All language subtitles for 必殺スペシャル 仕事人大集合

(拍子木の音)

(主水)東西 東西｡・

必殺シリーズ10周年記念演目を・

ご高覧たまわらんものと・

このテレビジョンの前に・

あつく御礼をば申し上げます｡・

うつろいやすき世の中に・

必殺シリーズの大人気｡・

これも ひとえに・

ござりまする｡・

趣向を凝らしての２時間半｡・

題しまして『必殺仕事人大集合』・

一夜の夢と｡・

前口上は さておき｡・

のさばる悪を何とする｡

天の裁きは待ってはおれぬ｡

あてにはならぬ｡

(加代)闇に裁いて 仕事する｡

私は知らぬ｡

一生に一度の不作もの｡

見捨てておけぬ・

たった１人の亭主じゃもの｡

(おりく)まずはともあれ・

ご見物のほどを・

ずいっとお頼み申し｡

(一同)南無阿弥陀仏｡

(拍子木の音)

(男)よし｡

(佐山)行くぞ｡

(小者)はっ！

(佐山)止まれ 止まれい！

(銃声)

(テオ)Come on. Come on.

(佐山)くそ～！

(外国人たちの笑い声)

・～

(せん)りつ りつ…｡

(せん)何か見えましたか？

(りつ)あの 顔が ほんの少し…｡

(せん)何 顔が見えた｡ で あの…｡

やはり 赤毛の異人さんは・

しておりますか？

顔は顔でも 馬の顔がほんの少し｡

何 馬の顔！

嫌というほど見ておりまする！

・(町人)オランダさんが通るぞ！

(町人)あっちだ｡

りつ りつ 早く こっちに｡

(主水)母上 りつ！

(せん)婿殿まで・

みんな おんなじだわ｡

この江戸屋さんという大店は・

長崎でオランダと取引をしてる・

(主水)それがどうかしましたか？

必ず ここに来るはずと・

あのとおりの人では・

ここに こうして番をとります｡・

誰が来ても譲ってはなりませぬぞ｡

ここへは来ませんぞ｡

(せん)はっ！

(主水)いや ｶﾋﾟﾀﾝの一行はですね｡

真っすぐ お城へ 直行して・

品川御殿山の東漸寺泊まりです｡

あなたは どうしてここへ？

いや 私は仕事ですよ 仕事｡

お城へ上がるんでね｡

その警護ですよ｡

じゃ 留守を頼みますよ｡

(りつ)そうしましょ｡

はい いい子 いい子｡

ありさまだそうだ｡

１人残らず 切り刻まれて…｡

(町人)人間の仕業じゃねえって｡

(ご用聞き)見せもんじゃねえだろ・

下がれ 下がれ！

(喧噪)

江戸に いなさったのか…｡・

おい どいてくれ｡ 通してくれ！

(町人)本当に ひどい｡

(勇次)通してくれよ！

・(戸の閉まる音)

こりゃ 来てたのかい｡

ご無沙汰しちまって｡

(鹿蔵)さあさあ 上がんなさい｡

(伊八)へい｡

おかみさんの具合は どうだね？

はっきりしませんが・

悪くもなってないみたいで…｡

(鹿蔵)そうかい それは よかった｡

(伊八)その節は 色々と…｡

(鹿蔵)いや 水くさい｡

少々 金ができましたもんで｡

とてもじゃねえが 足りませんが・

収めておくんなさい｡

(伊八)元締！

教えてくれないか？

(伊八)それは ちょっと…｡

言ったら どうする？

あっしも 仕事人の端くれです｡

他人にしゃべるようなことは…｡

おっしゃるんで？

今 江戸屋を見てきたからだ｡・

お前さんの仕事だと言ったら・

このお金は受け取れないよ｡・

あんなむごい仕事をするやつは・

仕事人の恥さらしだ｡

(伊八)なるほど それで…｡・

それでしたら ご安心ください｡・

あっしの仕事じゃございません｡

(鹿蔵)言うことは それだけか？・

この金は何の仕事だ？

分かりました｡

お話しします｡

・～

・(戸の閉まる音)

(勇次)八丁堀！

久しぶりだな｡

お前 すぐ 江戸を出ろ｡

ゆうべの 江戸屋の一件だがな・

指１本 触れた跡はねえ｡

かといって あれだけの殺しだ｡

分かりませんじゃ済まされねえ｡

こうなったら 後は お決まり｡

江戸屋一家皆殺しの下手人は…｡

(勇次)仕事人か｡

そんなもんだ｡

１人残らず しょっ引いてるぞ｡

なぜ知らせに来たんだい？・

昔は ともかく・

何の関わり合いもねえんだぜ｡

そら まあ お前の言うとおりだな｡

奇麗に足洗ったんだ｡

大事に・

心に決めたんだ｡

江戸にいてもらっちゃ困るんだ｡

こっちまで 火の粉・

かぶんなくちゃなんねえ｡

分かったかい？

江戸 出そうにもねえな｡

(勇次)早く 帰れ｡

強情な野郎だ 勝手にしやがれ｡

おっかあから 便りあったか？

(勇次)いや あれっきりだ｡

そうか…｡

どうしてやがんのかな？

とにかく 悪いことは言わねえ｡

早いこと 江戸 出ろよ｡

・～

(嘉平)はい｡・

花魁になってくれたら・

この私は 蔵が建つ｡・

ハハハハッ｡

言ってみましょうか？

それは ご勘弁を・

ということが分かったら・

ハハハハッ｡・

お座敷へ戻りましょう｡・

さあさあさあ どうぞ｡・

どうぞどうぞ どうぞ｡

(セクンデ)素晴らしい｡

ころを見て 宿舎にお帰しする｡・

(嘉平)はい｡

なにぶんにも 初めてのご来日で・

日本のことは 何もご存じない｡・

心きいた女を選ぶようにとの・

(嘉平)心得ております｡

(男)大引けでござい～！

・(男)大引けでござい～！

・～

(サイレンサー付きの銃の銃声)

(サイレンサー付きの銃の銃声)

(銃声)

(ｾｸﾝﾃﾞ)大変 大変・

誰か 助けてください｡

(田中)これは 単純な事件です｡・

花魁のこれでした｡・

間違いありません｡・

忍び込んで カピタンを殺したが・

殺されてしまった｡・

筋が通ってるじゃありませんか｡

(田中)中村さん！・

また 何か言いたそうですね｡

いえ 別に｡

でき過ぎてるような気がします｡

あなた・

分かっていないんですね｡・

襲ったことが 明るみに出たら・

なりかねませんよ！・

一方 オランダ側にしてみても・

あのような殺され方をしては・

少々 都合が悪いでしょう｡・

つまりですね ケンカ両成敗｡・

長旅で 疲労のあまり病死｡

(田中)いいじゃありませんか・

大きな声じゃ言えませんがね・

それで納得しているんですから｡

余計な脳みそは使わずに・

はあ！

よろしくお願いしますよ！

(一同)はあ｡

ふ～ん 疲れた｡

お尋ね申しまするが｡・

こちらで ございましょうか？

(鹿蔵)はい｡

篠原の叔父でございますが｡

(鹿蔵)はい｡

お出掛けでございますが・

さあ どうぞ 中で お待ちを｡・

さあ どうぞ｡

(足軽)さあ こちらへ どうぞ｡

(篠原)うん｡

お待ちでございます｡

(篠原)何 叔父が来たと？

そう申しておりましたが｡

長崎生まれの 長崎育ちだぞ｡・

江戸に叔父など おらんぞ！

仕事人を わなにはめたね？

(篠原)だっ 誰だ…｡

カピタンを仕事にかけたそうだな｡

・(鹿蔵)しらを切っても無駄だ｡・

私は伊八から聞いたんだ｡

後始末は少々高くつくよ・

伊八には 女房 子供がいるんだ｡

(鹿蔵)1000両｡

そんな金は無い｡

(鹿蔵)そんなら つくれ｡

さあ 金のある所へ 行こうか｡

・～

(篠原)仕事人だ｡

(篠原のオランダ語)

・～

・(物音)

(ｾｸﾝﾃﾞ)篠原！

(ｾｸﾝﾃﾞのオランダ語)

・(お夕)お文・

お文｡

おっかさんが呼んでるよ｡

(お夕)ああ こんなに ぬれて…｡

(飛脚)あ～ 嫌な 雨だな！・

(お夕)はい｡

伊八さんのお宅ですね｡

うちの人 出ておりますけど｡

為替をお届けに上がりました｡

(お夕)為替？ あの お金ですか？

おっしゃいませんでしたが・

大変 厄介になったと言って…｡

ここに ちょっと印を｡・

何 爪印で結構ですから｡

(飛脚)じゃ 確かに｡

(お夕)おいで おいで｡

お金が こんなに来た｡

こんなに お金が…｡

ありがとう｡・

ありがとうございます！

・(ふすまの開く音)

・(銃声)

・(銃声)

ご苦労さまです｡

これですか？

これね 川底に沈んでたんですが・

浮き上がったんで｡

(医者)見てくれ 中村さん｡・

心の蔵に撃ち込まれていた｡

即死したろうに・

面白がって殺してるようだ｡・

並の人間のする仕業じゃねえ｡

・～

面白がって殺してるようだ》・

並の人間のする仕業じゃねえ》

・～

怠けてたわけじゃないんです｡

お船手同心殺しから始まった・

例の一連の事件で・

重大な手掛かりをつかみました｡

それより 中村さん！

重大な手掛かりをつかんだ…｡

言ってるじゃありませんか！

なるわけですから｡

あなたのことですから・

さぞかし 大発見でしょうね｡・

それより 中村さん！

おめでとうございます！

何がでございますか？

今月10日付けをもって・

長崎奉行所に 転勤になりました！

へっ なっ 長崎？

こんな人事異動は前代未聞！

いや 私も信じられません…｡

うまいことやりましたね｡

一財産つくれますからね｡

はい｡

どんな手を使ったんですか？

そんなものあるわけありません｡

長崎に遊びに行きますからね｡

そのときには よろしくね｡

・(勇次)八丁堀！

まだ 江戸にいたのかい？

やられたんだってな｡

５発ぶちこまれてな｡

もう ついてるんだろ｡・

そんなこと聞いて・

お前 どうするんだ？

東の元締｡・

虎のおやじさんと並ぶ・

闇の世界の総元締だ｡・

そのお方が やられたんだぜ｡

だから 敵討とうってのか｡

よせよせ お前には似合わねえぞ｡

おう… 気安く呼んでくれんなよ｡

もう 何の関わりもねんだ｡

長崎へ たつんだからな｡

ああ・

同心 中村 主水さまだ｡

教えてくれ｡

鹿蔵さん殺しについて・

どこまでいってるんだい？

何にも 分かっちゃいねんだ｡

ああ｡

ただな これは 俺の勘だが・

変なのが入りこんでるぞ｡

長崎なんて 嫌ですよ！

私は行きませんからね｡

誰が行くもんですか｡

長崎は異国じゃありませんよ｡

みんな異国です！・

この仏壇をどうなさるおつもり？

お向かいの鈴木さんとこで・

なってるんですがね｡

(せん)何をおっしゃいます｡・

恐れ多くも 権現様御開府以来・

み霊の眠るこの仏壇を・

人さまに預けるとは まあ…｡

これも お上の仰せですから｡

お前まで 婿殿と一緒になって・

情けない 情けない｡

はあ？

(せん)何をなさいます！

もう 分かりましたよ｡

送ってもらうようにしますから｡

とっても いいお話なんですよ｡・

３年も辛抱すれば・

軽く一財産できるとか！

婿殿！

長崎へ参りましょう｡

ご辛抱願います｡・

南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…｡

・・(三味線の演奏)

・～

(おりく)勇さん｡

(勇次)おっかさん お達者で｡

なっちまったんだってね｡

(勇次)どうして知ってるんです？

鹿蔵さんとだけは・

つなぎをとってたんだよ｡

俺や八丁堀のことを…｡

いつも 見ていなすったんだよ｡・

こんな姿になっちまって…｡・

手紙をもらったんだよ｡・

今 江戸じゃ 南蛮仕込みの・

まかり通ってるって・

書いてあった｡

南蛮仕込み？

飛んで帰ってきたけど遅かった｡

手紙には他に何か？

これから 大坂 行く｡・

大坂で決着をつけてやるつもりだ｡

鹿蔵さんのために？

(おりく)ウフフフッ｡・

当たり前じゃないか｡・

あるんだよ｡

(勇次)俺も 一緒に 大坂 行くよ｡

言っちゃいけないよ｡・

命懸けで向かっていったって・

分からない相手だ｡・

いかないよ｡

俺は一緒に行くぜ｡・

おっかさんの亭主だったんなら・

俺にとっちゃ 義理の父親だ｡・

親不孝はしたくねえからな｡

(おりく)お前さんって人は…｡

あちらに おいでの節は・

ぜひ お立ち寄りくださいませ｡・

空気はおいしいし・

ホントにいい所だそうで・

これで 私も長生きできますです｡

(せん)あっ ご丁寧に どうも・

それでは 皆さま ごきげんよう｡

(りつ)ごきげんよう｡

ありがとうございました｡

(一同)お気を付けて｡

・～

お風呂も沸いております｡

(せん)あ～・

(りつ)ちょっと あなた！

(せん)足が痛くて…｡

ぜいたくしてたら・

長崎まで 路銀がもちませんぞ｡

(せん)ぜいたくですって！・

たとえ 足の骨が折れようと・

歩いてみせますよ｡・

あ痛たたたたた…｡

(せん)あっ はい｡

母上｡

はい お世話になりますよ｡

(女中)３人さま ご案内！

いいことを聞きましたわ｡・

あの 刃物の傷にね 骨接ぎまで・

何でも治すというね・

すぐ近くに いるそうですよ｡

(せん)じゃ あの この足の痛み…｡

すぐ治りましょう｡

(りつ)じゃ 早速｡・

(せん)大丈夫 大丈夫｡

まったく 大げさなんだから｡

(女中)お疲れになったでしょ｡

あ～ 疲れました｡

(与市)竜は雲を呼んで竜巻と化し｡

タカは風に乗って 大空を舞う｡・

生きとし生きるもの・

天地の気というものが大切じゃ｡・

この気を失うとき・

生きる流れが止まる｡・

これなる者は 屋根屋だが・

不覚にも 地上18尺の所より・

腰のちょうつがいが 外れた！

(与市)オランダ語で言えば…｡

(与市のオランダ語)

一生 寝て 暮らさねば…｡

(与市)この名倉 与市に・

出会うたのが 幸せの始まり｡・

天地の気を吹き込んで・

見事に治してみせる！・

・(屋根屋の骨の鳴る音)

(与市)よ～し これで治った！

(屋根屋)ありがとうございました｡

(屋根屋)これで 助かりました｡・

ありがとうございます｡

さあ 次なる方は？・

う～ん｡・

それなる娘御！・

違う！・

昔 昔の娘御！・

だいぶ 顔色が悪いな｡・

予の前へ！・

(せん)無礼者！

放せ 放せ 放せ｡

・(せんの骨の鳴る音)

腰骨が曲がっとる｡

(せんの悲鳴)

・(女)熊野権現は いらんかね？・

熊野権現 恋の辻占いだよ｡・

ねえ～ 恋の辻…｡

八丁堀～ 会いたかったよ…｡・

離れろ 臭えから！

たまんねえな お前の臭いは｡

(加代の泣き声)

どうしたんだよ そのなりは？

どうしたんだ？

(加代)持ち逃げされたの｡

(加代)うん｡

(加代)男｡

お前 男つくったのか？

おんなじじゃねえかよ｡

寄ったのとは違うよ｡

(加代)それよりさ・

八丁堀 こんなとこに いんの？

長崎の奉行所へ転勤になったんだ｡

(加代)ふ～ん｡

分かんねえな こら｡

(加代)ホントだね 久しぶりだね｡

まあ 大したことできねえけどよ｡

まあ これで 飯でも食え｡

(加代)優しいね 相変わらず…｡

絶対 声掛けんじゃねえぞ｡

いいな 分かったな｡

どこで 損するか 分かんねえ｡

これじゃ足りないよ…｡

・～

バカ 離れろ お前｡

お前 どこ行くんだ？

(加代)私も 長崎 連れてって｡

そんなこと できるかい｡

行くとこないんだもん｡

俺の知ったこっちゃねえやな｡

(加代)だったら 私の勝手でしょ｡

・(せん)婿殿！

(せん)何をぐずぐずしてるのです｡

はい｡

(せん)りつ！ 離れなさい！

・～

(せん)ほら りつ｡

(男)どけ！

(男)どけどけ！

マリア捜しなさい！

(清次)はい｡

女の足は遠くまで行かん｡・

みんなに 言えい！

(清次の英語)

・～

うわ～！ 化け物だ！

(加代)化け物だ 化け物だ｡

(加代)はっ！

(加代)秀さん…｡

・～

・～

(親分)今夜は蒸し暑いな｡

・～

16文いただきましょうか｡

(半兵衛)大勢の人から・

(親分)誰だ てめえは！

(親分)船頭？

16文だ｡

(親分)何？

・～

(秀)誰だ？

(秀)何だ てめえ 出てけ｡・

出てけよ！

(秀)お前 追われてんのか？

どっから来た？

(秀)何だよ 言葉 分からねえのか｡

・～

(マリア)Thank you well.

(マリア)私 マリア｡

(秀)はあ？

(マリア)マリア 私…｡

お前の名前 マリアってのか｡

(マリア)マリア…｡

俺はな 秀っつうんだ｡・

(マリア)秀？・

秀｡

・(銃声)

・(銃声)

(半兵衛)出ろ ずらかるんだ｡

(半兵衛)やっぱり 来やがった｡

うろうろしてやがったからな｡・

何があったんだ？

(秀)さっぱり 分からねえや｡

俺は これを届けに来たんだ｡

仕事料だったら２両のはずだ｡

お前の命の助け料だ｡

(半兵衛)さあ これで お別れだな｡

俺とは もう組まねえってのか？

短い方が楽しいぜ｡

長生きしろ｡

(秀)待ってくれよ｡

(マリア)秀｡

(秀)半兵衛さん｡

(マリア)長崎｡

(マリア)長崎｡

(秀)長崎がどうしたってんだよ｡

(マリア)私 長崎…｡

連れて行けってのか？・

できるかそんなこと｡

ついてくる気なんだよ？

(マリア)長崎｡

分かんねえのか！

(マリア)長崎｡

長崎｡

まったく もう｡

(秀)違うんだよ 礼が欲しいとか・

ちょっと放せよ｡・

この日本っていう国は・

目ん玉の色が違うの・

長崎まで行けるわけねえだろ｡・

分かったか？

(加代)秀！

いらんかえ～｡・

ええ 熊野権現のお守り…｡

母上…｡

母上…｡

よろしゅうございますか？

(せん)あ～ とろけそうじゃ～｡・

思いもしませんでしたよ｡・

横に おなりなさい｡

(りつ)はい！

そう そう そこそこ…｡

(せん)婿殿 もっと ここの所…｡

(りつ)あなた もうちょっと下｡

(せん)無礼者！

(加代)部屋を間違えました｡・

私は梅の間です｡・

秀さんと待ってます｡・

大事な用事 秀さんと・

分かりました？ 失礼｡

・(ふすまの開閉音)

何だ ありゃ？

(ふすまをたたく音)

(秀)よう｡

何のまねだ！

何だ こりゃ？

連れてってやってよ｡

(秀)事情 分からねんだけどよ｡・

知ってるか？

(マリア)長崎 バタビア｡

船に乗って そのﾊﾞﾀﾋﾞｱってとこに・

行きたかったらしいんだよ｡

う～んと バタビアな…｡

バタビアってのはな・

ず～っと南の方だぞ｡

オランダ商館の本店のあるとこだ｡

オランダ人じゃねえのか？

そんなら 話は分かる｡

江戸で殺されたカピタンの妹だ｡

オランダの娘御が・

この宿にいるというのですか？

いや 私も驚きました｡

宿場役人に届けて…｡

いや そこなんだ問題は｡

なあ りつ｡

私たちの手で・

連れて行くことができたら・

着任 早々の大手柄になる｡

それは気が付きませんでしたわ｡・

じゃ 早速 そのように…｡

異国の人を連れ歩いては・

(りつ)でも 届けてしまったら・

横取りにされてしまいますよ｡

どうでしょうね 母上｡

ここはひとつ割り切ってですな…｡

覚悟の上で・

連れて行きませんか？

(せん)いやいや これは難問題｡・

もう少し考えてみましょう｡

金一封を頂くか ろうに入るか｡・

頭が痛くなってまいりました｡・

婿殿 ほれほれ｡

はっ？ はい｡

(せんのため息)

(せん)難しい問題じゃ｡

八丁堀は？・

まったく とろい男なんだから｡・

じゃないか ぶん殴って・

あの男｡・

痛たたたた…｡・

痛いわね 何すんのよ？・

たく｡

(加代のため息)

いちゃいちゃしやがって｡

・(男)ごめんしてちょうでえ｡

(加代)は～い！

(男)番頭でごぜえやす｡

誰も頼んでねえぞ こんなもん｡

先ほどのお連れさんから｡

バカに気が利くじゃない｡

お一つ お酌を｡

(与市)さあ どうぞ どうぞ｡

(加代)どうも どうも｡

(加代)はい どうも｡

杯を下に置いちゃ いかんがや｡

熱いうちにというでよ～｡・

さあ どうぞ どうぞ…｡・

どうぞ さあさあ｡

(秀)すまねえ｡

(与市)・｢は～｣

・｢石は～｣

(与市)はいはい 何でしょう？

(加代)このお酒 変な味がするね｡

(秀)何だい この酒 おい？

(与市)おみゃあさん どないした？

大丈夫？

大丈夫がな？

しびれてきて… しびれて…｡

(与市)そりゃ そうだ｡・

中に入ってるもの｡

おい 何を入れた？

南蛮渡来のしびれ薬よ｡

(秀)誰だ てめえ？

・～

おい お前ら どうしたんだ？

(お酒を吐き出す音)

秀 おい！

待ちやがれ！

(与市)ヘヘヘッ｡

荷物はちょっと借りてくぜ｡

さあ 寄っていっておくんなはれ｡

(店主)ゆっくり休んどくなはれ｡

ゆっくりお休みやす｡

邪魔するぞ｡

｢そうでっか｣とか・

ちんぷんかんぷんな言葉で・

異国へ来たようですわ｡

(りつ)母上！・

(せん)まあ オランダさんじゃ・

(りつ)まあ 母上｡

(足軽)下がってください｡

どうなったか・

(せん)まだ そんなことを・

婿殿の夢物語などには・

りつ それより 今日は・

ゆっくり見物いたしましょう｡

・(声)あれが 角屋です｡

インドの絹・

さては 鉛 水銀 すず サンゴと・

取引をしている・

大坂一の大あきんど｡

あ～ 大したもんですな｡

(天平)明日 巳の刻 寅拾番会｡・

住吉の浄泉寺 ご出席を…｡

オランダ人を見ることが・

(せん)袋のような・

履いておりましたですよ｡

(天平)｢月 暮れて｣・

｢雨の降りやむ｣・

｢星明かり｣

(天平)虎 満尾｡

揚げ句を頂戴して・

終わらさせていただきます｡

・～

出島かな｣

｢セクンデと｣

｢角屋が踊る｣

｢出島かな｣

(美代次)２人やで 的は２人｡

(女)こないな仕事は・

前代未聞やで｡

値をお付けください｡

(儒者)990両｡

(儒者)970｡

(男)965｡

(美代次)850両｡

(天平)850両！・

他に ございませんね｡

(一同のざわめき)

ございますか？

(美代次)冗談じゃねえぜ・

こっちは 上がったりでい！

(天平)お静かに願います｡

(天平)ただ今 100両 100両！・

他に声はございませんか？・

ございませんか？

角屋 宗兵衛の命・

100両にて 落札｡

ご苦労さまでございました｡・

お集まり願います｡

(美代次)虎の元締よ・

相場ってもんがある｡・

もうろくしてんじゃねえのか？

誰も 本気で言ってやしねえよ｡

(おりく)お久しぶり｡

お前さんだな 俺 呼んだのは？

話したいことがあるんで・

あちらに お頼みしたんですよ｡・

お方ですからね｡・

ちょっと来てくださいな｡

(勇次)元気そうだな｡・

秀や 加代も この大坂に来てるで｡

へえ そうかい｡

(与市)おお すまなかったな・

何を言ってやんでえ！

てめえ いったい何者だ！

勘弁しておやりよ｡・

長崎奉行の役人が仲間だとは・

いや けどな…｡

この人が いてくれたからこそ・

何もかも分かったんだよ｡・

この人はね 与市さんっつて・

鹿蔵さんの養子なんですよ｡

えっ？ 鹿蔵とっつぁんの？

よろしく｡

いってえ どうなってるんだい？

(与市)いや そこだ それよ｡・

俺は江戸へすっ飛んでって・

おりくさんが いたというわけだ｡

手紙をもらったんですよ｡・

セクンデのわなに はまって・

江戸屋さん殺しの張本人は・

それを知ったからには・

書いてあった｡

やっぱり そうだったのか｡

知ってたのかよ？

何も証拠はねえんだがな｡

あんな殺しは お前・

できるこっちゃねえ｡

にらんでたんだ｡

この人に頼んだんですよ｡・

付かず離れずにいてくれって・

そしたら ひょっとして・

思ってね｡

(与市)ところが この人がよ・

セクンデの手の中から逃げ出した｡

(与市のオランダ語)

Thank you well.

長い間 長崎で遊んでたんで・

オランダ語ができるんですよ｡

カピタンが書き残したもんだ｡・

こん中に 何もかも書いてある｡

大坂の角屋 宗兵衛と組んで・

鉄砲の卸売りをしていたとな｡

そうか｡

それで やられたのか｡

セクンデと角屋はよ・

てめえらだけで・

そのために…｡

(与市)商売敵の江戸屋と・

目の上のこぶのカピタンを…｡・

ｾｸﾝﾃﾞと一緒に長崎まで行って・

これを渡すつもりだったんだ｡・

見つかりそうになったんで・

そう言ってるんだ｡

兄さんのことが・

思い出すと悔しくって・

兄さんが浮かばれない・

恨みを晴らしたいって・

思うようになったんだそうですよ｡

じゃ 頼み人は この娘さんかい？

鹿蔵さんのこともあるし・

この仕事をどうしてもやりたい｡

やると言ってくださってるんだ｡

何だって 虎の元締まで｡

(与市)向こう側には・

毛唐の殺し屋が大勢いるそうだ｡・

もう これは仕事じゃねえ 戦だよ｡

(おりく)中村さん｡

手を貸してくれますね？

う～ん｡

(与市)マリア｡・

おい マリア！

(虎)ええ話や｡

長崎から 荷が着くんで｡・

その荷改めに出てくるそうです｡

(与市)場所はどこだい？

ちょっと待ってくれ！

俺は聞かねえ方がよさそうだな｡

どういうこったい？・

下りるってんじゃないだろうね？

日の当たる場所へ出られたんだ｡

長崎 行きゃ 出世ができる｡

そんな危ない橋 渡りたかねえや｡

ほっといてもらおうか｡

・～

(虎)行かせてやれい｡

(戸の閉まる音)

礼を言う｡・

もっと金が欲しくはないか？

(美代次)ヘヘヘッ｡ それはもう｡

(宗兵衛)蛇の道は蛇とやら・

お前なら探せるだろう？

(美代次)で 何を探せばいいんで？

(宗兵衛)オランダ人の娘だ｡

何だ そんなことでしたら…｡

しているかもしれんぞ｡

毛唐はしょせん・

毛唐でございますから｡

私らは あした 長崎にたつ｡・

今日中に捜してくれ｡

へい｡

(ｾｸﾝﾃﾞ)２人で100両・

フッ｡ 安くみられた｡

厄介なことになりましたな…｡

(ｾｸﾝﾃﾞ)大丈夫 あした 船の上！

(宗兵衛)セクンデさまは・

ご存じないから・

そう おっしゃいますが…｡

仕掛けてきますか？

(ｾｸﾝﾃﾞ)なら 戦います！・

こっちにも 兵隊たくさんいる｡・

アメリカ…！・

金のためなら 母親 殺します！

(宗兵衛)よろしく｡

・～

(清次)Too so bad！

(外国人たちの笑い声)

・～

(妙春尼)どうぞ｡

(マリア)秀？

(秀)マリア｡

お知り合いだったんですか？

(秀)どうして この人がここに？

置いてくれと・

虎の元締に頼まれたんです｡

マリア｡

俺 帰ってこれないかもしれない｡

だから これは返しておく｡

分かるか？

・～

(宗兵衛)あっ 伊万里です｡

(宗兵衛)セクンデさん こちらへ｡

・～

・(銃声)

(銃声)

・～

・(銃声)

(天平)元締～！・

あ～！

・(銃声)

(天平)バカな…｡

・(銃声)

(天平)俺がよ ぶっ殺す！・

元締…｡

・(足音)

・(半鐘)

(加代)八丁堀 こっちだよ｡

(加代)マリアさん｡

(加代)マリア！

におわねえか？

血のにおいだ｡

・～

むごいことしやがる｡

(加代)八丁堀 来たよ！

・(障子の開く音)

(加代)秀 おりくさん 大丈夫？

やられたのかい？

(おりく)ああ｡・

私たちに用はないはずだよ｡・

何しに来たんだい｡

(秀)元締がやられた｡

虎のとっつぁんがかい？

(秀)俺は この目で見た｡・

顔も形も残すな｣と言って・

吹っ飛びなさった｡

(秀)跡形もねえや｡

(秀)てめえに分かるか 八丁堀？・

仕事人の死にざまなんだよ！・

てめえなんか・

かかあと どこでも行けよ！・

出てけよ…｡

(加代)勇さんは どうしたの？

(秀)分からねえ｡・

生き残ったのは たぶん・

俺たち２人だけだ…｡

負けたよ 負けましたよ…｡

思いっきり 負けちゃったよ 父上｡

・(与市)まだ 負けちゃいねえ！

ちんころしてやがった！

握られてたんじゃ・

勝つ戦だって できやしねえ｡

(秀)バカヤロー｡

名前は？

(美代次)美代次…｡

・(美代次の腹に刀を刺した音)

(美代次の腹から刀を抜く音)

・～

(勇次のうめき声)

(ｾｸﾝﾃﾞ)仲間 何人いるのだ？

(勇次の悲鳴)

(外国人たちの笑い声)

(ｾｸﾝﾃﾞ)お前のためだ 言え！

(ｾｸﾝﾃﾞ)もっと 大きな声だ！

(外国人たちの笑い声)

(船頭)船が出るぞ～い！

あれで ございますか 婿殿？

(せん)長崎行きの船は・

それで ございますか！・

それで ございましょうか？

あの～ 中村です｡ 長崎まで｡

あっ お二人さんですね｡

ええ そうです｡ 女２人です｡

私たちだけ ぜいたくして…｡

女の足じゃ この大坂までだって・

この先は楽をしてください｡

なぜ 私たちと ご一緒に…｡

シー！

高いんですよ 船は｡

・(船頭)船が出るぞい！

すぐ来てくださいね｡・

もう 承知しませんよ…｡

(りつ)はい｡

(りつ)はい｡

(清次)このままじゃ 殺されるぞ｡

(清次)どうして吐かない？

仲間を売りたくないんだろ｡・

もし そうだとしたら・

あんた 相当おめでたいぜ｡・

すっかり忘れちまってる｡・

人なんて 信じられねえ｡

人じゃねえ…｡

俺は 自分を信じてえだけだ｡

(清次)自分を信じる…｡

(喧噪)

(ｾｸﾝﾃﾞ)早く早く 来なさい｡・

早く 来なさい｡

女 いらんかね～｡・

(清次)何なんですか？

だったらな あそこで・

言ってくれ・

｢銭 払えって 前払いだ｣ってな｡

(錠)おい 何だよ どうした？

(清次)お前の船 貸してくれよ｡

(清次)逃がすんだ｡

(錠)誰を？

(清次)それは 言えねえな｡

そんな訳の分からねえ話に・

船なんか貸せるか｡

(清次)仕事人だ｡

(錠)仕事人！

ほっとくわけにもいかねえな｡・

おいらも 手伝うよ｡

てめえみたいな 女郎のヒモに・

船のことだ 頼むぞ｡・

ともに着けて 待ってろ｡

(錠の笑い声)

マリアどこにいるんだ？

(清次)道具部屋にいるよ｡・

あんた まさか こんな体で？

(清次)分かったよ・

ここで 待ってるんだぜ なっ｡

(勇次)お前さんは？

この仕事料 高くつくぜ｡・

さあ 行きなさい｡

・～

(男)お～い 逃げたぞ！

(男のオランダ語)

(外国人たちのオランダ語)

(銃声)

・(銃声)

・(民族音楽の演奏)

・～

(秀)八丁堀｡

これが 出島の表門だ｡

(オランダ語の会話)

オランダ商館は あの中だが…｡

この橋を渡るしかねえ｡

(秀)裏の海から行くしかねえな｡

船を手に入れたとしてもだ・

土地の人間じゃなきゃ無理だな｡

手を貸すバカもいねえだろうし｡

こりゃ お手上げだぜ｡

勇さんが生きてたよ｡

(加代)うん｡・

船から逃げ出したんだ｡・

マリアさんと一緒にね｡・

今 唐人町に隠れてるよ｡

(加代)うん｡

まだ見つからないのですか？

(宗兵衛)長崎に下りさえすれば…｡

バタビアから 船 来る｡・

マリアは それを待っている｡・

早く捜しなさい！

(爆竹の破裂音)

・(爆竹の破裂音)

(錠)マリア｡

うれしいのに 泣いたりして｡

(おりく)ホントに・

(錠)おりくさん・

助けた礼金 頂きますよ｡

(おりく)分かってます｡

ひどく痛めつけられたもんだ｡・

この体で よく帰ってこられたな｡

死んでも死にきれねえからな｡

船の都合はできますか？

(おりく)ええ・

裏の方から・

出島へ上がりたいんでね｡

(おりく)ああ・

(勇次)今夜？

(おりく)セクンデと角屋が・

祝いをやってるそうだよ｡・

船を都合してもらえませんか？・

できますか？

八丁堀に会えるのも楽しみだ｡

(錠)この仕事 引き受けた｡

(勇次)おっかさん 俺も行くぜ…｡

いけないよ｡

(与市)その体じゃ無理だよ｡

(勇次)だったら 治してくれよ｡

(勇次)頼むよ 歩けて・

動くようになりゃ・

お前さんなら できる｡

まあ 腕が動くようになる前に・

心の臓が止まっちまう｡

(勇次)構わねえ｡

(与市)何だと…｡

大坂で何と言ったよ・

戦だ 戦なんだ｣とそう言ったぜ｡・

討ち死にしたって本望だよ｡・

１人で待ってるわけには・

いかねんだよ！

やってやってくださいな｡

(与市)おりくさんまで…｡

(おりく)お願いします｡

(与市のため息)

外へ出ていたら いい｡・

いやいや そうしてくれ｡

勇次も見られるのは嫌だろうから｡

こいつを きゅ～っと かむんだ｡

(与市)いいか いくぞ｡

・(勇次のわめき声)

(与市)いいか 息 吸って…｡・

そうだ さあ 大きく吐いて｡

・(勇次のわめき声)

(勇次のわめき声)

・～

(与市)大した野郎だ｡・

とうとう最後まで我慢し抜いたよ｡

(おりく)じゃ…｡

(与市)あ～｡

・(民族音楽の演奏)

・～

(門番)よし 止まれ｡

(門番)お待ちください｡

(門番)中村？

長崎奉行所詰めになりました｡

(門番)おっ 聞いております｡

角屋に頼まれて 連れてきたんだ｡

(門番)はい｡ お通りください｡

参るぞ｡

(蔦屋)蔦屋でございます｡

与市は何をしてるんだ いったい｡

行くっつてたんだけどな｡

(勇次)こんなときに かい？

いつも 女抱くんだってよ｡・

やることやっておかねえと・

仕事が手に着かねえそうだ｡

(錠)ハハッ｡ 大した野郎だ｡

(勇次)それにしても…｡・

よし 出掛けよう｡

(勇次)仕方がねえだろ｡・

八丁堀の約束に遅れちまう｡・

行こう！

アハハハッ！・

ほれ…！

(一同の笑い声)

(与市)おうおうおう 何でえ？

(妓夫)お客さまは・

いらっしゃいますね？・

裏木戸に人がお見えでございます｡

(妓夫)つい さっき・

(与市)しまった…｡・

よし！ 待て｡ 今すぐ 行く｡

(与市)おっ 錠さん おりくさん｡・

あれ？・

すまなかったな おい！

・(銃声)

(男)もし もし どうしました？・

(与市)ごめん ごめんよ｡・

ごめん ごめんよ ごめん｡

(与市)どいてくれ｡・

ごめんよ｡・

ごめんよ｡・

行かなくちゃなんねんだ｡

ごめんよ 道 空けてくんな｡・

ごめんよ｡・

行かなくちゃなんねんだ｡・

ごめん｡

(与市)二足の仕事があるんだ…｡

(爆竹の破裂音)

・(民族音楽の演奏)

・～

(マリア)秀｡

・～

なかなか抜けられなくてさ｡

(加代)もう 鬼みたいの・

ありゃしないよ｡・

さあ 早いとこ 片付けてしまおう｡

・(三味線の演奏)

・～

お客さん 太鼓 ドンドン ねっ｡・

太鼓｡

・～

(ｾｸﾝﾃﾞ)The party.

・(太鼓と三味線の演奏)

・～

Your voice.

(外国人)Bravo！ Bravo！

・～

アハハハッ…｡

(宗兵衛)なかなか お見事で・

ございますな｡

(宗兵衛)いや お見事 お見事｡

・～

(どよめき)

・～

・(女たちの悲鳴)

(女たちの悲鳴)

・～

助けて｡

(ｾｸﾝﾃﾞ)出ていきなさい！

(加代)あっ 助けて｡・

助けて～｡

・～

(ｾｸﾝﾃﾞ)鉄砲！

・～

・(銃声)

(おりく)これを探してるのかい？

(ｾｸﾝﾃﾞ)誰だ？

したくないんだが…｡・

あんたは 別だ！

(銃声)

たくさん撃ってくれたね｡

(銃声)

さしてもらいますよ｡

(ｾｸﾝﾃﾞのオランダ語)

(銃声)

・～

(宗兵衛)誰だ？

(宗兵衛)奉行所か 助かった｡

角屋さん！

(宗兵衛)どうした？

どうしたんじゃ？

・～

(与力)長崎奉行所の者だ！・

開門 開門！

・～

あ～ 高い｡

長崎で 一番 安いの見せてくれ｡

一番 安いのっと…｡・

うん｡

(店主)ええ １両２分で｡

１両２分か…｡ よし これ いこう｡

中村 主水と申します｡

お取り次ぎを｡

おう｡

ご無礼を…｡

ただいま 着任いたしました｡

(与力)何だと？

いえ あの 中村 主水です｡

(与力)人を愚弄する気か？

(与力)では お主は 誰だ？

いえ 誰だって…｡

(与力)バカ者！・

(与力)なかむら もんどは 私だ！

えっ？

なかむら？

じゃ 何ですか？

間違いだったってんですか？

(与力)そうだ｡・

ここに こうして座っているのに・

江戸の南町奉行から・

通達が来ておる｡

どこで どう 間違えたか｡・

あんた 名前 変えたらどうだ？

(与力)私の方も迷惑だし｡

いや そんなこと言ったって…｡

中村 主水なんですから｡

(与力)なかむら もんどは 私だよ｡

いや 私が 中村なんです｡

(与力)私が なかむら もんどだ！

いえ 私が 中村です｡

(与力)私が なかむら もんどだ！

どんな字 書くんですか？

はあ～｡

にんべんの｢仲村｣さんですか｡

私は ただの中村ですから｡

・(りつ)あなた！

(せん)婿殿！・

(りつ)やっと 今 着きました｡

全部 焼酎です｡

鹿児島で買ってまいりました｡

とっても安かったんですよ｡

手土産 何一つなければ・

なさいますでしょ｡・

あちこちに ご挨拶を…｡

いや いいんですよ それは…｡

いや いいんですよ｡

行くとこがないんですから｡

(せん)また 何か？

はい｡

いずれ 詳しく…｡

バタビアへ たつんだったっけね｡

(加代)江戸へ帰ったらさ・

見つけてやるからさ｡・

泣くんじゃないよ！

誰が泣いたよ！

えっ？・

たまんないね｡

江戸 帰ったら お前・

いい男 見つけてやるからな おい｡

(勇次)しょうもねえこと・

考えやがって｡ だったら お前…｡

うまくやってくれることに・

なってるんだ｡・

どうだ よかったら 一緒に？

俺は この国が気に入ってるんで・

よそ行く気はねえよ｡

(おりく)若いっていいもんだね｡・

体に気を付けてくださいよ｡

声を掛けてくださいよ｡

(勇次)声掛けるったって お前・

どうやって知らせるんだよ｡

(一同の笑い声)

調子のいい野郎だ｡・

どこ行っても大丈夫だろうが・

(錠)お前さんたちも｡

あの～ すいません｡

持ってくつもりですか？

じゃ せめて 次の宿場まで・

荷物だけでも 馬に載せませんか？

(せん)婿殿！

よく そんなことが言えますね？

江戸へ帰れば また・

目に見えてるというのに・

また 別に 買えと言うのか？

ございません｡・

頼れるのは 己の足腰｡

(せん)りつ よう言うた｡・

たとえ 倒れても 歩きますぞ｡

(りつ)参りましょう｡

・～