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夢を見ていた。君と出会った、高校2年の日。あの、夢のような日の夢を。

オトギバラシス。

夢を見ていた。君と出会った、高校2年の日。あの、夢のような日の夢を。

オトギバラシス。君と出会った、高校2年の日。あの、夢のような日の夢を。

お疲れ様でございました。

神父様のお色直しが済みましたら、またお声がけさせていただきます。

あの、神父の姉妹を見ませんでしたか?

はい。お早いうちからいだしていましたよ。

そう、ですか。

神父様がお呼びです。どうしたんだ?

もうすぐ着替え終わるから、そこで待ってて。

そうや、あいつら着てるみたいだぞ。

たく何、企んでんだか。高校の頃から変わっちゃいねえ。問題児だらけだ。

さっきも夢を見たっけな。あの日を何度夢に見るんだろう。

そんな深く脳裏に刻まれるほどの。

とんでもない悪夢だ。

お待たせ。

まだ俺は夢を見ているのか。

好きだよ。好きよ。好き。好きです。好きなんです。

終わりきれないんだね。

加速して言葉は動く。

もっとたくさん教えてよ。

ねえ、わからないことがここにあるの。

君が大好きなんだ。大好きなんだ。

誰にも負けない。誰にも負けない。

僕の最後忘れちゃうね。

君は既にわからないよ。

初めてだった。初めてだった。

知った感情は。知った感情は。

光を求め咲いてる。

この恋は。恋は。恋は。恋は。

恋はどこまで続いていますか。

ヨーツバー!任せて!

やったー!

今日もお前たちのおかげで大勝利だ。

特にヨーツバー、ここ最近目に見えてうまくなってるぞ。

え?私?

ほんとかな?

いつ都合だからそんなはずないのにね。

いや、俺の目に狂いはない。

お前らもヨーツバーをお手本にしてしっかり練習するんだぞ。

お手本か。

試合終わったなら早く行こう。お店閉まっちゃう。

なんだ?買い物だったのか?

お母さんにプレゼントあげるんだ。

病気が治ったお祝い。

この日のために5人でお小遣い貯めたんだよね。

それじゃあ、お花屋さんに出発。

もう、イチカは強引だな。

みんな、行くよ。

おー!

お母さん、どんなお花プレゼントしたら喜んでくれるかな?

母親にはカーネーションって聞いたことある。

カーネーション?

うん。よくわからないけど。

ヨーツバー、いくらあったっけ?

えっと…

あれ?細胞落としたかも。

そっち見つかった?

こっちはないみたい。

サッカーの前まであったなら、このあたりだけど。

私もっと多く探してくる。

ヨーツバー…

どうしよう…私のせいだ…

どうしよう…

ごめん、みんな。私のせいで…

ヨーツバーのせいじゃないよね。

誰が持っててもなくしてたんだよ、きっと。

うん。誰かの失敗もご当分だからね。

みんな…

変わりってわけじゃないんだけど、そこできれいなお花を見つけたんだ。

これ、

これ、

これ、

そこできれいなお花を見つけたんだ。これ、どうかな…

ヨーツバー、それは…

あ、ごめん!

こんなの都合良すぎ…

私たちも見つけてたんだ。このお花、やっぱ五つ子だね。

帰りました。

いないのですか?

お母さん、おめでとう!

元気になってよかったね!

見て!これみんなで集めたんだ!

今日もお仕事お疲れ様!

いつもありがとう!

あれ、止まっちゃった…

やっぱこれじゃ…

私にとっては、あなたたち五人が健康に過ごしてくれるのが何よりも幸せです。

こちらこそありがとう。

一通り済ませたし、帰ろっか!

それ、お父さんじゃないかな?

まさか…

高校最後の夏休みもあっという間だったね。

二学期が始まったら、学園祭の準備で忙しくなるよ。

イチカはしばらく学校お休みするんですよね。

映画の撮影が入ったからね。

出席日数は大丈夫?

まあ、なんとか。クータロー君が個人レッスンしてくれるって言うし。

にしても…

映画の撮影が始まったからね。

出席日数は大丈夫?

まあ、なんとか。クータロー君が個人レッスンしてくれるって言うし。

にしても…

まさかここに戻ってくるとはね。

引っ越して半年で立ちのきって、ほんとついてない。

わっ!きれいなままだ!

エヴァタさんでしょうか。

ずっと掃除してくれてたのかも。

いいね。

失礼しました。

失礼しました。

あ、イツキ。職員室で何してたの?

今日の授業でわからない箇所があったので、質問は。

そっか。私は学園祭のこと。

学級長中心で色々決めてくれってさ。

あれ?学級長と言うと…

ああ、上杉さんはこういうお祭りどうなんだろうね。

とにかく、3年生は屋台って習わしがあるんだって。

唐揚げにフランクフルト、ジャガバターもいいよね。

すみません。

このお話はまた今度。

もうすぐ塾のお手伝いの時間です。

ああ、イツキは食いつくと思ったのになあ。

みんな帰っちゃったかなあ。

えっ!

ん?なんだ、幼妻か。

お取り込み中、すみません。

えっと…

学園祭の屋台のことか?

少し待ってろ。

今は少しでも時間を無駄にできない。

はい。

ライハに言われてな。

イチカのCMを見たんだが…

忘れられない。夏にしてあげる。

すっかり大女優様だな。

あいつはあいつの夢を叶えたわけだ。

イツキも教師を目指すとか、

文不走な夢持ってるみたいだしな。

ヨツバ。

はい。

お前は将来なりたいものとかあるか?

え?突然ですね。

うーん…

考えたこともなかった。

ま、お前にはズバ抜けた身体能力があるからな。

その方面なら色々選択肢があるだろう。

待たせたな。

去年の屋台のデータを聞き込みに回るぞ。

でもいいんですか?上杉さん、時間は無駄にできないって。

だからこそだ。

最後の学校行事だ。

無駄になんかしない。

やるからには徹底的に楽しむと決めた。

時間は有限だ。

いくらあっても足りない。

頼りにしてるぞ。

はい!任せてください!

これが、去年人気があった屋台のメニューだ。

これ以外にもやりたいことがある人は、随時教えてください。

私はたこ焼きに一票。こういうのは気を照らわない方がいいのよ。

それに、あんたがそのリストを調べてくれたんでしょ?

たこ焼きならバイトで磨いた俺の腕を見せてやるぜ。

うん。楽しそうだね。

他にあるか?

たい焼きやりたーい!

タピオカ!

ミク、何かやりたいか?

パンケーキ。

えっと、去年までのデータにはないですね。

だが、ありかも。ナイスアイデアだ。

ミク!

やったー!

やったー!

やったー!

ありかも。ナイスアイデアだ。

ミクちゃん、ありがとう。

私もいいと思ってた。絶対可愛いよね。

今日はこれまで。後日また話し合おう。

中野さん。

このライブステージって、俺たちも参加できるのかな?

もちろん!

被覆部でこんな出し物するんだ。お客さん来るかな?

わー!素敵です!

指定の場所なら、ポスター貼れるので、ぜひお手伝いさせてください。

ありがとう。

四つ葉大人気。

なぜ俺のところには誰も来ない?

ジム。

親戚に招待状送りたいんだけど。

ご用意してます。

招待状。

それにしても屋台ね。何を作るにしても腕が鳴るわ。

うん、腕が鳴る。

あんた、調理係する気?外からもお客さんが来るのよ。

下手したら周辺住民、脳磁石注力だわ。

私だって上達してる。それにニノもいる。

なら安心。

も、もちろんよ。私と一緒に作れば、万に一つにも失敗はないわ。

お待たせ。

お疲れ様。

あんた、働き過ぎじゃない?

最後のイベントですもんね。

一ミリも悔いの残らない学園祭にしましょう。

最後か。

ふーたろくん、わざわざ勉強を教えに来てもらってなんだけど。

大学入試は大丈夫?学園祭の準備も大変そうだし。

実は今日、志望校への判定が帰ってきてな。

え?

や、やめろ。見るな。これだけは見られたくない。

ああ、はいはい。よかったのね。

なんだつまらん。

言っておくけど、そんな芸当ができるのは、もともと勉強ができるふーたろくんだけ。

みんなをちゃんとよろしくね。ここが少年場だよ。

心配ないさ。勉強も学園祭もきっとうまくいく。

な、いちか。最高の学園祭にしてやるぜ。

いい加減あきらめなさい男子。

お前ら女子こそあきらめろ。

ふわふわなパンケーキはみんな大好きなんだから。

みくちゃんも言ってあげて。

え、えっと。

去年のデータ見ただろう。たこ焼きが嫌いな日本人なんて存在しねーよ。

ね、にのさん。

まあ。

にのちゃんパンケーキ好きって言ってたじゃん。なんでそっちの見方するの?

そうですよね。にのさん。

ああ、もう仕方ないでしょ。

私が最初に提案したんだもの。最後まで責任持つわ。

それと、食べるのと作るのでは話が別。

そのふわふわのふふれパンケーキ、私だってたまに失敗するんだから。

これ以上の話し合いは無駄。二つともやるしかないわ。

まさかあんなことでクラスが二分するなんて。

そうよ。なんでパンケーキなんて言い出したのよ。

ふうたろうのお母さんがよくパンを作ってくれたんだって。

それでうちのこと思い出してみたら。

まあ、そうよね。

あれこそふわふわだった。でもあれは一朝一夕じゃ作れないわ。

作ったことあるんだ。

私の初めて挑戦した料理だわ。まだたこ焼きの方がイージーね。屋台ならなおさら。

だからって、あんな直球で言わなくても。

いやなのよ。陰でこそこそすんのは。

うん。

ニーノ、ミク。なんだ一緒だったか。

ふうたろう、どうしたの?

いや、それならいいんだ。

まあ今いろいろ忙しいが、せっかくの学園祭、楽しんでいこうぜ。

なんなのよ。

私、ふうたろうに用がある。先帰ってて。

ミク?

ふうたろう。

なんだミク。

学園祭の前に言っておきたいことがあって。

そうか。俺もお前に言いたいことがあるんだ。

それ、先に聞いていい?

ああ、聞いたぞミク。大学の入試判定Aだったらしいな。やったじゃねえか。

うん。

思えば長い道のりだった。しかし全ては、お前らが大学に入学してくれたら報われる。

俺も授業した甲斐があったってもんだな。

そうだね。

あのさ、ふうたろう。

うん。

付き合ってよ。

うん。

あ、ごめん。今のは変な意味じゃなくて。今度の日曜日、一緒にお出かけしよう。

あ?

あれ?ニノも今帰りですか?

そうね。一緒に帰る人を探してるとこ。

そうでしたか。それならすみません。私はこれから塾に直接向かいますので。

あっそう。真面目ね。

あ、あの、ニノは入試判定どうでしたか?

思ったほど悪くなかったわ。Bだったかしら。

え?なに?どうしましょう、ニノ。全力で取り組んでいるはずなのに。この結果です。お席真っ黒です。

所詮私はお母さんの真似事。学校の先生なんて夢のまた夢なんです。

落ち着きなさい。

取り乱してしまいすみません。先生は一度、親と相談した方がいいと。でも、そんなこと。

してくれる親でもないか。

いえ、そういう意味ではなく、これ以上お父さんに心配をかけたくないんです。

は?心配?あの人がいつ?

私たちがここまで成長できたのはお父さんのおかげ。私もそう思えるようになってきました。

あの花は間違いなくお父さんです。直接何かをしてもらったことは少ないですが、ずっと気にかけてくれてたんだと思いますよ。

そんなわけ。

ひとまず下田さん。塾でお世話になってる先生に相談してみます。それに近日、有名な講師の方による特別教室が開かれるらしいのです。

ニノ。この前言われた招待状、用意してるけど。

やっぱやめとくわ。

え?いいの?

パパを呼ぼうだなんて、一時の気の迷いだわ。

私はいいと思ったけどな。

どうせ来るはずない。家にだってほとんど姿を見せずに、いっつも陰でこそこそしてるんだわ。

へへ、てきびしい。でも、あ。

私を睨んでた女子だわ。面倒なことになる前に回避しておきましょう。

お前らの意見はよくわかった。

要するに、ニノが男子組の中にいるのはおかしい。あんな媚びを売って、男子の誰かを狙ってるに違いないと言いたいんだな。

そうだよ!もしその相手がユースケだったら、ニノちゃんが相手なんて、私に勝ち目ないよ。

さくら、元気出して。

勘違いだ。

え?

ニノのいちゅうの相手はたこ焼き派にいない。それだけはわかってる。安心してくれ。

信じられない!なんでウエスギ君にそんなことわかるの?

学級長は中立の立場のため、どちらにも投票できないんだ。

は?意味わからない!関係ないじゃん!

そうだよ!

そうよ!

ニノは俺を、す、好きだからな!

だから、仲良くしてやってくれ。

ウ、ウエスギ君。妄想はやめよう。

その設定はニノちゃんがかわいそうだよ。

ち、違う!ほ、本当に!

影でコソコソも悪くないと思うな。きっと何か理由があるんだよ。

ヨツバ、招待状の文面は一緒に考えて。

お前の入室を許可した覚えはない。すぐに出て行く、ウエスギ。

おいおい、ずいぶん水くせえじゃねえか。いい情報を知らせに来てやったのによ。

あいつが来てるぜ。十数年ぶりだ。

こっちがアンちゃん。その後ろにいるのがサンちゃんです。

さて、皆さんに問題です。この子の名前は何だったでしょうか?

みんな同じ顔じゃん。

違いわかんないよね。当ててあげたい。

正解!似てるのも当然で、このゴアは姉妹のペンギーちゃんです。

お前らみたいだな。

言われてみるとあれ、ニヌっぽい。

じゃあ、あいつがミクか。

フータロー。

フータロー、私、料理の勉強したい。

だから、大学にはいけない。ごめんね、フータロー。

そうか。お前が決めたのなら応援するぞ。

すごい複雑な顔してる。

そうだよな。専門学校。それもありだよ。

大学に行くのも間違いじゃないと思う。何が正解かわからない。

でも、もう自分の夢に進みたくて仕方ない。それを伝えたかった。

フータローは私にとって特別な人だから。

それって?

もちろん。変な意味で。

このタイミングでミクがなぜこんな話をしたのか。決して進路だけの話ではないはずだ。

私は伝えたよ。じゃあ次、フータローの番ね。

俺の伝えなければいけないことは。

お兄ちゃん、おかえり。

なぜお前が家にいる?

こちらです。よつばが上杉君に渡した覚えがないというので。

お、おお、悪いな。

はーい。

カレー出来ましたよ。

いただきます。

お前こんなことしてていいのか?聞いたぞ、判定。

だからって希望校を諦めたりしません。学園祭返上の覚悟で頑張ります。

頼むぞ。入って貰わなきゃ困る。これで落ちたら俺のやってきたことが無意味になっちまうからな。

それは違いますよ。

女優を目指したイチカ、調理師を目指したミクとの時間は無意味だったのでしょうか。

そうは思いたくないな。

私たちの関係はすでに家庭教師と生徒という枠だけでは語ることができません。

上杉君、たとえこの先失敗が待ち受けていたとしても、

この学校に来なかったら、あなたと出会わなければなんて後悔することはないでしょう。

この関係は無意味じゃなかった。次は俺の番だ。

ご来場の皆様は、体育館にお集まりください。

第29回、アサヒ高校日の出祭り、開会式を取り行います。

まずは我が校が誇る、女子生徒ユニットによるオープニングアクトです。

ラッパースケーション 恋に休み なんてものないのよ

二人だけの 特別な ヒーポーライン イェーイ イェーイ

ラッパースケーション この気持ち ラッパースケーション

みんのかっこいい!

よっしゃ!

ラッパースケーション 恋に休み なんてものないのよ

二人だけの 特別な ヒーポーライン イェーイ イェーイ

ラッパースケーション この気持ち ラッパースケーション

みんのかっこいい!

よく参加したな。

ラッパースケーション 恋に休み なんてものないのよ

二人だけの 特別な ヒーポーライン イェーイ イェーイ

ラッパースケーション 恋に休み なんてものないのよ

二人だけの 特別な ヒーポーライン イェーイ イェーイ

ミクちゃんうま!

誰に教わったの?

バイト先で。

あ!お客さん来たよ!

ありがとうございます。

15時までに落ち着いてくれるかな?

よし!

もう点検は全部回ったかな?

あ、イオツバ!

あ!レッドだ!

オープニングのダンスめっちゃ可愛かったです!

私ファンになっちゃった!

よかったらうちのアメリカンドッグ食べてください!

ど、どうも!

屋台の様子を見に行きたかったけど…

はぁ…

イチカっていつもこんな気分なのかしら?

次の!

って、なによ!イツキじゃない!

先ほどは見事なダンスでしたね。

まさに学園祭という感じです。

あんたは学園祭だってのに何してんのよ。

15時までには終わらせますので、ご安心を。

疲れたわ。

フー君はどこにいるのかしら?

こちらになります。

道案内ご苦労。

君は素晴らしい若者だ。

ウエスギ君!

ん?

ここ休憩所にしたいんだけど、どうしたらいいかな?

あ、あぁ…

お待たせ。

ミク!おっつー!

遅い。近くよ。

ともかく、これで全員揃いましたね。

いや、まだ一人。

はぁ…

や、イチカ!

来てたんだ!

なんで連絡よこさないのよ。

よく騒ぎにならなかったね。

なんとかね。

これで本当に全員集合だ。

やっぱこの感じが落ち着くよね。

そうだね。せっかくだし食べよっか。

屋台でたくさん買ってきたんだ。

私ずっと我慢してました。

俺はお前たち5人が好きだ。

いきなり来たね。

ど、どういう意味ですか?

この6人で、ずっとこのままの関係でいられたらと願ってる。

だが、答えを出さなければいけないと思う。

フータロウ。いいよ。

そうか。

とはいえ、こんな祭りの最中にいるほど、俺も野望じゃない。

俺も俺で、整理しきれていないからな。

最終日まで時間をくれ。

もう、なにそれ。なんだか表紙抜け。

じゃあ、気を取り直して乾杯しますか。

私オレンジ。

もっちゃソーダも。

ないわよ。

ようやく、といったところでしょうか。

この難問を解くまで、ずいぶん時間がかかりましたね。

からかんなよ。

ですが、羨ましい限りです。

ん?

はい、フータロウの分。

おう。

それじゃ、学園祭初日、無事終了を祝して、

乾杯!

みなさーん!日の出祭りも2日目!

本日は来てくれたお客様に、突撃インタビューしちゃいますよ!

中野さん、見てる?私のこと覚えてるよね?

会いに来たよ。まだ走ってる。

マイク取らないでください。

すまない。失礼するよ。

そんな。

では、気を取り直して。

あ、そこのお姉さん。

あなたの目当ては何ですか?

私ですか?

私は、幼馴染に会いに。

上杉君の今日の仕事はなし。

え?

せっかくだし、学園祭、楽しんできなよ。

楽しむも何も、食べ歩きする金もねえし。

そういえば、あそこなら行けるか。

あ、いたいた。

風太郎、大きくなったね。

竹林?

あ、風太郎、下手くそ。だからもっと左だって。

お前が隣でうるせんだよ。

あ、あれ欲しいな。次あれ狙ってよ。

へえ、昨日私たちにあんなこと言っておいて、今日は別のことデートですか。

上杉さんも隅に置けないね。

風太郎、こっち来て。

おい。

パンケーキいかがですか?

風太郎、パンケーキだって。食べようよ。

まあ、ここは俺のクラスの屋台だ。

そうなんだ。

いつもうちの風太郎がお世話になってます。

うちの?

どちら様ですか?

初めまして。竹林と申します。

風太郎とは小学生からの同級生です。

あらそう。

私たちも同級生だけど、教師と生徒。

いわば同級生以上の関係といっても過言じゃないわ。

そうなんだ。奇遇ですね。

私も風太郎に勉強を教えたんです。

ずっと言うこと聞かなかった問題人に頼まれた時は驚いたな。

いや、こいつらが俺の生徒。

そうなんだ。

じゃあ、これではっきりしたね。

私とあなたたち、どちらがより親密なのか。

四葉、私も。

私の方が上杉さんのこと。

ありがとうございます。

もしそれが本当ならば、私たちは間接的にあなたのお世話になったと言えます。

上杉君と過ごした時間はあなたに負けてしまいそうです。

しかし、その深さでは負けるつもりはありません。

お前ら、こっぱつかしいからやめてくれ。

それに竹林、あんまりからかうな。

こいつらは俺の数少ない友人だ。全員が特別に決まってる。

本当に大きくなったね。

二人ともごめんね。パンケーキ一つください。

は、はい。

四葉、ごめん。仕事の続きしないと。

だけど…

上杉君、私の気持ちはずっと変わらないから。

お疲れ。どうだった?

うん。風太郎元気そうだったし、五つ子のみんなもいい子だった。

え、五つ子?

頑張りなよ、風太郎。

この選択が、あるいはこの選択をすることは正しかったのだろうか。

そんなことを考えるには、三日間はあまりに短すぎだ。

これにて、朝日高校学園祭、荒野祭、すべてのスケジュールを終了します。

タクシー遅いな。

あのさ…

そういや、中野一家。この学校に通ってるらしいぜ。

中野一家か。この前のドラママジかわいかったよな。

俺もドラマみたいに一家ちゃんとキスして。

もしかして私がキスしてたのショック?

いや…

女優だよ。そういうこともあるよ。

そういうわけじゃ…

だよね。風太郎君だって経験済みだもんね。

な、なんでお前が…てかあれは事故で。

へえ、本当にしてたんだ。

は?

で、誰と?

わ、わかんねえよ。あの時は全員がイツキの変装をしてたし。

ふーん。で、誰だと思うの?

タクシー来たぞ。

命拾いしたね。

あのさ、もう学園祭に来られないかもしれないから、今答えを聞いちゃダメかな。

あ、別にまだ迷ってるなら。

わかった。

誰も選ばない。

それが俺の答えだ。

最低!いつまでも甘いこと言ってんじゃねえよ!

ひどい!

オッケー!いいじゃん!これで決まり!

だ、大丈夫ですか?

イチカちゃん、なんかやり慣れてない?

今日も頑張った。ホテルに戻って寝よっと。

イチカちゃん、大変だ!

社長?

さっき電話があって、妹さんが倒れたそうだ。

元気そうで安心したよ。しっかり休んでなよ。

ニノ、フータロウ君。

イチカも来てたのね。

うん。電話したんだけど、いてもたってもいられなくて。みんなの様子は?

ええ。一旦落ち着いたところよ。

あたしたちは大丈夫だから、ひとまず心配しないで。

そっか。よかった。

後片付けまだだから、学校に戻るわ。フー君はイチカを送ってあげなさい。

お、おう。

じゃあ、今日は家に帰るね。

フータロウ君は、もう今日の仕事は終わった?

まあ。

じゃあ、少し歩こうよ。

うわー、ここやりやすいな。

歩こうよ。うわー、ここ意外と広いんだね。

フータロウ君、覚えてる?

花火大会の会場だろ。

屋台も人もいなくなると、確かに広く感じるな。

無人ってわけじゃないけどね。

知ってる?カップル成立もこの3日間が多いんだって。

その中でも特にすごいのが、3日目の荒野祭。

フータロウ君はそれを知ってて、あんなこと言ったのかと思ったよ。

俺がそんな世間の風潮に流されるような奴に見えるか。

またまた。君、後派に見えて案外俗っぽいところあるし。

は?どこが?

高級車見たら覗き込んだり、久しぶりの旅行でテンション爆上がりしたり、山頂でやっほーって言っちゃったり。

よく覚えてるな。

まあ、そこが可愛いとこでもあるんだけどね。

そういう素直な気持ちを大切にしなよ。

だから、誰も選ばないなんて言わないで。

俺の気持ちなんて俺自身わかんねえよ。

難しく考えすぎなんだよ。それか考えないようにしてるだけ。

昨日キスの話したじゃない?

ニノ、ミク、ヨツバ、それにイツキちゃん。

問題です。

フータロー君は誰だったら嬉しいですか?

なんて。

自販機だ。お金渡すから好きなの買ってきてよ。

は?

フータロー君の飲みたいやつでいいよ。

そこのベンチで待ってるね。

急になんだよ。

フータロー君、紅茶がニノ、お茶がミク、ジュースがヨツバで、コーヒーがイツキちゃんね。

ず、ずるいぞ。

こうでもしないとね。さてどうする?フータロー君。

げ、待たせすぎた。

たっせえとこ見せちまったな。

お前とはいつもこんな感じだった気がする。

長男に長女。お互いに苦労したな。

見てたでしょ。くちびる。

なんで?

起きてたのか。

なんで見てたの?

キスをしたのは5人の中の誰かなんだ。お前かもしれないだろう。

きもいな、俺。

きもいね。

どう?私だった?

い、いちか。

だって見てるより実際にしたほうが違いがわかるでしょ。

そ、そうだが、それだけのためにか。お前は演技で慣れてるのかもしれんが。

ああ、きのう言ってたドラマ、相手は同じ女優の子なんだ。

え?

男の人とキスなんて、今はまだNGかな。だから、君が初めて。

同級生の女の子となんてなかなかできないイベントだから、思い出にしなよ。

あ、聞き忘れてた。

嬉しかった?

なんだよ、その上から目線。

素直な気持ちを大切に、なんて。

そうだよね、ふーたろう君が誰を選ぼうと関係ない。

この気持ちは、まだしばらく静まりそうにないや。

これにて、あさひ高校学園祭、荒野祭、すべてのスケジュールを終了します。

それじゃ、学園祭初日、無事終了を祝して。

乾杯!

お前、いつまでそんな目立つ格好してるんだよ。

だって、見て欲しかったんだもん。

にの可愛かったですよね。

お、おう。

あのオープニングセレモニーは本当は私がやるべきだったのですが、にのが引き受けてくれたんです。

あんた誰にでもいい顔して仕事引き受けすぎなのよ。

演劇部の助っ人もしてるらしいじゃない。

限界が来る前にやめなさいよ。

にのは相変わらず姉妹ばかだな。

そ、それだけの理由じゃないわ。

この仕事を引き受けたのは、舞台の上からなら客席が見渡せると思ったのよ。

どういうことだ?

私たち、お父さんに招待状を送ったんです。

影も形もなかったわ。

まあ、ダメで元々。気にしてないけどね。

そうか。もしかしたら、この間に来てるかもな。

屋台の方見に行ってみるか。

くそ、いねえな。連絡来てないか。

え、ええ。

あ、もう。あんな大胆な告白しておいて、なんで二人きりでいられるのよ。

直伝するぞ。

それはやめて。

もういいの。元から期待なんてしてないから。

お前だって勇気出して招待状を送ったんだな。納得できるのかよ。

信じて待ってみるわ。

ふわふわの甘いパンケーキ、いかがですか?

パンケーキ屋さん、昨日より明らかに人が増えてますね。

なんだかここに来て噂になってるみたいよ。

やあ、上杉君から連絡があってね。

二ノちゃんのクラスの店ってこっちかい?

こんにちは。

店長、来てくれたんですね。

あれ、今がっかりしなかった?

一瞬、お父さんかと思いました。

皆様、お疲れ様でした。

これにて、朝日高校学園祭、二日目を終了とします。

ねぇねぇ、最優秀店舗を本気で行けるんじゃない?

もう待ってらんね。

えっ?

二ノ、ついてこい。

上杉君?

もういいわ。行かないわよ。

招待状を送ったのに、パパは来なかった。

あたしたちのことなんか、みじんも考えてないのよ。

学園祭は明日もあるけど、もう嫌よ。

どうせ叶わないのなら、望んだことすら後悔しそうだわ。

俺はお前たち家族のことはよく知らない。

分かるのは普通の親子関係とは違うってことだけだ。

だが逆にお前は知ってるか?

俺に対する警戒心めちゃくちゃ強いぞ。

あれが父親の目なんだろう。

あんなの、お前たちへの愛情がなきゃできねぇよ。

だから文句を言ってやるんだ。

お前らめんどくせえってな。

おい、上杉くん!

例の人見つけたよ!

映像を見直したら、君が探してた特徴と一致する人がいてさ。

今日はどちらからいらしたんですか?

おや、職場から電話だ。

すまない。失礼するよ。

そんな!

どう?これなんだけど。

サンキュー。どうやら来てたみたいだな。

どうする、ニノ?

上杉くん、パパのところへ連れてって。

そうよね。何弱気になってたのかしら。

押しても引いても手応えがなくても、

さらに責めるのが私だわ。

どうも。

お借りした娘さんを返しに来ました。

今日はなんで…

暗くなる前に帰りたまえ。

待って。もうすぐ焼けるから。

食べてやってください。学校に来てたの知ってます。

パンケーキですか。

意外と安く作れて、娘たちも喜んでくれるのです。

最後に作ってあげたかった。

最後なんて、そんなことありませんよ。

中野くん、あなたには感謝してもしきれないわ。

でもこれ以上、あなたの貴重な時間を、

余命わずかな私に注ぐことはしないで。

余命だなんて、そんなこと言わないでください。

レナ先生は僕の恩師ですから。

先生だなんて、もう何年前のことでしょう。

それにあなたがいなくなったら、娘さんたちも悲しみます。

そうですね。

あの子たちだけは心残りです。

まだ小さなあの子たちの成長を見届けることが、私の使命。

ありがとうございます、中野くん。

もう少しだけ甘えさせていただきます。

退院した際は、ぜひご馳走させてください。

パンケーキ、君も気に入ってくれると思いますよ。

この生地、ミクが作ったのよ。

あんな料理下手っぴだったあの子が、

目指すものを見つけて頑張ってる。

ミクだけじゃない、私たち5人全員、

あの頃よりもずっと大きくなったわ。

その成長を、そばで見ていて欲しいの。

お父さん。

食べた。

えっ、でも、どっち?その表情、どうなの?

この味。

えっ?

君たちは逃げずに向き合ってきたんだね。

えっ、どういう?

それにしても量が多いな。

僕一人では、食べきれそうな味だよ。

何?

何?

何?

何?

何?

何?

何?

何?

何?

僕一人では、食べきれそうな味。

次は家族全員で食べよう。

急に何よ。

でも、みんな、きっと喜ぶわ。

よかったな、ニノ。

じゃあ、俺はトイレに。

ウエスギ君、待ちたまな。

これは君の計画かい?

違います。

そうよ。彼がここまで連れてきてくれたの。

それはどうだろう。家庭教師の範疇を超えている。

だが、それが私にできなかったことだ。

君に頼んでよかったと心から思う。

不出来だが親として、君が娘たちとの関係を真剣に考えてくれることを願う。

フー君、今日はありがとうね。

それに今までも。

さ、それでね、明日のことなんだけど。

おい、あぶな!

あぶね。

何をしているんだよ。

ちょ、ちょっと滑ってしまいまして、もう帰ります。

惜しかったわ。

ああ、そうするといい。

ギリギリせえ。

大丈夫だった。

やっぱ、恋はせめてこそよね。

今なんと。

ねえ、お父さん。これだけ言いたかったの?

この先、私たち姉妹の関係がどのように変わったとしても、私の気持ちは変わらない。

フー君を家庭教師にしてくれてありがとう。

これにて、旭高校学園祭、荒野祭、すべてのスケジュールを終了します。

あ、あれうちの男子じゃない?

敵女子たちよ。

ほんとこそっかなんだから。

男子のたこ焼きには負けられないよね。頑張ろう、みくちゃん。

あ、あの、クラスの男の子の話なんだけど。

意地張ってないで仲良くしようよ。きっと一緒にやった方が楽しいよ。

なんて言える勇気があればいいんだけど。

いねえな。

私、あっち探してみる。

あ、上杉君。

男子に言ってやってよ。こそこそ敵場視察するのやめてって。

つーかさっさと和解しろよ。

あ、あの、今度は私が逆に、敵場視察に行ってみてもいいかな。

明日こそ、女子の奴らに負けねえぞ!

おお!

どうしよう、フー太郎。

変えられるとしたら、みく、お前だ。

え?

対立陣営のお前だからこそ、あいつらの気持ちを変えられるかもしれない。

まあ、あくまで直感だ。信じるも信じないもお前の自由だ。

うん、フー太郎を信じる。

こ、こんにちは。

中野さん、中野!パンケーキのリーダーがなんのようだ?

あ、あの、たこ焼き、ひとつください。

は?

おいしそう。いただきます。

熱いから気をつけな。

ありがとう。

ふぅ、ふぅ、ふぅ。

うまっ。

クラスの女の子たちにも食べさせてあげたいな。

あ?

一日目が終わったら、私がみんなを連れてくる。

男の子たちの本気が、きっとみんなに伝わるはずだから。

そんなことを急に言われてもな。

あいつら、たこ焼きなんて出せって言ってたぞ。誰があいつらのために。

お前ら素直に。

待って、フー太郎。信じる。私が言わなきゃ。

当日になってこんなこと言ってごめんなさい。

でも、このまま終わりたくないのは同じ気持ちのはず。

全部終わって卒業した後も、いい学園祭だったねって、みんなで喜べるものにしよう。

そういえば、前田君は松井さんに食べさせてあげてたよね。

てめえ、それは言うなって。

どういうことだ、前田。

お前だけ抜けかけしやがって。

俺だって、丸山さんに食べてもらいたかったのに。

ちゃうら、ユリちゃん。

たく、俺もまあ、食わせたい奴がいないでもないけど。

中野さん、こいつらのために頼んでもいいか。

うん、もちろん。

ありがとう。全部フー太郎のおかげ。

は?俺は何もしてないだろう。

お前がみんなを動かしたんだ。

強くなったな、ミク。

残念一組、たこ焼き屋屋台を、出店停止とします。

ミク、上杉さん見つけた。やっぱり外だった。

知らない女の子と話してる。

え?

誰か知ってる?

知らない。まさか。

上杉さん、昨日言ってたじゃん。

私たち五人を、す、好きだって。

上杉さんを信じよう。

信じる。

私、出会ったばかりの頃、言われたんだ。

自分が好きになったものを信じろって。

どんなことがあっても、私はフー太郎が好きだから。

フー太郎が好きだから、信じて進んでこれた。

ミク?

一日ぶりだな。クラスの屋台、残念だが。

フー太郎、ついてきて。

屋上?学園祭地は立ち入り禁止だろ?

うん。ここなら迷惑かけないと思って。

ふざけんな!どうせ俺たちが見せ出せなくなったのをあざわらってるんだろ!

だから誰もそんなこと言ってないじゃない!

男子が事故起こしたのが悪いんでしょ!

だと!?

なによ!

お前が呼び出したのか。確かにここなら迷惑はかからないが。

違うよ。迷惑をかけるのは私。

な、中野さん。

ミクちゃん、この手紙ってどういう?

よくして。

男の子も女の子もいつまでも意地張って。

もう高校生だよ。来年大学生でしょ。

こんな子供みたいなケンカして恥ずかしくないの。

パンケーキとたこ焼きに上下なんてあるはずない。

もちろん男女だって。

どっちもおいしい。どっちも頑張ってる。

なんでそれが認められないの。学園祭、準備からずっと楽しくない。

居心地悪い。

ずっと我慢してた。もう限界!

ミク。お前。

ずっと働き詰めで女の子は疲れてる。

パンケーキ屋さんの裏方を男の子に手伝ってもらおう。

は?

いや、でも、私がよくても、みんなはなんていうか。

任せて。私が説得するから。私を信じて。

すまん。修復は不可能って、勝手に自分で線引いて諦めちまってた。

お前には教えられたぜ。

ミク。

あの女の子、誰?

女の子?

射的やってた子は?

あ、幼馴染で。

好きなの?異性として。

と、友達です。

そっか。ならよし。これを聞くのもずっと我慢してた。

我慢、なんだ。そんなことは俺に遠慮なんてすんなよ。

うん。

うん。わかった。じゃあ、キスしたい。

え?遠慮するなとは言ったが、今の流れでなぜ?

ごめん。返事は後で聞くね。

たとえどんな越えられない壁が現れても、自分を信じる限り、どこまでも進んでいける。

もう、迷わない。

これにて、アサヒ高校学園祭、荒野祭、すべてのスケジュールを終了します。

ありがとうございます。

女王エメラルド!

ここまでよ、勇者一行。あなたたちをここでしなすのは惜しいわ。私の廃下に就きなさい。

キチジュはどうなるかと思ったけど、中野先輩に代役をお願いしてよかったです。

こちらこそ、お役に立ててよかったです。

安全点検に参りました。

お疲れっす。

この線路は問題ないみたいですね。

この辺の紙くずは危ないので、片付けておいてください。

この調子なら、中午時に間に合いそう。

唐揚げどうですか?

手伝ってくれて、サンキューな。うちのサービス券は持ってってよ。

食べたかったんです。

限界。

よく頑張りましたね。

四つ葉。

上杉さんはもやしなんだから休んでください。

悪いな。もう大丈夫だ。通してくれ。十五時までには終わらせたい。

心配しているんです。言うこと聞いてくれるまで動きません。

そういや、朝から何も口にしてね。

こんなにお店があるのに。だからパワーが出ないんです。

これあげます。しっかり食べてください。

え?いいのか。

はい。私はお腹がいっぱいで。

お、お腹いっぱいでグッと。さ、運んじゃいましょう。

四つ葉。ありがとな。お前がいてくれてよかった。

何言ってるんですか。こういうのはもちつもたれつですよ。

こちらこそ上杉さんに認められただけで全てが報われる気がします。

上杉さんが答えを出すまであと二日。

今日みたいな日が過ごせるのもきっとそう。でも、もし私を選んでくれたら。

くそ!なんでだよ。出店停止って。

俺たちこの日のためにやってきたのに。

あんな事故を起こした以上は受け入れるしかないよ。危ないって注意されてたんだよ。

くそ!

お仕事ください。何かお困りですか。

いった。

風太郎のお友達さんですよね。

あれ。ここ。

病院よ。あんたがここにいるって聞いて驚いたわ。全然余裕もってやれてないじゃない。

そっか。心配かけてごめん。

すぐ戻るね。まだやり残したことがたくさんあるんだ。

早くしないと演劇部のみんなが困っちゃう。

四つ葉もう夜よ。

二日目はすでに終わってるわ。

京都で6年前、風太郎と会ったのはあなたですか?

あ、なんで。

あの後、写真を嫌というほど見せられましたからね。

先ほどパンケーキ屋でご兄弟に伺ったところ、あの日一人だけはぐれたことも分かりました。

さすが上杉さんの先生ですね。

あなたにお会いできてよかった。このこと、風太郎には…

言わないでください!

どうしてですか?

がっかりされたくないんです。

上杉さんはずっと正しく努力してきたのに、私は無駄なことに執着した意味のない6年間でした。

誰の役にも立てず、迷惑ばかりかけて、私のいる意味ってなんだろう。

それだけですか?

自分は無意味で必要ない人間だと同じようなことを言ってた人を知っています。

そしてその人は今、前を向いて歩き始めています。

あなたも過去から踏み出せますように。

起きたか。

上杉さん、どうしてください。行かないと。

行ってどうする。もうみんな家に帰ってる。

それならそこへ頭を下げて回ります。

演劇部の方達だけではありません。その後もたくさん引き受けて迷惑をかけた人達。

私のせいで、なんて言えば…

だが通せない。

明日まで絶対安静と言われている。ここを動くつもりはない。

ひとまず座ってくれ。

話してやるよ。

お前がいなくなった学園祭での出来事を。

そこまでよ!勇者一刀!

この人、陸上部の部長さんですよね。

お前に会いたがってたぞ。昨日の公演から観覧していたらしい。

でも、この衣装は私を再選して…

この二人を覚えてるか?

衣服部のお二人、もしかして縫い合わせてくださったんですか?私のせいで…

その二人だけじゃねえ。

気付いたか?

お前のせいで…じゃない。

お前のために集まったんだ。

持ちつもたれつ…だろ?

たまにはお前がもたれたっていいんだ。

託してくれ。俺もお前の世話になった一人だ。

上杉さん、この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

最終日、私の分の仕事をどうかお願いします。

ああ、任せろ。

上杉風太郎君。

久しぶりだな、レナ。

今日も色々あって疲れてるんだ。

また後にしてくれ。

ずっと約束を覚えていてくれてありがとう。

私は守れなかったよ。ごめんね。

そんなこと気にすんな。

風太郎君は気にしてないの?

まあ、昔のことより大切なのは今だろう。

もう君との思い出に頼らない。

自分で自分の価値を探しに行くよ。

だから、これで最後。

ああ、すげえ恥ずかしい夢見た。

学園祭中に色々あったせいだ。

わあ、私ってば思い切ったな。

許してくれるよね。

最後の思い出づくりだもん。

いつまでも昔のこと引きずってる場合じゃない。

これで、私も前に進める気がする。

これで、私も。

これにて、

アサヒ高校学園祭、荒野祭、

すべてのスケジュールを終了します。

あなたは…

その説はお世話になりました、武藤先生。

偉い!

こんなお祭りの中勉強しているなんて、なんとサイックな!

えっと、まあ、大学に入って先生を目指したくて、

憧れだった母と同じ道を…

あ、母も学校の先生でして…

知ってるよ。

え?

僕は彼女の担任教師だったんだ。

君は若い頃のお母さんそっくりだ。

そっくり…

ああ、歪なほどね。

彼女は僕に憧れて似合わぬ教職の道へと進んだ。

最後までそのことを後悔していたよ。

私の人生、間違いばかりでした。

君がお母さんの後を追っているだけなら、おすすめしない。

お兄ちゃん、出店で火事があったって本当?

ああ、怪我人は出なかったかな。

そりゃ何よりだ。

ところで武太郎、学園祭で変なおっさん見なかったか?

そうなの。お父さん今日ずっと行ってたんだから。

見なかったならいいんだ。こう、ヒゲがもさっとした。

ああ、上下反対にしても顔になりそうなおっさんか?

やっぱ来てやがったか。

あのおっさんが何なんだよ。

お前には伝えておいた方がいいかもな。あの男は。

何のご用でしょうか?

君にいつ打ち明けるか迷っていたんだがね。

君のお母さんは元教え子、さらに元同僚、そして、元妻だ。

つまり私は君のお父さんだ。

お父さん?

ずっと会いたかったんだ。

講師として全国を回りながらいつも、どこかにいる君たちのことを思っていた。

そんな時さ、テレビに映るイチカちゃんを見かけたのは、

今こそ父親としての義務を。

今さら何ですか?

あなたのことはお母さんから聞いてました。

お腹の中にいる子供がイツツゴだと分かった途端、姿を消したと。

その時、お母さんはどんな気持ちだったか。

私はあなたを。

ごめんなさい。罪滅ぼしをさせてほしい。

今からでも父親として娘にできることをしたい。

もう、私たちに関わらないでください。

お父さんならもういます。

中野君か。

お母さんが死んだ時、彼が君に何をしてくれた?

娘が亡くなった母親の影を追い続け、

母親と同じ間違った道に歩を進めようとしている。

学校の先生が君にふさわしくないということは、

君が一番よく分かっているはずだ。

父として到底見過ごすことができない。

君たちへの愛が、僕を突き動かした。

イツキちゃん?

なあ。なんというか、いつもと変わりなかったか。

昨日から会ってないから分からないけど、どうして?

お前らの元父親が、イツキと接触した疑いがある。

嘘?なんで?

イツキなら来てないわよ。今日は最終日だってのに。

どうしたんだろう。昨日からずっと部屋にこもってる。

そうか。

待ちなさい。イツキのとこ行くんでしょ。持って行きなさい。

いいのか。

それでこそ風君だわ。そんなとこが好き。

こっちのことは任せて。

イツキをお願い。

お前。

ウェスギ君。こんなこと意味ないというのに、私は何をしているのでしょう。

あのおっさんのことなら気にすんな。どうせ適当なこと言ってるに違…

お母さんも言っていたんです。

イツキ。あなたは私のようには絶対にならないでください。

それなのに諦められない。未だにお母さんを目指してしまっている。

そう願う私は、間違っているのでしょうか。

それもそうか。教師なんてなってもいいことないしな。

優秀な生徒ばかりとは限らない。世の中には想像を絶する馬鹿がいるのだと思い知らされる。

自分のポリシーを曲げてでも、付き合っていかなければいけない。

他人と関わるってのは、真心ともに疲れること間違いなしだ。

中には、反抗する生徒も出てくるだろう。そんな時も逃げ出さず、向き合い続けなければいけない。

マジで大変だったぜ。俺はもうゴリゴリだ。教師なんて絶対になるもんじゃない。

だがそれがどうした。他人のざれごとなんて聞く価値もない。お前の夢だろ。

どれだけ逆風だろうが、進むも諦めるもお前が決めろ。

本当に私の夢なんでしょうか。私はお母さんになりたいだけ。以前、ある人に言われたことがあります。

母を目指して夢を追うのと、夢を目指して母を追うのとでは大きく違い。

お前がそれを理解できているなら、親に憧れ、志すことは絶対に間違いじゃない。

私は…私はお母さんのような先生になりたい!私は私の意志で母を目指します!

生徒が願うなら、家庭教師の俺にできることはひとつだけ。全力でサポートする。それだけだ。

ふやすぎくん。いいことを思いつきました。

勉強、教えてください。

もちろんだ。

ありがとうございます。

ですが、その前に…やらなければいけないことがあります。

こんにちは、ムドウ先生。

よう。まさか、イツキちゃんの方から来てくれるとはね。父親の言葉に耳を傾けてくれるようになった、ということでいいかな?

父親だって?笑わせんな。

ん?君たちは?

うんす。先生、ご無沙汰。

つっても、用があるのはウチらじゃないんだけどね。

ムドウ先生。お元気そうだよ。

中野君。君にも謝るきっかけができてよかった。中野君には苦労をかけたからね。

すまなかった。

いえ。あなたには感謝しています。

ん?

あなたの無責任な行いが、僕と娘たちを引き合わせてくれた。

どうだろう。ことを責任に関しては、君も果たせてないように見えるが。だからイツキちゃんは自らここに来た。頼りない君ではなく、僕のところにね。

イツキ君がここに?何を言っているのですか。よく見てください。ここにイツキ君はいない。

ん?

私はこちらです。

何のつもりだい。

騙してしまい、すみません。ですが、こうなることはわかっていました。

それがどうした。ただ間違えていただけで。

愛があれば私たちを見分けられる。母の言葉です。

また彼女の話か。いい加減にしろ。そんないい加減な盲言、いつまで信じているんだ。今すぐ忘れなさい。お母さんだってそう言うはずだよ。思い出してごらん。彼女がなんて言ったか。

お母さんが後悔を口にしていたのは覚えています。

そうだ。君のお母さんは間違った。君はそうなるな。

私はそうは思いません。

たとえ本当にお母さんが自分の人生を否定しても、私はそれを否定します。いいですよね。私はお母さんじゃないのですから。ちゃんと見てきましたから。すべてを投げ打って尽くしてくれた母の姿を。あんなに優しい人の人生が間違っていたはずがありません。

子供が知ったような口を。

あなたこそ、知ったような口ぶりで話すのですね。その後の彼女が子供たちに、どれほどの希望を生み出したのかをあなたは知らない。あなたに彼女を語る資格はない。

お父さん。

ムドウ先生。最後まであなたから、お母さんへの謝罪の言葉はありませんでしたね。私はあなたを許さない。罪滅ぼしの駒にはなりません。あなたがお母さんから解放される日は来ないでしょう。

ち、僕がせっかく。

見苦しいぜ、おっさん。

ふん。

で、です。

で、全部片付いたのか?

あなたのことです。遠くから見てくれたのでしょう。

さあね。

上杉君、ありがとうございます。お母さんがいなくなってから、その寂しさを埋めるために、お母さんになり変わろうとしていました。いつの間にか、自分とお母さんの境界線が曖昧になってしまい、自分の夢までも自信が持てなくなってしまいました。

私、お母さんを忘れなくていいんですね。

教えてくれたのはあなたです。

ありがとうございます。

いつの間にか空がこんなに暗くなってますよ。もう冬ですね。

急にどうしました?気持ち悪いですよ。

こちらの事情だ。すまんな。

ともかく、私が自信を持てたのはあなたのおかげです。私はお母さんじゃない。こんな簡単なことに気が付けたのはあなたがいたから。

私の理想の教師像はお母さんのままですが。

なんだよ。

え、えっと、つまり、上杉君、君だって私の理想なんだよ。それだけ聞いてほしかったの。

それでは最優秀テンポの発表です。

やった、やった。

あれ?中野さんたちも?

お待たせしました。

いつき、どうだった?

風太郎君にあのこと伝えられた?

ええ。それに父の件のお礼も言えました。みんなにも改めてお礼を。

いいよ、いいよ。

私たち家族の問題でもあったもんね。

で、でも、ありが、ありがとね。

なんか違和感しかないわ。

そんな、みんなまで。あ、みくには変装までしてもらって。

構わない。それに、あんなずさんの変装には満足してない。

この子はこの子で謎のプライド芽生えてるわ。

一般人はあれだけで間違えちゃうんだね。

中身が変わっても顔は同じだもん。

うん。

私たちはいつまでいつ都合なんだろう。

ほらほら、風太郎君との約束まで時間あるし、気分入れ替えて荒野菜楽しもう。

なあ、いつまでこんなとこに座ってる気だ?なんか屋台に食いに行こうぜ。

屋台か、そうだな。

ずっと食ってねえし、池筋米の店があったんだ。

それが終わったら俺は会う約束をしてる奴もいる。

なるほど。

あの姉妹ならさっき見かけたな。

イチカさんもいたから5人勢揃いだったぞ。

へえ、前田君、あの一瞬でよくイチカさんだと分かったね。

え?ま、まあ、おかしな話だが、前からイチカさんだけはなんとなく分かるんだ。

上杉君は当然見分けられるんだろ?

え?そう言われると自信ないな。

最初は今以上に戸惑った。ただでさえ人の顔を覚えるのは得意じゃない。

その上、あいつらその利点をフル活用してきやがる。

何度騙されたことか。最後まで困った奴らだ。

よく言うぜ。

ふと気になったんだけど、一体彼女たちの誰から見分けられるようになったんだい?

よし、屋台行くか。

待ちたまえ。今の間はなんだい?

おい、武田。どういうことだ?

どういうことか。上杉君に聞こうじゃないか。

どうでもねえって。

水臭いじゃないか、上杉君。僕らの中に秘密は不遂。

うっせ。もきもき。

好きなのか?五つ子の誰かが。

学生の本分は学業。それ以外は不要だと信じて生きてきた。

だが、それ以外を捨てる必要なんてなかったんだ。

勉強も友情も、仕事も娯楽も恋愛も、あいつらは常に全力投球だった。

こり固まった俺に、それを教えてくれたのはあいつらだ。

ただそれだけのことに気づくまでに、ここまで待たせちまった。

きっと昔のままの俺なら、今この瞬間もう一人だったかもな。

うらすぎ。

よし、じゃあ屋台行くか。

金持ってねえけど。

え?

金がねえならなんで屋台に行くんだよ。

休憩所ほんと助かる。

ねえ。

決まってる。最後までこの祭りを楽しむためだ。

そろそろ時間ですね。

上杉君、今日の全てが終わる頃、私たちは、各々の部屋で、各々の思いを抱えたまま、あなたを待っています。

あなたが向かうのは、ただ一つの教室。

この提案が、逆にあなたを困らせてしまうことはわかってます。

これが私たちの覚悟。どうか、それを理解してください。

これにて、旭高校学園祭、荒野祭、全てのスケジュールを終了します。

上杉君、やるじゃん、太郎君。

終わったよ。

あの時にはもう、心に決めていたんだね。

これからですよ、上杉君。

あった。

よう。

待たせたな。

え?上杉さんが、なんでここに?

お前に会いに来たんだ、四つ葉。

嘘ですよね。

う、嘘です。こんなことありえません。

だよな。なんでこんなことになったんだか。

つが、俺の方が結構待ったぞ。なんでここにいなかったんだよ。

だって、私のところに来るなんて、みじんも。

せっかく、作りたてを買ってきたのに。

それって。

お前がくれた控え券だろ。ほら、食えよ。

ずっと待ってたんですか。

ああ。ここでお前と食うと決めてた。

それで、ああ、こんな結果と知ってもらった上で、一応聞いておくが、お前は。

ごめんなさい。

はい。

あれ?上杉さん?

おーい、上杉さーん。

これでも勇気出してきたんだが、まさか速答されるとは。

あの、上杉さんが渡しよっていうのは、とっても光栄なんですが。

上杉さんには、もっといい人がいるはずです。

私なんかで収まってちゃ、もったいない。

どういうことだ?

ほら、私じゃなくて、みんなの方が。

みんな?

今はお前に聞いてるんだ。

お前の気持ちを教えてくれ。

あの野郎!

逃がした。

上杉くん。

五木?あいつらは?

四つ葉なら向こうに走っていくのを見ました。

あなたが向かうべき場所は一つのはずです。

余計な気遣いは傷つけるだけですよ。

そうだな。すまん。

四つ葉、お前いつも言ってたよな。

何度も何度も、しつこいくらいに。

後悔のない林間学校にしましょうね。

後悔のない修学旅行にしましょうね。

一ミリも悔いの残らない学園祭にしましょう。

俺は諦めねえぞ。

待て!

ごめんなさい、上杉さん。

私だけが特別であっちゃいけないんです。

こんな私なんかが。

みんな、どこなの?

ごめんなさい。

いや、こちらこそ不注意でした。すみません。

もうこんな時間。

とりあえず、バスに乗って帰るか。

お昼に買ったお守りで、全財産使っちゃったかも。

アホか。言っておくが俺の手持ちは、

この二百円だけ、貸せねえぞ。

うん、わかってる。じゃあ気をつけて。

あ、なくなっちまった。

俺んち貧乏で、毎回五円なんだよ。ケチいよな。

風太郎君はお金がなくても辛くないの?

どういうことだ?

うちもそうなんだよね。

家族のために、お母さん一人で働いてくれてるんだ。

それでね、たまに思うの。

千万がいなきゃ、もっとお母さんは楽だったのにって。

お前。

だから、これからたくさん勉強して、うーんと賢くなって、

とびっきりお給料のもらえる会社に入って、

お母さんを楽させてあげる。

そしたらきっと、私がいることに意味ができると思うんだ。

すげえ。お前、大人だな。

え?

だよな。俺もめっちゃ勉強して、

頭よくなって、金稼げるようになったら、

妹に不自由ない暮らしをさせてやれるかもしんねえ。

必要ある人間になれるのかもな。

はあ。

頑張ろう、二人で。

私はお母さんのために、

風太郎君は妹さんのために、一生懸命勉強しよう。

はあ。

なあ。

俺とお前で100円分ずつ、神様に頼んどこうぜ。

はあ。

よつば。

あ。

そのリボン、似合ってますね。

ありがとう。

これならもうみんなと間違えられないよね。

さあ、どうでしょう。

何を身につけているかなんて、

大した差ではありません。

それだけじゃないよ。

私、みんなより勉強して、

この前なんて一番だったんだよ。

勝ってるんだよ。

私はもうみんなと同じ場所にいない。

そっくりなんかじゃない。

お母さん。

見て見て。

あら、可愛いですね。

よつばを真似してつけてみたんだ。

よつば、あなたの努力は素晴らしく、

何も間違っていません。

ですが、一番にならずとも、

あなたたちは一人一人特別です。

親としてあなたたちに一緒にいてほしいと願います。

たとえどんなことがあったとしても、

大切なのはどこにいるかではなく、

二人でいることです。

やっぱり相性よくなってなかったんじゃない?

失礼するよ。

こうやって話すのは初めてだね。

君たちは僕が責任を持って引き受ける。

お母さん、私たち中学生になったよ。

でもね、五人一緒なんて無理だよ。

私たちはもう一緒ではいられない。

お父さん、見てこれ。

この前のテスト、五人の中で一番だったんだ。

よくやった。

陸上部に誘われたんだけど断ったんだ。

でも勉強に集中したいから仕方ないよね。

これからも励みたまえ。

なんか冷たいな。

お母さんだったらもっと褒めてくれるのに。

褒めてくれるよね。

アウタロウ君も今頃勉強してるのかな。

ヨツバ、これもうやらないの?

勉強の邪魔になっちゃうからね。

じゃあこれ借りちゃおっかな。

よしよし、順調に上がってきている。

これからもっと頑張ろう。

ヨツバ、歴史のテストこんな点取っちゃった。

ヨツバに借りたゲームのおかげだよ。

そ、そっか、よかったね。

もっと頑張らないとたくさん勉強してうんと賢くなって

とびきりお給料のもらえる会社に入って。

私は何のために勉強してるんだろう。

特別じゃなくていい。

大切なのは5人でいることですから。

5人でいることがなんで大切なの?

私、わかんないよ。

黒腹女子高等学校、ビッグ勝負の皆さん。

インターハイ出場、おめでとうございます。

お母さん、見てる?

私、みんなに褒められてる。

いろんな人に必要とされてる。

姉妹の誰でもなく、私だからなんだよ。

最近ずっと練習ばかりだけど、平気?勉強できてる?

よかったら私が教えてあげようか。

私はもうみんなと違う。

一緒にしないで。

私が姉妹で一番なんだ。特別なんだ。

ついついし不合格。中野よつばさん。

あなたを落台とします。

そんな、嘘ですよね。

嘘ではありません。

だって、あんなに部活で結果を出したのに!

この前だって、バスケ部で…

関係ありません。

再三警告をしたはずなのに、

あなたは多重入部を辞めようとしませんでした。

荷物をまとめなさい。

えっ?転校?

私の知り合いが理事を務める男女共学の学校だ。

夏休み明けから、君はそこに通うことになる。

私だけ?

あれ?私は特別なはずなのに。

私がいる意味を作ろうとして、必死にやってきたけど。

私、なんで一人なの?

一人になったら、私はどうしたらいいの?

どうしたら特別になれる?

どこに進んでいいのかわからないよ!

待って。

ヨツバが転校するなら、私たちもついていくわ。

何を言ってるんだ!君たちは試験を通過したはずだろ!

ええ、合格できたわ。カーニングしたおかげで。

そ、それは本当か!

私たちもでーす。

みんな…なんで…なんで私のために…

ヨツバ、あんたがどう考えてるのか知らないけどね。

私はあんだだけいなくなるなんて、絶対に嫌!

どこに行くにもみんな一緒だよ。

それが、お母さんの教えですから。

ヨツバ、どんなことも、私たちはみんなでご当分だから。

困難を、5人でなら乗り越えられるよ。

お母さんが言ってたのは、こういうことだったんだね。

もう、誰が一番だなんて考えるのはやめよう。

私は、みんなのために生きるんだ。

お?

百点堂!

ま、待て!

今の私は、姉妹みんなのおかげでここにいる。

あの思い出も、この思いも、消してしまおう!

大丈夫ですか?

お前の姉妹たちはみんないい奴で、すげえ奴で、大好きな奴らだ。

あいつらの家庭教師をやれたことを、誇りに思う。

だが、お前がいなければ、俺はとっくにつまずいていた。

なんで、そんなこと?

俺は弱い人間だから、この先何度もつまずき続けるだろう。

こんなダセえ俺の勝手な願いなんだが、その時は四つ葉、隣にお前がいてくれると嬉しいんだ。

安心すんだよ。

お前は俺の支えであり、俺はお前の支えでありたい。

だから嫌いならそれでいい。

お前の気持ちを聞かせてくれ。

私は、上杉さんが…

言うんだ。これで全部終わりにしよう。

上杉さんが嫌いです。嫌い、嫌い、嫌い…

好きです。私、上杉さんには嘘をつけません。

ずっと、好きでした。

ですが、すみません。まだやらなくちゃいけないことがあります。

え?付き合ってないの?

実はな。

そっか。付き合ってないんだ。それなら、まだ風太郎君は誰のものでもない。

ほら、シャキッとする。四つ葉は好きって言ってたんでしょ?じゃあ両思いじゃん。くよくよしてたら嫌われちゃうよ。

だな。ありがとな、一花。

たとえあんたが選ばれる日が来たとしても、私は祝福したかった。

ニノの言ってたこと、今なら分かるよ。

私がずっと風君のこと好きだって知ってたはずよ。それが分かってて昨日を迎えたはずでしょ。今あんたに心配なんかされたくないわ。

心配だよ。ニノは大切な家族だもん。

それなら、あたしとあんたはここまでよ。もしこのままの関係が続くようなら、姉妹の縁、切らせてもらうわ。

四つ葉。こんなところにずっといたら体が冷えちゃうよ。

ミック。

私、四つ葉。

何事?

考えたんだ。私が選ばれないなら、四つ葉になりかわって、風太郎と付き合う作戦。

どうかな?

ダメじゃないかな。倫理的に。

さ、寒っ!

場所、変えようか。

わ、私たちだけでカラオケ来るの、初めてだね。

うん。

四つ葉。

あ、あ、何?

冗談だから。私が四つ葉になりかわるってのは冗談。

私は四つ葉の真似はできても、四つ葉にはなれない。このジュースは私には甘すぎる。

ミック。

でも怒ってはいる。私だったら、風太郎を困らせるようなことはしない。

返事を迷ってるんだってね。四つ葉は風太郎に少なからず好感を持ってたと思ってたけど。

迷ってない。私の気持ちはずっと前から変わってないよ。上杉さんのことをずっと思い続けてる。

それならなおさら、躊躇する理由はないはず。どうせ前の学校のことでも気にしてるんでしょ。

私たちのことは気にしないで、付き合っていいんだよ。

はぁ…

なんて言うと思った。

あ…

なんとなくわかってはいたけど、それでも悔しいものは悔しい。どうしても感情が抗ってしまう。それだけ本気だった。

もし、四つ葉もそうだったなら、私たちのこの感情も受け止めて欲しい。

ニノの気持ち…私はわかってあげられてなかった。怒られて当然だよ。

ニノが言ってた。恋愛で、私たちは敵でも仲間でもないって。

うん。

そっか、そう思ってくれるのなら、せめてもの抵抗。絶対に背中押してなんてあげない。

せっかくだし歌おう。

だね。聴いてて。ミクより絶対うまく歌おうから。

望むところ。

わぁ、見て。いい天気。

さすがに夜通し歌い続けるとは思わなかった。

ねぇ、ミク。私、みんなに会いたい。

四つ葉は一つ誤解してる。これはあえて、四つ葉本人には言わないのだけれど。

あの時、今の学校に来る選択をしたからこそ、風太郎に出会えた。少なくとも私は、それを不幸だとは思わない。

風太郎に出会えたから、私は…

行こう、四つ葉。

私は、四つ葉になれなかったけど、四つ葉だって私にはなれない。

ようやく、そう思えるほどに、私は私を好きになれたんだ。

イツキ。

ちょっといいか。

な、なんでしょうか。

えっと、話したいことが、ここじゃまずいか。

でしたら、こちらで。

あの、お話って…

キュッ。

キュキュキュキュキュー。

す、すみません。

いった、ああ、気にすんな。

ずっと感じてる、この胸のモヤモヤは。

ここ開いてるじゃん。

私たちイツツゴの輪を乱し始めたのは、四つ葉、あんたよ。

自分勝手でごめん。

昨日だってニノのこと考えず、押しつけるばかりで。

だけど、今も考えてることは同じ。

私の願いは…

あきれた。まだそんな甘いこと言ってるのね。

私が認めるわけ…

え?

ち、きゅう。

なんだ、ネズミか。

ネズミがいるのね。

あ、あぶねえ。

やっぱ、ドア開けるのは厳しいが。

あ、あんまり近づかないでください。

こんなところ、四つ葉たちに見せられません。

もうお昼休みも終わっちゃうわ。帰りましょ。

待って!

なによ!

私なりの覚悟をもって伝えに来たんだ。

私の願いは、上杉さんと私の付き合いを認めてもらうこと。

だからそれは…

ただ、それは今じゃなくていい!

数ヶ月…数年…どれだけ時間がかかるか分からないけど…

私が上杉さんをどれだけ好きなのか、この思いの強さを見ててほしい!

きっと負けてないから!

そうね。たとえ今のあんたに謝られたり説得されたりしても、私は納得できないでしょうね。

それを分かったうえで、あんたは茨の道を進むつもりなのね。

私は、上杉さんを好きなのと同じくらい、姉妹のみんなが好きだから!

まったく、馬鹿ね。だけどよつばらしいわ。

五つ子の枷から解き放たれて突き進んでいく。

あんたの背中が気に入らなくて、羨ましかったわ。

あんたはまだ私を競い合う相手として見てくれてるのかしら?

もちろんだよ。私たちはずっとお互いを意識しながら生きていくんだ。

時には仲間、時には敵。そんな…

ライバル…よね?

ここで勝負は終わってない。少し後ろであんたたちの育成を見ててあげる。

ほんの少しでも好きなって見せたら、私が彼を奪ってやるんだから!

う、うん!

そろそろいいかしらね。ネズミの二人、出てきなさい!

気づいてたのか?

あ、あのその…

う、上杉さんたち!いつから!?もしかして、ずっと聞いて…

すまん…

聞いてたわよね、風君。

そういうことだから、夢夢油断しないようにね。

ああ、肝に銘じておくよ。

あなたも厄介な姉妹に手を出してしまいましたね。

でも、これでやっと言えそうです。

あなたは、一人じゃない。

上杉君、おめでとう。

本日はお誘い頂き、ありがとうございます。

休みの日に悪いな。

い、いいえ、そんな、嬉しいです。

そうか…

なんだかんだ、学校じゃ二人きりになれなかったかな。

あはは、確かに。

でも、私たちの仲間だったから、

なんだかんだ、学校じゃ二人きりになれなかったかな。

あはは、確かに。

どこで誰が聞いてるかわからないです。

落下物確認のため緊急停止しました。

お客様には大変ご迷惑をおかけしました。

これ、逆じゃない。

ですかね。

さあ、好きなものを好きなだけ頼んでいいぞ。

俺のおごりだ。

よかったわね。

もどかしいわ。

なんでデートの行き先がファミレスなのよ。

ういういしくていいと思う。

これ、お願いします。

あ、クーポン使ってる。

駄目なの?

デートでクーポンとかNGでしょ。

二郎君にしては頑張った方だよ。

お前は、体育大学の推薦を受けるんだよな。

はい。

じゃあ、やっぱ、夢?

何かのスポーツ選手にでもなるのか?

いえ。小さい頃の夢は忘れてしまいましたけど。

私はやっぱり、誰かのサポートをして支えることが自分に合ってると思います。

諦めから始めたことでしたが、今ではそれも誇れることだと気づいたんです。

そうか。お前らしいな。

そう思えたのは、上杉さんがそうだったから。

そうなのか。

そうです。

なので、もし大学に受かったら、そういった仕事につけるよう勉強しようと思います。

そ、そうか。

あ、すぐする。

押さえて、押さえて。

悪いな。図書館なんて退屈だったら。

いえ。上杉さんとなら、なんだって最高に楽しいです。

じゃあ、最後に一か所だけいいか。

はい。

四つ葉。もう背中を押さなくても良さそうですね。

ここって。

懐かしいな。

お前、このボロブランコ好きだったの?

これは、上杉さんの思い入れのある場所に連れてってくれるはずじゃ。

ああ。家族でたまに行くファミレス。勉強によく使う図書館。

お前と来たその日から、ここもその一つだ。

いいんでしょうか。本当はまだ迷っています。

姉妹のみんなを差し置いて、私だけ、こんな幸せな思いをしていいのかと。

この選択は正しいのかなって。

お前、ここからすげえ飛んでたよな。また見せてくれ。

え?

はい。それならお安いご用です。

ここだ!

どうです?

四葉。

もし俺がそこまで飛べたら、聞いて欲しい話がある。

え?それは…

行くぞ!

いや、無理しないでください!

見ててくれ!

もっと…もっと行けるはずだ!

死んじゃう…

四葉。こんな、手と一つこなすことのできない未熟者の俺だが、それでも、お前の横に立って並べる男になれるよう精進する。

正しい道も、間違った道も、一緒に歩いていこう。

だから、お前が良ければ、俺と…俺は…好きです。

結婚してください。

え?

びっくりしました!私、てっきり、段階を飛ばしすぎです!

そ、そうだよな。謝った。

付き合う前からそんなこと言われたら引きますよ!私じゃなかったらの話ですけど!

すまん。もう一回だけやり直させてくれ。四葉。

小さい頃の夢、思い出しました。みんなが憧れてた、出たのやつ。お嫁さん、です。

上杉さん、約束ですよ。いつかきっと、私の夢を叶えてください。

じ、実はな、お前たちに、お前たちに、言っておかなくちゃいけないことがあるんだ。

俺が受ける大学、ずっと言えなかったが、と、東京なんだ!

え?そんなこと知ってるけど。

は?

あえて聞くことはしませんでしたが。

ふうくんならそうだろうと思ってたわ。

だよね。私たちは全然気にしてない。

あ、そう?

受験、頑張って。

いつでも会いに行ってあげるわよ。

うん。ありがとな。お前たちと会えてよかった。またな。

はい、また明日。

予想通りでしたね。

珍しく寂しそうだったわ。

でも、ちょっと嬉しいかも。

上杉さんの、あんな顔が見られるなんて、ラッキー。

バカ、泣かないって決めたでしょ。

ニノだって。

夢とか目標とか、私もあんたたちみたいになれるのかしら?

ニノならできるよ。私たちなら。

うん。もう少しだけ、あんたに付き合ってあげるわよ。

そっか、よろしく。

久しぶり!

中野さん!エヴァンヌス!

お願いします!

お母さん、私、やったよ。

ねえ、よつば。大学受かったら一人暮らしって、本当に無理してない?

いちかは心配症だな。離れていたって平気だよ。

だって、私たちはみんな。

らしくもなく緊張してるのかい?

かもな。

だが、俺は一人じゃねえ。

きっと、あいつらも。

いちか、もうすぐ着くって。

あら、それじゃあ私たちも準備するわよ。久しぶりの全員集合ね。

この国も変わらないわね。

帰ってきたわ。日本!

旅行行ってただけでしょ。

お、いつきちゃん!お迎えありがとう。

あ、有名人なんだからこっそりこっそり!

いらっしゃー!って。

あんたたちか。

いちか、久しぶり。

うんうん、二人とも元気そうでよかった。お店も大繁盛のようで。

へえ、さすがアメリカカベレはジョークがお上手ね。

実際、アメリカに行ってみてどうだった?

うーん、まだイントネーションだけが不安かな。

いちか、イントネーション。

あっちゃ、厳しいな。

一応先生だからね。

食べていくでしょ。今用意するね。

やったー!

アメリカのあんな気取ったカフェに行ってる人の口に合うかしら。

あれ?私が行ったこと教えたっけ?

ニノ、いつもいちかのインスタ見張ってるから。

ビーク、言うんじゃないわよ。

そうだ、それならお礼にこのお店も紹介しちゃって。

待って。

うん?

いちかの人気にあやかれば、お客さんも絶対増える。

とっても嬉しいけど、今はまだ遠慮しとく。

最近は常連さんも増えてきたんだ。

こんな設備の整った場所を貸してくれた。

お父さんのためにも、もう少しだけ私たちの力でやってみたい。

……

な、なに?

うーん!自慢の妹!どこに出しても恥ずかしくないよ!

あんたが売れなくなったら働かせてあげてもいいわよ。

あっちは可愛くないな。あれはあれで可愛い。

うん、うん、うん。

あっ!

みんな、今日の主役の登場だよ。

ふぅ。どうも皆さんお集りで!

なんで汗だくなのよ。

なんだかじっとしてられなくて、うちから自転車で走ってきたんだ。

走ってきたって、えぇ!?

大事な式の直前に何してんのよ。

さすがに上杉君は電車だよね。

うん。風太郎は昨日から来てるよ。だからまだ寝てるんじゃ。

え、なに?

これはいよいよ認めざるを得ないね。

ふん。だから朝っぱらからこっそり呼んだのよ。

あっ、私の担当のメイクさん来てくれるって。

本当にやるの?

なにおじ気づいてんのよ。あんただって乗り気だったじゃない。

だね。上杉君には確かめておかないと。

イチか。

うん。つけてきたよ。これが私たちからの結婚祝い。

お母さんの形見のピアス。

ヨツバ、覚悟できてるわよね。

うん。

お願いします。

じゃあ行くわよ、みんな。

せーの!

ヨツバ、結婚おめでとう!

しんろうさま、神父のご親族さまがお越しくださいました。

よかった。来てないかと思ったぞ。なんで式に出てくれなかったんだ。

すまないね。来るべきか否か、直前まで支案していたんだ。

お、お父さん!

君にお父さんと呼ばれる筋合いはない。

お越しくださって、ありがとうございます。昔は若さゆえの数々のご無礼を…

上杉君、担当直入に聞く。

は、はい。

ヨツバは心から喜んでいるかい?

はい。僕も同じく。

ワインをいただこう。

え?は、はい。ただいま。

えっと、ウータローの控え室は?

母が死んだのは10年以上前のことです。

事故が起きたのは、母の夢であった自分の料理店を出した直後でした。

うちに残されたのは、開業式のために借りた多額の借金だけ。

親父がニノとミクにあの秋店舗を貸したのも、半分はあいつらを助けるため、

そして半分は母の夢を託すためだったのかもしれません。

一人の女性を一生かけて愛せる。

俺はそんな男になりたい。二人の父のように。

よしてくれ。

だ、すみません。

慣れていないんだ。父と呼ばれることにはね。

神郎様。神父様がお呼びですので、お越しください。

え、えっと。

来たまえ。

へへへ。

魔郎よ。俺らもふけたもんのな。

酒は祝いごとにしか飲まないんじゃなかったのか?

そうだ。だから飲んでいる。

あ、うまくいくと思うか?

そんなもの、親が判断できること柄ではないだろう。

ただし、ひと筋縄ではいかないことは確かだ。

何しろ相手は、僕の娘だからね。

ふーたろ。五つ子ゲーム、ファイナルだよ。

愛があれば、見分けられるよね。

……。

皆様、本日はご多忙の中、僕たちの結婚披露宴にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

五つ子ゲームって……。

馬鹿か!てか四つ葉以外の四人!こんなお遊びでウェディングドレス着てんじゃねえ!

何してるかわかってんのか!

確かにちょっと複雑だけど、思いついちゃったもんね。

それに、お遊びじゃないよ。

これでも花嫁の親族だからね。

……。

ていうのは嘘で、私が花嫁本人です。

違うよ、私だよ。

花嫁といえば私。

ふーたろなら、わかるよね。

たく、馬鹿野郎。

少しは分別のつく大人になったかと思えば、相変わらずのようで安心した。

俺を舐めんな。

お前だ。

改めて家族に感謝します。

今日の私があるのは、父、母、そして姉妹のみんなのおかげです。

お父さんが私のお父さんになってくれてよかった。

お前がイチカだ。

長女のイチカは、個性豊かな私たちをまとめてくれるお姉さんです。

ご存知の通り、大活躍の女優さんで、私の憧れの存在です。

なんだ、お姉さんびっくりしたよ。

懐かしいな。お前にはずいぶん手を焼かされた。

クールビューティーなんて世間では歌ってるが、俺は騙されねえ。

血だらく、愚鈍、座民を貪る、タイダだ。

そ、そこまで言わなくても。

それでも、強くあろうとする姿が、俺には眩しく見えた。

大した長女だよ、お前は。

うん。

次はお前だ、ニノ。

次女のニノは、ちょっぴりおこりんぼうだけど、強くて厳しくて、私たちの背中を押してくれるお姉さんです。

女子力抜群で、私も見習わなくちゃいけません。

そうよ、正解。はいはい、よかったわね。

なんでこんな時に、四つ葉だけ当てればいいのよ。

お前の強さは、その一一倍の弱さの裏返した。

厳しさも、それだけ大きな愛情があるからなんだろうな。

あの頃の俺は、その答えを見つけることができなかった。すまん。

いいわよ。私は後悔してない。

そうか。

ミクだな。

うん。

三女のミクは、不思議とお姉さんという感じではありません。

同じ立場で接してきた親友に近いかもしれません。

だからこそ、自分の夢を叶えたミクを尊敬しています。

たまに不安になる。私、うまくやれてるかな?

俺が答えるまでもない。

お前はそうやって常に自分と戦ってきた。

そうして勝ち得た結果は、間違いなくお前の戦果だ。

自分を信じろ。お前は昔から出来る奴だ。

そう言ってくれると思ってた。ありがとう、ウタロウ。

残るはお前だ、イツキ。

え?

え?

私が四つ葉だけど。

なんて。

じゃーん、イツキでした。

どう?上手くなったでしょう?

イツキは、私が唯一お姉さんを出来る可愛い妹です。

実際は私なんかよりずっとちゃんとしてるんですけどね。

私がどうしていいか悩んでいる時、背中押してくれたのもイツキでした。

この、焦らせやがって。

この際だから言わせてもらうが、お前に会ってからだ。

俺の人生が狂い始めたのは、諸惑の根源、妖怪カレー食い女!

私だって、あなたと出会うまでこんなデリカシーのない人がいるなんて想像もつきませんでした。

頭でっかち、天然キスマ!

やっぱりあなたとは一生馬が合いそうにありません!

イツキ、昔の区長に戻ってる。

仕方ないよ。ウタロウ相手だとね。

これでも精一杯で生きてるんだよ。

うん。

そしてお前が、四つ葉だ。

はい!正解です!

姉妹のみんながいなかったら、私の人生は全く別のものになっていたでしょう。

五つ葉ということが追い目に感じたこともあったけど、

その何倍、何百倍も楽しかった記憶が残っています。

こんだけ長く付き合ってりゃ、嫌でも覚える。

俺は家庭教師だったが、お前たちからは、

多くのことを教わった。

お前たち五つ葉に出会えたこと、数少ない俺の自慢だ。

私は、みんなと五つ葉の姉妹として生まれることができて幸せでした。

他の家とはちょっと違って、人から見たら奇妙なのかもしれませんが、

私は、そんな家族が大好きです。

五年か。これでようやく一段落だな。

私も緊張の糸が解けて、一気に疲れが来たよ。

やっぱお前も緊張してたんじゃねえか。

風太郎ほどじゃないけど、誓いのキスのとき手ブルブルだったもん。

あれは仕方ねえだろ。みんな見てるし、

お前とだって、五年前のことを思い出してな。

あれはやっぱり…

神秘様、控室にお忘れ物がございました。

ありがとうございます。

ごめんなさい。やっぱりもういらないので、捨てておいてください。

かしこまりました。

いいのか。トレードマークだろ。

いいんだよ。

あなたたちは一人一人特別です。

どんなにそっくりでも、私に気づいてくれる人がいるから。

何してんだ、お前ら。

ご苦労様。いい式だったね。

何って決まってるわ。

式が終わればすることは一つ。新婚旅行よ。

は?な、待て。ついてくるつもりか。

当然。その行き先に悩んでるところ。

こいつらめちゃくちゃだ。

みんな一緒の方がもっと楽しいよ。ね?

そうだそうだ。

それなら、行きたいとこ指さそ。

よつばがそう言ってくれるのなら。

なんか前にも同じことで揉めなかった?

ああ、高校の!

じゃあ行くよ。せーの!

うえすぎくん、起きて。

おはようございます。

ふーたろうくん見てたら、私も眠くなってきたよ。

風邪ひいちゃう。

そんなとこで寝てないで、早く起きなさいよ。

結婚式は?

なに?

気が早いね。

いつまでも寝ぼけてないで、さっさと決めるわよ。

ん?なにをだ?

卒業旅行、ふーたろうが提案してくれたんでしょ?

そ、そうだったな。

と、とりあえず5人で指差ししよ。

俺の意見は?

結果は知れてるけどね。

俺もやめといたほうがいいかと。

じゃあ、せーので行きますよ。

おい!

せーの!

坂本龍も見に行くの?

それ、修学旅行と変わんないじゃない。

行くなら沖縄よ。

北海道は美味しいものいっぱいあるもんね。

す、素敵な場所もたくさんあるんです。

み、みんな!ここはジャンケンで!

そうだ。あの時も同じことを思ったんだ。

全然違うね。

ふーたろうは?

うつごってめんどくせ。

うつごってめんどくせ。

当たり前のように一緒に過ごした日。

開くたび増えた大事なもの。今でも懐かしい気持ちを思い出せるよ。

ありがとうが溢れてくね。君がいてくれてよかった。

胸に宿る暖かさは未来が始まるストーリー。

ありがとうの花咲くたび、輝いてゆくストーリー。

迷うことなく進めばいい素晴らしい距離。

ほら、きれいだよ。

時にはケンカもしたっけ?

ごめんねが見えなくて。

意地を張ってみたり弱気になっても、

気づけば元通りの形だね。

本当はまだ寂しいんだよ。君が遠くなる気がして。

嬉しいのに泣けてきちゃう似てるね。

ありがとうを誓いにして、大きな愛を育もう。

そう、彼となら大丈夫だね。誇らしい。

ほら、だって息ずっとずっとこれからも。

ご視聴ありがとうございました。