All language subtitles for Kagemusha Tokugawa Ieyasu 1
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1
00:00:55,230 --> 00:00:57,800
<美濃 関ヶ原において➡
2
00:00:57,800 --> 00:01:01,840
天下分け目の大戦が
始まろうとしていた。
3
00:01:01,840 --> 00:01:04,290
太閤 豊臣秀吉の死後➡
4
00:01:04,290 --> 00:01:08,900
着々と権力を強めてきた
徳川家康に対して➡
5
00:01:08,900 --> 00:01:12,030
石田三成が反旗を翻し➡
6
00:01:12,030 --> 00:01:17,030
豊臣家の復権を賭けて
戦を挑んだのである>
7
00:01:29,330 --> 00:01:32,670
< この日 徳川家康の本陣には➡
8
00:01:32,670 --> 00:01:37,320
まったく同じ顔をした
二人の男が鎮座していた。
9
00:01:37,320 --> 00:01:40,320
一人は家康>
10
00:01:43,960 --> 00:01:48,460
< いま一人は
その影武者である>
11
00:01:56,010 --> 00:01:58,050
(銃声)
12
00:01:58,050 --> 00:02:00,030
(馬の いななき)
13
00:02:00,030 --> 00:02:02,330
(銃声)
14
00:02:15,030 --> 00:02:17,030
撃て!
15
00:02:19,050 --> 00:02:24,350
<合戦の火蓋が切られたのは
午前八時のことである>
16
00:02:39,290 --> 00:02:42,440
宇喜多様の ご陣のようです。
17
00:02:42,440 --> 00:02:44,440
うん。
18
00:02:46,790 --> 00:02:53,000
ふふ 今日の戦
我らの勝ちは疑いもない。
19
00:02:53,000 --> 00:02:54,940
何ゆえでござる。
20
00:02:54,940 --> 00:03:03,310
徳川秀忠率いる三万八千の軍勢は
この戦に間に合わぬ。
21
00:03:03,310 --> 00:03:06,980
信州上田の
真田勢に食い止められて➡
22
00:03:06,980 --> 00:03:10,350
いまだ岐阜にも
着いておらぬそうだ。
23
00:03:10,350 --> 00:03:17,320
されば 敵の兵力は八万
味方は十二万➡
24
00:03:17,320 --> 00:03:19,780
敗れることなどありえぬ。
25
00:03:19,780 --> 00:03:21,810
はははは。
26
00:03:21,810 --> 00:03:28,310
しかし 思うとおりにいかぬのが
戦の常でござる。
27
00:03:39,580 --> 00:04:08,290
♬~
28
00:04:08,290 --> 00:04:13,330
⦅六郎 お前の命 わしにくれぬか。
29
00:04:13,330 --> 00:04:15,320
命を?
30
00:04:15,320 --> 00:04:18,820
味方は総勢十二万の大軍だが➡
31
00:04:18,820 --> 00:04:23,340
我が身を捨てて戦うのは
恐らく そのうちの三万。
32
00:04:23,340 --> 00:04:25,790
三万?
33
00:04:25,790 --> 00:04:30,980
あとは戦の成り行きしだいで
どう転ぶか知れぬ。
34
00:04:30,980 --> 00:04:32,980
それでは 明日の戦は➡
35
00:04:32,980 --> 00:04:35,400
負けと決まったようなものでは
ございませぬか。
36
00:04:35,400 --> 00:04:41,180
しかし それを勝ちに転ずる
手立てが 一つだけある。
37
00:04:41,180 --> 00:04:43,330
どのような?
38
00:04:43,330 --> 00:04:46,830
家康公のお命を頂戴する。
39
00:04:50,800 --> 00:04:56,370
よいか 六郎。
福島 黒田といった敵の諸将は➡
40
00:04:56,370 --> 00:05:01,330
徳川内府殿という扇の要一つで
まとまっているのだ。
41
00:05:01,330 --> 00:05:04,300
その要が失せればどうなる。
42
00:05:04,300 --> 00:05:09,190
とはいえ 内府殿に近づくだけでも
なまなかなことでは。
43
00:05:09,190 --> 00:05:14,280
なればこそ 忍びの技を持つ
おぬしに頼んでいるのだ。
44
00:05:14,280 --> 00:05:18,030
六郎➡
45
00:05:18,030 --> 00:05:21,530
内府殿と刺し違えてくれるか⦆
46
00:05:26,300 --> 00:05:28,300
はっ。
47
00:05:37,400 --> 00:05:43,400
<戦いの序盤は 石田三成率いる
西軍が優位の形勢であった>
48
00:05:54,330 --> 00:05:58,830
井伊兵部少輔様ご同勢
内藤修理様 討ち死にに!
49
00:06:00,870 --> 00:06:02,970
うん。
50
00:06:07,910 --> 00:06:12,410
水野左衛門尉様 討ち死に!
51
00:06:14,820 --> 00:06:16,800
(舌打ち)
52
00:06:16,800 --> 00:06:37,880
♬~
53
00:06:37,880 --> 00:06:42,380
申し上げます。
大須賀隼人様 討ち死に!
54
00:06:49,420 --> 00:06:54,020
《家康は
どちらが本物の家康だ!?》
55
00:06:59,330 --> 00:07:02,300
《どちらが本物の家康だ!?》
56
00:07:02,300 --> 00:07:07,370
申し上げます。
堀田帯刀様 討ち死に!
57
00:07:07,370 --> 00:07:12,370
《本物の家康は… どちらだ!?》
58
00:07:21,290 --> 00:07:24,370
陣を進める。 仕度をさせい。
59
00:07:24,370 --> 00:07:26,670
(一同)はっ。
60
00:07:28,630 --> 00:07:31,330
馬引けい!
61
00:07:31,330 --> 00:07:34,310
《どちらが本物だ!?》
62
00:07:34,310 --> 00:07:37,310
馬は まだか!
63
00:07:43,990 --> 00:07:49,650
⦅内府殿は いら立つと
爪を噛む癖がある⦆
64
00:07:49,650 --> 00:07:51,670
まだか!
65
00:07:51,670 --> 00:08:28,690
♬~
66
00:08:28,690 --> 00:08:35,190
(うめき声)
67
00:08:38,830 --> 00:08:40,780
はっ。
68
00:08:40,780 --> 00:08:54,630
♬~
69
00:08:54,630 --> 00:08:56,660
影を中へ。
70
00:08:56,660 --> 00:08:58,650
はっ。
71
00:08:58,650 --> 00:09:01,340
方々 ご安心召され。
72
00:09:01,340 --> 00:09:05,310
討たれたのは影
大殿様は ご無事でおわす。
73
00:09:05,310 --> 00:09:08,310
(一同)おぉ。
74
00:09:14,450 --> 00:09:18,950
(歓声)
75
00:09:20,820 --> 00:09:24,370
内府殿 討ち死に!
76
00:09:24,370 --> 00:09:27,870
内府殿が討ち死になされた!
77
00:09:34,450 --> 00:09:38,360
内府殿 討ち死に!
78
00:09:38,360 --> 00:09:43,330
徳川内府殿が
たった今 討ち死になされた!
79
00:09:43,330 --> 00:09:45,310
何と!?
80
00:09:45,310 --> 00:09:47,870
お味方に さようお伝えくだされ。
81
00:09:47,870 --> 00:09:51,150
あっ 五の旗印 うぬは徳川の…。
82
00:09:51,150 --> 00:09:54,150
待て 勘違いするな。
83
00:10:01,810 --> 00:10:03,800
申し上げます。
84
00:10:03,800 --> 00:10:08,290
只今 徳川内府殿が
討ち死になされたとの報せが!
85
00:10:08,290 --> 00:10:10,990
まことか。
はっ。
86
00:10:10,990 --> 00:10:14,940
この上もない吉報。
急ぎ 殿にお伝えよ。
87
00:10:14,940 --> 00:10:17,360
はっ。
88
00:10:17,360 --> 00:10:21,960
六郎め やりおったな。
89
00:10:34,310 --> 00:10:37,110
(馬が走る蹄の音)
90
00:10:46,520 --> 00:10:49,320
忠勝様。
91
00:10:51,860 --> 00:10:55,360
二郎三郎か。
はい。
92
00:10:57,320 --> 00:10:59,320
大殿は!?
93
00:11:21,040 --> 00:11:29,040
大殿… 大殿…。
94
00:11:43,300 --> 00:11:47,670
すでに大殿が討ち死にされた
という噂は広まっている。
95
00:11:47,670 --> 00:11:52,290
討たれたのは影だと 側の者には
取り繕っておきましたが。
96
00:11:52,290 --> 00:11:56,830
では はっきりと
事の真相を存じているのは➡
97
00:11:56,830 --> 00:11:59,830
二郎三郎と その方だけか。
98
00:11:59,830 --> 00:12:03,820
いえ 他に馬の口取りが二人。
99
00:12:03,820 --> 00:12:07,820
その二人を連れてまいれ。
はっ。
100
00:12:10,770 --> 00:12:13,110
とにかく 今は何としても➡
101
00:12:13,110 --> 00:12:17,380
大殿に死んで
いただくわけにはいかぬ。
102
00:12:17,380 --> 00:12:23,980
しかし 現に大殿は冷とうなって
ここに横たわっておられます。
103
00:12:30,310 --> 00:12:38,370
いや 大殿は死んではおられぬ。
104
00:12:38,370 --> 00:12:41,470
わしの目の前に生きておわす。
105
00:12:44,360 --> 00:12:46,660
何を仰せになられます。
106
00:12:46,660 --> 00:12:48,660
二郎三郎。
107
00:12:48,660 --> 00:12:52,760
おぬしには このまま
芝居を続けてもらわねばならぬ。
108
00:12:54,820 --> 00:13:01,310
さような… 畏れ多いこと
通用するわけがござりません。
109
00:13:01,310 --> 00:13:06,400
やらねば 小早川 吉川といった
日和見を決め込んでいる連中が➡
110
00:13:06,400 --> 00:13:11,000
一斉に敵になびく。 戦は大敗だ。
111
00:13:15,840 --> 00:13:18,440
出来ぬと申すか。
112
00:13:28,200 --> 00:13:32,300
この者たちでございます。
113
00:13:49,620 --> 00:14:18,840
♬~
114
00:14:18,840 --> 00:14:22,970
< その頃
徳川内府討ち死にの報せは➡
115
00:14:22,970 --> 00:14:25,360
松尾山に陣取った➡
116
00:14:25,360 --> 00:14:29,950
金吾中納言 小早川秀秋の耳にも
届いていた>
117
00:14:29,950 --> 00:14:32,450
内府殿は死んでおられるのか
生きておられるのか➡
118
00:14:32,450 --> 00:14:35,050
どっちなのだ!?
それがまだ どちらとも。
119
00:14:35,050 --> 00:14:37,300
はきとせい はきと!
討たれたのは➡
120
00:14:37,300 --> 00:14:39,320
影武者じゃとの
噂もござりますれば。
121
00:14:39,320 --> 00:14:42,690
その方 顔を見てまいれ。
は?
122
00:14:42,690 --> 00:14:46,800
内府殿が生きてるかどうか。
しかし 某は よくお顔を…。
123
00:14:46,800 --> 00:14:50,530
ならば よく見知ってる者を
遣いいたせ。 ぐずぐずするな。
124
00:14:50,530 --> 00:14:52,530
はっ。
125
00:14:54,450 --> 00:14:59,830
< この金吾中納言は 豊臣秀吉の
甥という立場でありながら➡
126
00:14:59,830 --> 00:15:02,800
徳川家に内通していた。
127
00:15:02,800 --> 00:15:07,870
そして この十九歳の若者が
約束どおり寝返るかどうかに➡
128
00:15:07,870 --> 00:15:12,370
徳川家の命運は
かかっていたのである>
129
00:15:30,790 --> 00:15:33,840
二郎三郎 大丈夫か?
130
00:15:33,840 --> 00:15:39,300
本陣を進めて 大殿ここにありと
示せねばならんのだぞ。
131
00:15:39,300 --> 00:15:45,810
わかっております。
わかっておりまするが➡
132
00:15:45,810 --> 00:15:52,860
足が震えて
まともに歩けますかどうか。
133
00:15:52,860 --> 00:15:58,490
案ずることはない。
歩かんでも馬に乗ってれば➡
134
00:15:58,490 --> 00:16:00,840
勝手に運んでくれるわ。
135
00:16:00,840 --> 00:16:02,770
申し上げます。
どうした!?
136
00:16:02,770 --> 00:16:06,280
小早川の使者が
大殿様に お目通りを願いたいと。
137
00:16:06,280 --> 00:16:09,330
使者は誰だ!?
馬場兼正。
138
00:16:09,330 --> 00:16:11,350
兼次の兄弟にございます。
139
00:16:11,350 --> 00:16:14,850
探りを入れに来おったな。
140
00:16:17,320 --> 00:16:21,310
家康様。
141
00:16:21,310 --> 00:16:24,310
お会いになられまするか?
142
00:17:00,860 --> 00:17:02,860
助左衛門。
143
00:17:08,810 --> 00:17:47,960
♬~
144
00:17:47,960 --> 00:17:50,650
御用の向きを申されよ。
145
00:17:50,650 --> 00:17:53,670
はっ。 内府様のお身の上に➡
146
00:17:53,670 --> 00:17:57,650
一大事が出来したとの風聞を
耳にいたしましたれば➡
147
00:17:57,650 --> 00:18:00,960
お見舞いに参上仕りました。
148
00:18:00,960 --> 00:18:05,880
見舞いとは… ふふ 畏れ入る。
149
00:18:05,880 --> 00:18:11,380
内府様は このとおり
傷一つ負うてはおらぬ。
150
00:18:21,660 --> 00:18:24,450
それは それとして➡
151
00:18:24,450 --> 00:18:27,450
当家に味方するという約定は
どうなっているのだ!?
152
00:18:27,450 --> 00:18:29,500
反故になさるおつもりか!?
153
00:18:29,500 --> 00:18:33,290
いや 戦には
潮目というものがござれば➡
154
00:18:33,290 --> 00:18:37,380
その時が来るのを待って…。
言い訳をする暇があらば➡
155
00:18:37,380 --> 00:18:42,880
早々に ご陣を進められ
巧名手柄の一つもお立てなされ!
156
00:18:48,290 --> 00:18:50,870
主 中納言に➡
157
00:18:50,870 --> 00:18:53,870
お言葉 賜りとうございます。
158
00:19:25,390 --> 00:19:27,890
たわけ!
159
00:19:29,860 --> 00:19:36,360
金吾中納言に そう伝え。
160
00:19:42,310 --> 00:19:44,910
よいな!
161
00:19:52,340 --> 00:19:54,840
見破られましたかな。
162
00:19:54,840 --> 00:19:58,010
いや…
そうと決まったわけではあるまい。
163
00:19:58,010 --> 00:20:01,660
いや… 間違いなく見破られた。
164
00:20:01,660 --> 00:20:03,780
もし そうであれば➡
165
00:20:03,780 --> 00:20:08,670
小早川の軍勢は
おっつけ ここに攻めてくるぞ。
166
00:20:08,670 --> 00:20:13,790
小早川… 攻めてくる?
167
00:20:13,790 --> 00:20:17,040
小早川が攻めてくる…。
168
00:20:17,040 --> 00:20:27,340
あの… 金吾中納言
小早川秀秋が攻めてくる?
169
00:20:29,310 --> 00:20:31,410
(銃声)
170
00:20:45,660 --> 00:20:48,510
鉄砲をくらわせ。
171
00:20:48,510 --> 00:20:50,660
鉄砲?
うん。
172
00:20:50,660 --> 00:20:53,330
小早川にか?
そうじゃ。
173
00:20:53,330 --> 00:20:56,300
小早川が攻めてくるのを➡
174
00:20:56,300 --> 00:20:59,340
ただ黙って 待つわけにはいかん。
175
00:20:59,340 --> 00:21:03,470
しかし… それでは
かえって 小早川をあおることに。
176
00:21:03,470 --> 00:21:07,290
さにあらず。
177
00:21:07,290 --> 00:21:15,970
金吾中納言 小早川秀秋
無類の臆病者と聞く。
178
00:21:15,970 --> 00:21:19,320
鉄砲をくらわせ 尻をたたけば➡
179
00:21:19,320 --> 00:21:23,510
慌てて 味方につくやもしれん。
180
00:21:23,510 --> 00:21:26,480
そう うまくいくかどうか…。
181
00:21:26,480 --> 00:21:31,000
いや… 大殿ならば➡
182
00:21:31,000 --> 00:21:34,020
必ずや そうなされた。
183
00:21:34,020 --> 00:21:37,620
間違いなく そうなされた。
184
00:21:44,610 --> 00:21:47,970
忠勝。
はっ。
185
00:21:47,970 --> 00:21:53,470
鉄砲をくらわせ。
186
00:21:56,690 --> 00:22:01,790
鉄砲頭の孫兵衛を呼べ。
はっ!
187
00:22:03,820 --> 00:22:07,000
どうじゃ。 内府殿のお顔
しかと拝んでまいったか。
188
00:22:07,000 --> 00:22:10,120
はっ。
しわの一つひとつまで つぶさに。
189
00:22:10,120 --> 00:22:12,130
して いかがであった?
190
00:22:12,130 --> 00:22:15,010
紛れもない 本物でございました。
まことか。
191
00:22:15,010 --> 00:22:18,480
いや… あれは紛れもなく偽物。
192
00:22:18,480 --> 00:22:20,500
どっちじゃ!
193
00:22:20,500 --> 00:22:23,000
あそこまで似せた偽物が
あろうはずはない。
194
00:22:23,000 --> 00:22:25,960
確かに 顔は同じだが
腹の中は まるで違うていた。
195
00:22:25,960 --> 00:22:28,840
どういうことじゃ。
顔に 汗を。
196
00:22:28,840 --> 00:22:30,780
汗くらい 誰でもかくわ。
197
00:22:30,780 --> 00:22:33,330
ただの汗ではない。
あれは冷や汗よ。
198
00:22:33,330 --> 00:22:36,330
いかに平静を装うとも
汗までは抑えられぬ。
199
00:22:36,330 --> 00:22:40,970
ということは
やはり 内府殿は討ち死にを…。
200
00:22:40,970 --> 00:22:43,290
(銃声)
201
00:22:43,290 --> 00:22:45,490
何事じゃ!
じゅ… 銃声でござりまする!
202
00:22:45,490 --> 00:22:47,540
そんなことは わかっておるわ!
203
00:22:47,540 --> 00:22:49,640
何者の仕業かと
聞いておるのじゃ!
204
00:22:52,980 --> 00:22:55,580
旗を前に出せ!
205
00:23:04,860 --> 00:23:07,360
(銃声)
206
00:23:09,300 --> 00:23:15,150
金吾中納言…
たまげておりましょうな。
207
00:23:15,150 --> 00:23:18,010
忠勝様。
208
00:23:18,010 --> 00:23:24,000
松尾山に 兵を進めましょうか。
209
00:23:24,000 --> 00:23:30,000
小早川を攻めるのか。
いや 素振りだけです。
210
00:23:30,000 --> 00:23:32,310
なるほど。
211
00:23:32,310 --> 00:23:37,040
さすがは 大殿の影武者。
212
00:23:37,040 --> 00:23:41,040
おぬし 意地が悪い。
213
00:23:56,860 --> 00:23:59,960
徳川じゃの。
214
00:24:09,290 --> 00:24:11,610
殿!
215
00:24:11,610 --> 00:24:15,330
どこの鉄砲隊だ!?
と… 徳川でござります!
216
00:24:15,330 --> 00:24:17,330
なんだと!?
217
00:24:17,330 --> 00:24:19,330
(銃声)
218
00:24:24,670 --> 00:24:26,790
偽者だと!?
219
00:24:26,790 --> 00:24:28,830
その方の目は あてにならん!
220
00:24:28,830 --> 00:24:32,330
偽物に かような真似ができるか!
申し上げます!
221
00:24:32,330 --> 00:24:36,620
徳川の軍勢が
押し寄せてまいりました。
222
00:24:36,620 --> 00:24:40,340
内府殿は わしを殺す気か…。
223
00:24:40,340 --> 00:24:44,290
兵を進める。 進め!
(一同)はっ。
224
00:24:44,290 --> 00:24:46,850
しかし どちらを攻めますので?
225
00:24:46,850 --> 00:24:49,120
馬鹿。
石田に決まっておるではないか!
226
00:24:49,120 --> 00:24:51,300
急げ! 急げ!
227
00:24:51,300 --> 00:24:54,640
早く行け! 早く!
228
00:24:54,640 --> 00:24:58,320
< この瞬間
関ヶ原の勝敗は決した。
229
00:24:58,320 --> 00:25:03,300
一万五千の小早川の軍勢は
突如として➡
230
00:25:03,300 --> 00:25:06,670
味方であるはずの
大谷刑部の一隊に襲いかかり➡
231
00:25:06,670 --> 00:25:09,820
石田三成率いる西軍を➡
232
00:25:09,820 --> 00:25:12,920
一気に 壊滅させたのである>
233
00:25:25,330 --> 00:25:27,670
味方は総崩れ。
234
00:25:27,670 --> 00:25:34,340
敵はこぞって 殿のお首をかきに
押し寄せてまいりまするぞ。
235
00:25:34,340 --> 00:25:37,650
無念だ。
お逃げくだされ。
236
00:25:37,650 --> 00:25:39,720
お早く。
237
00:25:39,720 --> 00:25:44,320
某は 踏みとどまり
敵をけちらしまする。
238
00:25:46,310 --> 00:25:50,910
左近。 死んではならぬぞ。
239
00:26:40,330 --> 00:26:42,650
人は 一度は死ぬものぞ!
240
00:26:42,650 --> 00:26:46,250
逃げるな! 戦って死ね!
241
00:27:11,360 --> 00:27:13,960
応えてやらぬか。
242
00:27:20,370 --> 00:27:29,370
(一同)えい えい おぉ!
えい えい おぉ!
243
00:27:54,800 --> 00:27:57,720
左近様!
244
00:28:00,490 --> 00:28:03,490
左近様!
245
00:28:07,150 --> 00:28:09,450
左近様。
246
00:28:24,750 --> 00:28:28,050
左近様!
247
00:28:54,100 --> 00:28:56,770
ここはよい。 下がっておれ。
248
00:28:56,770 --> 00:28:58,870
(二人)はっ。
249
00:29:05,430 --> 00:29:10,450
こら 気を抜くな。
人が来たら どうする。
250
00:29:10,450 --> 00:29:14,600
もう疲れた。
しばらく休ませてくれ。
251
00:29:14,600 --> 00:29:17,390
そんな暇があるか。 おい。
252
00:29:17,390 --> 00:29:20,410
おっつけ諸侯が
祝いを述べに やってくる。
253
00:29:20,410 --> 00:29:23,590
おぬしは大殿として
それに応えてやらねばならぬのだ。
254
00:29:23,590 --> 00:29:25,950
無理を言うな。
255
00:29:25,950 --> 00:29:28,520
何が無理だ。
256
00:29:28,520 --> 00:29:33,120
大殿が おわしたからこそ
わしも影が務まった。
257
00:29:33,120 --> 00:29:35,640
大殿みまかりし 今➡
258
00:29:35,640 --> 00:29:38,260
面と向かって
人としゃべることなど➡
259
00:29:38,260 --> 00:29:40,580
できようはずも ないわ。
260
00:29:40,580 --> 00:29:43,260
そこは その…
何とかして うまく この…。
261
00:29:43,260 --> 00:29:45,750
勝手を申すな。
おい おい。
262
00:29:45,750 --> 00:29:48,050
こら 待たんか。
263
00:29:50,440 --> 00:29:54,090
何を騒いでおる。
264
00:29:54,090 --> 00:29:58,230
こやつめ 諸侯と対面するのは
嫌じゃと申すのです。
265
00:29:58,230 --> 00:30:02,100
戦は終わり申した。
おいとまをいただきたい。
266
00:30:02,100 --> 00:30:04,150
そうはいかん。
267
00:30:04,150 --> 00:30:06,420
今しばらく
大殿でいてもらわねば➡
268
00:30:06,420 --> 00:30:08,770
せっかくの勝ち戦が ふいになる。
269
00:30:08,770 --> 00:30:12,410
なんと言われようと
できぬものは できぬ。
270
00:30:12,410 --> 00:30:16,100
こら 待て…。
乗りかかった船ではないか。
271
00:30:16,100 --> 00:30:18,250
乗りたくて乗った船ではないわ。
272
00:30:18,250 --> 00:30:21,750
わしは降りると言ったら 降りる。
273
00:30:24,470 --> 00:30:28,470
いや 降ろさぬ。
274
00:30:42,740 --> 00:30:47,340
福島左衛門大夫殿。
275
00:30:59,640 --> 00:31:05,640
本日のご勝利
祝着この上も ござらぬ。
276
00:31:09,170 --> 00:31:15,310
それも そこ許の働き
抜群なるがゆえ。
277
00:31:15,310 --> 00:31:19,910
この家康 生涯 忘れませぬぞ。
278
00:31:19,910 --> 00:31:22,910
身に余る お言葉。
279
00:31:24,980 --> 00:31:30,240
それにしても
実に危ういところでござった。
280
00:31:30,240 --> 00:31:32,760
あ 危うい? 何がじゃ?
281
00:31:32,760 --> 00:31:35,930
合戦の最中に➡
282
00:31:35,930 --> 00:31:39,310
内府殿 討ち死にとの報せが。
283
00:31:39,310 --> 00:31:44,600
あぁ… そのことでござったか。
284
00:31:44,600 --> 00:31:47,720
いやぁ あのときは
さすがの某も➡
285
00:31:47,720 --> 00:31:53,110
もはや 戦もこれまでかと
たっぷり 冷や汗をかき申した。
286
00:31:53,110 --> 00:31:59,050
それは 我らも同様でござる。
287
00:31:59,050 --> 00:32:04,420
わしは 今でも
冷や汗をかいておる。
288
00:32:04,420 --> 00:32:09,410
またまた さようなざれ言を。
289
00:32:09,410 --> 00:32:13,410
(笑い声)
290
00:32:23,810 --> 00:32:26,910
黒田甲斐守殿。
291
00:32:30,750 --> 00:32:34,550
浅野左京大夫殿。
292
00:32:38,310 --> 00:32:41,810
細川越中守殿。
293
00:32:45,080 --> 00:32:47,380
申し上げます。
294
00:33:02,800 --> 00:33:05,400
どうしたのだ。
295
00:33:07,450 --> 00:33:12,090
忠吉様が お着きなされた。
ご子息が…。
296
00:33:12,090 --> 00:33:15,890
しかも 直政も一緒だ。
なに!?
297
00:33:17,950 --> 00:33:21,350
<井伊直政は 家康の腹心であり➡
298
00:33:21,350 --> 00:33:23,730
影武者 二郎三郎のことを➡
299
00:33:23,730 --> 00:33:26,950
最もよく知る者の 一人であった。
300
00:33:26,950 --> 00:33:31,580
また 直政は
家康の四男 忠吉とは➡
301
00:33:31,580 --> 00:33:37,110
娘をめあわせたことで
義理の親子という関係にあった>
302
00:33:37,110 --> 00:33:39,900
殿 お喜びくだされ。
どうした。
303
00:33:39,900 --> 00:33:44,070
忠吉様が見事 敵の兜首を
討ち取られましたぞ。
304
00:33:44,070 --> 00:33:46,110
それは それは。
305
00:33:46,110 --> 00:33:51,510
それは すべてが
お手前の手厚い後見あってのこと。
306
00:33:51,510 --> 00:33:53,610
さよう。
307
00:33:53,610 --> 00:33:57,470
直政。 その腕の傷はどうした?
308
00:33:57,470 --> 00:34:02,070
あぁ 敵を深追いして
不覚にも鉄砲傷を。
309
00:34:02,070 --> 00:34:05,610
鉄砲傷… いやぁ それはいかん。
大事にせねばのう。
310
00:34:05,610 --> 00:34:08,250
薬を持ってくるようにと
殿の仰せだ。
311
00:34:08,250 --> 00:34:11,450
そうじゃ そうじゃ。
薬じゃ 薬を持て。
はっ。
312
00:34:11,450 --> 00:34:14,570
助左衛門 薬を持て。
はっ 只今!
313
00:34:14,570 --> 00:34:19,760
殿 もったいのうござる。
314
00:34:19,760 --> 00:34:22,580
よい よい。
殿。
315
00:34:22,580 --> 00:34:25,150
もったいのうござる。
いや… だから よいて。
316
00:34:25,150 --> 00:34:27,750
よいて よいて!
317
00:34:30,730 --> 00:34:34,940
< その頃
戦に遅れた徳川秀忠は➡
318
00:34:34,940 --> 00:34:37,610
未だ 行軍の途上にあった>
319
00:34:37,610 --> 00:34:42,330
そうか。
大殿はお勝ちなされたか。
320
00:34:42,330 --> 00:34:45,630
はっ。 比類もなき
大勝利でございます。
321
00:34:51,120 --> 00:34:54,240
ふっふ さすが大殿じゃ。
322
00:34:54,240 --> 00:34:57,780
よもや
負けはせぬと思うてはいたが。
323
00:34:57,780 --> 00:35:01,780
父上は何か 仰せであったか?
324
00:35:04,070 --> 00:35:06,070
何かと おっしゃいますと?
325
00:35:06,070 --> 00:35:09,790
戦に遅れて さぞや お怒りに…。
326
00:35:09,790 --> 00:35:13,180
もう よい。
吉報を皆に伝えてまいれ。
327
00:35:13,180 --> 00:35:15,480
ははっ。
328
00:35:17,450 --> 00:35:19,800
ご懸念は ひとまず置いて➡
329
00:35:19,800 --> 00:35:23,770
今宵は皆の者に 祝い酒でも。
330
00:35:23,770 --> 00:35:27,070
さような気分になれるか。
331
00:35:35,800 --> 00:35:39,450
<一方 美濃赤坂の陣屋では➡
332
00:35:39,450 --> 00:35:41,760
側室 お梶の方が➡
333
00:35:41,760 --> 00:35:44,740
家康のもとへ
出発しようとしていた>
334
00:35:44,740 --> 00:35:46,780
お待ちください お梶様。
335
00:35:46,780 --> 00:35:49,180
なぜ
会いに行ってはならぬのです。
336
00:35:49,180 --> 00:35:52,820
いや あの…。
殿様が そう仰せになられたのか。
337
00:35:52,820 --> 00:35:56,820
いや それは…。
では まいってもよいのじゃな。
338
00:35:59,610 --> 00:36:01,990
それは困ります。
339
00:36:01,990 --> 00:36:04,510
どうも 妙じゃ。
340
00:36:04,510 --> 00:36:08,920
何か 殿様に会わせとうない
訳でもあるのか?
341
00:36:08,920 --> 00:36:10,950
いえ… 訳など何も。
342
00:36:10,950 --> 00:36:14,320
まさか
お怪我でもなされたのでは?
343
00:36:14,320 --> 00:36:16,270
いや… お体は いたって。
344
00:36:16,270 --> 00:36:19,910
ならば 今頃は会いとうて
うずうずなされているはず。
345
00:36:19,910 --> 00:36:23,760
いや…。
それが 殿様の性分ですもの。
346
00:36:23,760 --> 00:36:27,830
勝ち戦のあとでは
とてものこと 女子なしでは…。
347
00:36:27,830 --> 00:36:32,790
そうであろう?
いや あの…。
348
00:36:32,790 --> 00:36:36,390
あ お梶様。
お待ちください お梶様!
349
00:36:37,700 --> 00:36:40,080
<関ヶ原から五日後➡
350
00:36:40,080 --> 00:36:42,220
影武者 家康は➡
351
00:36:42,220 --> 00:36:46,020
近江の国 大津城に入城していた>
352
00:36:46,020 --> 00:36:53,210
なに? お梶様が
ここに まいられると?
はっ。
353
00:36:53,210 --> 00:36:56,180
そうさせぬために その方を
遣わしたのではないか。
354
00:36:56,180 --> 00:36:59,220
いや しかし縄をかけてつないで
おくわけにもまいりません。
355
00:36:59,220 --> 00:37:02,220
助左衛門 この役立たず。
356
00:37:02,220 --> 00:37:06,660
なんだと? 影の分際で生意気な。
こら。
357
00:37:06,660 --> 00:37:11,380
大殿様を殴るやつがあるか。
馬鹿。
358
00:37:11,380 --> 00:37:14,870
で お梶様はいつ まいられる?
359
00:37:14,870 --> 00:37:17,470
それが すでにご到着に。
360
00:37:19,720 --> 00:37:22,690
どうすればよい?
361
00:37:22,690 --> 00:37:28,250
会うしかあるまい。
しかし会えば すぐに偽物だと…。
362
00:37:28,250 --> 00:37:32,350
あぁ…。
とにかくやってみるしかない。
363
00:37:34,840 --> 00:37:45,400
しかし あの大殿様ご寵愛の
お梶様を わしなどが…。
364
00:37:45,400 --> 00:37:50,520
さような遠慮はいらぬ。
いや 遠慮はいらぬと言われても➡
365
00:37:50,520 --> 00:37:56,520
そうたやすくは…。 あぁ…。
366
00:38:11,060 --> 00:38:15,460
こたびの勝ち戦
おめでとう存じまする。
367
00:38:15,460 --> 00:38:18,330
うむ。
368
00:38:18,330 --> 00:38:25,420
吉報を聞いて お顔見たさに
とんで来てしまいました。
369
00:38:25,420 --> 00:38:27,720
あぁ そのまま そのまま。
370
00:38:32,910 --> 00:38:39,380
あの かように離れていては
お話がしにくうございます。
371
00:38:39,380 --> 00:38:44,360
そうか? わしは別段…。
372
00:38:44,360 --> 00:38:50,090
わしは戦場より急ぎ戻ったゆえ
まだ湯あみもしておらん。
373
00:38:50,090 --> 00:38:53,590
いささか におうぞ。
374
00:39:04,530 --> 00:39:07,550
湯あみもまだ
しておらぬというのに。
375
00:39:07,550 --> 00:39:10,530
なぜお逃げになるのです? 殿。
376
00:39:10,530 --> 00:39:13,500
なぜ私をお避けになるのです?
377
00:39:13,500 --> 00:39:18,370
避けてはおらぬ。
ただ 今日のそなたは➡
378
00:39:18,370 --> 00:39:22,240
あまりにも美しすぎる。
379
00:39:22,240 --> 00:39:26,880
近寄りがたいほど美しすぎる。
380
00:39:26,880 --> 00:39:29,930
ゆえに…。
381
00:39:29,930 --> 00:39:34,510
そなたは何者じゃ?
382
00:39:34,510 --> 00:39:41,410
殿様は女子のことを決して
美しいなどとおっしゃいませぬ。
383
00:39:41,410 --> 00:39:44,510
そなた 何者じゃ?
384
00:39:51,910 --> 00:39:54,840
申し訳ございません。
385
00:39:54,840 --> 00:39:57,860
某 世良田二郎三郎と
申す者にござりまする。
386
00:39:57,860 --> 00:40:01,380
世良田?
387
00:40:01,380 --> 00:40:06,000
その男は大殿様の影武者でござる。
388
00:40:06,000 --> 00:40:10,190
影武者?
389
00:40:10,190 --> 00:40:13,210
申し上げまする。
390
00:40:13,210 --> 00:40:18,680
大殿 徳川家康様は➡
391
00:40:18,680 --> 00:40:23,980
関ヶ原にて討ち死になさいました。
392
00:40:39,700 --> 00:40:42,670
中納言 秀忠様が
ご到着になられました。
393
00:40:42,670 --> 00:40:46,430
なんと。
394
00:40:46,430 --> 00:40:49,530
お梶様 この場はひとまず。
395
00:41:04,340 --> 00:41:07,060
父上 お許しください。
396
00:41:07,060 --> 00:41:09,550
大事の戦に遅れ 本来ならば➡
397
00:41:09,550 --> 00:41:11,840
死んでお詫びを申し上げる
ところでございますが➡
398
00:41:11,840 --> 00:41:14,870
何とぞ ご容赦を。
399
00:41:14,870 --> 00:41:19,160
殿 罪は中納言様お一人に
あるのではござらん。
400
00:41:19,160 --> 00:41:26,380
死ねと仰せであれば
まずは 某から。
401
00:41:26,380 --> 00:41:29,740
今更 腹を切ったところで
申し訳は立たぬ。
402
00:41:29,740 --> 00:41:33,910
中納言様に向かって
言葉が過ぎよう。
403
00:41:33,910 --> 00:41:39,510
殿も同じお考えでございますか?
404
00:42:02,170 --> 00:42:05,420
申し訳ございません。
405
00:42:05,420 --> 00:42:10,520
大殿 徳川家康様は
ここにはおわしません。
406
00:42:14,530 --> 00:42:18,330
関ヶ原にて命を落とされた。
407
00:42:35,100 --> 00:42:40,100
おぬし 二郎三郎か?
408
00:42:49,020 --> 00:42:54,050
その方 殿のお側にいながら
何をしておったのだ?
409
00:42:54,050 --> 00:42:57,040
申し訳ございません。
身代わりとなって死ぬのが➡
410
00:42:57,040 --> 00:43:01,030
影武者の役目であろう。
御意。
411
00:43:01,030 --> 00:43:04,080
申し訳ございません。
412
00:43:04,080 --> 00:43:08,170
二郎三郎。
はい。
そこへ直れ。
413
00:43:08,170 --> 00:43:10,550
ははっ。
414
00:43:10,550 --> 00:43:14,010
関ヶ原の勝ち戦は ひとえに
二郎三郎の働きのおかげ。
415
00:43:14,010 --> 00:43:16,990
それを むざと死なせるわけには
まいらぬ。
どけ。
416
00:43:16,990 --> 00:43:19,080
どかぬ。
417
00:43:19,080 --> 00:43:22,380
どかぬと重ねて叩っ斬るぞ。
418
00:43:27,750 --> 00:43:30,750
落ち着くのだ。 康政。
419
00:43:52,000 --> 00:43:54,600
影武者だと?
420
00:44:02,910 --> 00:44:05,920
某に薬をくだされたのも…。
421
00:44:05,920 --> 00:44:09,620
二郎三郎だ。
おのれ 人をこけにしおって。
422
00:44:09,620 --> 00:44:12,610
いかに不測の事態とはいえ➡
423
00:44:12,610 --> 00:44:15,610
ひと言相談があって
しかるべきではないか。
424
00:44:15,610 --> 00:44:18,610
しかしな 知る者が多ければ
それだけ秘密は漏れやすくなる。
425
00:44:18,610 --> 00:44:21,660
忠勝 わしはさほどに
口の軽い男か。
426
00:44:21,660 --> 00:44:25,080
落ち着け。
忠勝も悪気があって
したことではない。
427
00:44:25,080 --> 00:44:28,100
だとしても許せぬ。
わしのことはよいとしても➡
428
00:44:28,100 --> 00:44:32,540
何ゆえ 忠吉様にまで
内密にせねばならんのだ。
429
00:44:32,540 --> 00:44:36,630
忠吉はまだ二十一。 思慮も浅い。
430
00:44:36,630 --> 00:44:39,750
歳はお若くとも
関ヶ原では見事お手柄を。
431
00:44:39,750 --> 00:44:44,950
そんな手柄など
なにほどであろう。
432
00:44:44,950 --> 00:44:47,940
なんと仰せか。 戦に遅れた身で➡
433
00:44:47,940 --> 00:44:50,940
人の功名をとやこう言えた
義理でもござるまいに。
434
00:44:50,940 --> 00:44:53,950
直政 無礼であろう。
435
00:44:53,950 --> 00:44:59,070
大殿亡き今 中納言様はすでに
我らが御主君なるぞ。
436
00:44:59,070 --> 00:45:02,120
主君だと? この際だから
はっきり申しておくが➡
437
00:45:02,120 --> 00:45:06,930
わしは 忠吉様こそ お世継ぎに
ふさわしいお方と見ておる。
438
00:45:06,930 --> 00:45:09,950
なにを勝手なことを。
まあ聞け 康政。
439
00:45:09,950 --> 00:45:12,950
大殿が命を落とされたのも➡
440
00:45:12,950 --> 00:45:17,320
そもそもは中納言様が
戦に遅れたためではないか。
441
00:45:17,320 --> 00:45:21,320
さようなお方に
お家を継ぐ資格があろうか?
442
00:45:33,070 --> 00:45:36,560
今はお世継ぎのことを
うんぬん言ってる時ではない。
443
00:45:36,560 --> 00:45:43,860
大事なのは この事態を
いかにして収めるかだ。
444
00:45:56,630 --> 00:46:01,250
助左衛門 これからどうなる?
445
00:46:01,250 --> 00:46:04,280
わからん。
446
00:46:04,280 --> 00:46:08,240
無礼者めが。
447
00:46:08,240 --> 00:46:11,320
わしに向かって
わからんとは何事か。
448
00:46:11,320 --> 00:46:14,820
はっ。
449
00:46:27,940 --> 00:46:31,740
我らをどうするつもりでしょう?
450
00:46:35,630 --> 00:46:38,100
殺すつもりでしょうか?
451
00:46:38,100 --> 00:46:42,100
いや…。 そこまでのことは…。
452
00:46:47,280 --> 00:46:53,100
いずれにせよ
この世良田二郎三郎➡
453
00:46:53,100 --> 00:46:57,770
お梶様を命に代えましても…。
454
00:46:57,770 --> 00:47:01,470
守ってくださいますか?
455
00:47:01,470 --> 00:47:03,770
そのつもりではおりまする。
456
00:47:06,000 --> 00:47:08,500
頼もしいお返事ですこと。
457
00:47:10,950 --> 00:47:14,050
まあ この体にござりまする。
458
00:47:14,050 --> 00:47:19,830
お梶様の刀よけくらいには
なろうかと。
459
00:47:19,830 --> 00:47:24,630
せいぜい頼りにいたしましょう。
はい。
460
00:47:29,450 --> 00:47:32,460
助左衛門。
はっ。
461
00:47:32,460 --> 00:47:35,520
腹減ったぞ。
は… はぁ。
462
00:47:35,520 --> 00:47:40,020
飯じゃ。 飯をもて。
463
00:47:42,450 --> 00:47:47,570
やはり しばらくは
今のままいくしかあるまい。
464
00:47:47,570 --> 00:47:54,490
というと 引き続き
二郎三郎を大殿として?
465
00:47:54,490 --> 00:47:59,620
しかし あやつに
そのような大役が務まるか?
466
00:47:59,620 --> 00:48:04,400
あの男 案外
腹の据わったところがある。
467
00:48:04,400 --> 00:48:07,460
しかも わしや康政でさえ
見分けがつかぬほど➡
468
00:48:07,460 --> 00:48:12,240
大殿に似ている。
その点は認めざるをえぬが。
469
00:48:12,240 --> 00:48:18,450
だが さような姑息な策をろうして
もし露見すれば➡
470
00:48:18,450 --> 00:48:23,360
取り返しがつくまい。
では他に
どのような手立てがございますか。
471
00:48:23,360 --> 00:48:31,280
大殿の死を公にして
中納言様が跡を継がれますか?
472
00:48:31,280 --> 00:48:35,650
戦に大勝した後なればそれにても。
473
00:48:35,650 --> 00:48:38,570
いや 勝ったとは申せ➡
474
00:48:38,570 --> 00:48:45,790
毛利 島津 上杉の処分は
まだまだこれからでござる。
475
00:48:45,790 --> 00:48:50,420
それに 福島 黒田といった
もともと豊臣家に属する諸侯が➡
476
00:48:50,420 --> 00:48:53,470
こちらの味方についたのは➡
477
00:48:53,470 --> 00:48:56,820
あくまでも
大殿の力を恐れてのこと。
478
00:48:56,820 --> 00:49:01,590
心の底では今は亡き太閤殿下の
御子 秀頼様への➡
479
00:49:01,590 --> 00:49:05,280
忠誠心を抱いていよう。
480
00:49:05,280 --> 00:49:11,250
今ここで武威も人望もない
中納言様を立てたところで➡
481
00:49:11,250 --> 00:49:15,440
とてものこと
大殿のようにはまいるまい。
482
00:49:15,440 --> 00:49:19,400
それどころか いったんは
味方についた諸侯も➡
483
00:49:19,400 --> 00:49:26,740
掌を返したように 一斉に
豊臣方へなびくに違いない。
484
00:49:26,740 --> 00:49:31,660
となると 取るべき道はひとつ。
485
00:49:31,660 --> 00:49:36,460
二郎三郎に大殿を
演じてもらうしかあるまい。
486
00:49:49,580 --> 00:49:52,630
その方らは わしを
なんと思うているのだ。
487
00:49:52,630 --> 00:49:56,770
御主君と仰いでおりまする。
488
00:49:56,770 --> 00:50:01,290
ぬけぬけと。
489
00:50:01,290 --> 00:50:05,810
それならば このわしを差し置いて
影武者ごときに➡
490
00:50:05,810 --> 00:50:08,740
お家の命運を
託すということがあるか。
491
00:50:08,740 --> 00:50:11,750
もはや決まったことでござる。
492
00:50:11,750 --> 00:50:15,920
わしは父上の影にも劣るのか。
493
00:50:15,920 --> 00:50:19,420
その方らは皆
そう思うているのか。
494
00:50:19,420 --> 00:50:24,220
大殿は
さほど偉大であられたのです。
495
00:50:29,600 --> 00:50:32,600
おのれ。
496
00:50:39,990 --> 00:50:43,290
何者だ?
497
00:50:46,600 --> 00:50:49,670
中納言様のお味方でございます。
498
00:50:49,670 --> 00:50:54,270
その方 いつからここに。
499
00:50:56,930 --> 00:51:00,830
今の話を聞いてたな。
500
00:51:00,830 --> 00:51:04,930
内府様討ち死にの風聞が
まことであったとは➡
501
00:51:04,930 --> 00:51:07,730
驚きましてございます。
502
00:51:20,230 --> 00:51:24,030
中納言様は尋常ならざる野心を
お持ちのようでございますな。
503
00:51:28,770 --> 00:51:32,770
その野心
叶えて差し上げましょう。
504
00:51:41,320 --> 00:51:44,320
その方 名は?
505
00:51:44,320 --> 00:51:47,320
柳生宗矩と申しまする。
506
00:52:03,280 --> 00:52:07,930
まずは ひとつ。
その前に➡
507
00:52:07,930 --> 00:52:10,970
この後 わしたちを
どうするつもりか➡
508
00:52:10,970 --> 00:52:16,090
聞いておきたい。
ああ そのことだがな➡
509
00:52:16,090 --> 00:52:20,790
おぬしにはこのまま
大殿の代わりを続けてもらうと➡
510
00:52:20,790 --> 00:52:23,800
いうことで 衆議は一決した。
511
00:52:23,800 --> 00:52:28,580
飯も食わさず
人を閉じ込めておいて➡
512
00:52:28,580 --> 00:52:33,120
一決したもないもんじゃ。
まあ そう言わずに➡
513
00:52:33,120 --> 00:52:36,090
快く引き受けてもらいたい。
514
00:52:36,090 --> 00:52:40,960
勝手をいうな。
頼む。 このとおりだ。
515
00:52:40,960 --> 00:52:47,450
強情を言うと
お互いのためにならぬ。
516
00:52:47,450 --> 00:52:51,740
ためにならぬとは
どういう意味です?
517
00:52:51,740 --> 00:52:54,790
ただでは済まぬということです。
518
00:52:54,790 --> 00:52:57,760
もはや 後戻りできぬほど➡
519
00:52:57,760 --> 00:53:01,620
お二人とも知りすぎて
おられますからな。
520
00:53:01,620 --> 00:53:08,270
二人? いや
大殿の影であったわしはわかる。
521
00:53:08,270 --> 00:53:12,440
じゃが お梶様まで
手にかけようというのか?
522
00:53:12,440 --> 00:53:15,040
そこは おぬしの返答しだい。
523
00:53:20,070 --> 00:53:23,160
汚いぞ 弥八郎。
524
00:53:23,160 --> 00:53:25,760
何とでも言え。
525
00:53:32,630 --> 00:53:36,940
わかった 役目を引き受けよう。
526
00:53:36,940 --> 00:53:42,460
じゃが わしはあくまで
世良田二郎三郎。
527
00:53:42,460 --> 00:53:45,440
魂までは売り渡さぬぞ。
528
00:53:45,440 --> 00:53:49,240
何でも言うことをきくと思ったら
大間違いぞ。
529
00:53:59,960 --> 00:54:06,920
本多弥八郎正信 注げ。
530
00:54:06,920 --> 00:54:11,840
(笑い声)
531
00:54:11,840 --> 00:54:15,640
はっ。
532
00:54:32,760 --> 00:54:36,560
さあ お梶殿にもまいろう。
533
00:54:45,290 --> 00:54:49,910
お二人はずいぶんと
親しげでありますな。
534
00:54:49,910 --> 00:54:54,260
弥八郎とは
古いつきあいにござりまする。
535
00:54:54,260 --> 00:55:00,240
ははは… 某 若い頃
三河で一向一揆に加わり➡
536
00:55:00,240 --> 00:55:03,260
大殿より国を追われ➡
537
00:55:03,260 --> 00:55:06,610
諸国を放浪していた時分が
ございまして➡
538
00:55:06,610 --> 00:55:10,750
その折に知り合ったのです。
539
00:55:10,750 --> 00:55:17,290
二郎三郎殿は その頃から
殿様に似ておられたのか?
540
00:55:17,290 --> 00:55:19,740
あぁ…。
541
00:55:19,740 --> 00:55:24,930
さよう。 似ているうえに➡
542
00:55:24,930 --> 00:55:28,330
鉄砲の名人でしてな。
543
00:55:28,330 --> 00:55:30,930
鉄砲の?
544
00:55:32,920 --> 00:55:38,110
殊に 伊勢長島と
石山本願寺の合戦では➡
545
00:55:38,110 --> 00:55:41,280
一向宗の一揆勢に味方して➡
546
00:55:41,280 --> 00:55:46,330
織田方の大将を
一人で何人も撃ちとめるほどの➡
547
00:55:46,330 --> 00:55:49,630
目覚ましい働きを。
548
00:55:52,570 --> 00:55:57,960
さような勇ましい方とも知らず➡
549
00:55:57,960 --> 00:56:02,580
先ほどは 失礼を申しました。
550
00:56:02,580 --> 00:56:05,900
いや 弥八郎の話は大仰でいかん。
551
00:56:05,900 --> 00:56:07,950
大仰なものか。
552
00:56:07,950 --> 00:56:10,910
わしは
そんな大層な人間ではないぞ。
553
00:56:10,910 --> 00:56:15,460
何を言うか。
信長を撃ったほどの男が。
554
00:56:15,460 --> 00:56:17,950
信長様を?
555
00:56:17,950 --> 00:56:22,150
いや
埒もない昔話にござりまする。
556
00:56:22,150 --> 00:56:24,950
いやいや 自分で注ぐ。
557
00:56:30,640 --> 00:56:33,640
あぁ うまい。
558
00:56:57,000 --> 00:57:01,290
いかがなされました?
何か御用でも?
559
00:57:01,290 --> 00:57:04,940
先ほどの続きを
聞きにまいりました。
560
00:57:04,940 --> 00:57:07,440
続き?
561
00:57:19,940 --> 00:57:24,330
信長様を撃ったという。
本当でございますか?
562
00:57:24,330 --> 00:57:29,790
あ… その話は ご勘弁願いたい。
563
00:57:29,790 --> 00:57:32,240
なぜです?
564
00:57:32,240 --> 00:57:37,440
私は 戦は嫌いです。
565
00:57:37,440 --> 00:57:40,560
そう。
566
00:57:40,560 --> 00:57:45,570
私は好き。 男に生まれていれば➡
567
00:57:45,570 --> 00:57:49,270
きっと名のある大将に
なっていたことでしょう。
568
00:57:49,270 --> 00:57:51,920
勇ましい。
569
00:57:51,920 --> 00:57:58,450
でも 戦が嫌いなら
なぜ一揆に加勢など?
570
00:57:58,450 --> 00:58:04,120
そうせずには
おられませんでした。
571
00:58:04,120 --> 00:58:08,260
そなたは
一向宗の門徒なのですか?
572
00:58:08,260 --> 00:58:10,280
そうではありません。
573
00:58:10,280 --> 00:58:15,610
しかし若い頃は
偉そうにしている人間を見ると➡
574
00:58:15,610 --> 00:58:21,210
誰であろうと
妙に刃向かいたくなりました。
575
00:58:24,270 --> 00:58:30,450
父母の顔を知らず 幼き頃より➡
576
00:58:30,450 --> 00:58:35,620
ささら者の
おばばに育てられました。
577
00:58:35,620 --> 00:58:39,000
そのせいでしょうか。
578
00:58:39,000 --> 00:58:45,240
ささら者とは 何です?
579
00:58:45,240 --> 00:58:52,280
旅芸者のようなものに
ござりまする。
580
00:58:52,280 --> 00:58:58,910
(歌声)
581
00:58:58,910 --> 00:59:03,980
祭りの日など
竹のささらを鳴らしながら➡
582
00:59:03,980 --> 00:59:08,980
説経節を語ったり
流行り歌をうたったりして➡
583
00:59:08,980 --> 00:59:12,280
諸国を渡り歩きまする。
584
00:59:20,050 --> 00:59:22,750
物心ついたときから➡
585
00:59:22,750 --> 00:59:25,620
そんな暮らしを
してまいりましたので➡
586
00:59:25,620 --> 00:59:27,950
普通の生き方ができず➡
587
00:59:27,950 --> 00:59:30,610
おばばが亡くなったあとも➡
588
00:59:30,610 --> 00:59:35,660
坊主に拾われたり
野武士に身を投じたりして➡
589
00:59:35,660 --> 00:59:40,960
ずっと道々の者の中で
育ってまいりました。
590
00:59:45,940 --> 00:59:48,610
道々の者とは?
591
00:59:48,610 --> 00:59:54,610
家も土地も持たず
世の決め事にもとらわれず➡
592
00:59:54,610 --> 00:59:59,730
旅から旅へ
風のように自由気ままに生きる➡
593
00:59:59,730 --> 01:00:02,940
輩のことにござりまする。
594
01:00:02,940 --> 01:00:06,580
風のように?
はい。
595
01:00:06,580 --> 01:00:11,130
そのように
生きてまいったせいでしょうか。
596
01:00:11,130 --> 01:00:14,120
武士の支配にあらがい➡
597
01:00:14,120 --> 01:00:18,920
自由を求めて戦う
一揆勢を見ると➡
598
01:00:18,920 --> 01:00:23,610
何やら 血が騒ぎましてな。
599
01:00:23,610 --> 01:00:29,280
戦いの向こうに
人々が仕合わせよく生きられる➡
600
01:00:29,280 --> 01:00:34,280
そんな天地が広がってくるような
気がいたしましてな。
601
01:00:37,440 --> 01:00:41,080
お顔は殿様に生き写しでも➡
602
01:00:41,080 --> 01:00:46,450
心の中は似もつかぬ別人。
603
01:00:46,450 --> 01:00:52,940
そなたは昼間 私のことを
美しいと申しましたな。
604
01:00:52,940 --> 01:00:59,910
はい。
我が気持 正直に申しました。
605
01:00:59,910 --> 01:01:04,280
分をわきまえず
ご無礼をいたしました。
606
01:01:04,280 --> 01:01:06,940
謝らずともよい。
607
01:01:06,940 --> 01:01:13,610
あのようなことを言われて
私も嬉しかった。
608
01:01:13,610 --> 01:01:15,960
(咳払い)
609
01:01:15,960 --> 01:01:22,230
なれど 本物の殿様ならば
決して口にはせぬことです。
610
01:01:22,230 --> 01:01:26,940
ですから 私に向かって➡
611
01:01:26,940 --> 01:01:30,910
二度と美しいなどと
申してはなりませぬ。
612
01:01:30,910 --> 01:01:36,300
いや それは なかなか
難しゅうござります。
613
01:01:36,300 --> 01:01:39,250
私は そなたを教育するよう➡
614
01:01:39,250 --> 01:01:42,850
弥八郎殿から
申しつかっているのです。
615
01:02:04,940 --> 01:02:07,350
お梶様 それはなりませぬ。
616
01:02:07,350 --> 01:02:11,650
今より お梶と
呼び捨てになさらねばなりませぬ。
617
01:02:13,670 --> 01:02:19,970
さあ お殿様 どうぞこちらへ。
618
01:02:38,880 --> 01:03:13,900
♬~
619
01:03:13,900 --> 01:03:18,900
まだ なりませぬ。
回りの遅い毒もござりますれば。
620
01:03:29,530 --> 01:03:32,900
障りはないか?
621
01:03:32,900 --> 01:03:34,900
ないな。
622
01:03:36,910 --> 01:03:39,210
(お腹が鳴る音)
623
01:03:43,900 --> 01:03:47,270
厠じゃ。 ついて来んでもよい。
624
01:03:47,270 --> 01:03:49,270
(小姓たち)はっ。
625
01:03:52,320 --> 01:03:55,260
一人でできる。
626
01:03:55,260 --> 01:03:57,290
(小姓たち)はっ。
627
01:03:57,290 --> 01:04:40,200
♬~
628
01:04:40,200 --> 01:04:43,200
もうよい。
629
01:04:52,500 --> 01:04:55,400
どうなさいました?
630
01:04:55,400 --> 01:04:58,250
どこへ行くにも➡
631
01:04:58,250 --> 01:05:01,250
人が ぞろぞろついてくる。
632
01:05:03,340 --> 01:05:09,530
当たり前ではございませぬか
殿様ですもの。
633
01:05:09,530 --> 01:05:13,420
いや しかし 窮屈でかなわん。
634
01:05:13,420 --> 01:05:18,060
すまんが しばしここで
休ませてもらいたい。
635
01:05:18,060 --> 01:05:21,230
なりませぬ。
頼む。
636
01:05:21,230 --> 01:05:26,230
くつろげるのは
そなたの側だけじゃ。 のう。
637
01:05:28,870 --> 01:05:32,900
しようのないお方。
638
01:05:32,900 --> 01:05:35,900
ささ。
639
01:05:45,250 --> 01:05:48,350
< その頃 京都では…>
640
01:06:02,930 --> 01:06:06,590
<九死に一生を得た島左近が➡
641
01:06:06,590 --> 01:06:11,590
知るべの商家に匿われ
負傷した体を癒やしていた>
642
01:06:13,860 --> 01:06:17,460
六郎です。
うん。
643
01:06:25,210 --> 01:06:28,580
どうした?
644
01:06:28,580 --> 01:06:34,530
石田様が
捕らえられたそうでございます。
645
01:06:34,530 --> 01:06:39,950
なんでも 百姓の姿に身をやつし➡
646
01:06:39,950 --> 01:06:46,860
江州 古橋村の山中で
岩穴に潜んでおられたとか。
647
01:06:46,860 --> 01:06:50,460
お痛わしい。
648
01:07:05,380 --> 01:07:07,830
卑怯者めが。
649
01:07:07,830 --> 01:07:11,540
追捕の目を逃れんがために
古衣を着て➡
650
01:07:11,540 --> 01:07:14,190
草刈り鎌まで
差しておったそうじゃ。
651
01:07:14,190 --> 01:07:16,610
よほどに命が惜しかったようだな。
652
01:07:16,610 --> 01:07:20,410
(笑い声)
653
01:07:25,830 --> 01:07:31,830
腰抜けめ。 生き恥をさらしおって。
654
01:07:39,200 --> 01:07:42,830
治部少輔殿に わしが?
655
01:07:42,830 --> 01:07:46,370
なんで わしが
会わねばならんのじゃ?
656
01:07:46,370 --> 01:07:49,870
なんでも くそもあるか。
敵の大将を捕まえたら➡
657
01:07:49,870 --> 01:07:53,680
引っ張り出して実検するのは
当然のことだ。
658
01:07:53,680 --> 01:07:56,860
じゃが 見破られたらどうする。
659
01:07:56,860 --> 01:08:00,230
思い悩むことはない。
660
01:08:00,230 --> 01:08:04,160
なあ 何も会わずとも➡
661
01:08:04,160 --> 01:08:07,830
会ったことにして済ませれば
よいではないか。
662
01:08:07,830 --> 01:08:09,830
それはならぬ。
663
01:08:09,830 --> 01:08:12,530
こそこそすれば
かえって世間に疑われる。
664
01:08:12,530 --> 01:08:16,670
諸侯列座の前で
堂々と対面せねばならぬ。
665
01:08:16,670 --> 01:08:19,220
わしと忠勝がついている。
666
01:08:19,220 --> 01:08:23,620
おぬしは黙って
どんと構えておればよい。
667
01:08:23,620 --> 01:08:28,620
こんなこと続けておっては
わしは やっていけぬぞ。
668
01:08:31,580 --> 01:08:34,880
本多正純様が参られました。
669
01:08:41,580 --> 01:08:45,410
忘れたのか? わしの倅だ。
670
01:08:45,410 --> 01:08:47,910
あぁ おぬしの。
671
01:08:52,540 --> 01:08:59,210
治部少輔の身柄は ひとまず
この正純に預けてございます。
672
01:08:59,210 --> 01:09:05,370
さようか。 大儀である。
673
01:09:05,370 --> 01:09:09,020
対面の日取りは
決まりましてございますか?
674
01:09:09,020 --> 01:09:11,320
あ あぁ。
675
01:09:13,910 --> 01:09:16,340
明日。
676
01:09:16,340 --> 01:09:21,920
明日は… 明日は無理じゃ。
677
01:09:21,920 --> 01:09:25,520
では 明後日。
678
01:09:31,840 --> 01:09:35,410
明後日。
679
01:09:35,410 --> 01:09:38,210
よきに計らえ。
はっ。
680
01:10:32,820 --> 01:10:36,210
治部少輔殿。
681
01:10:36,210 --> 01:10:41,180
軽々しく戦を起こし
天下に大乱を招いたこと➡
682
01:10:41,180 --> 01:10:44,780
何と心得られるか。
683
01:10:48,240 --> 01:10:51,840
内府様に対し弓を引き➡
684
01:10:51,840 --> 01:10:55,390
縄目の恥辱を受けしは➡
685
01:10:55,390 --> 01:10:58,200
天の罰したもうところである。
686
01:10:58,200 --> 01:11:03,680
さよう さよう。
まさしく天罰じゃ 卑怯者。
687
01:11:03,680 --> 01:11:11,180
(笑い声)
688
01:11:13,380 --> 01:11:21,190
(笑い声)
689
01:11:21,190 --> 01:11:24,870
よくも申されたものかな。
690
01:11:24,870 --> 01:11:29,260
太閤殿下の大恩を受けながら➡
691
01:11:29,260 --> 01:11:33,580
秀頼様を
ないがしろにする方々こそ➡
692
01:11:33,580 --> 01:11:36,580
恥を知るべきであろう。
693
01:11:41,860 --> 01:11:47,350
この治部少輔
義をもって起った身なれば➡
694
01:11:47,350 --> 01:11:50,950
恥じるところ微塵もござらぬ。
695
01:11:53,480 --> 01:11:55,550
黙れ 治部少。
696
01:11:55,550 --> 01:11:58,890
義をもって起ったなどと よくも。
697
01:11:58,890 --> 01:12:01,840
さようじゃ。 黙らっしゃい。
言うに事欠いて。
698
01:12:01,840 --> 01:12:04,880
たわけたことを並べおって。
片腹痛いわ。
699
01:12:04,880 --> 01:12:08,550
つらの皮を引きはいでくれよう。
お待ちくだされ。
700
01:12:08,550 --> 01:12:11,850
方々のお怒りは
ごもっともでござる。
701
01:12:16,360 --> 01:12:22,000
秀頼公は いまだ御歳七歳の
御幼少におわす。
702
01:12:22,000 --> 01:12:25,720
是非善悪の
分かちもつかぬのをよいことに➡
703
01:12:25,720 --> 01:12:28,840
その御名を用い
旗をあげたことこそ➡
704
01:12:28,840 --> 01:12:32,170
秀頼公をないがしろにする
行為でござろう。
705
01:12:32,170 --> 01:12:35,530
しかも 敗軍の将が
自害もせずに逃げ回るとは➡
706
01:12:35,530 --> 01:12:37,880
見苦しい限りではないか。
707
01:12:37,880 --> 01:12:41,200
その方ごときに何がわかる。
708
01:12:41,200 --> 01:12:45,620
負けて腹を切るのは
葉武者のすること。
709
01:12:45,620 --> 01:12:49,220
将たる者の取る道ではない。
710
01:12:56,380 --> 01:13:00,550
内府殿
某 命あるかぎりは➡
711
01:13:00,550 --> 01:13:02,670
いかにもして 大坂へ落ちのび➡
712
01:13:02,670 --> 01:13:06,110
兵を挙げる所存でござったが➡
713
01:13:06,110 --> 01:13:10,410
運尽きて 虜となり申した。
714
01:13:12,350 --> 01:13:17,030
この上は 身は八つ裂きに
されようとも構いませぬ。
715
01:13:17,030 --> 01:13:21,520
が 秀頼様のご後見➡
716
01:13:21,520 --> 01:13:27,520
何とぞ 何とぞ
お願い申し上げまする。
717
01:13:59,540 --> 01:14:04,520
治部少輔殿 お心のうち➡
718
01:14:04,520 --> 01:14:07,620
しかと 承った。
719
01:14:31,340 --> 01:14:36,000
皆に告ぐ 治部少輔殿のことを➡
720
01:14:36,000 --> 01:14:39,600
くれぐれも丁重に。
721
01:14:39,600 --> 01:14:42,200
ははっ。
722
01:15:19,190 --> 01:15:21,510
内府殿のなさりよう➡
723
01:15:21,510 --> 01:15:26,200
さすが 日本一の弓取り。
724
01:15:26,200 --> 01:15:30,370
おおっ さすがじゃの。
治部少は 幸せ者じゃ。
725
01:15:30,370 --> 01:15:33,370
内府殿は 日本一でござる。
726
01:15:43,960 --> 01:15:50,460
治部少輔殿
何か申したいことでも?
727
01:15:56,030 --> 01:15:59,060
今更 申したとて➡
728
01:15:59,060 --> 01:16:03,060
もはや
言い甲斐もなきことでござる。
729
01:16:07,710 --> 01:16:10,410
秀頼様のことのみ➡
730
01:16:10,410 --> 01:16:15,010
重ねて お願い申し上げまする。
731
01:16:30,610 --> 01:16:33,550
< この数日後>
732
01:16:33,550 --> 01:16:36,380
どけ。
どかんか。 下がれ 下がれ。
733
01:16:36,380 --> 01:16:40,070
<石田三成は
京の市中を引き回され➡
734
01:16:40,070 --> 01:16:44,670
六条河原の刑場へ
引き出されようとしていた>
735
01:16:48,860 --> 01:16:50,860
下がっておれ。
736
01:17:00,370 --> 01:17:03,960
すまぬが 湯を一杯 所望したい。
737
01:17:03,960 --> 01:17:06,460
おろせ。
738
01:17:38,380 --> 01:17:42,820
湯はない 代わりにこれを。
739
01:17:42,820 --> 01:17:49,920
せっかくだが 柿は痰の毒だ。
体に悪い。
740
01:17:49,920 --> 01:17:54,520
首をはねられる者が
体の心配をして何になる。
741
01:17:57,050 --> 01:17:59,870
大義を抱く者は➡
742
01:17:59,870 --> 01:18:02,990
たとえ 首をはねられようとも➡
743
01:18:02,990 --> 01:18:06,740
最後の最後まで➡
744
01:18:06,740 --> 01:18:12,840
決して 望みを捨ててはならぬ。
745
01:18:33,080 --> 01:18:39,080
< これが
主従の永遠の別れであった>
746
01:18:49,200 --> 01:18:51,550
わしが初めてお会いしたとき➡
747
01:18:51,550 --> 01:18:57,570
治部少輔様は まだ四万石という
軽い身分であられたが➡
748
01:18:57,570 --> 01:19:03,070
このわしを ぜひとも
召し抱えたいとおおせられてな。
749
01:19:05,030 --> 01:19:08,370
二万石でどうかと
お声をかけられた。
750
01:19:08,370 --> 01:19:12,540
二万石?
所領の半分ではございませんか。
751
01:19:12,540 --> 01:19:15,890
そうだ。
752
01:19:15,890 --> 01:19:18,830
主と家来が同じ禄などという
馬鹿な話は➡
753
01:19:18,830 --> 01:19:21,370
聞いたことがございませぬ。
754
01:19:21,370 --> 01:19:24,270
わしだって
そんな話を聞いたのは➡
755
01:19:24,270 --> 01:19:28,540
それ一度っきりだ。
756
01:19:28,540 --> 01:19:30,870
わかるか?
757
01:19:30,870 --> 01:19:34,910
殿とは そういうお方なのだ。
758
01:19:34,910 --> 01:19:37,910
私欲というものが まったくない。
759
01:19:40,150 --> 01:19:47,070
六郎 わしは
治部少輔様の志を継いで➡
760
01:19:47,070 --> 01:19:52,350
秀頼様をお守りせねばならぬ。
761
01:19:52,350 --> 01:19:54,650
手伝ってくれるか?
762
01:20:00,200 --> 01:20:06,360
もう一度
徳川内府のお命を頂戴する。
763
01:20:06,360 --> 01:20:08,860
今の内府は 偽物でござる。
764
01:20:08,860 --> 01:20:10,880
本物は この手で。
765
01:20:10,880 --> 01:20:14,520
確かか?
766
01:20:14,520 --> 01:20:17,960
影武者のほうを
手にかけたということは。
767
01:20:17,960 --> 01:20:19,960
そう言われれば…。
768
01:20:28,700 --> 01:20:31,590
<大津を発った影武者 家康は➡
769
01:20:31,590 --> 01:20:36,370
大坂城の西の丸に入った。
770
01:20:36,370 --> 01:20:39,380
このことは 大坂城を居城とする➡
771
01:20:39,380 --> 01:20:42,500
豊臣秀頼と
その生母 淀君にとっては➡
772
01:20:42,500 --> 01:20:48,420
我が家に敵が踏み込んできたにも
等しい出来事であった>
773
01:20:48,420 --> 01:20:52,660
内府殿は この城を
乗っとるおつもりか?
774
01:20:52,660 --> 01:20:54,680
まさか。
775
01:20:54,680 --> 01:20:56,690
ならば なぜ参ったのじゃ?
776
01:20:56,690 --> 01:21:00,000
かのお人は 今も尚➡
777
01:21:00,000 --> 01:21:03,480
この豊臣家の年寄という
お立場でござりますれば➡
778
01:21:03,480 --> 01:21:06,490
この城に入ったとて
何の不思議も…。
779
01:21:06,490 --> 01:21:08,890
表向きは そうでも➡
780
01:21:08,890 --> 01:21:13,530
腹の中では何を企んでるか
知れたものではない。
781
01:21:13,530 --> 01:21:15,510
秀頼様に一度➡
782
01:21:15,510 --> 01:21:18,200
目どおりを願いたい
とのことでございますが。
783
01:21:18,200 --> 01:21:21,820
(笑い声)
784
01:21:21,820 --> 01:21:24,540
目どおりなど
とんでもないことじゃ。
785
01:21:24,540 --> 01:21:27,540
何ぞ 謀でも?
786
01:21:27,540 --> 01:21:32,530
いや 謀などあろうとは とても。
787
01:21:32,530 --> 01:21:35,830
ないと言い切れるのか?
788
01:21:38,200 --> 01:21:41,150
いずれにせよ 急ぐことはない。
789
01:21:41,150 --> 01:21:46,040
様子を見てからのことじゃ。
790
01:21:46,040 --> 01:21:49,180
<同じ頃 西の丸では➡
791
01:21:49,180 --> 01:21:52,280
新たな難問が持ち上がっていた>
792
01:22:01,860 --> 01:22:06,000
側室方が 殿様に
ご挨拶をしたいと おいでですが➡
793
01:22:06,000 --> 01:22:10,420
どういたしましょう?
ふん…。
794
01:22:10,420 --> 01:22:16,520
<家康には お梶の方の他にも
四人の側室がいた>
795
01:22:18,860 --> 01:22:21,730
何を悩むことがある。
796
01:22:21,730 --> 01:22:25,030
四人とも殺してしまえば
よいではないか。
797
01:22:25,030 --> 01:22:27,370
殺す?
798
01:22:27,370 --> 01:22:29,440
他に手立てがあるか?
799
01:22:29,440 --> 01:22:32,170
側室どもと
顔を合わせたりすれば➡
800
01:22:32,170 --> 01:22:36,710
そのほうが偽物であることは
露見せずには済むまい。
801
01:22:36,710 --> 01:22:39,500
いや そうは言うても…。
802
01:22:39,500 --> 01:22:41,500
そこまでせずとも。
803
01:22:41,500 --> 01:22:46,200
どこかへ連れ出して
まとめて始末してしまえば➡
804
01:22:46,200 --> 01:22:48,840
誰にもわかりはせぬ。
805
01:22:48,840 --> 01:22:52,080
さような むごいこと➡
806
01:22:52,080 --> 01:22:55,380
断じて許すわけにはまいりませぬ。
807
01:22:57,350 --> 01:22:59,950
誰に向かって
ものを言っているのだ。
808
01:23:03,740 --> 01:23:08,490
側室方を何としても
殺すというのであれば➡
809
01:23:08,490 --> 01:23:10,940
この世良田二郎三郎➡
810
01:23:10,940 --> 01:23:14,540
お役目 続けることはできませぬ。
811
01:23:16,850 --> 01:23:18,950
どうなっても知らんぞ。
812
01:23:34,200 --> 01:23:38,160
関ヶ原のご勝利
おめでとう存じまする。
813
01:23:38,160 --> 01:23:41,020
おめでとう存じまする。
814
01:23:41,020 --> 01:23:44,930
うむ。 その方らも➡
815
01:23:44,930 --> 01:23:50,330
気を揉んだことであろう
はっはっはっ。
816
01:23:50,330 --> 01:23:54,860
殊に お亀様は たいそう心配を。
817
01:23:54,860 --> 01:23:58,810
お亀 お亀…。
818
01:23:58,810 --> 01:24:03,700
何しろ お亀様は
身ごもっておられますから。
819
01:24:03,700 --> 01:24:07,380
おお…。
820
01:24:07,380 --> 01:24:11,680
お亀 その腹の子は…。
821
01:24:13,710 --> 01:24:16,580
殿様のお子でございまする。
822
01:24:16,580 --> 01:24:22,020
ああ そうよ そうよ はははっ。
823
01:24:22,020 --> 01:24:24,200
大事にせねばのう はははっ。
824
01:24:24,200 --> 01:24:29,660
(笑い声)
825
01:24:29,660 --> 01:24:33,690
ご安心なさいませ この方々には➡
826
01:24:33,690 --> 01:24:38,550
まことのことを明かしてあります。
827
01:24:38,550 --> 01:24:41,940
そのほうが
あとで露見するよりは➡
828
01:24:41,940 --> 01:24:44,240
面倒がございませんもの。
829
01:24:50,880 --> 01:24:53,980
私は 阿茶と申します。
830
01:24:53,980 --> 01:24:57,750
こちらから順に お亀様。
831
01:24:57,750 --> 01:25:01,250
お万様 お夏様。
832
01:25:07,230 --> 01:25:13,870
世良田二郎三郎
と申す者にござりまする。
833
01:25:13,870 --> 01:25:18,670
この後 よろしゅう
お願い申し上げます。
834
01:25:18,670 --> 01:25:22,210
何なりと 仰せつけを。
835
01:25:22,210 --> 01:25:25,200
ですが 初めに一つだけ➡
836
01:25:25,200 --> 01:25:28,320
お聞き届け願いたいことが。
837
01:25:28,320 --> 01:25:30,750
何でござりましょうか?
838
01:25:30,750 --> 01:25:35,360
今後は お梶様以外の側室とも➡
839
01:25:35,360 --> 01:25:37,710
床を
ともにしていただきたいのです。
840
01:25:37,710 --> 01:25:40,580
えっ…。
そうしていただかねば➡
841
01:25:40,580 --> 01:25:42,830
女中たちの不審を招き➡
842
01:25:42,830 --> 01:25:47,530
すべては 中納言様の
知るところとなりましょう。
843
01:25:47,530 --> 01:25:50,650
私たち六人は もはや➡
844
01:25:50,650 --> 01:25:53,370
同じさだめで繋がれているのです。
845
01:25:53,370 --> 01:25:57,360
殿様といえども
わがままは許されませぬ。
846
01:25:57,360 --> 01:25:59,680
はぁ…。
847
01:25:59,680 --> 01:26:03,700
私に遠慮はいりませぬ。
848
01:26:03,700 --> 01:26:08,020
今夜から早速。
849
01:26:08,020 --> 01:26:11,460
今夜から?
850
01:26:11,460 --> 01:26:15,760
お万様 よろしくお願いします。
851
01:26:22,670 --> 01:26:24,670
今夜から…。
852
01:26:33,410 --> 01:26:36,710
(咳払い)
853
01:26:46,180 --> 01:26:49,980
ああ… ああ。
854
01:27:00,010 --> 01:27:02,510
(ため息)
855
01:27:09,080 --> 01:27:11,080
おっ…。
856
01:27:14,170 --> 01:27:16,970
今 戻りました。
857
01:27:26,920 --> 01:27:30,870
お梶殿 ゆうべは➡
858
01:27:30,870 --> 01:27:34,670
一睡もできませなんだ。
859
01:27:41,350 --> 01:27:49,870
お梶殿 世良田二郎三郎➡
860
01:27:49,870 --> 01:27:53,080
ゆうべのようなことは➡
861
01:27:53,080 --> 01:27:56,080
つらすぎまする。
862
01:28:12,510 --> 01:28:17,450
何を縫うておいでですか?
863
01:28:17,450 --> 01:28:19,400
羽織を。
864
01:28:19,400 --> 01:28:22,500
おう 羽織を。
865
01:28:25,240 --> 01:28:27,540
夜なべですか?
866
01:28:29,710 --> 01:28:32,010
精が出ますな。
867
01:28:44,740 --> 01:28:47,240
(あくび)
868
01:28:51,180 --> 01:28:54,980
(笑い声)
869
01:29:11,320 --> 01:29:13,820
おお 上達したではないか。
870
01:29:13,820 --> 01:29:17,580
大殿の書き判そのままだ。
871
01:29:17,580 --> 01:29:20,180
いや だいぶ稽古したからのう。
872
01:29:22,170 --> 01:29:24,200
何用だ?
873
01:29:24,200 --> 01:29:28,370
秀頼様が 対面なさるそうだ。
874
01:29:28,370 --> 01:29:31,370
ああ…。
875
01:29:52,360 --> 01:30:00,020
内府殿は いつまで西の丸に
居座るおつもりじゃ?
876
01:30:00,020 --> 01:30:04,520
伏見城の修築がなりますまでは。
877
01:30:04,520 --> 01:30:09,550
さても 気味の悪いことよのう。
878
01:30:09,550 --> 01:30:13,320
巣の中に狐を飼うておるような。
879
01:30:13,320 --> 01:30:17,350
(笑い声)
880
01:30:17,350 --> 01:30:20,260
これまた 狐とは はははっ。
881
01:30:20,260 --> 01:30:22,210
なんと… はははっ。
882
01:30:22,210 --> 01:30:26,900
この家康 狸と呼ばれたことは
ござりまするが。
883
01:30:26,900 --> 01:30:32,200
(笑い声)
884
01:30:35,910 --> 01:30:38,930
はぁ まぁ いずれにしろ➡
885
01:30:38,930 --> 01:30:44,660
この家康
他意は露ほどにも ござりませぬ。
886
01:30:44,660 --> 01:30:48,200
亡き太閤様は 無論のこと➡
887
01:30:48,200 --> 01:30:53,020
治部少輔殿からも
秀頼様の御後見➡
888
01:30:53,020 --> 01:30:58,320
くれぐれも頼むと
申しつかっておりまする。
889
01:31:01,660 --> 01:31:05,700
はははは。 賢げな御子じゃ。
890
01:31:05,700 --> 01:31:11,700
はは よい物を進ぜよう。
こちらへ まいられよ。
891
01:31:49,700 --> 01:31:51,680
これでござりまする。
892
01:31:51,680 --> 01:31:58,370
まあ。
これは お梶と申す女子が➡
893
01:31:58,370 --> 01:32:02,980
秀頼様のために
丹精を込めて作った➡
894
01:32:02,980 --> 01:32:05,010
羽織にござりまする。
895
01:32:05,010 --> 01:32:08,110
はははは。
896
01:32:17,220 --> 01:32:23,020
内府殿とも思えぬ気遣いじゃな。
ははは。
897
01:32:26,750 --> 01:32:33,510
まあ まるで あつらえたような。
898
01:32:33,510 --> 01:32:37,430
またとない贈り物じゃ。
899
01:32:37,430 --> 01:32:43,420
お梶殿とやらに
私が礼を申していたと。
900
01:32:43,420 --> 01:32:48,720
はっ しかと申し伝えまする。
901
01:33:04,000 --> 01:33:06,320
それほどに
喜んでいただけたのなら➡
902
01:33:06,320 --> 01:33:09,370
私も夜なべをしたかいが
ございました。
903
01:33:09,370 --> 01:33:13,360
はははは。
いやあ それにしても➡
904
01:33:13,360 --> 01:33:18,150
あの秀頼様に羽織の贈り物とは➡
905
01:33:18,150 --> 01:33:23,170
よう気がつかれたものだと
感心いたしました。
906
01:33:23,170 --> 01:33:26,800
私 殿様のまねをしただけです。
907
01:33:26,800 --> 01:33:31,360
ああ この二郎三郎の?
908
01:33:31,360 --> 01:33:34,800
治部少輔様と対面なされたとき➡
909
01:33:34,800 --> 01:33:38,630
殿様は羽織を脱いで
賜われたそうではございませぬか。
910
01:33:38,630 --> 01:33:43,500
ああ あの折の。 いやあ ははは。
911
01:33:43,500 --> 01:33:50,680
いや お梶様。
あなたは たいしたお方じゃ。
912
01:33:50,680 --> 01:33:54,980
たんと褒めてくださいませ。
はい。
913
01:33:59,050 --> 01:34:02,350
さっ どうぞ。
うまい。
914
01:34:04,980 --> 01:34:08,510
秀頼様は いかがでございました?
915
01:34:08,510 --> 01:34:14,630
秀頼様は 女官たちに囲まれて➡
916
01:34:14,630 --> 01:34:17,870
身動き ひとつなさらず➡
917
01:34:17,870 --> 01:34:22,470
ただただ
おとなしゅうしておられました。
918
01:34:24,480 --> 01:34:29,220
遊びたいのは盛りの年ごろに。
919
01:34:29,220 --> 01:34:36,820
あれでは
窮屈で たまるまいと思いました。
920
01:34:40,460 --> 01:34:47,380
徳川のお家は あの秀頼様を➡
921
01:34:47,380 --> 01:34:52,160
どうするおつもりでしょうかの。
922
01:34:52,160 --> 01:34:57,630
さあ。 いずれにいたしましても➡
923
01:34:57,630 --> 01:35:02,180
今のまま 大坂城に
置いてはおきますまい。
924
01:35:02,180 --> 01:35:07,140
大坂城に
置いてはおかぬということは➡
925
01:35:07,140 --> 01:35:12,530
生かしてはおかぬということに
ござりましょうか。
926
01:35:12,530 --> 01:35:18,030
中納言様が
徳川家をお継ぎになれば➡
927
01:35:18,030 --> 01:35:21,500
必ずや そうなされましょう。
928
01:35:21,500 --> 01:35:28,500
あのがんぜない秀頼様を…
むごい。
929
01:35:37,350 --> 01:35:42,470
となれば この世良田二郎三郎➡
930
01:35:42,470 --> 01:35:48,450
取るべき道は
ただ一つにござります。
931
01:35:48,450 --> 01:35:54,750
秀頼様のお命を
お守りせねばなりません。
932
01:35:58,470 --> 01:36:02,680
そうでござりましょう お梶殿。
933
01:36:02,680 --> 01:36:09,150
秀頼様が殺されれば
豊臣家は亡びます。
934
01:36:09,150 --> 01:36:13,050
豊臣家が亡びれば➡
935
01:36:13,050 --> 01:36:20,350
徳川家康様の影の この私めも
用済みとなりまする。
936
01:36:26,970 --> 01:36:32,020
秀頼様が死ねば➡
937
01:36:32,020 --> 01:36:39,200
徳川家康様の影の
この世良田二郎三郎も➡
938
01:36:39,200 --> 01:36:43,300
死にまする。
939
01:36:51,060 --> 01:36:55,660
死にとうはござりませぬ。 今は。
940
01:37:10,760 --> 01:37:14,260
(足音)
941
01:37:20,850 --> 01:37:22,790
(手裏剣が飛ぶ音)
942
01:37:22,790 --> 01:37:43,060
♬~
943
01:37:43,060 --> 01:37:47,160
くせ者を捕らえたそうです。
944
01:37:49,330 --> 01:37:51,350
この者は?
945
01:37:51,350 --> 01:37:55,010
ふうと申しまする。
おお。
946
01:37:55,010 --> 01:37:56,960
身の回りの用心のため➡
947
01:37:56,960 --> 01:37:59,010
私が雇っている者です。
948
01:37:59,010 --> 01:38:04,000
おお わしのことは?
明かしております。
949
01:38:04,000 --> 01:38:06,300
くせ者を いかがいたしましょう。
950
01:38:14,060 --> 01:38:17,060
手燭を。
951
01:38:28,540 --> 01:38:34,340
すまぬが この場を
ちょっと外してくれぬか。
952
01:38:47,260 --> 01:38:51,560
その顔 見覚えがあるぞ。
953
01:38:53,710 --> 01:38:58,710
また家康を殺しにきたか。
954
01:39:00,650 --> 01:39:04,450
本物ならば
そうするつもりだったが。
955
01:39:07,040 --> 01:39:10,140
誰に頼まれた?
956
01:39:12,500 --> 01:39:18,000
いずれ
豊臣ゆかりの者であろうが。
957
01:39:20,510 --> 01:39:23,610
言いたくなくば それでよい。
958
01:39:50,700 --> 01:39:53,840
助けてやる。
いいのか?
959
01:39:53,840 --> 01:39:55,790
かまわん。
960
01:39:55,790 --> 01:40:00,350
しかし 逃がせば
家康は偽者だと言いふらすぞ。
961
01:40:00,350 --> 01:40:05,350
それはそれでよい。
しかし言うておく。
962
01:40:05,350 --> 01:40:11,340
この家康の影を務める わしは➡
963
01:40:11,340 --> 01:40:16,780
決して
豊臣家を害する者ではない。
964
01:40:16,780 --> 01:40:21,480
そのことなら さっき天井裏で。
965
01:40:21,480 --> 01:40:24,970
聞いておったか。
966
01:40:24,970 --> 01:40:28,970
はは はは。
967
01:40:35,480 --> 01:40:38,220
折角の骨折り 申し訳ないが➡
968
01:40:38,220 --> 01:40:41,820
あの者を逃がしてやってくれ。
969
01:40:56,970 --> 01:41:00,170
はははは わしが
余計なことを命じたばかりに➡
970
01:41:00,170 --> 01:41:02,130
とんだ災難に遭ったな。
971
01:41:02,130 --> 01:41:07,660
しかし その偽家康
なかなかおもしろいやつだ。
972
01:41:07,660 --> 01:41:10,180
一度会ってみたいものだな。
973
01:41:10,180 --> 01:41:15,140
世良田二郎三郎とか
申しておりましたが。
974
01:41:15,140 --> 01:41:17,170
世良田?
975
01:41:17,170 --> 01:41:19,810
存じ寄りの者でございますか。
976
01:41:19,810 --> 01:41:23,150
名前だけは
うわさに聞いたことがある。
977
01:41:23,150 --> 01:41:26,730
何者でございます?
978
01:41:26,730 --> 01:41:29,670
信長を撃った男だ。
979
01:41:29,670 --> 01:41:32,170
信長を?
980
01:41:45,650 --> 01:41:49,650
待て! 今日は そなたに
頼みたいことがあって来たのだ。
981
01:41:53,340 --> 01:41:55,680
内府殿に
お引き会わせを願いたい。
982
01:41:55,680 --> 01:41:59,630
会って どうしようというのだ。
お身の回りの警固の人数に➡
983
01:41:59,630 --> 01:42:02,390
このわしも
加えてもらいたいのだ。
984
01:42:02,390 --> 01:42:05,690
お前のような腰抜けが
何の役に立つ。
985
01:42:10,960 --> 01:42:16,020
わしは 元は武田の忍びで
名は 甲斐の六郎。
986
01:42:16,020 --> 01:42:19,540
そなたは?
風魔の ふう。
987
01:42:19,540 --> 01:42:24,210
おふう殿か かわいい名だ。
988
01:42:24,210 --> 01:42:30,710
これでもう 仲直りといこう。
よいな?
989
01:42:54,720 --> 01:43:01,530
おふうから聞いた。
わしの身辺を守りたいだと?
990
01:43:01,530 --> 01:43:05,970
はは よう言うの。
ゆうべは このわしを➡
991
01:43:05,970 --> 01:43:08,500
殺しに来たくせに。
992
01:43:08,500 --> 01:43:12,170
まっ それはそれとして。
993
01:43:12,170 --> 01:43:15,140
身辺をお守りしたいとばかりで。
994
01:43:15,140 --> 01:43:23,020
要するに
秀頼様お大事ということで➡
995
01:43:23,020 --> 01:43:26,540
お互い 協力し合おう
ということだな。
996
01:43:26,540 --> 01:43:29,140
まさしく。
997
01:43:32,030 --> 01:43:34,080
しかし おぬしは➡
998
01:43:34,080 --> 01:43:39,000
すでに おつかいするお方が
おられるであろうに。
999
01:43:39,000 --> 01:43:42,600
ご懸念には およびませぬ。
1000
01:43:44,950 --> 01:43:49,480
そのお方は 誰じゃ?
1001
01:43:49,480 --> 01:43:52,180
それは 申せませぬが➡
1002
01:43:52,180 --> 01:43:56,970
世良田二郎三郎殿には
いずれ お目にかかりたいと。
1003
01:43:56,970 --> 01:44:01,190
このわしを
知っておられるお方か。
1004
01:44:01,190 --> 01:44:06,510
信長を撃った男として。
1005
01:44:06,510 --> 01:44:09,350
ああ。
1006
01:44:09,350 --> 01:44:15,000
しかし 二十年も昔のことだぞ。
1007
01:44:15,000 --> 01:44:20,640
石山本願寺の合戦最中のことと
聞きましたが。
1008
01:44:20,640 --> 01:44:26,330
ああ そうじゃ。
この大坂城が出来る前➡
1009
01:44:26,330 --> 01:44:30,650
この辺りは
本願寺のとりでがあった。
1010
01:44:30,650 --> 01:44:36,140
大勢の門徒たちが
そこに籠っておった。
1011
01:44:36,140 --> 01:44:40,840
その当時 信長といえば
大層な勢いであったはず。
1012
01:44:40,840 --> 01:44:45,000
うん 信長は➡
1013
01:44:45,000 --> 01:44:53,340
その門徒衆の女 子供に至るまで
皆殺しにした。
1014
01:44:53,340 --> 01:45:00,010
門徒衆は信長を
悪鬼羅刹と思うておった。
1015
01:45:00,010 --> 01:45:07,290
そんな恐ろしい男に
おぬしは よくもたった一人で。
1016
01:45:07,290 --> 01:45:12,010
ははは それが 間違いの元よ。
1017
01:45:12,010 --> 01:45:18,800
たった一人で
信長を倒そうなどと。
1018
01:45:18,800 --> 01:45:22,840
以来 わしは➡
1019
01:45:22,840 --> 01:45:28,290
それまでと同じ生き方は
出来ぬ身となった。
1020
01:45:28,290 --> 01:45:34,460
わしは 皆から
鉄砲の名手と もてはやされ➡
1021
01:45:34,460 --> 01:45:38,680
英雄になったつもりでおった。
1022
01:45:38,680 --> 01:45:46,310
しかし そんな甘い考えは
すぐに吹き飛ばされた。
1023
01:45:46,310 --> 01:45:50,560
信長を撃とうとした刹那➡
1024
01:45:50,560 --> 01:45:54,860
信長が わしを見た。
1025
01:45:58,120 --> 01:46:00,840
炎のような目じゃった。
1026
01:46:00,840 --> 01:46:03,340
その目と向き合うたとき➡
1027
01:46:03,340 --> 01:46:08,650
わしの指は固まり 動かなんだ。
1028
01:46:08,650 --> 01:46:13,670
そのとき わしは思い知らされた。
1029
01:46:13,670 --> 01:46:18,990
結局のところ
信長こそが英雄で➡
1030
01:46:18,990 --> 01:46:23,660
わしは ただの人間にすぎぬと。
1031
01:46:23,660 --> 01:46:28,050
それで 影武者に?
1032
01:46:28,050 --> 01:46:32,710
ふふ。
1033
01:46:32,710 --> 01:46:37,510
六郎 飲め。
ああ。
1034
01:46:41,680 --> 01:46:49,470
わしはな 人の影となって生きる
今の自分を➡
1035
01:46:49,470 --> 01:46:52,530
ちょうどええと思うておる。
1036
01:46:52,530 --> 01:46:55,630
なにもそう
卑下することはあるまい。
1037
01:46:55,630 --> 01:46:58,680
結果は どうあれ
門徒衆のために➡
1038
01:46:58,680 --> 01:47:01,830
命がけで
信長に立ち向かったのだ。
1039
01:47:01,830 --> 01:47:07,620
はははは。 わしを
買いかぶってもらっては困る。
1040
01:47:07,620 --> 01:47:13,680
わしは何より
自分の命が惜しいし➡
1041
01:47:13,680 --> 01:47:21,800
天下の家康 徳川家康の影武者
となったおかげで➡
1042
01:47:21,800 --> 01:47:26,680
お梶という
すばらしい女子にも出会うた。
1043
01:47:26,680 --> 01:47:29,780
懸想した。
1044
01:47:32,580 --> 01:47:36,000
しかし➡
1045
01:47:36,000 --> 01:47:40,890
徳川家康の影武者➡
1046
01:47:40,890 --> 01:47:44,980
誰にでも出来ることではない。
1047
01:47:44,980 --> 01:47:57,390
殊に内府という立場になった
家康の影を務める このわしは➡
1048
01:47:57,390 --> 01:48:03,690
その気になれば
天下を動かすことも出来る。
1049
01:48:14,620 --> 01:48:17,210
< この年の十一月➡
1050
01:48:17,210 --> 01:48:22,310
お亀の方が
無事 男児を出産した>
1051
01:48:24,320 --> 01:48:26,340
殿様の御子でございますよ。
1052
01:48:26,340 --> 01:48:29,640
はははは。
1053
01:48:29,640 --> 01:48:33,180
よう産んでくれました。
1054
01:48:33,180 --> 01:48:40,850
< この家康の忘れ形見は
五郎太丸と名づけられた>
1055
01:48:40,850 --> 01:48:44,800
おお 硬い。
凝っておられまするな。
1056
01:48:44,800 --> 01:48:47,690
はい。
1057
01:48:47,690 --> 01:48:49,660
(五郎太丸の泣き声)
1058
01:48:49,660 --> 01:48:52,760
泣いておる 泣いておりまするな。
1059
01:48:55,000 --> 01:48:57,000
そんなに揺らして…。
おおお。
1060
01:48:57,000 --> 01:49:02,020
お返しください。
ほれ ほれ。
1061
01:49:02,020 --> 01:49:04,060
ほれほれほれ。
1062
01:49:04,060 --> 01:49:07,660
あぁもう 殿様。
1063
01:49:09,680 --> 01:49:11,800
どうなさいました?
1064
01:49:11,800 --> 01:49:18,890
殿様が 床をお出になったまま
お戻りになられぬと言うのです。
1065
01:49:18,890 --> 01:49:21,890
どこへ消えてしまわれたのか。
1066
01:49:29,200 --> 01:49:31,700
(ため息)
1067
01:49:34,340 --> 01:49:38,960
そのように
赤子をお構いなされるのは➡
1068
01:49:38,960 --> 01:49:41,790
考えものでございます。
1069
01:49:41,790 --> 01:49:44,680
何か 不都合でも
ござりましょうか?
1070
01:49:44,680 --> 01:49:49,570
本物の殿様は 御子などは
寄せつけぬお方でございました。
1071
01:49:49,570 --> 01:49:56,230
皆が不審がりましょう。
なるほど ははは。
1072
01:49:56,230 --> 01:50:01,180
お梶 阿茶➡
1073
01:50:01,180 --> 01:50:06,070
歳をとってからの子はのう➡
1074
01:50:06,070 --> 01:50:11,340
授かった子は
そのかわいさも格別じゃ。
1075
01:50:11,340 --> 01:50:14,960
今までと違うたとしても➡
1076
01:50:14,960 --> 01:50:20,180
この家康 かわいがるのは
道理であろうが あ?
1077
01:50:20,180 --> 01:50:27,140
と 大殿ならば
仰せになられたと思いまする。
1078
01:50:27,140 --> 01:50:30,040
まぁ。
1079
01:50:30,040 --> 01:50:34,640
自分の御子でもございませんのに。
1080
01:50:37,000 --> 01:50:40,340
子は 天からの授かりもの。
1081
01:50:40,340 --> 01:50:44,640
人の子であろうと
我が子であろうと。
1082
01:50:46,960 --> 01:50:51,630
いとしさは 皆同じよ。 のう?
1083
01:50:51,630 --> 01:50:56,340
<影武者 家康が 五郎太丸や
側室たちを引き連れて➡
1084
01:50:56,340 --> 01:51:03,140
修築なった伏見城に移ったのは
翌年 三月のことである。
1085
01:51:03,140 --> 01:51:09,550
一方 江戸へ戻った
大納言 秀忠は➡
1086
01:51:09,550 --> 01:51:15,540
自らを軽視する 本多忠勝らの
重臣を身辺から遠ざけ➡
1087
01:51:15,540 --> 01:51:20,140
家康の後継者としての地位を
確立しようとしていた>
1088
01:51:29,020 --> 01:51:33,520
どうだ? 影武者めは
ぬかりなくやっておるか?
1089
01:51:33,520 --> 01:51:36,810
今までのところは 申し分なく。
1090
01:51:36,810 --> 01:51:39,750
しかし こんなごまかしは
長くは持たぬ。
1091
01:51:39,750 --> 01:51:42,850
そうではないか? 弥八郎。
1092
01:51:50,120 --> 01:51:53,990
徳川の地位を磐石のものに
するためには➡
1093
01:51:53,990 --> 01:51:58,080
いつまでも父上の名声に
頼っているわけにはいかぬ。
1094
01:51:58,080 --> 01:52:03,300
それに代わる 新たな権威を
手に入れねばならぬ。
1095
01:52:03,300 --> 01:52:07,990
新たな権威とは?
1096
01:52:07,990 --> 01:52:14,490
すなわち わしが
征夷大将軍になるのだ。
1097
01:52:16,850 --> 01:52:23,620
しかし それには
朝廷から綸旨を賜らねば。
1098
01:52:23,620 --> 01:52:29,650
その工作を
そのほうにやってもらいたい。
1099
01:52:29,650 --> 01:52:35,150
綸旨が下れば わしは将軍として
幕府を開く。
1100
01:52:35,150 --> 01:52:38,740
さすれば 徳川は武家の頭領。
1101
01:52:38,740 --> 01:52:43,340
豊臣は 臣下ということになる。
1102
01:52:43,340 --> 01:52:50,320
もし 豊臣家が従わぬときは?
1103
01:52:50,320 --> 01:52:55,820
朝廷の名をもって
逆賊として討ち滅ぼす。
1104
01:52:59,360 --> 01:53:03,150
上々の策でござる。
1105
01:53:03,150 --> 01:53:06,130
そうであろう。
1106
01:53:06,130 --> 01:53:11,100
ただし
将軍宣下を受けるのは 大殿➡
1107
01:53:11,100 --> 01:53:15,160
すなわち 影武者の
二郎三郎ということに。
1108
01:53:15,160 --> 01:53:18,490
馬鹿を言え
なんで影武者ごときに。
1109
01:53:18,490 --> 01:53:20,880
朝廷が 大殿を差し置いて➡
1110
01:53:20,880 --> 01:53:27,500
大納言様に綸旨を賜うことなど
ありえませぬ。
1111
01:53:27,500 --> 01:53:31,300
では 某は明日にも京へ。
1112
01:53:47,190 --> 01:53:51,040
こんな 人を愚弄した話があるか。
1113
01:53:51,040 --> 01:53:56,220
わしは いつまで こんなことを
我慢せねばならぬのだ。
1114
01:53:56,220 --> 01:53:59,020
焦ることはございませぬ。
1115
01:54:03,660 --> 01:54:08,230
影武者が将軍職を受けるのは
ただの方便。
1116
01:54:08,230 --> 01:54:12,030
すぐに
大納言様のものとなります。
1117
01:54:21,700 --> 01:54:27,620
弥八郎 すまんがその話
受けることはできぬ。
1118
01:54:27,620 --> 01:54:30,440
できぬとは どういうことだ?
1119
01:54:30,440 --> 01:54:34,330
わしは 秀頼様に害をなさぬと➡
1120
01:54:34,330 --> 01:54:39,280
治部少輔殿にも
淀様にも約束をした。
1121
01:54:39,280 --> 01:54:43,660
いいか おぬしは
将軍の宣下を受けるだけで➡
1122
01:54:43,660 --> 01:54:47,140
すぐに 大納言様に
位を譲るのだ。
1123
01:54:47,140 --> 01:54:49,960
害をなす暇などあるか。
1124
01:54:49,960 --> 01:54:56,350
が 大納言様が
秀頼様に害をなせば➡
1125
01:54:56,350 --> 01:55:00,290
位を譲ったわしも同罪じゃ。
1126
01:55:00,290 --> 01:55:04,990
ええい 頼む! 朝廷ではすでに➡
1127
01:55:04,990 --> 01:55:08,950
綸旨を出すことに
同意しておられる。
1128
01:55:08,950 --> 01:55:12,330
それは そっちの都合だ。
1129
01:55:12,330 --> 01:55:16,840
なんだと!?
なぜ そのように躍起になる?
1130
01:55:16,840 --> 01:55:20,790
秀頼様は まだ八つに
なったばかりの子供だぞ。
1131
01:55:20,790 --> 01:55:25,160
秀頼様は ただの子供ではない。
1132
01:55:25,160 --> 01:55:31,140
天下の諸侯の半分を
後ろに従えているのだ。
1133
01:55:31,140 --> 01:55:36,980
それにな なんといっても
太閤殿下の御子だ。
1134
01:55:36,980 --> 01:55:41,660
将来 どれほどの人物になるか
計り知れぬ。
1135
01:55:41,660 --> 01:55:46,050
だから 今のうちに
始末しておこうということか。
1136
01:55:46,050 --> 01:55:49,990
いや なにも殺そうとまでは。
1137
01:55:49,990 --> 01:55:55,980
勢力さえ削いでしまえば
一大名として存続させることも。
1138
01:55:55,980 --> 01:56:02,650
それは おぬしの考えで
大納言様の腹の中は別だ。
1139
01:56:02,650 --> 01:56:05,990
あのお方は 欲しいものが
手に入れば➡
1140
01:56:05,990 --> 01:56:10,610
必ず このわしを
始末するに違いない。
1141
01:56:10,610 --> 01:56:13,360
そんなことは
このわしが断じてさせぬ。
1142
01:56:13,360 --> 01:56:18,360
それだけは 信じてくれてよい。
1143
01:56:21,800 --> 01:56:25,390
やはり 将軍宣下を
お受けになるのは➡
1144
01:56:25,390 --> 01:56:28,440
得策ではございませぬ。
1145
01:56:28,440 --> 01:56:31,680
阿茶殿も
そう思うてくれるか。
1146
01:56:31,680 --> 01:56:37,820
はい。 ですが 大納言様と
あからさまに対立するのも➡
1147
01:56:37,820 --> 01:56:41,240
考えものにございます。
うむ。
1148
01:56:41,240 --> 01:56:44,740
殿様のみならず 皆にも危害が。
1149
01:56:48,860 --> 01:56:53,790
どうか 危ういことは
おやめください。
1150
01:56:53,790 --> 01:56:57,860
私は 側室に上がってこの方➡
1151
01:56:57,860 --> 01:57:02,360
こんなに幸せだったことは
ございません。
1152
01:57:05,110 --> 01:57:11,050
私も。
1153
01:57:11,050 --> 01:57:14,850
皆の気持は ようわかった。
1154
01:57:16,990 --> 01:57:20,610
よろしゅうございました。
1155
01:57:20,610 --> 01:57:23,950
あんまりはっきり断っては
朝廷に対しても➡
1156
01:57:23,950 --> 01:57:27,120
畏れ多いことにございますから。
1157
01:57:27,120 --> 01:57:34,460
それに 我が朋輩
本多弥八郎正信の立場を➡
1158
01:57:34,460 --> 01:57:38,650
危うくするようなことも
できんでな。
1159
01:57:38,650 --> 01:57:44,300
とにかく 今は返事を
引き延ばすのがいちばん。
1160
01:57:44,300 --> 01:57:47,400
どうすればよいかのう。
1161
01:57:50,830 --> 01:57:53,950
大変でございます。
何だ? 騒々しい。
1162
01:57:53,950 --> 01:57:56,480
殿におかせられましては
今朝方より➡
1163
01:57:56,480 --> 01:57:58,500
にわかにご不快の由にて。
1164
01:57:58,500 --> 01:58:02,300
腹でも下されたか?
それが
のっぴきならぬご容態だと。
1165
01:58:02,300 --> 01:58:04,300
なに!?
1166
01:58:09,330 --> 01:58:14,480
お脈を お願いいたしまする。
1167
01:58:14,480 --> 01:58:19,080
<家康は 医者嫌いで
有名であった>
1168
01:58:22,120 --> 01:58:24,420
いかがでござりましょう?
1169
01:58:48,830 --> 01:58:51,470
弱いそうでございます。
1170
01:58:51,470 --> 01:58:53,470
お熱は?
1171
01:59:03,830 --> 01:59:07,740
あ… あぁ…。
1172
01:59:07,740 --> 01:59:10,940
<朝廷では 家康の病を考慮し➡
1173
01:59:10,940 --> 01:59:15,480
多くの寺社に命じて
快癒の祈祷をさせた。
1174
01:59:15,480 --> 01:59:18,980
しかし 病は平癒せず➡
1175
01:59:18,980 --> 01:59:23,780
予定されていた将軍宣下は
ついに中止となった>
1176
01:59:30,520 --> 01:59:34,620
三左衛門が 伏見より
立ち戻りましてございます。
1177
01:59:38,280 --> 01:59:40,820
床に臥せって ひと月が経つ。
1178
01:59:40,820 --> 01:59:43,270
いったい何の病を
患うておるのだ?
1179
01:59:43,270 --> 01:59:45,820
それが はっきりとは。
1180
01:59:45,820 --> 01:59:47,980
重病だと聞いておるが。
1181
01:59:47,980 --> 01:59:53,110
それは…
いかがでございましょう。
1182
01:59:53,110 --> 01:59:58,650
聞けば 影武者めは
医者も薬も寄せつけず➡
1183
01:59:58,650 --> 02:00:01,620
奥の病間に籠もっておりますとか。
1184
02:00:01,620 --> 02:00:06,330
父上は 医者というものを
一切信用しておられなかった。
1185
02:00:06,330 --> 02:00:10,630
だとしましても 替え玉が
命を張ってまで➡
1186
02:00:10,630 --> 02:00:13,430
それを演じようとは思えませぬ。
1187
02:00:16,850 --> 02:00:23,850
まさか…。
まず
病は作り事でございましょう。
1188
02:00:25,860 --> 02:00:33,860
あやつめ… 断じて許さぬ
断じて許さぬぞ!
1189
02:00:37,160 --> 02:00:40,330
<数日後 伏見城では➡
1190
02:00:40,330 --> 02:00:44,630
影武者 家康が
床上げを済ませていた>
1191
02:00:51,040 --> 02:00:53,840
秀康様が おいでになられました。
1192
02:00:56,130 --> 02:00:59,810
<結城秀康は 家康の次男で➡
1193
02:00:59,810 --> 02:01:04,440
大納言 秀忠にとっては
兄に当たる>
1194
02:01:04,440 --> 02:01:08,490
父上 病が
本復なされましたそうで➡
1195
02:01:08,490 --> 02:01:13,490
よろしゅうございました。
あぁ どうじゃ➡
1196
02:01:13,490 --> 02:01:16,460
面やつれなどしておらぬか?
1197
02:01:16,460 --> 02:01:22,700
はっ
そう言われれば なんとのう。
1198
02:01:22,700 --> 02:01:24,800
あぁ…。
1199
02:01:27,780 --> 02:01:32,380
せっかくです
一服おあがりなさいませ。
1200
02:01:32,380 --> 02:01:35,880
では 頂戴いたしましょう。
1201
02:01:38,370 --> 02:01:44,330
このたびは 越前六十七万石を
くださいますとか。
1202
02:01:44,330 --> 02:01:52,450
あぁ 関ヶ原の戦では
そなた 関東の押さえとして➡
1203
02:01:52,450 --> 02:01:57,990
上杉の侵攻を 一歩も許さなんだ。
1204
02:01:57,990 --> 02:02:04,780
その働きぶり
あまりにも見事だったゆえの。
1205
02:02:04,780 --> 02:02:11,450
六十七万石も
当然でございます。
1206
02:02:11,450 --> 02:02:17,490
それに そなた
これまで 他の兄弟にはない➡
1207
02:02:17,490 --> 02:02:20,800
苦労を舐めてきた。
1208
02:02:20,800 --> 02:02:26,820
はは… それがわしには
不憫でのう。
1209
02:02:26,820 --> 02:02:31,610
なんとか その苦労に
報いてやらねばと➡
1210
02:02:31,610 --> 02:02:36,360
心の底から そう思うておった。
1211
02:02:36,360 --> 02:02:39,460
父上…。
1212
02:02:47,910 --> 02:02:52,460
太守様 どうぞこちらへ。
1213
02:02:52,460 --> 02:02:56,160
かたじけのうございます。
1214
02:02:56,160 --> 02:03:01,150
< この秀康は 幼くして
太閤 秀吉の養子となり➡
1215
02:03:01,150 --> 02:03:04,740
その後 下総の結城氏を
継いだために➡
1216
02:03:04,740 --> 02:03:07,690
徳川家の嫡流から外れていたが➡
1217
02:03:07,690 --> 02:03:13,790
その武勇は 弟の大納言 秀忠を
はるかに凌いでいた>
1218
02:03:21,640 --> 02:03:25,160
近いうちに
江戸入りをせねばならぬ。
1219
02:03:25,160 --> 02:03:28,130
どうしてもか?
どうしてもだ。
1220
02:03:28,130 --> 02:03:31,820
大納言様は
おぬしが仮病を使ったことに➡
1221
02:03:31,820 --> 02:03:34,450
たいそう立腹しておられる。
1222
02:03:34,450 --> 02:03:38,490
仮病? 何のことだ。
とぼけても無駄だ。
1223
02:03:38,490 --> 02:03:43,690
何と申し開きをするか
今から考えておけ。
1224
02:03:43,690 --> 02:03:51,690
ははは 弥八郎
申し開きなどするか。
1225
02:03:56,860 --> 02:04:01,460
お万様 何か心配事でも?
1226
02:04:03,600 --> 02:04:07,650
本当か?
わしの子に間違いないか?
1227
02:04:07,650 --> 02:04:11,270
本当でございます。
1228
02:04:11,270 --> 02:04:15,290
この歳で 子が出来ようとは。
1229
02:04:15,290 --> 02:04:18,810
別に 不思議なことでは
ございませぬ。
1230
02:04:18,810 --> 02:04:23,430
しかし わしにとっては
初めての子じゃ。
1231
02:04:23,430 --> 02:04:26,490
水をさすようで
申し訳ございませぬが➡
1232
02:04:26,490 --> 02:04:28,820
喜んでばかりもいられませぬ。
1233
02:04:28,820 --> 02:04:31,440
生まれてくる御子が
女子ならまだしも➡
1234
02:04:31,440 --> 02:04:35,150
もし 男の子であった場合
どうなります?
1235
02:04:35,150 --> 02:04:43,600
あ… 表向きは 大殿
徳川家康様の十男。
1236
02:04:43,600 --> 02:04:47,710
要するに 大納言様の
弟ということに。
1237
02:04:47,710 --> 02:04:51,650
あのお方が そのようなこと
認めるとお思いですか?
1238
02:04:51,650 --> 02:04:56,070
いや 認めるわけがない。
1239
02:04:56,070 --> 02:05:01,170
むしろ なきものにしようと
なさるじゃろう。
1240
02:05:03,670 --> 02:05:06,290
懐妊のことは この城限り。
1241
02:05:06,290 --> 02:05:10,480
外へ漏らしてはなりませぬ。
1242
02:05:10,480 --> 02:05:15,790
皆 力を貸してくれ。
1243
02:05:15,790 --> 02:05:18,370
手を貸してくれるな?
はい。
1244
02:05:18,370 --> 02:05:21,170
手を貸してくれ まず まず。
1245
02:05:23,130 --> 02:05:30,630
内緒 内緒 内緒… 内緒の諸。
1246
02:05:37,440 --> 02:05:39,480
江戸…。
江戸には…。
1247
02:05:39,480 --> 02:05:50,080
あ… ははは 江戸には
ついて来ていただけますかな?
1248
02:05:52,190 --> 02:05:54,990
もちろんでございます。
1249
02:06:06,100 --> 02:06:11,580
< その年の十一月
影武者 家康は 江戸に入った>
1250
02:06:11,580 --> 02:06:44,880
♬~
1251
02:07:05,830 --> 02:07:11,440
そのほう わしに何か
含むところでもあるのか?
1252
02:07:11,440 --> 02:07:16,640
含むところなど
別にござりませぬが。
1253
02:07:16,640 --> 02:07:20,550
では 何ゆえに
将軍宣下を受けぬ?
1254
02:07:20,550 --> 02:07:24,950
ああ…
その儀にござりまするか。
1255
02:07:24,950 --> 02:07:28,970
それは 将軍宣下を受ければ➡
1256
02:07:28,970 --> 02:07:32,610
徳川のお家は
将軍家となりまする。
1257
02:07:32,610 --> 02:07:37,330
さすれば 権力は
絶大なものとなり➡
1258
02:07:37,330 --> 02:07:40,280
この 世良田二郎三郎の➡
1259
02:07:40,280 --> 02:07:43,120
役目も不要となりまする。
1260
02:07:43,120 --> 02:07:45,660
だから どうだというのだ。
1261
02:07:45,660 --> 02:07:52,780
命の保証が
欲しゅうござりまする。
1262
02:07:52,780 --> 02:07:55,000
それなくば➡
1263
02:07:55,000 --> 02:07:58,990
将軍宣下は お受けできませぬ。
1264
02:07:58,990 --> 02:08:05,610
ふん… 何を
言い出すかと思ったら…。
1265
02:08:05,610 --> 02:08:10,000
もとより そのほうに
危害を加えるつもりなどないが➡
1266
02:08:10,000 --> 02:08:13,430
望みとあらば約束しよう。
1267
02:08:13,430 --> 02:08:18,320
ああ… 某のみならず➡
1268
02:08:18,320 --> 02:08:23,740
お父上が ご寵愛なされた➡
1269
02:08:23,740 --> 02:08:29,830
側室たちの命も
助けていただきとう存じまする。
1270
02:08:29,830 --> 02:08:32,650
易いことだ。
1271
02:08:32,650 --> 02:08:35,010
どこぞに 領地を
くれてやってもよい。
1272
02:08:35,010 --> 02:08:38,830
そこに 館でも構えて
側室どもと一生➡
1273
02:08:38,830 --> 02:08:42,730
贅沢に暮らしていけばよい。
1274
02:08:42,730 --> 02:08:45,820
それは ありがたい。
1275
02:08:45,820 --> 02:08:48,320
あと いまひとつ…。
1276
02:08:53,970 --> 02:08:57,640
約束をしていただきたいことが
ござりまする。
1277
02:08:57,640 --> 02:08:59,740
何なりと申せ。
1278
02:09:02,000 --> 02:09:05,890
決して 戦を仕掛けぬと➡
1279
02:09:05,890 --> 02:09:09,390
お約束 願いたい。
1280
02:09:11,680 --> 02:09:14,280
わしが 誰に
戦を仕掛けるというのだ?
1281
02:09:16,700 --> 02:09:20,500
大坂城の
秀頼様にござりまする。
1282
02:09:22,470 --> 02:09:24,770
図に乗るな。
1283
02:09:28,660 --> 02:09:31,010
よいわ 弥八郎。
1284
02:09:31,010 --> 02:09:34,980
戦はせぬと約束しよう。
1285
02:09:34,980 --> 02:09:38,170
誠にござりまするか?
1286
02:09:38,170 --> 02:09:41,000
天地神明に誓って。
1287
02:09:41,000 --> 02:09:44,940
ならば その約束➡
1288
02:09:44,940 --> 02:09:47,640
誓紙にしたためていただきたい。
1289
02:09:47,640 --> 02:09:50,010
なんだと?
1290
02:09:50,010 --> 02:09:52,530
一通を 某に。
1291
02:09:52,530 --> 02:09:57,300
また 一通を
大坂城の秀頼様に➡
1292
02:09:57,300 --> 02:10:00,300
差し出していただきとう
存じまする。
1293
02:10:02,530 --> 02:10:06,330
おのれ 影武者の分際で。
1294
02:10:12,170 --> 02:10:16,660
今 某を斬れば➡
1295
02:10:16,660 --> 02:10:21,280
天下の形勢は 関ヶ原の戦以前に
戻りまするぞ。
1296
02:10:21,280 --> 02:10:28,650
それを承知で
斬る勇気がおありならば➡
1297
02:10:28,650 --> 02:10:33,570
秀忠➡
1298
02:10:33,570 --> 02:10:37,870
この家康を
血祭りにあげられよ。
1299
02:10:40,710 --> 02:10:42,710
さぁ。
1300
02:10:45,350 --> 02:10:47,650
さぁ。
1301
02:10:50,910 --> 02:10:52,910
さぁ。
1302
02:10:55,050 --> 02:10:57,050
秀忠。
1303
02:11:02,470 --> 02:11:06,970
抜けば お家が滅びまするぞ。
1304
02:12:00,610 --> 02:12:03,630
口惜しきかぎりでございますが➡
1305
02:12:03,630 --> 02:12:08,340
各地の有力大名は
家康公への信義を誓って➡
1306
02:12:08,340 --> 02:12:10,820
静かにしているだけのこと。
1307
02:12:10,820 --> 02:12:13,610
大納言様の下での戦は➡
1308
02:12:13,610 --> 02:12:16,140
勝ち目がありえませぬ。
1309
02:12:16,140 --> 02:12:21,050
今は耐えて 江戸を
固めることが重要でございます。
1310
02:12:21,050 --> 02:12:23,820
早く将軍となって➡
1311
02:12:23,820 --> 02:12:27,200
二郎三郎など
消し去るのみでございます。
1312
02:12:27,200 --> 02:12:29,270
もうよい。
1313
02:12:29,270 --> 02:12:34,030
とにかく あやつから
片時も目を離すな。
1314
02:12:34,030 --> 02:12:36,030
はっ。
1315
02:12:45,190 --> 02:12:48,490
なぜ 怒らせたりしたのです?
1316
02:12:50,710 --> 02:12:53,210
本音を…。
1317
02:12:55,650 --> 02:13:00,550
本音を引き出したかった。
1318
02:13:00,550 --> 02:13:06,310
大納言 秀忠様の本音を…。
1319
02:13:06,310 --> 02:13:09,810
何事もなければ
よろしいのですが。
1320
02:13:38,560 --> 02:13:41,090
外の様子がおかしい。
1321
02:13:41,090 --> 02:14:25,410
♬~
1322
02:14:25,410 --> 02:14:27,590
見張っているのは 何者です?
1323
02:14:27,590 --> 02:14:31,110
柳生宗矩配下の
忍びでございます。
1324
02:14:31,110 --> 02:14:34,230
柳生宗矩とは?
1325
02:14:34,230 --> 02:14:36,930
大納言様の兵法指南役で➡
1326
02:14:36,930 --> 02:14:41,070
新陰流という剣法の
達人だそうでございます。
1327
02:14:41,070 --> 02:14:45,110
もし襲われれば
今いるだけの人数では➡
1328
02:14:45,110 --> 02:14:47,060
防ぎようがございませぬ。
1329
02:14:47,060 --> 02:14:53,580
確かにの 大納言様の勢力と
渡り合うには➡
1330
02:14:53,580 --> 02:14:58,590
いささか 心もとない。
1331
02:14:58,590 --> 02:15:04,060
風魔を 味方につけることは
できまいか?
1332
02:15:04,060 --> 02:15:09,450
それは
聞いてみませぬことには 何とも。
1333
02:15:09,450 --> 02:15:12,320
小太郎殿に
かけ合ってはもらえぬか?
1334
02:15:12,320 --> 02:15:14,570
小太郎?
1335
02:15:14,570 --> 02:15:17,610
風魔一族の頭領でございます。
1336
02:15:17,610 --> 02:15:20,060
ああ…。
わかりました。
1337
02:15:20,060 --> 02:15:24,300
これから 早速 出向きまして。
1338
02:15:24,300 --> 02:15:27,300
造作をかけるの。
1339
02:15:33,790 --> 02:15:36,440
わしも一緒に行こう。
1340
02:15:36,440 --> 02:15:38,930
一人で行く。
1341
02:15:38,930 --> 02:15:42,550
そう 意地を張らんでも。
1342
02:15:42,550 --> 02:15:46,270
助けは いらぬ。
1343
02:15:46,270 --> 02:15:50,670
そんなに わしのことが嫌いか?
1344
02:15:50,670 --> 02:15:53,170
そうではない。
1345
02:15:55,980 --> 02:16:00,480
風魔の土地に よそ者は入れぬ。
それが掟だ。
1346
02:16:16,170 --> 02:16:22,610
<風魔は 箱根の山中を
本拠とする忍びの集団である。
1347
02:16:22,610 --> 02:16:25,740
しかし その実態は謎に包まれ➡
1348
02:16:25,740 --> 02:16:31,840
頭領である 風魔小太郎の顔すら
誰も知る者はなかった>
1349
02:16:50,270 --> 02:16:52,250
どこへ行く気だ? 殺すな。
1350
02:16:52,250 --> 02:16:55,440
生け捕りにしろ。
1351
02:16:55,440 --> 02:17:32,530
♬~
1352
02:17:32,530 --> 02:17:36,710
来なくていいと言ったのに
なぜついてきた?
1353
02:17:36,710 --> 02:17:39,930
心配だったからに
決まってるだろう。
1354
02:17:39,930 --> 02:17:42,790
強くもないくせに。
1355
02:17:42,790 --> 02:17:45,760
悪かったな。
1356
02:17:45,760 --> 02:17:50,760
血止めはしたが あとで
傷口を洗ったほうがよい。
1357
02:17:54,100 --> 02:17:56,820
すまん。
1358
02:17:56,820 --> 02:18:00,620
助けるつもりが
これでは あべこべだ。
1359
02:18:04,260 --> 02:18:07,980
そんなことはない。
1360
02:18:07,980 --> 02:18:13,080
六郎殿が来てくれなければ
どうなっていたか…。
1361
02:18:15,990 --> 02:18:18,300
少しは見直したか?
1362
02:18:18,300 --> 02:18:20,400
調子に乗るな。
1363
02:18:48,270 --> 02:18:53,270
ここからは 風魔の土地だ。
引き返すなら今のうちだぞ。
1364
02:18:56,460 --> 02:19:02,260
ここまで来たら
頭領の小太郎殿に会ってみたい。
1365
02:19:51,060 --> 02:19:54,770
どうした?
よそ者でございます。
1366
02:19:54,770 --> 02:19:58,740
風魔の頭領
小太郎殿でござるか?
1367
02:19:58,740 --> 02:20:01,790
いかにも。
1368
02:20:01,790 --> 02:20:05,380
何者だ?
1369
02:20:05,380 --> 02:20:10,250
元は 武田の忍びで
甲斐の六郎と申しまする。
1370
02:20:10,250 --> 02:20:13,050
お前が連れてきたのか?
1371
02:20:18,710 --> 02:20:24,550
よそ者を立ち入らせては
ならぬという掟を忘れたのか?
1372
02:20:24,550 --> 02:20:28,100
この人は
よそ者ではございませぬ。
1373
02:20:28,100 --> 02:20:32,590
ほぅ では 何なのだ?
1374
02:20:32,590 --> 02:20:36,640
私の夫になる人です。
1375
02:20:36,640 --> 02:20:38,640
夫?
1376
02:20:41,230 --> 02:20:45,300
はっははは! こいつがか?
1377
02:20:45,300 --> 02:20:51,240
父上 一緒になることを
お許しくださいますか?
1378
02:20:51,240 --> 02:20:53,240
父上?
1379
02:20:53,240 --> 02:20:56,200
おふうは わしの娘だ。
1380
02:20:56,200 --> 02:20:58,300
父上。
1381
02:21:00,900 --> 02:21:03,650
婿殿を わざわざ見せにきたのか?
1382
02:21:03,650 --> 02:21:09,150
いいえ。 それとは別に
お願いしたいことが。
1383
02:21:19,070 --> 02:21:21,940
どうも お前の話は
さっぱり わからぬ。
1384
02:21:21,940 --> 02:21:24,470
何が わからぬのです?
1385
02:21:24,470 --> 02:21:29,950
まず 徳川内府が 何ゆえに
風魔を雇わねばならぬのか➡
1386
02:21:29,950 --> 02:21:32,100
それが わからぬ。
1387
02:21:32,100 --> 02:21:36,470
大納言 秀忠様から
身を守らねばならぬからです。
1388
02:21:36,470 --> 02:21:39,940
身を守るためなら 自分の家来が
いくらでもいるではないか。
1389
02:21:39,940 --> 02:21:47,080
それに そもそも 大納言は
何ゆえに内府の命を狙うのだ?
1390
02:21:47,080 --> 02:21:50,100
それは…。
1391
02:21:50,100 --> 02:21:55,440
実は 今の内府は 偽者なので。
1392
02:21:55,440 --> 02:21:58,890
偽者? 馬鹿を言え。
1393
02:21:58,890 --> 02:22:00,930
嘘ではございませぬ。
1394
02:22:00,930 --> 02:22:02,910
では 本物はどうしたのだ?
1395
02:22:02,910 --> 02:22:07,100
某が 関ヶ原で
この手にかけ申した。
1396
02:22:07,100 --> 02:22:11,270
なに?
徳川家では それを公にできず➡
1397
02:22:11,270 --> 02:22:15,040
影武者の
世良田二郎三郎なる者を➡
1398
02:22:15,040 --> 02:22:18,260
代わりに
立てているのでございます。
1399
02:22:18,260 --> 02:22:24,250
世良田二郎三郎
どこかで聞いたような…。
1400
02:22:24,250 --> 02:22:28,050
信長を撃った男。
1401
02:22:35,410 --> 02:22:38,210
今日は ずいぶんと
驚かされる一日だ。
1402
02:22:40,980 --> 02:22:43,470
一から話せ。
1403
02:22:43,470 --> 02:22:46,470
雇われるかどうかは
それからのことだ。
1404
02:22:55,050 --> 02:22:57,770
小太郎殿には 会えましたか?
1405
02:22:57,770 --> 02:22:59,720
はい。
1406
02:22:59,720 --> 02:23:03,290
して 味方には ついてくれると?
1407
02:23:03,290 --> 02:23:08,910
返事をする前に 一度
殿様にお会いしたいとのことで。
1408
02:23:08,910 --> 02:23:11,210
わしに?
1409
02:23:13,450 --> 02:23:16,270
いや 言い分は もっともだが。
1410
02:23:16,270 --> 02:23:19,910
どこで会えばいいかの?
1411
02:23:19,910 --> 02:23:22,590
増上寺は
いかがでございましょう。
1412
02:23:22,590 --> 02:23:26,980
徳川家の菩提寺ゆえ
お参りにかこつけて。
1413
02:23:26,980 --> 02:23:29,420
そうか。
それは よいお考え。
1414
02:23:29,420 --> 02:23:32,940
実は もう一人
殿に会いたいという お方が。
1415
02:23:32,940 --> 02:23:35,300
誰じゃ?
1416
02:23:35,300 --> 02:23:38,290
例の 某の雇い主。
1417
02:23:38,290 --> 02:23:42,300
わしもな
会いたいと思うておった。
1418
02:23:42,300 --> 02:23:45,100
では 早速に手配りを。
1419
02:23:49,420 --> 02:23:52,590
もうひとつ ご報告が。
1420
02:23:52,590 --> 02:23:54,610
何じゃ?
1421
02:23:54,610 --> 02:23:58,910
某 おふうと夫婦に。
1422
02:23:58,910 --> 02:24:04,510
は?
まぁ いつの間に。
1423
02:24:08,290 --> 02:24:11,440
六郎 そなたは➡
1424
02:24:11,440 --> 02:24:15,060
おふうを手籠めに
したのではあるまいな?
1425
02:24:15,060 --> 02:24:17,130
はっ 馬鹿!
1426
02:24:17,130 --> 02:24:19,430
な… 何を申すか!
1427
02:24:28,410 --> 02:24:32,510
あら。
なぁ…。
1428
02:25:05,650 --> 02:25:11,150
だいぶ お待たせを
いたしたようですな。
1429
02:25:16,620 --> 02:25:20,220
世良田二郎三郎でござる。
1430
02:25:23,650 --> 02:25:27,650
似ている。
うむ。
1431
02:25:27,650 --> 02:25:31,950
徳川内府に生き写しだ。
1432
02:25:34,710 --> 02:25:40,510
人の顔をそう じろじろと
見るものではござらぬ。
1433
02:25:42,470 --> 02:25:48,270
こちらの内府様は どことなく
ひょうげたところがおありだ。
1434
02:25:50,690 --> 02:25:53,690
ささら者の
お生まれだそうだからな。
1435
02:25:56,680 --> 02:26:01,980
申し遅れたが
わしは風魔の頭領 小太郎。
1436
02:26:14,650 --> 02:26:20,070
我ら 風魔一族も
主を持たず土地を耕さぬ➡
1437
02:26:20,070 --> 02:26:23,070
道々の輩でござる。
1438
02:26:25,010 --> 02:26:26,940
まあ 六郎めが➡
1439
02:26:26,940 --> 02:26:33,820
いろいろと 余計なことを
しゃべったようでござる。
1440
02:26:33,820 --> 02:26:36,450
お手前は?
1441
02:26:36,450 --> 02:26:42,360
六郎めの雇い主
島左近勝猛と申す。
1442
02:26:42,360 --> 02:26:47,360
なるほど そうでござったか。
1443
02:26:50,000 --> 02:26:52,050
失礼ながら➡
1444
02:26:52,050 --> 02:26:58,980
関ヶ原にて 討ち死にされたものと
ばかり思うておりました。
1445
02:26:58,980 --> 02:27:02,580
こうして
生き恥をさらしております。
1446
02:27:09,820 --> 02:27:11,820
増上寺へ?
1447
02:27:11,820 --> 02:27:14,790
供まわりも極少数にて。
1448
02:27:14,790 --> 02:27:18,480
だが なんのために。
1449
02:27:18,480 --> 02:27:21,930
恐らくは 誰かと落ち合うため。
1450
02:27:21,930 --> 02:27:24,000
誰かというと?
1451
02:27:24,000 --> 02:27:26,600
そこまでは。
1452
02:27:26,600 --> 02:27:29,110
しかし 会合の場所に➡
1453
02:27:29,110 --> 02:27:33,480
容易くは 人の立ち入れぬ
増上寺を選ぶとは➡
1454
02:27:33,480 --> 02:27:36,330
敵もなかなかの策士。
1455
02:27:36,330 --> 02:27:38,700
感心しておる場合か。
1456
02:27:38,700 --> 02:27:42,300
誰と会っているか突き止めよ。
はっ。
1457
02:27:48,310 --> 02:27:53,150
あらましのことは 某も
六郎から聞き及んでおります。
1458
02:27:53,150 --> 02:27:58,070
今 この男に死なれては困る。
1459
02:27:58,070 --> 02:28:03,640
風魔のお力を持って
ぜひとも お守りいただきたい。
1460
02:28:03,640 --> 02:28:07,980
この男は それほどまでに
大事なお人か?
1461
02:28:07,980 --> 02:28:13,270
豊臣家にとって
なくてはならぬ男でござる。
1462
02:28:13,270 --> 02:28:17,820
しかし 我らは
豊臣家にはなんの借りもない。
1463
02:28:17,820 --> 02:28:19,760
ごもっともでござる。
1464
02:28:19,760 --> 02:28:24,610
しかしながら
お手前もご存じであろう。
1465
02:28:24,610 --> 02:28:30,500
徳川家は 関ヶ原で敵対した
大名たちを取り潰し➡
1466
02:28:30,500 --> 02:28:33,970
切り取った領地をすべて➡
1467
02:28:33,970 --> 02:28:37,320
己の手に
取り込もうとしております。
1468
02:28:37,320 --> 02:28:41,260
そのため
諸国には 牢人が溢れ➡
1469
02:28:41,260 --> 02:28:45,970
民 百姓は
重税に苦しめられている。
1470
02:28:45,970 --> 02:28:50,970
もし今
豊臣家が滅びればどうなります。
1471
02:28:52,990 --> 02:28:57,610
天下は
徳川家のほしいままとなる。
1472
02:28:57,610 --> 02:29:00,310
それを阻むためには➡
1473
02:29:00,310 --> 02:29:08,320
この内府様に 大納言 秀忠の頭を
押さえていてもらわねばならぬ。
1474
02:29:08,320 --> 02:29:13,620
大坂城の秀頼様が
ご成長なさるまで?
1475
02:29:20,150 --> 02:29:23,640
だが 秀頼様というのは➡
1476
02:29:23,640 --> 02:29:26,970
我らが望みを
託すに足る御子なのか。
1477
02:29:26,970 --> 02:29:29,340
それはわからぬ。
1478
02:29:29,340 --> 02:29:34,330
しかし
大納言 秀忠の天下となれば➡
1479
02:29:34,330 --> 02:29:39,790
このうえもなく
つまらぬ世の中にはなるだろう。
1480
02:29:39,790 --> 02:29:41,820
なるほど。
1481
02:29:41,820 --> 02:29:47,610
そう言われては 手をこまねいて
いるわけにもいかぬ。
1482
02:29:47,610 --> 02:29:51,650
ならば お力添え願えまするか。
1483
02:29:51,650 --> 02:29:57,470
ただし 我らも霞を食って
生きているわけではない。
1484
02:29:57,470 --> 02:29:59,940
それなりのものを
いただかねば。
1485
02:29:59,940 --> 02:30:03,640
と 言われても➡
1486
02:30:03,640 --> 02:30:07,780
さしあたって
どうすればよいのか。
1487
02:30:07,780 --> 02:30:13,240
お手前に工面がつかねば
大納言殿からいただいてもよい。
1488
02:30:13,240 --> 02:30:15,810
秀忠から?
1489
02:30:15,810 --> 02:30:19,610
甲州 黒川に
徳川家の金山がござる。
1490
02:30:19,610 --> 02:30:25,150
そこから運び出される
荷駄を頂戴する。
1491
02:30:25,150 --> 02:30:29,450
おお それは妙案。
1492
02:30:29,450 --> 02:30:37,330
ならば この家康
ご朱印状を書きましょうかな。
1493
02:30:37,330 --> 02:30:42,600
(笑い声)
1494
02:30:42,600 --> 02:30:45,140
道々の輩というのは➡
1495
02:30:45,140 --> 02:30:48,540
人を食うた
お方ばかりでござるな。
1496
02:30:48,540 --> 02:30:57,640
(笑い声)
1497
02:31:16,620 --> 02:31:44,660
♬~
1498
02:31:44,660 --> 02:31:46,630
わしに用でもあるのか。
1499
02:31:46,630 --> 02:32:12,640
♬~
1500
02:32:12,640 --> 02:32:16,610
お顔を見せていただこうか。
1501
02:32:16,610 --> 02:32:18,600
御姓名は?
1502
02:32:18,600 --> 02:32:21,150
知りたくば➡
1503
02:32:21,150 --> 02:32:24,280
腕ずくでまいられよ。
1504
02:32:24,280 --> 02:33:05,640
♬~
1505
02:33:05,640 --> 02:33:09,000
ここは 任せてくだされ。
忝い。
1506
02:33:09,000 --> 02:33:47,600
♬~
1507
02:33:47,600 --> 02:33:50,150
その二人 何者だ。
1508
02:33:50,150 --> 02:33:53,620
一人は忍び それも先頃➡
1509
02:33:53,620 --> 02:33:57,660
箱根で取り逃がした
女のことを考え合わせると➡
1510
02:33:57,660 --> 02:34:02,300
恐らくは 風魔の忍び。
今一人は。
1511
02:34:02,300 --> 02:34:05,270
島左近。
1512
02:34:05,270 --> 02:34:09,690
まさか 死んだと思っていたが。
1513
02:34:09,690 --> 02:34:13,290
この目に 狂いはございませぬ。
1514
02:34:15,260 --> 02:34:18,180
影武者の後ろに
左近がついているとすれば➡
1515
02:34:18,180 --> 02:34:21,800
ことは
いっそうの警戒を要しまする。
1516
02:34:21,800 --> 02:34:28,400
あやつめ 何を企んでいるのか。
1517
02:34:30,480 --> 02:34:36,020
<数日後 影武者 家康は
飛び立つように江戸を発った。
1518
02:34:36,020 --> 02:34:40,320
伏見へ帰らねばならぬ
理由があった>
1519
02:34:46,510 --> 02:34:49,310
おお 動いた。
1520
02:34:51,700 --> 02:34:56,300
けりました。
まあ 元気な御子ですこと。
1521
02:34:59,670 --> 02:35:04,260
本当におぬしの子か?
わしの子だ。
1522
02:35:04,260 --> 02:35:07,000
わしの子が 産まれてくる。
1523
02:35:07,000 --> 02:35:10,850
女の子ならよいが。
1524
02:35:10,850 --> 02:35:12,990
女子でも男でもよい。
1525
02:35:12,990 --> 02:35:16,340
わしは 守ってみせる。
1526
02:35:16,340 --> 02:35:18,640
案ずるな。
1527
02:35:23,480 --> 02:35:27,000
<生まれたのは 男の子であった。
1528
02:35:27,000 --> 02:35:30,450
末永く幸福であれとの
願いを込めて➡
1529
02:35:30,450 --> 02:35:35,680
長福丸と名づけられた。
1530
02:35:35,680 --> 02:35:38,780
一報は すぐさま江戸へ飛んだ>
1531
02:35:41,110 --> 02:35:44,320
殺せ 生かしてはおけぬ。
1532
02:35:44,320 --> 02:35:49,290
それは ご短慮と申すもの。
1533
02:35:49,290 --> 02:35:53,480
殺してしまっては
それまででござる。
1534
02:35:53,480 --> 02:35:56,960
その方は 影武者の子を
認めよと言うのか。
1535
02:35:56,960 --> 02:36:01,500
生かしておけば わしの弟と
いうことになるのだぞ。
1536
02:36:01,500 --> 02:36:07,770
いや それだけは
断じて許してはならぬ。
1537
02:36:07,770 --> 02:36:10,960
わしの子は
いずれも女ばかりじゃ。
1538
02:36:10,960 --> 02:36:13,810
もし このまま
男が生まれねば➡
1539
02:36:13,810 --> 02:36:17,990
あやつの子が
わしの跡を継ぐということも。
1540
02:36:17,990 --> 02:36:22,690
殺すのは 容易いことでござる。
1541
02:36:22,690 --> 02:36:27,290
ここは 生かしておいて
役に立てるべきかと。
1542
02:37:05,350 --> 02:37:10,020
殿。
なんじゃ。
1543
02:37:10,020 --> 02:37:12,620
ああ いえ。
1544
02:37:14,640 --> 02:37:18,600
どうした 助左衛門。
1545
02:37:18,600 --> 02:37:21,110
只今 江戸より➡
1546
02:37:21,110 --> 02:37:24,200
大納言様が
おいでになられましたが。
1547
02:37:24,200 --> 02:37:29,200
大納言 秀忠様。
1548
02:37:34,660 --> 02:37:42,600
この伏見まで
ようこそ おいでなされました。
1549
02:37:42,600 --> 02:37:47,460
御用件は
何事でござりましょうか。
1550
02:37:47,460 --> 02:37:50,660
子が産まれたそうだからな➡
1551
02:37:50,660 --> 02:37:54,760
祝賀を述べに
わざわざ来てやったのだ。
1552
02:37:57,700 --> 02:38:01,300
心にもないことを
おっしゃいますな。
1553
02:38:05,280 --> 02:38:10,650
そこ許は?
柳生宗矩と申しまする。
1554
02:38:10,650 --> 02:38:17,950
ほう そなたが柳生宗矩殿か。
1555
02:38:17,950 --> 02:38:20,550
御用件は?
1556
02:38:22,660 --> 02:38:25,130
大納言様に
おかせられましては➡
1557
02:38:25,130 --> 02:38:29,770
長福丸様 ご出生のよし
聞こし召されまして➡
1558
02:38:29,770 --> 02:38:32,970
ことのほか お喜びに。
1559
02:38:32,970 --> 02:38:37,970
人払いをしておりまする。
御用件を。
1560
02:38:42,700 --> 02:38:49,000
大納言様は 将軍家になることを
強く望んでおられます。
1561
02:38:51,660 --> 02:38:59,300
そのことならば もはや
議論の余地はござりませぬ。
1562
02:38:59,300 --> 02:39:03,370
将軍宣下は いたしませぬ。
1563
02:39:03,370 --> 02:39:07,150
どうあってもでござるか。
どうあっても。
1564
02:39:07,150 --> 02:39:09,150
しかし。
1565
02:39:13,140 --> 02:39:17,280
受けねば ただでは済まぬぞ。
1566
02:39:17,280 --> 02:39:22,140
わしを殺そうと
言われまするか。
1567
02:39:22,140 --> 02:39:27,440
その方を殺してしまっては
元も子もなくなる。
1568
02:39:32,650 --> 02:39:40,850
まさか 我が子を殺めると。
1569
02:39:40,850 --> 02:39:44,150
将軍宣下を
受けてもらえような。
1570
02:39:53,630 --> 02:39:56,300
わかりました。
1571
02:39:56,300 --> 02:40:00,470
将軍宣下
お受けいたしましょう。
1572
02:40:00,470 --> 02:40:06,570
しかし ただでは
お受けいたしませぬ。
1573
02:40:10,170 --> 02:40:15,460
断じて 我が子に手を出さぬと➡
1574
02:40:15,460 --> 02:40:22,060
その旨をしたためた誓紙を
わしに差し出していただきたい。
1575
02:40:26,320 --> 02:40:34,120
もし
違背するようなことあらば➡
1576
02:40:34,120 --> 02:40:41,150
天下の将軍 徳川家康として➡
1577
02:40:41,150 --> 02:40:51,120
越前の秀康をはじめ
天下の諸侯に号令を発し➡
1578
02:40:51,120 --> 02:40:56,620
そなたの江戸に攻め入る。
1579
02:40:59,320 --> 02:41:03,850
攻めて攻めて 攻め入って➡
1580
02:41:03,850 --> 02:41:09,150
秀忠 そなたを叩き潰す。
1581
02:41:12,450 --> 02:41:15,450
世良田二郎三郎。
1582
02:41:21,150 --> 02:41:26,650
いね! 江戸へいね!
1583
02:41:32,030 --> 02:41:38,130
行かぬか! たわけ。
1584
02:42:04,000 --> 02:42:09,350
<後陽成天皇の勅使が
伏見城を訪れ>
1585
02:42:32,740 --> 02:42:35,430
《わしが
征夷大将軍になったときが➡
1586
02:42:35,430 --> 02:42:38,530
貴様の最期だと思え。
1587
02:42:38,530 --> 02:42:41,830
必ず
なぶり殺しにしてくれるぞ》
1588
02:42:49,630 --> 02:42:52,150
<家康を右大臣に任じ➡
1589
02:42:52,150 --> 02:42:56,950
征夷大将軍に成すという
宣旨が下賜された。
1590
02:42:56,950 --> 02:42:59,490
関ヶ原から三年➡
1591
02:42:59,490 --> 02:43:02,520
影武者家康が
将軍となったことで➡
1592
02:43:02,520 --> 02:43:06,620
歴史は更に
大きく動こうとしていた>
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