からよ ああ
もしもし ああ うん
えっ?
ポツダムで? 3か国 共同宣言
♬~
(記者)閣下!
陸軍では ポツダム宣言の反応 いかがですか?
困るね 君たち
正式の会見以外は 禁じられてるじゃないか
記者連中も 総理との会見を 閣議が終わるまで➡
待たせてあるんで イライラしてるんだろう
(三原)もう 国民にも おかぶりを 押し通すわけにいかんでしょ
放送局でキャッチした外電は どうかね?
はあ 米英共に ポツダム宣言の ことばかり放送してますよ
フゥ…
日本領土の保障占領
日本領土は 本州 北海道 九州 四国に限定
日本軍の武装解除 戦争犯罪人の処罰
日本軍国主義の抹殺が ねらいなんですね
日本国政府の形態は➡
日本国民が 自由に証明する意思により➡
決定せらるべきものとする
国体護持を 守り神とする軍人には➡
主権が国民にあるという思想は とても通じない話だろう
軍部は それをきっかけとして➡
やけくそになって暴れようって いうんじゃないんでしょうか
そうなったら 全て終わりだよ
≪(空襲警報)
また おいでなすったな
(ラジオをつける音)
(ラジオ:アナウンサー)敵B-29 1機は…
(久保)閣僚が全部 おそろいになりました
じゃあ 総理にお知らせしよう (三原)じゃ 私も失礼します
ああ 重要な外電が入ったら 知らせてくれたまえ
はあ 中島さんも頑張ってください ああ
(ラジオ) …京浜地区に侵入しつつあり➡
関東地区 警戒を要す 以上
≪(空襲警報)
(爆発音)
♬~
(大木)ほとんど全滅した ということ以外➡
今もって詳細な報告が 来ないところからみても➡
被害状況が想像以上であることが 察せられます
しかも 投下された爆弾は➡
たった1発だという事実から 推して➡
恐らく 原子爆弾に違いないと思いますが
(陸軍大臣)しかし 去年秋の 原子科学者会議では➡
原子爆弾完成には なお 数年を要するという結論でした
全ては 広島に急行した➡
仁科博士の調査報告を 待つべきだと思います
(海軍大臣)それは それとして➡
国民へ どう発表するか それが問題です
むろん 原子爆弾などという発表は 一切やめるべきです
仮に 調査の結果 原子爆弾であったとしても➡
それを発表することは➡
国民の士気を低下させる以外の 何物でもありません
(行進する足音)
(下士官の号令)
(下士官の号令)
(兵士たち)やあーっ!
やあっ! やあっ!
(下士官)次! 進め! (兵士たち)やあーっ!
やあっ! やあっ!
(小島)見ろ! 敵の卑怯な行為を
口で人道博愛を唱えながら 一方では 原子爆弾で➡
非戦闘員の大量虐殺を 平然と やってのける!
これが ヤツらの正体なんだ
もし ポツダム宣言を受諾したら➡
どんな結果になるか これで はっきり分かるだろう
(加賀) 大本営発表も ただ「新型爆弾」では あいまいで逆効果だ
(石山)原爆だと公表したほうが 国民の敵愾心 高揚に役立つ
(白井)うん それも一理ある
だが 戦意喪失したら それこそ逆効果だぞ
いや いたずらに 事実を曲げていては➡
国民の士気は上がりません
川崎 お前はどう思う?
本土決戦の時が来たと考えます
中佐殿 陸軍省の同志も一人残らず 徹底抗戦を再確認しました
もちろん 近衛もだ
近衛師団が立てば 全陸軍は必ず決起します
☎
はい 川崎大尉です はあ 義兄さん
えっ?
それは 確かなんですか?
移動演劇隊の事務所に 聞き合わせたら➡
8月5日の夕方 広島到着 6日から公演だそうだ
原子爆弾が投下されたことは 知ってるだろ?
ひょっとすると やられたんじゃないかと思うんだ
分かりました わざわざ どうも
彼女か? 渋い顔だぞ
今夜あたり外泊して 英気を養ってこい
(白井たちの笑い声)
(鈴の音)
(三原)何か遺品でも…
(敏子)爆心地に近かったので 旅館ごと 跡形も無いんですって
(三原)ああ…
かわいそうなことをした
昔っから 運の悪い子だったわ
(すすり泣き)
大学の入学試験の日に➡
40度も 熱を出したことがあったな
そうだ
義兄さんに おぶさって 試験場へ行ったっけ
何かというと 「義兄さん 義兄さん」って➡
よく 世話を焼かしていた
どうせ死ぬんなら➡
川崎家の男らしく 戦場で死なせたかったな
(敏子)一郎さん
戦争は 早く終わらせなきゃいかん
それは政治家の理想でしょうがね
戦争に始めがあれば 終わりもあるはずだ
その終わりを いかに全うするか…
そのほうが 戦争を始めるより 難しいもんだよ
しかし 無条件降伏が終わりを 全うすることにはならんでしょう
日本全土にいる軍隊は 完全に無傷なんですよ
軍人が一度も敵と戦わんで 降伏するなんてことは➡
絶対できません
第一 先に死んでいった戦友に 申し訳が立ちませんからね
あなた なんにもありませんから 仏に頂いたものを どうかしら?
ああ そうだ
総理が 取っときのを 供えてくれたんだ
ほう オールド・パーですね こいつは すごい
あっ 僕が出る ☎ お前 コップ頼む
☎
もしもし そうだ… 何?
(敏子) おつまみが なんにも無いわね
いやいや これで十分ですよ
ソ連が宣戦布告した
とうとう 来るべきところまで来ましたね
それは どういう意味です?
ソ連が参戦することは 当然 予測されていたことなんです
それなのに 陛下を取り巻く 和平派どもは➡
講和使節を モスクワに派遣しようなどと➡
甘い見通しで工作していた
その返事が 今日の宣戦布告となって➡
たたき返されてきたんですよ
これで 戦いを継続する以外➡
日本の取るべき道は 無いということが➡
はっきり決まったはずだ
そうでしょう? 義兄さん
僕の言いたいことは…
軍人も含めた全日本国民の 一人一人が➡
ホントの意味での 勇気と愛国心を➡
持たなければならない時が来た ということだ
戦争は理屈じゃない 戦争は 勝ちと負けと2つしかない
だから 勝たなきゃならないんだ
≪(空襲警報)
(息を吹く音) 明は?
(敏子)あっち寝かしてあるわ ああ…
さあ みんな防空壕へ入ろう (三原)はあ
(敏子)一郎さん 早く
♬~
(下士官)次!
次!
てめえ! こら
ソ連参戦に次いで 今日の長崎原爆投下と➡
事態は急速に 悪化していくばかりです
最高戦争指導会議でも➡
戦争終結の結論が 出せなかったとすると➡
閣議でも到底まとまりません
(書記官長)陸軍大臣 参謀総長 軍令部総長の圧力で➡
内閣は潰されるかもしれんよ
どうでしょう 重臣にお集まり願って➡
総理から抗戦派を抑えて もらうように懇請してみたら
重臣方の和平工作も 失敗しているんだ
今や 政府の決断いかんに 懸かっているんです
重臣方も 終戦を希望するがゆえに➡
この内閣を作らせたのでは ないでしょうか
総理も責任を痛感しておられる
お話ししてみよう ≪(久保)書記官長➡
こんな布告が出るのを ご存じでしたか?
(書記官長)んっ?
「陸軍大臣 布告」
知らん
「全将兵に告ぐ ソ連 ついに皇国に寇す」
「明文如何に粉飾すると雖も➡
大東亜を侵略制覇せんとする野望 歴然たり」
「事 茲に至る 又 何をか言わん」
「断乎 神州護持の聖戦を 戦い抜かんのみ」
「仮令 草を喰み 土を囓り 野に伏すとも➡
断じて戦うところ 死中 自ら活あるを信ず」
♬~
(クラクション)
♬~
(山木)大木君を内閣首班に 推挙したのは我々だし➡
その責任からいっても あらゆる協力は惜しまん
しかし 抗戦派の勢力は➡
既に陸軍大臣や参謀総長の力を もってしても➡
抑えきれないほど強くなっている
というよりは 大臣も総長も➡
彼らに引きずられている というのが現状だ
陸軍が あくまでも反対すれば 閣議がまとまらず➡
ついに 総辞職も余儀なくされる
次期内閣は当然 陸軍が主導権を握るだろう
そうなれば…
我々が 大木君に期待した 和平の望みは➡
完全に水泡に帰してしまうことに なるからなあ
そこを重臣方のお力で 食い止めて いただけないでしょうか
うん…
誠に恐れ入りますが 今夜8時➡
前川子爵のお屋敷まで お越し願いたいと存じますが
(特高主任) 昨日 午後7時半 前川子爵➡
同9時 岡部元首相➡
あー 今日は午前10時 山木 前内府
あなたは 2日間にわたって 重臣を歴訪なさいましたね
むろん 総理の指示に よるもんでしょうが➡
その目的は なんでしたか?
いかがでしょう おっしゃっていただけませんか?
ハァー 暑いですなあ
今日の昼すぎ 青山南町の池田屋旅館において➡
軍需省 小山計画局長と 約1時間 会談
これは どうですか?
それは憲兵隊として 正式の尋問か?
いやいや 総理大臣秘書官であるあなたに➡
いち憲兵少尉ごときが 尋問だなんて
ただ お聞きしているだけです じゃあ 答える必要はない
奥さんのご尊父は➡
鬼将軍として有名をはせた 川崎中将閣下ですし➡
弟さんは 近衛の青年将校中➡
最も将来を嘱望されている 川崎大尉です
そのへんのところを よく お考え願いたいと思うんですが
私が心配していたとおりの事態に なってしまったんだよ
家の周りを憲兵が うろつきだしてね うん
うっかり 外にも出られんから 前川子爵に電話したら 同じなんだ
んっ? うん
中島秘書官が つけられていたに違いない
それで 前川さんとも相談したんだがね➡
現段階において 我々が必要以上に 軍を刺激する態度に出ることは➡
かえって 事態を悪化させるから➡
この際としては むしろ 静観しているのが➡
最も適切であるという結論に 達したんだよ
遅くなりまして 何かあったんでしょうか
憲兵に勘づかれたから➡
取りやめたほうが よかろうと言うんだ
申し訳ありません 私の行動が軽率でした
いやあ 君一人の責任じゃないよ
明日だ 明日の閣議に全てを託そう
(ラジオ:アナウンサー) 南方洋上より本土に侵入したる➡
敵B-29 数編隊は➡
帝都近郊に反復 焼夷弾攻撃を 加えたるのち➡
房総沖に脱出しつつある
♬~
1日 延びることが➡
それだけ犠牲を大きくするのだ
♬~
(外務大臣) 外務大臣といたしましては ポツダム宣言の各条項について➡
我がほうより 改訂を申し入れたならば➡
交渉の決裂は必至であります
その結果 現在より はるかに不利益なる条件を➡
受諾せざるを得なくなると 考えます
不利益な条件を 受諾せざるを得なくなるほど➡
日本は弱体化していないはずです
海軍としては 率直に言って➡
物心両面とも 残念ながら 連合軍に勝ち目はありません
帝国陸軍には 今なお 300万の本土防衛部隊がおり➡
士気 極めて旺盛である
しかし 海に戦う艦艇なく ソ連の参戦した現在➡
陸軍大臣の言われる 本土に敵を迎え撃つことは➡
絶対に不可能であると信じます
(陸軍大臣)海軍大臣が なんと言われようと➡
陸軍は現実に負けていない
戦局は五分と五分である
本土において 死中に活を求める 決戦に出ることにより➡
一挙に戦局を覆す自信があります
(外務大臣)外電の伝えるところに よりますると➡
アメリカ大統領は 我が国の回答いかんによっては➡
第3第4の原子爆弾を投下する 用意があると声明しております
もし そのようなことが起こったら➡
日本の再起は もちろん➡
日本民族の滅亡を おそれるものであります
しかし外務大臣➡
アメリカの世論は 天皇制廃止を 強く主張しております
この事実をもってしても 敵国が➡
陛下の尊厳を冒涜し➡
我が国民を奴隷化せんと することは明白であり➡
敗北を知らぬ日本国民として➡
この屈辱は 到底 忍び得ぬところです
(大木) 陸軍大臣は本土決戦において➡
戦局を逆転させる自信があると 言われましたが➡
敵の上陸を予測される 九州 関東の沿岸防備状態は➡
参謀本部の報告とは 非常な食い違いがあり➡
陣地 兵員の装備は貧弱で➡
銃剣さえ 行き渡っておりません
一方 軍需生産は極度に低下し➡
鉄鋼は計画の3分の1
飛行機に至っては 9月以降➡
生産の見込みが 立たないという状況です
総理は 陸軍大臣である私の報告を 信用できないとおっしゃる
陸軍大臣を信用しないことは➡
全陸軍を信用しないとも 受け取れます
私は閣僚を信頼しない 総理の態度に➡
甚だしい不満を持つと同時に➡
総理が今後も その態度を 改めてくださらぬ場合は➡
閣僚を辞退せざるを得ないことを はっきりと申し上げておきます
≪♪(兵士たち)万朶の桜か襟の色
≪♪ 花は吉野に嵐吹く
♪ 花は吉野に嵐吹く
♪ 大和男子と生まれなば
♪ 大和男子と生まれなば
♪ 散兵線の花と散れ
♪ 散兵線の花と散れ
♪ 尺余の銃は武器ならず
♪ 尺余の銃は武器ならず…
陸曹の腹は 徹底的に総理と 正面衝突することによって➡
内閣を総辞職に 持ち込むつもりに違いない
そうなったら 和平の望みは 完全に断ち切られるわけだ
はい
えっ? 15日の正午までに…
そうですか じゃ 至急
(受話器を置く音)
いよいよ 土壇場へ来た
連合軍からの通告で➡
8月15日の正午までに 回答がなければ➡
本土周辺に待機してる 機動部隊から飛び立って➡
日本全国を一斉に攻撃するそうだ
総理 中島君
望みというものは 最後まで捨てちゃいかん
まだ たった1つだけ 方法が残されている
陛下ですか?
うん 陛下のお力を お借りするほかは無い
御前会議ですね?
今までも 考えんではなかったが➡
輔弼の全責任を持つ 総理の身として➡
しかも 戦争終結の含みを持って 大業を受けた私としては➡
それについて 陛下に ご苦労をおかけすることは➡
到底できなかった
だが 今となっては➡
陛下に おすがりするよりほかに道は無い
陛下が無条件降伏を ご承認なさるでしょうか?
それは 分からない
だが 少なくとも 絶望ではないからね
すぐ 参内して お願いしよう
☎
はい… ああ 三原君か
何? 大本営発表?
「本日17時 皇軍は新たに勅命を拝し➡
連合軍に対して 新たなる作戦行動を開始したり」
というんですが
バカな そんな発表があるはずがない
私も そう思ったんですよ
第一 放送しろと言って 持ってきた人間が➡
大本営の人間じゃないんです
誰だと思います?
あなたの義弟 川崎大尉ですよ
んっ? ホントか
分かった とにかく放送は止めてくれ
ああ じゃあ 頼んだよ
☎(操作音)
あっ 参謀本部
(陸軍大臣)お前たちか
連合軍に対して 新作戦開始という大本営発表を➡
新聞社に回したのは
皇軍は なお健在であり➡
国民もまた 本土決戦の意気に燃えております
にもかかわらず 政府は屈辱的条件に甘んじて➡
降伏に応じようとしております
この動きを もし 将兵や国民が知ったならば…
待て
降伏するか しないかは あしたの閣議で決まるんだ
閣議に臨む前に ご覧願います
なんだ これは 決起案であります
ぜひとも 閣下のご賛同を 得たいのであります
「決起案 一つ 日時 昭和20年8月○日○時」
「一つ 兵力 東部軍および近衛師団」
「一つ 方針 宮城と和平派を 遮断し 戒厳令を敷く」
「一つ」…
閣議の結果を待て
俺は陸軍として➡
主張すべきことは あくまで主張する決心だ
しかし 万一 和平派に 押し切られましたら…
貴様は俺を信用せんのか!
(書記官長) 参謀総長閣下をお願いします
あっ 閣下 早速ですが➡
今夕 総理より 上奏ご裁可を得まして➡
明日 午後1時 御前会議が 開催されることになりました
(参謀総長)どういう訳だ それは
最高戦争指導会議で 結論が出ないまま➡
御前会議ができるか!
軍令部総長は なんと言った?
(軍令部総長) 閣議すら まとまらんのに➡
陛下の御前へ出て 議論をするなんて➡
責任ある臣下として 面目が立たんぞ
そのような御前会議は 前例のないことだが➡
総理は どういうお考えなのかな?
総理としては 議論が まとまらないから➡
議論が まとまらないままに➡
各人の意見を 陛下にお聞き願おうというのです
それなら 御前会議では 結論は出さなくてもよいのだね?
はい
そのとおりです はい
今 警視庁からの報告で➡
抗戦派の将校の往来が 非常に活発だと言ってきています
恐らく 御前会議が開かれることを 知ったのだろうと思います
もちろん 御前会議の結果を待っていては➡
手遅れになるおそれがある むしろ 我々の実際行動によって➡
陛下のご決断を 促すべきだと思います
(小島)陸軍大臣も もはや 頼むに足らんぞ
(兵士たち)同感 (士官)今や 決起以外に無い
近衛師団が決起してくれれば 海軍航空隊も即座に立つ!
それが導火線となって 全海軍の同志は必ず決起します
(将校) 陸軍航空隊も全く同じ意見です (小島)うん
よし! (一同)やろう!
彼らは 今日の 偽大本営発表を契機として➡
はっきり 陸軍大臣の命令を 拒否する態度に出ております
なんらかの形で御前会議を 妨害するに違いありません
しかし 今更どうすることもできんな
御前会議の時間を 繰り上げたらどうでしょう?
それはダメだ
確証でもあれば ともかく➡
御前会議は さっき 総理がお願いして➡
やっと決定したばかりだ それを今度は また➡
その時間を変更するなんてことは 不可能だ
ですが…
もしものことがあったら 取り返しがつきません
あしたの御前会議には 日本の運命が懸かっているんです
それは そうだが 今となっては方法が無い
あります
ある?
陛下が じきじきに お願いしたらどうでしょう
≪(空襲警報)
(近衛兵)空襲警報中は入れません
総理大臣の使いで 宮内省に緊急の用事があるんです
待ってください 問い合わせてみます
≪(空襲警報)
(小宮)小宮侍従です 総理秘書官の中島です
こんな時間に どうも いえ…
早速ですが
陛下の毎日のご予定は 侍従職で お立てしているんですか?
はっ? 例えば あしたの ご予定を➡
変更していただきたいような 場合は➡
どうすればよろしいんでしょう?
どうしても 変更しなければならない➡
特別な事情が起こった場合は➡
侍従長と内大臣とで協議の上 決定することになっていますが
特別な事情が 起こる気配があるんですが
気配? そうです
抗戦派の軍人たちが 事を起こすおそれがあります
御前会議の時間を繰り上げて いただけないでしょうか?
さあ…
侍従武官から そのような気配があることは➡
何も聞いておりませんし➡
それが事実としても…
時間が時間ですし
困難なことは よく分かっております
そうする以外 この危機を 乗り切る方法が無いのです
御前会議までに あと12時間しかありません
しかし そういうことは 前例がありませんから
前例が無いからこそ こうして お願いに来てるんです
内大臣に お取り次ぎください お願いします
♬~
(ドアが開く音)
(内大臣)大変 待たせましたな
何しろ 時間が時間だったのでね
はあ どうも
安心したまえ 陛下は ご承知くださったよ
ありがとうございます
≪♪(ピアノ)
♪~
それ お父さまのでしょ? うん
どうしたの?
しまっておくより 腰に下げていたほうが➡
いつも 親父と一緒にいる気持ちに なるだろうと思ってね
ほう もう カンナが咲いていたんだな
初七日には来てくれると思ったわ
軍務が忙しくて 来られなかったんだ
≪♪~
とうとう 二人っきりの きょうだいになったね
まさか 二郎さんが➡
こんなに早く死ぬとは 思わなかったわ
軍人の俺より先に死ぬなんて
よくよく 運の悪いヤツだ
ねえ 一郎さん お父さま よく言ってらしたわね
「軍人が 政治に 首を突っ込むのは間違いだ」
「軍人が政治を動かして 国が栄えた ためしが無い」って
覚えているでしょう?
お願いだから お父さまの言ってらしたことを➡
もう一度 よく考えてみて
難しいことは分からないけど➡
世の中には 1人や2人の力では➡
どうにもならないことが あるんだと思うわ
あなたも言ったじゃないの
私たち もう二人っきりなのよ ねっ お願い
自重して
≪♪~
姉さん… ≪(空襲警報)
叔父ちゃん B-29 やっつけてよ
よし やっつけてやる
≪(爆撃機の飛行音)
あそこ
(爆発音)
大丈夫かしら
紙の爆弾だよ
じゃあ 義兄さんによろしく
叔父ちゃん 今度きっと オートバイ乗せてね
よし お利口にしてたらな
じゃあ
(明)さようならー (敏子)一郎さん
ただ今 宮中より お電話がありまして➡
陛下じきじきの お召しによる御前会議が➡
開かれることになりました 至急 宮中に お越しを願います
♬~
♬~
事態は極度に 憂慮すべき現状におきまして➡
私は戦争終結の 最も よき機会であり➡
ポツダム宣言を無条件で 受諾すべきであると考えます
もし この時機を失えば➡
戦争の参加は もとより➡
国家の存立すら帰しえないものと 信ずるものであります
私は無条件降伏には あくまで反対であります
陛下の尊厳を守り 国体を全うする立場より➡
ポツダム共同宣言は 絶対に容認できません
陸軍には まだ余力が残っております
本土周辺の決戦において 敵に打撃を与え しかるのち➡
我がほうに有利な条件をつけての 和平交渉なら いざ知らず➡
成すところもなく 屈辱的降伏を受諾したならば➡
国内 軍官民の失望はもちろん➡
外征4か年➡
海外に勇戦奮闘を続けてきた 将兵の心中を推し量るとき➡
陸軍大臣といたしましては➡
到底 忍び得ざるところであります
(はなをすする音)
参謀総長に お願いします
私は陸軍大臣と 同じ意見であります
(大木)軍令部総長に お願いします
私も陸軍大臣に賛成いたします
列席者の意見は おおむね 出尽くしましたが➡
お聞きおよびのとおり 結論を得ない状態で➡
誠に 恐懼に堪えません
この上は 畏れ多いことでございますが➡
陛下の御聖断を仰ぎ➡
本会議の結論といたしたく 存じます
総理! お待ちください
意見は まだ 出尽くしてはおりません
♬~
(閣僚たちのすすり泣き)
♬~
(大木)陛下は日清戦争直後の➡
三国干渉当時における 明治大帝の苦衷を思い➡
耐え難きを耐え 忍び難きを忍び➡
一致協力して国家の再建を 期したいと仰せられた
更に お言葉を続けて➡
今まで 何も知らずにいた一般国民が➡
この決定を聞いたら さぞ 驚くであろうし➡
海外駐留の将兵の動揺は より一層 大きかろう
万一 不幸な事態が突発したら 取り返しがつかない
それを防ぐために 自分としてできることがあれば➡
なんでもする
マイクの前に立って➡
直接 国民に呼びかけてもよいと 仰せられた
陛下が ご自身で➡
マイクの前に お立ちになるんですか?
ご自身で 終戦のご詔勅を お読みくださることになった
(すすり泣き)
君は 情報局総裁に協力して➡
放送局との打ち合わせ 録音準備➡
放送時間の決定などを頼む はっ
≪(一郎たち)入ります!
閣下は無条件降伏を 承認なさったのですか?
俺は陸軍の代弁者として➡
主張すべきことは あくまで主張した
しかし 御聖断が下された以上 潔く それに従ったのだ
君側の奸によって 作為されたものに➡
御聖断と見なすことはできません
何を言う!
お前は陛下の軍人であることを 忘れたのか
(小島)閣下! たとえ 御聖断は下ったとしても➡
ご詔勅は まだ発表されておりません!
(石山)皇国3000年の歴史を 保つために ご決議を願います!
(加賀)閣下さえ立ってくだされば 全陸軍は…
いかん!
全陸軍一兵に至るまで 軽挙妄動は許さん
どうしても やると言うなら➡
まず この俺を斬ってからにしろ
閣下 我々は たとえ御聖断が 下りましても 断じて降伏せず➡
あくまで聖慮の変更を願うための 行動を起こします
待て!
≪(副官)閣下
東部軍司令官閣下と 近衛師団長閣下が➡
お見えになりました
(山中)遅くなりました
(林)今 うちの将校に会いました
それで ご足労願ったんだ
まあ かけてくれ
陛下からの頂戴物だ
まあ やってくれ (山中・林)ああ…
今日の御前会議において➡
無条件降伏 受諾の 御聖断が下ったことは➡
知ってのとおりだ
自分は陸軍大臣として 言うべきことは言い➡
主張すべきことは あくまで主張した
しかし いったん 御聖断が下ったからには➡
帝国軍人として➡
潔く それに従うべきだと思っている
ところが 今 やって来た若い将校たちは➡
今回の御聖断を 君側の奸によるものとして➡
直接行動により➡
聖慮の変更を 願おうとしておるんだ
そのような動きのあることは 私も知っておりました
陸軍部内から 不祥事件が起こったら➡
陛下に対して 申し訳がない
万一の際は 君たち2人の力で 食い止めてくれるよう➡
くれぐれも お願いする
分かりました
誓って 師団長の責任を果たします
頼む
≪(ノック)
中島君は まだ帰らんか?
≪(陸軍大臣)失礼します
(大木)これは どうも
秘書官だと思ったもんですから
自分は➡
総理に協力しなければならぬ 閣僚の一人でありながら➡
陸軍の意思を代表する立場上➡
強硬な意見を述べて 総理と対立したことについては➡
大変 申し訳なく思っております
何をおっしゃる あなたの気持ちは➡
分かりすぎるほど 分かってるつもりです
日本の前途を思う点では➡
あなたも私も 完全に一致してるのですよ
畏れ多いことですが➡
御前会議で 陛下がお言葉を賜りながら➡
幾たびも お涙を お拭きになるのを見て➡
自分は日本の復興を 固く信じました
あなたもですか
(陸軍大臣)これは 到来物ですが…
自分は やりませんので➡
総理に吸っていただきたいと 思って持ってきました
ほう ハバナですな
おお… いい匂いだ
≪(ノック)
あっ… 失礼いたしました
いいんだ いいんだ
では 失礼します
ありがとう 当分 楽しませていただきます
しっかりやってくれたまえ
(ドアが閉まる音)
いとま乞いに来てくれたんだよ
(情報局総裁)陛下のお声が 録音されるなどということは➡
まったく 夢にも考えられなかった
正午放送ということに 決まったが➡
少しでも早くという気持ちだよ
(放送協会会長) 詔勅をお読みになる時間は どのくらいですか?
大体15分ぐらいらしいが➡
陛下のお手元から まだ戻ってこないから
あっ 中島君 ご詔勅の草案は まだかね?
はあ… 録音の準備は どうですか?
そうですね あと15分ほどで 完了すると思います
(白井)近衛師団が決起すれば➡
全国200万の精鋭は 必ず 本土決戦に立ち上がります
近衛師団は陛下直属の軍隊である
聖断が既に下されている今日➡
陛下のご意思に背いて 兵を動かすことはできん
御聖断は 陛下のご意思ではありません
命令案は準備してまいりました
お願いします
(林)いかん!
たとえ陸軍大臣 参謀総長の 命令であっても➡
聖旨に背くことは 断じて拒否する
近衛師団は陛下の お言葉によってのみ行動するのだ
閣下 かつて 侵されたことのない国土が➡
外敵に蹂躙されるのを➡
手をつかねて見ていなければ ならないのでありますか
バカ者! 帝国軍人は陛下の公方だぞ
まして近衛師団の将校である 貴様たちが➡
陛下のご決断に反して 軽挙妄動に走るとは何事だ!
(小島)閣下!
閣下は 本当に 決起のご意思はありませんか?
むろんだ
もう一度 考え直してください
くどい! 貴様たちこそ反省しろ!
(副官)何をするか!
どけ! 邪魔するな!
(副官)うっ…
んんっ…
自重しろ 貴様たちの軽率な行動が 日本を危うくするんだ!
(加賀)おい!
やったか…
今 陛下の玉音による 終戦のご詔勅が録音され➡
今日の正午 海外にまで放送されます
何? 玉音が放送されたら万事休すです
よし! 即刻 行動を起こす
近衛第1連隊 週番指令を呼べ
(小島)内大臣を捜し出す一方➡
なんとしても 録音盤を奪取するんだ
(白井)おう 週番指令か
「近衛師団 命令 8月15日 午前3時」
「一つ 諸般の情勢より察するに➡
米軍の本土上陸は 近日中と予測せらる」
「一つ 師団は主力をもって 宮城を遮断し➡
陛下を守護し奉らんとす」
「一つ 近衛第1連隊は…」
♪(ラッパ)
≪♪~
(下士官たちの号令)
(兵士たちの点呼の声)
(下士官の号令)
(馬のいななき)
気をつけー!
(一郎たち)頭ー 中!
直れー!
(ドアが開く音)
陛下の お出ましです
(馬のいななき)
よろしくお願いいたします
確かに お預かりします
♬~
♬~
(兵士の号令)
(兵士たちの報告の声)
(兵士の号令)
♬~
(白井)止まれ! 職員を1か所に集めろ!
(兵士)誰かいるか!
撃てー!
撃てー!
もしもし 衛兵司令所?
今 兵隊が宮内省へ侵入した ≪(銃声)
もしもし もしもし もしもし! もしもし?
(兵士)どけ!
≪(連射音)
(銃声)
≪(連射音)
(加賀)撃て (銃声)
待て!
(銃声)
≪(銃声)
≪(ドアをたたく音)
≪(小宮)小宮侍従です 開けてください
(施錠音) 近衛兵の反乱ですよ
陛下の録音盤を 狙うに違いありません
≪(ドアをたたく音) ≪ 開けろ! 開けろ!
≪ 誰もおらんのか! おい! (小宮)三原さん
≪(ドアをたたく音) ≪ 開けんか! 開けろ!
放送局員だな (局員)そうです
陛下の録音盤は どこにある
知りません 知らん?
機材の箱を開けろ
局員は これだけか? そうです
連れ出せ (兵士たち)はっ
(兵士)出ろ ほら (兵士)おい
(兵士の号令)
(兵士)止まれ! 止まれ!
(下士官)どなたですか? (情報局総裁)情報局総裁だ
おい 連絡に行ってこい! (兵士)はっ!
(職員)あそこです
(銃声)
ちきしょう
(下士官)この中に お入りください
私語は禁じます
君
いつまで ここにいるんだ 自分には分かりません
別命のあるまで 監視するように言われました
こんな時間に 諸君を騒がせて すまん
ただ 陛下の録音盤が どこにあるか教えてもらいたい
知らぬはずはないでしょう
(職員) 私は陛下の録音に立ち会って おりませんので 存じません
じゃあ 録音に立ち会った者は誰です?
(職員)存じません
よーし… やれ! (兵士)はっ
≪(連射音)
もうダメです 持ち出して なんとか逃げましょう
ええ
(解錠音)
(施錠音)
(木崎)内大臣は いたか? (兵士)ダメです
この中の どこかにいるはずだ
≪(ドアをたたく音) ≪(木崎)開けろ! 開けろ!
隠れましょう (小宮)出口はあります
≪(銃声)
さあ
(たたく音) (小島)バカ者!
この部屋は一切 立ち入り禁止だ!
出てけ! (兵士たち)はっ
♪(オルゴール)
(兵士)チッ… ちくしょう 戦地なら こうだ
やーっ!
そろそろ夜が明けるな (小島)ちくしょう!
これだけ捜しても 録音盤も内大臣も見つからんとは
(加賀)事によると 宮城の外へ 出てしまったのかもしれん
いや それほどの時間は なかったはずです
少なくとも 宮城内の どこかにいる
録音盤も あるいは…
今 情報局総裁 その他の官僚が 坂下門から出ようとしたので➡
ひとまず 衛兵所に連行して 監視をつけておきました
♬~
情報局総裁ですね?
そうだ けしからんじゃないか 君
いつまで こんな所へ 閉じ込めておくつもりだ
我々の目的が完遂するまでです
内大臣は ご一緒じゃありませんでしたか?
見たとおりだ
どこへ行ったか ご存じありませんか?
知らんね
録音盤は どうしました?
録音盤?
陛下の玉音です
(情報局総裁)知らない
我々は陛下を 玄関までお送りすると➡
そのまま すぐ 車で下がってきたのだ
ほかに録音に立ち会った者は 誰です?
むろん 内大臣はいたでしょう そのほかには?
そう… 侍従職らしい人はいた
しかし私は 陛下の録音に 気を取られていてね➡
その人を よく覚えていない
あなた ちょっと来てくれ
♬~
録音盤は どこにあるんです?
義兄さんは知ってるはずだ
知らんよ
仮に 知っていたとしても 言うと思うか?
頼む 教えてくれ
録音が放送されたら 我々の行動は 水の泡だ
我々は 日本の将来のために これが最上だと信じて…
そうじゃない
君たちのやっていることは➡
日本を壊滅に突き落とす以外の 何物でもないんだ
戦えば戦うだけ 人命と国土を 失うんだということを➡
よく考えてくれ じゃあ 聞きます
屈辱的降伏をして 連合軍が 日本の領土を占領したら➡
果たして どういう結果になるだろうか
あなたは 敵を信用できるんですか?
僕としては 君たちの やろうとしてることより➡
連合軍の降伏条件のほうを 信用するよ
あなたには日本人としての誇りが 無いんですか
君たち軍人にだけしか 通用しない誇りなぞ➡
必要じゃないよ
君が本当に国を愛するんなら➡
今 日本が直面している現実を もっと冷静に…
理屈は もうたくさんだ 理屈じゃない!
このまま突き進んでみろ
君は必ず どうにもならないハメに 追い詰められる
今のうちなら まだ…
義兄さん
自分は どうせ死ぬんです
だが あなたも死んでもらいます
バカ!
お前や俺が 死ぬとか死なんの問題じゃない!
日本という国があるかぎり➡
そこに日本人が生きて いかなければならないんだぞ
(伝令)中隊長殿!
内大臣が見つかりましたので すぐ おいでいただきます
よし お前は この人を衛兵所へ連れてけ
はい!
参りましょう
ふっ! ぐうっ…
(うめき声)
≪(銃声)
(白井)やむをえず 非常手段に出ましたことを➡
お許しください ぜひとも➡
聞いていただかねばならぬ お願いがあるのです
昨日の 御聖断を取り消し➡
あくまでも戦争を継続せよとの お言葉を賜りますよう➡
閣下から陛下に おとりなし願います
陛下がいったん ご命令あそばされたことは➡
どんなことがあろうとも 覆すことはできない
皇国3000年の誇りを 保つためには➡
覆していただくより ほかに無いのです
それに あなたは録音盤が どこに保管してあるか➡
ご存じのはずだ 知らんとは言わせません
おい 三原君 僕だ
≪(解錠音) ≪(兵士)異常ありません!
≪(施錠音)
録音盤は? ここにあります
ハァ…
この部屋は大丈夫か?
今んところは 30分おきに 巡回の兵隊が回ってくるだけです
あと7時間か
≪(兵士)敬礼!
(三原)放送に差し支えるから 録音機を出さしてくれと➡
頼んでみたらどうでしょうか
厳重に調べるだろうし…
第一 そのことを 誰に頼みにいくんだ?
どうでしょう 下士官兵の中には➡
必ずしも この反乱に 従順な者ばかりとは考えられない
その誰かを説得して 音盤を持ち出させては?
なるほど それも手だ
いや それは あくまで 預かる人の問題だ
一か八のバクチはできない
録音盤を見つけられたら 万事休すだ
時間は まだ3時間ある
もし 録音盤の在りかを知り➡
また その保管者を知りながら ウソをついてることが分かったら
ただじゃ済まさんぞ!
閣下! あと3時間です
お口添えがダメなら せめて 我々の意のあるところを➡
陛下にお取り次ぎくださる だけでも お願いします
≪(兵士)入ります! (ドアが開く音)
(兵士)女官2名 お文庫へ交代時間なので➡
行かせてくれと 申し出ておりますが
(三原)あの2人に 音盤を預けたとしたら…
(小宮)それは無理です お文庫以外の通行は不可能ですよ
ギリギリ あと1時間以内に ここを出ないと間に合いませんよ
出るためには まず 入れることだ 入れる?
この状態では いくら考えても 出る方法が無い
誰かを入れて この状態を崩し➡
出る機会を作ることしか 無いと思うんだ
しかし 一体 誰を入れるんです?
小宮さん
確か 宮城の中に病院がありましたね
ええ あります
川上さんとおっしゃいましたね
(川上)はあ
あなた方に 一役 買っていただきたいんです
ぜひ お願いしたい
急病人だって? (兵士)はあ
明け方から 急におなかが痛いと言って➡
苦しみはじめたのです
たぶん 急性盲腸炎ではないかと 心配で…
恐れ入ります➡
宮内省病院の大森先生を すぐ呼んでいただきたく存じます
お前 病院へ行ってこい (兵士)はっ
大森先生ですね? (川上)はい
(秒針の音)
≪(ノック) ≪(兵士)先生を連れてきました
(解錠音)
ご苦労さまです (大森)はい
すいません 男の方は➡
診察が済むまで 入らないでください
(施錠音)
患者は寝室ですね? (川上)はあ… はい
ご苦労さん (大森)患者は?
あなたに ちょっと頼みがあるんだ
小宮侍従 これは一体…
病人は どうした? (兵士)はっ
ただ今 医者が診察しております (小島)うん
患者は腹膜炎を併発してますので すぐ手術を要します
≪(兵士)小島少佐殿! 白井中佐殿がお呼びです!
よし
(施錠音)
どうした (看護師)女官が急病です
貴様…
なぜ すぐ報告せんのだ!
(下士官)申し訳ありません 今まで捜したのでありますが➡
見つかりませんでした 何?
≪(ラジオ:アナウンサー)本日正午 天皇陛下の重大放送がございます
≪ 国民の皆さまは 一人残らず➡
ラジオの前にお集まりください
繰り返します
本日正午 天皇陛下の重大放送がございます
国民の皆さまは 一人残らず ラジオの…
(ラジオを消す音) やれるもんなら やってみろ
あと1時間
まさか録音盤を持ち出したんでは (石山)絶対ありません
しかし ラジオで はっきり 予告しとるということは…
大丈夫です 放送関係者はもちろん 宮内省の職員も 誰一人
3人 出とるよ 女官がな フンッ
♬~
♬~
1人 連れてかれたのに まだ3人いるじゃないか!
ちきしょう やっぱり そうだったのか
うっ!
♬~
うっ…
くっ…
(銃声)
≪(ドアが開く音) ≪(下士官)やあっ
くっ! この野郎
石山 貴様は病院へ行って なんとしてでも➡
録音盤を取り押さえてくれ (石山)はっ
いや それは 自分に行かせてください
川崎 貴様は放送局へ行ってくれ
川崎と自分は 木崎中佐殿と共に➡
放送局を固め 絶対に放送を食い止めます
白井中佐殿と加賀少佐は 宮内省を頼む (加賀)よし
どの門にも全部 兵隊がいて➡
出ることは不可能ですね
ここで手術ができないとして 外へ運び出す方法はないですか?
それこそ疑われますよ
この北桔門は 使っていませんね 小宮さん
(小宮)えっ? ええ
(大森) したがって 兵隊もいないでしょう
そうだ
≪(複数の走る足音)
兵隊が来ました
地下室から逃げてください
お願いします (大森)気をつけて
(石山)鍵!
(連射音)
(石山)よし!
どうした 患者は! 逃がしたな
≪(物音)
♬~
♬~
(石山)待てー!
♬~
(兵士)止まれ!
東部軍司令官の山中だ! 将官旗が目に入らぬか!
指揮官は どこにおるか! (兵士)宮内省におります!
(下士官)捧げー 銃!
(下士官)捧げー 銃!
♬~
(下士官)立てー 銃!
すぐ兵隊を連れて帰れ! (連隊長)はっ?
連隊長が 一部将校の作った偽命令に➡
躍らされるとは何事だ! (連隊長)えっ?
♬~
(馬が鼻を鳴らす音)
弁解は聞かん!
貴様たちは直属上官である 師団長を殺し 偽命令を出して➡
陛下の軍隊を侵すとは もってのほかだ!
陸軍大臣は 全陸軍の責任を取り➡
貴様たちの軽挙妄動を 案じながら➡
割腹自決されたぞ!
お前たちの気持ちは 分からんとは言わん
しかし陛下は 我々以上に お苦しみになり➡
我々のために 泣いて聖断を下されたのだぞ
俺は今 陛下にお詫びを 申し上げてきた
陛下は 「あの将校たちは どういうつもりなのか」
「この私の切ない気持ちが 分からないのであろうか」と➡
しみじみと 仰せられたぞ
事をここに至った以上 帝国軍人として➡
俺も お前たちも 潔く破れようではないか
閣下 我々も 祖国日本の将来の身を➡
考えていたのだということだけは 信じてください
このたびの行動は 全て私の責任であり➡
深く お詫び申し上げます
(銃声) (馬のいななき)
(兵士たち)やあっ! やあーっ!
出てこい! 隠れても無駄だ!
≪(物音)
≪(物音)
(馬のいななき)
(兵士)いたぞ!
≪(馬が走る音)
(馬たちのいななき)
(銃声)
録音盤を渡せ!
私の命のあるかぎり➡
渡さない!
よし じゃあ 覚悟してもらう
(戸が開く音) (山中)待て!
将校たちの反乱は鎮圧されたぞ!
首相秘書官ですな 録音盤は無事ですね?
大変 迷惑をかけました すぐ放送局へ行ってください
部下をつけさせますから
はあ どうも
これを放送しろ すぐにだ
(放送部長) 局としては東部軍司令部の 許可がありませんと…
よし じゃあ 俺が放送する
このマイクを使えるようにしろ
早くせんか! おい!
全国同時放送ですから 時間変更の際は➡
各局に連絡を取ってからでないと 電波は出ませんよ
ウソつけ!
あと10分で玉音放送だ
玉音放送は全国向けのはずだぞ
(兵士)中隊長殿 東部軍より➡
司令官閣下の命令を 伝えに来ております
何しに来た!
(下士官)軍司令官閣下よりの 命令を伝達します
ただちに放送局より退去せよ
(木崎)我々は 既に 軍司令官の権限外で行動している
帰ってくれ!
その答えの結果は 承知の上でしょうな
(木崎)もちろんだ (川崎・小島)もちろん
(下士官)構え!
私は 陛下の音盤を持参した
陛下のお声を国民に お伝えしなければならないんだ
通してくれたまえ その必要はない!
帰れ!
君は 陛下のお言葉を遮るのか
そのお言葉は 陛下のご真意ではない
君は まだ それを言うのか
皇居内にいる君たちの同志は 東部軍指令官の説得に服し➡
白井中佐は責任を取って 自決したぞ
白井中佐殿が… そうだ
君たちのクーデターは 完全に失敗したんだ
もう 君たちも軍人ではなく➡
国民の一人として 現状をよく自覚してほしいんだ
義兄さん…
軍人なくして国家は…
無条件降伏なんだよ
1億国民を救い 日本を生かすためには➡
この ご詔勅を 放送する以外にないんだ
さあ どいてくれ
(下士官)撃ち方 やめ!
待て!
んっ! うっ…
くっ…
(銃声)
♬~
中島さん 放送時間です
急いでください
♬~
一郎君
戦争は終わったんだよ
自重しろよ
放送が済むまで 待っていてくれ
♬~
いいね
♬~
♬『君が代』
♬~
♬~
(天皇)朕 深く 世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み➡
非常の措置をもって 時局を収拾せんと欲し➡
ここに忠良なる爾臣民に告ぐ
朕は帝国政府をして… (銃声)
(天皇)米英支蘇 四国に対し➡
その共同宣言を受諾する旨 通告せしめたり
そもそも帝国臣民の康寧を図り➡
万邦共栄の楽しみを共にするは➡
皇祖皇宗の遺範にして 朕の拳々 措かざる所➡
さきに米英二国に 宣戦せる所以もまた➡
実に帝国の自存と 東亜の安定とを庶幾するに出て➡
他国の主権を排し 領土を…
♬~
♬~
♬~
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